JP7582245B2 - 全固体電池 - Google Patents

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本開示は、全固体電池に関する。
特開2018-106984号公報(特許文献1)には、正極と負極と固体電解質層(セパレータ層)との積層体、及び、前記積層体に拘束圧力を付与する拘束部材を備える全固体リチウムイオン電池であって、前記負極が、固体電解質と、負極活物質として複数のSi単体粒子とを有し、前記複数のSi単体粒子の平均粒子径が特定の範囲内であり、前記拘束部材による前記積層体への拘束圧力が0.1MPa以上45MPa以下である、全固体リチウムイオン電池が開示されている。なお、この電池では、拘束部材による拘束圧力が低いため、拘束部材を小型化することができ、電池全体としてのエネルギー密度を増大させることができる旨記載されている。
特開2018-106984号公報
全固体リチウムイオン電池等の全固体電池においては、正極と負極とセパレータ層との積層体に対して拘束圧力を付与する場合がある。これにより活物質と固体電解質との接触等が維持され、電池抵抗の低減等により電池性能が向上し得る。
ただし、全固体電池において活物質と固体電解質との接触等を維持するために拘束圧力を高くすると、拘束部材が大きくなり電池全体としてのエネルギー密度が低下してしまう。一方、拘束圧力が低い場合、大掛かりな拘束部材が不要であり、電池全体としてのエネルギー密度を増大させることができる。そのため、拘束圧力をできるだけ低くして拘束部材を小型化することが望ましい。
しかしながら、拘束圧力が比較的低い場合(例えば、拘束圧力が1MPa以下である場合)、充放電による活物質の収縮時に、セパレータ層(固体電解質層)と電極(正極または負極)の活物質との間での剥離が発生し易くなる。このため、充放電の繰り返しによって、セパレータ層と電極との間の接触面積が減少して、電池抵抗が徐々に増加する可能性がある。特に活物質の充放電による体積変化率が大きい場合は、充放電によって電池抵抗が増加しやすいと考えられる。
本開示の目的は、拘束圧力が比較的低い場合でも電池抵抗の増加を抑制することのできる全固体電池を提供することである。
[1] 正極と負極とセパレータ層と、を備える、全固体電池であって、
前記正極または前記負極は、充放電による体積変化率が10%以上の活物質を含み、
前記セパレータ層は、固体電解質粒子を含み、前記活物質を含む前記正極または前記負極と接触する界面層を有し、
前記界面層中に含まれる前記固体電解質粒子のD50(D50SE)が、前記活物質を含む前記正極または前記負極の十点平均粗さ(Rzjis)の1/7以下である(すなわち、「Rzjis/D50SE≧7」を満たす)、全固体電池。
上記[1]の全固体電池によれば、拘束圧力が比較的低い場合でも電池抵抗の増加を抑制することができる。
上記[1]の電極では、「Rzjis/D50SE≧7」を満たす比較的小さい粒径を有する固体電解質粒子を含む界面層が、充放電による体積変化率が10%以上の活物質を含む電極(正極および負極の少なくともいずれか)とセパレータ層との界面に存在する。このため、該電極(活物質層)の界面の間隙に、セパレータ層の界面層に含まれる小粒径の固体電解質粒子が入り込むことで、電極とセパレータ層との間の界面において、接触面積が増加し、密着力が向上する。それにより、拘束圧力が比較的低い場合でも、充放電による電極とセパレータ層との間の剥離が抑制されるため、電極とセパレータ層との間の接触(界面経路)が維持され、全固体電池における抵抗の増加が抑制されると考えられる。
[2] 前記負極は、前記活物質として、Siを含む負極活物質を含む、[1]に記載の全固体電池。
負極活物質としてSiを含む負極活物質(Si単体、Si合金など)が用いられる場合がある。負極活物質が炭素系材料よりも高容量であるSiを含む場合、全固体電池の容量および容量密度を増大させることができる。しかし、Siを含む負極活物質は充放電による体積変化率が比較的大きいため、負極活物質がSiを含む場合、負極(負極活物質層)とセパレータ層との間の界面での剥離が生じ易い。このため、負極活物質がSiを含む場合、一般的には電池の拘束圧力を大きくする必要がある。しかし、本実施形態の全固体電池においては、上記[1]と同様の理由から、拘束圧力が比較的低い場合でも、負極とセパレータ層との間の接触面積を維持し易い。したがって、負極活物質がSiを含む場合でも、全固体電池における抵抗の増加を抑制することができると考えられる。
[3] 前記正極は、前記活物質として、Sを含む正極活物質を含む、[1]または[2]に記載の全固体電池。
正極活物質としてSを含む正極活物質が用いられる場合がある。しかし、Sを含む正極活物質は充放電による体積変化率が比較的大きいため、正極活物質がSを含む場合、正極(正極活物質層)とセパレータ層との間の界面での剥離が生じ易い。このため、正極活物質がSを含む場合、一般的には電池の拘束圧力を大きくする必要がある。しかし、本実施形態の全固体電池においては、上記[1]と同様の理由から、拘束圧力が比較的低い場合でも、正極とセパレータ層との間の接触面積を維持し易い。したがって、正極活物質がSを含む場合でも、全固体電池における抵抗の増加を抑制することができると考えられる。
本実施形態における全固体電池の一例を示す概念図である。 実施例および比較例における電池抵抗とRzjis/ΦSEとの関係を示すグラフである。
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」と略記され得る。)、および本開示の実施例(以下「本実施例」と略記され得る。)が説明される。ただし、本実施形態および本実施例は、本開示の技術的範囲を限定しない。
なお、本明細書において、単数形で表現される要素は、特に断りの無い限り、複数形も含む。例えば「粒子」は「1つの粒子」のみならず、「粒子の集合体(粉体、粉末、粒子群)」も意味し得る。
化合物が化学量論的組成式(例えば「LiCoO2」等)によって表現されている場合、該化学量論的組成式は該化合物の代表例に過ぎない。化合物は、非化学量論的組成を有していてもよい。例えば、コバルト酸リチウムが「LiCoO2」と表現されているとき、特に断りのない限り、コバルト酸リチウムは「Li/Co/O=1/1/2」の組成比に限定されず、任意の組成比でLi、CoおよびOを含み得る。さらに、微量元素によるドープ、置換等も許容され得る。
<全固体電池>
図1は、本実施形態における全固体電池の一例を示す概念図である。図1に示される全固体電池100は、蓄電要素5を含む。蓄電要素5は、正極1と負極2とセパレータ層3とを含む。正極1は、正極集電体11と正極活物質層12とを含む。負極2は、負極集電体21と負極活物質層22とを含む。
正極1(正極活物質層12)または負極2(負極活物質層22)は、充放電による体積変化率が10%以上(または50%以上)の活物質を含む。なお、本実施形態において、正極1(正極活物質層12)または負極2(負極活物質層22)のいずれかが、充放電による体積変化率が10%以上の活物質を含んでいればよく、さらに、正極1(正極活物質層12)または負極2(負極活物質層22)の両方が充放電による体積変化率が10%以上の活物質を含んでいてもよい。
セパレータ層3は、固体電解質粒子を含み、上記の活物質(充放電による体積変化率が10%以上の活物質)を含む正極1または負極2と接触する界面層を有する。
図1に示される本実施形態における全固体電池の一例では、負極2(負極活物質層)が充放電による体積変化率が10%以上の活物質を含み、セパレータ層3は、主層31、および、負極2と接触する界面層32から構成されている。
ただし、本実施形態の全固体電池においては、図1に示される形態に限定されず、セパレータ層3が正極1と接触する界面層を有していてもよい。なお、セパレータ層3は、正極1と接触する界面層、および、負極2と接触する界面層の両方を有していてもよい。
セパレータ層3の界面層32中に含まれる固体電解質粒子のD50(D50SE)は、活物質を含む正極または負極の十点平均粗さの1/7以下である。すなわち、「Rzjis/D50SE≧7」を満たす。
正極または負極の十点平均粗さの測定は、正極1(正極活物質層12)または負極2(負極活物質層22)のセパレータ層3との界面の断面(正極1または負極2、および、セパレータ層3の積層方向に平行な断面)をSEMで観察し、SEM画像から正極または負極の界面(正極または負極とセパレータ層との間の界面)の粗さを読み取り、JIS B 0601:2001で規格されている十点平均粗さ(Rzjis)を測定することにより、実施し得る。
全固体電池100は、例えば、蓄電要素5を収納する外装体(不図示)を含んでいてもよい。外装体は、例えば、金属箔ラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。
《正極》
正極1は、正極集電体11と正極活物質層12とを含む。正極1は層状である。
正極集電体11としては、例えば、Al箔等が挙げられる。正極集電体11は、例えば、5~50μmの厚さを有していてもよい。例えば、正極集電体11の表面に正極合材が塗着されることにより、正極活物質層12が形成されていてもよい。
正極活物質層12は、セパレータ層3に密着している。正極活物質層12は、例えば、10~200μmの厚さを有していてもよい。
正極活物質層12は、正極活物質粒子および固体電解質粒子を含み得る。
正極活物質粒子の成分としては、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn24、Li(NiCoMn)O2、Li(NiCoAl)O2、LiFePO4、LiS、P5、SiS2などが挙げられる。なお、例えば「Li(NiCoMn)O2」における「(NiCoMn)」は、括弧内の組成比の合計が1であることを示す。合計が1である限り、個々の成分量は任意である。Li(NiCoMn)O2は、例えばLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2、Li(Ni0.5Co0.2Mn0.3)O2、Li(Ni0.8Co0.1Mn0.1)O2等を含んでいてもよい。
正極活物質粒子は、全固体電池の充放電による体積変化率が10%以上の活物質(正極活物質)を含んでいてもよい。なお、正極活物質粒子は、全固体電池の充放電による体積変化率が30%以上または50%以上の活物質(正極活物質)を含んでいてもよい。
充放電による体積変化率が比較的大きい正極活物質が用いられる場合、正極(正極活物質層)とセパレータ層との間の界面での剥離が生じ易い。したがって、正極活物質粒子が全固体電池の充放電による体積変化率が10%以上の活物質を含む場合、このような剥離を抑制するために、セパレータ層3は、正極1(正極活物質層12)と接触する界面層を有することが好ましい。
全固体電池の充放電による活物質の体積変化率は、充放電によって膨張および収縮する活物質において、最も収縮したときの活物質の体積に対する最も膨張したときの活物質の体積の変化率である。すなわち、全固体電池の充放電による活物質の体積変化率は、以下の式で表される。
「活物質の体積変化率」(%)=〔(「最も膨張したときの活物質の体積」-「最も収縮したときの活物質の体積」)/「最も収縮したときの活物質の体積」〕×100
上記の活物質の体積変化率は、公知の方法により測定可能であり、また、一般的な活物質材料の各々について、充放電による体積変化率は公知である。充放電による活物質の体積変化率(膨張率)は、例えば、in-situ XRDで充電前後の格子体積を計算することによって、測定することができる。かかる方法で測定された各活物質の体積変化率(膨張率)は、以下のとおりである。
Si(単体): 300%
炭素系負極活物質(グラファイト): 10%
LiS: 50~100%
全固体電池の充放電による体積変化率が10%以上(または50%以上)の活物質(正極活物質)としては、特に限定されないが、例えば、S(硫黄元素)を含む正極活物質が挙げられる。Sを含む正極活物質としては、例えば、LiS、P5、SiS2などが挙げられる。
正極活物質粒子は、二次粒子(一次粒子の集合体)であってもよい。正極活物質粒子の二次粒子は、例えば、1~50μmのD50を有していてもよいし、1~20μmのD50を有していてもよいし、5~15μmのD50を有していてもよい。正極活物質粒子の一次粒子は、例えば、0.1~3μmの最大フェレ径を有していてもよい。
なお、本明細書において、「D50」は、体積基準の粒子径分布において、粒子径が小さい側からの頻度の累積が50%に到達する粒子径を示す。D50は、レーザ回折法により測定され得る。
正極活物質粒子の表面は、例えば、固体電解質粒子等との反応を抑制するためのコーティング膜で被覆されていてもよい。
正極活物質層12に用いられる固体電解質粒子の成分は、後述するセパレータ層3に用いられる固体電解質粒子の成分と同じであってもよく、異なっていてもよい。
正極活物質層12は、例えば導電材をさらに含んでいてもよい。導電材は、正極活物質層内に電子伝導パスを形成し得る。導電材は、任意の成分を含み得る。導電材は、例えば、カーボンブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)およびグラフェンフレークからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。導電材の配合量は、100質量部の正極活物質粒子に対して、例えば0.1~10質量部であってもよい。
正極活物質層12は、例えばバインダをさらに含んでいてもよい。バインダは任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。バインダの配合量は、100質量部の正極活物質粒子に対して、例えば0.1~10質量部であってもよい。
正極活物質粒子には、熱処理(焼成)が施されていてもよい。熱処理温度は、例えば、150~300℃であってもよい。熱処理時間は、例えば、1~10時間であってもよい。例えば、空気中で熱処理が実施されてもよいし、不活性雰囲気下で熱処理が実施されてもよい。
《負極》
負極2は、負極集電体21と負極活物質層22とを含み得る。負極2は層状である。
負極集電体21は、例えば、Cu箔、Ni箔等を含んでいてもよい。負極集電体は、例えば、5~50μmの厚さを有していてもよい。例えば、負極集電体の表面に負極合材が塗着されることにより、負極活物質層が形成されていてもよい。
負極活物質層22は、セパレータ層3に密着している。負極活物質層22は、例えば、10~200μmの厚さを有していてもよい。
負極活物質層22は、負極活物質粒子および固体電解質粒子を含み得る。
負極活物質粒子の成分としては、例えば、黒鉛などの炭素材料、Si、SiOx(0<x<2)、Li4Ti512などが挙げられる。
負極活物質粒子は、全固体電池の充放電による体積変化率が10%以上の活物質(負極活物質)を含んでいてもよい。なお、負極活物質粒子は、全固体電池の充放電による体積変化率が100%以上または200%以上の活物質(負極活物質)を含んでいてもよい。
充放電による体積変化率が比較的大きい負極活物質が用いられる場合、負極(負極活物質層)とセパレータ層との間の界面での剥離が生じ易い。したがって、負極活物質粒子が全固体電池の充放電による体積変化率が10%以上の活物質を含む場合、このような剥離を抑制するために、セパレータ層3は、負極2(負極活物質層22)と接触する界面層を有することが好ましい。
全固体電池の充放電による体積変化率が10%以上の活物質(負極活物質)としては、特に限定されないが、例えば、Si(ケイ素元素)を含む負極活物質が挙げられる。Siを含む負極活物質としては、例えば、Si(単体)またはSi合金が挙げられる。Si合金としては、例えば、SiOx(0<x<2)が挙げられる。なお、Siを含む負極活物質は、炭素系負極活物質よりも高容量であるため、負極活物質粒子がSiを含むことにより、全固体電池の容量を向上させることができる。ただし、黒鉛などの炭素材料も、全固体電池の充放電による体積変化率が10%以上の活物質(負極活物質)に包含され得る。
負極活物質粒子は、二次粒子(一次粒子の集合体)であってもよい。負極活物質粒子(二次粒子)は、例えば、1~50μmのD50を有していてもよいし、1~20μmのD50を有していてもよいし、5~15μmのD50を有していてもよい。一次粒子は、例えば、0.1~3μmの最大フェレ径を有していてもよい。
負極活物質粒子の表面は、例えば、固体電解質粒子等との反応を抑制するためのコーティング膜で被覆されていてもよい。
負極活物質層22に用いられる固体電解質粒子の成分は、後述するセパレータ層3に用いられる固体電解質粒子の成分と同じであってもよく、異なっていてもよい。
負極活物質層22は、例えば、導電材およびバインダをさらに含んでいてもよい。導電材およびバインダとしては、例えば、正極活物質層と同様の導電材およびバインダを用いることができる。
《セパレータ層》
セパレータ層3は、正極1と負極2との間に介在している。
セパレータ層3は、固体電解質粒子を含む。セパレータ層3と正極合材との間で、固体電解質(固体電解質粒子の成分)は同種であってもよいし、異種であってもよい。セパレータ層3と負極合材との間で、固体電解質は同種であってもよいし、異種であってもよい。
セパレータ層3はバインダをさらに含んでいてもよい。バインダの配合量は、100質量部の固体電解質粒子に対して、例えば0.1~10質量部であってもよい。
セパレータ層3は、充放電による体積変化率が10%以上の活物質を含む電極(正極または負極)と接触する界面層32を有する。なお、図1に示される全固体電池においては、界面層32が負極2(負極活物質層22)と接触する側のみに設けられているが、これに限定されず、界面層が正極1(正極活物質層12)と接触する側のみに設けられていてもよく、また、界面層が正極1と接触する側と負極2と接触する側との両面に設けられていてもよい。
セパレータ層3は、例えば、図1に示されるように、主層31と界面層32とから構成されていてもよい。この場合、主層31および界面層32の各々が、固体電解質粒子を含む。主層31および界面層32の各々は、バインダをさらに含んでいてもよい。主層31におけるバインダの配合量は、100質量部の固体電解質粒子に対して、例えば0.1~10質量部であってもよい。界面層32におけるバインダの配合量は、100質量部の固体電解質粒子に対して、例えば1~10質量部であってもよい。
界面層32中の固体電解質粒子の成分は、主層31中の固体電解質粒子の成分と同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じ成分であることが好ましい。
固体電解質粒子の成分は、特に限定されず、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、水素ホウ素化固体電解質等のいずれであってもよい。
硫化物固体電解質は、SおよびPを含んでいてもよい。硫化物固体電解質は、さらにLiを含んでいてもよい。硫化物固体電解質は、例えば、O、Si等をさらに含んでいてもよい。硫化物固体電解質は、例えば、ヨウ素(I)、臭素(Br)等のハロゲンをさらに含んでいてもよい。
硫化物固体電解質としては、例えば、LiI-LiBr-Li3PS4、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P25、LiI-Li2O-Li2S-P25、LiI-Li2S-P25、LiI-Li3PO4-P25、Li2S-P25、Li3PS4、LiCl-LiBr-Li3PS4、LiCl-LiBr-Li2S-P25、LiCl-LiBr-Li2S-SiS2などを用いることができる。
例えば、「LiI-LiBr-Li3PS4」は、LiIとLiBrとLi3PS4とが任意のモル比で混合されることにより生成された硫化物固体電解質を示す。例えば、メカノケミカル法により硫化物固体電解質が生成されてもよい。「Li2S-P25」はLi3PS4を含む。Li3PS4は、例えばLi2SとP25とが「Li2S/P25=75/25(モル比)」で混合されることにより生成され得る。
なお、固体電解質は、アルジロダイト型、ペロブスカイト型、ガラスセラミックス型等のいずれであってもよい。
界面層32中の固体電解質粒子の平均粒子径(D50)は、主層31中の固体電解質粒子の平均粒子径(D50)と同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、界面層32中の固体電解質粒子の平均粒子径(D50)は、主層31中の固体電解質粒子の平均粒子径(D50)より小さくてもよい。
なお、界面層32中の固体電解質粒子の成分と主層31中の固体電解質粒子の成分とが同じであり、界面層32中の固体電解質粒子の平均粒子径と主層31中の固体電解質粒子の平均粒子径が同じであり、バインダ等の他の成分も同じである場合、界面層32と主層31は区別できないが、セパレータ層3は界面層のみから構成されると解される。本実施形態において、セパレータ層3にはこのような態様も含まれる。
界面層32の形成に用いられる固体電解質粒子のD50は、好ましくは0.01~1.0μmであり、より好ましくは0.02~0.5μmであり、さらに好ましくは0.05~0.2μmである。なお、界面層32の形成に用いられる全ての固体電解質粒子の各々の粒径(個々の粒子のサイズ)は、0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることがより好ましい。
界面層32の形成に用いられる固体電解質粒子は、例えば、より大きい固体電解質を機械的粉砕等によって微粒化することによって得られる微粒子であってもよい。
主層31の形成に用いられる固体電解質粒子のD50に対する界面層32の形成に用いられる固体電解質粒子のD50の比率は、好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.01~0.3であり、より好ましくは0.02~0.2である。
界面層32中の固体電解質粒子の含有率は、例えば、70~100質量%であってもよく、80~99.9質量%であってもよく、90~99.8質量%であってもよい。
主層31中の固体電解質粒子の含有率は、例えば、70~100質量%であってもよく、80~99.5質量%であってもよく、90~99.0質量%であってもよい。
界面層の厚みは、0.5~100μmであってもよく、1~50μmであってもよい。界面層の厚みは、蛍光X線分析(XRF)により測定され得る。
<実施例1>
(正極の作製)
下記材料が準備された。
正極活物質:D50が10μm、比表面積が1m/gのLiNi1/3Mn1/3Co1/3粉体(当該正極活物質の表面は、ゾルゲル法によりLiNbO3で被覆されている。)
固体電解質(硫化物固体電解質):D50が1μm、比表面積が9m/gの「15LiBr-10LiI-75(0.75LiS-0.25P)」ガラスセラミックスの粉末
導電材:CNF(カーボンナノファイバー、比表面積:14m/g)
バインダ:SBR(スチレン-ブタジエンゴム)系バインダ
分散媒:酢酸ブチル
正極集電体:Al箔(厚さ:15μm)
上記の正極活物質と、固体電解質と、導電材と、バインダと、分散媒とが混合されることにより、正極活物質層形成用の組成物(正極スラリー)が調製された。100質量部の正極活物質に対して、固体電解質の配合量は50質量部であり、導電材の配合量は10質量部であり、バインダの配合量は0.7質量部であった。尚、当該バインダの配合量は、正極活物質層1m当り1mgに相当する。正極スラリーの固形分率は、60質量%であった。
超音波分散装置を用いた1分間の超音波分散処理により、正極スラリーが十分攪拌された。市販のアプリケーターを用いるブレードコーティングによって、正極スラリーが、正極集電体上に目付量(固形分量)が15mg/cmとなるように均一に塗布された。その後、塗膜を100℃で60分間乾燥処理することで、正極集電体上に正極活物質層が形成された。このようにして、正極が得られた。
(負極の作製)
下記材料が準備された。
負極活物質:D50が2.9μm、比表面積が4m/gのSi粉末
固体電解質:正極と同じ硫化物固体電解質の粉末
導電材:CNF(比表面積:14m/g)
バインダ:SBR系バインダ
分散媒:酢酸ブチル
負極集電体:表面粗化銅箔(厚さ:20μm)
上記の負極活物質と、固体電解質と、導電材と、バインダと、分散媒とが混合されることにより、負極活物質層形成用の組成物(負極スラリー)が調製された。100質量部の負極活物質に対して、固体電解質の配合量は10質量部であり、導電材の配合量は10質量部であり、バインダの配合量は1.4質量部であった。尚、当該バインダの配合量は、負極活物質層1m当り1mgに相当する。負極スラリーの固形分率は、40質量%であった。
超音波分散装置を用いた1分間の超音波分散処理により、負極スラリーが十分攪拌された。市販のアプリケーターを用いるブレードコーティングによって、負極スラリーが、負極集電体上に目付量(固形分量)が3mg/cmとなるように均一に塗布された。その後、塗膜を100℃で60分間乾燥処理することで、負極集電体上に負極活物質層が形成された。このようにして、負極が得られた。
〔負極の粗さ測定用のセパレータ層の作製〕
まず、平均粒子径(D50)が1.1μm、比表面積が5m/gの「15LiBr-10LiI-75(0.75LiS-0.25P)」ガラスセラミックス(第1の硫化物固体電解質)の粉末を使用して、第1の固体電解質層(主層)が作製された。
具体的には、上記第1の硫化物固体電解質と、SBR系バインダと、分散媒(酢酸ブチル)とが混合されることにより、第1の固体電解質層形成用の組成物(第1の固体電解質スラリー)が調製された。100質量部の第1の硫化物固体電解質に対して、SBR系バインダの配合量は0.5質量部であった。尚、当該バインダの配合量は、セパレータ層1m当り1mgに相当する。第1の固体電解質スラリーの固形分率は、50質量%であった。
得られた第1の固体電解質スラリーを用いて、上述の正極および負極の作製と同様にして、表面粗化銅箔(基材)上に第1の固体電解質層(主層)が形成された。第1の固体電解質スラリーの目付量(固形分量)は、3.0mg/cmであり、第1の固体電解質層(主層)の厚さは15μmであった。
次に、第1の固体電解質層の上に、平均粒子径(D50)が0.1μm、比表面積が30m/gの「15LiBr-10LiI-75(0.75LiS-0.25P)」ガラスセラミックス(第2の硫化物固体電解質)の粉末を使用して、第2の固体電解質層(界面層)が作製された。
具体的には、上記第2の硫化物固体電解質と、SBR系バインダと、分散媒(酢酸ブチル)とが混合されることにより、第2の固体電解質層形成用の組成物(第2の固体電解質スラリー)が調製された。100質量部の第2の硫化物固体電解質に対して、SBR系バインダの配合量は3質量部であった。尚、当該バインダの配合量は、セパレータ層1m当り1mgに相当する。第1の固体電解質スラリーの固形分率は、50質量%であった。
得られた第2の固体電解質スラリーを用いて、上述の第1の固体電解質層の作製と同様にして、銅箔上に形成された第1の固体電解質層上に、第2の固体電解質層(界面層)が形成された。第2の固体電解質スラリーの目付量(固形分量)は、1.0mg/cmであり、第2の固体電解質層(界面層)の厚さは5μmであった。
〔負極の十点平均粗さの測定〕
上記のようにして作製された負極と粗さ測定用のセパレータ層とを重ね合わせて6ton/cmで1分間のプレスを行うことにより、負極とセパレータ層との接合体を得た。得られた接合体を負極集電体(集電箔)ごと5mm×5mmのサイズに切り出し、切り出された断面(負極およびセパレータ層の積層方向に平行な断面)をSEMで観察し、SEM画像から負極(負極活物質層)のセパレータ層との界面の粗さを読み取り、JIS B 0601:2001で規格されている十点平均粗さ(Rzjis)を測定した。
測定結果が表1に示される。
(電池作製用のセパレータ層の作製)
基材をアルミニウム箔に変更した以外は、粗さ測定用のセパレータ層と同様にして、電池作製用のセパレータ層を作製した。
(電池の作製)
アルミニウム箔ごと5.2cm×5.2cmの正方形状に切り出された電池作製用のセパレータ層と、同形状に切り出された負極と、を重ね合わせて、プレス圧1トン/cmでロールプレスした。次いで、負極に積層されたセパレータ層に付いていたアルミニウム箔を剥がし、アルミニウム箔ごと5.0cm×5.0cmの正方形状に切り出された正極を、負極に積層されたセパレータ層に重ね合わせ、プレス圧3トン/cmでロールプレスした。こうして得られた積層電極体を、予め正極端子および負極端子が付設されたアルミニウム製のラミネートフィルムからなる外装体で密閉した。これにより、実施例1の全固体電池(全固体リチウムイオン二次電池)が作製された。
なお、図1に示されるように、セパレータ層3の主層31(第1の固体電解質層)側の面に、正極活物質層12が接するように正極1が積層され、セパレータ層3の界面層32(第2の固体電解質層)側の面に、負極活物質層22が接するように負極2が積層された。
<実施例2>
実施例2では、負極の作製において、負極活物質として、D50が0.5μm、比表面積が50m/gのSi粉末が使用された。また、第2の固体電解質層(界面層)の作製において、D50が0.1μm、比表面積が30m/gの硫化物固体電解質が使用された。
それ以外の点は実施例1と同様の材料および工程により、実施例2の全固体電池が作製された。
<実施例3>
実施例3では、負極の作製において、負極活物質として、D50が10.0μmのSi粉末が使用された。また、第2の固体電解質層(界面層)の作製において、D50が1.1μmの硫化物固体電解質が使用された。
それ以外の点は実施例1と同様の材料および工程により、実施例2の全固体電池が作製された。
<比較例1>
比較例1では、セパレータ層の作製において、第2の固体電解質層を形成せず、第1の固体電解質層を目付量が4.0mg/cm(厚さ:20μm)となるように形成した。
それ以外の点は実施例1と同様の材料および工程により、比較例1の全固体電池が作製された。
<比較例2>
比較例2では、負極の作製において、負極活物質として、D50が10.0μmのSi粉末が使用された。また、第1の固体電解質層(界面層)の作製において、D50が2.2μmの硫化物固体電解質が使用された。
それ以外の点は比較例1と同様の材料および工程により、比較例2の全固体電池が作製された。
<電池抵抗測定>
上記の実施例および比較例の各々の電池(全固体電池)について、以下の方法により、電池抵抗が測定された。
各電池を0.1MPaで拘束し、電流値1mA、上限電圧4.5V、下限電圧3.0Vで定電流-定電圧(CC-CV)充電、CC-CV放電を実施した。次いで、電流値1mA、上限電圧3.3V(SOC:30%)でCC-CV充電を実施し、休止10分後に電流値100mA、下限電圧0.0VでCC放電を10秒実施して、電圧降下量(ΔV)と放電時の電流(I)を測定した。測定結果から、オームの法則に従って電池抵抗R(=ΔV/I)が計算された。なお、SOCは充電率(State of Charge)を意味する。
電池抵抗の測定結果が表1に示される。また、電池抵抗とRzjis/ΦSEとの関係を示すグラフが図2に示される。
Figure 0007582245000001
表1および図2に示される結果から、Rzjis/D50SEが7以上(D50SE/Rzjisが1/7以下)である実施例1~3では、Rzjis/D50SEが7未満である(D50SE/Rzjisが1/7超である)比較例1および2に比べて、初期拘束圧0.1MPaの場合の電池抵抗(SOC30%における電池抵抗)が顕著に低いことがわかる。
本実施形態および本実施例は、全ての点で例示である。本実施形態および本実施例は、制限的ではない。本開示の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内における全ての変更を包含する。例えば、本実施形態および本実施例から、任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも当初から予定されている。
1 正極、11 正極集電体、12 正極活物質層、2 負極、21 負極集電体、22 負極活物質層、3 セパレータ層、31 主層、32 界面層、5 蓄電要素、100 全固体電池。

Claims (3)

  1. 正極と負極とセパレータ層と、を備える、全固体電池であって、
    前記正極または前記負極は、充放電による体積変化率が10%以上の活物質を含み、
    前記セパレータ層は、固体電解質粒子を含み、前記活物質を含む前記正極または前記負極と接触する界面層を有し、
    前記界面層中に含まれる前記固体電解質粒子のD50が、前記活物質を含む前記正極または前記負極の十点平均粗さの1/7以下である、全固体電池。
  2. 前記負極は、前記活物質として、Siを含む負極活物質を含む、請求項1に記載の全固体電池。
  3. 前記正極は、前記活物質として、Sを含む正極活物質を含む、請求項1または2に記載の全固体電池。
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