JP7132727B2 - Al合金の凝固割れ感受性の予測方法および予測装置と予測プログラム - Google Patents
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Description
特許文献1に記載の技術では、凝固観察領域を複数に区切り、1区分ずつ凝固が進行すると仮定し、液体組成から液相線温度と固相分配係数を算出する工程と、固相分配係数を基に生成する固相とそれに隣接した液相の成分を算出する工程を有する。そして、これらの工程で求められた隣接液相の成分組成から液相の凝固温度を算出する工程と、想定合金温度が凝固温度を下回った時点で新たに生成する固相および液相について上述の計算を繰り返す工程を備えている。
特許文献1に記載の技術は、凝固シミュレーションを用いて偏析を考慮し、液相線温度と固相線温度の差を求め、凝固割れの傾向を求める技術と考えられる。
非特許文献1に記載の技術では、固相率と強度発生の相関、偏析の計算、ひずみを考慮し、固相率0.75と0.95の場合において、温度変化に対するひずみ発生の速度差を指標として用いている。
非特許文献1に記載されている技術は、固相率と強度発生の相関、偏析の計算、ひずみの影響を考慮することで予測精度を向上させていると考えられるが、本願出願人が種々のアルミニウム合金の鋳造について研究したところ、非特許文献1の技術によっても鋳造時の割れ発生状況を十分には把握できないと認識している。
Al合金は、種々の要望に応じて様々な添加元素を加え、新規組成の合金を鋳造する機会も多いが、新たな組成比のAl合金において鋳造前に割れやすい合金であるのか、割れ難い合金であるのかの方向性を把握できることは重要な課題であると考えられる。
(3)本発明に係るAl合金の凝固割れ感受性の予測方法において、前記面積Sは熱力学的データベースによる凝固率を示す関数fdと前記直線を示す関数flとの差の足し算であり、前記fdと前記flは温度Tの関数であり、凝固率0.6~0.8の際の温度をT0.6~0.8、初晶晶出終了時の温度をTeとして以下の(1)式の関係を有することが好ましい。
(7)本発明に係るAl合金の凝固割れ感受性の予測装置において、前記面積Sは熱力学的データベースによる凝固率を示す関数fdと前記直線を示す関数flとの差の足し算であり、前記fdと前記flは温度Tの関数であり、凝固率0.6~0.8の際の温度をT0.6~0.8、初晶晶出終了時の温度をTeとして以下の(1)式の関係を有することが好ましい。
予測するべきAl合金の組成を用い、液相から固相までの温度毎の相変化を求め、求めた温度と凝固率の関係を示す凝固率曲線を求める凝固率曲線策定手段と、
前記凝固率曲線において当該Al合金の凝固率が0.6~0.8の範囲内で任意の第1の位置を策定し、初晶の晶出が終了して前記凝固率曲線にその勾配が不連続な変化点を示す位置か、該変化点を生じない場合は凝固率が0.95となる場合の早い方の位置を第2の位置として策定し、前記第1の位置と前記第2の位置を結ぶ直線を求め、該直線と先に求めた凝固率曲線とで囲まれる領域の面積Sを求める面積算出手段と、予測するべき複数のAl合金の組成に応じて求めた前記複数の面積Sの対比により、前記面積Sの大きい方のAl合金が凝固割れを発生し易いと判断する判断手段として機能させることを特徴とする。
(11)本発明に係るAl合金の凝固割れ感受性の予測プログラムにおいて、前記面積Sは熱力学的データベースによる凝固率を示す関数fdと前記直線を示す関数flとの差の足し算であり、前記fdと前記flは温度Tの関数であり、凝固率0.6~0.8の際の温度をT0.6~0.8、初晶晶出終了時の温度をTeとして以下の(1)式の関係を有することが好ましい。
Al合金において第1の位置は凝固時の強度を持ち始める位置であり、この第1の位置と第2の位置との間の潜熱発生の非線形性の積分値がAl合金凝固時の割れやすさの指標になると考えられる。
Al合金が一定の冷却速度で冷却されると、早くても、遅くても冷却による熱応力は発生しないが、潜熱発生による線形差からのズレの積分値が凝固割れを生じさせるひずみの原因であると考えることができ、このズレの積分値、即ち、面積Sの大小を比較することでAl合金の割れやすさの比較ができる。
本発明の第1実施形態に係る凝固割れ感受性の予測方法は、Al合金の鋳塊を半連続鋳造方法により製造する場合に凝固過程でみられる凝固割れ発生の難易を予測する方法に関する。
ここで、本実施形態に係る凝固割れ感受性の予測方法の詳細について説明する前に、半連続鋳造方法を実施する場合に用いる縦型水冷式の半連続鋳造装置(DC鋳造装置)について図1を参照しつつ説明する。
前記鋳型6内には冷却水Wが満たされており、鋳型6の下方に移動する溶湯2の周囲に鋳型下部の吐出部6aから冷却水Wを供給することで溶湯2を冷却し、所定形状の鋳塊9としてボトムブロック7の上に連続的に鋳造することができるようになっている。
鋳塊9が所定の長さになると、鋳型6への溶湯2の注入とボトムブロック7の引き下げを停止することで所定の形状、大きさの鋳塊9を得ることができる。
なお、ノズル5の先端側周囲部分に図示略のフロート型の湯面制御システムを設けて鋳塊9の上方に形成されている溶湯プール10の流れを制御しても良い。
以下、入力ステップS1と凝固率曲線策定ステップS2を実施する場合に用いて好適な物性値計算ソフトウエアについて説明する。
本実施形態においては、株式会社ユーイーエス・ソフトウエア・アジアが市販している物性値計算ソフトウエアのJmatPro(商品名)を用いて入力ステップS1と凝固率曲線策定ステップS2の主要な部分を実施することができる。
この物性値計算ソフトウエア(JmatPro:商品名)では、凝固物性(凝固率、密度、熱伝導率、エンタルピー、比熱、粘性)を計算によって求めることができる。
この物性値計算ソフトウエアでは、多元系合金の状態図計算として確立された手法として知られるCALPHAD法(CAL-culation of PHAse Diagram)を使用し、合金系に依存する各相のギブスの自由エネルギーを数学的に表現し、エネルギーが最少になる混合状態を計算し、相境界を求め、ギブスの自由エネルギーを表す熱力学パラメーターを実験から求めて熱力学データベースに登録している。
まず、ステップS1において合金成分組成を入力する。この物性値計算ソフトウエアはこの合金成分入力情報に応じて熱力学データベース(サーモテック社データーベース)DB1に基づき、ステップS21において凝固計算にSheile-Gulliver(SG)モデルあるいはScheilの式を使用し、液相から固相までの各温度毎の相変化をCALPHAD法とリンクさせて詳細に計算することができる。
この物性値計算ソフトウエアにおいては、凝固が完了すると、凝固中に形成された固相についての相分率を保持し、固相線以下は鉄合金を除いて相変化はしないものとして各物性値を計算する。
「Si:0.0001~3.3%」
SiはAl合金の固溶強化、析出強化に寄与する成分であり、0.0001%未満は不可避不純物レベルであり、3.3%を超えて含有する場合は25%を超える共晶相が発生し、凝固率0.75がすべて共晶凝固以降となり本予測方法の適用が難しい。凝固割れ感受性の予測方法に適用する場合により望ましいSi含有量は、1.68%以下である。
Al合金において比較的多くの量のSiが入る合金が存在する。多くのSiが入ると共晶相が増加し、強度発現の固相率が合致しなくなる。具体的には、共晶組成が12.6%Si、固溶限は1.1%であり、Siの濃度をX%とし、状態図の液相線を直線と近似すれば、α相と残存液相の比率は、X>1.1において、(12.6-X):(X-1.1)である。本実施形態では固相率0.75~0.95の範囲について論議するが、3.3%Siを超えると共晶温度直上での固相率が0.75を下回るため、本発明で用いる論理が成立しにくくなる。本実施形態の凝固割れ感受性の予測方法に適用する場合、より望ましくは固相率0.95まで共晶が発生しないSi含有量1.68%以下の範囲である。
FeはAl合金の析出強化に寄与する成分であり、0.0001%未満は不可避不純物レベルであり、2.0%を超えて含有する場合は針状晶出物による強度低下、圧延割れを生じるおそれが高くなる。
CuはAl合金の析出強化、電位調整に寄与する成分であり、0.0001%未満は不可避不純物レベルであり、10.0%を超えて含有する場合は脆性的な金属間化合物晶出による耐食性低下を生じるおそれが高くなる。さらに、共晶相の割合も25%に近づくことから、本予測手法の適用が困難となる。
Cuの固溶限は4.9%であるが、共晶組成が33%Cuであり、共晶になる残存液相が増え難いため、後述するMgと同じく上述の理由が優先される。
MnはAl合金の固溶強化、析出強化に寄与する成分であり、0.0001%未満は不可避不純物レベルであり、10.0%を超えて含有する場合は粗大晶出物による加工性の悪化を生じるおそれが高くなる。
Mnの固溶限は1.82%と小さいが、共晶組成も1.95%であり、Mn亜共晶では固相率が低下する問題は起きない。Mn過共晶では一般的な平衡相とされるAl6Mnが晶出するが、Mnの増加によってAl6Mnの晶出温度が高くなり過ぎてしまう。10.0%Mnでの融点が800℃であり、Al合金の溶解温度としては限界に近くなる。Al合金nの溶解温度が800℃より高いと、ガス吸収、酸化物発生量の増加などの問題が起きやすい。
MgはAl合金の固溶強化、析出強化、軽量化に寄与する成分であり、0.0001%未満は不可避不純物レベルであり、10.0%を超えて含有する場合は溶湯流動性悪化を生じ、加工性の悪化を生じるおそれが高くなる。
MgはSiと異なり、固溶限が高く18.9%であり、Siでの事象が起きる前に、上述の理由で10.0%を超える範囲が選択されない。
「Cr:0.0001~1.0%」
CrはAl合金の固溶強化、析出強化に寄与する成分であり、0.0001%未満は不可避不純物レベルであり、1.0%を超えて含有する場合は加工性の悪化を生じるおそれが高くなる。
ZnはAl合金の固溶強化、析出強化、電位調整に寄与する成分であり、0.0001%未満は不可避不純物レベルであり、10.0%を超えて含有する場合は加工性の悪化を生じるおそれが高くなる。Znは固溶限が50%近くと極めて大きく、添加する場合に問題を生じ難い。
「Ti:0.0001~1.0%」
TiはAl合金の固溶強化に寄与し、微細化剤として寄与する成分であり、0.0001%未満は不可避不純物レベルであり、1.0%を超えて含有する場合は粗大晶出物(TiAl3)を生じ、加工性の悪化を生じるおそれが高くなり、溶湯に溶けきらないおそれがある。
NiはAl合金の固溶強化、析出強化に寄与する成分であり、0.0001%未満は不可避不純物レベルであり、1.5%を超えて含有する場合は25%を超える共晶相が発生し、凝固率0.75がすべて共晶凝固以降となり本予測方法の適用が難しい。
「Li:0.00001~5.0%」
LiはAl合金の固溶強化、析出強化、軽量化に寄与する成分であり、0.00001%未満は不可避不純物レベルであり、5.0%を超えて含有する場合は酸化膜が生成され易く、DC鋳造装置の耐火材への侵食の問題を生じやすくなる。
ZrはAl合金の析出強化に寄与する成分であり、0.0001%未満は不可避不純物レベルであり、1.0%を超えて含有する場合は加工性の悪化を生じるおそれが高くなる。
「B:0.0001~1.0%」
BはAl合金の微細化剤として有用な成分であり、0.0001%未満は不可避不純物レベルであり、1.0%を超えて含有する場合は粗大晶出物を生じ易く、溶湯に溶解しないおそれが高くなる。
Pb、BiはAl合金の低融点相の生成に寄与する元素であり、0.0001%未満は不可避不純物レベルとなる。多い場合には熱処理時、時効時などの熱を加える際に容易に液相が生じ、欠陥の原因となり、鋳造時に低融点相の表面へのしみ出しが生じる場合がある。
「V:0.0001~0.5%」
Vは、0.0001%未満は不可避不純物レベルであり、0.5%を超えて含有する場合は加工性の悪化を生じるおそれが高くなる。
以上説明のように、物性値計算ソフトウエアであるJmatPro(商品名)を用いることにより種々の物性値を算出できるが、これらのうち、本実施形態では凝固率を主体として求め、例えば、後述するようにデータの入力と計算により図5に例示する凝固率曲線を策定する。(凝固率曲線策定ステップ:S2)
凝固率については、偏析をScheilの式(液相は完全拡散、固相は拡散なしと仮定)で熱力学計算する。JmatPro(商品名)の初期入力画面でスタート温度を700℃(凝固開始点以上の温度)に設定し、ステップを1℃刻みに設定し、Phases項目のTake all solid phases into account を選択し、Extend calculation 項目のCalculation strength and dendrite arm spacing を選択し、Start caluculation 釦を押して計算をスタートすることができる。
この例の凝固割れ感受性の予測装置12は、所謂コンピュータであって、主として入力手段13と、制御部14と、記憶手段15と、出力手段16を備えている。
入力手段13は、例えば、文字や数字を入力するキーボードなどであり、これによってAl合金の含有元素の種類や添加量などの情報を記憶手段15または制御部14に入力することができる。
制御部14は、所謂CPU(中央演算処理装置)やRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などで構成されており、プログラムによって様々な数値計算や情報処理、機器制御などを行うことができる。
出力手段14は、例えば、モニターやプリンターなどであり、JmatPro(商品名)などのプログラムから得られる各種の情報に加え、後述する凝固率と温度の関係のグラフ、凝固率と温度変化量とひずみ速度差の関係などの情報を画面上又は紙面上に必要に応じて表示または印刷することができる。
また、JmatPro(商品名)から得られた凝固率曲線に基づき、図6に示すように温度変化あたりの凝固率変化を出力し、温度変化あたりのひずみとして、図6に示すグラフの傾きからひずみを求めることができる。
この自動計算を行う場合、図7に示すように凝固率0.95前後の領域に凝固率変化のギャップを示すAl合金が存在する場合がある。このギャップは金属間化合物の析出などにより凝固率の特異点として生成するギャップである。図8にこのギャップGと凝固率の特異点周りを拡大して示す。
凝固率0.75~0.95の範囲に特異点を示すAl合金の場合、ギャップ前後で曲線の傾きが大きく変わるので、この場合は、晶出直前の傾きとなるように値を補正する必要がある。制御部14は凝固率0.75~0.95の範囲にこのようなギャップを確認すると、晶出直前の傾きを補正する。あるいは、この補正は手動で値を採用し、手作業で行っても良い。この手動補正については後に記載する比較例において詳細に説明する。
なお、JmatPro(商品名)で計算する場合、上述の如く1℃毎の温度刻みを設定しているが、新たな相が出るか、消える場合は、その温度を刻み関係なしとして連続的に計算することが望ましい。その場合、小数点以下の温度が出現することがある。図9(C)に示す552.75℃の結果はこのことを意味する。
また、図9(A)に示す#VALUE!、#DIV/0!は、固相率あるいは固相率の差が0であり、ゼロで割る割り算が発生しているため、値が算出されないことを意味し、勾配の具体値は、この例では図9(B)に示す650℃で8.07134がデータとして出され、非線形の差*dtは634℃からデータとして出される。
なお、図9(B)に示す651.02℃は凝固開始の極端な点であるため、この実施形態では通常の凝固中の温度650℃に設定している。
次に制御部14は、先に求めた複数のAl合金の凝固率曲線に対し、それぞれ第1の位置と第2の位置を策定し、第1の位置と第2の位置を結ぶ直線を描き、それぞれの凝固率曲線に対し、直線と凝固率曲線の一部が囲む領域の面積Sを計算する機能を有する。
図11に示すように凝固率曲線を求めたAl合金の種類に応じて面積Sの大きさ順に比較し、面積Sの大きなAl合金ほど、凝固割れ感受性が高く、DC鋳造などの鋳造時に割れが生じ易いAl合金であると把握することができる。
図11に示す例では、AA3104(5Mg)とAA7075が割れやすく、AA2024、AA3104(4Mn)、AA3104(1Si)が割れ難いと判断できる。
このうち、凝固割れ感受性が高く、割れやすいと予測されたAl合金を鋳造する場合には、鋳造割れを生じ難い条件にて該当Al合金を鋳造することが好ましい。
例えば、溶湯温度:700℃、サイズ:幅1200mm、厚さ600mm、長さ4000mm、冷却水量:2000L/min、鋳造速度50mm/minの同一条件で鋳造する場合、AA3104(5Mg)とAA7075が割れやすく、AA2024、AA3104(4Mn)、AA3104(1Si)が割れ難いが合金であると把握している。
なお、図11に示す対比に記載したAA3104(5Mg)の組成は後述する実施例に示す表1の合金9の組成に対応し、AA7075の組成は後述する実施例に示す表1の合金11の組成に対応し、AA2024の組成は後述する実施例に示す表1の合金12の組成に対応し、AA3104(4Mn)の組成は後述する実施例に示す表1の合金6の組成に対応し、AA3104(1Si)の組成は後述する実施例に示す表1の合金3の組成に対応する。
凝固割れ感受性の予測プログラムは、予測装置12を用い、作業者が予測するべきAl合金の組成をJmatPro(商品名)に入力すると、上述のステップS21~S26に従いJmatPro(商品名:凝固率曲線策定手段)に凝固率曲線を描かせる。図9はその一例である。
次いで凝固割れ感受性の予測プログラムは、予測装置12を用い、上述のステップS3に従い、凝固率曲線に第1の位置と第2の位置を策定し、それらを結ぶ直線を描き、凝固率曲線と直線とで囲まれる面積Sを面積算出手段に算出させる。
具体的には、先の(1)式に従い、予測装置12に備えている算出手段17に面積Sを算出させる。
凝固割れ感受性の予測プログラムは、予測するべきAl合金について面積Sの大きさを出力手段16からモニターやプリンターなどに出力し、画面または紙面に面積Sの大きい順に並べて表示するか印刷する機能を有する。この表示機能や印刷機能は、面積Sの小さい順から順次並べて表示する形式でも良く、また、Al合金の種別に応じて面積Sの具体値を表示する形式でも良く、面積Sの値の大小に応じた大小の図形で表示する形式などであっても良い。
Al合金の種別と面積Sの値を図形の大きさで表示した一例を図11に示す。図11に示す例は、面積Sを確定する凝固率曲線の一部と直線をそのままの形状で大きい順に図形表示した一例であり、作業者はこれらの図形を比較参照することで、予測するべきAl合金の凝固割れ発生のし易さを対比したAl合金と比較の上、認識することができる。
これら何れの方法で求めた凝固率曲線であっても本発明方法を実施する場合に適用することができる。
凝固率については、偏析をScheilの式(液相は完全拡散、固相は拡散なしと仮定)で熱力学計算する条件とした。JmatPro(商品名)の初期入力画面でスタート温度を700℃(凝固開始点以上の温度)に設定し、ステップを1℃刻みに設定し、Phases項目のTake all solid phases into account を選択し、Extend calculation 項目のCalculation strength and dendrite arm spacing を選択し、Start calculation 釦を押して計算をスタートした。
次に、凝固率曲線に対し前記第1の位置と第2の位置を結ぶ直線を描き、この直線と凝固率曲線の一部が囲む領域の面積Sを計算した。
面積Sの算出は、先の(1)式に従い、凝固率を示す関数fdと前記直線を示す関数flとの差の足し算を、それぞれの凝固率曲線において凝固率0.75の位置(第1の位置)からそれぞれの凝固率曲線の第2の位置まで行う算出方法により求めた。
以上の算出結果を以下の表2に示す。
また、この例の場合、面積Sの値は0.10~2.79の範囲に分布したので、中間値の1.5を境界として、割れやすいか、割れにくいかの目安の指標とした。
また、A3104合金(合金1)の割れ率を1と仮定し、各Al合金の割れ率を相対表示した。
合わせて、表3に示す組成のAl合金に対し、同様の計算を行って表4の結果を得た。
表2、表4の割れ率は、溶湯温度:700℃、サイズ:幅1200mm、厚さ600mm、長さ4000mm、冷却水量:2000L/min、鋳造速度50mm/minの同一条件で実際に鋳造する場合の各合金の割れ率を示している。
これらの関係を求めるには、図9(A)~(C)に示した数列を表計算ソフトに自動入力し、図9(D)に示すようにT1、T2、R1、R2を抽出し、T1-T2、R1-R2、|R1-R2|/dtの値を計算することで得ることができる。
図12に示す各種Al合金のうち、AA3104(1Si)、AA3104(2Mg)、AA3104(2.8Si)の試料は、いずれも特異点を有し、ひずみ速度差の値が小さすぎるので、補正を行った。
この補正は凝固中の相変化を見て、凝固終盤で共晶相の発現により、温度がほぼ一定となる点がある場合、その点が固相率0.95より前であれば、その点が固相率0.95に代わる値として補正した。
図12と図13において、計算に用いた各合金の組成比は表1、表3に示した通りである。
図10、図11に示す実施例の評価結果と照合した場合、図10、図11に示す結果から導かれて、割れやすいと評価されたAA2024、AA7075、AA3104(5Mg)のうち、図13に示す結果でもAA3104(5Mg)が割れやすいという傾向は見られたが、AA3104(4Mn)は図13の関係に基づく結果では割れやすいと判断されている。
しかし、このAA3104(4Mn)は本発明者が製造現場で実際に鋳造を行った場合に割れ難いと評価される合金である。
AA3104(1Si)は図10、図11に示す本実施形態の予測結果と図13に示す従来技術による予測結果がいずれも割れにくいという、同じ結果となった。
Claims (12)
- 組成に応じた複数のAl合金の凝固時の割れの発生のし易さを予測する方法であって、
予測するべきAl合金の組成を用い、液相から固相までの温度毎の相変化を求め、求めた温度と凝固率の関係を示す凝固率曲線を求める凝固率曲線策定ステップと、
前記凝固率曲線において当該Al合金の凝固率が0.6~0.8の範囲内で任意の第1の位置を策定し、初晶の晶出が終了して前記凝固率曲線にその勾配が不連続な変化点を示す位置か、該変化点を生じない場合は凝固率が0.95となる場合の早い方の位置を第2の位置として策定し、前記第1の位置と前記第2の位置を結ぶ直線を求め、該直線と先に求めた凝固率曲線とで囲まれる領域の面積Sを求める面積算出ステップと、
予測するべき複数のAl合金の組成に応じて求めた前記複数の面積Sの対比により、前記面積Sの大きい方のAl合金が凝固割れを発生し易いと判断する判断ステップを具備することを特徴とするAl合金の凝固割れ感受性の予測方法。 - 温度と固相率との関係を示す熱力学データベースに基づき、凝固計算にScheil-Gulliverの偏析モデルを用いて液相から固相までの温度毎の相変化を計算する方法に基づいて前記凝固率曲線策定ステップを行うか、示差走査熱量計による測定結果に基づいて前記凝固率曲線策定ステップを行うか、示差熱分析結果に基づいて前記凝固率曲線策定ステップを行うことを特徴とする請求項1に記載のAl合金の凝固割れ感受性の予測方法。
- 前記Al合金が、質量%でSi:0.0001~3.3%、Fe:0.0001~2.0%、Cu:0.0001~10.0%、Mn:0.0001~10.0%、Mg:0.0001~10.0%、Cr:0.0001~1.0%、Zn:0.0001~10.0%、Ti:0.0001~1.0%、Ni:0.0001~1.5%、Li:0.0001~5.0%、Zr:0.0001~1.0%、B:0.0001~1.0%、Pb:0.0001~0.5%、Bi:0.0001~0.5%、V:0.0001~0.5%のうち、1種または2種以上を含み、残部Al及び不可避不純物からなり、凝固後のAl合金のα相の体積率が80%以上であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のAl合金の凝固割れ感受性の予測方法。
- 組成に応じた複数のAl合金の凝固時の割れの発生のし易さを予測する装置であって、
予測するべきAl合金の組成を用い、液相から固相までの温度毎の相変化を求め、求めた温度と凝固率の関係を示す凝固率曲線を求める凝固率曲線策定手段と、
前記凝固率曲線において当該Al合金の凝固率が0.6~0.8の範囲内で任意の第1の位置を策定し、初晶の晶出が終了して前記凝固率曲線にその勾配が不連続な変化点を示す位置か、該変化点を生じない場合は凝固率が0.95となる場合の早い方の位置を第2の位置として策定し、前記第1の位置と前記第2の位置を結ぶ直線を求め、該直線と先に求めた凝固率曲線とで囲まれる領域の面積Sを求める面積算出手段と、
予測するべき複数のAl合金の組成に応じて求めた前記複数の面積Sの対比により、前記面積Sの大きい方のAl合金が凝固割れを発生し易いと判断する判断手段を具備することを特徴とするAl合金の凝固割れ感受性の予測装置。 - 前記凝固率曲線策定手段が、温度と固相率との関係を示す熱力学データベースに基づき、凝固計算にScheil-Gulliverの偏析モデルを用いて液相から固相までの温度毎の相変化を計算する手段であることを特徴とする請求項5に記載のAl合金の凝固割れ感受性の予測装置。
- 前記Al合金が、質量%でSi:0.0001~3.3%、Fe:0.0001~2.0%、Cu:0.0001~10.0%、Mn:0.0001~10.0%、Mg:0.0001~10.0%、Cr:0.0001~1.0%、Zn:0.0001~10.0%、Ti:0.0001~1.0%、Ni:0.0001~1.5%、Li:0.0001~5.0%、Zr:0.0001~1.0%、B:0.0001~1.0%、Pb:0.0001~0.5%、Bi:0.0001~0.5%、V:0.0001~0.5%のうち、1種または2種以上を含み、残部Al及び不可避不純物からなり、凝固後のAl合金のα相の体積率が80%以上であることを特徴とする請求項5~請求項7のいずれか一項に記載のAl合金の凝固割れ感受性の予測装置。
- 組成に応じた複数のAl合金の凝固時の割れの発生のし易さを予測するプログラムであって、コンピューターを、
予測するべきAl合金の組成を用い、液相から固相までの温度毎の相変化を求め、求めた温度と凝固率の関係を示す凝固率曲線を求める凝固率曲線策定手段と、
前記凝固率曲線において当該Al合金の凝固率が0.6~0.8の範囲内で任意の第1の位置を策定し、初晶の晶出が終了して前記凝固率曲線にその勾配が不連続な変化点を示す位置か、該変化点を生じない場合は凝固率が0.95となる場合の早い方の位置を第2の位置として策定し、前記第1の位置と前記第2の位置を結ぶ直線を求め、該直線と先に求めた凝固率曲線とで囲まれる領域の面積Sを求める面積算出手段と、
予測するべき複数のAl合金の組成に応じて求めた前記複数の面積Sの対比により、前記面積Sの大きい方のAl合金が凝固割れを発生し易いと判断する判断手段として機能させることを特徴とするAl合金の凝固割れ感受性の予測プログラム。 - 前記凝固率曲線策定手段が、温度と固相率との関係を示す熱力学データベースに基づき、凝固計算にScheil-Gulliverの偏析モデルを用いて液相から固相までの温度毎の相変化を計算する手段であることを特徴とする請求項9に記載のAl合金の凝固割れ感受性の予測プログラム。
- 前記Al合金が、質量%でSi:0.0001~3.3%、Fe:0.0001~2.0%、Cu:0.0001~10.0%、Mn:0.0001~10.0%、Mg:0.0001~10.0%、Cr:0.0001~1.0%、Zn:0.0001~10.0%、Ti:0.0001~1.0%、Ni:0.0001~1.5%、Li:0.0001~5.0%、Zr:0.0001~1.0%、B:0.0001~1.0%、Pb:0.0001~0.5%、Bi:0.0001~0.5%、V:0.0001~0.5%のうち、1種または2種以上を含み、残部Al及び不可避不純物からなり、凝固後のAl合金のα相の体積率が80%以上であるAl合金に適用することを特徴とする請求項10または請求項11に記載のAl合金の凝固割れ感受性の予測プログラム。
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