JPH1135765A - 高分子固体電解質とその製造方法 - Google Patents

高分子固体電解質とその製造方法

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JPH1135765A
JPH1135765A JP9198820A JP19882097A JPH1135765A JP H1135765 A JPH1135765 A JP H1135765A JP 9198820 A JP9198820 A JP 9198820A JP 19882097 A JP19882097 A JP 19882097A JP H1135765 A JPH1135765 A JP H1135765A
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solid
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lithium
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Tsutomu Takadera
勉 高寺
Naoto Nishimura
直人 西村
Takehito Mitachi
武仁 見立
Kazuaki Minato
和明 湊
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Sharp Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 イオン伝導度と機械的強度に優れた高分子固
体電解質とその製造方法を提供することを課題とする。 【解決手段】 エチレンオキシド或いはプロピレンオキ
シド又はこれらの両者を構成成分とするエーテル系ポリ
マーとフッ素系ポリマーとの混合ポリマーに金属塩を含
有させたことを特徴とする高分子固体電解質により上記
課題を解決する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高分子固体電解質
とその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、イ
オン伝導度と機械的強度に優れた高分子固体電解質とそ
の製造方法に関する。本発明の高分子固体電解質は、電
池等の電気化学素子、特に高エネルギー密度を有する二
次電池に使用することが好適である。
【0002】
【従来の技術】電子機器、情報機器等の小型化、携帯化
に伴って、軽量で、高電圧の二次電池の研究開発が進ん
でいる。中でも金属リチウム二次電池は軽量でかつ高エ
ネルギー密度を有するため、前記機器の電源として最近
非常に有望視されている。一般的にリチウム二次電池に
は、負極として金属リチウム、電解質としてリチウム塩
を溶解した非水系電解液が用いられている。
【0003】しかしながら、上記金属リチウム二次電池
では、充放電サイクルを繰り返すと、金属リチウム上に
樹枝状の結晶(デンドライト)が生成し、内部短絡又は
サイクル特性の劣化を引き起こすことが知られている。
そこで、金属リチウムからなる負極の代わりとして、炭
素材料等をホスト材料とし、リチウムイオンの挿入脱離
反応を利用した負極を用いたリチウムイオン二次電池が
注目され、実際に使用されている。このリチウムイオン
二次電池は、金属リチウム二次電池と比べて負極の理論
容量は低いが、サイクル特性や信頼性に優れている。
【0004】一方、リチウム二次電池(金属リチウム二
次電池及びリチウムイオン二次電池を含む)は、一般的
に電解質として有機電解液が用いられている。しかしな
がら、液体の電解質は、電池外部への液漏れや溶媒の揮
発、電極物質の溶出等による電池の劣化等信頼性の問
題、更には有機電解液は可燃性の有機溶媒を含むため、
液漏れから引火する危険を有している。
【0005】そこで電池外部への液漏れがない無機材料
や高分子材料からなる固体電解質を用いた電池が期待さ
れている。特に高分子材料からなる固体電解質(以下、
高分子固体電解質と称する)は、製造が比較的容易でコ
ストが安く、その上軽量であるという特徴を有してい
る。よって、高分子固体電解質は、薄型加工及び形状の
多様性に優れた全固体型電池を提供できるため注目され
ている。
【0006】しかし、この高分子固体電解質は安全性が
優れているものの、イオン伝導性が従来の有機電解液に
比べて非常に低いのが問題となっている。現在、高分子
固体電解質は、ポリエチレンオキシドやポリプロピレン
オキシド等のポリエーテル系ポリマーを含んだ高分子が
多く用いられている。例えば、ポリエチレンオキシドや
ポリプロピレンオキシドの直鎖状高分子は結晶性高分子
であるため、これら高分子と電解質塩からなる高分子固
体電解質は、高温において良好なイオン伝導性を有する
が、常温及びそれ以下の温度においてイオン伝導性がか
なり低くなる。
【0007】イオン伝導性の低下の問題を解決するため
に、ポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシド等
を櫛型や網状に架橋することで無定形化させて得られる
無定形化ポリマーを用いることが知られている。しか
し、これら無定形化ポリマーは、有機電解液に比べてイ
オン伝導度が低く、常温及びそれ以下の温度において、
充分なイオン伝導性を有しているとは言い難い。
【0008】そこで、更にイオン伝導性を向上すべく、
上記のイオン伝導性ポリマーに有機溶媒を、染みださな
い程度まで含有させたり、イオン伝導体の全体の抵抗を
低くすべく、薄膜化がなされている。これらの高分子固
体電解質を用いた全固体型電池は内部抵抗を抑えること
が可能となる。しかし、上記のような網状に架橋させた
ポリマーは高分子固体電解質としてはイオン伝導性に優
れてはいるが、機械的強度が非常に弱くなる。この結果
電池に使用する際、電池作成時及び充放電時にかかる高
分子固体電解質への圧力により高分子固体電解質が破損
するという問題を新たに生じることとなった。
【0009】この問題を解決するために種々の高分子固
体電解質が提案されている。例えば、特開昭63−10
2104号には、ポリエチレンオキシド等の高分子固体
電解質をポリカーボネートやポリビニルクロライド等か
らなる高分子多孔質膜に含浸させた複合体が挙げられて
いる。また、特開平8−148163号には、ガラスや
セラミックス等の絶縁性物質或いはイオン伝導性物質か
らなる粒子等を高分子固体電解質中に分散させた複合体
が挙げられている。更に、特開平6−140051号や
特開平6−150941号には、ポリビニルアルコール
とポリエチレンオキシドとの混合ポリマーや、ビニルア
ルコールとエチレンオキシドから得られる共重合体が挙
げられている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの高分
子固体電解質は、以下の問題がある。まず、高分子多孔
質膜と高分子固体電解質との複合体は、イオン伝導のも
ととなる電解質成分が減少するためイオン伝導体として
は抵抗が大きくなる。そのため、電池を作製した際に、
電池容量の低下や内部抵抗の増大等を生じる恐れがあっ
た。
【0011】また、機械的強度の高いガラスやセラミッ
クス等の粒子等を高分子固体電解質中に分散させた複合
体は、高分子固体電解質膜を均一に作製するために、分
散させる粒子の粒子径等を揃える工程が別途必要となり
コストが必要であった。更に、ポリビニルアルコールと
ポリエチレンオキシドとの混合ポリマーや、ビニルアル
コールとエチレンオキシドから得られる共重合体からな
る高分子固体電解質は、イオン伝導性、機械的強度に関
しては良好である。しかし、ポリビニルアルコール中の
水酸基はリチウムに対して活性なため、金属リチウム電
池又はリチウムイオン電池に用いた場合、リチウムと水
酸基との反応が起こり、ポリビニルアルコールを電池中
で安定に存在させることが困難である。従って、この高
分子固体電解質をもつ電極は、安定性、サイクル特性に
問題があった。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決すべく
本発明の発明者等は、鋭意研究を行った結果、以下のよ
うな方法により問題点を解決できることを見出し、本発
明に至った。かくして、本発明によれば、エチレンオキ
シド或いはプロピレンオキシド又はこれらの両者を構成
成分とするエーテル系ポリマーとフッ素系ポリマーとの
混合ポリマーに金属塩を含有させたことを特徴とする高
分子固体電解質が提供される。
【0013】また、本発明によれば、金属塩及びフッ素
系ポリマーを有機溶媒に溶解し、得られた溶液にエチレ
ンオキシド或いはプロピレンオキシド又はこれらの両者
を構成成分とするエーテル系ポリマーを最適な温度にて
混合し、混合物にその温度を維持したまま電離性放射線
を照射することにより固化させ、所望により有機溶媒を
除去することを特徴とする高分子固体電解質の製造方法
が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明における高分子固体電解質
は、エチレンオキシド或いはプロピレンオキシド又はこ
れらの両者を構成成分とするエーテル系ポリマー、フッ
素系ポリマー及び金属塩、必要によって非水溶液からな
る。本発明で使用されるエーテル系ポリマーは、エチレ
ンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを構成成分に
含むポリマーであれば特に限定されない。例えばポリエ
チレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレ
ンオキシドとポリプロピレンオキシドの混合物、エチレ
ンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体(ブロック
及びランダム共重合体のいずれでもよい)が挙げられ
る。更に、ポリシロキサンやポリフォスファゼン等から
なる主鎖に、100〜10000程度の低分子量、好ま
しくは100〜1000程度の分子量のエチレンオキシ
ド及び/又はプロピレンオキシドを側鎖として結合させ
た櫛型ポリマーや、エチレンオキシド及び/又はプロピ
レンオキシドの構造を有したものを網状に架橋したポリ
マー(以下、網状架橋体ポリマーとも称する)等が挙げ
られる。
【0015】本発明では特に、ポリエチレンオキシド及
び/又はポリプロピレンオキシドの構造を有した網状架
橋体ポリマーをエーテル系ポリマーとして使用すること
が好ましい。例えば、重量平均分子量が20万以上のポ
リエチレンオキシド又はポリプロピレンオキシドは、非
水溶液(例えば、炭酸エステル系溶媒)中で50℃の熱
を加えると粘度が急激に上昇することが知られている。
しかしながら、一方で炭酸エステル系溶媒中にフッ素系
ポリマーを溶解するにはある程度の熱が必要である。そ
のために、フッ素系ポリマーと上記高分子量ポリマーと
が均一に混合された混合ポリマーを得ることが困難であ
る。よって、必要な熱を加えても上記のような変化が顕
著に見られず、かつ分解も起こらないエーテル系ポリマ
ーを使用することが好ましい。つまり、炭酸エステル系
溶媒中でフッ素系ポリマーと混合する時点でのエーテル
系ポリマーは低分子量であることが好ましい。より好ま
しくは、このポリマーの重量平均分子量は、1000〜
50000の範囲である。
【0016】更に、電離性放射線の照射等の手段により
エーテル系ポリマーを固化させてもよい。この固化は、
例えばエーテル系ポリマーを架橋させて分子量を増大さ
せることで行ってもよい。なお、固化は、高分子固体電
解質が所望の形状になるように、例えば支持体上に塗布
した後に行うことが好ましい。また、このエーテル系ポ
リマーを網状架橋体とすることにより、優れた機械的強
度をもち、また、かなりの量の非水溶液を含有させて
も、非水溶液の浸み出しを防ぐことができる。そのた
め、常温でも優れたイオン伝導度を高分子固体電解質に
付与させることができるので好ましい。従って、上記で
も述べた通り、ポリエチレンオキシド及び/又はポリプ
ロピレンオキシドの構造を有した網状架橋体ポリマーを
エーテル系ポリマーとして使用することが好ましい。
【0017】本発明で使用されるフッ素系ポリマーは、
特定の有機溶媒に溶解し、かつ、可溶な温度がエーテル
系ポリマーを分解又は重合等による急速な化学的変化を
生じない温度範囲にあるポリマーであれば特に限定され
ない。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニ
ル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロ
プロピレン等のホモポリマーが挙げられる。更に、フッ
化ビニリデン、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレ
ン、ヘキサフルオロプロピレン等から選択される複数種
のモノマーを共重合、三元共重合等させたポリマーも含
まれる。本発明では、ポリフッ化ビニリデンが、有機溶
媒との溶解性及び金属塩との複合性がよいことから特に
好ましい。更に、ポリフッ化ビニリデンの重量平均分子
量は1万〜100万の範囲がポリマーの機械的強度が高
く、溶媒にも溶解しやすいため好ましい。特に好ましい
重量平均分子量は、10万〜50万の範囲である。
【0018】エーテル系ポリマーとフッ素系ポリマーの
重量組成は、エーテル系ポリマー100重量部に対し
て、フッ素系ポリマーが10〜100重量部が好まし
い。フッ素系ポリマーが10重量部より少ないと、機械
的強度が十分に得られなく、一方、100重量部より多
いとイオン伝導性がかなり低下するために好ましくな
い。本発明に使用される金属塩は、電池の電解質として
使用しうる金属塩であれば特に限定されない。例えば、
過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リ
チウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiB
4)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(Li
CF3SO3)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)
イミドのリチウム塩(Li(CF3SO22N)、トリ
ス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドのリチウム
塩(Li(CF3SO23C)、過塩素酸ナトリウム
(NaClO4)、ホウフッ化ナトリウム(NaB
4)、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO42)、
ホウフッ化マグネシウム(Mg(BF42)等が挙げら
れる。これらは1種又は2種以上を混合して使用するこ
とができる。
【0019】上記金属塩の重量組成は、混合ポリマー1
00重量部に対して、5〜100重量部が好ましい。金
属塩が5重量部より少ないと、固体電解質中のキャリア
ーイオンが少ないためにイオン伝導度が小さくなるため
好ましくなく、一方、100重量部より多いと、金属塩
が十分に解離されないと共にガラス転移点の上昇により
常温でのポリマーの結晶度がかなり高くなるので好まし
くない。
【0020】上記混合ポリマーには、実用性に優れたイ
オン伝導度を実現する観点から、非水溶液を含ませるこ
とが好ましい。非水溶液としては、例えば、エチレンカ
ーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(P
C)、ブチレンカーボネート(BC)、γ−ブチロラク
トン(BL)、γ−バレロラクトン(VL)等の高誘電
率溶媒、1,2−ジメトキシエタン(DME)、エトキ
シメトキシエタン(EME)、1,2−ジエトキシエタ
ン(DEE)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチ
ルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネー
ト(DEC)、テトラヒドロフラン(THF)、2−メ
チルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、ジオキサン
(DO)等の低粘度溶媒が挙げられる。これらは1種又
は2種以上を混合して使用することができる。特に高誘
電率溶媒である環状カーボネートと低粘度溶媒を所望の
混合比で混合して用いることが、イオン伝導度を高くで
きるので好ましい。高誘電率溶媒としては、プロピレン
カーボネート及び/又はエチレンカーボネートの単独又
は混合溶媒を使用することが、環境に与える影響を低減
できるので好ましい。
【0021】また、低粘度溶媒の中でもジメチルカーボ
ネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EM
C)、ジエチルカーボネート(DEC)のような鎖状カ
ーボネート系溶媒が好ましい。鎖状カーボネート系溶媒
は、高分子固体電解質を全固体電池の電解質として用い
たとき、金属リチウム、或いはリチウムイオンが挿入さ
れた炭素に対して安定性がよいからである。
【0022】非水溶液は、金属塩の濃度が、0.001
〜5.0モル/リットル、好ましくは0.05〜2.0
モル/リットルの範囲になるように加えることが好まし
い。0.001モル/リットルより少ないとキャリアー
イオンの不足によりイオン伝導度が小さくなるため好ま
しくなく、5.0モル/リットルを超えると金属塩が解
離せず、イオン伝導度を低下させることとなるため好ま
しくない。
【0023】また更に、混合ポリマーの重量組成が、非
水溶液100重量部に対して、30〜100重量部であ
ることが好ましい。混合ポリマーの成分が30重量部よ
り少ないと、非水溶液の浸み出しが生じたりして、所望
の形状の高分子固体電解質を形成することが困難であ
る。また、形成できたとしても、十分な機械的強度が得
られない恐れがある。また、混合ポリマーの成分が10
0重量部より多いと、非水溶液を含有させることにより
優れたイオン伝導度を得るという効果がなくなるので好
ましくない。
【0024】本発明の高分子固体電解質の製造方法を以
下で説明する。まず、フッ素系ポリマー及び金属塩を溶
解することが可能な有機溶媒中に、フッ素系ポリマーと
金属塩とを溶解する。ここで、フッ素系ポリマー及び金
属塩が常温で溶解し難い場合は、加熱することにより十
分溶解しておくことが好ましい。
【0025】フッ素系ポリマーが可溶な有機溶媒は、適
当量の金属塩も可溶で、フッ素系ポリマーが溶解する温
度まで昇温させてもあまり揮発せず、更に製膜後は容易
に除去できる有機溶媒を用いることが好ましい。具体的
には、上記非水溶液の他、アセトニトリル、アセトン、
ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセチ
ルアセトン、シクロヘキサノン、エチルメチルケトン、
ジメチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチルフォスフ
ォルアミド、ジエチルレントリアミン等が挙げられる。
また、非水溶液を含有した高分子固体電解質を作製する
ときは、フッ素系ポリマーと金属塩を溶解しうる有機溶
媒が、上記非水溶液のいずれかであることが好ましい。
特に、電極に対して安定な溶媒を用いることが好まし
い。
【0026】また、後の電離性放射線による固化のため
に、光重合開始剤を有機溶媒に加えてもよい。光重合開
始剤としては、ベンゾイル類等のカルボニル化合物、硫
黄化合物、オニウム塩類等が挙げられる。光重合開始剤
は、エーテル系ポリマー100重量部に対して、0.1
〜5.0重量部使用することが好ましい。この後、両ポ
リマーに最適な温度に制御し、エーテル系ポリマーを混
合する。この混合は素早く行うことが好ましい。
【0027】この混合物を基板上に塗布又は、型板上或
いは密封容器内に注入し、上記最適温度下で電離性放射
線を照射して混合物を固化させることにより高分子固体
電解質を製造することができる。ここで混合物の固化
は、エーテル系ポリマーが架橋することにより重合度が
更に上昇することをその原因としている。混合物を塗布
する方法としては、ガラス、アルミ、ステンレス等の基
板上に、ドクターブレード、ローラーコーティング、バ
ーコーダ等を使用して塗布する方法が挙げられる。電離
性放射線には、紫外線(UV)等の活性光線が含まれ
る。
【0028】なお、両ポリマーに最適な温度とは、下限
はフッ素系ポリマーを含む溶媒が固化し始めない温度で
あり、上限はエーテル系ポリマーの分解又は熱重合が起
こらない温度を意味する。更に、高分子固体電解質を成
膜する際に用いる基板、型板或いは密封容器もあらかじ
め上記の最適な温度にしておくことが好ましい。また、
得られた高分子固体電解質は必要に応じ有機溶媒を真空
或いは常圧で乾燥除去してもよい。
【0029】本発明の高分子固体電解質は、一次電池、
二次電池等のいかなる電池にも使用することができる。
また、全固体の一次及び二次電池に使用することが好ま
しい。この内、全固体の二次電池に使用することが好ま
しい。例えば、以下の如き構成の全固体の二次電池に使
用することができる。全固体の二次電池の正極は、正極
活物質、導電材、結着剤、金属塩を含むイオン導電性高
分子固体電解質から構成される複合正極が正極集電体に
担持されたものを使用することができる。
【0030】正極活物質としては、特に限定されず、例
えば、コバルト、ニッケル、バナジウム、マンガン及び
ニオブ等の金属を少なくとも1種含有する金属酸化物が
挙げられる。特に、リチウム含有コバルト酸化物、リチ
ウム含有ニッケル酸化物、リチウムマンガン複合酸化物
が好ましい。また、その他には、二硫化チタン、二硫化
モリブデン等のカルコゲン化合物や、ポリピロール、ポ
リアニリン等の電子導電性高分子化合物等も使用するこ
とができる。
【0031】導電材としては、特に限定されず、例え
ば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェ
ンブラック等の炭素類や、黒鉛粉末(天然黒鉛、人造黒
鉛)、金属粉末、金属繊維等が挙げられる。結着材とし
ては、特に限定されず、ポリテトラフルオロエチレン、
ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー、ポリエチ
レン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエン
ターポリマー等のポリオレフィン系ポリマー、スチレン
ブタジエンゴム等が挙げられる。
【0032】金属塩を含むイオン導電性高分子固体電解
質には、本発明の高分子固体電解質を使用することがで
きる。集電体としては、特に限定されず、金属単体、合
金、炭素等が用いられる。例えば、チタン、アルミニウ
ム、ステンレス鋼等を使用できる。次に、全固体の二次
電池の負極は、負極活物質、結着剤、金属塩を含むイオ
ン導電性高分子電解質から構成される複合負極が負極集
電体に担持されたものを使用することができる。
【0033】負極活物質としては、特に限定されない
が、リチウム、リチウム合金及び/又はリチウムを吸蔵
・放出可能な物質を用いることが好ましい。例えば、リ
チウム金属、リチウム/アルミ合金、リチウム/スズ合
金、リチウム/鉛合金、ウッド合金等リチウム合金類、
更に電気化学的にリチウムイオンをドープ・脱ドープで
きる物質、例えば、導電性高分子(ポリアセチレン、ポ
リチオフェン、ポリパラフェニレン等)、熱分解炭素、
触媒の存在下で気相熱分解された熱分解炭素、ピッチ、
コークス、タール等から焼成した炭素、セルロース、フ
ェノール樹脂等の高分子より焼成した炭素等や、リチウ
ムイオンのインターカレーション/デインターカレーシ
ョンの可能な黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛
等)、リチウムイオンをドープ・脱ドープできる無機化
合物(WO2、MoO2等)等の物質単独或いはこれらの
複合体を用いることができる。
【0034】結着材としては、特に限定されず、ポリテ
トラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ
素系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレ
ン−プロピレン−ジエンターポリマー等のポリオレフィ
ン系ポリマー、スチレンブタジエンゴム等が挙げられ
る。金属塩を含むイオン導電性高分子電解質には、本発
明の高分子固体電解質を使用することができる。
【0035】集電体としては、特に限定されず、金属単
体、合金等が用いられる。例えば、銅、ニッケル、ステ
ンレス鋼等が挙げられる。ここで電池の形状は、特に限
定されず、コイン、ボタン、シート、円筒、角等いずれ
にも適用できる。本発明の構成を採用することにより、
リチウム金属或いはリチウムを吸蔵又は挿入しうる炭素
材料等に対して安定で、広い温度範囲にわたって優れた
イオン伝導度及び安定性を示す高分子固体電解質を得る
ことが可能となる。
【0036】更に、電池において高分子固体電解質の機
械的強度が高くなると、電池作製時及び充放電時に生じ
る圧力による電解質の破損の影響がなくなる。これによ
り、イオン伝導体の膜厚をかなり薄くすることができ、
なおかつセパレーターとしての機能を十分に果たすこと
かできるため、液体電解質を用いた電池のようにあえて
ポリエチレン製不繊布等を電極間に挟む必要性がなくな
る。また膜厚の薄い高分子固体電解質はその分だけ電解
質に生じる抵抗を抑えることができる。
【0037】更に電池を作製する際には、一定の容積内
に全素子を収める必要がある。このときにより薄い高分
子固体電解質を用いると、この電解質が占める容積を抑
えられる。したがって、相対的に電極の活物質の容積を
大きくすることができ、電池エネルギー密度を大きくす
ることがてきる。本発明の高分子固体電解質は機械的強
度が大きいので、電池性能も向上させることができる。
【0038】以上のことから、本発明の高分子固体電解
質によれば、高エネルギー密度で、広い温度範囲で優れ
た特性を持ち、繰り返し充放電寿命が長い全固体電池を
提供することが可能となる。
【0039】
【実施例】以下、実施例及び比較例により発明を具体的
に説明する。なお、実施例及び比較例において、イオン
伝導度及び機械的引っ張り強度は次のように測定した。 (イオン伝導度)測定する試料の両サイドをニッケルの
ブロッキング電極で挟み、交流複素インピーダンス法に
より、20℃におけるイオン伝導度を測定した。 (機械的引っ張り強度)引っ張り強度試験機にて、既知
の大きさをもつ測定試料の両端を挟んで、およそ5cm
/分の低速で引っ張ってゆき、その試料が切れた時点に
おける荷重を測定した。
【0040】実施例1〜3 過塩素酸リチウムを1モル/リットルの濃度で溶解させ
たプロピレンカーボネート溶液100重量部に、重量平
均分子量約30万のポリフッ化ビニリデン6.7重量部
を、約120℃の温度の下で十分溶解させた。得られた
溶液の温度を約105℃まで下げ、その中に重量平均分
子量約5千のエーテル系ポリマー(ポリエチレンオキシ
ドジアクリレート)を26.7重量部添加し、攪拌する
ことにより混合した。この溶液を型板上に流し込み、U
V照射してエーテル系ポリマーを架橋させることにより
実施例1の高分子固体電解質を得た。
【0041】ポリフッ化ビニリデン13.3重量部及び
エーテル系ポリマー20.0重量部(実施例2)、ポリ
フッ化ビニリデン16.7重量部及びエーテル系ポリマ
ー16.7重量部(実施例3)とすること以外は、実施
例1と同様の方法で、高分子固体電解質を得た。上記実
施例1〜3の高分子固体電解質のポリフッ化ビニリデン
の添加量に対するイオン伝導度と機械的引っ張り強度の
関係を図1に示す。
【0042】また、実施例1〜3の高分子固体電解質は
破壊しない程度まで圧力をかけてもプロピレンカーボネ
ート(非水溶液)が浸み出さなかった。更に、上記実施
例1〜3の高分子固体電解質を金属リチウムと接合して
30日間保持したが、高分子固体電解質及びリチウム金
属に化学的変化はみられなかった。従って、金属リチウ
ムとの化学的安定性に優れていることがわかった。
【0043】比較例1 過塩素酸リチウムを1モル/リットル濃度で溶解させた
プロピレンカーボネート溶液100重量部に、重量平均
分子量約5千のエーテル系ポリマー(ポリエチレンオキ
シドジアクリレート)33重量部を添加し、攪拌するこ
とにより混合した。この溶液を型板上に流し込み、UV
照射して架橋させることにより高分子固体電解質を得
た。この高分子固体電解質のイオン伝導度と機械的引っ
張り強度の関係を図1に示す。
【0044】図1より、ポリフッ化ビニリデンの添加量
が増えるごとに機械的引っ張り強度が上昇していること
がわかる。また、ポリフッ化ビニリデンの添加量を増や
しても、イオン伝導度は殆ど変化しないことがわかる。
従って、ポリフッ化ビニリデンの添加により、イオン伝
導度を変化させることなく機械的引っ張り強度を向上さ
せることができる。
【0045】比較例2 過塩素酸リチウムを1モル/リットル濃度で溶解させた
プロピレンカーボネート溶液100重量部に、重量平均
分子量約30万のポリフッ化ビニリデン33重量部を、
120〜130℃の温度の下で十分溶解させた。得られ
た溶液を型板上に流し込み自然冷却することにより高分
子固体電解質を得た。この高分子固体電解質は軽く圧力
をかけるだけで液の浸み出しが生じた。そのため、電池
用の高分子固体電解質として使用することは不可能であ
った。
【0046】比較例3 重量平均分子量2.2万のポリビニルアルコール100
重量部と重量平均分子量50万のポリエチレンオキシド
100重量部の混合物をプレス加工して膜厚0.5mm
のフィルムを形成した。このフィルムを過塩素酸リチウ
ムが1モル/リットル濃度に溶解したプロピレンカーボ
ネート溶液に50℃で24時間浸漬した。この後、フィ
ルムを乾燥することにより高分子固体電解質を得た。こ
のフィルムと金属リチウムとを接合して10日間保持し
たところ金属リチウムが化学的反応により変化している
のが見られた。
【0047】以上の実施例1〜3及び比較例1〜3によ
り、本発明によれば、高いイオン伝導度をもち、なおか
つ機械的強度に優れた高分子固体電解質が得られ、化学
的或いは電気化学的安定性及び長期信頼性にも優れてい
ることがわかった。更に、エーテル系ポリマーとして網
状架橋体ポリマーを用いると製造が非常に容易であり、
機械的強度も十分に維持することができた。また、溶媒
100重量部に対してポリマーの重量比が30重量部程
度というような多量の有機溶媒を含有しても液の浸み出
しが起こらなかった。そのため電気化学素子、特に電池
において内部抵抗を低下でき、かつ、信頼性も向上させ
ることができた。
【0048】
【発明の効果】本発明の高分子固体電解質は、エチレン
オキシド及び/又はプロピレンオキシドを構成成分とす
るエーテル系ポリマーとフッ素系ポリマーとの混合ポリ
マーからなる。従って、優れたイオン伝導性を保ちつつ
機械的強度を向上させることができる。更に、本発明の
高分子固体電解質を用いた電池は、薄型で内部抵抗が小
さく、化学的或いは電気化学的安定性及び長期信頼性に
優れている。
【0049】更に、この混合ポリマーに非水溶液を含有
させることにより、より実用性に優れたイオン伝導度を
もつ高分子固体電解質を得ることができ、しかも十分な
機械的強度も維持することができる。また、この電解質
の製造方法はエーテル系ポリマーとフッ素系ポリマーを
混合し、電離性放射線を照射するだけであり、特に共重
合体にする必要はないため簡単な工程で容易に作製でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポリフッ化ビニリデンの添加量に対するイオン
伝導度と機械的引っ張り強度の関係を示すグラフであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 湊 和明 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エチレンオキシド或いはプロピレンオキ
    シド又はこれらの両者を構成成分とするエーテル系ポリ
    マーとフッ素系ポリマーとの混合ポリマーに金属塩を含
    有させたことを特徴とする高分子固体電解質。
  2. 【請求項2】 フッ素系ポリマーが、エーテル系ポリマ
    ー100重量部に対して、10〜100重量部混合され
    てなる請求項1の高分子固体電解質。
  3. 【請求項3】 混合ポリマーに非水溶液が含有されてな
    る請求項1又は2の高分子固体電解質。
  4. 【請求項4】 金属塩が、リチウム塩からなる請求項1
    〜3のいずれか1つの高分子固体電解質。
  5. 【請求項5】 エーテル系ポリマーが、架橋体である請
    求項1〜4のいずれかの高分子固体電解質。
  6. 【請求項6】 フッ素系ポリマーが、非水溶液に可溶で
    ある請求項3〜5のいずれかの高分子固体電解質。
  7. 【請求項7】 フッ素系ポリマーが、ポリフッ化ビニリ
    デンである請求項6の高分子固体電解質。
  8. 【請求項8】 金属塩及びフッ素系ポリマーを有機溶媒
    に溶解し、得られた溶液にエチレンオキシド或いはプロ
    ピレンオキシド又はこれらの両者を構成成分とするエー
    テル系ポリマーを混合し、混合物に電離性放射線を照射
    することにより固化させ、所望により有機溶媒を除去す
    ることを特徴とする高分子固体電解質の製造方法。
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