定義
他の意味であると定義されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野で一般的に使用されるのと同じ意味を有する。本明細書を解釈する目的で、以下の定義が適用され、適切な場合にはいつでも、単数形で使用される用語は、複数形も含み、その逆に、複数形で使用される用語は、単数形も含む。
本明細書で使用する場合、「抗原結合分子」という用語は、最も広い意味で、抗原決定基に特異的に結合する分子を指す。抗原結合分子の例は、抗体、抗体断片及び足場抗原結合タンパク質である。
「抗原結合ドメイン」という用語は、抗原の一部又は全てに特異的に結合し、且つ相補性である領域を含む抗原結合分子の一部を指す。抗原が大きい場合、抗原結合分子は、抗原の特定の部分のみに結合してもよく、この部分は、エピトープと称する。抗原結合ドメインは、例えば、1つ以上の可変ドメイン(可変領域とも呼ばれる)によって与えられてもよい。好ましくは、抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)及び抗体重鎖可変領域(VH)を含むが、足場抗原結合タンパク質、特にリポカリンムテインによって提供されてもよい。
本明細書で使用する場合、「標的細胞抗原に特異的に結合可能な抗原結合ドメイン」、又は「標的細胞抗原に特異的に結合可能な部分」という用語は、標的細胞抗原に特異的に結合するポリペプチド分子を意味する。一態様では、抗原結合ドメインは、それが結合している実体(例えば4-1BBに特異的に結合可能なリポカリンムテイン)を標的部位、例えば標的細胞抗原を有する特定の種類の腫瘍細胞に向けることができる。標的細胞抗原に特異的に結合可能な抗原結合ドメインは、本明細書で更に定義される抗体及びその断片を含む。さらに、標的細胞抗原に特異的に結合可能な部分は、本明細書で更に定義される足場抗原結合タンパク質を含む。抗体又はその断片に関して、「標的細胞抗原に特異的に結合可能な抗原結合ドメイン」という用語は、抗体軽鎖可変領域(VL)及び抗体重鎖可変領域(VH)を含む。
本明細書中で使用する場合、「標的細胞抗原に特異的に結合可能なFab断片」という用語は、標的細胞抗原に特異的に結合するFab分子を指す。一態様では、抗原結合部分は、その標的細胞抗原を介してシグナル伝達を活性化することが可能である。特定の態様では、抗原結合部分は、それが結合している実体(例えばリポカリンムテイン)を標的部位、例えば標的細胞抗原を有する特定の種類の腫瘍細胞又は腫瘍間質に向けることができる。
本明細書の「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、種々の抗体構造を包含し、限定されないが、所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性抗体及び多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を含む。
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、実質的に均一な抗体の集合から得られる抗体を指し、すなわち、集合に含まれる個々の抗体が、同一であり、及び/又は同じエピトープに結合するが、但し、例えば、天然に存在する突然変異又はモノクローナル抗体製剤の製造中に生じる突然変異を含む、可能なバリアント抗体を除き、かかるバリアントは、一般的に、少量存在する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤のそれぞれのモノクローナル抗体は、1つの抗原上の単一の決定基に対して指向する。
「単一特異性」抗体という用語は、本明細書で使用する場合、同じ抗原の同じエピトープにそれぞれ結合する1つ以上結合部位を有する抗体を示す。「二重特異性」という用語は、抗原結合分子が、少なくとも2つの別個の抗原決定基(標的)に特異的に結合することができることを意味する。典型的には、二重特異性抗原結合分子は、2つの抗原結合部位を含み、それぞれが異なる抗原決定基に対して特異的である。特定の態様では、二重特異性抗原結合分子は3つの抗原結合部位を含み、2つの抗原結合部位は第1の抗原決定基に特異的であり、1つは第2の抗原決定基に特異的である。特定の実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、2つの抗原決定基(特に、2つの別個の細胞で発現する2つの抗原決定基)に同時に結合することができる。
「価数」という用語は、本出願で使用される場合、抗原結合分子内の特定数の結合部位の存在を示す。したがって、「一価」、「二価」、「四価」及び「六価」という用語は、それぞれ、抗原結合分子中の1個の結合部位、2個の結合部位、4個の結合部位及び6個の結合部位の存在を示す。
本出願内で使用される場合、「抗原に対して一価」という用語は、抗原結合分子内の前記抗原に対する1つの結合部位のみの存在を示す。本出願内で使用される場合、「標的細胞抗原に対して一価」という用語は、抗原結合分子内の当該標的細胞抗原に対する1つの結合部位のみの存在を示す。
「全長抗体」、「インタクト抗体」及び「全抗体」という用語は、天然抗体構造に実質的に類似した構造を有する抗体を指すために、本明細書で相互に置き換え可能に用いられる。「天然抗体」は、さまざまな構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgGクラス抗体は、約150,000ダルトンのヘテロテトラマー糖タンパク質であり、ジスルフィド結合した2つの軽鎖と2つの重鎖から構成される。N末端からC末端まで、それぞれの重鎖は、可変ドメイン(VH)(可変重鎖ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる)と、その後に3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)(重鎖定常領域とも呼ばれる)を有する。同様に、N末端からC末端まで、それぞれの軽鎖は、可変ドメイン(VL)(可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる)と、その後に軽鎖定常ドメイン(CL)(軽鎖定常領域とも呼ばれる)を有する。抗体の重鎖は、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)又はμ(IgM)と呼ばれる5種類の1つに分けられてもよく、このいくつかは、例えば、γ1(IgG1)、γ2(IgG2)、γ3(IgG3)、γ4(IgG4)、α1(IgA1)及びα2(IgA2)等のサブタイプに更に分けられてもよい。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2種類の1つに割り当てられてもよい。
「抗体断片」は、インタクト抗体が結合する抗原に結合するインタクト抗体の一部を含むインタクト抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、クロスFab断片;直鎖抗体;一本鎖抗体分子(例えばscFv);及び単一ドメイン抗体が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の抗体断片の総説としては、Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)を参照されたい。scFv断片の総説としては、例えば、Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照されたい。また、国際公開第93/16185号及び米国特許第5,571,894号及び第5,587,458号を参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、in vivoでの半減期が長くなったFab及びF(ab’)2断片の説明については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。ダイアボディは、二価又は二重特異性であってもよい2つの抗原結合部位を含む抗体断片であり、例えば、EP 404,097号;国際公開第1993/01161号;Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)、及びHollinger et al.,Proc Natl Acad Sci USA 90,6444-6448(1993)を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディも、Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)に説明されている。シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て又は一部又は軽鎖可変ドメインの全て又は一部を含む抗体断片である。特定の実施形態では、シングルドメイン抗体は、ヒトシングルドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA;例えば、米国特許第6,248,516号B1を参照されたい)。抗体断片は、限定されないが、本明細書に記載されるように、インタクト抗体のタンパク質分解による消化、及び組換え宿主細胞(例えば、大腸菌又はファージ)による産生を含め、種々の技術によって作られてもよい。
インタクト抗体のパパイン消化により、2つの同一の抗原結合断片が得られ、これは、それぞれ重鎖及び軽鎖可変ドメインと、更に、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む「Fab」断片と呼ばれる。したがって、本明細書で使用する場合、「Fab断片」という用語は、軽鎖(CL)のVLドメイン及び定常ドメインを含む軽鎖断片と、重鎖のVHドメイン及び第1の定常ドメイン(CH1)を含む抗体断片を指す。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含め、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端での数個の残基の付加によって、Fab断片とは異なる。Fab’-SHとは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を保持するFab’断片である。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位(2つのFab断片)と、Fc領域の一部とを含む、F(ab’)2断片が得られる。
「クロスFab断片」又は「xFab断片」又は「クロスオーバーFab断片」という用語は、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のいずれかが交換されたFab断片を指す。クロスオーバーFab分子の2つの可能な鎖組成が可能であり、本発明の二重特異性抗体に含まれる。一方、Fab重鎖及び軽鎖の可変領域は、置き換わっており、すなわち、クロスオーバーFab分子は、軽鎖可変領域(VL)と重鎖定常領域(CH1)とで構成されるペプチド鎖と、重鎖可変領域(VH)と軽鎖定常領域(CL)とで構成されるペプチド鎖とを含む。このクロスオーバーFab分子は、クロスFab(VLVH)とも呼ばれる。一方、Fab重鎖及び軽鎖の定常領域が置き換わっている場合、クロスオーバーFab分子は、重鎖可変領域(VH)と軽鎖定常領域(CL)とで構成されるペプチド鎖と、軽鎖可変領域(VL)と重鎖定常領域(CH1)とで構成されるペプチド鎖とを含む。このクロスオーバーFab分子は、クロスFab(CLCH1)とも呼ばれる。一態様では、「Fab断片」という用語は、クロスFab断片も含む。
「足場抗原結合タンパク質」は、当該技術分野で既知であり、例えば、フィブロネクチン及び設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)は、抗原結合ドメインの代替的な足場として使用されてきた。例えば、Gebauer and Skerra,Engineered protein scaffolds as next-generation antibody therapeutics.Curr Opin Chem Biol 13:245-255(2009)及びStumpp et al.,Darpins:A new generation of protein therapeutics.Drug Discovery Today 13:695-701(2008)を参照されたい。本発明の一態様では、足場抗原結合タンパク質は、CTLA-4(エビボディ)、リポカリン(アンチカリン)、プロテインA由来分子、例えば、プロテインAのZ-ドメイン(アフィボディ)、A-ドメイン(アビマー/マキシボディ)、血清トランスフェリン(トランスボディ);設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)、抗体軽鎖又は重鎖の可変ドメイン(単一ドメイン抗体、sdAb)、抗体重鎖の可変ドメイン(ナノボディ、aVH)、VNAR断片、フィブロネクチン(アドネクチン)、C型レクチンドメイン(テトラネクチン);新規抗原受容体β-ラクタマーゼの可変ドメイン(VNAR断片)、ヒトγ-クリスタリン又はユビキチン(アフィリン分子);ヒトプロテアーゼ阻害剤のクニッツ型ドメイン、ミクロボディ、例えば、ノッチンファミリー由来のタンパク質、ペプチドアプタマー及びフィブロネクチン(アドネクチン)からなる群より選択される。CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4)は、主にCD4+T細胞で発現するCD28ファミリー受容体である。その細胞外ドメインは、可変ドメイン様のIg折りたたみを有する。抗体のCDRに対応するループは、異なる結合特性を与えるために、異種配列と置換されてもよい。異なる結合特異性を有するように操作されたCTLA-4分子も、エビボディとして知られている(例えば、米国特許第7166697号B1)。エビボディは、抗体(例えば、ドメイン抗体)の単離された可変領域とほぼ同じ大きさである。更なる詳細については、Journal of Immunological Methods 248(1-2)、31-45(2001)を参照されたい。リポカリンは、ステロイド、ビリン、レチノイド及び脂質等の小さな疎水性分子を運ぶ細胞外タンパク質のファミリーである。リポカリンは、剛性βシート二次構造を有し、円錐構造の開放端に多くのループがあり、このループは、異なる標的抗原に結合するように操作することができる。アンチカリンは、160~180アミノ酸の大きさであり、リポカリンから誘導される。更なる詳細については、Biochim Biophys Acta 1482:337-350(2000)、米国特許第7250297号B1及び米国特許出願公開第20070224633号を参照されたい。アフィボディは、抗原に結合するように操作することが可能な、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)のプロテインAに由来する足場である。ドメインは、約58アミノ酸の3つの螺旋形の束からなる。ライブラリーは、表面残基のランダム化によって作られている。更なる詳細について、Protein Eng.Des.Sel.2004,17,455-462及び欧州特許出願公開第1641818号A1を参照されたい。アビマーは、Aドメイン足場ファミリーに由来する複数ドメインタンパク質である。約35アミノ酸の天然ドメインは、規定のジスルフィド結合した構造に適合する。多様性は、A-ドメインのファミリーによって示される天然の変動のシャッフリングによって作られる。更なる詳細については、Nature Biotechnology 23(12)、1556-1561(2005)及びExpert Opinion on Investigational Drugs 16(6)、909-917(2007年6月)を参照されたい。トランスフェリンは、モノマー血清輸送糖タンパク質である。トランスフェリンは、許容状態の表面ループへのペプチド配列の挿入によって異なる標的抗原に結合するように操作可能である。操作されたトランスフェリン足場の例としては、トランスボディが挙げられる。更なる詳細については、J.Biol.Chem 274、24066-24073(1999)を参照されたい。設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)は、細胞骨格の内在性膜タンパク質の接着に介在するタンパク質のファミリーであるアンキリンに由来する。単一のアンキリンリピートは、2つのαらせんとβターンとからなる33残基のモチーフである。単一のアンキリンリピートは、各反復の第1のαらせん及びβターンの中の残基をランダム化することによって異なる標的抗原に結合するように操作することができる。その結合界面は、モジュールの数を増やすことによって、増加させることができる(親和性成熟方法)。更なる詳細については、J.Mol.Biol.332、489-503(2003)、PNAS 100(4)、1700-1705(2003)及びJ.Mol.Biol.369、1015-1028(2007)及び米国特許出願公開第20040132028号A1を参照されたい。一本鎖ドメイン抗体は、一本のモノマー性可変抗体ドメインからなる抗体断片である。第1の単一ドメインは、ラクダ由来の抗体重鎖の可変ドメインに由来した(ナノボディ又はVHH断片)。さらに、単一ドメイン抗体という用語は、自律的なヒト重鎖可変ドメイン(aVH)又はサメ由来VNAR断片を含む。フィブロネクチンは、抗原に結合するように操作可能な足場である。アドネクチンは、ヒトフィブロネクチンIII型(FN3)の15反復単位の10番目のドメインの天然アミノ酸配列を有する骨格からなる。βサンドイッチの片方の端にある3つのループを、アドネクチンが目的の治療標的を特異的に認識することができるように操作することができる。更なる詳細について、Protein Eng.Des.Sel.18,435-444(2005)、米国特許出願公開第20080139791号、国際公開第2005056764号、及び米国特許第6818418号B1を参照されたい。ペプチドアプタマーは、定常足場タンパク質、典型的には、活性部位に挿入される拘束された可変ペプチドループを含むチオレドキシン(TrxA)からなるコンビナトリアル認識分子である。更なる詳細について、Expert Opin.Biol.Ther.5、783-797(2005)を参照されたい。ミクロボディは、3~4のシステイン架橋を含む、25~50アミノ酸長の天然に存在するミクロタンパク質に由来し、ミクロタンパク質の例としては、KalataBI、コノトキシン及びノッチンが挙げられる。ミクロタンパク質は、ミクロタンパク質の全体的な折りたたみに影響を与えることなく、25アミノ酸までを含むように操作することができるループを有する。操作されたノッチンドメインの更なる詳細については、国際公開第2008098796号を参照されたい。
リポカリンは、ステロイド、ビリン、レチノイド及び脂質等の小さな疎水性分子を運ぶ細胞外タンパク質のファミリーである。リポカリンは、安定なbバレル足場(Skerra,FEBS Journal 2008,275,2677-2683)に取り付けられた4つのペプチドループから構成される、高い構造的可塑性を有する結合部位を示す、およそ18~20kDaの重量の単量体タンパク質である。リポカリンは、したがって、剛性βシート二次構造を有し、円錐構造の開放端に多くのループがあり、このループは、異なる標的抗原に結合するように操作することができる。これにより、特定の標的抗原に特異的なリポカリンムテインが産生される。「リポカリンムテイン」は、天然に存在する(野生型)リポカリンと比較して、1つ以上のアミノ酸が交換、欠失又は挿入されている変異タンパク質である。リポカリンムテインという用語には、野生型リポカリンの断片又はバリアントも含まれる。本明細書に記載のリポカリンムテインは、160~180アミノ酸のサイズである。特定の態様では、リポカリンムテインは、その超二次構造によって規定されるポリペプチド、すなわち、一端に4つのループによって対をなして連結され、それによって結合ポケットを規定する8本のβ鎖を含む円筒形βプリーツシート超二次構造領域であって、当該4つのループのうちの少なくとも3つの各々の少なくとも1個のアミノ酸が変異しており、当該リポカリンは検出可能な親和性で4-1BBに結合するのに有効である。
一態様では、本明細書に開示されるリポカリンムテインは、ヒト涙液リポカリン(TLPC又はTlc)由来のムテインであり、涙液プレアルブミン又はフォン・エブネル腺タンパク質とも称する。本明細書で使用する場合、「ヒト涙液リポカリン」又は「Tlc」という用語は、SWISS-PROT/UniProt Data Bankアクセッション番号P31025(アイソフォーム1)を有する成熟ヒト涙液リポカリンを指す。したがって、このタイプのリポカリンムテインは、配列番号90のアミノ酸配列に由来する。特に、本明細書に開示されるリポカリンムテインは、SWISS-PROT/UniProt Data Bankアクセッション番号P80188を有する成熟ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(huNGAL)由来のムテインである。このタイプのリポカリンムテインは、「huNGALムテイン」と呼ぶすることができ、配列番号1のアミノ酸配列のポリペプチドに由来する。いくつかの態様では、検出可能な親和性で4-1BBに特異的に結合可能なリポカリンムテインは、天然のシステイン残基の別のアミノ酸、例えばセリン残基による少なくとも1個のアミノ酸置換を含み得る。いくつかの他の態様では、検出可能な親和性で4-1BBに特異的に結合可能なリポカリンムテインは、野生型リポカリンの1個以上のアミノ酸を置換する1個以上の非天然システイン残基を含み得る。更なる特定の態様では、4-1BBに特異的に結合可能なリポカリンムテインは、システイン残基による天然アミノ酸の少なくとも2個のアミノ酸置換を含み、これにより、1個以上のシステインブリッジを形成する。いくつかの実施形態では、当該システイン架橋は、少なくとも2つのループ領域を接続し得る。関連する態様では、本開示は、4-1BBに結合することによって4-1BBの下流シグナル伝達経路を活性化することができる1つ以上のリポカリンムテインを教示する。
参照分子と「同じエピトープに結合する抗原結合分子」は、競合アッセイにおいて、参照分子のその抗原に対する結合を50%以上ブロックする抗原結合分子を指し、逆に、参照分子は、競合アッセイにおいて、抗原結合分子のその抗原に対する結合を50%以上ブロックする。
本明細書で使用する場合、「抗原決定基」という用語は、「抗原」及び「エピトープ」と同義であり、抗原結合部分-抗原複合体を形成する、抗原結合部分が結合するポリペプチド高分子上の部位(例えば、アミノ酸の連続伸長部又は異なる領域の非連続アミノ酸から構成される配座構成)を指す。有用な抗原決定基は、例えば、腫瘍細胞の表面上に、ウイルス感染した細胞の表面上に、他の罹患した細胞の表面上に、免疫細胞の表面上に、血清中で遊離して、及び/又は細胞外マトリックス(ECM)内に認めることができる。本発明の抗原として有用なタンパク質は、哺乳動物、例えば、霊長類(例えばヒト)及び齧歯(例えば、マウス及びラット)を含め、任意の脊椎動物源由来の任意の天然形態のタンパク質であってもよい。特定の実施形態では、抗原は、ヒトタンパク質である。本発明の特定のタンパク質について言及される場合、この用語は、「全長」の未処理のタンパク質、及び細胞の処理から得られるタンパク質の任意の形態を包含する。この用語は、タンパク質の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも包含する。
「特異的結合」とは、その結合が抗原選択性であり、望ましくない相互作用又は非特異的な相互作用とは判別できることを意味する。抗原結合分子が特定の抗原に結合する能力は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)又は当該技術分野で知られている他の技術、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(BIAcore装置で分析される)(Liljeblad et al.,Glyco J 17,323-329(2000))、及び従来の結合アッセイ(Heeley,Endocr Res 28,217-229(2002))によって測定することができる。一実施形態では、無関係なタンパク質に対する抗原結合分子の結合度は、例えばSPRによって測定される抗原に対する抗原結合分子の結合の約10%未満である。特定の実施形態では、抗原に結合する分子は、解離定数(Kd)が、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM又は≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)である。
「親和性」又は「結合親和性」は、分子の単一の結合部位(例えば、抗体)と、その結合対(例えば、抗原)との間の非共有結合性相互作用の合計強度を指す。特に示されない限り、本明細書で使用する場合、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xのその結合対Yに対する親和性は、一般的に、解離定数(KD)によって表すことができ、脱離速度定数と解離速度定数(それぞれkoff及びkon)の比である。親和性は、本明細書に記載するものを含め、当該技術分野で一般的な方法によって測定することができる。親和性を測定する特定の方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)である。
「親和性成熟」抗体とは、変化を有しない親抗体と比較して、1つ以上の相補性決定領域(CDR)において1つ以上の改変を有し、かかる改変によって抗原に対する抗体の親和性を改善する、抗体を指す。
「標的細胞抗原」とは、本明細書で使用する場合、標的細胞、例えば癌細胞又は腫瘍間質細胞等の腫瘍内の細胞の表面に提示された抗原決定基を意味する。ある特定の実施形態では、標的細胞抗原は、腫瘍細胞の表面上の抗原である。一実施形態では、標的細胞抗原は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、HER2、癌胎児性抗原(CEA)、黒色腫随伴コンドロイチンサルフェートプロテオグリカン(MCSP)、上皮成長因子受容体(EGFR)、CD19、CD20、及びCD33からなる群より選択される。具体的には、標的細胞抗原は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)又はHER2である。
プロリルエンドペプチダーゼFAP又はセプラーゼ(EC3.4.21)としても知られている、「線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)」という用語は、特に断りのない限り、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)、並びに齧歯類(例えばマウス及びラット)等の哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する、任意の天然FAPを意味する。この用語は、「全長」のプロセシングされていないFAP、及び細胞におけるプロセシングから生じるFAPの任意の形態を包含する。この用語は、FAPの天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも包含する。一実施形態では、本発明の抗原結合分子は、ヒト、マウス、及び/又はカニクイザルFAPに特異的に結合可能である。ヒトFAPのアミノ酸配列は、UniProt(www.uniprot.org)寄託番号Q12884(バージョン149、配列番号91)、又はNCBI(www.ncbi.nlm.nih.gov/)RefSeq NP_004451.2に示されている。ヒトFAPの細胞外ドメイン(ECD)は、アミノ酸位置26から760まで伸びている。Hisタグ化したヒトFAP ECDのアミノ酸配列は、配列番号92に示されている。マウスFAPのアミノ酸配列は、UniProt寄託番号P97321(バージョン126、配列番号93)、又はNCBI RefSeq NP_032012.1に示されている。マウスFAPの細胞外ドメイン(ECD)は、アミノ酸位置26から761まで伸びている。配列番号94は、Hisタグ化されたマウスFAP ECDのアミノ酸配列を示す。配列番号95は、Hisタグ化されたカニクイザルFAP ECDのアミノ酸配列を示す。好ましくは、抗本発明のFAP結合分子はFAPの細胞外ドメインに結合する。例示的な抗FAP結合分子が国際特許出願公開番号国際公開第2012/020006号A2に記載される。
「FAPに特異的に結合可能な」という用語は、抗原結合分子がFAPを標的化する際の診断剤及び/又は治療剤として有用であるような、十分な親和性でFAPに結合することができる抗原結合分子を指す。抗原結合分子としては、限定されるものではないが、抗体、Fab分子、クロスオーバーFab分子、一本鎖Fab分子、Fv分子、scFv分子、単一ドメイン抗体、並びにVH及び足場抗原結合タンパク質が挙げられる。一態様では、無関係な非FAPタンパク質への抗FAP抗原結合分子の結合の程度は、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した場合に、FAPへの抗原結合分子の結合の約10%未満である。特に、FAPに特異的に結合可能な抗原結合分子は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下又は0.001nM以下(例えば10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。特定の態様では、抗FAP抗原結合分子は、異なる種に由来するFAPに結合する。特に、抗FAP抗原結合分子は、ヒトFAP及びカニクイザルFAP、又はヒトFAP、カニクイザルFAP及びマウスFAPに結合する。
癌胎児性抗原関連細胞接着分子5(CEACAM5)としても知られている、「癌胎児性抗原(CEA)」という用語は、特に断りのない限り、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)、並びに齧歯類(例えばマウス及びラット)等の哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する、任意の天然CEAを意味する。ヒトCEAのアミノ酸配列は、UniProt寄託番号P06731(バージョン151、配列番号96)に示されている。CEAは長らく、腫瘍関連抗原として識別されている(Gold and Freedman,J Exp Med.,121:439-462,1965;Berinstein N.L.,J Clin Oncol.,20:2197-2207,2002)。元は、胎児組織のみで発現するタンパク質として分類されていたCEAは現在、いくつかの健常な成人組織にて同定されている。これらの組織は主に、胃腸、呼吸、及び泌尿器管の細胞、並びに、結腸、子宮頸、汗腺、及び前立腺の細胞を含む、元々上皮に存在する(Nap et al.,Tumour Biol.,9(2-3):145-53,1988;Nap et al.,Cancer Res.,52(8):2329-23339,1992)。上皮由来の腫瘍、及びこれらの転移物は、腫瘍関連抗原としてCEAを含有する。CEA自身が存在することは、癌性細胞への形質転換を意味するものではないものの、CEAが分布していることを示している。健常な組織において、CEAは一般的に、細胞の先端面にて発現し(Hammarstrom S.,Semin Cancer Biol.9(2):67-81(1999))、血流にて抗体に接近できなくなる。健常な組織とは対照的に、CEAは、癌性細胞の全面にわたって発現する(Hammarstrom S.,Semin Cancer Biol.9(2):67-81(1999))。発現パターンのこの変化により、CEAが、癌性細胞内で抗体結合をしやすくなる。さらに、CEAの発現は、癌性細胞にて増加する。さらに、CEAの発現が増加することにより、細胞間の接着性が増加し、転移につながり得る(Marshall J.,Semin Oncol.,30(a Suppl.8):30-6,2003)。様々な腫瘍実体におけるCEA発現の有病率は、一般に非常に高い。公開されたデータに一致して、組織サンプルにて実施した自身の分析により、その高い有症率が確認され、結腸癌(CRC)において約95%、膵癌において90%、胃癌において80%、非小細胞肺癌(HER3と同時発現するNSCLC)において60%、及び乳癌において40%であり、小細胞肺癌及びグリア芽腫においては低い発現が確認された。
CEAは速やかに細胞表面から切断され、腫瘍から、直接又はリンパ系を介してのいずれかにより、血流に入る。この性質から、血清CEAの濃度は、癌診断のための臨床マーカー、及び癌、特に結腸直腸癌の再発のためのスクリーニングとして使用されてきた(Goldenberg D M.,The International Journal of Biological Markers,7:183-188,1992;Chau I.,et al.,J Clin Oncol.,22:1420-1429,2004;Flamini et al.,Clin Cancer Res;12(23):6985-6988,2006)。
コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)としても知られている、「黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)」という用語は、特に断りのない限り、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)、並びに齧歯(例えばマウス及びラット)等の哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する、任意の天然MCSPを指す。ヒトMCSPのアミノ酸配列は、UniProt寄託番号Q6UVK1(バージョン103、配列番号97)に示されている。原型癌遺伝子c-ErbB-1又は受容体チロシン-プロテインキナーゼErbB-1という名もある、「上皮増殖因子受容体(EGFR)」という用語は、特に断りのない限り、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)、並びに齧歯類(例えばマウス及びラット)等の哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する、任意の天然EGFRを意味する。ヒトEGFRのアミノ酸配列は、UniProt寄託番号P00533(バージョン211、配列番号98)に示されている。
「CD19」という用語は、Bリンパ球表面抗原B4、又はT細胞表面抗原Leu-12としても知られている、Bリンパ球抗原CD19を意味し、特に断りのない限り、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)、並びに齧歯類(例えばマウス及びラット)等の哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する、任意の天然CD19を含む。ヒトCD19のアミノ酸配列は、Uniprot寄託番号P15391(バージョン160、配列番号99)に示されている。この用語は、「完全長」のプロセシングされていないヒトCD19、並びに本明細書に掲載する抗体がそれに結合する限り、細胞におけるプロセシングから生じる任意の形態のヒトCD19を包含する。CD19は、限定されるものではないが、プレB細胞、初期発生のB細胞{すなわち、未成熟B細胞)、形質細胞への最終分化を通した成熟B細胞、及び悪性B細胞を含む、ヒトB細胞の表面上に発現される構造的に異なる細胞表面受容体である。CD19は、ほとんどのプレB急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫、B細胞慢性リンパ性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病、有毛細胞白血病、一般的な急性リンパ球性白血病、及びいくつかのヌル急性リンパ芽球性白血病によって発現される。形質細胞上のCD19の発現は、それが多発性骨髄腫等の分化B細胞腫瘍上に発現され得ることを更に示唆する。したがって、CD19抗原は、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病及び/又は急性リンパ芽球性白血病の処置における免疫療法の標的である。
「CD20」とは、膜貫通4ドメインサブファミリーAメンバー1(MS4A1)、Bリンパ球表面抗原B1、又は白血球表面抗原Leu-16としても知られている、Bリンパ球抗原CD20を意味し、特に断りのない限り、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)、並びに齧歯類(例えばマウス及びラット)等の哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する、任意の天然CD20を含む。ヒトCD20のアミノ酸配列は、Uniprot寄託番号P11836(バージョン149、配列番号100)に示されている。「CD33」は、SIGLEC3又はgp67としても公知の骨髄細胞表面抗原CD33を指し、特に明記しない限り、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)等の哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然CD33を含む。ヒトCD33のアミノ酸配列は、Uniprot寄託番号P20138(バージョン157、配列番号101)に示されている。
「HER2」という用語は、「ErbB2」、「ErbB2受容体」又は「c-Erb-B2」としても知られ、細胞内でのHER2前駆体タンパク質のプロセシングから生じる任意の天然の成熟HER2を指す。この用語には、別途指示されない限り、霊長類(例えば、ヒト及びカニクイザル)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)等の哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来のHER2が含まれる。この用語はまた、HER2の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトHER2タンパク質のアミノ酸配列を配列番号102に示す。
「HER2に特異的に結合可能な」という用語は、抗原結合分子がHER2を標的化する際の診断剤及び/又は治療剤として有用であるような、十分な親和性でHER2に結合することができる抗原結合分子を指す。抗原結合分子としては、限定されるものではないが、抗体、Fab分子、クロスオーバーFab分子、一本鎖Fab分子、Fv分子、scFv分子、単一ドメイン抗体、並びにVH及び足場抗原結合タンパク質が挙げられる。一態様では、無関係な非HER2タンパク質への抗HER2抗原結合分子の結合の程度は、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した場合に、HER2への抗原結合分子の結合の約10%未満である。特に、HER2に特異的に結合可能な抗原結合分子は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下又は0.001nM以下(例えば10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。特定の態様では、抗HER2抗原結合分子は、異なる種に由来するHER2に結合する。特に、抗HER2抗原結合分子は、ヒト及びカニクイザルHER2に結合する。
「エピトープ」という用語は、抗[[PRO]]抗体が結合する相手である、タンパク質性又は非タンパク質性のいずれかの、抗原上の部位を示す。エピトープは、隣接するアミノ酸ストレッチ(線状エピトープ)から形成すること、又は非隣接アミノ酸(立体構造エピトープ)、例えば、抗原の折り畳みにより、すなわち、タンパク質性抗原の三次折り畳みによって空間的に近位になる非隣接アミノ酸を含むことができる。線状エピトープは、典型的には、タンパク質性抗原を変性剤に曝露した後も依然として抗体によって結合されているが、コンフォメーションエピトープは、典型的には、変性剤での処理により破壊される。エピトープは、独特の空間的構造で、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、又は8~10個アミノ酸を含む。
「エピトープ4D5」又は「4D5エピトープ」又は「4D5」は、抗体4D5(ATCC CRL 10463)及びトラスツズマブが結合するHER2の細胞外ドメイン内の領域である。このエピトープは、HER2の膜貫通ドメインに近接し、HER2のドメインIV内にある。4D5エピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、「Antibodies,A Laboratory Manual」Cold Spring Harbor Laboratory、Harlow及びDavid Lane編(1988年)に記載されるもの等のルーチンクロスブロッキングアッセイを行うことができる。或いは、エピトープマッピングを行い、抗体がHER2の4D5エピトープ(ヒトHER2(配列番号102)を含む、約550残基~約610残基に由来する領域内の任意の1つ以上の残基)に結合するかどうかを評定することができる。
「エピトープ2C4」又は「2C4エピトープ」は、抗体2C4が結合するHER2の細胞外ドメイン内の領域である。2C4エピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、「Antibodies,A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory、Harlow及びDavid Lane編(1988年)に記載されるもの等のルーチンクロスブロッキングアッセイを行うことができる。或いは、エピトープマッピングを行い、抗体がHER2の2C4エピトープに結合するかどうかを評定することができる。エピトープ2C4は、HER2の細胞外ドメイン中のドメインII由来の残基を含む。2C4抗体及びペルツズマブは、ドメインI、II及びIIIの接合部でHER2の細胞外ドメインに結合する(Franklinら「Cancer Cell」5:317~328頁(2004年))。
「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、抗原に対する抗原結合分子の結合に関与する抗体重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然の抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は、一般に、類似の構造を有しており、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と、3つの超可変領域(HVR)とを含む。例えば、Kindt et al.,Kuby Immunology,6th,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照されたい。抗原結合特異性を与えるために、単一のVH又はVLドメインで十分な場合がある。
本明細書で使用する場合、「超可変領域」又は「HVR」という用語は、配列内で超可変可能であり、抗原結合特異性を決定する、抗体可変ドメインの領域、例えば、「相補性決定領域」(「CDR」)のそれぞれを意味する。
一般に、抗体は、6つのCDR:VHに3つ(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)、及びVLに3つ(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)を含む。本明細書における例示的なCDRとしては、
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)で生じる超可変ループ(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))、
(b)アミノ酸残基24-34(L1)、50-56(L2)、89-97(L3)、31-35b(H1)、50-65(H2)及び95-102(H3)に存在するCDR(Kabat et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991));並びに
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)、及び93~101(H3)で生じる抗原接触(MacCallum et al.J.Mol.Biol.262:732-745(1996))が挙げられる。
特に断りのない限り、CDRは、上記のKabat et al.に従い決定される。当業者は、CDRの表記は、上記Chothia、上記McCallum、又は任意の他の、科学的に認可された命名システムに従い決定することができることを理解するであろう。
「フレームワーク」又は「FR」は、相補性決定領域(CDR)以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に、FR1、FR2、FR3及びFR4の4つのFRドメインからなる。したがって、CDR及びFR配列は、一般に、VH(又はVL)において次の配列:FR1-CDR-H1(CDR-L1)-FR2-CDR-H2(CDR-L2)-FR3-CDR-H3(CDR-L3)-FR4。
「全長抗体」、「インタクト抗体」、及び「全抗体」という用語は、本明細書では相互に交換可能に使用され、天然抗体構造と実質的に類似の構造を有するか、又は本明細書に定義されるFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指す。
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD(1991),vols.1-3にあるようなサブグループである。一態様では、VLの場合、サブグループは、上記Kabat et al.に記載されるように、サブグループカッパIである。一態様では、VHの場合、サブグループは、上記Kabat et al.に記載されるように、サブグループカッパIIIである。
「キメラ」抗体という用語は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の供給源又は種に由来する抗体を指し、一方、重鎖及び/又は軽鎖の残りは、異なる供給源又は種に由来する。
抗体の「クラス」は、その重鎖が保有する定常ドメイン又は定常領域の種類を指す。抗体の5種類の主要なクラスがあり、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMであり、これらのうちのいくつかは、下位クラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に更に分けることができる。特定の態様では、抗体はIgG1アイソタイプである。特定の態様では、抗体は、Fc領域エフェクター機能を低下させるためのP329G、L234A及びL235A変異を有するIgG1アイソタイプのものである。他の態様では、抗体はIgG2アイソタイプのものである。特定の態様では、抗体は、IgG4抗体の安定性を改善するためにヒンジ領域にS228P変異を有するIgG4アイソタイプのものである。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、σ、ε、γ、及びμと呼ばれる。αδεγμ抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2種類の1つに割り当てられてもよい。
本出願で使用される「ヒト由来の定常領域」又は「ヒト定常領域」という用語は、サブクラスIgG1、IgG2、IgG3、若しくはIgG4のヒト抗体の定常重鎖領域、及び/又は定常軽鎖カッパ若しくはラムダ領域を示す。かかる定常領域は当該技術分野で周知であり、例えば、Kabat,E.A.,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)によって記載されている(例えば、Johnson,G.,and Wu,T.T.,Nucleic Acids Res.28(2000)214-218;Kabat,E.A.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 72(1975)2785-2788も参照されたい)。本明細書で特に明記されない限り、定常領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat,E.A.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991),NIH Publication 91-3242に記載されるような、EUナンバリングシステム(KabatのEUインデックスとも呼ばれる)に従う。
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基と、ヒトFR由来のアミノ酸残基とを含む、キメラ抗体を指す。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、HVR(例えばCDR)の全て又は実質的に全てが、非ヒト抗体に対応し、FRの全て又は実質的に全てが、ヒト抗体に対応する。ヒト化抗体は、必要に応じて、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでいてもよい。ある抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を受けた抗体を指す。本発明に包含される「ヒト化抗体」の他の形態は、特に、C1q結合及び/又はFc受容体(FcR)結合という観点で、本発明に係る特性を作り出すために、定常領域が、元々の抗体の定常領域から更に修飾されるか、又は変更されているものである。
「ヒト」抗体は、ヒト又はヒト細胞によって産生されるか、又はヒト抗体のレパートリー又は他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト源から誘導される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するものである。このヒト抗体の定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特定的に除外する。
「Fcドメイン」又は「Fc領域」という用語は、本明細書において、定常領域の少なくとも一部を含む抗体重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域及びバリアントFc領域を含む。一実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、又はPro230から、重鎖のカルボキシル末端までに及ぶ。しかしながら、宿主細胞によって産生される抗体は、重鎖のC末端から1つ以上、特に1つ又は2つのアミノ酸の翻訳後開裂を受けてもよい。したがって、完全長重鎖をコードする特定の核酸分子の発現によって、宿主細胞によって産生する抗体は、完全長重鎖を含んでいてもよい、又は完全長重鎖の開裂したバリアントを含んでいてもよい。これは、重鎖の最終的な2つのC末端アミノ酸がグリシン(G446)及びリシン(K447、Kabat EUインデックスによるナンバリング)である場合であってもよい。したがって、Fc領域のC末端リシン(Lys447)、又はC末端グリシン(Gly446)及びリシン(Lys447)が存在してもよい、又は存在していなくてもよい。Fc領域を含む重鎖のアミノ酸配列は、特に断りのない場合には、C末端のグリシン-リシンジペプチドを含まずに本明細書で示される。一実施形態では、本発明の抗体に含まれる、本明細書で明記したFc領域を含む重鎖は、更なるC末端のグリシン-リシンジペプチド(G446及びK447、KabatのEUインデックスに従ったナンバリング)を含む。一実施形態では、本発明の抗体に含まれる、本明細書で明記したFc領域を含む重鎖は、更なるC末端のグリシン残基(G446、KabatのEUインデックスに従ったナンバリング)を含む。本明細書で特に明記されない限り、Fc領域又は定常領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載されるような、EUナンバリングシステム(EUインデックスとも呼ばれる)に従う。IgG Fc領域は、IgG CH2ドメインと、IgG CH3ドメインとを含む。ヒトIgG Fc領域の「CH2ドメイン」は、通常、おおよそのアミノ酸位置231のアミノ酸残基から、おおよそのアミノ酸位置340のアミノ酸残基まで延びている。一実施形態では、炭水化物鎖は、CH2ドメインに接続している。本発明のCH2ドメインは、天然配列CH2ドメイン又はバリアントCH2ドメインであってもよい。「CH3ドメイン」は、Fc領域中のCH2ドメインに対してC末端に残基の伸長部を含む(すなわち、IgGのおおよその位置341のアミノ酸残基から、おおよその位置447のアミノ酸残基まで)。本発明のCH3領域は、天然配列CH3ドメイン又はバリアントCH3ドメインであってもよい(例えば、その1つの鎖に導入された「突起部」(「ノブ」)を有し、その他の鎖に対応する導入された「空洞」(「ホール」)を有するCH3ドメイン、本明細書に参考として明確に組み込まれる米国特許第5,821,333号を参照されたい)。かかるバリアントCH3ドメインを使用し、本明細書に記載される2つの同一ではない抗体重鎖のヘテロ二量体化を促進してもよい。
「野生型Fcドメイン」という用語は、自然界で見出されるFcドメインのアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を意味する。野生型ヒトFcドメインとしては、天然ヒトIgG1 Fc領域(非A及びAアロタイプ)、天然ヒトIgG2 Fc領域、天然ヒトIgG3 Fc領域及び天然ヒトIgG4 Fc領域、並びにその天然バリアントが挙げられる。野生型Fc領域は、配列番号122(IgG1、白人型アロタイプ)、配列番号123(IgG1、アフロアメリカンアロタイプ)、配列番号124(IgG2)、配列番号125(IgG3)及び配列番号126(IgG4)に示される。
「バリアント(ヒト)Fcドメイン」という用語は、少なくとも1つの「アミノ酸変異」によって「野生型」(ヒト)Fcドメインアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を示す。一態様では、バリアントFc領域は、天然Fc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸変異、例えば約1~約10個のアミノ酸変異、一態様では天然Fc領域中に約1~約5個のアミノ酸変異を有する。一態様では、(バリアント)Fc領域は、野生型Fc領域と少なくとも約95%の相同性を有する。
「ノブ・イントゥ・ホール(knob-into-hole)」技術は、例えば、米国特許第5,731,168号明細書、米国特許第7,695,936号明細書、Ridgway et al.,Prot Eng 9,617-621(1996)及びCarter,J Immunol Meth 248,7-15(2001)に記載されている。一般的に、この方法は、第1のポリペプチドの界面にある突起(「ノブ」)と、第2のポリペプチドの界面にある空洞(「ホール」)とを導入することを含み、その結果、突起が、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨害するように空洞内に位置することができる。突起は、第1のポリペプチドの界面からの小さなアミノ酸側鎖を、もっと大きな側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)と交換することによって構築される。突起と同一又は同様の大きさの相補性空洞が、大きなアミノ酸側鎖を、より小さなアミノ酸側鎖(例えば、アラニン又はトレオニン)と置き換えることによって、第2のポリペプチドの界面に作られる。突起及び空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を変えることによって、例えば、部位特異的突然変異誘発によって、又はペプチド合成によって作成することができる。具体的な実施形態では、ノブ修飾は、Fcドメインの2つのサブユニットのうちの1つにアミノ酸置換T366Wを含み、ホール修飾は、Fcドメインの2つのサブユニットのうち他方の1つにアミノ酸置換T366S、L368A及びY407Vを含む。更なる具体的な実施形態では、ノブ修飾を含むFcドメインのサブユニットは、アミノ酸置換S354Cを更に含み、ホール修飾を含むFcドメインのサブユニットは、アミノ酸置換Y349Cを更に含む。これらの2つのシステイン残基の導入は、Fc領域の2つのサブユニット間のジスルフィド架橋の形成をもたらし、したがって二量体を更に安定化する(Carter,J Immunol Methods 248,7-15(2001))。ナンバリングは、Kabat et al,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991のEUインデックスに従う。
「免疫グロブリンのFc領域に等価な領域」は、天然に存在する免疫グロブリンのFc領域の対立遺伝子バリアント及び置換、付加又は欠失を生じるが、エフェクター機能(例えば、抗体依存性細胞傷害性)に介在する免疫グロブリンの能力を実質的に低下させない変更を有するバリアントを含むことが意図される。例えば、1つ以上のアミノ酸は、生体機能を実質的に失うことなく、免疫グロブリンのFc領域のN末端又はC末端から欠失されていてもよい。かかるバリアントは、活性に対して最小限の影響を有するように、当該技術分野で知られた一般的な規則に従って選択することができる(例えば、Bowie,J.U.et al.、Science 247:1306-10(1990)を参照されたい)。
「エフェクター機能」という用語は、抗体のFc領域に帰属可能な生体活性を指し、抗体アイソタイプによって変わる。抗体エフェクター機能の例としては、以下のものが挙げられる:C1q結合及び補体依存性細胞障害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞障害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性抗原取り込み、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)のダウンレギュレーション、及びB細胞活性化。
「活性化Fc受容体」は、抗体のFc領域による連結の後に、エフェクター機能を発揮するために受容体を含む細胞を刺激するシグナル伝達事象を誘発するFc受容体である。活性化Fc受容体としては、FcγRIIIa(CD16a)、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32)及びFcαRI(CD89)が挙げられる。特定の活性化Fc受容体は、ヒトFcγRIIIaである(UniProt寄託番号P08637,version 141を参照されたい)。
「腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー」、又は「TNF受容体スーパーファミリー」は現在、27種類の受容体で構成されている。腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーは、細胞外のシステインリッチなドメイン(CRD)を介して、腫瘍壊死因子(TNF)に結合する能力を特徴とするサイトカイン受容体の群である。これらのシュードリピートは、受容体鎖内の高度に保存されたシステイン残基によって生成された鎖内ジスルフィドによって定義される。神経成長因子(NGF)を除いて、全てのTNFは原型のTNF-αと相同である。これらの活性形態において、TNF受容体の大多数は、血漿膜内で三量体の複合体を形成する。したがって、大部分の受容体は膜貫通ドメイン(TMD)を含有している。これらの受容体のいくつかは、リガンド結合の後にカスパーゼ相互作用タンパク質を動員して、カスパーゼ活性化の外因性経路を開始する細胞内死ドメイン(DD)もまた含有している。死ドメインを欠く、他のTNFスーパーファミリー受容体は、TNF受容体関連因子に結合し、増殖又は分化をもたらすことが可能な細胞内シグナル伝達経路を活性化する。これらの受容体は、アポトーシスを開始することもできるが、アポトーシスは間接的な機構を介して行う。アポトーシスの制御に加えて、いくつかのTNFスーパーファミリー受容体は、B細胞のホメオスタシス及び活性化、ナチュラルキラー細胞の活性化、並びにT細胞の同時刺激等の免疫細胞の機能の制御に関与している。いくつかの他のものは、毛嚢の成長及び破骨細胞の成長等の、細胞種に特異的な応答を調節する。TNF受容体スーパーファミリーのメンバーとしては、以下が挙げられる:腫瘍壊死因子受容体1(1A)(TNFRSF1A、CD120a)、腫瘍壊死因子受容体2(1B)(TNFRSF1B、CD120b)、リンフォトキシンβ受容体(LTBR、CD18)、OX40(TNFRSF4、CD134)、CD40(Bp50)、Fas受容体(Apo-1、CD95、FAS)、デコイ受容体3(TR6、M68、TNFRSF6B)、CD27(S152、Tp55)、CD30(Ki-1、TNFRSF8)、4-1BB(CD137、TNFRSF9)、DR4(TRAILR1、Apo-2、CD261、TNFRSF10A)、DR5(TRAILR2、CD262、TNFRSF10B)、デコイ受容体1(TRAILR3、CD263、TNFRSF10C)、デコイ受容体2(TRAILR4、CD264、TNFRSF10D)、RANK(CD265、TNFRSF11A)、オステオプロテゲリン(OCIF、TR1、TNFRSF11B)、TWEAK受容体(Fn14、CD266、TNFRSF12A)、TACI(CD267、TNFRSF13B)、BAFF受容体(CD268、TNFRSF13C)、ヘルペスウイルス侵入メディエータ(HVEM、TR2、CD270、TNFRSF14)、神経増殖因子受容体(p75NTR、CD271、NGFR)、B細胞成熟抗原(CD269、TNFRSF17、糖質コルチコイド誘発TNFR関連(GITR、AITR、CD357、TNFRSF18)、TROY(TNFRSF19)、DR6(CD358、TNFRSF21)、DR3(Apo-3、TRAMP、WS-1、TNFRSF25)、及びエクトジスプラシンA2受容体(XEDAR、EDA2R)。
腫瘍壊死因子受容体(TNFR)ファミリーのいくつかのメンバーは、最初のT細胞の活性化の後で機能し、T細胞応答を維持する。「同時刺激性TNF受容体ファミリーメンバー」、又は「同時刺激性TNFファミリー受容体」という用語は、TNF受容体ファミリーメンバーのサブグループを意味し、T細胞の増殖とサイトカイン産生を同時に刺激することができる。この用語は、本明細書で用いる場合、別途指示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)、及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)等の哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然TNFファミリー受容体を指す。本発明の特定の実施形態では、同時刺激性TNF受容体ファミリーメンバーは、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、CD27、HVEM(CD270)、CD30、及びGITRからなる群より選択され、これらは全て、T細胞上で同時刺激効果を有することができる。より具体的には、同時刺激性TNF受容体ファミリーメンバーは、4-1BBである。
本明細書で使用する場合、「4-1BB」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)等の哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然4-1BBを指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていない4-1BB、及び細胞におけるプロセシングから生じる4-1BBの任意の形態を包含する。この用語は、4-1BBの天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント、又は対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒト4-1BBのアミノ酸配列は配列番号103(Uniprot寄託番号Q07011)に示され、例示的なマウス4-1BBのアミノ酸配列は配列番号104(Uniprot寄託番号P20334)に示され、例示的な(Macaca mulattaからの)カニクイザル4-1BBのアミノ酸配列は、配列番号105(Uniprot寄託番号F6W5G6)に示されている。
「ペプチドリンカー」という用語は、1つ以上のアミノ酸、典型的には、約2~20のアミノ酸を含むペプチドを指す。ペプチドリンカーは、当該技術分野で知られているか、又は本明細書に記載される。適切な非免疫原性リンカーペプチドは、例えば、(G4S)n、(SG4)n又はG4(SG4)nペプチドリンカーであり、式中、「n」は一般に1~10、典型的には1~4、特に2の数であり、すなわち、GGGGS(配列番号75)、GGGGSGGGGS(配列番号76)、SGGGGSGGGG(配列番号77)、(G4S)3又はGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号78)、GGGGSGGGGSGGGG又はG4(SG4)2(配列番号79)、及び(G4S)4又はGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号80)からなる群より選択されるペプチドであるが、配列GSPGSSSSGS(配列番号81)、GSGSGSGS(配列番号82)、GSGSGNGS(配列番号83),GGSGSGSG(配列番号84)、GGSGSG(配列番号85)、GGSG(配列番号86)、GGSGNGSG(配列番号87)、GGNGSGSG(配列番号88)及びGGNGSG(配列番号89)も含む。特に興味深いペプチドリンカーは、(G4S)2又はGGGGSGGGGS(配列番号76)、(G4S)3(配列番号78)及び(G4S)4(配列番号80)、より詳しくは(G4S)3(配列番号78)である。更なるペプチドリンカーは、配列番号113、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号119、配列番号120及び配列番号121からなる群より選択される。
本出願内で使用される場合「アミノ酸」という用語は、アラニン(3文字コード:ala、1文字コード:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リシン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、トレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)及びバリン(val、V)を含む天然に存在するカルボキシα-アミノ酸の群を示す。
本明細書で使用する場合、「融合ポリペプチド」又は「融合タンパク質」は、抗体断片及び抗体に由来しないペプチドで構成される一本鎖ポリペプチドを指す。一態様では、融合ポリペプチドは、抗体のFc領域にペプチド結合を介して、任意にペプチドリンカーを介して連結されたリポカリンムテインから構成される。融合は、リポカリンムテインのN又はC末端アミノ酸を、ペプチドリンカーを介して重鎖のC又はN末端アミノ酸に直接連結することによって起こり得る。
「融合した」、又は「連結された」とは、構成成分(例えば、ポリペプチド及び当該TNFリガンドファミリーメンバーの細胞外ドメイン)が直接、又は1つ以上のペプチドリンカーを介してのいずれかで、ペプチド結合により連結されていることを意味する。
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列の同一性パーセント(%)」は、アラインメントの目的で、配列をアラインメントし、最大の配列同一性パーセントを達成するために、必要ならばギャップを導入した後、配列同一性の一部として任意の保存的置換を考慮せずに、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基の百分率であると定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアラインメントは、当該技術分野の技術の範囲内にある種々の様式で、例えば、公的に入手可能なコンピュータソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST-2、Clustal W、Megalign(DNASTAR)ソフトウェア又はFASTAプログラムパッケージを用いて達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大整列度を達成するのに必要とされる任意のアルゴリズムを含め、配列をアラインメントさせるのに適切なパラメータを決定することができる。或いは、同一性パーセントの値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成することができる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.によって作成されており、ソースコードは、米国著作権局(Washington D.C.,20559)のユーザドキュメンテーションにファイルされており、米国著作権登録番号TXU510087の下に登録されており、且つ、国際公開第2001/007611号に記載されている。
しかしながら、本明細書での目的のために、アミノ酸配列同一性パーセントの値は、FASTAパッケージバージョン36.3.8cのggsearchプログラムを使用するか、又はその後にBLOSUM50比較マトリックスを用いて生成される。FASTAプログラムパッケージは、W.R.Pearson and D.J.Lipman(1988),’’Improved Tools for Biological Sequence Analysis’’,PNAS 85:2444-2448;W.R.Pearson(1996)’’Effective protein sequence comparison’’Meth.Enzymol.266:227-258;及びPearson et.al.(1997)Genomics 46:24-36にって認定され、www.fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2/fasta_down.shtml or www.
1638353016514_0
から公的に利用可能である。或いは、ggsearch(global protein:protein)プログラム及びデフォルトオプション(BLOSUM50;open:-10;ext:-2;Ktup=2)を用いて、fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2/index.cgiでアクセス可能な公開サーバを使用して配列を比較し、ローカルではなくグローバルなアライメントを確実に実行することができる。アミノ酸同一性パーセントは、アウトプットアラインメントヘッダーで与えられる。
「アミノ酸配列バリアント」という用語は、親抗原結合分子(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基中にアミノ酸置換が存在する実質的なバリアントを含む。一般的に、更なる試験のために選択され、得られたバリアント(複数可)は、親抗原結合分子と比較して、特定の生物学的特性の修飾(例えば、改善)(例えば、親和性の増加、免疫原性の低下)を有し、及び/又は親抗原結合分子の特定の生物学的特性を実質的に保持しているであろう。例示的な置換バリアントは、親和性成熟した抗体であり、例えば、本明細書に記載されるようなファージディスプレイに基づく親和性成熟技術を用い、簡便に作成されてもよい。簡潔には、1つ以上のCDR残基は、突然変異しており、ファージディスプレイされ、特定の生体活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされたバリアント抗原結合分子である。特定の実施形態では、置換、挿入又は欠失は、かかる変更が、抗原結合分子が抗原に結合する能力を実質的に減らさない限り、1つ以上のCDR内で起こってもよい。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保守的な改変(例えば、本明細書で提供されるような保守的な置換)は、CDRにおいて行われてもよい。突然変異誘発を標的とし得る抗体の残基又は領域の同定のための有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science、244:1081-1085によって記載されるように、「アラニンスキャンニング突然変異誘発」と呼ばれる。この方法では、抗体と抗原との相互作用が影響を受けるかどうかを決定するために、残基又は標的残基群(例えば、帯電した残基、例えば、Arg、Asp、His、Lys及びGlu)が同定され、中性又は負に帯電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)によって置き換えられる。更なる置換が、初期置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸位置に導入されてもよい。これに代えて、又はこれに加えて、抗体と抗原との間の接触点を同定するための、抗原-抗原結合分子複合体の結晶構造。かかる接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的とされるか、又は除去されてもよい。バリアントは、所望の特性を有するか否かを判定するためにスクリーニングされてもよい。アミノ酸配列挿入としては、1個の残基から100個以上の残基を含むポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する、二重特異性抗原結合分子が挙げられる。
ある特定の態様では、本明細書において提供する二重特異性抗原結合分子が改変され、抗体がグリコシル化される程度が増加又は低下される。1つ以上のグリコシル化部位が作製される、又は取り除かれるように、アミノ酸配列を改変することにより、分子のグリコシル化バリアントを便利に入手することができる。二重特異性抗原結合分子がFc領域を含む場合において、Fc領域に付着した炭水化物を改変することができる。哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は、典型的には、一般にN結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖は、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース及びシアル酸等の種々の炭水化物を含んでいてもよく、二分岐オリゴ糖構造の「幹」にあるGlcNAcに接続するフコースを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、特定の改良された特性を有するバリアントを作成するために、二重特異性抗原結合分子中のオリゴ糖修飾が行われてもよい。一態様では、Fc領域に(直接的又は間接的に)接続するフコースを欠いた炭水化物構造を有する二重特異性抗原結合分子のバリアントが提供される。かかるフコシル化バリアントは、改良されたADCC機能を有していてもよい。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta,L.)又は米国特許出願公開第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。本発明の二重特異性抗原結合分子の更なるバリアントは、二分されたオリゴ糖を有するもの、例えば、Fc領域に接続した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されているものを含む。かかるバリアントは、フコシル化の低下及び/又はADCC機能の向上を有していてもよく、例えば、国際公開第2003/011878号(Jean-Mairet et al.)、米国特許第6,602,684号(Umana et al.)及び米国特許出願公開第2005/0123546号(Umana et al.)を参照されたい。Fc領域に接続したオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有するバリアントも提供される。かかる抗体バリアントは、改良されたCDC機能を有する場合があり、例えば、国際公開第1997/30087号(Patel et al.)、国際公開第1998/58964号(Raju,S.)及び国際公開第1999/22764号(Raju,S.)に記載される。
特定の態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子のシステイン操作されたバリアント、例えば、分子の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されている「thioMAb」を作製することが望ましい場合がある。特定的な実施形態では、置換された残基は、分子の接近可能な部位で生じる。これらの残基をシステインと置換することによって、反応性チオール基は、抗体の接近可能な部位に位置しており、これを使用し、抗体を他の部分(例えば、薬物部分又はリンカー-薬物部分)に対して抱合させ、免疫抱合体を作成してもよい。特定の実施形態では、以下の残基の任意の1つ以上が、システインで置換されていてもよい。軽鎖のV205(Kabatナンバリング)、重鎖のA118(EUナンバリング)、及び重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)。システイン操作された抗原結合分子は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように作成されてもよい。
特定の態様では、本明細書に提供される二重特異性抗原結合分子は、当該分野で公知であり、容易に利用可能である更なる非タンパク質性部分を含有するように更に修飾され得る。抗体の誘導体化に適した部分としては、限定されないが、水溶性ポリマーが挙げられる。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、及びこれらの混合物が挙げられる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造時に有利であり得る。このポリマーは、任意の分子量を有していてもよい、分岐していてもよい、又は分岐していなくてもよい。抗体に接続するポリマーの数は、さまざまであってもよく、1つより多いポリマーが接続する場合、ポリマーは、同じ分子であってもよく、又は異なる分子であってもよい。一般的に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又は種類は、限定されないが、改良される抗体の特定の特性又は機能、二重特異性抗体誘導体が規定の条件下で使用されるか等を含む限定事項に基づいて決定することができる。別の態様では、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る抗体及び非タンパク質性部分の複合体が提供される。一実施形態では、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(Kam,N.W.et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102(2005)11600-11605)。放射線は、任意の波長を有していてもよく、限定されないが、通常の細胞に有害ではないが、非タンパク質性部分を、抗体非タンパク質性部分に近位の細胞が死滅する温度まで加熱する波長を含む。
別の態様では、本明細書で提供する二重特異性抗原結合分子の免疫コンジュゲートを得ることができる。「免疫抱合体」は、限定されないが、細胞傷害性薬剤を含め、1つ以上の異種分子(複数可)に抱合される抗体である。
「核酸」又は「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物及び/又は物質を含む。それぞれのヌクレオチドは、塩基で構成され、具体的には、プリン塩基又はピリミジン塩基(すなわち、シトシン(C)、グアニン(G)、アデニン(A)、チミン(T)又はウラシル(U))、糖(すなわち、デオキシリボース又はリボース)、及びリン酸基で構成される。多くは、核酸分子は、塩基配列によって記述され、ここで、当該塩基は、核酸分子の一次構造(線形構造)を表す。塩基の配列は、典型的には、5’から3’へと表される。本明細書において、核酸分子という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)、例えば、相補性DNA(cDNA)及びゲノムDNA、リボ核酸(RNA)、特に、メッセンジャーRNA(mRNA)、DNA又はRNAの合成形態、及びこれらの分子の2つ以上を含む混合ポリマーを包含する。核酸分子は、線形又は環状であってもよい。これに加え、核酸分子という用語は、センス鎖及びアンチセンス鎖、並びに一本鎖形態及び二本鎖形態の両方を含む。さらに、本明細書で記載される核酸分子は、天然に存在するヌクレオチド又は天然に存在しないヌクレオチドを含んでいてもよい。誘導体化された糖又はリン酸骨格結合又は化学修飾された残基を含む、天然に存在しないヌクレオチドの例としては、修飾されたヌクレオチド塩基が挙げられる。核酸分子はまた、例えば、宿主又は患者において、in vitro及び/又はin vivoで本発明の抗体の直接的な発現のためのベクターとして好適なDNA分子及びRNA分子も包含する。かかるDNAベクター(例えば、cDNA)又はRNAベクター(例えば、mRNA)は、修飾されていなくてもよく、又は修飾されていてもよい。例えば、mRNAは、in vivoで抗体を産生するために被験体にmRNAを注入することができるように、RNAベクターの安定性及び/又はコードされた分子の発現を高めるように化学修飾されてもよい。(例えば、Stadler ert al,Nature Medicine 2017,published online 12 June 2017,doi:10.1038/nm.4356又は欧州特許第2 101 823号B1を参照されたい。)
「単離」核酸とは、核酸分子が自然環境の構成要素から分離されたものを指す。単離核酸は、元々その核酸分子を含む細胞に含まれているが、その核酸分子が、染色体外に存在するか、又はその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する核酸分子を含む。
「二重特異性抗原結合分子をコードする単離核酸」は、単一ベクター又は別々のベクター内の核酸分子(複数可)を含む、二重特異性抗原結合分子の重鎖及び軽鎖(又はその断片)をコードする1つ以上の核酸分子を指し、かかる核酸分子(複数可)は、宿主細胞内の1つ以上の場所に存在する。
「発現カセット」という用語は、組換えによって、又は合成によって作られるポリヌクレオチドを指し、標的細胞内の特定の核酸の転写が可能な特定の一連の核酸要素を含む。組換え発現カセットは、プラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、プラスチドDNA、ウイルス、又は核酸断片へと組み込むことができる。典型的には、発現ベクターの組換え発現カセット部分は、配列の中でも特に、転写される核酸配列と、プロモーターとを含む。特定の実施形態では、本発明の発現カセットは、本発明の二重特異性抗原結合分子をコードするポリヌクレオチド配列又はその断片を含む。
「ベクター」又は「発現ベクター」という用語は「発現コンストラクト」と同義であり、標的細胞中で作用可能に会合した特異的遺伝子の発現を導入及び誘導するのに使用されるDNA分子を意味する。この用語は、自己複製する核酸構造としてのベクター、及びベクターが導入された宿主細胞のゲノム内へと組み込まれたベクターを含む。本発明の発現ベクターは、発現カセットを含む。発現ベクターによって、安定したmRNAの多量の転写が可能となる。いったん発現ベクターが標的細胞内に入ると、リボ核酸分子又は遺伝子によってコードされたタンパク質は、細胞の転写機構及び/又は翻訳機構によって産生される。一実施形態では、本発明の発現ベクターは、本発明の二重特異性抗原結合分子をコードするポリヌクレオチド配列又はその断片を含む発現カセットを含む。
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養」という用語は同じ意味で用いられ、外因性核酸が導入された細胞を意味し、かかる細胞の後代を含む。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換された細胞」を含み、これらは、継代数にかかわらず、初代の形質転換された細胞と、初代の形質転換された細胞から誘導された子孫を含む。後代は、核酸含有量が親細胞と完全に同一でなくてもよいが、突然変異を含有していてもよい。元々の形質転換された細胞についてスクリーニングされるか若しくは選択されるのと同じ機能、又は生物活性を有する突然変異型の後代が本発明に含まれる。宿主細胞は、本発明の二重特異性抗原結合分子を生成するために使用可能な任意の種類の細胞系である。宿主細胞としては、培養細胞、例えば、哺乳動物培養細胞、例えば、ほんの数例を挙げると、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞又はハイブリドーマ細胞、酵母細胞、昆虫細胞及び植物細胞が挙げられるが、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物又は培養植物又は動物組織に含まれる細胞も挙げられる。
ある薬剤の「有効量」は、その薬剤が投与される細胞又は組織において、ある生理学的変化を引き起こすのに必要な量を指す。
ある薬剤(例えば、医薬組成物)の「治療有効量」は、所望の治療結果又は予防結果を達成するのに有効な量、必要な投薬量及び必要な期間を指す。薬剤の治療有効量は、例えば、疾患の副作用を除去し、低下させ、遅延させ、最小限にし、又は予防する。
「個体」又は「被験体」は、哺乳動物である。哺乳動物としては、限定されないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及びサル等の非ヒト霊長類)、ウサギ、齧歯(例えば、マウス及びラット)が挙げられる。特に、個体又は被験体は、ヒトである。
「医薬組成物」という用語は、その中に含まれる有効成分の生体活性を有効にし、製剤が投与される被験体に対して受け入れられないほど毒性である更なる構成要素を含まないような形態での製剤を指す。
「薬学的に許容可能な賦形剤」は、医薬組成物中の成分であって、有効成分以外であり、被験体にとって毒性ではない成分を指す。薬学的に許容可能な賦形剤としては、限定されないが、バッファー、安定化剤又は防腐剤が挙げられる。
「パッケージ添付文書」という用語は、治療製品の市販パッケージに通常含まれる指示を指すために用いられ、かかる治療製品に関する適応症、使用、投薬量、投与、併用療法、禁忌及び/又は警告に関する情報を含む。
本明細書で使用する場合、「処置」(及びその文法的な変形語、例えば、「処置する」又は「処置すること」)は、処置される個体において本来の経過を変える試みにおける臨床的介入を指し、予防のために、又は臨床病理の経過の間に行うことができる。処置の所望の効果としては、疾患の発症又は再発を予防すること、症状の軽減、疾患の任意の直接的又は間接的な病理学的結果の減弱、転移を予防すること、疾患進行率を低下させること、病状の寛解又は緩和、及び回復又は改良された予後が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の分子を使用し、疾患の発生を遅らせるか、又は疾患の進行を遅らせる。
本明細書で使用する場合、「癌」という用語は、リンパ腫、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、白血病、リンパ球性白血病、肺癌、非小細胞肺(NSCL)癌、気管支肺胞肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚又は眼内の黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、結腸直腸癌(CRC)、膵臓癌、乳癌、トリプルネガティブ乳癌、子宮癌、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰部の癌腫、ホジキン病、食道の癌、小腸の癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟部組織の肉腫、尿道の癌、陰茎の癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓又は尿管癌、腎細胞癌、腎盂の癌腫、中皮腫、肝細胞癌、胆道癌、中枢神経系(CNS)の新生物、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、多形性神経膠芽細胞腫、星状細胞腫、シュワン細胞腫(schwanomas)、上衣腫(ependymonas)、髄芽細胞腫、髄膜腫、扁平上皮癌腫、下垂体腺腫及びユーイング肉腫、黒色腫、多発性骨髄腫、B細胞癌(リンパ腫)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞白血病、慢性骨髄芽球性白血病、上記の癌のいずれかの難治性バージョンを含む、又は上記の癌の1つ以上の組み合わせ等の増殖性疾患を指す。
「HER2陽性」癌は、正常レベルよりも高いHER2を有する癌細胞を含む。HER2陽性癌の例としては、HER2陽性乳癌及びHER2陽性胃癌が挙げられる。必要に応じて、HER2陽性癌は、2+若しくは3+の免疫組織化学的検査(IHC)スコア、及び/又は>2.0のin situハイブリダイゼーション(ISH)増幅率を有する。
「早期ステージ乳癌(EBC)」又は「早期乳癌」という用語は、本明細書では、乳房又は腋窩リンパ節を越えて広がっていない乳癌を指すために使用される。これには、非浸潤性乳管癌並びにI期、IIA期、IIB期及びIIIA期の乳癌が含まれる。
「ステージ0」、「ステージI」、「ステージII」、「ステージIII」又は「ステージIV」としての腫瘍又は癌、及びこの分類内の様々なサブステージへの言及は、当該技術分野で公知の全ステージ分類又はローマ数字病期分類法を使用した腫瘍又は癌の分類を示す。癌の実際の病期は癌の種類に依存するが、一般に、0期癌は非浸潤性(in situ)病変であり、I期癌は小さな限局性腫瘍であり、II期及びIII期癌は局所リンパ節の関与を示す局所進行性腫瘍であり、IV期癌は転移性癌を表す。腫瘍のそれぞれの種類について特異的な病期は、熟練臨床医には既知である。
「転移性乳癌」という用語は、癌細胞が元の部位から体内の他の場所の1つ以上の部位に血管又はリンパ管によって伝達されて、乳房以外の1つ以上の器官に1つ以上の二次腫瘍を形成する乳癌の状態を意味する。
「進行」癌とは、元の部位又は器官の外に、局所浸潤又は転移のいずれかによって広がった癌である。したがって、「進行した」癌という用語は、局所進行性疾患及び転移性疾患の両方を含む。
「再発」癌は、手術等の初期療法への応答後に、初期部位又は遠位部位のいずれかにおいて再成長したものである。「局所的再発」癌は、処置後に以前に処置された癌と同じ場所で再発する癌である。「手術可能な」又は「切除可能な」癌は、原発器官に限定され、手術(切除)に適した癌である。「切除不能な(non-resectable)」又は「切除不能な(unresectable)」癌は、手術によって除去(切除)されることができない。
本発明の二重特異性抗原結合分子
本発明は、4-1BBへの二価結合及び標的細胞抗原への一価結合が可能な新規二重特異性抗原結合分子であって、4-1BBに特異的に結合可能な2つのリポカリンムテインを含み、生産性、安定性、結合親和性、生物学的活性、標的化効率、毒性の低下及び免疫性の低下等の特に有利な特性を有する、新規二重特異性抗原結合分子を提供する。
本発明の二重特異性抗原結合分子は、Fcドメインのサブユニットの1つのC末端にそれぞれ融合されている、4-1BBに特異的に結合可能な2つのリポカリンムテインを含む。二重特異性抗原結合分子の幾何学、特に4-1BBの2つの異なる結合部位と標的細胞抗原との間の距離は、共刺激TNF受容体、すなわち4-1BBの最適な腫瘍局在化活性化に重要である(M.Rothe and A.Skerrra,BioDrugs 2018,32,233-243。ここで、標的細胞抗原に対する抗原結合ドメインが分子中に1つしか存在しない場合、印象的により良好な活性化が得られ得ることも見出された。腫瘍-標的結合対エフェクター細胞-標的結合の1:2のより低い比、例えば標的細胞抗原に特異的に結合可能な抗原結合ドメイン対4-1BBに特異的に結合可能なリポカリンムテインの1:2の比は、腫瘍細胞上のより高密度の占有をもたらし、したがってエフェクター細胞上の4-1BBアゴニストの高密度の架橋をもたらし、最終的にはより強い4-1BB受容体下流シグナル伝達をもたらす。
第1の態様では、4-1BBへの二価結合及び標的細胞抗原への一価結合が可能な二重特異性抗原結合分子であって、
(a)標的細胞抗原に特異的に結合可能な抗原結合ドメイン、特に標的細胞抗原に特異的に結合可能なFab断片と、
(b)安定な会合が可能な第1のサブユニット及び第2のサブユニットで構成されるFcドメインと、
(c)4-1BBに特異的に結合可能な2つのリポカリンムテインであって、リポカリンムテインの一方がFcドメインの第1のサブユニットのC末端に融合され、他方がFcドメインの第2のサブユニットのC末端に融合されているリポカリンムテインと、を含む二重特異性抗原結合分子が提供される。
更なる態様では、4-1BBへの二価結合及び標的細胞抗原への一価結合が可能な二重特異性抗原結合分子であって、
(a)標的細胞抗原に特異的に結合可能な抗原結合ドメイン、特にFab断片と、
(b)安定な会合が可能な第1のサブユニット及び第2のサブユニットで構成されるFcドメインと、
(c)4-1BBに特異的に結合可能な2つのリポカリンムテインであって、リポカリンムテインの一方がFcドメインの第1のサブユニットのC末端に融合され、他方がFcドメインの第2のサブユニットのC末端に融合されているリポカリンムテインと、を含み、4-1BBに特異的に結合可能なリポカリンムテインのそれぞれが、配列番号1の成熟ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(huNGAL)に由来する、二重特異性抗原結合分子が提供される。
一態様では、本発明は、4-1BBに特異的に結合可能なリポカリンムテインの各々が、配列番号2のアミノ酸配列又は配列番号2のアミノ酸配列を含み、以下のアミノ酸の1つ以上が下記のように変異している、上記で定義した二重特異性抗原結合分子を提供する:
(a)20位のQがRに置き換えられ、又は
(b)25位のNがY若しくはDに置き換えられ、又は
(c)28位のHがQに置き換えられ、又は
(d)36位のQがMに置き換えられ、又は
(e)40位のIがNに置き換えられ、又は
(f)41位のRがL若しくはKに置き換えられ、又は
(g)44位のEがV若しくはDに置き換えられ、又は
(h)46位のKがSに置き換えられ、且つ47位~49位のアミノ酸が欠失され、又は
(i)49位のIがH、N、V若しくはSに置き換えられ、又は
(j)52位のMがS若しくはGに置き換えられ、又は
(k)59位のKがNに置き換えられ、又は
(l)65位のDがNに置き換えられ、又は
(m)68位のMがD、G若しくはAに置き換えられ、又は
(n)70位のKがM、T、A若しくはSに置き換えられ、又は
(o)71位のFがLに置き換えられ、又は
(p)72位のDがLに置き換えられ、又は
(q)77位のMがQ、H、T、R若しくはNに置き換えられ、又は
(s)79位のDがI若しくはAに置き換えられ、又は
(t)80位のIがNに置き換えられ、又は
(u)81位のWがQ、S若しくはMに置き換えられ、又は
(v)82位のTがPに置き換えられ、又は
(w)83位のFがLに置き換えられ、又は
(y)92位のFがL若しくはSに置き換えられ、又は
(z)94位のLがFに置き換えられ、又は
(za)96位のKがFに置き換えられ、又は
(zb)100位のFがDに置き換えられ、又は
(zc)101位のPがLに置き換えられ、又は
(zd)103位のHがPに置き換えられ、又は
(ze)106位のSがYに置き換えられ、又は
(zf)122位のFがYに置き換えられ、又は
(zg)125位のFがSに置き換えられ、又は
(zh)127位のFがIに置き換えられ、又は
(zi)132位のEがWに置き換えられ、又は
(zj)134位のYがGに置き換えられる。
一態様では、4-1BBに特異的に結合可能なリポカリンムテインは、配列番号2のアミノ酸配列を含み、4~10個のアミノ酸が上記で定義されるように変異している。いくつかの態様では、4-1BBに特異的に結合可能なリポカリンムテインは、以下の1つ以上のアミノ酸変異を含む:
(d)36位のQがMに置き換えられ、又は
(e)40位のIがNに置き換えられ、又は
(f)41位のRがL若しくはKに置き換えられ、又は
(i)49位のIがH、N、V若しくはSに置き換えられ、又は
(j)52位のMがS若しくはGに置き換えられ、又は
(m)68位のMがD、G若しくはAに置き換えられ、又は
(n)70位のKがM、T、A若しくはSに置き換えられ、又は
(p)72位のDがLに置き換えられ、又は
(q)77位のMがQ、H、T、R若しくはNに置き換えられ、又は
(s)79位のDがI若しくはAに置き換えられ、又は
(u)81位のWがQ、S若しくはMに置き換えられ、又は
(za)96位のKがFに置き換えられ、又は
(zb)100位のFがDに置き換えられ、又は
(zd)103位のHがPに置き換えられ、又は
(zg)125位のFがSに置き換えられ、又は
(zh)127位のFがIに置き換えられ、又は
(zi)132位のEがWに置き換えられ、又は
(zj)134位のYがGに置き換えられる。
別の態様では、4-1BBに特異的に結合可能なリポカリンムテインは、以下の1つ以上のアミノ酸変異を含む:
(a)20位のQがRに置き換えられ、又は
(b)25位のNがY若しくはDに置き換えられ、又は
(g)44位のEがV若しくはDに置き換えられ、又は
(k)59位のKがNに置き換えられ、又は
(o)71位のFがLに置き換えられ、又は
(t)80位のIがNに置き換えられ、又は
(v)82位のTがPに置き換えられ、又は
(y)92位のFがL若しくはSに置き換えられ、又は
(zc)101位のPがLに置き換えられ、又は
(zf)122位のFがYに置き換えられる。
一態様では、4-1BBに特異的に結合可能なリポカリンムテインはそれぞれ、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19及び配列番号20からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。一態様では、4-1BBに特異的に結合可能なリポカリンムテインはそれぞれ、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9及び配列番号10からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。更なる態様では、4-1BBに特異的に結合可能なリポカリンムテインはそれぞれ、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19及び配列番号20からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。一態様では、4-1BBに特異的に結合可能なリポカリンムテインの各々は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。一態様では、両方のリポカリンムテインが同一のアミノ酸配列を含む。
更なる態様では、4-1BBへの二価結合及び標的細胞抗原への一価結合が可能な二重特異性抗原結合分子であって、
(a)標的細胞抗原に特異的に結合可能なFab断片と、
(b)安定な会合が可能な第1のサブユニット及び第2のサブユニットで構成されるFcドメインと、
(c)4-1BBに特異的に結合可能な2つのリポカリンムテインであって、リポカリンムテインの一方がFcドメインの第1のサブユニットのC末端に融合され、他方がFcドメインの第2のサブユニットのC末端に融合されているリポカリンムテインと、を含み、4-1BBに特異的に結合可能なリポカリンムテインのそれぞれが、配列番号90のヒト涙液リポカリン(Tlc)に由来する、二重特異性抗原結合分子が提供される。
一態様では、4-1BBに特異的に結合可能なリポカリンムテインはそれぞれ、配列番号106、配列番号107、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号111及び配列番号112からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
一態様では、本発明は、4-1BBに特異的に結合可能な2つのリポカリンムテインを含む二重特異性抗原結合分子であって、一方のリポカリンムテインがペプチドリンカーを介してFcドメインの第1のサブユニットのC末端に融合されており、他方のリポカリンムテインがペプチドリンカーを介してFcドメインの第2のサブユニットのC末端に融合されている、二重特異性抗原結合分子を提供する。一態様では、ペプチドリンカーは、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号113、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号119、配列番号120、及び配列番号121からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する。一態様では、ペプチドリンカーは、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88及び配列番号89からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する。別の態様では、ペプチドリンカーは、配列番号113、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号119、配列番号120及び配列番号121からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する。特に、ペプチドリンカーは、配列番号78、すなわち(G4S)3のアミノ酸配列を有する。
更なる態様では、FcドメインはIgG、特にIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインである。より詳しくは、FcドメインはIgG1 Fcドメインである。特定の態様では、Fcドメインは、Fcドメインの第1のサブユニット及び第2のサブユニットの会合を促進する修飾を含む。
ヘテロ二量体化を促進するFcドメイン修飾
一態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子は、安定な会合が可能な第1のサブユニット及び第2のサブユニットで構成されるFcドメインと、Fcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合した、標的細胞抗原に特異的に結合可能な1つのFab断片と、4-1BBに特異的に結合可能な2つのリポカリンムテインとを含み、一方のリポカリンムテインはFcドメインの第1のサブユニットのC末端に融合し、他方はFcドメインの第2のサブユニットのC末端に融合している。したがって、本発明の二重特異性抗原結合分子は、Fcドメインの第1のサブユニット及び第2のサブユニットをそれぞれ含む2本の同一でないポリペプチド鎖(「重鎖」)と、軽鎖とを含む。これらのポリペプチドの組換え同時発現及びその後の二量化によって、2本の同一でない重鎖のいくつかの可能な組み合わせが生じる。組換え産生における二重特異性抗原結合分子の収率及び純度を高めるために、二重特異性抗原結合分子のFcドメインに、所望なポリペプチドの会合を促進する修飾を導入することが有利である。
したがって、本発明の二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、Fcドメインの第1のサブユニット及び第2のサブユニットの会合を促進する修飾を含む。ヒトIgG Fcドメインの2つのサブユニット間の最も長いタンパク質-タンパク質相互作用の部位は、FcドメインのCH3ドメイン内にある。したがって、当該修飾は、特にFcドメインのCH3ドメインにある。
具体的な態様では、当該修飾は、いわゆる「ノブ・イントゥ・ホール」修飾であり、Fcドメインの2つのサブユニットの1つに「ノブ」修飾と、Fcドメインの2つのサブユニットの他の1つに「ホール」修飾とを含む。したがって、特定の態様では、本発明は、IgG分子を含む本明細書で上記の二重特異性抗原結合分子に関し、第1の重鎖のFc部分は第1の二量体化モジュールを含み、第2の重鎖のFc部分はIgG分子の2本の重鎖のヘテロ二量体化を可能にする第2の二量体化モジュールを含み、ノブ・イントゥ・ホール技術に従って、第1の二量体化モジュールはノブを含み、第2の二量体化モジュールはホールを含む。
ノブ・イントゥ・ホール技術は、例えば、米国特許第5,731,168号、米国特許第7,695,936号、Ridgway et al.,Prot Eng 9,617-621(1996)及びCarter,J Immunol Meth 248,7-15(2001)に記載される。一般的に、この方法は、第1のポリペプチドの界面にある突起(「ノブ」)と、第2のポリペプチドの界面にある空洞(「ホール」)とを導入することを含み、その結果、突起が、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨害するように空洞内に位置することができる。突起は、第1のポリペプチドの界面からの小さなアミノ酸側鎖を、もっと大きな側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)と交換することによって構築される。突起と同一又は同様の大きさの相補性空洞が、大きなアミノ酸側鎖を、より小さなアミノ酸側鎖(例えば、アラニン又はトレオニン)と置き換えることによって、第2のポリペプチドの界面に作られる。
したがって、特定の態様では、本明細書に開示される二重特異性抗原結合分子のFcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基は、より大きな側鎖容積を有するアミノ酸残基と置き換わり、それによって、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞内で位置換え可能な第1のサブユニットのCH3ドメイン内に突起を生成し、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基は、より小さな側鎖容積を有するアミノ酸残基と置き換わり、それによって、第2のサブユニットのCH3ドメイン内に空洞を生成し、その中で、第1のサブユニットのCH3ドメイン内の突起が位置換え可能である。
突起及び空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を変えることによって、例えば、部位特異的突然変異誘発によって、又はペプチド合成によって作成することができる。
具体的な態様では、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、位置366のトレオニン残基が、トリプトファン残基と置き換わっており(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニット(のCH3ドメイン)において、位置407のチロシン残基は、バリン残基と置き換わっている(Y407V)。より詳しくは、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、更に、位置366のトレオニン残基が、セリン残基と置き換わっており(T366S)、位置368のロイシン残基が、アラニン残基と置き換わっている(L368A)。より詳しくは、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、更に、位置354のセリン残基が、システイン残基と置き換わっており(S354C)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、更に、位置349のチロシン残基が、システイン残基と置き換わっている(Y349C)。これらの2つのシステイン残基の導入は、Fcドメインの2つのサブユニット間のジスルフィド架橋の形成をもたらす。ジスルフィド架橋は、二量体を更に安定化する(Carter,J Immunol Methods 248,7-15(2001))。
代替的な態様では、Fcドメインの第1のサブユニット及び第2のサブユニットの会合を促進する修飾は、例えば、PCT出願国際公開第2009/089004号に記載されるように、静電ステアリング効果を媒介する修飾を含む。一般的に、この方法は、2つのFcドメインサブユニットの界面に、ホモ二量体生成が静電的に望ましくないが、ヘテロ二量化が静電的に望ましいように、帯電したアミノ酸残基による1つ以上のアミノ酸残基の置き換えを含む。
Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能を低下させるFcドメイン修飾
本発明の二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、免疫グロブリン分子の重鎖ドメインを含む一対のポリペプチド鎖からなる。例えば、免疫グロブリンG(IgG)分子のFcドメインは、ダイマーであり、それぞれのサブユニットは、CH2及びCH3 IgG重鎖定常ドメインを含む。Fcドメインの2つのサブユニットは、互いに安定な会合が可能である。
Fcドメインは、本発明の抗原結合分子に、標的組織への良好な蓄積に寄与する長い血清半減期、望ましい組織-血液分布比を含め、望ましい薬物動態特性を与える。しかしながら、同時に、好ましい抗原を含む細胞ではなく、Fc受容体を発現する細胞に対する本発明の二重特異性抗体の望ましくない標的化を引き起こす場合がある。したがって、特定の態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、天然IgG1 Fcドメインと比較して、Fc受容体に対する結合親和性の低下及び/又はエフェクター機能の低下を示す。一態様では、FcはFc受容体に実質的に結合せず、及び/又はエフェクター機能を誘導しない。特定の態様では、Fc受容体は、Fcγ受容体である。一態様では、Fc受容体は、ヒトFc受容体である。具体的な態様では、Fc受容体は、活性化ヒトFcγ受容体であり、より特定的には、ヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIaであり、最も特定的には、ヒトFcγRIIIaである。一態様では、Fcドメインはエフェクター機能を誘導しない。エフェクター機能の低下としては、限定されないが、以下の1つ以上が挙げられ得る:補体依存性細胞傷害(CDC)の低下、抗体依存性細胞傷害(ADCC)の低下、抗体依存性細胞食作用(ADCP)の低下、サイトカイン分泌の低下、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性抗原取り込みの低下、NK細胞に対する結合の低下、マクロファージに対する結合の低下、単球に対する結合の低下、多形核細胞に対する結合の低下、直接的なシグナル伝達誘発性アポトーシスの低下、樹状細胞成熟の低下、又はT細胞プライミングの低下。
特定の態様では、1つ以上のアミノ酸修飾は、本明細書で提供される二重特異性抗原結合分子のFc領域に導入されてもよく、それにより、Fc領域バリアントを作成する。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置でアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4 Fc領域)を含んでいてもよい。
特定の態様では、本発明は、4-1BBへの二価結合及び標的細胞抗原への一価結合が可能な二重特異性抗原結合分子であって、
(a)標的細胞抗原に特異的に結合可能なFab断片と、
(b)安定な会合が可能な第1のサブユニット及び第2のサブユニットで構成されるFcドメインと、
(c)4-1BBに特異的に結合可能な2つのリポカリンムテインであって、一方のリポカリンムテインがFcドメインの第1のサブユニットのC末端に融合され、他方のリポカリンムテインがFcドメインの第2のサブユニットのC末端に融合されているリポカリンムテインと、を含み、Fcドメインが、Fc受容体への、特にFcγ受容体への結合を減少させる1つ以上のアミノ酸置換を含む、二重特異性抗原結合分子を提供する。
一態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性及び/又はエフェクター機能を下げる1つ以上のアミノ酸変異を含む。典型的には、Fcドメインの2つのサブユニットそれぞれに、同じ1つ以上のアミノ酸突然変異が存在する。特に、Fcドメインは、E233、L234、L235、N297、P331及びP329の位置(EUナンバリング)にアミノ酸置換を含む。特に、Fcドメインは、IgG重鎖の234及び235(EUナンバリング)及び/又は329(EUナンバリング)の位置にアミノ酸置換を含む。より詳しくは、IgG重鎖中にアミノ酸置換L234A、L235A及びP329G(「P329G LALA」、EUナンバリング)を有するFcドメインを含む、本発明による三量体TNFファミリーリガンド含有抗原結合分子が提供される。アミノ酸置換L234A及びL235Aは、いわゆるLALA突然変異を指す。アミノ酸置換の「P329G LALA」の組み合わせは、ヒトIgG1 FcドメインのFcγ受容体結合をほぼ完全に消失させ、かかる突然変異型Fcドメインを調製する方法及びFc受容体結合又はエフェクター機能等のその特性を決定する方法も記載している国際特許出願国際公開第2012/130831号A1に記載される。「EUナンバリング」は、Kabat et al,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991のEUインデックスに従うナンバリングを指す。
特定の一態様では、安定な会合が可能な第1のサブユニット及び第2のサブユニットで構成されるFcドメインは、配列番号128のアミノ酸配列を含む第1のサブユニット及び配列番号129のアミノ酸配列を含む第2のサブユニットを含む。
Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能が低下した抗体としては、Fcドメインの残基238、265、269、270、297、327及び329の1つ以上の置換を有する抗体も挙げられる(米国特許第6,737,056号)。かかるFc突然変異体としては、アミノ酸位置265、269、270、297及び327のうち2つ以上での置換を有するFc突然変異体が挙げられ、残基265及び297がアラニンに置換されている、いわゆる「DANA」Fc突然変異体を含む(米国特許第7,332,581号)。
別の態様では、Fcドメインは、IgG4 Fcドメインである。IgG4抗体は、IgG1抗体と比較して、Fc受容体に対する結合親和性の低下と、エフェクター機能の低下を示す。より具体的な態様では、Fcドメインは、位置S228(Kabatナンバリング)にアミノ酸置換、特にアミノ酸置換S228Pを含むIgG4 Fcドメインである。より具体的な態様では、Fcドメインは、アミノ酸置換L235E及びS228P及びP329G(EUナンバリング)を含む、IgG4 Fcドメインである。かかるIgG4 Fcドメインバリアント及びそれらのFcγ受容体結合特性は、国際公開第2012/130831号にも記載されている。
突然変異型Fcドメインは、当該技術分野で周知の遺伝的方法又は化学的方法を用い、アミノ酸の欠失、置換、挿入又は修飾によって調製することができる。遺伝的方法は、コードDNA配列の部位特異的突然変異誘発、PCR、遺伝子合成等を含んでいてもよい。正しいヌクレオチド変化は、例えば、スクリーニングによって確認することができる。
Fc受容体に対する結合は、例えば、ELISAによって、又はBIAcore装置(GE Healthcare)等の標準的な装置と組換え発現によって得られ得るFc受容体を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)によって、容易に決定することができる。適切なかかる結合アッセイを本明細書に記載する。或いは、Fc受容体に対するFcドメイン又はFcドメインを含む細胞活性化二重特異性抗原結合分子の結合親和性は、特定のFc受容体を発現することが知られている細胞株(例えば、FcγIIIa受容体を発現するヒトNK細胞)を用いて評価されてもよい。
Fcドメイン、又はFcドメインを含む本発明の二重特異性抗体のエフェクター機能は、当該技術分野で既知の方法によって測定することができる。ADCCを測定するのに適したアッセイを本明細書に記載する。目的の分子のADCC活性を評定するためのin vitroアッセイの他の例は、米国特許第5,500,362号、Hellstrom et al.Proc Natl Acad Sci USA 83,7059-7063(1986)及びHellstrom et al.,Proc Natl Acad Sci USA 82,1499-1502(1985)、米国特許第5,821,337号、Bruggemann et al.,J Exp Med 166,1351-1361(1987)に記載される。或いは、非放射性アッセイ方法を使用してもよい(例えば、フローサイトメトリー(CellTechnology、Inc.マウンテンビュー、カリフォルニア州)のためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ、及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega、マディソン、ウィスコンシン州))。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核球(peripheral blood mononuclear cell:PBMC)及びナチュラルキラー(Natural Killer:NK)細胞が挙げられる。これに代えて、又はこれに加えて、目的の分子のADCC活性は、in vivoで、例えば、Clynes et al.,Proc Natl Acad Sci USA 95,652-656(1998)に開示されるような動物モデルにおいて評価されてもよい。
いくつかの実施形態では、相補性構成要素に対する(特定的にはC1qに対する)Fcドメインの結合が低下する。したがって、Fcドメインが低減されたエフェクター機能を有するように操作されるいくつかの実施形態では、当該低減されたエフェクター機能は、低減されたCDCを含む。C1q結合アッセイを実施して、本発明の二重特異性抗体がC1qに結合することができ、したがってCDC活性を有するかどうかを決定することができる。例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評定するために、CDCアッセイを行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al.、J Immunol Methods 202、163(1996);Cragg et al.、Blood 101、1045-1052(2003);及びCragg and Glennie、Blood 103、2738-2743(2004)を参照されたい)。
特定の二重特異性抗原結合分子
一態様では、本発明は、4-1BBへの二価結合及び標的細胞抗原への一価結合が可能な二重特異性抗原結合分子であって、
(a)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的に結合可能なFab断片と、
(b)安定な会合が可能な第1のサブユニット及び第2のサブユニットで構成されるFcドメインと、
(c)4-1BBに特異的に結合可能な2つのリポカリンムテインであって、リポカリンムテインの一方がFcドメインの第1のサブユニットのC末端に融合され、他方がFcドメインの第2のサブユニットのC末端に融合されているリポカリンムテインと、を含む二重特異性抗原結合分子が提供される。
一態様では、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的に結合可能なFab断片は、
(a)(i)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域(VHFAP)、並びに(iv)配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域(VLFAP)、又は
(b)(i)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域(VHFAP)、並びに(iv)配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域(VLFAP)を含む。
一態様では、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的に結合可能なFab断片は、(i)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域(VHFAP)、並びに(iv)配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域(VLFAP)を含む。
一態様では、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的に結合可能なFab断片であって、
(a)配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHFAP)及び配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLFAP)、又は
(b)配列番号35のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHFAP)、及び配列番号36のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLFAP)を含む、Fab断片が提供される。
一態様では、配列番号27のアミノ酸配列のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHFAP)、及び配列番号28のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLFAP)、又は配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHFAP)、及び配列番号36のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLFAP)を含む、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的に結合可能なFab断片が提供される。一態様では、配列番号27のアミノ酸配列のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHFAP)、及び配列番号28のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLFAP)のアミノ酸配列を含む、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的に結合可能なFab断片。
一態様では、本明細書において提供される二重特異性抗原結合分子は、配列番号37の第1の重鎖と、配列番号38の第2の重鎖と、配列番号39の軽鎖とを含む。
別の態様では、本発明は、4-1BBへの二価結合及び標的細胞抗原への一価結合が可能な二重特異性抗原結合分子であって、
(a)HER2に特異的に結合可能なFab断片と、
(b)安定な会合が可能な第1のサブユニット及び第2のサブユニットで構成されるFcドメインと、
(c)4-1BBに特異的に結合可能な2つのリポカリンムテインであって、リポカリンムテインの一方がFcドメインの第1のサブユニットのC末端に融合され、他方がFcドメインの第2のサブユニットのC末端に融合されているリポカリンムテインと、を含む二重特異性抗原結合分子が提供される。
一態様では、HER2に特異的に結合可能なFab断片は、
(a)(i)配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに(iv)配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号45のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメイン、又は
(b)(i)配列番号48のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号49のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号50のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに(iv)配列番号51のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号52のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号53のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメイン、又は
(c)(i)配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号57のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号58のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに(iv)配列番号59のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号60のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号61のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメイン、を含む。
一態様では、HER2に特異的に結合可能なFab断片は、(a)(i)配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに(iv)配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号45のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含む。一態様では、HER2に特異的に結合可能なFab断片は、(a)(i)配列番号48のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号49のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号50のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに(iv)配列番号51のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号52のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号53のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含む。
一態様では、HER2に特異的に結合可能なFab断片であって、
(a)配列番号46のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHHER2)及び配列番号47のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLHER2)、又は
(b)配列番号54のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHHER2)及び配列番号55のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLHER2)、又は
(c)配列番号62のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHHER2)及び配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLHER2)、を含むHER2への特異的結合能を有するFab断片が提供される。
一態様では、配列番号46のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHHER2)、及び配列番号47のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLHER2)、又は配列番号54のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHHER2)、及び配列番号55のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLHER2)、又は配列番号62のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHHER2)、及び配列番号63のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLHER2)を含む、HER2に特異的に結合可能なFab断片が提供される。一態様では、HER2に特異的に結合可能なFab断片は、配列番号46のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHHER2)と、配列番号47のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLHER2)とを含む。一態様では、HER2に特異的に結合可能なFab断片は、配列番号54のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHHER2)と、配列番号55のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLHER2)とを含む。
一態様では、本明細書において提供される二重特異性抗原結合分子は、配列番号64の第1の重鎖と、配列番号65の第2の重鎖と、配列番号66の軽鎖とを含む。
ポリヌクレオチド
本発明は更に、本明細書に記載した二重特異性抗原結合分子、又はその断片をコードする単離核酸を提供する。
本発明の二重特異性抗原結合分子をコードする単離ポリヌクレオチドは、完全な抗原結合分子をコードする単一のポリヌクレオチドとして発現されてもよく、又は同時発現される複数の(例えば、2つ以上の)ポリヌクレオチドとして発現されてもよい。一緒に発現するポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、例えば、ジスルフィド結合又は他の手段を介して会合し、機能的な抗原結合分子を形成してもよい。例えば、免疫グロブリンの軽鎖部分は、免疫グロブリンの重鎖部分由来の別個のポリヌクレオチドによってコードされてもよい。同時発現する場合、重鎖ポリペプチドは、軽鎖ポリペプチドと会合し、免疫グロブリンを形成する。
いくつかの態様では、単離核酸は、本明細書中に記載される本発明による二重特異性抗原結合分子全体をコードする。特に、単離されたポリヌクレオチドは、本明細書中に記載される本発明による二重特異性抗原結合分子に含まれるポリペプチドをコードする。
一態様では、本発明は、二重特異性抗原結合分子をコードする単離核酸であって、核酸分子が、(a)標的細胞抗原に特異的に結合可能な抗原結合ドメインをコードする配列、(b)安定な会合が可能な第1のサブユニット及び第2のサブユニットで構成されるFcドメインをコードする配列、並びに(c)4-1BBに特異的に結合可能なリポカリンムテインをコードする配列を含む、単離核酸に関する。
別の態様では、二重特異性抗原結合分子をコードする単離されたポリヌクレオチドであって、該ポリヌクレオチドが、(a)標的細胞抗原に特異的に結合可能なFab断片、(b)安定な会合が可能な第1のサブユニット及び第2のサブユニットで構成されるFcドメイン、並びに(c)4-1BBに特異的に結合可能な2つのリポカリンムテインをコードする配列を含み、一方のリポカリンムテインがFcドメインの第1のサブユニットのC末端に融合され、他方のリポカリンムテインがFcドメインの第2のサブユニットのC末端に融合されている、単離されたポリヌクレオチドが提供される。
特定の態様では、ポリヌクレオチド又は核酸は、DNAである。他の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、RNAであり、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)の形態である。本発明のRNAは、一本鎖又は二本鎖であってもよい。
組換え方法
本発明の二重特異性抗原結合分子は、例えば、固体状態ペプチド合成(例えば、Merrifield固相合成)又は組換え産生によって得られてもよい。組換え産生のために、例えば上記のような二重特異性抗原結合分子又はそのポリペプチド断片をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを単離し、宿主細胞における更なるクローニング及び/又は発現のために1つ以上のベクターに挿入する。かかるポリヌクレオチドは、従来の手順を用い、容易に単離され、配列決定されてもよい。本発明の一態様では、本発明のポリヌクレオチドの1つ以上を含むベクター、好ましくは発現ベクターを提供する。当業者に周知の方法を用いて、適切な転写/翻訳制御シグナルに従い、二重特異性抗原結合分子(断片)のコード配列を含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法としては、in vitro組換えDNA技術、合成技術及びin vivo組換え/遺伝子組換えが挙げられる。例えば、Maniatis et al.,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.(1989)、及びAusubel et al.,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,Greene Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.(1989)に記載される手法を参照されたい。発現ベクターは、プラスミド、ウイルスの一部であってもよく、又は核酸断片であってもよい。発現ベクターは、二重特異性抗原結合分子又はそのポリペプチド断片(即ちコード領域)をコードするポリヌクレオチドが、プロモーター、及び/又は他の転写若しくは翻訳調節要素と作動可能に会合してクローニングされる発現カセットを含む。本明細書で使用する場合、「コード領域」は、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の一部である。「停止コドン」(TAG、TGA又はTAA)は、アミノ酸に翻訳されないが、コード領域の一部であると考えられてもよいが、存在する場合、任意のフランキング配列、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロン、5’及び3’未翻訳領域等は、コード領域の一部ではない。2つ以上のコード領域が、単一のポリヌクレオチドコンストラクト中に例えば、単一のベクター上に存在していてもよく、又は別個のポリヌクレオチドコンストラクト中に例えば別個の(異なる)ベクター上に存在していてもよい。さらに、任意のベクターは、単一のコード領域を含んでいてもよく、又は2つ以上のコード領域を含んでいてもよく、例えば本発明のベクターは、1つ以上のポリペプチドをコードしてもよく、翻訳後又は翻訳と同時に、タンパク質分解による開裂によって、最終的なタンパク質へと分離される。さらに、本発明のベクター、ポリヌクレオチド、又は核酸は、本発明の二重特異性抗原結合分子、若しくはそのポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド、又はそのバリアント若しくは誘導体に融合している、又は非融合であるいずれかの、異種コード領域をコードすることができる。異種コード領域としては、限定されないが、特殊な要素又はモチーフ、例えば、分泌シグナルペプチド又は異種機能性ドメインが挙げられる。作動可能な会合は、ある遺伝子産物(例えばポリペプチド)のコード領域が、制御配列(複数可)の影響下又は制御下で、遺伝子産物の発現を行うような様式で、1つ以上の制御配列と会合する。2つのDNA断片(例えば、ポリペプチドコード領域及びこれに関連するプロモーター)は、プロモーター機能の導入によって、所望の遺伝子産物をコードするmRNAの転写が起こる場合、2つのDNA断片間の結合の性質が、遺伝子産物の発現を試行する発現制御配列の能力を妨害しないか、又はDNAテンプレートを転写する能力を妨害しない場合、「作動可能に会合する」。したがって、プロモーター領域は、プロモーターが核酸の転写を行うことが可能な場合、ポリペプチドをコードする核酸と作動可能に会合していてもよい。プロモーターは、所定の細胞内でのDNAの実質的な転写のみに指向する細胞特異的なプロモーターであってもよい。プロモーター以外の他の転写制御要素、例えば、エンハンサー、オペレーター、転写停止シグナルは、細胞特異的な転写に指向するために、ポリヌクレオチドに作動可能に会合してもよい。
適切なプロモーター及び他の転写制御領域は、本明細書に開示される。種々の転写制御領域が当業者に知られている。これらとしては、限定されないが、脊椎動物細胞内で機能する転写制御領域、例えば、限定されないが、サイトメガロウイルス由来のプロモーター及びエンハンサーセグメント(例えば最初期プロモーター、イントロン-Aと組み合わせる)、シミアンウイルス40(例えば初期プロモーター)及びレトロウイルス(例えばラウス肉腫ウイルス)が挙げられる。他の転写制御領域としては、脊椎動物遺伝子から誘導されるもの、例えば、アクチン、ヒートショックタンパク質、ウシ成長ホルモン及びウサギa-グロビン、及び真核細胞において遺伝子発現を制御することが可能な他の配列が挙げられる。更なる適切な転写制御領域としては、組織特異的なプロモーター及びエンハンサー、及び誘発性プロモーター(例えばプロモーター誘発性テトラサイクリン)が挙げられる。同様に、種々の翻訳制御要素は、当業者に知られている。これらとしては、限定されないが、リボソーム結合部位、翻訳開始及び停止コドン、ウイルス系から誘導される要素(特に、内部リボソーム侵入部位、すなわちIRES、CITE配列とも呼ばれる)が挙げられる。発現カセットは、例えば、複製の起源及び/又は染色体組み込み要素、例えば、レトロウイルスの長い末端反復(LTR)、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)末端逆位配列(ITR)等の他の特徴も含んでいてもよい。
本発明のポリヌクレオチド及び核酸コード領域は、分泌又はシグナルペプチドをコードする更なるコード領域と会合してもよく、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの分泌を指向する。例えば、二重特異性抗原結合分子又はそのポリペプチド断片の分泌が所望される場合、シグナル配列をコードするDNAを、本発明の二重特異性抗原結合分子、又はそのポリペプチド断片をコードする核酸の上流に配置することができる。シグナル仮説によれば、哺乳動物細胞によって分泌されるタンパク質は、シグナルペプチド又は分泌リーダー配列を有しており、これらは、粗い小胞体を通って成長したタンパク質鎖が外に出始めると、成熟タンパク質からは開裂する。当業者は、脊椎動物細胞によって分泌されるポリペプチドが、一般的に、ポリペプチドのN末端に融合するシグナルペプチドを有しており、ポリペプチドの分泌した形態又は「成熟」形態を生成するために、翻訳されたポリペプチドから開裂することを知っている。特定の実施形態では、天然シグナルペプチド、例えば免疫グロブリン重鎖又は軽鎖シグナルペプチドが使用されるか、又は作動可能に会合するポリペプチドの分裂を指向する能力を保持する配列の機能性誘導体が使用される。或いは、異種哺乳動物シグナルペプチド、又はその機能性誘導体を使用してもよい。例えば、野生型リーダー配列は、ヒト組織プラスミノーゲンアクティベーター(TPA)又はマウスβ-グルクロニダーゼのリーダー配列で置換されてもよい。
後での精製(例えばヒスチジンタグ)を容易にする、又は融合タンパク質の標識を補助するために使用可能な、短いタンパク質配列をコードするDNAを、本発明の二重特異性抗原結合分子、又はそのポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチドの中に、又はその末端に含めることができる。
本発明の更なる態様では、本発明の1つ以上のポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供する。特定の実施形態では、本発明の1つ以上のベクターを含む宿主細胞が提供される。ポリヌクレオチド及びベクターは、それぞれポリヌクレオチド及びベクターに関連して本明細書に記載する特徴のいずれかを単独で、又は組み合わせて組み込んでもよい。一態様では、宿主細胞は、本発明の本発明の二重特異性抗原結合分子(の一部)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む(例えば、これにより形質転換されている、又はこれがトランスフェクションされている)。本明細書で使用する場合、「宿主細胞」という用語は、本発明の融合タンパク質又はその断片を生成するように操作することが可能な任意の種類の細胞系を指す。抗原結合分子を複製し、発現を補助するのに適した宿主細胞は、当該技術分野で周知である。かかる細胞は、適切な場合、特定の発現ベクターを用いてトランスフェクトされるか、又は形質導入されてもよく、大規模発酵機に接種するために大量のベクターを含む細胞を成長させ、臨床用途に十分な量の抗原結合分子を得ることができる。適切な宿主細胞としては、原核微生物(例えば大腸菌)又は種々の真核生物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、昆虫細胞等が挙げられる。例えば、ポリペプチドは、特にグリコシル化が必要とされない場合には、細菌内で産生されてもよい。発現後、ポリペプチドは、適切なフラクション中の細菌細胞ペーストから単離されてもよく、更に精製されてもよい。原核生物に加え、真核生物の微生物、例えば、糸状菌又は酵母は、ポリペプチドをコードするベクターに適切なクローニング又は発現の宿主であり、グリコシル化経路が「ヒト化」された真菌株及び酵母株を含み、部分的又は完全にヒトグリコシル化パターンを有するポリペプチドを産生する。Gerngross,Nat Biotech 22,1409-1414(2004)及びLi et al.,Nat Biotech 24,210-215(2006)を参照されたい。
(グリコシル化)ポリペプチドの発現に適した宿主細胞も、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。多くのバキュロウイルス株が同定されており、特に、Spodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために、これを昆虫細胞と組み合わせて使用してもよい。植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号(トランスジェニック植物で抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載している)を参照されたい。脊椎動物細胞も、宿主として使用され得る。例えば、懸濁物中で成長するように適合した哺乳動物細胞株が有用な場合がある。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40(COS-7)によって形質転換されたサル腎臓CV1株;ヒト胎児性腎株(例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)に記載される293又は293T細胞);ベビーハムスター腎細胞(baby hamster kidney cell:BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980)に記載されるTM4細胞;サル腎細胞(CV1);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76);ヒト子宮頸癌細胞(HELA);イヌ腎細胞(MDCK);バッファローラット肝細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(Hep G2);マウス乳癌細胞(MMT 060562);例えばMather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)に記載されるTRI細胞;MRC 5細胞;並びにFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、dhfr-CHO細胞を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub et al.,Proc Natl Acad Sci USA 77,4216(1980))、骨髄腫細胞株、例えば、YO、NS0、P3X63及びSp2/0が挙げられる。タンパク質産生に適した特定の哺乳動物宿主細胞の総説としては、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255-268(2003)を参照されたい。宿主細胞としては、培養細胞、例えば、ほんの数例を挙げると、哺乳動物培養細胞、酵母細胞、昆虫細胞、細菌細胞及び植物細胞が挙げられるが、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物又は培養植物又は動物組織に含まれる細胞も挙げられる。一実施形態では、宿主細胞は、真核細胞であり、好ましくは、哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胚腎臓(HEK)細胞又はリンパ球細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。これらの系において外来遺伝子を発現させる標準的な技術は、当該技術分野で既知である。免疫グロブリンの重鎖又は軽鎖のいずれかを含むポリペプチドを発現する細胞を組み換えて、他方の免疫グロブリン鎖を発現して、発現した生成物が、重鎖及び軽鎖の両方を有する免疫グロブリンとなるようにすることができる。
一態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子、又はそのポリペプチド断片を製造する方法であって、本発明の二重特異性抗原結合分子、又はそのポリペプチド断片を発現するのに好適な条件下にて、本明細書において提供するように、本発明の二重特異性抗原結合分子、又はそのポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を培養することと、本発明の二重特異性抗原結合分子、又はそのポリペプチド断片を、宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)から回収することとを含む、方法を提供する。
本発明の二重特異性抗原結合分子において、構成要素(標的細胞抗原に特異的に結合可能な少なくとも1つの部分であって、Fcドメインのサブユニット及びリポカリンムテインを含むポリペプチド)は遺伝的に互いに融合していない。ポリペプチドは、その成分が直接又はリンカー配列を介して互いに融合されるように設計される。リンカーの組成及び長さは、当該技術分野で周知の方法に従って決定されてもよく、有効性について試験されてもよい。本発明の抗原結合分子の異なる構成要素間のリンカー配列の例は、本明細書中に提供される配列中に見出される。また、望ましい場合、更なる配列が、開裂部位を組み込み、融合タンパク質の個々の構成要素を分離するために含まれていてもよい(例えば、エンドペプチダーゼ認識配列)。
特定の実施形態では、抗原結合分子の一部を形成する、標的細胞抗原(例えば、Fab断片)に特異的に結合可能な抗原結合ドメインは、少なくとも抗原に結合することができる免疫グロブリン可変領域を含む。可変領域は、天然又は非天然に存在する抗体及びその断片の一部を形成することができ、それらに由来し得る。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を産生する方法は、当該技術分野で周知である(例えば、Harlow and Lane,「Antibodies,a laboratory manual」,Cold Spring Harbor Laboratory,1988を参照されたい)。天然に存在しない抗体は、固相ペプチド合成を用いて構築することができ、組換えによって産生することができ(例えば、米国特許第4,186,567号に記載されるように)、又は例えば、可変重鎖及び可変軽鎖を含むコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって得ることができる(例えば、McCaffertyに対する米国特許第5,969,108号を参照されたい)。
免疫グロブリンの任意の動物種を本発明で使用することができる。本発明において有用な非限定的な免疫グロブリンは、マウス、霊長類、又はヒト起源のものであり得る。融合タンパク質がヒトへの使用を意図したものである場合、免疫グロブリンの定常領域がヒト由来であるキメラ形態の免疫グロブリンを使用してもよい。免疫グロブリンのヒト化形態又は完全なヒト形態は、当該技術分野で周知の方法に従って調製することもできる(例えば、Winterに対する米国特許第5,565,332号を参照されたい)。ヒト化は、限定されないが、(a)重要なフレームワーク残基(例えば、良好な抗原結合親和性又は抗体機能を維持するのに重要なもの)を保持しつつ、又は保持せずに、非ヒト(例えば、ドナー抗体)のCDRをヒト(例えば、レシピエント抗体)のフレームワーク領域及び定常領域に接合すること、(b)非ヒト特異性決定領域(SDR又はa-CDR;抗体-抗原相互作用にとって重要な残基)のみをヒトフレームワーク及び定常領域にグラフト接合すること、又は(c)全非ヒト可変ドメインを翻訳するが、表面残基を置き換えることによって、これらとヒト様部分とを「クローキング」することを含め、種々の方法によって達成されてもよい。ヒト化抗体及びそれらの作製方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front Biosci 13,1619-1633(2008)に概説されており、例えば、Riechmann et al.,Nature 332,323-329(1988);Queen et al.,Proc Natl Acad Sci USA 86,10029-10033(1989);米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号及び同第7,087,409号;Jones et al.,Nature 321,522-525(1986);Morrison et al.,Proc Natl Acad Sci 81,6851-6855(1984);Morrison and Oi,Adv Immunol 44,65-92(1988);Verhoeyen et al.,Science 239,1534-1536(1988);Padlan,Molec Immun 31(3),169-217(1994);Kashmiri et al.,Methods 36,25-34(2005)(SDR(a-CDR)グラフト化を記載);Padlan,Mol Immunol 28,489-498(1991)(「リサーフェシング(resurfacing)」を記載);Dall’Acqua et al.,Methods 36,43-60(2005)(「FRシャッフリング」を記載);並びにOsbourn et al.,Methods 36,61-68(2005)及びKlimka et al.,Br J Cancer 83,252-260(2000)(FRシャッフリングに対する「ガイド選択」アプローチを記載)に更に記載されている。本発明による特定の免疫グロブリンは、ヒト免疫グロブリンである。ヒト抗体及びヒト可変領域は、当該技術分野で知られている様々な技術を用いて作製することができる。ヒト抗体は、一般的に、van Dijk and van de Winkel、Curr Opin Pharmacol 5、368-74(2001)及びLonberg、Curr Opin Immunol 20、450-459(2008)に記載される。ヒト可変領域は、ハイブリドーマ法によって作製されたヒトモノクローナル抗体の一部を形成し得て、そのヒトモノクローナル抗体に由来し得る(例えば、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)を参照されたい)。ヒト抗体及びヒト可変領域はまた、抗原チャレンジに応答して、インタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製することができる(例えば、Lonberg,Nat Biotech 23,1117-1125(2005)を参照されたい。ヒト抗体及びヒト可変領域はまた、ヒト由来ファージディスプレイライブラリー(例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178,1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001);及びMcCafferty et al.,Nature 348,552-554;Clackson et al.,Nature 352,624-628(1991)を参照されたい)から選択されるFvクローン可変領域配列を単離することによって作製され得る。ファージは、典型的には、一本鎖Fv(scFv)断片として、又はFab断片としてのいずれかで、抗体断片を呈する。
特定の態様では、本発明の抗原結合分子に含まれる標的細胞抗原(例えば、Fab断片)に特異的に結合可能な抗原結合ドメインは、例えば、PCT公報国際公開第2012/020006号(親和性成熟に関する実施例を参照されたい)又は米国特許出願公開第2004/0132066号に開示されている方法に従って、高められた結合親和性を有するように操作される。本発明の抗原結合分子が特定の抗原決定基に結合する能力は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)又は当業者には知られている他の技術、例えば、表面プラズモン共鳴技術(Liljeblad et al.,Glyco J 17,323-329(2000))、及び従来の結合アッセイ(Heeley,Endocr Res 28,217-229(2002))のいずれかによって測定することができる。競合アッセイを使用して、特定の抗原への結合について参照抗体と競合する抗原結合分子を同定することができる。特定の実施形態では、かかる競合抗原結合分子は、参照抗原結合分子により結合されるのと同じエピトープ(例えば、直鎖状又は立体構造エピトープ)に結合する。抗原結合分子が結合するエピトープをマッピングするための詳細な例示の方法が、Morris(1996)’’Epitope Mapping Protocols,’’ in Methods in Molecular Biology vol.66(Humana Press,Totowa,NJ)に提供されている。例示的な競合アッセイにおいて、固定化された抗原を、抗原に結合する第1の標識抗原結合分子と、抗原に結合するために第1の抗原結合分子と競合する能力について試験されている第2の非標識抗原結合分子とを含む、溶液中でインキュベートする。第2の抗原結合分子は、ハイブリドーマ上清中に存在していてもよい。対照として、固定化された抗原を、第1の標識抗原結合分子を含むが第2の非標識抗原結合分子を含まない溶液中でインキュベートする。第1の抗体の抗原への結合を許容する条件下でのインキュベーションの後、過剰な非結合抗体を除去し、固定化された抗原に関連する標識の量を測定する。固定化された抗原に関連する標識の量が、対照試料と比較して試験試料中で実質的に低減される場合、それは、第2の抗原結合分子が抗原への結合について第1の抗原結合分子と競合していることを示す。Harlow and Lane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual ch.14(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY)を参照されたい。
本明細書に記載されるように調製される本発明の二重特異性抗原結合分子は、高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー等の、当該技術分野にて周知の技術により精製することができる。特定のタンパク質を精製するために使用される実際の条件は、一部には、正味の電荷、疎水性、親水性等の因子に依存し、当業者には明らかである。親和性クロマトグラフィー精製のために、二重特異性抗原結合分子が結合する抗体、リガンド、受容体、又は抗原を使用することができる。例えば、本発明の融合タンパク質を親和性クロマトグラフィー精製するために、プロテインA又はプロテインGを含むマトリックスを使用することができる。連続したプロテインA又はGの親和性クロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーを用いて、実施例にて本質的に記載しているように、抗原結合分子を単離することができる。二重特異性抗原結合分子又はその断片の純度は、ゲル電気泳動、高圧液体クロマトグラフィー等を含む、多種多様の周知の分析技術のいずれかにより測定することができる。例えば、実施例にて記載のとおりに発現する二重特異性抗原結合分子は、還元型、及び非還元型SDS-PAGEにより示されるように、インタクトであり、適切にアセンブルしたことが示された。
アッセイ
本明細書において提供する抗原結合分子の物理的/化学的性質、及び/又は生物活性を、当該技術分野において公知の様々なアッセイにより識別、スクリーニング、又は特性決定することができる。生物学的活性には、例えば、種々の免疫細胞、特にT細胞の活性化及び/又は増殖を増強する能力が含まれ得る。例えば、それらは免疫調節性サイトカインの分泌を増強する。増強されているか又は増強され得る他の免疫調節サイトカインは、例えばIL2、グランザイムB等である。生物学的活性には、カニクイザル結合交差反応性、並びに異なる細胞型への結合も含まれ得る。in vivo及び/又はin vitroでかかる生物学的活性を有する抗原結合分子も提供される。
1.親和性アッセイ
本明細書において提供する二重特異性抗原結合分子の4-1BB(CD137)に対する親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって、BIAcore機器(GE Healthcare)等の標準的な機器、及び組換え発現によって得られ得るもの等の受容体又は標的タンパク質を使用して、実施例に記載の方法に従って決定することができる。4-1BBに対する親和性を決定するための特定の条件は、国際公開第2018/087108号にも記載されている。標的細胞抗原(FAP又はHER2)に対する二重特異性抗原結合分子の親和性もまた、BIAcore機器(GE Healthcare)等の標準的な計装、及び例えば組み換え発現により入手可能である、受容体又は標的タンパク質を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な実例及び例示的な実施形態は、実施例1.2又は2.2に記載される。一態様によれば、KDは、BIACORE(登録商標)T100機(GE Healthcare)を用い、25℃で表面プラズモン共鳴によって測定される。
2.結合アッセイ及び他のアッセイ
本明細書において提供する二重特異性抗原結合分子の、対応する受容体を発現する細胞への結合は、例えばフローサイトメトリー(FACS)により、特定の受容体又は標的抗原を発現する細胞株を使用して評価することができる。一態様では、4-1BBを発現する新鮮な末梢血単核細胞(PBMC)を結合アッセイに使用することができる。これらの細胞は、単離直後(ナイーブPMBC)又は刺激後(活性化PMBC)に使用される。別の態様では、活性化マウス脾細胞(4-1BBを発現する)を使用して、本発明の二重特異性抗原結合分子の4-1BB発現細胞への結合を実証することができる。
更なる態様では、標的細胞抗原を発現する癌細胞株、例えばFAP又はHER2を使用して、抗原結合分子の、標的細胞抗原への結合を実証した。
別の態様では、競合アッセイを使用して、それぞれFAP、HER2又は4-1BBへの結合について特異的抗体又は抗原結合分子と競合する抗原結合分子を同定することができる。特定の態様では、かかる競合する抗原結合分子は、特異的な抗FAP抗体、抗HER2抗体又は特異的な4-1BB抗体によって結合される同じエピトープ(例えば、線状エピトープ又は立体配座エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な例示的方法が、Morris(1996)’’Epitope Mapping Protocols,’’ in Methods in Molecular Biology vol.66(Humana Press,Totowa,NJ)に提供されている。
3.活性アッセイ
一態様では、FAP又はHER2及び生物学的活性を有する4-1BBに結合する二重特異性抗原結合分子を同定するためのアッセイが提供される。生物学的活性は、例えば、FAP又はHER2を発現する癌が細胞における4-1BBを介したアゴニストシグナル伝達が含み得る。アッセイにより、かかるin vitro生物活性を有すると識別される二重特異性抗原結合分子もまた、提供される。
特定の態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子のかかる生物活性を試験する。本発明の分子の生物学的活性を検出するためのアッセイは、実施例3.3及び4.3に記載されているものである。さらに、(例えば、LDH放出の測定による)細胞溶解、(例えば、カスパーゼ3/7活性の測定による)誘発されたアポトーシス動態、又は(例えば、TUNELアッセイを用いた)アポトーシスを検出するアッセイが、当該技術分野において周知である。さらに、かかる複合体の生物活性は、NK細胞、NKT細胞、若しくはγδT細胞等の、様々なリンパ球サブセットの生残、増殖、及びリンホカイン分泌におけるこれらの効果を評価することにより、又は表現型を制御する能力、及び樹状細胞、単球/マクロファージ、若しくはB細胞等の抗原提示細胞の機能を評定することにより評定することができる。
医薬組成物、製剤及び投与経路
更なる態様では、本発明は、例えば、以下の治療方法のいずれかで使用するための、本明細書において提供する二重特異性抗原結合分子のいずれかを含む医薬組成物を提供する。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書に提示されるいずれかの二重特異性抗原結合分子及び少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤を含む。別の実施形態では、医薬組成物は、本明細書において提供する二重特異性抗原結合分子のいずれか、及び例えば後述する少なくとも1種の追加の治療薬剤を含む。
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤に溶解又は分散した、治療有効量の1種以上の二重特異性抗原結合分子を含む。「薬学的又は薬理学的に許容可能な」との句は、一般的に、使用する投薬量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、すなわち、適切な場合、動物(例えばヒト)に投与したときに、有害なアレルギー反応又は他の不都合な反応を引き起こさない分子部分及び組成物を指す。少なくとも1種の二重特異性抗原結合分子、及び必要に応じて追加の有効成分を含有する医薬組成物の調製は、参照により本明細書に組み込まれているRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990により例示されているように、本開示に照らして当業者に既知であろう。特に、組成物は、凍結乾燥された製剤又は水溶液である。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容可能な賦形剤」としては、当業者には知られているだろうが、任意及び全ての溶媒、バッファー、分散媒体、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張性剤、塩類、安定化剤及びこれらの組み合わせが挙げられる。
非経口組成物としては、注射による(例えば、皮下、皮内、病変内、静脈内、動脈内、筋肉内、髄腔内又は腹腔内注射による)投与のために設計されたものが挙げられる。注射のために、本発明の二重特異性抗原結合分子は、水溶液中で配合されてもよく、好ましくは、生理学的に適合するバッファー、例えば、Hanks溶液、Ringer溶液又は生理食塩水バッファー中で配合されてもよい。溶液は、配合剤、例えば、懸濁剤、安定化剤及び分散剤を含有していてもよい。或いは、融合タンパク質は、適切なビヒクル、例えば、滅菌した発熱性物質除去水と共に使用前に構成するための、粉末形態であってもよい。滅菌注射可能溶液は、必要な場合には以下に列挙する種々の他の成分と共に、本発明の融合タンパク質を必要な量で、適切な溶媒に組み込むことによって調製される。滅菌性は、例えば、滅菌濾過膜による濾過によって、容易に達成され得る。一般的に、分散物は、種々の滅菌した有効成分を、塩基性分散媒体及び/又は他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射可能溶液、懸濁物又は乳化物を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、既に滅菌濾過した液体媒体から有効成分と任意の更なる所望な成分の粉末が得られる減圧乾燥又は凍結乾燥技術である。液体媒体は、必要な場合には適切に緩衝化されているべきであり、注射する前に、十分な食塩水又はグルコースで液体希釈剤をまず等張性にする。組成物は、製造条件及び保存条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌等の微生物の混入作用から保護されなければならない。内毒素の混入は、安全なレベルで、例えば、0.5ng/mgタンパク質未満で最小限に維持されるべきであることが理解される。適切な薬学的に許容可能な賦形剤としては、限定されないが、バッファー、例えば、ホスフェート、シトレート及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルパラベン又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリシン;単糖類、二糖類及び他の炭水化物、グルコース、マンノース又はデキストリンを含む;キレート化剤、例えば、EDTA;糖類、例えば、ショ糖、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩を形成する対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。水性注射懸濁物は、懸濁物の粘度を上げる化合物(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、デキストラン等)を含んでいてもよい。必要に応じて、懸濁物は、適切な安定化剤、又は高度に濃縮した溶液の調製を可能にするために、化合物の溶解度を高める薬剤も含んでいてもよい。さらに、活性化合物の懸濁物は、適切な油注射懸濁物として調製されてもよい。適切な親油性溶媒又はビヒクルとしては、脂肪族油(例えば、ゴマ油)、又は合成脂肪酸エステル(例えば、エチルクリート(ethyl cleat)又はトリグリセリド)又はリポソームが挙げられる。
有効成分は、例えば、コアセルベーション技術によって、又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル中に封入されてもよく(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン微小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションに封入されてもよい。かかる技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(18th Ed.Mack Printing Company,1990)に開示されている。徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の適切な例としては、ポリペプチドを含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、例えば、フィルム又はマイクロカプセル等の成型物品の形態である。特定的な実施形態では、注射可能組成物の持続性吸収は、吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン、又はこれらの組み合わせ)の組成物での使用によってもたらされてもよい。
本発明の例示的な薬学的に許容可能な賦形剤は、更に、間質性薬物分散剤、例えば、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、ヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)を含む。特定の例示的なsHASEGP及び使用方法は、rHuPH20を含め、米国特許出願公開第2005/0260186号及び第2006/0104968号に記載される。一態様では、sHASEGPを、1つ以上の更なるグリコサミノグリカナーゼ(例えば、コンドロイチナーゼ)と合わせる。例示的な凍結乾燥した抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載される。水性抗体製剤としては、米国特許第6,171,586号及び国際公開第2006/044908号に記載されるものが挙げられ、後者の製剤は、酢酸ヒスチジンバッファーを含む。上述した組成物に加えて、二重特異性抗原結合分子をデポー調製物として製剤化することも可能である。かかる長く作用する製剤は、移植によって(例えば、皮下又は筋肉内)、又は筋肉内注射によって投与されてもよい。それゆえに、例えば融合タンパク質は、好適なポリマー若しくは疎水性材料(例えば、許容され得るオイルの乳剤エマルションとして)又はイオン交換樹脂と共に、又は例えば、低溶解性の塩等の難溶性誘導体として製剤化してよい。
本発明の二重特異性抗原結合分子を含む医薬組成物は、従来の混合、溶解、乳化、カプセル化、封入、又は凍結乾燥プロセスにより製造することができる。医薬組成物は、1つ以上の生理学的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤又はタンパク質を医薬として使用可能な製剤へと加工するのを容易にする補助剤を用い、従来の様式で配合されてもよい。適切な製剤は、選択する投与経路によって変わる。
二重特異性抗原結合分子は、遊離酸又は塩基、中性又は塩形態で、組成物に配合されることができる。薬学的に許容可能な塩は、遊離酸又は遊離塩基の生体活性を実質的に保持する塩である。薬学的に許容可能な塩としては、酸付加塩、例えば、タンパク質性組成物の遊離アミノ基と形成される酸付加塩、又は塩酸又はリン酸等の無機酸と形成されるか、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸又はマンデル酸等の有機酸と形成されるものが挙げられる。遊離カルボキシル基と形成される塩も、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムの水酸化物又は水酸化第2鉄等の無機塩基から誘導されてもよく、又はイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン又はプロカイン等の有機塩基から誘導されてもよい。医薬塩は、対応する遊離塩基形態よりも、水及び他のプロトン性溶媒に溶けやすい傾向がある。
本明細書に記載の組成物は、処置される特定の徴候に必要な1種類より多い有効成分も含んでいてもよく、好ましくは、互いに有害な影響を与えない相補的な活性を有するものを含んでいてもよい。かかる有効成分は、適切には、意図する目的にとって有効な量で組み合わせた状態で存在する。
in vivo投与に使用される製剤は、一般的に滅菌である。滅菌性は、例えば、滅菌濾過膜による濾過によって、容易に達成され得る。
治療方法及び組成物
本明細書で提供される4-1BBへの二価結合及び標的細胞抗原への一価結合が可能な二重特異性抗原結合分子はいずれも、治療方法に使用され得る。
治療方法で使用するために、本発明の二重特異性抗原結合分子を、良好な医事に一致する様式で製剤化、用量化、及び投与することができる。これに関連して考慮すべき要因としては、処置される特定の障害、処置される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医療従事者に既知である他の要因が挙げられる。
一態様では、医薬として使用するための、4-1BBへの二価結合及び標的細胞抗原への一価結合が可能な二重特異性抗原結合分子が提供される。更なる態様では、疾患の処置に使用するための、特にがん又は感染症の処置に使用するための本発明の二重特異性抗原結合分子が提供される。特定の態様では、処置方法で使用するための、本発明の二重特異性抗原結合分子を提供する。一態様では、本発明は、疾患の処置を必要とする個体における、疾患の処置で使用するための、本明細書に記載した二重特異性抗原結合分子を提供する。特定の態様では、本発明は、疾患を有する個体の処置方法であって、治療有効量の二重特異性抗原結合分子を個体に投与することを含む方法で使用するための二重特異性抗原結合分子を提供する。
特定の態様では、処置される疾患は癌である。本発明による「癌」という用語はまた、癌転移も含む。「転移」とは、その元の部位から身体の別の部分への癌細胞の広がりを意味する。腫瘍転移は、腫瘍細胞又は成分が残存し、転移能を発現し得るので、原発腫瘍の除去後でさえもしばしば起こる。一態様では、4-1BBへの二価結合及び標的細胞抗原への一価結合が可能な二重特異性抗原結合分子は、固形腫瘍の処置に使用するためのものである。固形腫瘍の代表例としては、結腸癌、前立腺癌、乳癌、肺癌、皮膚癌、肝臓癌、骨癌、卵巣癌、膵臓癌、脳癌、頭頸部癌及びリンパ腫が挙げられる。したがって、固形腫瘍の処置における使用のための本明細書に記載される、4-1BBへの二価結合及びFAPへの一価結合が可能な二重特異性抗原結合分子が提供される。
特定の態様では、処置される疾患はHER2陽性癌である。HER2陽性癌の例としては、乳癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、唾液腺癌、子宮内膜癌、膵癌及び非小細胞肺癌(NSCLC)が挙げられる。したがって、これらの癌の処置に使用するための、本明細書に記載の4-1BBへの二価結合及びHER2への一価結合が可能な二重特異性抗原結合分子が提供される。処置が必要な被験体、患者又は個体は、典型的には、哺乳動物であり、より特定的には、ヒトである。
別の態様では、感染症の処置、特にウイルス感染症の処置に使用するための、本明細書に記載の二重特異性抗原結合分子が提供される。「感染症」という用語は、個体から個体に、又は生物から生物に伝播することができ、微生物因子によって引き起こされる任意の疾患を指す。更なる態様では、自己免疫疾患(例えば、狼瘡疾患等)の処置において使用するための本明細書に記載の二重特異性抗原結合分子が提供される。特定の態様では、処置される感染症は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)、HBV(B型肝炎ウイルス)、HCV(C型肝炎)、HSV1(単純ヘルペスウイルス1型)、CMV(サイトメガロウイルス)、LCMV(リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス)又はEBV(エプスタイン・バー・ウイルス)のような慢性ウイルス感染である。
更なる態様では、本発明は、4-1BBへの二価結合及び標的細胞抗原への一価結合が可能な二重特異性抗原結合分子の、それを必要とする個体における疾患の処置のための医薬の製造又は調製における使用に関する。一態様では、医薬は、疾患を有する個体に、治療有効量の医薬を投与することを含む疾患の処置方法で使用するためのものである。特定の態様では、処置される疾患は、増殖性障害、特に癌である。したがって、一態様では、本発明は、癌を処置するための医薬の製造又は調製における本発明の二重特異性結合分子の使用に関する。一態様では、固形腫瘍を処置するための医薬の製造又は調製における本発明の二重特異性結合分子の使用が提供される。一態様では、HER2陽性癌を処置するための医薬品の製造又は調製における本発明の二重特異性結合分子の使用が提供される。HER2陽性癌の例としては、乳癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、唾液腺癌、子宮内膜癌、膵癌及び非小細胞肺癌(NSCLC)が挙げられる。特定の態様では、処置される癌は、HER2陽性乳癌、特にHER2陽性転移性乳癌である。当業者であれば、いくつかの場合、二重特異性抗原結合分子は、硬化を提供し得ないが、部分的な利益しか提供し得ないことを認識し得る。いくつかの態様では、いくらかの効果を有する生理学的変化もまた、治療上有益であるとみなされる。したがって、いくつかの態様では、生理学的変化をもたらす二重特異性抗原結合分子の量を、「有効量」、又は「治療有効量」とみなす。
特定の態様では、感染症を処置するための医薬品の製造又は調製における本発明の二重特異性結合分子の使用が提供される。一態様では、感染症は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)、HBV(B型肝炎ウイルス)、HCV(C型肝炎)、HSV1(単純ヘルペスウイルス1型)、CMV(サイトメガロウイルス)、LCMV(リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス)又はEBV(エプスタイン・バー・ウイルス)のような慢性ウイルス感染である。
更なる態様では、本発明は、個体における疾患の処置方法であって、4-1BBへの二価結合及び本発明の標的細胞抗原への一価結合が可能な二重特異性抗原結合分子の治療有効量を当該個体に投与することを含む方法を提供する。一態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子を薬学的に許容可能な形態で含む組成物が上記個体に投与される。特定の態様では、処置される疾患は、増殖性障害である。特定の態様では、疾患は癌である。一態様では、処置される疾患は感染症である。特定の態様では、方法は、更に、個体に、治療有効量の少なくとも1つの更なる治療薬剤(例えば、処置される疾患が癌である場合、抗癌剤)を投与することを含む。特定の態様では、方法は、治療有効量の細胞傷害剤又は別の免疫療法を個体に更に投与することを含む。上のいずれかの実施形態に係る「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒトであってもよい。
疾患の予防又は処置のために、本発明の二重特異性抗原結合分子の適切な投与量(単独で又は1つ以上の他の更なる治療剤と組み合わせて使用される場合)は、処置される疾患のタイプ、投与経路、患者の体重、抗原結合分子のタイプ、疾患の重症度及び経過、二重特異性抗原結合分子が予防目的又は治療目的のために投与されるかどうか、以前の又は同時の治療的介入、患者の病歴及び融合タンパク質に対する応答、並びに主治医の裁量に依存する。投与の責任を担う医師は、いずれにしても、組成物中の有効成分の濃度、個々の被験体に適切な用量を決定する。限定されないが、種々の時間点にわたる単回又は複数回の投与、ボーラス投与、パルス注入を含む種々の投薬計画が本明細書で想定される。二重特異性抗原結合分子は、一度に、又は一連の処置にまたがり、患者に好適に投与される。疾患の種類及び重症度に応じ、例えば、1回又は複数回の個別投与、又は連続点滴にかかわらず、約1μg/kg~15mg/kg(例えば0.1mg/kg~10mg/kg)の二重特異性抗原結合分子が、患者への投与への最初の候補投与量となることができる。典型的な1日投薬量は、上述の因子に依存して、約1μg/kg~100mg/kgの範囲であってもよい。数日間又はそれ以上にわたる反復投与において、状態に応じ、処置は通常、疾患症状の所望の抑制が生じるまで続けられる。二重特異性抗原結合分子の1つの例示的な用量は、約0.005mg/kg~約10mg/kgの範囲である。他の例では、投薬量はまた、投与あたり、約1μg/kg体重、約5μg/kg体重、約10μg/kg体重、約50μg/kg体重、約100μg/kg体重、約200μg/kg体重、約350μg/kg体重、約500μg/kg体重、約1mg/kg体重、約5mg/kg体重、約10mg/kg体重、約50mg/kg体重、約100mg/kg体重、約200mg/kg体重、約350mg/kg体重、約500mg/kg体重から約1000mg/kg体重まで、又はもっと多く、又はその間の誘導可能な任意の範囲を含んでいてもよい。本明細書に列挙される数から誘導可能な範囲の例では、約5mg/kg/体重~約100mg/kg/体重、約5μg/kg/体重~約500mg/kg/体重等が、上述の数に基づいて投与されてもよい。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/kg若しくは10mg/kg(又はこれらの任意の組み合わせ)の1回又は複数回の用量を患者に投与してもよい。かかる用量は、断続的に、例えば毎週又は3週間毎(例えば、患者が約2~約20回、又は例えば約6回の用量の二重特異性抗原結合分子を受容するように)投与されてもよい。最初の多めの投与量、それに続く1回以上の量の少ない用量を投与してよい。しかしながら、他の投薬レジメンが有用であってもよい。この治療の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易にモニタリングされる。
本発明の二重特異性抗原結合分子は一般に、意図する目的を達成するのに有効な量で使用される。疾患症状を処置又は予防するのに使用するため、本発明の二重特異性抗原結合分子、又はその医薬組成物は、治療有効量で投与される、又は適用される。治療有効量の決定は、特に、本明細書に与えられる詳細な開示の観点で、十分に当業者の能力の範囲内である。全身投与の場合、治療有効投薬量は、in vitroアッセイ、例えば、細胞培養アッセイから最初に概算することができる。次いで、細胞培養物で決定されるようなIC50を含む血中濃度範囲を達成するために、用量を動物モデルで配合してもよい。かかる情報を使用し、ヒトにおける有用な用量を更に正確に決定することができる。初期投薬量も、in vivoデータから、例えば、動物モデルから、当該技術分野で周知の技術を用いて概算することができる。当業者は、動物データに基づき、ヒトへの投与を容易に最適化することができる。投与量及び感覚を個別に調節して、治療効果を維持するのに十分な、二重特異性抗原結合分子の血漿濃度を提供することができる。注射による投与のための通常の患者投薬量は、約0.1~50mg/kg/日、典型的には約0.5~1mg/kg/日の範囲である。治療に有効な血漿濃度は、各日に複数回用量を投与することによって達成されてもよい。血漿中のレベルは、例えばHPLCによって測定することができる。局所投与又は選択的取り込みの場合、二重特異性抗原結合分子の有効局所濃度は血漿濃度に関連しないことがある。当業者は、過度な実験を行うことなく、治療に有効な局所投薬量を最適化することができる。
本明細書で記載される、二重特異性抗原結合分子の治療に有効な用量は一般に、実質的な毒性を引き起こすことなく治療効果を提供する。二重特異性抗原結合分子の毒性及び治療有効性は、細胞培養物又は実験動物における標準的な医薬手順によって決定することができる。細胞培養アッセイ及び動物実験を使用し、LD50(集団の50%が致死に至る用量)及びED50(集団の50%が治療に有効である用量)を決定することができる。毒性と治療効果との間の用量比は、治療指数であり、比LD50/ED50として表すことができる。大きな治療指数を示す二重特異性抗原結合分子が好ましい。一態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子は、高い治療指数を示す。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られるデータを、ヒトでの使用に適した投薬範囲を決定する際に使用することができる。投薬量は、好ましくは、毒性がほとんどないか、全くない状態で、ED50を含む血中濃度の範囲内にある。投薬量は、例えば、使用される剤形、利用される投与経路、被験体の状態等の種々の因子に依存して、この範囲内で変動してもよい。正確な製剤、投与経路及び投与量は、患者の状態(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるFingl et al.,1975,in:The Pharmacological Basis of Therapeutics,Ch.1,p.1を参照されたい)を考慮して個々の医師が選択することができる。本発明の融合タンパク質で処置される患者の主治医は、毒性、臓器不全等に起因して、どのように、いつ投与を中止するか、中断するか、又は調整するかを知っている。逆に、主治医は、臨床応答が十分ではない場合(毒性を生じずに)、処置をもっと高レベルにするように調整することも知っているであろう。関心のある障害の管理において投与される用量の大きさは、処置される状態の重篤度、投与経路等に伴って変動する。状態の重篤度は、例えば、部分的には、標準的な予後評価方法によって評価されてもよい。さらに、用量と、おそらく投薬頻度は、個々の患者の年齢、体重及び応答によっても変わる。
他の薬剤及び処置
本発明の4-1BBへの二価結合及び標的細胞抗原への一価結合が可能な二重特異性抗原結合分子は、治療において1つ以上の他の薬剤と組み合わせて投与され得る。例えば、本発明の二重特異性抗原結合分子は、少なくとも1つの追加の治療剤と同時投与されてもよい。「治療剤」という用語は、かかる処置が必要な個体において、症状又は疾患を処置するために投与することが可能な任意の薬剤を包含する。かかる更なる治療剤は、処置される特定の徴候に適した任意の有効成分を含んでいてもよく、好ましくは、互いに有害な影響を与えない相補的な活性を有するものを含んでいてもよい。特定の態様では、追加の治療剤は、細胞傷害性の化学療法剤又は抗血管新生剤等の別の抗癌剤である。
一態様では、本発明の4-1BBへの二価結合及び標的細胞抗原への一価結合が可能な二重特異性抗原結合分子は、PD-L1/PD-1相互作用を遮断する薬剤と組み合わせて投与され得る。特に、PD-L1/PD-1相互作用を遮断する薬剤は、抗PD-L1抗体又は抗PD1抗体である。より特定的には、PD-L1/PD-1相互作用を遮断する薬剤は、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、ペムブロリズマブ及びニボルマブからなる群より選択される。特定の態様では、PD-L1/PD-1相互作用を遮断する薬剤は、アテゾリズマブである。
かかる他の薬剤は、適切には、意図する目的にとって有効な量で組み合わせた状態で存在する。有効量のかかる他の薬剤は、使用される融合タンパク質の量、障害又は処置の種類、上述の他の因子に依存する。二重特異性抗原結合分子は、一般的に、同じ投薬量で、本明細書に記載の投与経路で使用されるか、又は約1~99%の本明細書に記載の投薬量で、又は経験的/臨床的に適切であると決定される任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
上記のかかる併用療法は、併用投与(2つ以上の治療薬剤が同じ又は別個の組成物に含まれる場合)、及び別個の投与を含み、その場合、本発明の二重特異性抗原結合分子の投与は、追加の治療薬及び/又はアジュバントの投与の前、同時、及び/又は後に、起こり得る。
製造物品
本発明の別の態様では、上述の障害の処置、予防及び/又は診断に有用な材料を含む製造物品が提供される。製造物品は、容器と、容器に挿入されるか、又は容器に付随するラベル又はパッケージ添付文書とを備えている。適切な容器としては、例えば、瓶、バイアル、シリンジ、静注溶液袋等が挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチック等の様々な材料から形成され得る。容器は、組成物をそれ自身で、又は状態を処置し、予防し、及び/又は診断するのに有効な別の組成物と組み合わせて保持しており、滅菌アクセス口を有していてもよい(例えば、容器は、皮下注射針によって穿孔可能なストッパーを有する静脈用溶液袋又はバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1種の活性剤は、本発明の二重特異性抗原結合分子である。
ラベル又はパッケージ添付文書は、その組成物が、選択した条件を処置するために使用されることを示す。さらに、製造物品は、(a)製造物品中に含有され、本発明の4-1BB三量体含有抗原結合分子を含む組成物を含む第1の容器、及び(b)製造物品中に含有され、更なる細胞傷害性の又は別の治療薬を含む組成物を含む第2の容器を含んでよい。製造物品は、本発明のこの実施形態では、その組成物を特定の状態を処置するために使用可能であることを示すパッケージ添付文書を更に備えていてもよい。
これに代えて、又はこれに加えて、製造物品は、薬学的に許容可能なバッファー、例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化生理食塩水、Ringer溶液及びデキストロース溶液を含む第2の(又は第3の)容器を更に備えていてもよい。他のバッファー、希釈剤、フィルタ、ニードル及びシリンジを含め、商業的及びユーザの観点から望ましい他の材料を更に含んでいてもよい。
表B(配列):
ヒト免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列に関連する一般的な情報は、Kabat,E.A.,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)に与えられる。抗体鎖のアミノ酸は、上に定義したようなKabat(Kabat,E.A.,et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th ed.、Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))によるEUナンバリングシステムに従ってナンバリングされ、参照される。
以下は、本発明の方法及び組成物の例である。先に提供した一般的な説明を考慮すると、種々の他の実施形態が実施されてもよいことは理解される。
組換えDNA技術
標準的な方法を使用して、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A laboratory manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1989に記載されるように、DNAを操作した。分子生物学的試薬は、製造元の説明書に従って使用した。ヒト免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列に関する一般的な情報は、以下に与えられる:Kabat,E.A.et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Ed.,NIH Publication No 91-3242。
DNA配列決定
DNA配列は、二本鎖配列決定によって決定した。
遺伝子合成
所望の遺伝子セグメントは、適切なテンプレートを使用したPCRによって生成されたか、又はGeneart AG(レーゲンスブルク、ドイツ)によって、合成オリゴヌクレオチド及びPCR産物から自動遺伝子合成によって合成した。正確な遺伝子配列が利用できない場合においては、最も近い相同体の配列に基づきオリゴヌクレオチドプライマーを設計し、適切な組織に由来するRNAから、RT-PCRにより遺伝子を単離した。単一の制限エンドヌクレアーゼ開裂部位に隣接する遺伝子セグメントを、標準的なクローニング/配列決定ベクター内へとクローニングした。プラスミドDNAを形質転換細菌から精製し、濃度をUV分光法によって測定した。サブクローニングした遺伝子断片のDNA配列は、DNA配列決定によって確認した。遺伝子セグメントは、それぞれの発現ベクター内へのサブクローニングを可能にする適切な制限部位を用いて設計した。全てのコンストラクトは、真核細胞における分泌のためのタンパク質を標的とするリーダー配列についてコードする5’末端DNA配列を用いて設計した。
細胞培養技術
標準的な細胞培養技術は、Current Protocols in Cell Biology(2000),Bonifacino,J.S.,Dasso,M.,Harford,J.B.,Lippincott-Schwartz,J.and Yamada,K.M.(eds.),John Wiley&Sons,Inc.に記載されているように使用した。
タンパク質精製
タンパク質は、標準プロトコルに言及される、フィルタにかけた細胞培養物上清から精製した。簡潔に述べると、抗体を、Protein A Sepharoseカラム(GE healthcare)に適用し、PBSで洗浄した。抗体の溶離は、pH2.8で達成され、その後、試料を即時中和した。凝集したタンパク質は、PBS中での、又は20mM ヒスチジン、150mM NaCl(pH6.0)中でのサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200、GE Healthcare)によって、単量体抗体から分離した。単量体抗体画分をプールし、例えば、MILLIPORE Amicon Ultra(30分子量カットオフ)遠心分離濃縮器を用いて濃縮し、凍結させ、-20℃又は-80℃で保存した。例えば、SDS-PAGE、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、又は質量分析による、後続のタンパク質分析及び分析による特性決定のために、サンプルの一部を提供した。
SDS-PAGE
NuPAGE(登録商標)Pre-Castゲルシステム(Invitrogen)を、製造元の説明書により使用した。特に、10%又は4~12%のNuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)Bis-TRIS Pre-Castゲル(pH6.4)、及びNuPAGE(登録商標)MES(還元型ゲル、NuPAGE(登録商標)酸化防止剤ランニングバッファー助剤を添加)又はMOPS(非還元型ゲル)ランニングバッファーを使用した。
分析用サイズ排除クロマトグラフィー
抗体の凝集及びオリゴマー状態を決定するためのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、HPLCクロマトグラフィーによって行った。簡潔には、プロテインA精製抗体を、Agilent HPLC 1100システムの300mM NaCl、50mM KH2PO4/K2HPO4(pH7.5)におけるTosoh TSKgel G3000SWカラムに、又はDionex HPLC-Systemの2×PBSにおけるSuperdex 200カラム(GE Healthcare)に適用した。溶離したタンパク質をUV吸光度及びピーク面積の積分によって定量した。BioRad Gel Filtration Standard 151-1901を標準物質として供した。
実施例1
4-1BBへの二価結合及びFAPへの一価/二価結合を有する二重特異性抗体の調製、精製及び特性評価
1.1 4-1BBへの二価結合及びFAPへの一価又は二価結合を有する二重特異性 抗体の作製
4-1BBに対する二価結合及びFAPに対する一価又は二価を有する二重特異的アゴニスト4-1BB抗体を、図1A及び1Bに記載されるように調製した。FAP結合剤(参照によって本明細書中に組み込まれる国際公開第2012/020006号A2に記載されるようなクローン4B9、作製及び調製)及び4-1BB結合剤(国際公開第2016/177802号に記載のアンチカリン、作製及び調製)を使用して、図1A及び図1Bに記載される分子を調製し、TA1はFAPであった。国際特許出願公開番号国際公開第2012/130831号A1に記載の方法に従い、Pro329Gly、Leu234Ala、及びLeu235Ala変異を、重鎖のFc定常領域に導入して、Fcγ受容体への結合をなくした。
FAP(4B9)バインダーをコードする重鎖DNA配列及び軽鎖DNA配列の可変領域を、ホールの定常重鎖又はヒトIgG1の定常軽鎖のどちらかとインフレームでサブクローニングした。
FAPへの二価結合を有するコンストラクトを以下のようにクローニングした:各VH(FAP)-Fc(hu IgG1)-(G4S)3コネクター-4-1BB結合リポカリンを含む2つの重鎖及びVL(FAP)-Cカッパを含む2つの軽鎖。二重特異性二価の2+2抗FAP、抗4-1BB huIgG1 PGLALAに関するアミノ酸配列を表1に見出すことができる。
FAPへの一価結合を有するコンストラクトを以下のようにクローニングした:VH(FAP)-Fcノブ(hu IgG1)-(G4S)3コネクター-4-1BB結合リポカリンを含む1本の重鎖、1本の重鎖Fcホール(hu IgG1)-(G4S)3コネクター-4-1BB結合リポカリン、及びVL(FAP)-Cカッパを含む1本の軽鎖。S354C/T366W変異を含むFcノブ重鎖と、Y349C/T366S/L368A/Y407V変異を含むFcホール重鎖と、抗FAP軽鎖とを組み合わせることにより、2つの4-1BB結合リポカリンを含むヘテロ二量体の生成が可能になった。二重特異性一価の2+1抗FAP、抗4-1BB huIgG1 PGLALAに関するアミノ酸配列を表2に見出すことができる。
表1:成熟二重特異性二価2+2抗FAP、抗4-1BBリポカリンhuIgG1 PGLALA抗原結合分子のアミノ酸配列
表2:成熟二重特異性一価1+2抗FAP、抗4-1BBリポカリンhuIgG1 PGLALA抗原結合分子のアミノ酸配列
HEK293 EBNA細胞を一過性トランスフェクションすることにより、二重特異性抗体を生成した。細胞を遠心分離し、培地を予め温めたCD CHO培地と交換した。CD CHO培地中で発現ベクターを混合し、PEIを添加し、溶液をボルテックスして室温で10分間インキュベートした。その後、細胞をDNA/PEI溶液と混合して、振蕩フラスコに移し、5%CO2雰囲気の振盪インキュベータ内で、3時間37℃でインキュベートした。インキュベーションの後、補充液を伴うExcell培地を添加した。トランスフェクションの1日後、12%フィードを添加した。7日後に細胞上清を集め、標準的な方法によって精製した。細胞を、それぞれa)及びb)のコンストラクトについて1:1又は1:1:1の比で対応する発現ベクターでトランスフェクトした。
タンパク質は、標準プロトコルに言及される、フィルタにかけた細胞培養物上清から精製した。簡潔には、Fc含有タンパク質を、プロテインAを使用するアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製した。溶出をpH3.0で達成し、続いて試料を直ちに中和した。タンパク質を濃縮し、凝集したタンパク質を、20mMヒスチジン、140mM塩化ナトリウム、pH6.0のサイズ排除クロマトグラフィーにより、単量体タンパク質から分離した。
精製されたコンストラクトのタンパク質濃度を、Pace,et al.,Protein Science,1995,4,2411-1423に従ってアミノ酸配列に基づいて計算されたモル吸光係数を使用して、280 nmでの光学密度(OD)を測定することによって決定した。LabChipGXIIを使用して、還元剤の存在下、及び不在下にて、CE-SDSにより、タンパク質の純度及び分子量を分析した。凝集物含有量の決定は、25mM K2HPO4、125mM NaCl、200mM L-アルギニンモノヒドロクロライド、pH6.7泳動緩衝液中、25℃で平衡化した分析用サイズ排除カラム(TSKgel G3000 SW XL)を使用するHPLCクロマトグラフィーによって行った。
表3は、二重特異性FAP(4B9)標的化4-1BB結合抗原結合分子の収率及び最終モノマー含有量を要約する。
表3:二重特異性4-1BB結合抗原結合分子の生化学的分析
比較のため、配列番号69及び配列番号70のアミノ酸配列を含む2+2 FAP(4B9)×4-1BBリポカリンhuIgG4 SP分子、並びに配列番号71及び配列番号72のアミノ酸配列を含む非標的2+2 DP47×4-1BBリポカリンhuIgG4 SP対照分子も作製した。
1.2 表面プラズモン共鳴による、4-1BBへの二価結合及びFAPへの一価又は二価結合を有する二重特異性抗体及び三重特異性抗体の機能的特性評価
ヒト4-1BB Fc(kih)及びヒトFAPに同時に結合する能力を、表面プラズモン共鳴(SPR)により評定した。全てのSPR実験は、ランニング緩衝液としてHBS-EP(0.01M HEPES pH7.4,0.15M NaCl,3mM EDTA,0.005%界面活性剤P20,Biacore、フライブルク/ドイツ)を用いて、Biacore T200で25℃にて実施した。ビオチン化ヒト4-1BB Fc(kih)をストレプトアビジン(SA)センサーチップのフローセルに直接結合させた。500共鳴単位(RU)までの固定化レベルを使用した。
二重特異性FAP標的化抗4-1BBリポカリンを200nMの濃度範囲で、30μL/分のフローで90秒間にわたってフローセルを通過させ、解離を0秒に設定した。ヒトFAPを、500nMの濃度で90秒間にわたってフローセルに30μL/分の流量で第2の分析物として注入した(図2A)。解離を120秒間監視した。タンパク質が不動化しなかった参照フローセルで入手した応答を差し引くことで、バルク屈折率の差を補正した。
図2B及び図2Cのグラフにおいて認められ得るように、両方の二重特異性FAP標的化抗4-1BBリポカリンがヒト4-1BB及びヒトFAPに同時に結合することができた。
実施例2
4-1BBへの二価結合及びHER2への一価/二価結合を有する二重特異性抗体の調製、精製及び特性評価
2.1 4-1BBへの二価結合及びHER2への一価又は二価結合を有する二重特異性抗体の作製
4-1BBに対する二価結合及びHER2に対する一価又は二価結合を有する二重特異性アゴニスト4-1BB抗体を、図1A及び1Bに記載されるように調製した。HER2結合剤(トラスツズマブに対応する)及び4-1BB結合剤(国際公開第2016/177802号に記載のリポカリン、生成及び調製)を使用して、図1A及び図1Bに記載の分子を調製し、TA1はHER2であった。国際特許出願公開番号国際公開第2012/130831号A1に記載の方法に従い、Pro329Gly、Leu234Ala、及びLeu235Ala変異を、重鎖のFc定常領域に導入して、Fcγ受容体への結合をなくした。
FAP(4B9)バインダーをコードする重鎖DNA配列及び軽鎖DNA配列の可変領域を、ホールの定常重鎖又はヒトIgG1の定常軽鎖のどちらかとインフレームでサブクローニングした。
FAPへの二価結合を有するコンストラクトを以下のようにクローニングした:各VH(HER2)-Fc(hu IgG1)-(G4S)3コネクター-4-1BB結合リポカリンを含む2つの重鎖及びVL(HER2)-Cカッパを含む2つの軽鎖。二重特異性二価の2+2抗HER2、抗4-1BB huIgG1 PGLALAに関するアミノ酸配列を表4に見出すことができる。
FAPへの一価結合を有するコンストラクトを以下のようにクローニングした:VH(HER2)-Fcノブ(hu IgG1)-(G4S)3コネクター-4-1BB結合リポカリンを含む1本の重鎖、1本の重鎖Fcホール(hu IgG1)-(G4S)3コネクター-4-1BB結合リポカリン、及びVL(HER2)-Cカッパを含む1本の軽鎖。S354C/T366W変異を含むFcノブ重鎖と、Y349C/T366S/L368A/Y407V変異を含むFcホール重鎖と、抗HER2軽鎖とを組み合わせることにより、2つの4-1BB結合リポカリンを含むヘテロ二量体の生成が可能になった。二重特異性一価の2+1抗HER2、抗4-1BB huIgG1 PGLALAに関するアミノ酸配列を表5に見出すことができる。
表4:成熟二重特異性二価2+2抗HER2、抗4-1BBリポカリンhuIgG1 PGLALA抗原結合分子のアミノ酸配列
表5:成熟二重特異性一価1+2抗HER2、抗4-1BBリポカリンhuIgG1 PGLALA抗原結合分子のアミノ酸配列
実施例1に記載のとおり二重特異性抗体を作製及び精製した。
表6は、二重特異性HER2標的化4-1BB結合抗原結合分子の収率及び最終モノマー含有量を要約する。
表6:二重特異性4-1BB結合抗原結合分子の生化学的分析
比較のため、配列番号73及び配列番号74のアミノ酸配列を含む以前に記載された融合ポリペプチド2+2 HER2(TRAS)-アンチカリン-4-1BBヒトIgG4 SPも作製した(国際公開第2016/177802号)。
2.2 表面プラズモン共鳴による、4-1BBへの二価結合及びHER2への一価又は二価結合を有する二重特異性抗体及び三重特異性抗体の機能的特性評価
ヒト4-1BB Fc(kih)及びヒトHER2に同時に結合する能力を、表面プラズモン共鳴(SPR)により評定した。全てのSPR実験は、ランニング緩衝液としてHBS-EP(0.01M HEPES pH7.4,0.15M NaCl,3mM EDTA,0.005%界面活性剤P20,Biacore、フライブルク/ドイツ)を用いて、Biacore T200で25℃にて実施した。ビオチン化ヒト4-1BB Fc(kih)をストレプトアビジン(SA)センサーチップのフローセルに直接結合させた。500共鳴単位(RU)までの固定化レベルを使用した。
二重特異性HER2標的化抗4-1BBリポカリンを200nMの濃度範囲で、30μL/分のフローで90秒間にわたってフローセルを通過させ、解離を0秒に設定した。ヒトFAPを、500nMの濃度で90秒間にわたってフローセルに30μL/分の流量で第2の分析物として注入した(図3A)。解離を120秒間監視した。タンパク質が不動化しなかった参照フローセルで入手した応答を差し引くことで、バルク屈折率の差を補正した。
図3Bのグラフに見られるように、両方の二重特異性HER2標的抗4-1BBリポカリンは、ヒト4-1BB及びヒトHER2に同時に結合することができた。
実施例3
FAP標的化4-1BBリポカリン抗原結合分子の機能的特性評価
3.1ヒトFAP発現細胞株への結合
細胞表面に発現したヒト線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)ため、NIH/3T3-huFAPクローン19細胞を使用した。マウス胚線維芽細胞NIH/3T3細胞(ATCC CRL-1658)に、CMVプロモーターの元でヒトFAPをコードする発現pETR4921プラスミドをトランスフェクションすることにより、NIH/3T3-huFAPクローン19を生成した。ウシ胎児血清(FBS、Life Technologies製のGIBCO、カタログ番号16000-044、ロット941273、γ線照射マイコプラズマ非含有、熱不活化)、2mMのL-アラニル-L-グルタミンジペプチド(Glutqa-MAX-I、Life Technologies製のGIBCO、カタログ番号35050-038)、及び1.5μg/mLのピューロマイシン(InvivoGen、カタログ番号:ant-pr-5)を補充したDMEM(Life Technologies製のGIBCO、カタログ番号:42340-025)中で細胞を維持した。結合アッセイのために、2×105のNIH/3T3-huFAPクローン19細胞を、丸底懸濁細胞96ウェルプレート(Greiner bio-one,cellstar,カタログ番号650185)の各ウェルに添加した。細胞を200μLのDPBSで1回洗浄し、ペレットを、1:5000希釈のFixable Viability Dye eFluor 450(eBioscience,カタログ番号65 0863 18)を含有する、100μL/ウェル4℃の冷却DPBS緩衝液で再懸濁した。プレートを30分間4℃でインキュベートし、200μLの、4℃に冷却したDPBS緩衝液で1回洗浄した。その後、細胞を、異なる滴定濃度(8段階の希釈段階での1:6希釈における開始濃度300nM)の二重特異性二価2+2抗FAP、抗4-1BBリポカリンhuIgG1 PGLALA抗原結合分子(2+2と称する)若しくは二重特異性一価1+2抗FAP、抗4-1BBリポカリンhuIgG1 PGLALA抗原結合分子(1+2と称する)、又は対照分子を含有する50μL/ウェルの4℃冷FACS緩衝液に再懸濁し、続いて暗所で4°Cで1時間インキュベートした。200μLのDPBS/ウェルで4回洗浄した後、2.5μg/mLの、PE抱合体化AffiniPure抗ヒトIgG Fc断片特異性ヤギF(ab’)2断片(Jackson ImmunoResearch,カタログ番号109-116-098)を含有する、50μL/ウェルの、4℃に冷却したFACS緩衝液で、30分間4℃で細胞を染色した。細胞を、200μLの、4℃のDPBS緩衝液で2回洗浄した後、固定のために、1%ホルムアルデヒドを含有する50μL/ウェルのDPBSに再懸濁した。同日、又は翌日に、細胞を100μLのFACS緩衝液に再懸濁し、MACSQuant Analyzer 10(Miltenyi Biotec)又はCanto ll(BD)を使用して入手した。データを、FlowJo 10.4.2(FlowJo LLC)、Microsoft Office Excel Professional 2010(Microsoft Software Inc.)及びGraphPad Prism(GraphPad Software Inc.)を使用して分析した。
図4に示されるように、二重特異性二価の2+2抗FAP、抗4-1BB huIgG1 PGLALA(FAP(4B9)×4-1BBリポカリンhuIgG1 PG LALA 2+2と称する)は、両方の分子がFAPに対して二価に結合することから、同様の親和性で、またFAP(4B9)huIgG1 PG LALAと同様に結合する。したがって、4-1BB結合リポカリンのC末端融合は、FAPへの結合に影響しない。二重特異性二価の2+2抗FAP、抗4-1BB huIgG4 SP分子(FAP(4B9)×4-1BBリポカリンhuIgG4 SP 2+2)は、他のFAP二価結合分子よりも低いgMFIを示す。これは、Fc断片の異なるアイソタイプによって説明することができる。本発明者らはポリクローナル抗ヒトFc断片特異的ヤギIgG F(ab’)2断片を使用しているため、Fc部分のエピトープは異なり、結合していない第2の検出断片及びより低いgMFIをもたらす可能性がある。二重特異性一価の1+2抗FAP、抗4-1BB huIgG1 PG LALA分子(FAP(4B9)×4-1BBリポカリンhuIgG1 PG LALA 1+2、黒三角及び線)は、二重特異性二価の2+2抗FAP、抗4-1BB huIgG1 PGLALA(FAP(4B9)×4-1BBリポカリンhuIgG1 PG LALA 2+2と称する)よりも高いgMFIを示す。これは、FAPに対するその一価結合によって説明することができ、1つの分子が2つではなく1つのFAP-モノマーを占有しているだけであるので、細胞表面におけるより高い占有をもたらす。FAP(4B9)は非常に高い親和性を示すことから、この結合アッセイでは結合活性の喪失(例えば、EC
50値の増加)を検出することができない。個々の結合曲線のEC
50値及び曲線下面積(AUC)をそれぞれ表7及び表8に列挙する。
表7:図4に示されるようなFAP発現細胞株NIH/3T3-huFAPクローン19に対する結合曲線のEC
50値
表8:図4に示されるFAP発現細胞株NIH/3T3-huFAPクローン19に対する結合曲線の曲線下面積(AUC)値
3.2 ヒト4-1BBを発現するレポーター細胞株Jurkat-hu4-1BB-NFκB-luc2への結合
細胞表面に発現するヒト4-1BB(CD137)への結合には、Jurkat-hu4-1BB-NFκB-luc2レポーター細胞株(Promega,Germany)を使用した。10%(体積/体積)のウシ胎児血清(FBS、Life Technologies製のGIBCO、カタログ番号16000-044、ロット941273、γ線照射マイコプラズマ非含有、熱不活化)、2mMのL-アラニル-L-グルタミンジペプチド(Glutqa-MAX-I、Life Technologies製のGIBCO、カタログ番号35050-038)、1mMのピルビン酸ナトリウム(SIGMA-Aldrich、カタログ番号S8636)、1%(体積/体積)のMEM非必須アミノ酸溶液100x(SIGMA-Aldrich、カタログ番号M7145)、600μg/mLのG-418(Roche、カタログ番号04727894001)、400μg/mLのハイグロマイシンB(Roche、カタログ番号:10843555001)、及び25mMのHEPES(Sigma Life Sience、カタログ番号:H0887-100mL)を補充したRPMI1640培地(Life Technologies製のGIBCO、カタログ番号42401-042)中で細胞を、懸濁細胞として維持した。結合アッセイのために、2×105のJurkat-hu4-1BB-NFkB-luc2を、丸底懸濁細胞96ウェルプレート(Greiner bio-one,cellstar,カタログ番号650185)の各ウェルに添加した。細胞を200μLのDPBSで1回洗浄し、ペレットを、1:5000希釈のFixable Viability Dye eFluor 450(eBioscience,カタログ番号65 0863 18)を含有する、100μL/ウェル4℃の冷却DPBS緩衝液で再懸濁した。プレートを30分間4℃でインキュベートし、200μLの、4℃に冷却したDPBS緩衝液で1回洗浄した。その後、細胞を、異なる滴定濃度(8段階の希釈段階での1:6希釈における開始濃度300nM)の二重特異性二価2+2抗FAP、抗4-1BB huIgG1 PGLALA(2+2と称する)若しくは二重特異性一価1+2抗FAP、抗4-1BB huIgG1 PGLALA(1+2と称する)、又は対照分子を含有する50μL/ウェルの4℃冷FACS緩衝液に再懸濁し、続いて暗所で4°Cで1時間インキュベートした。200μLのDPBS/ウェルで4回洗浄した後、2.5μg/mLの、PE抱合体化AffiniPure抗ヒトIgG Fc断片特異性ヤギF(ab’)2断片(Jackson ImmunoResearch,カタログ番号109-116-098)を含有する、50μL/ウェルの、4℃に冷却したFACS緩衝液で、30分間4℃で細胞を染色した。細胞を、200μLの、4℃のFACS緩衝液で2回洗浄した後、固定のために、1%ホルムアルデヒドを含有する50μL/ウェルのDPBSに再懸濁した。同日、又は翌日に、細胞を100μLのFACS緩衝液に再懸濁し、MACSQuant Analyzer 10(Miltenyi Biotec)又はCantoll(BD)を使用して入手した。データを、FlowJo 10.4.2(FlowJo LLC)、Microsoft Office Excel Professional 2010(Microsoft Software Inc.)及びGraphPad Prism(GraphPad Software Inc.)を使用して分析した。
図5に示されているように、全ての抗4-1BBリポカリン二重特異性分子は、ヒト4-1BB発現トランスジェニックヒトT細胞リンパ腫細胞株Jurkat-hu4-1BB-NFkB-luc2に対して同様の親和性で結合する。ヒト4-1BBへの結合中のFAP発現細胞への結合(図4)とは異なり、Fc-huIgG1 PG LALA又はFc-huIgG4 SPを含有する分子間の結合(gMFI)に差は見られなかった。これは、FAPと比較して4-1BBの発現レベルが低く、したがってgMFI値がはるかに低いことに関連している可能性があり、例えば、このアッセイは差を検出するのに十分な感度を有していない。結合曲線のEC
50の値及びAUCを、表9及び表10に列挙する。
表9:図5に示す細胞発現ヒト4-1BBへの結合曲線のEC
50値の概要
表10:図5に示されるような、細胞発現ヒト4-1BBに対する結合曲線の曲線下面積(AUC)値のまとめ
3.3レポーター細胞株Jurkat-hu4-1BB-NFκB-luc2を発現するヒト4-1BB及びNFκB-ルシフェラーゼレポーター遺伝子におけるNF-κB活性化
4-1BB(CD137)受容体のそのリガンド(4-1BBL)へのアゴニスト結合は、核因子カッパB(NFkB)の活性化を介して4-1BB下流シグナル伝達を誘導し、CD8 T細胞の生存及び活性を促進する(Lee HW,Park SJ,Choi BK,Kim HH,Nam KO,Kwon BS.4-1BB promotes the survival of CD8(+)T lymphocytes by increasing expression of Bcl-x(L)and Bfl-1.J Immunol 2002;169:4882-4888)。二重特異性二価の2+2抗FAP、抗4-1BB huIgG1 PGLALA分子(2+2と称する)又は二重特異性一価の1+2抗FAP、抗4-1BB huIgG1 PGLALA分子(1+2と称する)によって媒介されるこのNFκB活性化をモニターするために、Jurkat-hu4-1BB-NFκB-luc2レポーター細胞株をPromega(ドイツ)から購入した。細胞を上記のとおりに培養した(ヒト4-1BBを発現するレポーター細胞株Jurkat-hu4-1BB-NFkB-luc2への結合)。アッセイのために、細胞を回収し、10%(体積/体積)FBS及び1%(体積/体積)GlutaMAX-Iを補充したアッセイ培地である、RPMI1640培地に再懸濁した。2×103のJurkat-hu4-1BB-NFκB-luc2レポーター細胞を含有する10μlを、蓋付きの滅菌白色384ウェル平底組織培養プレート(Corning,カタログ番号:3826)の各ウェルに移した。滴定された濃度の二重特異性二価の2+2抗FAP、抗4-1BB huIgG1 PGLALA(2+2と称する)、又は二重特異性一価の1+2抗FAP、抗4-1BB huIgG1 PGLALA(1+2と称する)、又は対照分子を含有する10μLのアッセイ培地を加えた。最後に、10μLの、アッセイ培地のみ、又は1×104の細胞FAP発現細胞、ヒト黒色腫細胞株WM-266-4(ATCC CRL-1676)、若しくはNIH/3T3-huFAPクローン19(前述の通り)を含有する培地を供給し、プレートを6時間、37℃及び5% CO2で、細胞インキュベータ内でインキュベートした。6μLも、新たに解凍したOne-Gloルシフェラーゼアッセイ検出溶液(Promega,カタログ番号:E6110)を各ウェルに添加し、Tecanマイクロプレートリーダー(500msの積分時間、全波長にてフィルタ収集なし)を用いて速やかに、ルミネセンス発光を測定した。データを、Microsoft Office Excel Professional 2010(Microsoft Software Inc.)及びGraphPad Prism(GraphPad Software Inc.)を使用して分析した。
図6Aに示すように、FAP発現細胞の不存在下においては、いずれの分子も、Jurkat-hu4-1BB-NFκB-luc2レポーター細胞株内で強力なヒト4-1BB受容体の活性化を誘発することはできず、NFκBの活性化、及びそれ故、ルシフェラーゼ発現をもたらした。WM-266-4(図6B、ヒト黒色腫細胞株、中間体FAP発現)又はNIH/3T3-huFAPクローン19(図6 C、ヒト-FAPトランスジェニックマウス線維芽細胞株)のようなFAP発現細胞の存在下では、二重特異性二価2+2抗FAP、抗4-1BB huIgG1 PGLALA抗原結合分子(FAP(4B9)×4-1BBリポカリンhuIgG1 PG LALA 2+2と称する、白抜き、下向き黒三角及び点線)、又は二重特異性一価1+2抗FAP、抗4-1BB huIgG1 PGLALA抗原結合分子(FAP(4B9)×4-1BBリポカリンhuIgG1 PG LALA 1+2と称する、黒三角及び線)、又は二重特異性の対照分子二重特異性二価2+2抗FAP、抗4-1BB huIgG 4 PGLALA抗原結合分子(FAP(4B9)×4-1BBリポカリンhuIgG4 SP 2+2と称する、半分黒の六角形及び点線)の架橋は、Jurkat-hu4-1BB-NFκB-luc2レポーター細胞株におけるNFκB活性化ルシフェラーゼ活性の強い増加をもたらす。二重特異性一価1+2抗FAP、抗4-1BB huIgG1 PGLALA抗原結合分子(FAP(4B9)×4-1BBリポカリンhuIgG1 PG LALA 1+2と称する、黒三角及び直線)は、活性化曲線の曲線下面積(AUC)が最も高く、最も良好に機能した。エフェクター細胞標的結合に対する腫瘍標的結合側の1:2のより低い比、例えば、FAP結合部分対4-1BB結合部分の1:2の比は、より高密度の占有をもたらし、したがって、エフェクター細胞上の4-1BBアゴニストの高密度の架橋をもたらし、最終的にはより強い4-1BB受容体下流シグナル伝達をもたらすようである。活性化曲線のEC
50値及び曲線下面積(AUC)を、表11及び表12に列挙する。
表11:図6B及び6Cに示される活性化曲線のEC
50値
表12:図6B及び図6Cに示す活性化曲線の曲線下面積(AUC)値の概要
実施例4
HER2標的化4-1BBリポカリン抗原結合分子の機能的特性評価
4.1 ヒトHER2発現細胞株への結合
細胞表面発現HER2ヒト胃癌株NCI-N87(ATCC CRL-5822)及びヒト乳腺癌細胞株KPL4(Kawasaki Medical School)への結合に、これらを使用した。NCI-N87細胞を、10%(体積/体積)FBS(Life Technologies製のGIBCO、カタログ番号16000-044、ロット941273、ガンマ照射マイコプラズマ不含、熱失活35分56℃)及び2mM L-アラニル-L-グルタミン(GlutaMAX-I、GIBCO、Invitrogen、カタログ番号35050-038)を添加したRPMI 1640培地(Life Technologies製のGIBCO、カタログ番号42401-042)中で接着細胞として培養した。KPL4細胞を、接着細胞として、10%(体積/体積)FBS及び2mM L-アラニル-L-グルタミンを供給したDMEM培地(life technologies製のGIBCO、カタログ番号42430082)中で培養した。結合アッセイのために、2×105のNCI-N87及びKPL4を、丸底懸濁細胞96ウェルプレート(Greiner bio-one,cellstar,カタログ番号650185)の各ウェルに添加した。細胞を200μLのDPBSで1回洗浄し、ペレットを、1:5000希釈のFixable Viability Dye eFluor 450(eBioscience,カタログ番号65 0863 18)を含有する、100μL/ウェル4℃の冷却DPBS緩衝液で再懸濁した。プレートを30分間4℃でインキュベートし、200μLの、4℃に冷却したDPBS緩衝液で1回洗浄した。その後、細胞を、異なる滴定濃度(8段階の希釈段階での1:6希釈における開始濃度300nM)の二重特異性二価2+2抗HER2、抗4-1BB huIgG1 PGLALA抗原結合分子(2+2と称する)若しくは二重特異性一価1+2抗HER2、抗4-1BB huIgG1 PGLALA抗原結合分子(1+2と称する)、又は対照分子を含有する50μL/ウェルの4℃冷FACS緩衝液に再懸濁し、続いて暗所で4°Cで1時間インキュベートした。200μLのDPBS/ウェルで4回洗浄した後、2.5μg/mLの、PE抱合体化AffiniPure抗ヒトIgG Fc断片特異性ヤギF(ab’)2断片(Jackson ImmunoResearch,カタログ番号109-116-098)を含有する、50μL/ウェルの、4℃に冷却したFACS緩衝液で、30分間4℃で細胞を染色した。細胞を、200μLの、4℃のDPBS緩衝液で2回洗浄した後、固定のために、1%ホルムアルデヒドを含有する50μL/ウェルのDPBSに再懸濁した。同日、又は翌日に、細胞を100μLのFACS緩衝液に再懸濁し、MACSQuant Analyzer 10(Miltenyi Biotec)又はCantoll(BD)を使用して入手した。データを、FlowJo 10.4.2(FlowJo LLC)、Microsoft Office Excel Professional 2010(Microsoft Software Inc.)及びGraphPad Prism(GraphPad Software Inc.)を使用して分析した。
図7A及び7Bに示されるように、二重特異性二価の2+2抗HER2、抗4-1BB huIgG1 PGLALA抗原結合分子(HER2(TRAS)×4-1BBリポカリンhuIgG1 PG LALA 2+2と称する)は、両方の分子がHER2に対して二価に結合することから、同様の親和性で、またHER2(TRAS)huIgG1 PG LALAと同様に結合する。したがって、4-1BB結合リポカリンのC末端融合は、HER2への結合に影響しない。二重特異性二価の2+2抗HER2、抗4-1BB huIgG4 SP分子(HER2(TRAS)×4-1BBリポカリンhuIgG4 SP 2+2)は、他のHER2二価結合分子よりも低いMFIを示す。これは、Fc断片の異なるアイソタイプによって説明することができる。本発明者らはポリクローナル抗ヒトFc断片特異的ヤギIgG F(ab’)2断片を使用しているので、Fc部分のエピトープは異なり、結合していない第2の検出断片及びより低いgMFIをもたらし得る。二重特異性一価の1+2抗HER2、抗4-1BB huIgG1 PG LALA分子(HER2(TRAS)×4-1BBリポカリンhuIgG1 PG LALA 1+2、黒三角及び線)は、二重特異性二価の2+2抗HER2、抗4-1BB huIgG1 PGLALA抗原結合分子(HER2(TRAS)×4-1BBリポカリンhuIgG1 PG LALA 2+2と称する)よりも高いgMFIを示す。これは、HER2に対するその一価結合によって説明することができ、1つの分子が2つではなく1つのHER2を占有しているだけであるので、細胞表面におけるより高い占有をもたらす。個々の結合曲線のEC
50値及び曲線下面積(AUC)をそれぞれ表13及び表14に列挙する。
表13:図7A及び7Bに示されるようなHER2発現細胞株NCI-N87及びKPL4に対する結合曲線のEC
50値
表14:図7A及び7Bに示されるHER2発現発現細胞株NCI-N87及びKPL4に対する結合曲線の曲線下面積(AUC)値
4.2 ヒト4-1BBを発現するレポーター細胞株Jurkat-hu4-1BB-NFκB-luc2への結合
細胞表面に発現するヒト4-1BB(CD137)への結合には、Jurkat-hu4-1BB-NFκB-luc2レポーター細胞株(Promega,Germany)を使用した。10%(体積/体積)のウシ胎児血清(FBS、Life Technologies製のGIBCO、カタログ番号16000-044、ロット941273、γ線照射マイコプラズマ非含有、熱不活化)、2mMのL-アラニル-L-グルタミンジペプチド(GlutaMAX-I、Life Technologies製のGIBCO、カタログ番号35050-038)、1mMのピルビン酸ナトリウム(SIGMA-Aldrich、カタログ番号S8636)、1%(体積/体積)のMEM非必須アミノ酸溶液100x(SIGMA-Aldrich、カタログ番号M7145)、600μg/mLのG-418(Roche、カタログ番号04727894001)、400μg/mLのハイグロマイシンB(Roche、カタログ番号:10843555001)、及び25mMのHEPES(Sigma Life Sience、カタログ番号:H0887-100mL)を補充したRPMI1640培地(Life Technologies製のGIBCO、カタログ番号42401-042)中で細胞を、懸濁細胞として維持した。結合アッセイのために、2×105のJurkat-hu4-1BB-NFkB-luc2を、丸底懸濁細胞96ウェルプレート(Greiner bio-one,cellstar,カタログ番号650185)の各ウェルに添加した。細胞を200μLのDPBSで1回洗浄し、ペレットを、1:5000希釈のFixable Viability Dye eFluor 450(eBioscience,カタログ番号65 0863 18)を含有する、100μL/ウェル4℃の冷却DPBS緩衝液で再懸濁した。プレートを30分間4℃でインキュベートし、200μLの、4℃に冷却したDPBS緩衝液で1回洗浄した。その後、細胞を、異なる滴定濃度(8段階の希釈段階での1:6希釈における開始濃度300nM)の二重特異性二価2+2抗HER2、抗4-1BB huIgG1 PGLALA抗原結合分子(2+2と称する)若しくは二重特異性一価1+2抗HER2、抗4-1BB huIgG1 PGLALA抗原結合分子(1+2と称する)、又は対照分子を含有する50μL/ウェルの4℃冷FACS緩衝液に再懸濁し、続いて暗所で4°Cで1時間インキュベートした。200μLのDPBS/ウェルで4回洗浄した後、2.5μg/mLの、PE抱合体化AffiniPure抗ヒトIgG Fc断片特異性ヤギF(ab’)2断片(Jackson ImmunoResearch,カタログ番号109-116-098)を含有する、50μL/ウェルの、4℃に冷却したFACS緩衝液で、30分間4℃で細胞を染色した。細胞を、200μLの、4℃のFACS緩衝液で2回洗浄した後、固定のために、1%ホルムアルデヒドを含有する50μL/ウェルのDPBSに再懸濁した。同日、又は翌日に、細胞を100μLのFACS緩衝液に再懸濁し、MACSQuant Analyzer 10(Miltenyi Biotec)又はCantoll(BD)を使用して入手した。データを、FlowJo 10.4.2(FlowJo LLC)、Microsoft Office Excel Professional 2010(Microsoft Software Inc.)及びGraphPad Prism(GraphPad Software Inc.)を使用して分析した。
図8に示されているように、全ての抗4-1BBリポカリン二重特異性分子は、ヒト4-1BB発現トランスジェニックヒトT細胞リンパ腫細胞株Jurkat-hu4-1BB-NFkB-luc2に対して同様の親和性で結合する。ヒト4-1BBへの結合中のHER2発現細胞への結合(図7A及び7B)とは異なり、Fc-huIgG1 PG LALA又はFc-huIgG4 SPを含有する分子間の結合(gMFI)に差は見られなかった。これは、HER2と比較して4-1BBの発現レベルが低く、したがってgMFI値がはるかに低いことに関連している可能性があり、例えば、このアッセイは差を検出するのに十分な感度を有していない。結合曲線のEC
50の値及びAUCを、表15及び表16に列挙する。
表15:図8に示す細胞発現ヒト4-1BBへの結合曲線のEC
50値のまとめ
表16:図8に示されるようなHER2発現細胞株NCI-N87及びKPL4に対する結合曲線の曲線下面積(AUC)値
4.3レポーター細胞株Jurkat-hu4-1BB-NFκB-luc2を発現するヒト4-1BB及びNFκB-ルシフェラーゼレポーター遺伝子におけるNF-κB活性化
4-1BB(CD137)受容体のそのリガンド(4-1BBL)へのアゴニスト結合は、核因子カッパB(NFkB)の活性化を介して4-1BB下流シグナル伝達を誘導し、CD8 T細胞の生存及び活性を促進する(Lee HW,Park SJ,Choi BK,Kim HH,Nam KO,Kwon BS.4-1BB promotes the survival of CD8(+)T lymphocytes by increasing expression of Bcl-x(L)and Bfl-1.J Immunol 2002;169:4882-4888)。二重特異性二価の2+2抗HER2、抗4-1BB huIgG1 PGLALA抗原結合分子(2+2と称する)又は二重特異性一価の1+2抗HER2、抗4-1BB huIgG1 PGLALA抗原結合分子(1+2と称する)によって媒介されるこのNFκB活性化をモニターするために、Jurkat-hu4-1BB-NFκB-luc2レポーター細胞株をPromega(ドイツ)から購入した。細胞を上記のとおりに培養した(ヒト4-1BBを発現するレポーター細胞株Jurkat-hu4-1BB-NFkB-luc2への結合)。アッセイのために、細胞を回収し、10%(体積/体積)FBS及び1%(体積/体積)GlutaMAX-Iを補充したアッセイ培地である、RPMI1640培地に再懸濁した。2×103のJurkat-hu4-1BB-NFκB-luc2レポーター細胞を含有する10μlを、蓋付きの滅菌白色384ウェル平底組織培養プレート(Corning,カタログ番号:3826)の各ウェルに移した。滴定された濃度の二重特異性二価の2+2抗HER2、抗4-1BB huIgG1 PGLALA抗原結合分子(2+2と称する)又は二重特異性一価の1+2抗HER2、抗4-1BB huIgG1 PGLALA抗原結合分子(1+2と称する)又は対照分子を含有する10μLのアッセイ培地を添加した。最後に、単独で、又は1×104個の細胞HER2発現細胞KPL4、NCI-N87(上記のように)若しくはSK-Br3(ヒト乳腺癌、ATCC HTB-30)を含有する10μLのアッセイ培地を供給し、プレートを細胞インキュベータにおいて37℃及び5%CO2で6時間インキュベートした。6μLも、新たに解凍したOne-Gloルシフェラーゼアッセイ検出溶液(Promega,カタログ番号:E6110)を各ウェルに添加し、Tecanマイクロプレートリーダー(500msの積分時間、全波長にてフィルタ収集なし)を用いて速やかに、ルミネセンス発光を測定した。
図9A~9Dに示すように、HER2発現細胞の不存在下においては(図9A)、いずれの分子も、Jurkat-hu4-1BB-NFkB-luc2レポーター細胞株内で強力なヒト4-1BB受容体の活性化を誘発することはできず、NFkBの活性化、及びそれ故、ルシフェラーゼ発現をもたらした。SK-Br3(図9B)、KPL4(図9C)及びNCI-N87(図9D)のようなHER2発現細胞の存在下での二重特異性一価の2+1抗HER2、抗4-1BB huIgG1 PGLALA抗原結合分子(HER2(TRAS)×4-1BBリポカリンhuIgG1 PG LALA 2+1と称する、黒三角及び直線)の架橋は、それらの高さ及び/又はEC
50値が架橋細胞のHER2発現の強度と相関する良好な活性化曲線を示す。二重特異性二価の2+2抗HER2、抗4-1BB huIgG1 PGLALA抗原結合分子(HER2(TRAS)×4-1BBリポカリンhuIgG1 PG LALA 2+2と称する、黒三角及び直線)及びその制御分子HER2(TRAS)×4-1BBリポカリンhuIgG4 SP(半分黒の六角形及び点線)は、両方ともHER2に二価に結合し、類似の活性化曲線を誘導し、それにより、両方の分子の活性化は、HER2(TRAS)×4-1BBリポカリンhuIgG1 PG LALA 2+1(黒三角及び直線)の活性化曲線をはるかに下回る。二重特異性一価1+2抗HER2、抗4-1BB huIgG1 PGLALA(HER2(TRAS)×4-1BBリポカリンhuIgG1 PG LALA 1+2と称する、黒三角及び直線)は、活性化曲線の曲線下面積(AUC)が最も高く、最も良好に機能した。本発明者らは、エフェクター細胞標的結合に対する腫瘍標的結合側の1:2のより低い比、例えば4-1BB結合部分に対するHER2結合部分の1:2の比が、腫瘍細胞上のより高い占有密度、したがってエフェクター細胞上の4-1BBアゴニストの高密度の架橋をもたらし、最終的にはより強い4-1BB受容体下流シグナル伝達をもたらすと考えている。活性化曲線のEC
50値及び曲線下面積(AUC)を、表17及び表18に列挙する。
表17:図9B、9C及び9Dに示される活性化曲線のEC
50値のまとめ
表18:図9B、図9C及び図9Dに示される活性化曲線の曲線下面積(AUC)値