以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態の移植機の一例として苗を移植する移植機10を示す左側面図であり、図2は平面図である。
なお、以下の説明では、操縦ハンドル13を配置した側を後とし、その反対側、即ちエンジン12を配置した側を前とする。そして、機体前側に向かって右手側を右とし、左手側を左とする。
本件の移植機10は、図1、図2に示すとおり、機体を前進走行可能とする走行車体11と、走行車体11の後部に設ける歩行操縦用の操縦ハンドル13と、圃場に苗を植え付ける植付装置14と、植付装置14に苗を供給する苗供給装置15を備える。
走行車体11は、機体前部にミッションケース16を設け、ミッションケース16の前側に駆動装置であるエンジン12を設ける。前記ミッションケース16の左右両側には、後輪となる走行輪17に駆動力を伝動する走行伝動ケース18を各々上下回動可能に装着する。
なお、図1及び図2に示すとおり、左右の走行輪17は、走行伝動ケース18の機体後側で外側に向けて伝動車軸17aを突出させて装着しているが、この伝動車軸17aは組み換え作業により、機体内側に向けて突出させることも可能であり、走行車体11と走行伝動ケース18の左右間に走行輪17が配置される構成とすることも可能である。
走行輪17の配置変更は、移植する作物の種類、植付作業を行う圃場の土質、あるいは作業地域の慣行により畝幅が異なる際に行う。これにより、移植機10を畝の左右に形成される畝溝を安定して走行でき、苗を畝の左右中央に揃えて植え付けることが可能になる。
なお、作物の種類によっては、畝高さが低い、あるいは畝を作らない、所謂平畝に植え付けるものもある。平畝に苗を植え付けるとき、移植機10が苗の植付位置付近を踏みながら走行すると土が固められると共に、移植機10の重量により窪みができて水が溜まりやすくなり、苗の根部の定着が阻害されると共に、溜まった水を過剰に吸水してしまうことで、生育不良が生じるおそれがある。
したがって、平畝での作業時においても、苗の植付位置に対して左右の走行輪17の左右間隔を適切に確保することで、植付後の苗の生育が安定する。
左右の走行伝動ケース18は、後述する昇降シリンダ62やローリングシリンダ63の伸縮により回動し、これにより走行輪17の接地面から走行車体11までの高さが変動し、車高が調節される。
この車高調節は、畝の高さに合わせて植付深さを設定するときだけでなく、旋回走行前に作業者が操縦ハンドル13を押し下げて機体前側を持ち上げやすくするときや、苗を植え付けない移動時に植付装置14等が地面に接触することを防止する際にも行われる。
そして、図1及び図2に示すとおり、前記ミッションケース16から伝動されて植付装置14及び苗供給装置15に駆動力を分岐供給する伝動ケース19を走行車体11の後部に設ける。具体的には、該伝動ケース19の左右一側に植付装置14を設け、機体上側に苗供給装置15を設ける。
さらに、図2に示すとおり、前記伝動ケース19の左右他側には、操縦ハンドル13と走行車体11を連結するハンドルフレーム20の機体前側端部を連結する。該ハンドルフレーム20は平面視でL字形状に見える捻じり加工をしており、機体後側端部を操縦ハンドル13の機体前側に位置するハンドルシャフト13aの左右中央部付近に連結する。なお、操縦ハンドル13は、機体左右方向の該ハンドルシャフト13aと、ハンドルシャフト13aの左右両側に各々設けられて機体後側に突出するハンドルアーム13bで構成する。
そして、前記ハンドルシャフト13aの機体後側で、且つ左右のハンドルアーム13bの基部側寄りの左右間には、昇降シリンダ62を伸縮させて車高を調節する車高調節レバー21、ミッションケース16に内装する主クラッチを入切して左右の走行伝動ケース18及び伝動ケース19への伝動を入切する主クラッチレバー22、及び走行車体11の走行伝動を移動速、植付作業速、走行中立及び後進のいずれかに切り替える主変速レバー23を備える、操縦パネル24を設ける。
また、前記左右のハンドルアーム13bには、左右の走行伝動ケース18に内装され、走行輪17への駆動の入切を切り替えるサイドクラッチを操作するサイドクラッチレバー28を各々装着する。該サイドクラッチレバー28は、作業者が旋回操作や移動操作をする際に操縦ハンドル13の左右のハンドルアーム13bを把持する際、握りやすい位置に配置するものとする。
これにより、苗の植付作業を行わない旋回走行や移動走行の際、作業者は機体後側の操縦ハンドル13及び操縦パネル24を操作しやすい位置に立って作業することになり、状況に合わせた操作を適切に行いやすく、作業能率が向上する。
また、走行車体11に作業者が搭乗する苗の植付作業時には、作業者と操縦ハンドル13及び操縦パネル24が離間し合うので、作業者の身体が触れて各操縦部材が動くことが防止され、苗の植付姿勢の乱れや、苗が植え付けられない欠株の発生、あるいは走行の停止による作業能率の低下等が防止される。
なお、搭乗時に進行方向のズレを修正する必要や、作業の中断等主クラッチの入切操作が必要になることがあるので、走行車体11のうち、例えば苗供給装置15の下方にサイドクラッチ操作ペダルを左右各々設けると共に、別の主クラッチ操作用のレバーを配置しておくとよい。
そして、走行車体11の機体前側の左右両側には、前輪でもある、地面との接地抵抗により回転する接地転輪25を各々設ける。該接地転輪25は、機体左右方向に位置を変更可能とし、走行輪17と共に畝の幅、あるいは植付条の幅に合わせて適切な位置に調節するものとする。
次に、伝動ケース19の左右一側に設ける植付装置14について、具体的に説明する。
前記伝動ケース19の左右一側には、走行車体11の車速、ならびに設定した苗の前後方向の植付間隔、所謂株間に合わせて上下回動する上側リンクアーム141と、該上側リンクアーム141に連動して上下回動する、側面視で円弧形状の下側リンクアーム142を、回動軸を介して装着する。該下側リンクアーム142の円弧は機体後側下方に向かって突出するものとし、これにより後述する植付ホッパ145が昇降される際、前後方向に揺動される構成となる。
前記上側リンクアーム141と下側リンクアーム142の後側端部はリンクステー143の上下方向に各々装着し、該リンクステー143の機体後側に機体左右一側から機体左右他側に向かうホッパ支持アームを装着し、該ホッパ支持アームの後部で且つ機体内側端部に植付ホッパ145を装着する。該植付ホッパ145は左右一対のホッパ構成体を各々回動可能に設けて構成するものであり、前記上側リンクアーム141と下側リンクアーム142の上下回動に合わせて回動して開閉する構成とする。
なお、該植付ホッパ145の取付位置は、走行車体11の機体左右方向、より具体的には、左右の走行輪17及び接地転輪25の左右方向の中間位置とし、畝または苗の植付位置に合わせて適切に左右の走行輪17及び接地転輪25の左右幅が調節されると、苗の植付位置が左右の中央位置付近に自動的に合わせられる構成とする。
上記により、苗の植付位置が畝や植付条の左右中央位置から大幅にズレることを防止できるので、根部が露出して生育不良が生じることや、植え付けられた苗が風等の影響で倒れることが防止される。
また、伝動ケース19の左右一側に植付ホッパ145を昇降させる上側リンクアーム141と下側リンクアーム142を設け、左右他側にハンドルフレーム20の機体前側端部を連結したことにより、伝動ケース19を支持部材として有効に活用できる。
なお、伝動ケース19は植付装置14や苗供給装置15、操縦ハンドル13を支持するものであるので、外装部分は特に強度を高く設計しており、複数の重量物の加重や駆動負荷を受けても、破損や作動不良が生じにくい。
さらに、苗の植付位置が機体の左右中央に配置されていることにより、機体の左右方向の重量バランスが安定し、進行方向のズレや左右傾斜が生じにくくなり、苗の植付精度の安定化が図られる。
次に、苗供給装置15について説明する。
図1及び図2に示すとおり、伝動ケース19から上方に突出する供給伝動軸151の上端部を供給伝動ケース152に装着し、該供給伝動ケース152から伝動される駆動力により、作業者が苗を投入する苗搬送ポット154…を複数連結して無端状としたチェーンポット153を周回駆動可能に配置する。なお、該チェーンポット153は機体左右方向に長い楕円形状とし、同一形状の供給フレーム155により供給伝動ケース152及びチェーンポット153を支持するものとする。
前記苗搬送ポット154は、底蓋154aを回動可能に構成し、この底蓋154aはトルク・スプリング等の付勢力により開く方向に付勢する。そして、該供給フレーム155には、底蓋154aに接触する規制レールを設けるが、該規制レールは、苗供給装置15の機体後側で、且つ左右方向の中央部付近、より具体的には植付ホッパ145の上方で分断される形状とし、植付ホッパ145の上方で底蓋154aが下方回動して開き、投入された苗を落下供給する構成とする。このとき、苗の投入位置は、苗供給装置15の機体前側で、且つ左右方向の中央部付近とし、投入された苗は苗搬送ポット154が所定距離移動してから落下供給されるものとする。
なお、植付ホッパ145は、落下供給される苗を受ける際、上下回動軌跡における上端部(上死点)、乃至上端部付近に位置するものとし、落下中の苗が風等の影響で植付ホッパ145の投入口から離れた位置に落下することを防止するものとする。
これにより、作業者が苗搬送ポット154に投入した苗は、植付ホッパ145への落下供給位置まで自動搬送されるので、複数の苗を連続的に植え付けることが可能になる。
また、作業者が苗を投入してから苗搬送ポット154が所定距離移動してから苗が落下供給される構成により、苗の投入ミスがあっても作業者が投入し直す猶予があるので、苗が供給されず欠株が発生し、作業者が手作業で植え直す必要が無くなる。
上述する植付装置14による苗の植付深さは、畝への進入時に走行車体11の車高を変更することにより設定されるが、畝は必ずしも平坦ではなく、また、走行車体11が移動する畝溝も平坦ではないので、上下方向の機体の揺れ等により、植付深さが設定と異なるものとなることがある。
畝面や畝溝に合わせて車高を変更し、苗の植付深さをほぼ一定に保つべく、伝動ケース19の下部には畝面を検出する畝面センサ26を上下回動可能に装着する。この畝面センサ26には昇降シリンダ62を伸縮させる油圧バルブ(図示省略)に連結される連動ワイヤ(図示省略)の一側部を装着し、回動量の変化があると油圧バルブの開度が変更されて昇降シリンダ62が伸縮して走行車体11の車高が自動的に上昇または下降する構成となる。
なお、畝面センサ26の機体後部側の接地部分は、検出精度を高めるべく前後方向に長く構成し、後端部側は植付ホッパ145の下方に臨ませる。当然、このままでは植付ホッパ145が苗を植え付けるべく下降した際に畝面センサ26が干渉するので、畝面センサ26の接地部分には、植付ホッパ145を畝へ進入させる進入切溝27を形成する。
この進入切溝27は、例えばU字形状とし、その端面をゴム板等の弾性部材で覆い、植付ホッパ145の外周面に弾性変形しながら接触して付着した土を除去する、スクレーパとして作用させてもよい。
また、畝面センサ26は、付勢力を調節可能な荷重調節スプリング(図示省略)により機体下側、即ち畝面への接地方向に付勢し、この荷重調節スプリングの付勢力を調節することにより、畝面の高さの変化の検出感度、及び畝に敷設したマルチフィルムを押圧する力を変更可能に構成してもよい。
僅かな凹凸であっても車高が自動調節される感度に設定したとき、頻繁に車高が変更されると、車高が変更されている間に植付動作が行われ、かえって植付深さが設定と異なることがあるので、付勢力を強めて僅かな凹凸であれば畝面センサ26で凹凸を押し均し、車高の変更の発生を防止することができる。
また、マルチフィルムを押圧する力を変更することにより、マルチフィルムを破ってしまうことや、マルチフィルムの弛みが取れず、苗の植付姿勢が乱れることを防止できる。
また、畝面センサ26を植付ホッパ145を避け、畝の左右どちらかの一側に寄せて配置する必要がなくなり、苗の植付位置である畝の左右中央部付近の畝の高さ、及び凹凸を検知できるので、苗の植付位置に合わせた植付深さの自動調節が行われ、苗の植付精度が向上する。
そして、苗供給装置15の機体前側で、且つ走行車体11の上面には、作業者が移動するフロアステップ30を設ける。該フロアステップ30の機体前側の左右中央部付近は、エンジン12及びミッションケース16を回避する切欠部が形成されている。この切欠部の上部には、エンジン12やミッションケース16を覆うボンネットカバー31を着脱自在に設けるものとする。なお、エンジン12やミッションケース16の側部等は、冷却や排気を効率よく行うべく、ボンネットカバー31で覆わず、外気に晒される構成である。
前記ミッションケース16には、前記植付ホッパ145の株間を変更する際に伝動速度を変速する株間伝動ケース(図示省略)が連結されており、この株間伝動ケース内のギア機構を切り替える株間主変速レバー32と株間副変速レバー33が、フロアステップ30の機体前側の左右どちらか一方に配置される。株間主変速レバー32と株間副変速レバー33は上下に並べて配置されると共に、フロアステップ30に形成された左右方向のレバー操作孔から機体前側に向かって突出しており、作業者は走行車体11に乗ったままでも、走行車体11の車外からでも操作可能に構成している。
そして、フロアステップ30の機体前側には、ボンネットカバー31の上方を跨ぐ座席フレーム34を設け、該座席フレーム34の上部には、苗搬送装置15に苗を投入する作業者が搭乗する作業座席35を設ける。この作業座席35は、背もたれ側が機体前側に位置し、着座した作業者は機体後側を向くことになる。
上記の作業座席35に搭乗した作業者は、苗供給装置15に対面して苗を供給できるので、苗を投入しやすく、また投入ミスが生じたかどうかを視覚的に確認できる。また、走行車体11の後部側に視線が向くので、植え付けられる苗の姿勢の適否や、植え付けの有無も見ることができ、植付姿勢の異常や欠株の発生に速やかに対処でき、植え直しに要する時間と労力が軽減される。
一方、走行車体11の進行方向に対して背を向けた状態であるので、走行車体11が畝に沿って正しく走行しているかどうかの確認は振り返る必要があるが、このとき苗の投入作業に集中しにくくなる問題がある。
作業前に走行輪17及び接地転輪25の左右幅を畝幅に適切に合わせていれば、走行車体11は畝に沿って直進し得る構成ではあるが、実際の圃場では畝の崩れや畝溝の凹凸等、走行輪17及び接地転輪25が接触した際に僅かに進行方向を直進からズレさせる要因があるので、移動距離が長くなるにつれて植付位置が畝の左右中心からズレた位置となる可能性がある。
この問題に対応すべく、走行車体11の前側に、畝ガイドローラ機構40を設けることが考えられる。畝ガイドローラ機構40は、図1、図2に示すとおり、走行車体11の前側において、畝ガイドフレーム41を機体左右方向に向けて装着し、畝ガイドフレーム41の左右両側にサイドボス42を各々左右方向に摺動可能に装着する。そして、これら左右のサイドボス42に畝の法面に接触する法面ローラ44を回転可能に支持する法面ローラアーム43の基部側を各々装着する。
なお、法面ローラ44は、平面視でコの字形状である法面ローラアーム43の前側端部に装着するものとし、法面ローラ44を法面にほぼ水平姿勢で接触させるべく、下端部が上端部よりも機体外側に位置する傾斜姿勢で装着するものとすることが望ましい。さらに言えば、法面ローラアーム43の基部側、あるいは法面ローラ44を装着する前側端部を回転可能に構成し、任意に角度調節できるものとして、法面の角度に自在に対応できるものとすることが望ましい。
そして、左右のサイドボス42の左右間には、走行車体11の機体左右方向中央部に向かう姿勢で左右の中央ローラアーム45の基部を各々上下回動可能に設け、左右の中央ローラアーム45の前側端部に畝面に接触する畝面ローラ46を回転可能に装着する。より具体的には、左右の中央ローラアーム45で平面視でコの字形状の畝面ローラステー47を支持し、この畝面ローラステー47に畝面ローラ46を回転可能に装着する。
上記の畝面ローラ46は、付勢スプリング(図示省略)を設けて下方に押し下げられる構成とし、この付勢力を強いものとして、苗の植付前の畝面を踏み均す構成としてもよい。一方、マルチフィルムを敷設した畝においては、付勢力を下げ、マルチフィルムの剥離を防止すると共に、法面ローラ44と共にマルチフィルムを伸ばして弛みによる苗の植付不良の発生を防止する構成としてもよい。
なお、畝面ローラ46は左右の法面ローラ44よりも機体後側よりに配置し、且つ左右の中央ローラアーム45の上下回動により前後位置を変更することにより、マルチフィルムを押圧する力を調節できる構成となる。
この構成では、使用するマルチフィルムや畝に合わせて付勢スプリングを付け替える作業が不要であると共に、左右の中央ローラアーム45に伸縮機構をつける必要がないので、構成の簡潔化が図られる。また、マルチフィルムを押圧する力は大幅に変化させる必要はないので、左右の中央ローラアーム45の回動のみで対応することにより、構成の簡潔化が図られる。
これにより、畝ガイドローラ機構40が構成される。
この構成では、畝の幅に合わせてサイドボス42を各々左右方向に摺動させ、左右の法面ローラ44の接地位置を変更することができるので、畝と左右の法面ローラ44の間に空間が生じることが防止され、走行車体11が畝からズレた方向に移動することが防止される。
また、畝面ローラ46は左右方向中央位置付近に配置され、左右に移動しないことにより、苗が植え付けられる苗の中央位置付近を均すことや、マルチフィルムを適度に張らせることができるので、苗の植付姿勢が適切になり、生育の安定化が図られると共に、姿勢の乱れた苗を植え直す作業が不要になる。
また、畝面ローラ46と左右の法面ローラ44の前後間隔を付け、且つ畝面ローラ46の前後位置が変更可能であることにより、使用するマルチフィルムや、マルチフィルムを敷設する畝に合わせて適切な押圧力を設定できるので、マルチフィルムが破れることが防止されると共に、マルチフィルムが弛んで植付不良の原因となることが防止される。
なお、畝ガイドローラ機構40は、畝に苗を植え付ける際には畝に接触するべくなるべく下方位置にあることが望ましいが、移動時等には地面と接触することを防止すべく、上方に退避することが望ましい。したがって、畝ガイドフレーム41を回動軸とその外周の回動パイプで構成し、この外周パイプと昇降シリンダ62の伸縮側をワイヤ等で連結し、走行車体11の車高を所定高さ以上まで高くすると、畝ガイドローラ機構40が前上がり傾斜姿勢となるように上方回動させられ、地面からの離間距離が大きくなる構成としてもよい。
図1及び図2に示すとおり、走行車体11の左右両側には、補充用の苗が入った苗箱を積載する予備苗枠50を設ける。この予備苗枠50は、走行車体11のうち、作業座席35の左右両側に苗枠支柱51の基部を装着し、苗枠支柱51の上部側に苗載せ台52を少なくとも一つ、あるいは上下方向に一定の間隔を空けて複数配置する。
なお、苗載せ台52は走行車体11側、即ち機体内側と、機体前側及び後側を開放状態として装着することにより、作業座席35あるいはフロアステップ30に位置する作業者がほぼ移動することなく苗箱を取り出すことができるので、作業能率が向上すると共に、作業者の労力が軽減される。
また、苗箱の移動中の落下を防止すべく、苗箱よりも上下長さが短い受け部を苗載せ台52の機体前後及び内側に上方を向けて配置または形成すると、落下した苗箱を回収する作業が不要であると共に、苗箱の取り出しの際に持ち上げる高さが抑えられ、作業者の労力が軽減される。
上記の構成にて畝ガイドローラ機構40を備える例を説明したが、この畝ガイドローラ機構40を活用した機能を追加し、苗の植付作業の能率をより向上させる構成について説明する。
図5に示すとおり、前記左右の法面ローラ44の少なくとも一方に第1回転センサ48を設けると共に、畝面ローラ46に第2回転センサ49を設け、第1回転センサ48及び第2回転センサ49の回転の有無、及び回転数を受信して記録する制御ユニット50を走行車体11に設ける。また、制御ユニット50には、所定の条件で作動するブザー、ランプ等の報知装置51を設けると共に、別の所定の条件で作動するエンジン停止装置57を設ける。
これに加えて、伝動ケース19またはミッションケース16には、上側リンクアーム141及び供給伝動軸151を一定間隔で駆動させるステッピングモータ53を設け、制御ユニット50は、第1回転センサ48または第2回転センサ49の回転数に基づきステッピングモータ53の作動タイミングを変更する制御を行う構成とする。
上述のとおり、作業者は作業座席35に搭乗する際、進行方向に対して背を向けているので、振り返らなければ畝の植付作業終了側の端部を確認できない。しかしながら、苗の投入作業は畝端の直前まで行う必要があるので、畝端への接近を作業者が認識できず、畝端を越えるまで植付走行が停止されないことが想定される。
畝端を越えて走行することにより、苗が植付ホッパ145から空中で解放され、植え付けられずに地面に落ち、作業者が拾い上げてどこか別の場所に手作業で植え付ける必要が生じる。また、隣接するか近傍に位置する次の植付作業条に移動すべく走行車体11を旋回操作する際、適切な位置まで後進させる等の余分な作業が必要になるので、作業能率が低下する問題がある。一方、畝端を気にして振り向く頻度が増えると、苗を苗供給装置15に投入する作業に集中できず、欠株等が発生しやすくなる問題がある。
本願の構成では、図5及び図6より、畝端付近に走行車体11が到達すると、畝面ローラ46よりも機体前側に位置する法面ローラ44が先行して畝から離間して、法面ローラ44の回転を第1回転センサ48が検知しなくなる。すると、制御ユニット50は報知装置51を作動させ、作業者に畝端、即ち苗の植付作業を行う範囲の終端に近づいたことを認識させる。
このとき、苗が空中で解放され、地面に落ちることを確実に防止したいときは、作業者はいったん植付作業走行を停止させ、移植機10を畝端まで移動させ、植付作業が行われていない畝の空きスペースには、作業者が手作業で苗を植え付ける。
一方、報知装置51の作動に気づかない、あるいは畝端まで移植機10で苗を植え付ける場合には、植付作業走行を停止させず、そのまま走行車体11を前進させる。すると、畝面ローラ46が畝の端部から離間し、接地抵抗を受けなくなるので回転が停止するので、制御ユニット50はエンジン停止装置57を作動させ、エンジンを停止させてそれ以上の前進及び植付動作を停止させるものとする。
即ち、報知装置51の作動条件は法面ローラ44の少なくとも一方が畝端に到達することであり、エンジン停止装置57の作動条件は報知装置51が作動する条件が成立した上で、畝面ローラ46が畝端へ到達することである。
これにより、作業者が苗の投入作業に停止していても、走行車体11が畝端付近に到達すると自動的に走行及び植付が停止されるので、地面に植え付けられずに落ちた苗を拾って他の場所に植え付ける作業に要する時間と労力の軽減が図られる。
また、旋回前に旋回開始位置まで走行車体11を移動させる作業が不要となるので、作業能率が向上すると共に、燃料の消費が抑えられる。
なお、図5に示すとおり、エンジン停止装置57によりエンジン12が停止する構成では、エンジン12を再始動操作する必要があり、エンジン12の始動時の機体各部への負荷の発生や燃料消費量の増加といった問題が生じるので、ミッションケース16内の主クラッチを入切する主クラッチアクチュエータ55を設け、エンジン停止装置57に代えて主クラッチ停止機構56を設けてもよい。
これにより、畝端に到達するたびにエンジン12を再始動させる必要がなく、機体に累積的にかかる負荷を抑えられると共に、始動時の燃料消費を抑えることができる。
また、図7に示すとおり、左右の法面ローラ44に各々第1回転センサ48を設け、左右の第1回転センサ48の回転がどちらも検知されない状態になると報知装置51が作動する構成とすると、畝の一部の崩れにより片方だけ法面が検知されないときに報知装置51が作動することが防止されるので、不必要な報知により作業者の苗の投入作業への集中を欠くことが防止される。
なお、図6に示すとおり、第1回転センサ48が法面ローラ44の回転を検知しており、且つ第2回転センサ49が畝面ローラ46の回転を検知しない状態は、畝の中央部のみが著しく抉れて窪んでいる、苗の植付に適さない状況であると考えられるので、エンジン停止装置57あるいは主クラッチ停止機構56を作動させて植付作業走行を停止させることが望ましい。もっとも、その状態の畝に法面ローラ44が接触すると、法面が崩れて法面ローラ44が接地しなくなり、非検知状態になることが正常であるので、センサ系統の異常と判定し、何らかの手段で報知することが望ましい。
畝面センサ46に設ける第2回転センサ49が検出する回転からは、走行車体11が一定速度で前進しているかどうかが判定可能である・BR>B例えば、一回転に要する時間が同じであれば、スリップや接地抵抗による影響をほぼ受けずに一定距離を一定の速度で走行しているとみなすことができる。一方、一回転に要する時間が早いと、何らかの影響で走行車体が加速されて他の場所よりも短時間で前進したことになり、一回転に要する時間が遅いと、何らかの影響で前進が抑制されており、他の場所より長時間かけて前進したことになる。
作業前に設定する株間は、走行車体11の前進速度が一定であることで等間隔になるものであり、前進速度に差異が生じると、その分株間が設定よりも狭く、あるいは広くなることになり、間隔によっては苗同士が土中の養分、及び周囲のスペースを取り合い生育不良を起こすことや、風通しが悪くなることにより病害虫が発生しやすくなる問題を生じさせることがある。
この問題の発生を防止すべく、図8に示すとおり、制御ユニット50は、設定された株間に対応する畝面ローラ46の理論上の一回転に要する時間と、第2回転センサ49が実際に検出した畝面ローラ46の一回転に要する時間を比較しており、時間が許容範囲よりも短いとき、あるいは許容範囲よりも長いときには、ステッピングモータ53への作動信号を発信するタイミングを変更する。
これにより、走行車体11の実際の前進速度になるべく近いタイミングで植付装置14及び苗供給装置15を作動させることができるので、苗同士の株間が設定どおりになるので、生育が良好になると共に、病害虫が発生しにくくなる。
上述のとおり、移植機10を次の植付作業条に移動させるときは、車高を高くし、走行車体11の後部に設ける操縦ハンドル13を作業者が押し下げ、走行車体11の前側を上方に持ち上げ、左右の走行輪17のうち旋回内側となる側を支点として約180度回転させる。このとき、作業者の操縦ハンドル13を押し下げる力が十分であれば、機体前側が地面から十分に離間するので、機体前側に配置された部材が旋回時に地面と接触して抵抗になることはない。
しかしながら、押し下げる力が不十分であると、走行車体11の前側に位置する部材のうち、特に接地転輪25が地面から離間できず、接触により旋回走行の抵抗になる問題がある。
また、接地転輪25の上下位置は、回動自在な走行伝動ケース18に装着された走行輪17とは異なり、接地転輪25を装着する縦軸25aを作業者が上下方向に移動させ、その後固定する作業が必要であるので、旋回走行の度に上下動させることは作業能率を低下させることにつながる。特に本願は1条植えであるので、圃場の広さによっては旋回走行の頻度が高く、旋回の度に接地転輪25の上下高さを変更すると、時間と労力を大きく費やすことになる。
図3及び図4に示すとおり、縦軸25aの上部を接地転輪25の昇降機構、例えば転輪昇降シリンダ60に連結し、この転輪昇降シリンダ60の伸縮により接地転輪25の上下位置を変更可能に構成する。上述のとおり、接地転輪25は左右一対設けられるので、転輪昇降シリンダ60も左右各々設けることが望ましいが、片側にのみ転輪昇降シリンダ60を設けてもう片方をワイヤ等で連動して上下動させる構成としてもよい。
また、走行車体11の前後及び左右方向の中央部、例えば作業座席35の下部やボンネットカバー31の機体後部側には、走行車体11の前後及び左右方向の傾斜角度を検出する傾斜センサ61を設ける。この傾斜センサ61の検出角度は制御ユニット50に送信され、各転輪昇降シリンダ60、及びローリングシリンダ63が対応する方向に伸縮される。
なお、傾斜センサ61は、前後傾斜センサと左右傾斜センサを分けて設けてもよいが、前後左右の傾斜を検出可能であれば、一つであってもよい。
まず、図9に示すとおり、傾斜センサ61が左右方向の傾斜を検出し、且つ傾斜角度が設定値以内であるときは、傾斜方向の低位側に位置する転輪昇降シリンダ60を伸長させて接地転輪25を下降させると共に、ローリングシリンダ63を伸長または収縮させて左右一側の走行伝動ケース18を上下回動させて走行輪17の上下位置を変更させる。これらの動作は、傾斜センサ61が検出する左右の傾斜角度が0、乃至0付近の許容範囲内に収まると停止させる。
これにより、畝溝の深さの左右差等の要因により、走行車体11が左右方向に傾斜した際、すぐに走行車体11が水平姿勢に戻されるので、植付ホッパ145により植え付けられる苗が左右傾斜姿勢となることが防止され、植付後の苗が自重で倒伏し、作業者による植え直しが必要になることが防止される。
また、走行輪17だけでなく接地転輪25も上下動することにより、接地転輪25が畝溝から浮き上がり、走行姿勢が不安定になることが防止される。
傾斜センサ61が検出する左右角度が設定値を超えたときは、走行車体11が転倒しかねない角度にまで傾斜しているおそれがあるので、制御ユニット50は、傾斜方向の低位側の転輪昇降シリンダ60を伸長させて接地転輪25を下降させる。このとき、走行輪17の上下位置を変更するとかえってバランスが崩れるおそれがあるので、ローリングシリンダ63は作動させない。
上記により、左右傾斜の低位側、即ち機体が倒れるおそれのある方向の接地転輪25が地面に確実に接地して走行車体11の転倒方向への移動を阻止するので、転倒による構成部品の破損や、積載した苗が圃場に散らばることが防止される。
なお、上記の転倒は、作業者が搭乗しているときよりも、むしろ作業者が機体から降りて操縦しているとき、特に旋回走行時に意図的に車体のバランスを崩す際に生じる可能性が高い。
次に、図10に示すとおり、畝面センサ26が検出する畝の高さが変化すると、制御ユニット50は、昇降シリンダ62を伸長または収縮させて左右の走行伝動ケース18を上下回動させ、昇降シリンダ62が伸長する車高下げ時には左右の転輪昇降シリンダ60を収縮させると共に、昇降シリンダ62が収縮する車高上げ時には左右の転輪昇降シリンダ60を伸長させる。このとき、傾斜センサ61は走行車体11の前後傾斜角度を検出し続け、前後傾斜角度が0、乃至0付近の許容値になると伸縮を停止させるものとする。
これにより、走行車体11を左右方向だけでなく前後方向においても水平姿勢とすることができるので、植え付けられる苗が前傾または後傾姿勢になることが防止され、苗の植付精度が向上する。
また、傾斜地の圃場で作業する際、圃場の傾斜状態に合わせて自動的に左右及び前後の傾斜が修正されるので、作業条件の違いに幅広く対応することができる。
図11に示すとおり、操縦ハンドル13を押し下げて機体前側が持ち上げられる、即ち植付作業中には生じ得ない前後方向の傾斜角度を傾斜センサ61が検出したときは、旋回操作と判断して、左右の転輪昇降シリンダ60を収縮させ、接地転輪25を上方に退避させる。このときは、設定された傾斜角度を超えると、設定傾斜角度を下回らない限り、転輪昇降シリンダ60を最大限収縮させる。
これにより、左右の接地連輪25を地面から十分に離間させることができるので、旋回走行時に接地転輪25が地面に接触して走行の抵抗になることが防止される。
そして、傾斜センサ61が検出する角度が設定傾斜角度を下回ると、制御ユニット50は、旋回走行を終了したと判断して左右の転輪昇降シリンダ60を伸長させ、接地転輪25を接地させる。このとき、左右の走行輪17は旋回のために最大限下降されているので、左右の転輪昇降シリンダ60は最大限伸長させるものとする。
なお、傾斜センサ61の検出角度が設定値を下回るとすぐに転輪昇降シリンダ60が伸長すると、旋回操作中に走行車体11の傾斜角度を所定値以上に保つことが作業者に要求されるので、労力の軽減効果が薄れてしまう。したがって、制御ユニット50は、一定時間に亘って設定値を上回る角度が検出されなくなると、転輪昇降シリンダ60を伸長させる構成とすることが望ましい。制御ユニット50には、タイマー機能を持たせる。