JPH06234216A - インク噴射装置 - Google Patents

インク噴射装置

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JPH06234216A
JPH06234216A JP5022571A JP2257193A JPH06234216A JP H06234216 A JPH06234216 A JP H06234216A JP 5022571 A JP5022571 A JP 5022571A JP 2257193 A JP2257193 A JP 2257193A JP H06234216 A JPH06234216 A JP H06234216A
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JP
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ink
manifold
ink chamber
cover plate
chamber
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JP5022571A
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English (en)
Inventor
Kimei Chiyou
棄名 張
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Brother Industries Ltd
Original Assignee
Brother Industries Ltd
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)
  • Ink Jet (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 インクに与える圧力を必要な期間にわたって
維持し、かつインクの流入抵抗を減少し、印字品質が良
好であるインク噴射装置を提供すること。 【構成】 インクを噴出させるにあたってインク室内の
圧力を上昇させるが、その上昇した圧力が維持されるの
は、マニホールトからの負の圧力波がノズルに到達する
までの間で、その時間が長いほど形成するインク滴の体
積が大きくなる。印字に必要なインク滴体積を得るに
は、マニホールド前部側面とノズルプレートとの距離が
3mm以上にしなければならない。また、インクがマニ
ホールドからスムーズにインク室に流れるためには、マ
ニホールド前部側面とインク室の後部端面との距離が
0.2mm以上にしなければならない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インク噴射装置に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】今日、これまでのインパクト方式の印字
装置にとってかわり、その市場を大きく拡大しつつある
ノンインパクト方式の印字装置のなかで、原理が最も単
純で、かつ多階調化やカラー化が容易であるものとし
て、インクジェット方式の印字装置が上げられる。なか
でも印字に使用するインク滴のみを噴射するドロップ・
オン・デマンド型が、噴射効率の良さ、ランニングコス
トの安さなどから急速に普及している。
【0003】ドロップ・オン・デマンド型として特公昭
53−12138号公報に開示されているカイザー型、
あるいは特公昭61−59914号公報に開示されてい
るサーマルジェット型がその代表的な方式としてある。
このうち、前者は小型化が難しく、後者は高熱をインク
に加えるためにインクの耐熱性に対する要求が必要とさ
れ、それぞれに非常に困難な問題を抱えている。
【0004】以上のような欠陥を同時に解決する新たな
方式として提案されたのが、特開昭63−252750
号公報に開示されているせん断モード型である。
【0005】図16に示すように、上記せん断モード型
のインク噴射装置1は、圧電セラミックスプレート2と
カバープレート10とノズルプレート14と基板41と
から構成されている。
【0006】その圧電セラミックスプレート2には、ダ
イヤモンドブレード等により切削加工され、複数の溝3
が形成されている。また、その溝3の側面となる側壁6
は矢印5の方向に分極されている。それらの溝3は同じ
深さであり、かつ平行である。それら溝3の深さは圧電
セラミックスプレート2の一端面15に近づくにつれて
徐々に浅くなっており、一端面15付近には浅溝7が形
成されている。そして、溝3の内面には、その両側面の
上半分に金属電極8がスパッタリング等によって形成さ
れている。また、浅溝7の内面には、その側面及び底面
に金属電極9がスパッタリング等によって形成されてい
る。これにより、溝3の両側面に形成された金属電極8
は浅溝7に形成された金属電極9によって連結されてい
る。
【0007】次に、カバープレート10は、セラミック
ス材料または樹脂材料等から形成されている。そして、
カバープレート10には、研削または切削加工等によっ
て、インク導入口16及びマニホールド18が形成され
ている。そして、圧電セラミックスプレート2の溝3加
工側の面とカバープレート10のマニホールド18加工
側の面とがエポキシ系接着剤20(図18参照)によっ
て接着される。従って、インク噴射装置1には、溝3の
上面が覆われて横方向に同じ間隔を有する複数のインク
流路であるインク室4(図18参照)が構成される。図
18に示すように、そのインク室4は長方形断面の細長
い形状であり、全てのインク室4内には、インクが充填
される。
【0008】図16に示すように、圧電セラミックスプ
レート2及びカバープレート10の端面に、各インク室
4の位置に対応した位置にノズル12が設けられたノズ
ルプレート14が接着されている。このノズルプレート
14は、ポリアルキレン(例えばエチレン)、テレフタ
レート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテ
ルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネイト、
酢酸セルロース等のプラスチックによって形成されてい
る。
【0009】そして、圧電セラミックスプレート2の溝
3の加工側に対して反対側の面には、基板41が、エポ
キシ系接着剤等によって接着されている。その基板41
には各インク室4の位置に対応した位置に導電層のパタ
ーン42が形成されている。その導電層のパターン42
と浅溝7の底面の金属電極9とは、ワイヤボンディング
によって導線43で接続されている。
【0010】次に、制御部のブロック図を示す図17に
よって、制御部の構成を説明する。基板41に形成され
た導電層のパターン42は各々個々にLSIチップ51
に接続されている。また、クロックライン52、データ
ライン53、電圧ライン54及びアースライン55もL
SIチップ51に接続されている。LSIチップ51
は、クロックライン52から供給される連続したクロッ
クパルスに基づいて、データライン53上に現れるデー
タに応じて、どのノズル12からインク滴の噴射を行う
べきかを判断する。そして、駆動するインク室4内の金
属電極8に導通する導電層のパターン42に、電圧ライ
ン54の電圧Vを印加する。また、駆動するインク室4
以外の金属電極8に導通する導電層のパターン42には
アースライン55の電圧0Vを印加する。
【0011】次に、図18,図19によって、インク噴
射装置1の動作を説明する。LSIチップ51が、所要
のデータに従って、インク噴射装置1のインク室4bか
らインクの噴出を行なうと判断する。すると、金属電極
8eと8fとに正の駆動電圧Vが印加され、金属電極8
dと8gとが接地される。図19に示すように、側壁6
bには矢印13bの方向の駆動電界が発生し、側壁6c
には矢印13cの方向の駆動電界が発生する。すると、
駆動電界方向13b及び13cは分極方向5とが直交し
ているため、側壁6b及び6cは、圧電厚みすべり効果
により、この場合、インク室4bの内部方向に急速に変
形する。この変形によってインク室4bの容積が減少し
てインク圧力が急速に増大し、圧力波が発生して、イン
ク室4bに連通するノズル12(図16)からインク滴
が噴射される。
【0012】また、駆動電圧Vの印加が停止されると、
側壁6b及び6cが変形前の位置(図18参照)に徐々
に戻るためインク室4b内のインク圧力が徐々に低下す
る。すると、図示しないインクタンクからインク供給口
16(図16)及びマニホールド18(図16)を通し
てインク室4b内にインクが供給される。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】上述した構成のインク
噴射装置1では、図14において、インク室4内の圧力
を上昇させてインク滴を噴射させるとき、インクをノズ
ル12から押し出すと同時に、マニホールド18からも
インク導入口16へインクが逆流し、マニホールド18
付近の圧力が急減小して、負の圧力波が発生する。この
負の圧力波がノズル12に到達すると、ノズル12から
のインク流出は停止するが、図中のyつまりマニホール
ド18の前部側面とノズルプレート14との距離が短い
ほど上記負の圧力波がノズル12に到達する時間が短く
なる。このため、インクの流出が速く停止し、結果とし
てインク滴の体積が減少し、印字品質が悪くなるといっ
た問題があった。また、yを大きくしようとして、同図
中のマニホールドの前部側面とインク室4の後部端面と
の距離xを極端に小さくすると、インクがマニホールド
からインク室への流入が困難になり、必要な量のインク
が供給できず、結果としてインク滴の体積が減少し、印
字品質が悪くなるといった問題になる。
【0014】本発明は、上述した問題点を解決するため
になされたものであり、インク滴を噴射するに必要な圧
力を比較的長い時間にわたって保持し、かつマニホール
トからインク室内へのインクの流入はスムーズであり、
印字品質が良好であるインク噴射装置を提供することを
目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に本発明では、各々が前端部と後端部とを有する複数の
インク室と、前記インク室にインクを導入するために設
けられ、インク室の前端部に近い側に前部側面を有する
マニホールドと、前記インク室の前端部に設けられたノ
ズルとを有し、前記インク室内のインクに圧力を与えて
前記ノズルからインクを噴射するインク噴射装置におい
て、前記マニホールドの位置は、そのマニホールドの前
部側面と前記インク室の後端部との距離が0.2mm以
上、かつマニホールドの前部側面と前記ノズルとの距離
が3mm以上である。
【0016】また、前記マニホールドの位置は、そのマ
ニホールドの前部側面と前記インク室の後端部との距離
が0.2mm以上、かつマニホールドの前部側面と前記
ノズルのインク室側の開口部との距離が3mm以上であ
る。
【0017】
【作用】上記の構成を有する本発明のインク噴射装置
は、インク滴を噴射するに必要な圧力を比較的長い時間
にわたって保持でき、かつマニホールトからインク室内
へのインク流入抵抗が小さい。
【0018】
【実施例】以下、本発明を具体化した一実施例を図面を
参照して説明する。尚、従来技術と同一の部材には同一
の符号を付し、その説明を省略する。
【0019】図1は本実施例のインク導入口16とマニ
ホールド18を拡大して示す図である。図1(a)はイ
ンク噴射装置の側面からみた時の断面であり、図1
(b)は図1(a)のA−Aの断面である。
【0020】図1(b)に示すように、インク噴射装置
1は、圧電セラミックスプレート2とカバープレート1
0とを有している。その圧電セラミックスプレート2に
は、複数の溝3と、それら溝3を隔てる側壁6とが形成
されている。また、カバープレート10には、インク導
入口16とマニホールド18とが形成されている。そし
て、圧電セラミックスプレート2とカバープレート10
とが接着剤20によって接着されて、インク流路である
インク室4が構成される。
【0021】図1(a)に示すように、インクは矢印3
0のようにインクタンクからインク供給チューブ(共に
図示しない)を経て、直径dのインク導入口16に流入
し、マニホールド18によって各インク室4に供給され
る。図に示したようにマニホールド18はインク導入口
16に比べ断面積が大きいので、インク導入口16から
マニホールド18に出たインクは噴流状態になる。従っ
て、インクには流路の急拡大による拡流損失が生じる。
一方、インク導入口16からマニホールド18に流入す
るインクに生じる全流動損失は、上記噴流の状態によっ
て変化する。噴流が層流状態であれば全流動損失は上記
拡流損失に等しい。また、噴流が乱流状態であれば全流
動損失は上記拡流損失に乱流損失を加えたものになる。
【0022】全流動損失を減らし、且つ細かな変動を含
まない安定したインクの流れを得るためには、噴流の状
態を層流に保たなければならない。そのためには、流体
の流れの状態を決める重要なパラメータであるレイノル
ズ数Reを周知のように約30以下に押さえなければな
らない(著者:生井武文,井上雅弘、出版社:理工学
社、「粘性流体の力学」のP206に記載)。そして、
レイノルズ数ReはRe=ud/νという式で与えられ
ている。上記式においてuはインク導入口16から出る
インクの速度、dは図示インク導入口16の直径、νは
インクの動粘性係数である。一方、インクの単位時間の
消費量が決まっていれば、上記流速uはインク導入口1
6の直径dの2乗に反比例するから、図2に示すように
レイノルズ数Reがインク導入口16の直径dに反比例
することになる。
【0023】本実施例では、単位時間あたりの最大イン
ク消費量を25個のノズルから体積40plのインク滴
が5kHzの周波数で同時に噴射するものとして算出し
た。またインクの動粘性係数νはトリプロピレングリコ
ールモノメチルエーテル(TPM)をベースとした顔料
インクの常温における値10cpsを用いた。そして、
インク導入口16の直径dの値を変化させてレイノルズ
数Reを求めると、図2に示す実線32の関係が得られ
た。
【0024】ここで、前記レイノルズ数Reはインク導
入口16の直径d以外にもインクの単位時間の消費量と
インクの動粘性係数νの影響を受ける。しかし、前者は
印字速度および鮮明度を保つために小さくできない、後
者はインク滴の安定噴射、特に不必要なインク小滴いわ
ゆるサテライトの発生防止という面から大幅に増加させ
ることができない。従って、印字速度やインク粘性の変
化に対応して、前記レイノルズ数Reとインク導入口径
dの関係が図2に示す破線34のように右上方にシフト
することがあっても、最小限の印字速度およびインクの
粘性を用いて算出された実線32からさらに左下へシフ
トすることはない。
【0025】図2に示す実線32の関係を利用してイン
ク導入口16の直径dの下限を求めると、前記噴流の状
態を乱流にならないようにするためには、すなわちレイ
ノルズ数Reを30以下にするためには、インク導入口
16の直径dが大きいほどよいが少なくとも0.2mm
以上にしなければならない。
【0026】以上説明したように、インク導入口16の
直径dを0.2mm以上に形成すれば、インク導入口1
6からマニホールド18に出たインクの流れは層流状態
である。このため、インク導入口16からマニホールド
18に流入するインクに生じる全流動損失は上記拡流損
失に等しいので、全流動損失を最小にすることができ、
マニホールド内のインクの流れに乱れが生じない。よっ
て、マニホールド内のインクの圧力は一定であるので、
インク室4内のインクの圧力が一定であり、噴射される
インク滴の体積や飛翔速度が一定である。従って、印字
品質が良好である。また、供給されるべきインク量がイ
ンク室4に供給されるので、噴出されるインク滴の体積
が所定の体積となり印字品質が良好である。
【0027】尚、本実施例では、インク導入口16の形
状が円形であったので、レイノルズ数Reを30以下と
してインク導入口16の大きさを求めたが、インク導入
口16の形状が四角形や楕円等の形状の場合には、実験
をしてインクが乱流にならないレイノルズ数Reを求め
てインク導入口16の大きさを求めればよい。
【0028】前記本実施例のインク噴射装置1では、電
極8に印加する駆動電圧に対してインク室4内に発生す
る圧力の比率が大きく、また、インク室4へ流れるイン
クも安定し、受ける抵抗も小さい。このため、低い駆動
電圧でインク室4内に高い圧力を発生することができ、
文字や画像を形成するのに十分な速度及び体積のインク
滴を噴射することができる。このインク噴射装置1を用
いた実験によると、20〜50ボルト程度の低い駆動電
圧において、インク液滴は速度が3〜8m/秒、体積が
30〜90pl程度で安定して噴射でき、駆動回路の低
コスト化、小型化ができ、インク噴射装置1全体を低コ
スト化、小型化することができる。
【0029】次に、マニホールド18の深さについて説
明する。
【0030】図3(a)に示すように、インクは矢印3
0のようにインクタンクからインク供給チューブ(共に
図示しない)を経て、インク導入口16に流入し、マニ
ホールド18によってインク室4に供給される。この
時、マニホールド18では、図3(b)に示す各矢印3
1のようにインクが流れ、各インク室4に供給される。
インク室4a,4bはインク導入口16に直接面してい
るので、インク室4a,4b内のインクの圧力は、イン
ク導入口16から流入されたインクの噴流によって変化
する。
【0031】図4はインク噴流がインク導入口16から
出て、インク導入口16に直接面しているインク室4
a,4bに流入するときの中心速度の変化を示す。この
図4における横軸はマニホールド18の深さh、縦軸は
噴流の中心速度である。本実施例の実験では、インク導
入口16の直径dの値を3種類用いて、単位時間あたり
の最大インク消費量を20個のノズルから体積40pl
のインク滴が5kHzの周波数で同時に噴射するとして
実験した。図4の実線35,36,37はそれぞれイン
ク導入口16の直径dが0.7,1.0,1.4mmを
した時の実験結果である。
【0032】図4から明らかなように、マニホールド1
8の深さhが0の時、インク導入口16からインクが出
る時の噴流の中心速度uは最も大きい。この時、噴流の
中心速度uは、周知の通り、インク導入口16の直径d
の2乗に反比例した値である。そして、hが増大すると
uは比較的速く減少するが、hが約0.2mm以上、特
にhが0.3mm以上になると、どのdの場合もuが十
分減少し、それ以上の減少もほとんどない。尚、インク
導入口16の直径dが0.2mm以上であれば、図4と
同様の傾向となる。
【0033】ここで、噴流の流速は単位時間あたりのイ
ンク消費量に比例し、インク消費量は印字パターンによ
って変化するので、インク導入口16から流入されるイ
ンクの噴流の影響を十分減衰できる程度のマニホールド
18の深さhをとらないと、印字パターンによってイン
ク導入口16に直接面しているインク室4a,4b内の
インクの圧力が変化し、安定したインク滴の噴射ができ
ない。
【0034】以上の説明した結果から、本実施例のイン
ク噴射装置1では、インク導入口16から流れ込んだイ
ンクを前記各インク室4に分配するマニホールド18の
深さが0.3mm以上、少なくとも0.2mm以上であ
る。
【0035】このように、本実施例のマニホールド18
では、深さが0.2mm以上、好ましくは0.3mm以
上に形成されているので、各インク室4へ流れるインク
が安定し、かつ均一となる。そのため、電極8に駆動電
圧を印加したときに各インク室4内に発生する圧力が均
一で、文字や画像を形成するのに十分な速度及び均一な
体積のインク滴を噴射することができる。そして、この
インク噴射装置1を用いた実験によると、20〜50ボ
ルト程度の駆動電圧において、インク滴は速度が3〜8
m/秒、体積が30〜90pl程度で安定かつ均一に噴
射できる。また、各インク室4へ流れるインクが安定
し、かつ均一であって、駆動回路には特に補正する機能
を備える必要性がなく、駆動回路の簡素化、小型化がで
き、インク噴射装置1の安定化、低コスト化、小型化す
ることができる。
【0036】次に、マニホールド18の断面積とインク
室4の全断面積との関係について説明する。
【0037】図5(a)に示すように、インクは矢印3
0のようにインクタンクからインク供給チューブ(共に
図示しない)を経て、インク導入口16に流入し、マニ
ホールド18によってインク室4に供給される。この
時、マニホールド18では、図5(b)に示す各矢印3
1のようにインクが流れ、各インク室4に供給される。
【0038】ここで、マニホールド18は図示のように
断面積S1=w×hを有する長方形の流路である。ま
た、インク室4は各々断面積S2=b×Hを有する長方
形の流路である。そして、インクがこれらの流路の中を
流れるときは流動抵抗を受ける。この流動抵抗は一般的
に流路の長さに比例して増大し、流路の断面積の減少に
つれて急に増大する。マニホールド18及びインク室4
のような長方形の断面を持つ場合は、断面の大きさが変
化したときに、縦横比がほぼ一定に保たれていれば、イ
ンクの流路単位長さの受ける流動抵抗がほぼその流路の
断面積の2乗に反比例し、例えば図6に示すようにな
る。但し、長方形の縦と横との長さが極めて大きく異な
るときは、図6のようにはならない。上記マニホールド
18及びインク室4の断面の縦と横との長さが極めて大
きく異ならないとすると、双方の断面積と流動抵抗との
関係は図6とほぼ同じ傾向を示すことになる。
【0039】一方、インク供給口16から流入したイン
クは、図示しないノズルにたどり着くまではマニホール
ド18とインク室4の両方の流動抵抗を受ける。すなわ
ち、インクの受ける全抵抗はマニホールド18によるも
のとインク室4によるものとをたし合わせたものにな
る。図5(b)に示したように、例えばインク室4cに
流入するインクはインク室4aに流入するインクより、
マニホールド18内で流れる距離が長いので、インク室
4cに流入するインクはインク室4aに流入するインク
より大きい流動抵抗を受ける。更に、インク導入口16
から離れた場所のインク室4まで流れるインクは、更に
大きい流動抵抗を受ける。
【0040】従って、各インク室4へ流入するインクを
均一化するためには、インク室4の位置によらず流動抵
抗が同じようになるマニホールドを設けるか、マニホー
ルド18内の流動抵抗がインク室4内の流動抵抗に比べ
て無視できるぐらいの断面積を持つマニホールド18を
設けれるかである。しかし、前者は一般的にマニホール
ド18の形状や加工を複雑にするもので非実用的である
ので、ここでは後者について説明する。
【0041】図7は本実施例におけるインクの全流動抵
抗の変化を示すものであり、横軸にはマニホールド18
と全インク室4との断面積比S1/SAをとった。全イ
ンク室4の断面積SAは各々のインク室4の断面積S2
にインク室4の数をかけたものである。本実施例の実験
では、単位時間あたりの最大インク消費量を50個のノ
ズルから体積40plのインク滴が2.5kHzの周波
数で同時に噴射するとして算出した。またインクの動粘
性係数νはトリプロピレングリコールモノメチルエーテ
ル(TPM)をベースとした顔料インクの常温における
値10cpsを用いた。インク室4の寸法は高さH=4
00μm、幅b=80μm、長さ=12mmとした。
【0042】図7の実線38はインクの全流動抵抗を示
す曲線であり、水平に引かれている点線39はマニホー
ルド18の抵抗がなく、インク室4の抵抗のみを示す線
である。全流動抵抗は前記断面積比S1/SAが約1の
ところを境に図中左側つまり断面積比が小さくなるにつ
れて急激に増大している。また、図中右側つまり断面積
比が大きくなると、前記全流動抵抗が急に点線39で示
すインク室4のみの抵抗値に近づく。つまり、断面積比
S1/SAが1以下になると、マニホールド18におけ
る流動抵抗が急増し、断面積比S1/SAが1以上にな
るとマニホールド18における流動抵抗の割合が急に減
少する。
【0043】従って、マニホールド18の流動抵抗を減
少するためには断面積比S1/SAを1以上にする必要
がある。また、本実施例のような構造を持つインク噴射
装置においては、隣合うインク室4から同時に噴射する
ことはないから、見かけ上のインク室4の断面積が半分
になる。それを考慮にいれても、前記断面積比S1/S
Aを0.5以上にする必要がある。
【0044】一方、前記断面積比S1/SAを大きくと
るのは流動抵抗を減少させる意味ではよいことである
が、断面積比S1/SAが約5以上にするとマニホール
ド18による流動抵抗がインク室4によるものの1%以
下になるから、ほぼ無視できる。従って、断面積比が約
5以上にしても、インク噴射装置1が大きくなるだけ
で、流動抵抗を減少させる効果がほとんど期待できな
い。インク噴射装置1の小型化やコストの面から、上記
断面積S1/SAの比が5までが妥当である。
【0045】尚、本実施例の実験において、インク室4
の寸法は高さH=400μm、幅b=80μm、長さ=
12mmとしたが、インク室4の寸法を変化させた場合
でも、図7の圧力損失を示す曲線38が横軸を基準に、
図中の破線38a,38bで示すように縦方向に伸縮す
るだけで、上記好適な断面積比S1/SAは変わらな
い。
【0046】以上の結果から、本実施例のインク噴射装
置1では、インク導入口16から流れ込んだインクを前
記各インク室4に分配するマニホールド18の断面積が
前記インク室4の全断面積の0.5から5倍程度であ
る。
【0047】このように、マニホールド18の断面積が
インク室4の全断面積に対して0.5から5倍程度に形
成されているので、供給されるインクがマニホールド1
8によってほぼ均一に各インク室4に分配され、しかも
受けいる抵抗も小さい。このため、インクの導入がスム
ーズで、低い駆動電圧でインク室4内に高い圧力を発生
することができ、文字や画像を形成するのに十分な速度
及び均一な体積のインク滴を噴射することができる。こ
のインク噴射装置を用いた実験によると、20〜50ボ
ルト程度の低い駆動電圧において、インク滴は速度が3
〜8m/秒、体積が30〜90pl程度で安定して噴射
でき、駆動回路の簡素化、小型化ができ、インク噴射装
置全体を低コスト化、小型化することができる。
【0048】次に、本実施例のインク室4を構成する溝
3の深さ及びカバープレート10の厚さについて説明す
る。
【0049】図8はインク噴射装置1の一部の断面図を
示し、溝3、側壁6、金属電極8及びカバープレート1
0の形状を表す。圧電セラミックスプレート2に形成さ
れた溝3の幅をb、溝3の深さをHとする。こうする
と、上述したように側壁6の上半分に金属電極8が形成
されているので、金属電極8の上端から下端までの長さ
は溝8の深さの半分H/2となる。また圧電セラミック
スプレート2と同一の材料で作成されたカバープレート
10の厚さをkとする。
【0050】安定した印字に必要とするインク滴の速度
を得るための、インク室4である溝3の深さHとカバー
プレート10の厚さkとの関係を調べた。
【0051】実験に使用した圧電セラミックスプレート
2は側壁6の幅が80μm、溝3の幅bが80μm、深
さHが0.2mmのものと、溝3の深さHが0.4,
0.6mmのものとの3種類のであった。圧電セラミッ
クスプレート2及びカバープレート10の材料にはチタ
ン酸ジルコン酸鉛(PZT)系圧電セラミックス、金属
電極8には真空蒸着によって形成した厚さ1μm程度の
アルミニウム膜、接着剤20にはエポキシ系接着剤を使
用した。また、カバープレート10は0.25,0.
5,1,2mmの4種類の厚さのものを用意して、前記
3種類の溝3の深さHを持つ基板と組み合わせて計12
種類のインク噴射装置1を組み立てた。インクはトリプ
ロピレングリコールモノメチルエーテル(TPM)をベ
ースとした顔料インクで、金属電極8に印加する駆動電
圧は40ボルトである。インクの噴射速度は、駆動電圧
パルスと同期して発光ダイオードを発光させて、インク
滴の静止像を形成し、駆動電圧パルスに対する発光のタ
イミングをずらした場合のインク滴静止像の移動距離か
ら算出した。
【0052】次に、前記各種のインク噴射装置1を用い
て、インク滴の飛翔速度を測定した。測定結果は図9に
示し、横軸は溝3の深さHとカバープレートの厚さkと
の積H×kであり、縦軸はインク滴の飛翔速度である。
図中の実線40,42及び44はそれぞれ溝の深さHが
0.2,0.4及び0.6mmのインク噴射装置1に対
応する。
【0053】図9からわかるように、溝3の深さHが増
大するとインク滴の飛翔速度が増加するが、いずれの場
合もH×kが約0.2以下になると飛翔速度が急に小さ
くなってしまう。その理由は、図8において、側壁6が
インク噴射の時に破線のように変形すると、カバープレ
ート10は微少ながら図中の破線で書かれたように変形
するためである。そして、このカバープレート10の変
形がインク室4の体積に対して大きいほど、インク室4
内の圧力上昇が少なくなり、インク滴の飛翔速度が遅く
なる。インク室4の体積に対するカバープレート10の
変形を少なくするためには、溝3の深さHを大きくする
か、またはカバープレート19の厚さkを大きくするか
である。すなわちH×kを大きくすればよい。図9から
わかるように、インク滴の飛翔速度を極端に減少させな
いためにはH×kを0.2以上にするのが好ましい。
【0054】尚、本実施例の実験において、側壁6の幅
を80μmとしたが、側壁6の幅を変化させた場合で
も、図9と同様の傾向となる。
【0055】また、本実施例の実験において、溝3の幅
bを80μmとしたが、溝3の幅bが80μm程度であ
れば、図9と同様な傾向となる。
【0056】以上の結果から、本実施例のインク噴射装
置1では、前記溝3の深さと前記カバープレート10の
厚さとの積は、0.2(mm×mm)以上である。
【0057】このように、溝3の深さと前記カバープレ
ート10の厚さとの積が0.2(mm×mm)以上であ
るので、側壁6の変形によるカバープレート10の変形
を可及的に防止される。よって、金属電極8に印加する
駆動電圧に対して、インク室4内に発生する圧力の比率
が大きい。このため、低い駆動電圧でインク室4内に高
い圧力を発生することができ、文字や画像を形成するの
に十分な速度及び体積のインク滴を噴射することができ
る。このインク噴射装置1によると、20〜50ボルト
程度の低い駆動電圧において、インク滴の速度は3〜8
m/秒、体積は30〜90pl程度とすることができ、
駆動回路の低コスト化、小型化ができ、インク噴射装置
1全体を低コスト化、小型化することができる。
【0058】次に、カバープレート10の表面粗さがイ
ンク噴射特性にもたらす影響を説明する。
【0059】図10(a)に示すように、側壁6は、圧
電セラミックスプレート2と一体になっているが、カバ
ープレート10とは接着剤20を用いて粘着されてい
る。そして、カバープレート10の表面が滑らかな場合
は接着剤20が非常に薄く形成され、その接着部の剛性
が高い。また、カバープレート10の表面が粗い場合は
図10(b)に示すように接着剤20が多量になって、
接着部の剛性が低くくなってしまい、インク噴射の時
に、インク室4内の圧力が十分に上昇できず、所定のイ
ンク滴体積が得られない。
【0060】ここで、種々の表面粗さのカバープレート
10を使って噴射されたインク滴の体積を測定した。
【0061】この実験に用いたインク噴射装置1では、
側壁6の幅Wが80μm、側壁6の高さである溝4の深
さHが400μm、溝3の幅bが80μmであった。圧
電セラミックスプレート2及びカバープレート10の材
料にはチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系圧電セラミッ
クス、金属電極8には真空蒸着によって形成した厚さ1
μm程度のアルミニウム膜、接着剤20にはエポキシ系
接着剤を使用した。そして、カバープレート10は厚さ
kが1mmのものを用いて、側壁6と接着する面の表面
粗さを1から8μmに変化させた。また、表面粗さ以外
の影響をなくすために、接着剤20はすべて均一かつ薄
く塗布するように工夫した。インク滴の体積は高精度分
析天秤を用いて所定のインク滴数の重量を測定し、イン
クの密度を使って算出した。
【0062】図11から明らかなように、カバープレー
ト10の表面粗さが3μm以下のときインク滴の体積は
最大であり、且つほぼ一定である。これに比べて表面粗
さが約4μmのときインク滴の体積は10%程度の低下
が見られ、さらに表面粗さが5μm以上になるとインク
滴の体積は20%以上低下し、インク滴の形成効率が著
しく低下する。
【0063】尚、上記以外の寸法を持つインク噴射装置
1を用いた噴射実験も実施した。その結果インク滴体積
の絶対量は変わるが、カバープレート10の表面粗さに
よる変化の様相は図11に示すものとほとんど変わらな
い。
【0064】また、接着剤20にエポキシ系以外、例え
ばフェノール系の接着剤を用いても、図11と同様の傾
向となる。
【0065】以上の結果から、本実施例のインク噴射装
置1では、カバープレート10の表面粗さは、好ましく
は3μm以下、少なくとも5μm以下である。
【0066】このように、カバープレート10の表面粗
さが5μm以下、好ましくは3μm以下であるので、金
属電極8に印加した駆動電圧に対してインク室4内に発
生する圧力の比率が大きい。このため、低い駆動電圧で
インク室4内に高い圧力を発生することができ、文字や
画像を形成するのに十分な速度及び体積のインク滴を噴
射することができる。このインク噴射装置1によると、
20〜50ボルト程度の低い駆動電圧において、インク
滴の速度は3〜8m/秒、体積はインク室4の長さにも
よるが、30〜90pl程度とすることができ、駆動回
路の低コスト化、小型化ができ、インク噴射装置1全体
を低コスト化、小型化することができる。
【0067】次に、圧電セラミックスプレート2とカバ
ープレート10との材質の違いによる影響を説明する。
【0068】図12(a)に示すように、インク噴射装
置1の圧電セラミックスプレート2には、インク室4を
構成する溝3が複数形成されると共に、それら溝3を隔
てる側壁6が形成されている。その溝3は幅bが80μ
m,深さHが400μmであり、側壁6は幅Wが80μ
mである。そして、側壁6の上面とカバープレート10
とが接着剤20によって接着されている。その接着剤2
0には加熱硬化性接着剤、例えばエポキシ系接着剤が用
いられている。そして、接着剤20は約160℃まで加
熱されて硬化されている。なお、カバープレートの厚さ
は1mmである。
【0069】このようなインク噴射装置1の圧電セラミ
ックスプレート2及びカバープレート10は必ずしも同
一の素材とは限らないから、素材の線膨張係数が異なる
場合では、接着剤20が硬化して温度を常温に戻したと
きに両者の変形は不均一になる。そのため約160℃で
図12(a)で示すように各側壁6がお互い平行になる
ように接着しても、常温になると図12(b)のように
側壁6が変形し、側壁6及び接着剤20の内部に残留応
力が生じ、特に接着部の強度が落ちる。
【0070】そして、前記内部残留応力の大きさは、線
膨張係数の相異だけでなく、一般的に素材の弾性率(ヤ
ング率)にも左右されるが、本実施例のインク噴射装置
1では側壁6に比べカバープレート10が十分厚いの
で、カバープレート10の材質の違いによるヤング率の
変化の影響がほぼ無視できる。
【0071】ここで、インク噴射装置1の寿命に対する
上記の現象の影響を調べる。線膨張係数がそれぞれ1,
2,4ppm/℃の3種類のチタン酸ジルコン酸鉛(P
ZT)系の素材をそれぞれ用いて、線膨張係数の異なる
3種類の圧電セラミックスプレート2を形成した。ま
た、上記圧電セラミックスプレート2と同一の素材のカ
バープレート10を形成した。更に、マグネシア(Mg
O)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(AL23)の
3種類の材質のカバープレート10を形成した。従っ
て、線膨張係数の異なる6種類のカバープレート10を
形成した。
【0072】前記の各種の圧電セラミックスプレート2
及びカバープレート10を用いて、種々のインク噴射装
置1を構成した。そして、それらインク噴射装置1に電
圧レベルが40ボルトの駆動パルスを8kHzの周波数
で印加し続けた。この時、インク噴射装置1の噴射機能
が低下して、インク滴が形成できなくなるまで印加した
駆動パルスの回数を測定した。
【0073】測定結果は図13に示すように、圧電セラ
ミックスプレート2とカバープレート10の線膨張係数
の差が6.0ppm/℃以下の場合はインク噴射装置1
の寿命は30億回以上あるのに対して、前記線膨張係数
の差が8.5ppm/℃になると、寿命は20億回に減
少してしまう。そして、線膨張係数の差がさらに大きく
なると、寿命はより著しく減少することがわかる。
【0074】尚、接着剤20にエポキシ系を用いたが、
加熱硬化性接着剤であれば、例えばフェノール系であっ
ても、図13と同様な傾向となる。
【0075】以上の結果から、本実施例のインク噴射装
置1では、圧電セラミックスプレート2とカバープレー
ト19との線膨張係数の差は8.5ppm/℃以下、好
ましくは6.0ppm/℃以下である。
【0076】このように、圧電セラミックスプレート2
とカバープレート19との線膨張係数の差が8.5pp
m/℃以下、好ましくは6.0ppm/℃以下のインク
噴射装置1では、実用上十分多い30億回、少なくとも
約20億回の噴射寿命であるので、文字キャラクタの印
刷にだけでなく、インクの噴射回数が飛躍的に多く必要
とするグラフィックスの印刷にも十分対応できる。従っ
て、インク噴射装置1の交換回数が減少して、印刷装置
の信頼性が高い。
【0077】次に、インク室4とマニホールド18との
相対位置について説明する。
【0078】図14はインク噴射装置の側面からみた時
の断面である。インクは矢印30のようにインクタンク
からインク供給チューブ(共に図示しない)を経て、イ
ンク導入口16に流入し、マニホールド18によって各
インク室4に振り分けられる。実験に使用したインク噴
射装置1では、圧電セラミックスプレート2及びカバー
プレート10の材料には共にチタン酸ジルコン酸鉛(P
ZT)系圧電セラミックスを用いた。インク室4の全長
Lは17mmで、マニホールド18とインク室4との相
対位置の変化によるインク滴の体積変化を調べるため
に、図中のマニホールド18の前部側面とインク室4の
後部端面と相対位置xの値が異なるものを用意した。な
お、マニホールド18の深さhはすべて0.5mmと
し、その幅wはすべて5mmとした。インク滴の体積は
高精度分析天秤を用いて所定のインク滴数を噴射してそ
の重量を測定し、インクの密度を使って算出した。
【0079】次に、前記マニホールド18とインク室4
との相対位置が異なる複数のインク噴射装置1を用い
て、そのインク噴射装置1が噴射するインク滴の体積を
測定した。測定結果は図15に示し、横軸はマニホール
ド18とインク室4との相対位置xをとり、縦軸はイン
ク滴の体積をとった。図15からわかるように、xが1
mmから6mmの間はインク滴の体積が最大の60pl
に達し、ほぼ一定である。
【0080】また、xが1mm以下になるとインク滴の
体積が急に減少し、xが約0.2mmでインクが噴射不
能になってしまう。これはx=1でマニホールド18と
インク室4の重なるところが1mmしかなく、xをさら
に小さくにすると、インクが急にインク室4内に流れ難
くなるからである。
【0081】一方、xが6mm以上にすると、それほど
急ではないが、インク滴の体積が減少していく。これは
xが大きくなると、マニホールド18がノズルプレート
14に近づき、マニホールド18前部側面とノズルプレ
ート14との距離yが短くなる。つまり、インク室4内
の圧力を上昇させてインク滴を噴射させるとき、インク
をノズル12から押し出すと同時に、マニホールド18
からもインク導入口16へインクが逆流し、マニホール
ド18付近の圧力が急減小して、負の圧力波が発生す
る。この負の圧力波がノズル12に到達すると、ノズル
12からのインク流出は停止するが、yが短いほど上記
負の圧力波がノズル12に到達する時間が短くなる。こ
のため、インクの流出が速く停止し、結果としてインク
滴の体積が減少する。
【0082】図15からxが約11mm(y=L−x=
6mm)でインク滴の体積が約半分の30plになり、
さらにx=14mm以上(y=3mm以下)にすると、
インク滴の噴射ができなくなる。従って、インク滴の体
積が印加する駆動パルスを調整することで多少調整でき
ることを考慮にいれても、マニホールド18とインク室
4との相対位置はxが0.2mm以上、且つyが3mm
以上、好ましくはyが6mm以上にする必要がある。
【0083】尚、マニホールド18の深さhが0.5m
m、幅wが5mmであったが、マニホールド18の寸法
を変化させても図15と同様の傾向を示す。
【0084】また、インク室4の全長Lが17mm以外
であっても、図15と同様の傾向を示す。
【0085】以上の結果から、本実施例のインク噴射装
置1では、前記カバープレート10に形成されるマニホ
ールド18の位置は、その前部側面とインク室4の後部
端面との距離が0.2mm以上、かつノズルプレート1
4との距離が6mm以上、少なくとも3mm以上の範囲
である。
【0086】このように、マニホールド18の前部側面
とインク室4の後部端面との距離が0.2mm以上、か
つマニホールド18の前部側面とノズルプレート14と
の距離が6mm以上、少なくとも3mm以上であるの
で、効率よくインク滴の噴射ができ、且つインクの補充
がスムーズにできて、文字や画像を形成するのに十分な
速度及び体積のインク滴を噴射することができる。この
インク噴射装置1によると、20〜50ボルト程度の低
い駆動電圧において、インク滴の速度は3〜8m/秒、
体積は30〜90pl程度とすることができ、低電圧駆
動による駆動回路の低コスト化、小型化ができ、インク
噴射装置1全体を低コスト化、小型化することができ
る。
【0087】尚、本発明は以上詳述した実施例に限定さ
れるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲の変更は
可能である。
【0088】本実施例では、圧電セラミックスである側
壁6のせん断モードによる変形によって、インク室4内
のインクを噴射していたが、上述したカイザー型やサー
マルジェット型等の噴射方式であってもよい。
【0089】
【発明の効果】本発明のインク噴射装置によれば、マニ
ホールド前部側面とノズルとの距離が、インク噴射時の
ノズル近辺の圧力を必要な時間にわたって維持できるよ
う離れているので、噴射されるインク滴の体積が十分で
ある。従って、印字品質が良好である。また、供給され
るべきインク量がインク室に供給されるので、噴出され
るインク滴の体積が所定の体積となり、印字品質が良好
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の一実施例のインク噴射装置を
示す断面図である。(b)は(a)のA−A断面図であ
る。
【図2】前記実施例のインク導入口の直径とレイノルズ
数との関係線図である。
【図3】(a)は前記実施例のインク噴射装置を示す断
面図である。(b)は(a)のA−A断面図である。
【図4】前記実施例のマニホールドと噴流中心流速との
関係線図である。
【図5】(a)は前記実施例のインク噴射装置を示す断
面図である。(b)は(a)のA−A断面図である。
【図6】流路断面積と圧力損失との関係線図である。
【図7】前記実施例のマニホールドとインク室の断面積
との比と、圧力損失との関係線図である。
【図8】前記実施例のインク噴射装置を示す断面図であ
る。
【図9】前記実施例のインク室とカバープレートの厚さ
との積と、液滴速度との関係線図である。
【図10】(a)は前記実施例のカバープレートの表面
が滑らかなインク噴射装置を示す断面図である。(b)
は前記実施例のカバープレートの表面が粗いインク噴射
装置を示す断面図である。
【図11】前記実施例のカバープレートの表面粗さとイ
ンク滴体積との関係線図である。
【図12】(a)は前記実施例の接着剤を加熱させて硬
化させたときのインク噴射装置を示す断面図である。
(b)は前記実施例の常温時のインク噴射装置を示す断
面図である。
【図13】前記実施例のインク噴射装置の耐久試験の結
果を示す説明図である。
【図14】前記実施例のインク噴射装置を示す断面図で
ある。
【図15】前記実施例のマニホールドの位置とインク滴
体積との関係線図である。
【図16】従来技術のせん断モード型インク噴射装置を
示す斜視図である。
【図17】従来技術の制御部を示す説明図である。
【図18】従来技術のせん断モード型インク噴射装置を
示す断面図である。
【図19】従来技術のせん断モード型インク噴射装置の
動作を示す説明図である。
【符号の説明】
2 圧電セラミックスプレート 4 インク室 6 側壁 10 カバープレート 16 インク導入口 18 マニホールド

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 各々が前端部と後端部とを有する複数の
    インク室と、前記インク室にインクを導入するために設
    けられ、インク室の前端部に近い側に前部側面を有する
    マニホールドと、前記インク室の前端部に設けられたノ
    ズルとを有し、前記インク室内のインクに圧力を与えて
    前記ノズルからインクを噴射するインク噴射装置におい
    て、 前記マニホールドの位置は、そのマニホールドの前部側
    面と前記インク室の後端部との距離が0.2mm以上、
    かつマニホールドの前部側面と前記ノズルとの距離が3
    mm以上であることを特徴とするインク噴射装置。
  2. 【請求項2】 前記マニホールドの位置は、そのマニホ
    ールドの前部側面と前記インク室の後端部との距離が
    0.2mm以上、かつマニホールドの前部側面と前記ノ
    ズルのインク室側の開口部との距離が3mm以上である
    ことを特徴とする請求項1記載のインク噴射装置。
JP5022571A 1993-02-10 1993-02-10 インク噴射装置 Pending JPH06234216A (ja)

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