JP7230148B2 - 金属張積層板及び回路基板 - Google Patents
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Description
また、車載用電子機器以外のデバイス、たとえば、高速処理を行うことができるCPU(Central Processing Unit)を有するノートパソコンやスーパーコンピュータ等においても、さらなる小型化、軽量化を図るためフレキシブルプリント基板が用いられることが増えている。このようなデバイスにおいても、CPUが発する熱により、フレキシブルプリント基板は高温環境に繰り返し晒される。高温環境での使用に起因するフレキシブルプリント基板の劣化の代表的な要因は、配線層と絶縁樹脂層との接着性の低下による配線層の浮きや剥がれである。
本発明のポリイミドフィルムは、下記の条件(i)~(iii)を満たすことを特徴とする。
(i)熱膨張係数が10~30ppm/Kの範囲内であること。
(ii)酸素透過度が5.5×10-14mol/(m2・s・Pa)以下であること。
(iii)前記非熱可塑性ポリイミド及び前記熱可塑性ポリイミドを構成する全モノマー成分から誘導される全モノマー残基に対し、下記式(1)によって算出されるビフェニル骨格を有するモノマー残基の割合が50mo1%以上であること。
(iv)前記熱可塑性ポリイミドにおける全モノマー成分から誘導される全モノマー残基のうち、ビフェニル骨格を有するモノマー残基が占める割合が30mol%以上であること。
本発明の一実施の形態に係るポリイミドフィルムは、非熱可塑性ポリイミドを含む非熱可塑性ポリイミド層と、該非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも一方の面に積層されている、熱可塑性ポリイミドを含む熱可塑性ポリイミド層と、を有するポリイミドフィルムである。ここで、「非熱可塑性ポリイミド」とは、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定された30℃における貯蔵弾性率が1.0×109Pa以上であり、かつ、ガラス転移温度+30℃以内の温度域での貯蔵弾性率が1.0×108Pa以上を示すものを意味する。「熱可塑性ポリイミド」とは、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定された30℃における貯蔵弾性率が1.0×109Pa以上であり、かつ、ガラス転移温度+30℃以内の温度域での貯蔵弾性率が1.0×108Pa未満を示すものを意味する。
(i)熱膨張係数が10~30ppm/Kの範囲内であること。
本実施の形態のポリイミドフィルム100,101は、例えば回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合において、反りの発生や寸法安定性の低下を防止するために、フィルム全体の熱膨張係数(CTE)が10ppm/K以上30ppm/K以下の範囲内であることが重要であり、好ましくは10ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内がよく、15~25ppm/Kの範囲内がより好ましい。CTEが10ppm/K未満であるか、又は30ppm/Kを超えると、反りが発生したり、寸法安定性が低下したりする。
ポリイミドフィルム100,101の酸素透過度を5.5×10-14mol/(m2・s・Pa)以下に制御することによって、例えば回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合において、繰り返し高温に晒される環境であっても、長期間に亘って配線層との接着性が維持され、優れた長期耐熱接着性が得られる。ポリイミドフィルム100,101の酸素透過度が5.5×10-14mol/(m2・s・Pa)を超える場合は、例えば回路基板の絶縁樹脂層として適用し、繰り返し高温に晒された場合に、絶縁樹脂層を透過した酸素によって配線層の酸化が進み、配線層と絶縁樹脂層との接着性が低下してしまう。
ビフェニルジイル基の代表例としては、下記の式(b)で表されるものを挙げることができる。ビフェニルテトライル基の代表例としては、下記の式(c)で表されるものを挙げることができる。なお、ビフェニルジイル基及びビフェニルテトライル基において、芳香環における結合手は、式(b)及び式(c)に示す位置に限定されるものではなく、また、上記のとおり、これらの残基に含まれる芳香環は、任意の置換基を有していてもよい。
(iv)熱可塑性ポリイミドにおける全モノマー成分から誘導される全モノマー残基のうち、ビフェニル骨格含有残基の占める割合が30mol%以上であること。
熱可塑性ポリイミドを構成する全モノマー残基のうち、ビフェニル骨格含有残基の占める割合が30mol%以上であることによって、モノマー由来の剛直構造により、ポリマー全体に秩序構造が形成されるので、熱可塑性でありながら、酸素透過度及び吸湿性が低く、長期耐熱接着性に優れ、誘電正接が低いポリイミドが得られる。なお、非熱可塑性ポリイミド層110の両側に熱可塑性ポリイミド層120A,120Bを有する場合は、熱可塑性ポリイミド層120A,120Bのいずれか片方が上記条件(iv)を満たせばよいが、両方の熱可塑性ポリイミド層120A,120Bが共に上記条件(iv)を満たすことが好ましい。
本実施の形態のポリイミドフィルム100,101の全体の厚みT1は、使用する目的に応じて、所定の範囲内に設定することが可能であり、例えば30~60μmの範囲内にあることが好ましく、35~50μmの範囲内にあることがより好ましい。厚みT1が上記下限値に満たないと、酸素透過度を十分に下げることが困難となり、繰り返し高温に晒された場合に配線層と絶縁樹脂層との接着性が低下してしまう懸念がある。一方、厚みT1が上記上限値を超えると、ポリイミドフィルムを曲げた際にクラックが生じ破れるなどの不具合が生じる。
比率T2/T1の下限は特に限定されない。比率T2/T1が小さくなるほど、酸素透過度及び誘電正接の低減が図りやすくなるからである。ただし、比率T2/T1が小さくなるほど、相対的に熱可塑性ポリイミド層120A,120Bの占める厚み割合が小さくなることから、比率T2/T1の下限は、ポリイミドフィルム100,101と配線層との接着信頼性が確保できる値として、例えば0.02程度が好ましい。
ポリイミドフィルム100,101において、非熱可塑性ポリイミド層110を構成する非熱可塑性ポリイミドは、酸二無水物残基及びジアミン残基を含むものである。非熱可塑性ポリイミドは、全モノマー成分から誘導される全モノマー残基のうち、ビフェニル骨格含有残基を60mo1%以上含有することが好ましく、70mo1%以上含有することがより好ましい。非熱可塑性ポリイミド中のビフェニル骨格含有残基を60mo1%以上とすることによって、ポリイミドフィルム100,101を構成するポリイミド全体におけるビフェニル骨格含有残基の含有比率を高め、酸素透過度を下げ、低誘電正接化を図ることができる。
非熱可塑性ポリイミドは、全酸二無水物残基のうち、ビフェニル骨格を有する酸二無水物残基を35mo1%以上含有することが好ましく、50mo1%以上含有することがより好ましい。さらに好ましくは、式(c)で表されるビフェニルテトライル基を上記の量で含有することがよい。
非熱可塑性ポリイミドは、全ジアミン残基のうち、ビフェニル骨格を有するジアミン残基を70mo1%以上含有することが好ましく、85mo1%以上含有することがより好ましい。さらに好ましくは、式(b)で表されるビフェニルジイル基を上記の量で含有することがよい。式(b)で表されるビフェニルジイル基は、剛直構造を有し、ポリマー全体に秩序構造を付与する作用を有しているため、酸素透過度を下げるとともに、分子の運動抑制により誘電正接を低下させることができる。
ポリイミドフィルム100,101において、熱可塑性ポリイミド層120A,120Bを構成する熱可塑性ポリイミドは、酸二無水物残基及びジアミン残基を含むものである。熱可塑性ポリイミドは、上記の条件(iv)のとおり、全モノマー成分から誘導される全モノマー残基のうち、ビフェニル骨格含有残基を30mo1%以上含有することが好ましく、40mo1%以上含有することがより好ましい。熱可塑性ポリイミド中のビフェニル骨格含有残基を30mo1%以上とすることによって、ポリイミドフィルム100,101を構成するポリイミド全体における、ビフェニル骨格含有残基の含有比率を高め、酸素透過度を低減するとともに、低誘電正接化を図ることができる。一方で、熱可塑性ポリイミドは、金属層との接着性を確保するためにポリイミド分子鎖の柔軟性を向上させ、熱可塑性を付与する必要があることから、ビフェニル骨格含有残基の含有量の上限を65mol%以下とすることが好ましい。
熱可塑性ポリイミドは、全酸二無水物残基のうち、ビフェニル骨格を有する酸二無水物残基を60mo1%以上含有することが好ましい。より好ましくは、式(c)で表されるビフェニルテトライル基を上記の量で含有することがよい。
熱可塑性ポリイミドは、全ジアミン残基のうち、ビフェニル骨格を有するジアミン残基を1mo1%以上含有することが好ましく、5mo1%以上含有することがより好ましい。さらに好ましくは、式(b)で表されるビフェニルジイル基を上記の量で含有することがよい。式(b)で表されるビフェニルジイル基は、剛直構造を有し、ポリマー全体に秩序構造を付与する作用を有しているため、分子の運動抑制により誘電正接や吸湿性を低下させることができる。更に、熱可塑性ポリイミドの原料として使用することで、酸素透過度が低く、長期耐熱接着性に優れたポリイミドが得られる。
本実施の形態のポリイミドフィルム100,101は、上記条件を満たすものであれば特に限定されるものではなく、絶縁樹脂からなるフィルム(シート)であってもよく、例えば、銅箔などの金属箔、ガラス板、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルムなどの樹脂シート等の基材に積層された状態の絶縁樹脂のフィルムであってもよい。
ポリイミドフィルム100,101は、例えば、回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合において、高周波信号の伝送時における誘電損失を低減するために、フィルム全体として、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定したときの10GHzにおける誘電正接(Tanδ)が、0.004以下であることが好ましい。回路基板の伝送損失を改善するためには、特に絶縁樹脂層の誘電正接を制御することが重要であり、誘電正接を上記範囲内とすることで、伝送損失を下げる効果が増大する。従って、ポリイミドフィルム100,101を、例えば高周波回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合、伝送損失を効率よく低減できる。10GHzにおける誘電正接が0.004を超えると、ポリイミドフィルム100,101を回路基板の絶縁樹脂層として適用した際に、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスが大きくなるなどの不都合が生じやすくなる。10GHzにおける誘電正接の下限値は特に制限されないが、ポリイミドフィルム100,101を回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合の物性制御を考慮する必要がある。
ポリイミドフィルム100,101は、例えば回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合において、インピーダンス整合性を確保するために、フィルム全体として、10GHzにおける誘電率が4.0以下であることが好ましい。10GHzにおける誘電率が4.0を超えると、ポリイミドフィルム100,101を回路基板の絶縁樹脂層として適用した際に、誘電損失の悪化に繋がり、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスが大きくなるなどの不都合が生じやすくなる。
本実施の形態のポリイミドフィルム100,101は、必要に応じて、非熱可塑性ポリイミド層110又は熱可塑性ポリイミド層120A,120B中に、無機フィラーや有機フィラーを含有してもよい。具体的には、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム等の無機フィラーやフッ素系ポリマー粒子や液晶ポリマー粒子等の有機フィラーが挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。なお、有機フィラーを含有する場合、有機フィラーは非熱可塑性ポリイミド層110又は熱可塑性ポリイミド層120A,120Bを構成する全モノマー成分に該当しないものとする。
本実施の形態のポリイミドフィルム100,101の製造方法の好ましい態様として、例えば、以下の[1]~[3]を例示することができる。
[1]支持基材に、ポリアミド酸溶液を塗布・乾燥することを複数回繰り返した後、イミド化してポリイミドフィルム100,101を製造する方法。
[2]支持基材に、ポリアミド酸溶液を塗布・乾燥することを複数回繰り返した後、ポリアミド酸のゲルフィルムを支持基材から剥がし、イミド化してポリイミドフィルム100,101を製造する方法。
[3]多層押出により、同時にポリアミド酸溶液を多層に積層した状態で塗布・乾燥した後、イミド化を行うことによってポリイミドフィルム100,101を製造する方法(以下、多層押出法)。
(1a)支持基材にポリアミド酸溶液を塗布し、乾燥させる工程と、
(1b)支持基材上でポリアミド酸を熱処理してイミド化することによりポリイミド層を形成する工程と、
(1c)支持基材とポリイミド層とを分離することによりポリイミドフィルム100,101を得る工程と、
を含むことができる。
(2a)支持基材にポリアミド酸溶液を塗布し、乾燥させる工程と、
(2b)支持基材とポリアミド酸のゲルフィルムとを分離する工程と、
(2c)ポリアミド酸のゲルフィルムを熱処理してイミド化することによりポリイミドフィルム100,101を得る工程と、
を含むことができる。
本実施の形態の金属張積層板は、絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に設けられている金属層と、を備えており、絶縁樹脂層の一部分又は全部が、上記実施の形態のポリイミドフィルム100,101を用いて形成されていればよい。絶縁樹脂層と金属層との接着性を高めるために、絶縁樹脂層における金属層に接する層は、熱可塑性ポリイミド層120A,120Bであることがよい。
また、銅張積層板は、上記実施の形態のポリイミドフィルム100,101を含んで構成される樹脂フィルムを用意し、これに銅箔を熱圧着などの方法でラミネートすることによって調製してもよい。
さらに、銅張積層板は、銅箔の上にポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を含有する塗布液をキャストし、乾燥して塗布膜とした後、熱処理してイミド化し、ポリイミド層を形成することによって調製してもよい。
上記実施の形態の金属張積層板は、主にFPCなどの回路基板材料として有用である。金属張積層板の金属層を常法によってパターン状に加工して配線層を形成することによって、本発明の一実施の形態である回路基板を製造できる。
すなわち、本実施の形態の回路基板は、絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に設けられている配線層と、を備えており、絶縁樹脂層の一部分又は全部が、上記実施の形態のポリイミドフィルム100,101を用いて形成されていればよい。また、絶縁樹脂層と配線層との接着性を高めるために、絶縁樹脂層における配線層に接する層は、熱可塑性ポリイミド層120A,120Bであることがよい。
E型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV-II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%~90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから2分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
ガラス転移温度は、5mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、動的粘弾性測定装置(DMA:ユー・ビー・エム社製、商品名;E4000F)を用いて、30℃から400℃まで昇温速度4℃/分、周波数11Hzで測定を行い、弾性率変化(tanδ)が最大となる温度をガラス転移温度とした。なお、DMAを用いて測定された30℃における貯蔵弾性率が1.0×109Pa以上であり、ガラス転移温度+30℃以内の温度域での貯蔵弾性率が1.0×108Pa未満を示すものを「熱可塑性」とし、30℃における貯蔵弾性率が1.0×109Pa以上であり、ガラス転移温度+30℃以内の温度域での貯蔵弾性率が1.0×108Pa以上を示すものを「非熱可塑性」とした。
3mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、サーモメカニカルアナライザー(Bruker社製、商品名;4000SA)を用い、5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から265℃まで昇温させ、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、250℃から100℃までの平均熱膨張係数(熱膨張係数)を求めた。
ポリイミドフィルムの試験片(幅;4cm×長さ;25cm)を2枚用意し、80℃で1時間乾燥した。乾燥後直ちに23℃/50%RHの恒温恒湿室に入れ、24時間以上静置し、その前後の重量変化から次式により求めた。
吸湿率(重量%)=[(吸湿後重量-乾燥後重量)/乾燥後重量]×100
ベクトルネットワークアナライザ(Agilent社製、商品名;E8363C)及びスプリットポスト誘電体共振器(SPDR共振器)を用いて、周波数10GHzにおけるポリイミドフィルムの誘電率および誘電正接を測定した。なお、測定に使用した材料は、温度;24~26℃、湿度;45~55%の条件下で、24時間放置したものである。
イミド基部(-(CO)2-N-)の分子量をポリイミドの構造全体の分子量で除した値をイミド基濃度とした。
銅箔の表面粗度は、AFM(ブルカー・エイエックスエス社製、商品名;Dimension Icon型SPM)、プローブ(ブルカー・エイエックスエス社製、商品名;TESPA(NCHV)、先端曲率半径10nm、ばね定数42N/m)を用いて、タッピングモードで、銅箔表面の80μm×80μmの範囲で測定し、十点平均粗さ(Rzjis)を求めた。
温度23℃±2℃、湿度65%RH±5%RHの条件下でJIS K7126-1の差圧法に準拠し、酸素ガスの透過度の測定を実施した。なお、蒸気透過率測定装置として、GTRテック社製、GTR-30XAD2及びヤナコテクニカルサイエンス社製、G2700T・Fを用いた。
銅張積層板(銅箔/多層ポリイミド層)の銅箔を10mm間隔で樹脂の塗工方向に幅1mmに回路加工した後、幅;8cm×長さ;4cmに切断した。ピール強度は、テンシロンテスター(東洋精機製作所社製、商品名;ストログラフVE-1D)を用いて、切断した測定サンプルのポリイミド層面を両面テープによりアルミ板に固定し、回路加工された銅箔を180°方向に50mm/分の速度で剥離していき、ポリイミド層から10mm剥離したときの中央値強度を求め、初期ピール強度とした。
銅張積層板(銅箔/多層ポリイミド層)の銅箔を10mm間隔で樹脂の塗工方向に幅1mmに回路加工した後、幅;8cm×長さ;4cmに切断した。切断したサンプルを150℃に設定させた熱風オーブン(大気雰囲気下)に保管し、1000時間後に取り出しを行った。ピール強度は、テンシロンテスター(東洋精機製作所社製、商品名;ストログラフVE-1D)を用いて、取り出した測定サンプルのポリイミド層面を両面テープによりアルミ板に固定し、回路加工された銅箔を180°方向に50mm/分の速度で剥離していき、ポリイミド層から10mm剥離したときの中央値強度を求めた。
銅張積層板について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムを短冊状に切り出し、樹脂包埋した後、ミクロトームにてフィルム厚み方向の切断を行い約100nmの超薄切片を作製した。作製した超薄切片について、日立ハイテクテクノロジー社製SEM(SU9000)のSTEM機能を用いて、加速電圧30kVで観察を行い、各ポリイミド層の厚みを各5点測定し、その平均値を各ポリイミド層の厚みとした。
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3',4,4'‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
m‐TB:2,2'‐ジメチル‐4,4'‐ジアミノビフェニル
TPE-R:1,3-ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
TPE-Q:1,4-ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
DAPE:4,4’-ジアミノ-ジフェニルエーテル
PDA:パラフェニレンジアミン
BAPP:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
ビスアニリン-P:1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(三井化学ファイン社製、商品名;ビスアニリン-P)
DDA:炭素数36の脂肪族ジアミン(クローダジャパン社製、商品名;PRIAMINE1074、アミン価;210mgKOH/g、環状構造及び鎖状構造のダイマージアミンの混合物、ダイマー成分の含有量;95重量%以上)
DMAc:N,N‐ジメチルアセトアミド
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、12.061gのm-TB(0.0568モル)、0.923gのTPE-Q(0.0032モル)及び1.0874gのビスアニリン-P(0.0032モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、6.781gのPMDA(0.0311モル)及び9.147gのBPDA(0.0311モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液aを得た。ポリアミド酸溶液aの溶液粘度は29,800cpsであった。
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、11.825gのm-TB(0.0557モル)、0.905gのTPE-Q(0.0031モル)及び1.653gのDDA(0.0031モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、6.649gのPMDA(0.0305モル)及び8.968gのBPDA(0.0305モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液bを得た。ポリアミド酸溶液bの溶液粘度は27,800cpsであった。
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、11.920gのm-TB(0.0562モル)及び2.897gのTPE-Q(0.0099モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、11.354gのPMDA(0.0521モル)及び3.829gのBPDA(0.0130モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液cを得た。ポリアミド酸溶液cの溶液粘度は31,200cpsであった。
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、1.548gのPDA(0.0143モル)及び11.465gのDAPE(0.0573モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、10.764gのPMDA(0.0494モル)及び6.223gのBPDA(0.0212モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液dを得た。ポリアミド酸溶液dの溶液粘度は23,500cpsであった。
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、15.591gのBAPP(0.0380モル)並びに重合後の固形分濃度が12重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、8.409gのPMDA(0.0386モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液eを得た。ポリアミド酸溶液eの溶液粘度は2,350cpsであった。
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、1.847gのm-TB(0.0087モル)及び10.172gのTPE-R(0.0348モル)並びに重合後の固形分濃度が12重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、2.889gのPMDA(0.0132モル)及び9.092gのBPDA(0.0309モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液fを得た。ポリアミド酸溶液fの溶液粘度は2,210cpsであった。
銅箔2(電解銅箔、厚み;12μm、樹脂側の表面粗さRzjis;0.6μm)の上に、ポリアミド酸溶液fを硬化後の厚みが2.5μmとなるように均一に塗布した後、120℃で1分間加熱乾燥して溶媒を除去した。その上にポリアミド酸溶液aを硬化後の厚みが25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で3分間加熱乾燥して溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸fを硬化後の厚みが2.5μmとなるように均一に塗布した後、120℃で1分間加熱乾燥して溶媒を除去した。その後、140℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結して、銅張積層板1を調製した。
得られた銅張積層板1を用いて初期ピール強度及び加熱後ピール強度を測定した結果、それぞれ1.06kN/m及び0.69kN/mであった。各測定結果を表1に示す。
表1に記載したポリアミド酸溶液を用いるとともに、厚み構成を変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~4、比較例1及び参考例1~2の銅張積層板2~4、銅張積層板5及び銅張積層板6~7ならびにポリイミドフィルム2a~4a、ポリイミドフィルム5a及びポリイミドフィルム6a~7aを得た。各測定結果を表1及び表2に示す。
ポリアミド酸溶液dをTダイ金型のスリットから硬化後厚みが30μmとなるようにキャスティングし、乾燥炉中の平滑なベルト状の金属支持体上に押出して薄膜を形成し、130℃で所定時間加熱後、支持体から剥離して自己支持性フィルムを得た。さらに自己支持性フィルムを連続的に搬送しながら、自己支持性フィルムの大気面にダイコーターを用いてポリアミド酸溶液eを硬化後厚みが2.5μmとなるように塗布し、120℃の乾燥炉で所定時間乾燥させた。次いで、ポリアミド酸溶液eを塗布面と反対の面についても前記同様にポリアミド酸溶液eを硬化後厚みが2.5μmとなるように塗布し、120℃の乾燥炉で所定時間乾燥させた。
この自己支持性フィルムの幅方向の両端部を把持して連続加熱炉へ挿入し、100℃から最高加熱温度が380℃となる条件で当該フィルムを加熱、イミド化して、ポリイミドフィルム8bを得た。このポリイミドフィルム8bの片面に銅箔、もう一方の面にテフロン(登録商標)フィルムを重ね合わせ、温度320℃、圧力340MPaの条件で15分間熱圧着して、圧着後にテフロン(登録商標)フィルムを剥がすことで、銅張積層板8を調製した。
得られた銅張積層板8を用いて初期ピール強度及び加熱後ピール強度を測定した結果、それぞれ1.15kN/m及び1.01kN/mであった。
Claims (3)
- 絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に設けられている金属層と、を備えた金属張積層板であって、
前記絶縁樹脂層が、前記金属層の表面に接する熱可塑性ポリイミド層と、間接的に積層された非熱可塑性ポリイミド層と、を有するとともに、
前記絶縁樹脂層が、非熱可塑性ポリイミドを含む非熱可塑性ポリイミド層と、該非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも一方の面に積層されている、熱可塑性ポリイミドを含む熱可塑性ポリイミド層と、を有するポリイミドフィルムからなり、
該ポリイミドフィルムが、下記の条件(i)~(iii)及び(v);
(i)熱膨張係数が10~30ppm/Kの範囲内であること;
(ii)酸素透過度が4.39×10 -14 mol/(m 2 ・s・Pa)以下であること;
(iii)前記非熱可塑性ポリイミド及び前記熱可塑性ポリイミドを構成する全モノマー成分から誘導される全モノマー残基に対し、下記式(1)によって算出されるビフェニル骨格を有するモノマー残基の割合が60mol%以上であること;
(v)前記ポリイミドフィルム全体の厚みT1が35~50μmの範囲内であること;
を満たし、
前記ポリイミドフィルムの全体の厚みT1に対する前記熱可塑性ポリイミド層の合計厚みT2の比率T2/T1が0.10~0.15であるとともに、前記絶縁樹脂層に接する前記金属層の表面粗さRzjisが0.6~2.1μmの範囲内であることを特徴とする金属張積層板。
- 前記(i)~(iii)及び(v)の条件に加え、更に下記の条件(iv);
(iv)前記熱可塑性ポリイミドにおける全モノマー成分から誘導される全モノマー残基のうち、ビフェニル骨格を有するモノマー残基が占める割合が30mol%以上であること;
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の金属張積層板。 - 絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に設けられている配線層と、を備えた回路基板であって、
前記絶縁樹脂層が、前記配線層に接する熱可塑性ポリイミド層と、間接的に積層された非熱可塑性ポリイミド層と、を有するとともに、請求項1に記載のポリイミドフィルムからなることを特徴とする回路基板。
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