JP7487596B2 - 封止用樹脂組成物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法 - Google Patents

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本発明は、封止用樹脂組成物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法に関する。
通信のために発信された電波が誘電体において熱変換されることで発生する伝送損失の量は、周波数と比誘電率の平方根と誘電正接との積として表される。つまり伝送信号は周波数に比例して熱に変わりやすいので、伝送損失を抑制するために高周波帯ほど通信部材の材料に低誘電特性が要求される。
例えば特許文献1~2には、エポキシ樹脂用硬化剤として活性エステル樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物が開示されており、硬化物の誘電正接を低く抑えることができるとされている。
特開2012-246367号公報 特開2014-114352号公報
情報通信分野においては、チャンネル数の増加と伝送される情報量の増加にともなって電波の高周波化が進行している。現在、第5世代移動通信システム(5G)の検討が世界的に進められており、使用する周波帯の候補に約30GHz~70GHzの範囲の幾つかが挙げられている。今後は無線通信の主流がこれほどの高周波帯での通信になるため、通信部材の製造に用いる材料にはさらなる誘電正接の低さが求められている。
一方、電波の高周波化に伴って通信部材の発熱量が増大する傾向にあるため、通信部材の製造に用いる材料には耐熱性のさらなる向上も求められている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、誘電正接と耐熱性とのバランスに優れる硬化物が得られる封止用樹脂組成物、これを用いて封止された電子部品装置、及びこれを用いて封止する電子部品装置の製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1>エポキシ樹脂と硬化剤とを含み、前記硬化剤は活性エステル化合物及びイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物を含む、封止用樹脂組成物。
<2>前記イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物は下記式(1)で表される構造を有する化合物である、<1>に記載の封止用樹脂組成物。

式(1)において、Rはそれぞれ独立に有機基を表す。
<3>前記Rはそれぞれ独立に炭素数4~8の脂肪族炭化水素基を含む、<2>に記載の封止用樹脂組成物。
<4>素子と、前記素子を封止している<1>~<3>のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物の硬化物と、を備える電子部品装置。
<5>素子を支持部材上に配置する工程と、前記素子を<1>~<3>のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物で封止する工程と、を含む電子部品装置の製造方法。
本開示によれば、誘電正接と耐熱性とのバランスに優れる硬化物が得られる封止用樹脂組成物、これを用いて封止された電子部品装置、及びこれを用いて封止する電子部品装置の製造方法が提供される。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
<封止用樹脂組成物>
本開示の封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂と硬化剤とを含み、前記硬化剤は活性エステル化合物及びイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物を含む、封止用樹脂組成物である。
本開示において「イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物」とは、イソシアネート基(-NCO)を1分子中に2個以上有し、かつ、イソシアヌレート環を1分子中に1個以上有する含む化合物を意味する。
本発明者らの検討の結果、上記の封止用樹脂組成物を硬化して得られる硬化物は誘電正接が低く、かつ誘電正接と耐熱性とのバランスに優れていることがわかった。その理由は必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。
まず、本開示の封止用樹脂組成物は、硬化剤として活性エステル化合物を含んでいる。
エポキシ樹脂の硬化剤として一般的に用いられるフェノール硬化剤、アミン硬化剤等は、エポキシ樹脂との反応において2級水酸基を生じる。これに対してエポキシ樹脂と活性エステル化合物との反応では、2級水酸基よりも極性が低いエステル基が生じる。このため、本開示の封止用樹脂組成物は、2級水酸基を発生させる硬化剤のみを含有する封止用樹脂組成物に比べて、硬化物の誘電正接を低く抑えることができる。
さらに、本開示の封止用樹脂組成物は、硬化剤として活性エステル化合物のみを含む封止用樹脂組成物に比べてガラス転移温度が高く、耐熱性に優れている。その理由は必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。
エポキシ樹脂の硬化剤として活性エステル化合物を用いた封止用樹脂組成物では、硬化剤とエポキシ樹脂との反応により2級水酸基の代わりにエステル基が生成する。その結果、2級水酸基に起因して形成される硬化物中の水素結合が低減することと、架橋密度が低下することにより、ガラス転移温度が低下する傾向にある。
本開示の封止用樹脂組成物では、硬化剤として含まれるイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート環が硬化物に導入されることにより、硬化物に剛直性が付与されてガラス転移温度(Tg)が高くなり、耐熱性が向上する。さらに、イソシアヌレート環は対称性が高く極性が低いため、硬化物の誘電正接が低く維持される。
(イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物)
イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物は、下記式(1)で表される構造(イソシアヌレート環)を有する化合物である。1分子中のイソシアヌレート環の数は、1個以上であれば特に制限されない。組成物の調製しやすさの観点からは、8個以下であることが好ましい。
上記式(1)において、Rはそれぞれ独立に有機基を表す。Rで表される有機基としては、炭素数3~10の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~12の芳香族炭化水素基を含むものが挙げられる。
エポキシ基との反応性の観点からは、Rは炭素数4~8の脂肪族炭化水素基を含むことが好ましく、炭素数6の脂肪族炭化水素基を含むことがより好ましい。脂肪族炭化水素基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、低誘電化の観点からは直鎖状であることが好ましい。
上記式(1)におけるRはそれぞれ独立に、末端にイソシアネート基を有してもよく、末端のイソシアネート基と2つのイソシアネート基とが反応して形成される式(1)で表される構造を有してもよい。
イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物が1分子中に有するイソシアネート基の数(イソシアネート基数が異なる化合物の混合物である場合は、平均値)は、2個以上であれば特に制限されない。反応性の観点からは3個以上であることが好ましく、4個以上であることがより好ましい。
イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物の分子量(分子量が異なる化合物の混合物である場合は、数平均分子量)は、特に制限されない。組成物の調製しやすさの観点からは、1000以下であることが好ましく、800以下であることがより好ましく、650以下であることがさらに好ましい。
本発明者らの検討の結果、イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物の分子量が大きい(例えば、800以上)と、硬化物の比誘電率がさらに低くなることがわかった。その理由は必ずしも明らかではないが、モル体積が大きいためと考えられる。
本発明者らの検討の結果、イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物の分子量が小さい(例えば、600以下)と、硬化物のガラス転移温度がさらに高くなることがわかった。その理由は必ずしも明らかではないが、官能基密度が高く、架橋密度が高くなるためと考えられる。
イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート当量(分子量/イソシアネート基数)は、特に制限されない。取扱い性と反応性とのバランスの観点からは、150~250であることが好ましく、160~230であることがより好ましく、170~210であることがさらに好ましい。
封止用樹脂組成物に含まれるイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物は、1種のみでも2種以上の組み合わせであってもよい。2種以上のイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物の組み合わせとしては、式(1)中のRの構造が異なる化合物の組み合わせ、分子中の式(1)で表される構造の数が異なる化合物の組み合わせなどが挙げられる。
充分な耐熱性の向上効果を得る観点からは、硬化剤に含まれるイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物の含有率は、硬化剤全体の8質量%以上であることが好ましく20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。
充分な流動性を確保する観点からは、硬化剤に含まれるイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物の含有率は、硬化剤全体の60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましい。
封止用樹脂組成物は、イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物の前駆体となる化合物を含んでもよい。イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物の前駆体となる化合物としては、OCN-R-NCO(Rは式(1)における脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基と同義である)で表されるジイソシアネート化合物が挙げられる。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等が挙げられる。
封止用樹脂組成物がイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物の前駆体となる化合物を含む場合、上記イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物の含有率は当該化合物も含めた含有率とする。
(活性エステル化合物)
本開示において「活性エステル化合物」とは、エポキシ基と反応しうるエステル基(活性エステル基)を1分子中に1個以上有する化合物を意味する。
本開示の封止用樹脂組成物は、硬化剤として活性エステル化合物を含む。これにより、硬化物中に生成する極性の大きい2級水酸基の量が低減され、硬化物の誘電正接を低く抑えることができる。
また、硬化物中の極性基は硬化物の吸水性を高めるところ、硬化剤として活性エステル化合物を用いることによって硬化物の極性基濃度を抑えることができ、硬化物の吸水性を抑制することができる。そして、硬化物の吸水性を抑制すること、つまりは極性分子であるHOの含有量を抑制することにより、硬化物の誘電正接をさらに低く抑えることができる。硬化物の吸水率は、0%~0.35%が好ましく、0%~0.30%がより好ましく、0%~0.25%がさらに好ましい。ここで硬化物の吸水率は、プレッシャークッカー試験(121℃、2.1気圧、24時間)によって求める質量増加率である。
活性エステル化合物は、エポキシ基と反応するエステル基を分子中に1個以上有する化合物であればその種類は特に制限されない。
活性エステル化合物としては、フェノールエステル化合物、チオフェノールエステル化合物、N-ヒドロキシアミンエステル化合物、複素環ヒドロキシ化合物のエステル化物等が挙げられる。
活性エステル化合物としては、例えば、脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸の少なくとも1種と脂肪族ヒドロキシ化合物及び芳香族ヒドロキシ化合物の少なくとも1種とから得られるエステル化合物が挙げられる。脂肪族化合物を重縮合の成分とするエステル化合物は、脂肪族鎖を有することによりエポキシ樹脂との相溶性に優れる傾向にある。芳香族化合物を重縮合の成分とするエステル化合物は、芳香環を有することにより耐熱性に優れる傾向にある。
活性エステル化合物の具体例としては、芳香族カルボン酸と芳香族ヒドロキシ化合物のフェノール性水酸基との縮合反応にて得られる芳香族エステルが挙げられる。中でも、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルプロパン、ジフェニルメタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン酸等の芳香環の水素原子の2~4個をカルボキシ基で置換した芳香族カルボン酸成分と、前記した芳香環の水素原子の1個を水酸基で置換した1価フェノールと、前記した芳香環の水素原子の2~4個を水酸基で置換した多価フェノールとの混合物を原材料として、芳香族カルボン酸と芳香族ヒドロキシ化合物のフェノール性水酸基との縮合反応にて得られる芳香族エステルが好ましい。すなわち、上記芳香族カルボン酸成分由来の構造単位と上記1価フェノール由来の構造単位と上記多価フェノール由来の構造単位とを有する芳香族エステルが好ましい。
活性エステル化合物の具体例としては、特開2012-246367号公報に記載されている、脂肪族環状炭化水素基を介してフェノール化合物が結節された分子構造を有するフェノール樹脂と、芳香族ジカルボン酸又はそのハライドと、芳香族モノヒドロキシ化合物とを反応させて得られる構造を有する活性エステル樹脂が挙げられる。当該活性エステル樹脂としては、下記の構造式(1)で表される化合物が好ましい。
構造式(1)中、Rは炭素数1~4のアルキル基であり、Xはベンゼン環、ナフタレン環、炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゼン環若しくはナフタレン環、又はビフェニル基であり、Yはベンゼン環、ナフタレン環、又は炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゼン環若しくはナフタレン環であり、kは0又は1であり、nは繰り返し数の平均を表し、0.25~1.5である。
構造式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の例示化合物(1-1)~(1-10)が挙げられる。構造式中のt-Buは、tert-ブチル基である。
活性エステル化合物の別の具体例としては、特開2014-114352号公報に記載されている、下記の構造式(2)で表される化合物及び下記の構造式(3)で表される化合物が挙げられる。
構造式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、Zはベンゾイル基、ナフトイル基、炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゾイル基又はナフトイル基、及び炭素数2~6のアシル基からなる群から選ばれるエステル形成構造部位(z1)、又は水素原子(z2)であり、Zのうち少なくとも1個はエステル形成構造部位(z1)である。
構造式(3)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、Zはベンゾイル基、ナフトイル基、炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゾイル基又はナフトイル基、及び炭素数2~6のアシル基からなる群から選ばれるエステル形成構造部位(z1)、又は水素原子(z2)であり、Zのうち少なくとも1個はエステル形成構造部位(z1)である。
構造式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の例示化合物(2-1)~(2-6)が挙げられる。
構造式(3)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の例示化合物(3-1)~(3-6)が挙げられる。
活性エステル化合物としては、市販品を用いてもよい。活性エステル化合物の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」(DIC株式会社製);芳香族構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416-70BK」、「EXB-8」、「EXB-9425」(DIC株式会社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル株式会社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱ケミカル株式会社製)等が挙げられる。
活性エステル化合物は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
活性エステル化合物のエステル当量(分子量/活性エステル基数)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、150g/eq~400g/eqが好ましく、170g/eq~300g/eqがより好ましく、200g/eq~250g/eqがさらに好ましい。
活性エステル化合物のエステル当量は、JIS K 0070:1992に準じた方法により測定される値とする。
充分な誘電正接の低減効果を得る観点からは、硬化剤に含まれる活性エステル化合物の含有率は、硬化剤全体の30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。
充分な耐熱性を確保する観点からは、硬化剤に含まれる活性エステル化合物の含有率は、硬化剤全体の95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましい。
誘電正接と耐熱性とのバランスの観点からは、硬化剤に含まれる活性エステル化合物とイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物(前駆体も含む)の質量比(活性エステル化合物:イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物)は0.5:1~20:1であることが好ましく、1:1~15:1であることがより好ましく、5:1~12:1であることがさらに好ましい。
(その他の硬化剤)
硬化剤は、必要に応じ、活性エステル化合物及びイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物以外のその他の硬化剤を含んでもよい。この場合、その他の硬化剤の種類は特に制限されず、封止用樹脂組成物の所望の特性等に応じて選択できる。
その他の硬化剤としては、ヒドロキシベンゾフェノン化合物、フェノール硬化剤、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤等が挙げられる。
イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物の反応性の観点からは、硬化剤として2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン等のヒドロキシベンゾフェノン化合物を含むことが好ましい。硬化剤がイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物とベンゾフェノン化合物を含む場合、その含有率は、イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物及びベンゾフェノン化合物の合計の20質量%~50質量%であることが好ましく、30質量%~45質量%であることがより好ましい。
フェノール硬化剤として具体的には、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の多価フェノール化合物;フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル等とから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂、メタキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジシクロペンタジエンとから共重合により合成されるジシクロペンタジエン型フェノール樹脂及びジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂;これら2種以上を共重合して得たフェノール樹脂などが挙げられる。これらのフェノール硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その他の硬化剤の官能基当量(フェノール硬化剤の場合は水酸基当量)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、70g/eq~1000g/eqであることが好ましく、80g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
その他の硬化剤の官能基当量(フェノール硬化剤の場合は水酸基当量)は、JIS K 0070:1992に準じた方法により測定される値とする。
硬化剤の軟化点又は融点は、特に制限されない。成形性と耐リフロー性の観点からは、40℃~180℃であることが好ましく、封止用樹脂組成物の製造時における取扱い性の観点からは、50℃~160℃であることがより好ましい。
硬化剤の融点又は軟化点は、JIS K 7234:1986及びJIS K 7233:1986に記載の単一円筒回転粘度計法により測定される値とする。
硬化剤が活性エステル化合物、イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物及びその他の硬化剤を含む場合、活性エステル化合物及びイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物の合計含有率は、硬化剤全体の50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
(エポキシ樹脂)
本開示の封止用樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の種類は特に制限されない。
エポキシ樹脂として具体的には、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものであるノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等);上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂;上記フェノール化合物及びナフトール化合物と、アルデヒド化合物とを酸性触媒下で共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものである共重合型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のジグリシジルエーテルであるジフェニルメタン型エポキシ樹脂;アルキル置換又は非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂;スチルベン系フェノール化合物のジグリシジルエーテルであるスチルベン型エポキシ樹脂;ビスフェノールS等のジグリシジルエーテルである硫黄原子含有エポキシ樹脂;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の多価カルボン酸化合物のグリシジルエステルであるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;アニリン、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したものであるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノール化合物の共縮合樹脂をエポキシ化したものであるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;分子内のオレフィン結合をエポキシ化したものであるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,5-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるパラキシリレン変性エポキシ樹脂;メタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるメタキシリレン変性エポキシ樹脂;テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるテルペン変性エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルである多環芳香環変性エポキシ樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるナフタレン型エポキシ樹脂;ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるアラルキル型エポキシ樹脂;などが挙げられる。さらにはアクリル樹脂のエポキシ化物等もエポキシ樹脂として挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのエポキシ樹脂の中でも、流動性の観点からはビフェニル型エポキシ樹脂が好ましく、吸湿性の観点からはアラルキル型エポキシ樹脂が好ましく、硬化性の観点からはノボラック型エポキシ樹脂及びトリフェニルメタン型エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂のエポキシ当量(分子量/エポキシ基数)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性及び電気的信頼等の各種特性バランスの観点からは、100g/eq~1000g/eqであることが好ましく、150g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K 7236:2009に準じた方法で測定される値とする。
エポキシ樹脂の軟化点又は融点は特に制限されない。成形性と耐リフロー性の観点からは40℃~180℃であることが好ましく、封止用樹脂組成物の調製の際の取扱い性の観点からは50℃~130℃であることがより好ましい。
エポキシ樹脂の融点又は軟化点は、JIS K 7234:1986及びJIS K 7233:1986に記載の単一円筒回転粘度計法により測定される値とする。
封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有率は、強度、流動性、耐熱性、成形性等の観点から0.5質量%~50質量%であることが好ましく、2質量%~30質量%であることがより好ましい。
(硬化促進剤)
封止用樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤の種類は特に制限されず、エポキシ樹脂又は硬化剤の種類、封止用樹脂組成物の所望の特性等に応じて選択できる。
硬化促進剤としては、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)等のジアザビシクロアルケン、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルヒドロキシイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール等の環状アミジン化合物;前記環状アミジン化合物の誘導体;前記環状アミジン化合物又はその誘導体のフェノールノボラック塩;これらの化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;DBUのテトラフェニルボレート塩、DBNのテトラフェニルボレート塩、2-エチル-4-メチルイミダゾールのテトラフェニルボレート塩、N-メチルモルホリンのテトラフェニルボレート塩等の環状アミジニウム化合物;ピリジン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物;前記三級アミン化合物の誘導体;酢酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、リン酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、酢酸テトラエチルアンモニウム、安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム等のアンモニウム塩化合物;トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p-トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の三級ホスフィン;前記三級ホスフィンと有機ボロン類との錯体等のホスフィン化合物;前記三級ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;前記三級ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と4-ブロモフェノール、3-ブロモフェノール、2-ブロモフェノール、4-クロロフェノール、3-クロロフェノール、2-クロロフェノール、4-ヨウ化フェノール、3-ヨウ化フェノール、2-ヨウ化フェノール、4-ブロモ-2-メチルフェノール、4-ブロモ-3-メチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジメチルフェノール、4-ブロモ-3,5-ジメチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-クロロ-1-ナフトール、1-ブロモ-2-ナフトール、6-ブロモ-2-ナフトール、4-ブロモ-4’-ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる、分子内分極を有する化合物;テトラフェニルホスホニウム等のテトラ置換ホスホニウム、テトラ-p-トリルボレート等のホウ素原子に結合したフェニル基がないテトラ置換ホスホニウム及びテトラ置換ボレート;テトラフェニルホスホニウムとフェノール化合物との塩などが挙げられる。
封止用樹脂組成物が硬化促進剤を含む場合、その量は、樹脂成分100質量部(エポキシ樹脂と硬化剤の合計量)に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~15重量部であることがより好ましい。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して0.1質量部以上であると、短時間で良好に硬化する傾向にある。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して30質量部以下であると、硬化速度が速すぎず良好な成形品が得られる傾向にある。
(無機充填材)
本開示の封止用樹脂組成物は、無機充填材を含有してもよい。無機充填材の種類は、特に制限されない。具体的には、溶融シリカ、結晶シリカ、ガラス、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、タルク、クレー、マイカ等の無機材料が挙げられる。難燃効果を有する無機充填材を用いてもよい。難燃効果を有する無機充填材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、硼酸亜鉛などが挙げられる。
無機充填材の中でも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカ等のシリカが好ましく、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましい。無機充填材は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。無機充填材の形態としては粉未、粉末を球形化したビーズ、繊維等が挙げられる。
無機充填材が粒子状である場合、その平均粒径は、特に制限されない。例えば、平均粒径が0.2μm~100μmであることが好ましく、0.5μm~50μmであることがより好ましい。平均粒径が0.2μm以上であると、封止用樹脂組成物の粘度の上昇がより抑制される傾向がある。平均粒径が100μm以下であると、充填性がより向上する傾向にある。無機充填材の平均粒径は、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置により、体積平均粒径(D50)として求める。
封止用樹脂組成物に含まれる無機充填材の含有率は特に制限されない。流動性及び強度の観点からは、封止用樹脂組成物全体の30体積%~90体積%であることが好ましく、35体積%~85体積%であることがより好ましく、40体積%~80体積%であることがさらに好ましい。無機充填材の含有率が封止用樹脂組成物全体の30体積%以上であると、硬化物の熱膨張係数、熱伝導率、弾性率等の特性がより向上する傾向にある。無機充填材の含有率が封止用樹脂組成物全体の90体積%以下であると、封止用樹脂組成物の粘度の上昇が抑制され、流動性がより向上して成形性がより良好になる傾向にある。
[各種添加剤]
封止用樹脂組成物は、上述の成分に加えて、以下に例示するカップリング剤、イオン交換体、離型剤、難燃剤、着色剤等の各種添加剤を含んでもよい。封止用樹脂組成物は、以下に例示する添加剤以外にも必要に応じて当技術分野で周知の各種添加剤を含んでもよい。
(カップリング剤)
封止用樹脂組成物は、カップリング剤を含んでもよい。樹脂成分と無機充填材との接着性を高める観点からは、封止用樹脂組成物はカップリング剤を含むことが好ましい。カップリング剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、ジシラザン等のシラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウム/ジルコニウム系化合物などの公知のカップリング剤が挙げられる。
封止用樹脂組成物がカップリング剤を含む場合、カップリング剤の量は、無機充填材100質量部に対して0.05質量部~15質量部であることが好ましく、0.1質量部~10質量部であることがより好ましい。カップリング剤の量が無機充填材100質量部に対して0.05質量部以上であると、フレームとの接着性がより向上する傾向にある。カップリング剤の量が無機充填材100質量部に対して15質量部以下であると、パッケージの成形性がより向上する傾向にある。
(イオン交換体)
封止用樹脂組成物は、イオン交換体を含んでもよい。封止用樹脂組成物は、封止される素子を備える電子部品装置の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、イオン交換体を含むことが好ましい。イオン交換体は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハイドロタルサイト化合物、並びにマグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の含水酸化物等が挙げられる。イオン交換体は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、下記一般式(A)で表されるハイドロタルサイトが好ましい。
Mg(1-X)Al(OH)(COX/2・mHO ……(A)
(0<X≦0.5、mは正の数)
封止用樹脂組成物がイオン交換体を含む場合、その含有量は、ハロゲンイオン等のイオンを捕捉するのに充分な量であれば特に制限はない。例えば、樹脂成分100質量部(エポキシ樹脂と硬化剤の合計量)に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~10質量部であることがより好ましい。
(離型剤)
封止用樹脂組成物は、成形時における金型との良好な離型性を得る観点から、離型剤を含んでもよい。離型剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックスなどが挙げられる。離型剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
封止用樹脂組成物が離型剤を含む場合、その量は樹脂成分100質量部(エポキシ樹脂と硬化剤の合計量)に対して0.01質量部~10質量部が好ましく、0.1質量部~5質量部がより好ましい。離型剤の量が樹脂成分100質量部に対して0.01質量部以上であると、離型性が充分に得られる傾向にある。10質量部以下であると、より良好な接着性が得られる傾向にある。
(難燃剤)
封止用樹脂組成物は、難燃剤を含んでもよい。難燃剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハロゲン原子、アンチモン原子、窒素原子又はリン原子を含む有機又は無機の化合物、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
封止用樹脂組成物が難燃剤を含む場合、その量は、所望の難燃効果を得るのに充分な量であれば特に制限されない。例えば、樹脂成分100質量部(エポキシ樹脂と硬化剤の合計量)に対して1質量部~30質量部であることが好ましく、2質量部~20質量部であることがより好ましい。
(着色剤)
封止用樹脂組成物は、着色剤を含んでもよい。着色剤としてはカーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の公知の着色剤を挙げることができる。
着色剤の含有量は目的等に応じて適宜選択できる。着色剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(封止用樹脂組成物の調製方法)
封止用樹脂組成物の調製方法は、特に制限されない。一般的な手法としては、所定の配合量の成分をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練し、冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。より具体的には、例えば、上述した成分の所定量を均一に攪拌及び混合し、予め70℃~140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダー等で混練し、冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。
封止用樹脂組成物は、常温常圧下(例えば、25℃、大気圧下)において固体であることが好ましい。封止用樹脂組成物が固体である場合の形状は特に制限されず、粉状、粒状、タブレット状等が挙げられる。封止用樹脂組成物がタブレット状である場合の寸法及び質量は、パッケージの成形条件に合うような寸法及び質量となるようにすることが取扱い性の観点から好ましい。
<電子部品装置>
本開示の一実施形態である電子部品装置は、素子と、前記素子を封止している本開示の封止用樹脂組成物の硬化物と、を備える。
電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ、有機基板等の支持部材に、素子(半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子など)を搭載して得られた素子部を封止用樹脂組成物で封止したものが挙げられる。
より具体的には、リードフレーム上に素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部とをワイヤボンディング、バンプ等で接続した後、封止用樹脂組成物を用いてトランスファ成形等によって封止した構造を有するDIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC;テープキャリアにバンプで接続した素子を封止用樹脂組成物で封止した構造を有するTCP(Tape Carrier Package);支持部材上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した素子を、封止用樹脂組成物で封止した構造を有するCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール等;裏面に配線板接続用の端子を形成した支持部材の表面に素子を搭載し、バンプ又はワイヤボンディングにより素子と支持部材に形成された配線とを接続した後、封止用樹脂組成物で素子を封止した構造を有するBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、MCP(Multi Chip Package)などが挙げられる。また、プリント配線板においても封止用樹脂組成物を好適に使用することができる。
<電子部品装置の製造方法>
本開示の電子部品装置の製造方法は、素子を支持部材上に配置する工程と、前記素子を本開示の封止用樹脂組成物で封止する工程と、を含む。
上記各工程を実施する方法は特に制限されず、一般的な手法により行うことができる。
また、電子部品装置の製造に使用する支持部材及び素子の種類は特に制限されず、電子部品装置の製造に一般的に用いられる支持部材及び素子を使用できる。
本開示の封止用樹脂組成物を用いて素子を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法、インジェクション成形法、圧縮成形法等が挙げられる。これらの中では、低圧トランスファ成形法が一般的である。
以下、上記実施形態を実施例により具体的に説明するが、上記実施形態の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
<封止用樹脂組成物の調製>
下記に示す成分を表1に示す配合割合(質量部)で混合し、実施例及び比較例の封止用樹脂組成物を調製した。
すべての実施例及び比較例において、エポキシ樹脂と硬化剤との当量比は1:1となるように調整した。
・エポキシ樹脂1:ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社、品名「NC-3000)
・エポキシ樹脂2:ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社、品名「YX-4000」)
・硬化剤1:芳香族構造を含む活性エステル化合物
・硬化剤2:2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン
・硬化剤3:HDIから合成されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物(分子量=930、イソシアネート基数=4.5、イソシアネート当量=207、東ソー株式会社、品名「コロネートHK」)
・硬化剤4:HDIから合成されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物(分子量=700、イソシアネート基数=3.5、イソシアネート当量=200、東ソー株式会社、品名「コロネートHX」)
・硬化剤5:HDIから合成されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物(分子量=670、イソシアネート基数=3.5、イソシアネート当量=191、東ソー株式会社、品名「コロネートHXR」)
・硬化剤6:HDIから合成されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物(分子量=580、イソシアネート基数=3.2、イソシアネート当量=181、東ソー株式会社、品名「コロネートHXLV」)
・硬化剤7:フェノールノボラック樹脂(日立化成株式会社、品名「HP-850N」)
・硬化促進剤:トリフェニルホスフィンとp-ベンゾキノンとの付加物
・カップリング剤1:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社、品名「KBM-573」)
・カップリング剤2:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社、品名「KBM-803」)
・離型剤:モンタン酸エステルワックス(クラリアントジャパン株式会社、品名「HW-E」)
・着色剤:カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社、品名「MA600」)
・充填材1:溶融シリカ(体積平均粒径10μm)
<封止用樹脂組成物の性能評価>
(比誘電率及び誘電正接の測定)
封止用樹脂組成物をハンドプレス機で、金型温度175℃、成形圧力2.5MPa、硬化時間600秒の条件で成形し、後硬化を175℃で6時間行い、板状の硬化物(縦12.5mm、横25mm、厚さ約0.2mm)を得た。板状の硬化物を試験片として、誘電率測定装置(Agilent社、品名「ネットワークアナライザN5227A」)を用いて、温度25±3℃下、60GHzでの比誘電率と誘電正接を測定した。
(スパイラルフロー試験)
EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、封止用樹脂組成物を金型温度180℃、成形圧力6.9MPA、硬化時間120秒の条件で成形し、流動距離(cm)を求めた。
(Tgの測定)
トランスファ成形機を用いて、金型温度175℃、硬化時間90秒、成形圧6.9MPAの条件で、4mm×4mm×20mmの成形物を作製し、この成形物を175℃で6時間の条件で完全に硬化させて試験片を得た。
試験片の線膨張係数(CTE、ppm/℃)を、熱機械分析装置(NETZSCH社、TMA4000SE)を用いて測定した。測定温度範囲は30℃~260℃、昇温速度は10℃/分とした。40℃~80℃の範囲におけるCTEの接線と、200℃~240℃の範囲におけるCTEの接線との交点に対応する温度をガラス転移温度Tg(℃)とした。
表1に示すように、硬化剤として活性エステル化合物のみを含む比較例2の封止用樹脂組成物は、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂のみを含む比較例1の封止用樹脂組成物に比べて硬化物の誘電正接が低いが、ガラス温度が低く耐熱性に劣っている。
硬化剤として活性エステルとイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物とを含む実施例の封止用樹脂組成物は、比較例2に比べて硬化物のガラス転移温度が高く、耐熱性に優れている。さらに、誘電正接も低く抑えられている。

Claims (5)

  1. エポキシ樹脂と硬化剤とを含み、前記硬化剤は活性エステル化合物及びイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物を含む、封止用樹脂組成物。
  2. 前記イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物は下記式(1)で表される構造を有する化合物である、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。

    式(1)において、Rはそれぞれ独立に有機基を表す。
  3. 前記Rはそれぞれ独立に炭素数4~8の脂肪族炭化水素基を含む、請求項2に記載の封止用樹脂組成物。
  4. 素子と、前記素子を封止している請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物の硬化物と、を備える電子部品装置。
  5. 素子を支持部材上に配置する工程と、前記素子を請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物で封止する工程と、を含む電子部品装置の製造方法。
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