JP7080942B2 - 電子部品用めっき材料及び電子部品 - Google Patents
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Description
前記下地めっき層の上に設けられた、In-Ni-Sn合金からなる中間層と、
前記中間層の上に設けられた、In-Sn合金からなる表層と、
を備え、前記表層の組成は、Sn12~63at.%、及び、残部Inであり、前記In-Ni-Sn合金の一部が表面に露出している電子部品用めっき材料である。
本発明の実施形態に係るめっき材料は、基材上に下地めっき層が設けられ、下地めっき層上に中間層が設けられ、中間層上に表層が設けられている。
基材としては、特に限定されないが、例えば、銅及び銅合金、Fe系材、ステンレス、チタン及びチタン合金、アルミニウム及びアルミニウム合金などの金属基材を用いることができる。また、金属基材に樹脂層を複合させたものであっても良い。金属基材に樹脂層を複合させたものとは、例としてFPCまたはFFC基材上の電極部分などがある。
下地めっき層は、基材上に設けられており、NiまたはNi合金からなる。NiまたはNi合金によって下地めっき層を形成することで、硬い下地めっき層により真実接触面積が減り、凝着しにくくなり、摩擦(挿入力)が低下する。また、下地めっき層が、基材の構成金属の表層への拡散を防止して耐熱性やはんだ濡れ性などを向上させる。下地めっき層のNi合金は、Niと、Cr、Mn、P、Fe及びCoからなる群であるA構成化合物群から選択された1種又は2種以上とで構成することができる。下地めっき層の構成金属として、半光沢Ni、光沢Niを使用した場合はS等の添加剤による有機物を含有しても良い。
中間層は、下地めっき層の上に設けられており、In-Ni-Sn合金からなる。このような構成を有する中間層は、柔らかい表層の厚みを減らし、見かけ上の硬度が高くなり、摩擦力を低減する。中間層の組成は、Ni70at.%以下、及び、残部がIn及びSnであるのが好ましい。
表層は、中間層の上に設けられており、In-Sn合金からなる。このような構成によれば、低摩擦(低挿入力)、及び、低ウィスカ性のめっき材を得ることができる。
本発明の実施形態に係るめっき材料の製造方法としては、まず、基材上に、NiまたはNi合金層を設け、さらに、InとSnとを積層させてめっきする。当該めっきとしては、湿式(電気、無電解)めっきを用いることができる。また、乾式(スパッタ、イオンプレーティング等)めっき等を用いてもよい。めっき後は、リフロー処理(加熱処理)をすることで、本発明の実施形態に係るめっき材料を形成することができる。
上述のように、リフロー処理を施した後に、表層上に、更に摩擦を低下させ、また低ウィスカ性及び耐久性も向上させる目的で後処理を施しても良い。後処理によって潤滑性や耐食性が向上し、酸化が抑制されて、耐熱性やはんだ濡れ性等の耐久性を向上させることができる。具体的には、一般的な電子材料用のコンタクトオイルや酸化防止剤などが該当する。
本発明の実施形態に係るめっき材料の用途は特に限定しないが、例えば電子部品用金属材料として使用することができ、当該電子部品用金属材料を接点部分に備えたコネクタ端子、電子部品用金属材料を接点部分に備えたFFC端子またはFPC端子、電子部品用金属材料を外部接続用電極に備えた電子部品などが挙げられる。なお、端子については、圧着端子、はんだ付け端子、プレスフィット端子等、配線側との接合方法によらない。外部接続用電極には、タブに表面処理を施した接続用部品や半導体のアンダーバンプメタル用に表面処理を施した材料などがある。
実施例及び比較例として、下記の素材に対し、電解脱脂、酸洗をこの順で行った。次に、表1に示す条件で、第1めっき、第2めっき、第3めっき、リフロー処理、後処理の順に実施し、めっき材料のサンプルを製造した。第1~第3めっきの厚さは、それぞれ、挿入力の低減効果、中間層が露出し過ぎない程度に、リフロー条件と合わせて適宜決定することができる。
(1)板材:厚み0.20mm、幅25mm、成分Cu-30Zn
(2)オス端子:厚み0.64mm、幅0.64mm、成分Cu-30Zn
・無光沢Niめっき
めっき方法:電気めっき
めっき液:スルファミン酸Niめっき液
めっき温度:55℃
電流密度:0.5~4A/dm2
・Snめっき
めっき方法:電気めっき
めっき液:メタンスルホン酸Snめっき液
めっき温度:40℃
電流密度:0.5~4A/dm2
・Inめっき
めっき方法:電気めっき
めっき液:硫酸Inめっき液
めっき温度:30℃
電流密度:0.5~8A/dm2
リフロー処理は、電気管状炉を650℃に設定し、電気管状炉内におかれたサンプルが160℃~300℃に達したことを熱電対で確認して、表1に示す処理時間及び温度で実施した。
実施例6、7については、下記の条件によって後処理を行った。
・後処理剤:株式会社テトラ製1988k2
・後処理剤の組成:飽和炭化水素系ワックス
・処理方法:めっき材の表層表面にスプレー噴射し、温風乾燥
得られた試料の中間層、表層の構造の決定及び厚さ測定は、STEM(走査型電子顕微鏡)分析による線分析で行った。分析した元素は、中間層、表層の組成と、Oである。これら元素を指定元素とする。また、指定元素の合計を100%として、各元素の濃度(at.%)を分析した。
・中間層合金露出率
以下の評価方法によって、実施例2~5に係る試料の表面における、中間層を構成するIn-Ni-Sn合金の露出面積率を評価した。
まず、EPMA:電子プローブマイクロアナライザー(JXA-8500F、日本電子株式会社製)を用いて、面分析により試料の表面を測定した。
走査:ステージスキャン
加圧電流:8.0kv、15.0kv
照射電流:5.034×10-8A、2.481×10-8A、2.477×10-8A、2.480×10-8A
測定倍率:1000倍
時間:25ms、35ms
測定点数:370×280、230×170
測定間隔:(X軸、Y軸)=(0.30μm、0.30μm)、(0.50μm、0.50μm)
1.InとSnとNiの面分析の結果を表示する。例として、実施例2の当該面分析結果を図1に示す。
2.当該面分析結果で表示されるNiは、中間層のIn-Ni-Sn合金に由来するNiである。そのため、Niが表示されている領域は、In-Ni-Sn合金の一部が表面に露出している領域と判定し、当該領域を線分で囲った。例として、実施例2の当該線分で囲ったIn-Ni-Sn合金露出領域を図2に示す。また、上記In-Ni-Sn合金露出領域の試料表面における面積率を算出した。この算出結果を、表2の「中間層合金露出率(%):EPMA」に示す。
3.また、上記In-Ni-Sn合金露出領域の試料表面における面積率を以下の手順で二値化した。
(1)図2に示した面分析画像をtextデータで保存し、表計算ソフトのエクセル(マイクロソフト社製)に貼り付け、全セル数の最大値、最小値を算出し、対応した黒(黒から白にグラデーションがかかる)を付ける。
(2)上記数値が20以上のセルの数を数え、全セル数で割る。なお、数値が20以上のものを算出したのは、二値化前の画像と変わらないと判断したためである。
当該二値化したEPMA画像の例を図7に示す。また、当該二値化の結果を表2の「中間層合金露出率(%):二値化」に示す。当該二値化の評価において、実施例2~5の試料は、いずれも中間層合金露出率が35%以下となった。
透過電子顕微鏡:TEM(日本電子株式会社製JEM-2100F)を用いて、加速電圧:200kVとして、実施例2~5に係る試料の断面分析を行った。
得られた試料の挿入力は、市販のSnリフローめっきメス端子(025型住友TS/矢崎090IIシリーズメス端子非防水)を用いてめっきを施したオス端子と挿抜試験することによって評価した。また、挿入力低減率は、以下の式で算出した。
挿入力低減率=(測定した挿入力/比較例1の挿入力)×100(%)
接触抵抗は山崎精機研究所製の精密摺動試験装置CRS-G2050型を用い、接点荷重3Nに設定し、四端子法にて測定した。コネクタを模倣するため、接点部の凸材はSnめっき板材(Cu-30ZnにSnを1μmめっき)をφ3mmの半球状に加工したものを使用した。当該接触抵抗を表2に「接触抵抗(初期)」として示す。
耐熱性は、大気加熱(180℃、120時間以上)試験後のサンプルの接触抵抗を測定し、評価した。目標とする特性は、接触抵抗10mΩ以下である。当該接触抵抗を表2に「接触抵抗(180℃加熱後)」として示す。
実施例1~7は、低挿入力を有するめっき材料であった。また、耐熱性試験において、120時間以上の加熱後も、接触抵抗が10mΩ以下と良好な値であり、低接触抵抗、高温耐久性が良好であった。実施例2、6については、耐熱性(接触抵抗)の評価は未実施であるが、実施例1、3~5、7の結果から同様に、良好な評価が得られるものと考えられる。
比較例2は表層がInめっきであり、挿入力低減率が20%に届かなかった。実施したリフロー条件では、中間層の成長が不十分であったためと思われる。またIn単独では製造コストが上がる問題がある。
比較例3は、表層の組成において、Snが多いため、凝着しやすく、挿入力が高めであった。
比較例4は比較例3より高温でリフローを実施し、中間層の成長を狙ったが、挿入力の改善はみられなかった。
比較例5はInの融点に届かないリフロー条件であるため、表面形態がInの電着粒を反映しており、柔らかくかつ流れていた。そのため、接触面積が大きく、挿入力があまり下がらなかった。
Claims (3)
- 基材の表面に設けられた、NiまたはNi合金からなる下地めっき層と、
前記下地めっき層の上に設けられた、In-Ni-Sn合金からなる中間層と、
前記中間層の上に設けられた、In-Sn合金からなる表層と、
を備え、前記表層の組成は、Sn12~63at.%、及び、残部Inであり、前記In-Ni-Sn合金の一部が表面に露出している電子部品用めっき材料。 - 前記電子部品用めっき材料の表面における、前記In-Ni-Sn合金の露出面積率が35%以下である請求項1に記載の電子部品用めっき材料。
- 請求項1または2に記載の電子部品用めっき材料を備えた電子部品。
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