JP7126321B2 - Alボンディングワイヤ - Google Patents
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Description
[1]質量%で、Scを0.01~1%含有し、さらにY、La、Ce、Pr、Ndの少なくとも1種以上を合計で0.01~0.1%含有し、残部がAl及び不可避不純物からなることを特徴とするAlボンディングワイヤ。
[2]ワイヤ長手方向に垂直な断面(以下、「C断面」ともいう。)における平均結晶粒径が0.1~50μmであることを特徴とする上記[1]に記載のAlボンディングワイヤ。
[3]ワイヤ長手方向に垂直な断面(C断面)において、結晶<111>方位とワイヤ長手方向との角度差が15°以内である結晶の面積比率が30~90%であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のAlボンディングワイヤ。
[4]ビッカース硬度がHv20~40の範囲であることを特徴とする上記[1]から[3]までのいずれか1つに記載のAlボンディングワイヤ。
[5]ワイヤ直径が50~600μmであることを特徴とする上記[1]から[4]までのいずれか1つに記載のAlボンディングワイヤ。
使用したボンディングワイヤの成分は、Scのみを0.5質量%含有する比較例のAlボンディングワイヤと、Scを0.5%、Yを0.1%含有する本発明のAlボンディングワイヤである。伸線後のワイヤ線径は200μmである。伸線工程の途中で溶体化熱処理を実施してSc及びYを強制固溶させるとともに、伸線後のワイヤに調質熱処理を施して、ボンディングワイヤのビッカース硬度をHv40以下に調整した。
Alボンディングワイヤ中にScを0.01%以上含有することにより、下記Y、La等との複合添加効果と相まって、ワイヤの析出強化効果、及び半導体装置の高温長時間使用中における再結晶の進行防止効果を発揮することができる。Scが0.1%以上であればより好ましい。0.5%以上であればさらに好ましい。一方、Sc含有量が1%を超えると、ワイヤ硬度が高くなりすぎ、チップクラックの発生、接合性の悪化、接合部信頼性の低下などを起こすため、上限を1%とした。Scが0.8%以下であるとより好ましい。
Y、La、Ce、Pr、Ndの少なくとも1種以上(Y、La等)を合計で0.01%以上含有することにより、上記Scとの複合添加効果と相まって、ワイヤの析出強化効果、及び半導体装置の高温長時間使用中における再結晶の進行防止効果を発揮することができる。Y、La、Ce、Pr、Ndのいずれであっても、同じように効果を発揮する。Y、La等の合計含有量が0.03%以上であればより好ましい。0.05%以上であればさらに好ましい。一方、Y、La等の合計含有量が0.1%を超えると、ワイヤ硬度が高くなりすぎ、チップクラックの発生、接合性の悪化、接合部信頼性の低下などを起こすため、上限を0.1%とした。Y、La等の合計含有量が0.08%以下であるとより好ましい。
本発明において好ましくは、ボンディングワイヤのワイヤ長手方向に垂直な断面(C断面)における平均結晶粒径が0.1~50μmである。平均結晶粒径の測定方法としては、EBSD(Electron Back Scatter Diffraction Patterns)などの測定方法を用いて各結晶粒の面積を求め、各結晶粒の面積を円に見なした時の直径の平均とする。平均結晶粒径が0.1μm以上であれば、伸線時の調質熱処理による再結晶が適度に進行しており、ワイヤ製造の過程で溶体化熱処理を行ってワイヤ含有成分を強制固溶することと相まって、ワイヤが軟化し、ボンディング時のチップ割れの発生、接合部の接合性の低下などを防止することができる。一方、平均結晶粒径が50μmを超えると、ワイヤの再結晶が進行しすぎていることを示し、時効熱処理で析出物を形成しても十分な強度を得ることができにくく、接合部の信頼性が低下する恐れがある。ワイヤ伸線の過程で調質熱処理を行うことにより、ワイヤのC断面における平均結晶粒径を0.1~50μmとすることができる。
本発明において好ましくは、ボンディングワイヤ長手方向に垂直な断面(C断面)において、結晶<111>方位とワイヤ長手方向との角度差が15°以内である結晶の面積比率(以下「<111>方位面積率」という。)が30~90%である。<111>方位面積率の測定には、EBSDを用いることができる。ボンディングワイヤ長手方向に垂直な断面を検査面とし、装置に付属している解析ソフトを利用することにより、<111>方位面積率を算出できる。<111>方位面積率が90%以下であれば、伸線時の調質熱処理による再結晶が適度に進行し、ワイヤ製造の過程で溶体化熱処理を行ってワイヤ含有成分を強制固溶することと相まって、ワイヤが軟化し、ボンディング時のチップ割れの発生、接合部の接合性の低下などを防止することができる。一方、<111>方位面積率が30%未満であると、ワイヤの再結晶が進行しすぎていることを示し、時効熱処理で析出物を形成しても十分な強度を得ることができにくく、接合部の信頼性が低下する恐れがある。ワイヤ伸線の過程で調質熱処理を行うことにより、ワイヤ長手方向に垂直な断面における<111>方位面積率を30~90%とすることができる。
本発明において好ましくは、ボンディングワイヤのワイヤ長手方向に垂直な断面(C断面)において、ビッカース硬度がHv20~40の範囲である。Hv40以下とすることにより、ボンディング時にチップ割れを発生することなく、良好な接合性を実現し、また容易にループを形成して半導体装置に対する配線を行うことができる。一方、ビッカース硬度がHv20未満まで低下すると、ワイヤの再結晶が進行しすぎていることを示し、時効熱処理で析出物を形成しても十分な強度を得ることができにくく、接合部の信頼性が低下する恐れがある。そのため、ビッカース硬度の下限はHv20とすると好ましい。前述のとおり、ワイヤ製造の過程で溶体化熱処理を行ってワイヤ含有成分を強制固溶し、さらに伸線の過程で調質熱処理を行うことにより、ワイヤのビッカース硬度をHv20~40の範囲とすることができる。
本発明において好ましくは、ボンディングワイヤ直径が50~600μmである。パワー系デバイスには大電流が流れるため一般的に50μm以上のワイヤが使用されるが、600μm以上になると扱いづらくなることやワイヤボンダーが対応していないため、600μm以下のワイヤが使用されている。
平均結晶粒径の測定は、EBSD法を用いて各結晶粒の面積を求め、各結晶粒の面積を円の面積に換算してその直径の平均として行った。
<111>方位面積率の測定は、ボンディングワイヤ長手方向に垂直な断面においてEBSPによる測定を行い、装置に付属している解析ソフトを利用することにより、<111>方位面積率を算出した。
ビッカース硬度の測定は、マイクロビッカース硬度計を用い、C断面のうちの半径方向の中心位置における硬度として測定を行った。
半導体装置におけるチップクラック評価については、パッド表面の金属を酸にて溶かし、パッド下のチップクラックの有無を顕微鏡にて観察して評価した。クラックなしを○とし、クラック有りを×として、表1、2の「チップクラック」欄に記載した。
比較例No.1~3は、Sc含有量が本発明下限未満であり、いずれも、信頼性評価結果が「×」であった。また、高温長時間履歴後のワイヤ内質を評価したところ、比較例No.1~3のいずれも、平均結晶粒径が50μmを超えていた。ワイヤ中のScが不足し、時効熱処理後においても機械的強度が十分に上昇せず、再結晶温度も十分に上昇せず、高温長時間履歴において再結晶が過度に進行したためと推定される。比較例No.1はさらにY、La等の合計含有量が本発明下限未満である。比較例No.3はさらにY、La等の合計含有量が本発明上限を超えており、ボンディング後の接合性、チップクラックが「×」であった。
比較例No.6は、Y、La等の合計含有量が本発明の上限を超えている。その結果、ワイヤのビッカース硬度は好適範囲外であった。また、ボンディング後の接合性、チップクラックは「×」であり、信頼性評価結果は「×」であった。
Claims (5)
- 質量%で、Scを0.01~1%含有し、さらにY、La、Ce、Pr、Ndの少なくとも1種以上を合計で0.01~0.1%含有し、残部がAl及び不可避不純物からなることを特徴とするAlボンディングワイヤ。
- ワイヤ長手方向に垂直な断面における平均結晶粒径が0.1~50μmであることを特徴とする請求項1に記載のAlボンディングワイヤ。
- ワイヤ長手方向に垂直な断面において、結晶<111>方位とワイヤ長手方向との角度差が15°以内である結晶の面積比率が30~90%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のAlボンディングワイヤ。
- ビッカース硬度がHv20~40の範囲であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のAlボンディングワイヤ。
- ワイヤ直径が50~600μmであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のAlボンディングワイヤ。
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