以下に説明する実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、実施形態及び変形例に限定されることなく、この実施形態及び変形例以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態及び変形例において、説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
(実施形態1)
本実施形態に係る接点装置1及び電磁継電器100について、図1A〜図10を用いて説明する。
(1)構成
(1.1)全体構成
本実施形態に係る電磁継電器100は、接点装置1と、電磁石装置10とを備えている。接点装置1は、一対の固定端子31,32と、可動接触子8とを有する(図1B参照)。各固定端子31,32は、固定接点311,321を保持する。可動接触子8は、一対の可動接点81,82を保持する。
電磁石装置10は、可動子13及び励磁コイル14を有している(図1B参照)。電磁石装置10は、励磁コイル14への通電時に励磁コイル14で生じる磁界によって可動子13を吸引する。可動子13の吸引に伴って、可動接触子8が開位置から閉位置に移動する。本開示でいう「開位置」は、可動接点81,82が固定接点311,321から離れるときの可動接触子8の位置である。本開示でいう「閉位置」は、可動接点81,82が固定接点311,321に接触するときの可動接触子8の位置である。
また、本実施形態では、可動子13は、直線L上に配置され、直線Lに沿って直進往復移動するように構成されている。励磁コイル14は、直線Lの周りに巻かれた導線(電線)にて構成されている。つまり、直線Lは、励磁コイル14の中心軸に相当する。
本実施形態では、接点装置1が、図1Aに示すように電磁石装置10と共に電磁継電器100を構成する場合を例として説明する。ただし、接点装置1は、電磁継電器100に限らず、例えばブレーカ(遮断器)又はスイッチ等に用いられていてもよい。本実施形態においては、電磁継電器100が電気自動車に搭載される場合を例とする。この場合において、走行用のバッテリから負荷(例えば、インバータ)への直流電力の供給路上に、接点装置1(固定端子31,32)が電気的に接続される。
(1.2)接点装置
次に、接点装置1の構成について説明する。
接点装置1は、図1A及び図1Bに示すように、一対の固定端子31,32、可動接触子8、筐体4、フランジ5及び2本のバスバー21,22を備える。接点装置1は、更に、第1ヨーク6、第2ヨーク7、磁気シールド部材9、2つのカプセルヨーク23,24、2つの消弧用磁石(永久磁石)25,26、絶縁板41及びスペーサ45を備える。固定端子31は固定接点311を、固定端子32は固定接点321を、それぞれ保持している。可動接触子8は、導電性を有する金属材料からなる板状の部材である。可動接触子8は、一対の固定接点311,321に対向して配置された一対の可動接点81,82を保持している。
以下では、説明のために固定接点311,321と可動接点81,82との対向方向を上下方向と定義し、可動接点81,82から見て固定接点311,321側を上方と定義する。さらに、一対の固定端子31,32(一対の固定接点311,321)の並んでいる方向を左右方向と定義し、固定端子31から見て固定端子32側を右方と定義する。つまり、以下では、図1Bの上下左右を上下左右として説明する。また、以下では、上下方向及び左右方向の両方に直交する方向(図1Bの紙面に直交する方向)を、前後方向として説明する。ただし、これらの方向は接点装置1及び電磁継電器100の使用形態を限定する趣旨ではない。
一方の(第1)固定接点311は一方の(第1)固定端子31の下端部(一端部)に保持されており、他方の(第2)固定接点321は他方の(第2)固定端子32の下端部(一端部)に保持されている。
一対の固定端子31,32は、左右方向に並ぶように配置されている(図1B参照)。一対の固定端子31,32の各々は、導電性の金属材料からなる。一対の固定端子31,32は、一対の固定接点311,321に外部回路(バッテリ及び負荷)を接続するための端子として機能する。本実施形態では、一例として銅(Cu)で形成された固定端子31,32を用いることとするが、固定端子31,32を銅製に限定する趣旨ではなく、固定端子31,32は銅以外の導電性材料で形成されていてもよい。
一対の固定端子31,32の各々は、上下方向に直交する平面内での断面形状が円形状となる円柱状に形成されている。ここでは、一対の固定端子31,32の各々は、上端部(他端部)側の径が下端部(一端部)側の径よりも大きく、正面視がT字状となるように構成されている。一対の固定端子31,32は、筐体4の上面から一部(他端部)が突出した状態で、筐体4に保持される。具体的には、一対の固定端子31,32の各々は、筐体4の上壁に形成されている開口孔を貫通した状態で、筐体4に固定されている。
可動接触子8は、上下方向に厚みを有し、かつ前後方向よりも左右方向に長い板状に形成されている。可動接触子8は、その長手方向(左右方向)の両端部を一対の固定接点311,321に対向させるように、一対の固定端子31,32の下方に配置されている(図1B参照)。可動接触子8のうち、一対の固定接点311,321に対向する部位には、一対の可動接点81,82が設けられている(図1B参照)。
可動接触子8は、筐体4に収納されている。可動接触子8は、筐体4の下方に配置された電磁石装置10によって上下方向に移動される。これにより、可動接触子8は、閉位置と開位置との間で移動することになる。図1Bは、可動接触子8が閉位置に位置する状態を示しており、この状態では、可動接触子8に保持されている一対の可動接点81,82が、それぞれ対応する固定接点311,321に接触する。一方、可動接触子8が開位置に位置する状態では、可動接触子8に保持されている一対の可動接点81,82が、それぞれ対応する固定接点311,321から離れる。
したがって、可動接触子8が閉位置にあるとき、一対の固定端子31,32間は可動接触子8を介して短絡する。すなわち、可動接触子8が閉位置にあれば、可動接点81,82が固定接点311,321に接触するので、固定端子31は、固定接点311、可動接点81、可動接触子8、可動接点82及び固定接点321を介して、固定端子32と電気的に接続される。そのため、バッテリ及び負荷の一方に固定端子31が電気的に接続され、他方に固定端子32が電気的に接続されていれば、可動接触子8が閉位置にあるときに、接点装置1はバッテリから負荷への直流電力の供給路を形成する。
ここで、可動接点81,82は、可動接触子8に保持されていればよい。そのため、可動接点81,82は、可動接触子8の一部が打ち出されるなどして可動接触子8と一体に構成されていてもよいし、可動接触子8とは別部材からなり、例えば溶接等により、可動接触子8に固定されていてもよい。同様に、固定接点311,321は、固定端子31,32に保持されていればよい。そのため、固定接点311,321は、固定端子31,32と一体に構成されていてもよいし、固定端子31,32とは別部材からなり、例えば溶接等により、固定端子31,32に固定されていてもよい。
可動接触子8は、中央部位に貫通孔83を有している。本実施形態では、貫通孔83は、可動接触子8における一対の可動接点81,82の中間に形成されている。貫通孔83は、可動接触子8を厚み方向(上下方向)に貫通している。貫通孔83は、後述するシャフト15を通すための孔である。
第1ヨーク6は、強磁性体であって、例えば、鉄等の金属材料で形成されている。第1ヨーク6は、シャフト15の先端部(上端部)に固定されている。シャフト15は、可動接触子8の貫通孔83を通して可動接触子8を貫通しており、シャフト15の先端部(上端部)は、可動接触子8の上面から上方に突出する。そのため、第1ヨーク6は、可動接触子8の上方に位置する(図1B参照)。具体的には、第1ヨーク6は、可動接触子8の移動方向において、可動接触子8に対して固定接点311,321が存在する側と同一側に位置している。
可動接触子8が閉位置に位置する場合に、可動接触子8と第1ヨーク6との間には、所定の隙間L1が生じる(図5参照)。つまり、可動接触子8の位置が閉位置である場合に、第1ヨーク6は、上下方向において隙間L1の分だけ可動接触子8から離れることになる。例えば、可動接触子8、シャフト15及び第1ヨーク6の間で少なくとも一部が電気的に絶縁されている場合には、可動接触子8と第1ヨーク6との間の電気的な絶縁性が確保される。
第2ヨーク7は、強磁性体であって、例えば、鉄等の金属材料で形成されている。第2ヨーク7は、可動接触子8の下面に固定されている(図1B参照)。これにより、第2ヨーク7は、可動接触子8の上下方向の移動に伴って上下方向に移動する。第2ヨーク7の上面(特に、可動接触子8と接触する部位)には、電気絶縁性を有する絶縁層90が形成されてもよい(図5参照)。これにより、可動接触子8と第2ヨーク7との間の電気的な絶縁性が確保される。図1B、及び図2等においては、絶縁層90の図示を適宜省略する。
第2ヨーク7は、中央部位に貫通孔71を有している。本実施形態では、貫通孔71は、可動接触子8の貫通孔83に対応する位置に形成されている。貫通孔71は、第2ヨーク7を厚み方向(上下方向)に貫通している。貫通孔71は、シャフト15及び後述する接圧ばね17を通すための孔である。
第2ヨーク7は、前後方向の両端部に、上方に突出する一対の突出部72,73(図2参照)を有している。言い換えれば、第2ヨーク7の上面における前後方向の両端部には、可動接触子8が開位置から閉位置へと移動する向き(本実施形態では上方)と同じ向きに突出する突出部72,73が形成されている。つまり、第2ヨーク7は、可動接触子8の移動方向において、可動接触子8に対して固定接点311,321が存在する側とは反対側に少なくとも一部が位置している。
このような形状によれば、図4Bに示すように、一対の突出部72,73のうちの前方の突出部72の先端面(上端面)は、第1ヨーク6の前端部61に、後方の突出部73の先端面(上端面)は、第1ヨーク6の後端部62にそれぞれ突き合わされる。したがって、図4Bに例示する向きで、可動接触子8を電流Iが流れた場合には、第1ヨーク6及び第2ヨーク7で形成される磁路を通る磁束φ1が生じる。このとき、第1ヨーク6の前端部61及び突出部73の先端面がN極、第1ヨーク6の後端部62及び突出部72の先端面がS極となることで、第1ヨーク6と第2ヨーク7との間に吸引力が作用する。
カプセルヨーク23,24は、強磁性体であって、例えば、鉄等の金属材料で形成されている。カプセルヨーク23,24は、消弧用磁石25,26を保持する。カプセルヨーク23,24は、前後方向の両側から筐体4を囲むように、筐体4に対して前後方向の両側に配置されている(図6参照)。図6では、バスバー21,22の図示を省略している。
消弧用磁石25,26は、左右方向において互いに異極が対向するように配置されている。言い換えると、消弧用磁石25,26は、可動接触子8に流れる電流Iの方向の延長線上に配置されている。消弧用磁石25,26は、筐体4に対して左右方向の両側に配置されている。消弧用磁石25,26は、可動接触子8が閉位置から開位置へと移動する際に可動接点81,82と固定接点311,321との間で発生するアークを引き延ばす。カプセルヨーク23,24は、消弧用磁石25,26ごと筐体4を囲んでいる。言い換えれば、消弧用磁石25,26は、筐体4の左右方向の両端面とカプセルヨーク23,24との間に挟まれている。一方(左方)の消弧用磁石25は、左右方向における一面(左端面)がカプセルヨーク23,24の一端部と結合し、左右方向における他面(右端面)が筐体4と結合している。他方(右方)の消弧用磁石26は、左右方向における一面(右端面)がカプセルヨーク23,24の他端部と結合し、左右方向における他面(左端面)が筐体4と結合している。消弧用磁石25,26は、左右方向において互いに異極が対向するように配置されているが、同極が対向するように配置されてもよい。
本実施形態では、可動接触子8の位置が閉位置である場合において、消弧用磁石25と消弧用磁石26との間に、一対の固定接点311,321における一対の可動接点81,82との接触点が位置する(図1B参照)。つまり、消弧用磁石25と消弧用磁石26との間に生じる磁界内に、一対の固定接点311,321における一対の可動接点81,82との接触点が含まれることになる。
上述した構成によれば、図6に示すように、カプセルヨーク23は、一対の消弧用磁石25,26で発生する磁束φ2が通る磁気回路の一部を形成する。同様に、カプセルヨーク24は、一対の消弧用磁石25,26で発生する磁束φ2が通る磁気回路の一部を形成する。これらの磁束φ2は、可動接触子8の位置が閉位置である状態で、一対の固定接点311,321における一対の可動接点81,82との接触点に作用する。
図6の例では、筐体4の内部空間においては、左向きの磁束φ2が生じており、固定端子31には下向きの電流Iが流れ、固定端子32には上向きの電流Iが流れる場合を想定している。この状態で、可動接触子8が閉位置から開位置へと移動すると、固定接点311と可動接点81との間には、固定接点311から可動接点81に向けて下向きの放電電流(アーク)が生じる。したがって、磁束φ2によりアークには後向きのローレンツ力F2が作用する(図6参照)。つまり、固定接点311と可動接点81との間に発生するアークは、後方に引き延ばされて消弧する。一方、固定接点321と可動接点82との間には、可動接点82から固定接点321に向けて上向きの放電電流(アーク)が生じる。したがって、磁束φ2によりアークには前向きのローレンツ力F3が作用する(図6参照)。つまり、固定接点321と可動接点82との間に発生するアークは、前方に引き延ばされて消弧する。
筐体4は、例えば酸化アルミニウム(アルミナ)等のセラミック製である。筐体4は、前後方向よりも左右方向に長い中空の直方体状(図1B参照)に形成されている。筐体4の下面は開口している。筐体4は、一対の固定接点311,321と、可動接触子8と、第1ヨーク6と、第2ヨーク7と、を収容する。筐体4の上面には、一対の固定端子31,32を通すための一対の開口孔が形成されている。一対の開口孔は、それぞれ円形状に形成されており、筐体4の上壁を厚み方向(上下方向)に貫通している。一方の開口孔には固定端子31が通され、他方の開口孔には固定端子32が通されている。一対の固定端子31,32と筐体4とは、ろう付けによって結合される。
筐体4は、一対の固定接点311,321と、可動接触子8とを収容する箱状に形成されていればよく、本実施形態のような中空の直方体状に限らず、例えば中空の楕円筒状や、中空の多角柱状などであってもよい。つまり、ここでいう箱状は、内部に一対の固定接点311,321と、可動接触子8とを収容する空間を有する形状全般を意味しており、直方体状に限定する趣旨ではない。筐体4は、セラミック製に限らず、例えば、ガラス又は樹脂等の絶縁材料にて形成されていてもよいし、金属製であってもよい。筐体4は、磁気により磁性体とならない非磁性材料からなることが好ましい。
フランジ5は、非磁性の金属材料で形成されている。非磁性の金属材料は、例えば、SUS304等のオーステナイト系ステンレスである。フランジ5は、左右方向に長い中空の直方体状に形成されている。フランジ5の上面及び下面は開口している。フランジ5は、筐体4と電磁石装置10との間に配置される(図1B及び図2参照)。フランジ5は、筐体4、及び後述する電磁石装置10の継鉄上板111に対して気密接合されている。これにより、筐体4、フランジ5及び継鉄上板111で囲まれた接点装置1の内部空間を、気密空間とすることができる。フランジ5は、非磁性でなくともよく、例えば、42アロイ等の鉄を主成分とする合金であってもよい。
絶縁板41は、合成樹脂製であって電気絶縁性を有する。絶縁板41は、矩形板状に形成されている。絶縁板41は、可動接触子8の下方に位置し、可動接触子8と電磁石装置10との間を電気的に絶縁する。絶縁板41は、中央部位に貫通孔42を有している。本実施形態では、貫通孔42は、可動接触子8の貫通孔83に対応する位置に形成されている。貫通孔42は、絶縁板41を厚み方向(上下方向)に貫通している。貫通孔42は、シャフト15を通すための孔である。
スペーサ45は、円筒形状に形成されている。スペーサ45は、例えば合成樹脂製である。スペーサ45は、電磁石装置10と絶縁板41との間に配置されている。スペーサ45の上端部は絶縁板41の下面と結合し、スペーサ45の下端部が電磁石装置10と結合している。スペーサ45により絶縁板41は支持される。また、スペーサ45の孔にはシャフト15が通される。
バスバー21,22は、導電性を有する金属材料にて構成されている。バスバー21,22は、一例としてリン銅又は銅合金にて構成されている。バスバー21,22は、帯板状に形成されている。本実施形態では、バスバー21,22は、金属板に折り曲げ加工を施すことで形成されている。バスバー21の長手方向の一端部は、例えば接点装置1の固定端子31に電気的に接続される。バスバー21の長手方向の他端部は、例えば走行用のバッテリに電気的に接続される。バスバー22の長手方向の一端部は、例えば接点装置1の固定端子32に電気的に接続される。バスバー22の長手方向の他端部は、例えば負荷に電気的に接続される。
バスバー21は、3つの電路片211,212,213を含んでいる。電路片211は、固定端子31と機械的に接続される。具体的には、電路片211は、平面視において略正方形状であって、固定端子31のかしめ部35にて固定端子31とかしめ結合されている。電路片212(延長片)は、電路片211と連結しており、電路片211の後端部から下方に延びるように、筐体4の後方に配置されている。電路片213(第1電路片)は、電路片212と連結しており、電路片212の下端部から右方(固定端子31から見て固定端子32側)に延びるように、筐体4の後方に配置されている。電路片213の厚み方向(前後方向)は可動接触子8の移動方向(上下方向)と直交する(図1A及び図2参照)。
バスバー22は、3つの電路片221,222,223を含んでいる。電路片221は、固定端子32と機械的に接続される。具体的には、電路片221は、平面視において略正方形状であって、固定端子32のかしめ部36にて固定端子32とかしめ結合されている。電路片222(延長片)は、電路片221と連結しており、電路片221の後端部から下方に延びるように、筐体4の前方に配置されている。電路片223(第2電路片)は、電路片222と連結しており、電路片222の下端部から左方(固定端子32から見て固定端子31側)に延びるように、筐体4の前方に配置されている。また、電路片223の厚み方向(前後方向)は可動接触子8の移動方向(上下方向)と直交する。
また、電路片212の長さL22及び電路片222の長さL23は、固定端子31,32の上下方向の長さL21以上である(図7A及び図7B参照)。図7A及び図7Bにおいては、長さL21は、固定端子31(又は32)の上端縁から固定端子31(又は32)の下端縁(固定接点311(又は321)を含む)までの寸法である。ただし、長さL22,L23と上述した寸法関係にあるべき長さL21は、少なくとも固定端子31(32)におけるバスバー21(22)との接続部位から固定端子31(32)における固定接点311(321)の保持部位までの長さである。
ここで、可動接触子8が閉位置に位置するときに、前後方向の一方から見て、可動接触子8が電路片213,223と固定接点311,321との間に位置する。このような位置関係となるように、電路片213,223は、筐体4の外側に可動接触子8に対して略平行に配置される(図1B及び図2参照)。言い換えると、電路片213,223は、可動接触子8が閉位置に位置するときに、可動接触子8の移動方向(上下方向)において、可動接触子8が電路片213,223と固定接点311,321との間に位置する。
本実施形態において、図4Aに示すように、左右方向に直交する断面において、電路片213の中心点と可動接触子8の中心点とを結ぶ直線と、前後方向に沿った直線との間の角度θ1は45度となる。同様に、左右方向に直交する断面において、電路片223の中心点と可動接触子8の中心点とを結ぶ直線と、前後方向に沿った直線との間の角度θ2は、角度θ1と同じ(ここでは45度)である。ここで、同一とは、完全一致だけでなく、数度程度の誤差が許容される範囲内である場合も含める。上記の数値(45度)は、一例であり、この数値に限定する趣旨ではない。図4Aでは、可動接触子8の断面の中心点と電流Iの表記とが重ならないように、表記を可動接触子8の断面の中心点からずれた位置に電流Iを表記しているが、実際に電流Iが流れる位置を特定する趣旨ではない。電路片213,223を流れる電流Iの表記についても同様である。
また、電路片213,223は、後述する継鉄11の継鉄上板111と、閉位置における可動接触子8との間に配置される。
さらに、電路片213の長さL12及び電路片223の長さL13が、それぞれ可動接点81と可動接点82との間の距離L11以上となる(図7A及び図7B参照)。ここで、可動接点81と可動接点82との間の距離L11は、可動接点81と可動接点82との最短距離である。
本実施形態では、電路片213が電路片212から右方に延び(突出し)、電路片223が電路片222から左方に延びる(突出する)。ここで、まず固定端子31から固定端子32に向けて可動接触子8に電流I1が流れる場合を想定する。このとき、電流I1は、電路片213、電路片212、電路片211、固定端子31、可動接触子8、固定端子32、電路片221、電路片222、電路片223の順に流れる(図3参照)。電路片213,223においては、電流I1は、左方(固定端子32から見て固定端子31側)に流れる。一方、可動接触子8では、電流I1は、右方(固定端子31から見て固定端子32側)に流れる。反対に、固定端子32から固定端子31に向けて可動接触子8を電流I1が流れる場合、電路片213,223においては電流I1は右方に流れ、可動接触子8においては電流I1は左方に流れる。
つまり、電路片213と電路片223とで、電路片212,222から延びる(突出する)向きが逆向きであることで、電路片213及び電路片223を流れる電流I1の向きが、可動接触子8を流れる電流I1の向きとは反対向きとなる。
さらに、電路片212を流れる電流I1の向きは、固定端子31を流れる電流I1とは反対向きである。また、電路片222を流れる電流I1の向きは、固定端子32を流れる電流I1とは反対向きである。具体的には、固定端子31から固定端子32に向けて流れる電流I1を想定した場合、電路片212では電流I1は上方に流れ、固定端子31では電流I1は下方に流れる。電路片222では電流I1は下方に流れ、固定端子32には電流I1は上方に流れる。
また、図1Aに示すように、電路片213,223及び消弧用磁石25,26は、可動接触子8の移動方向(上下方向)においては、上から、消弧用磁石25,26、電路片213,223の順で並ぶように配置されている。言い換えれば、上下方向においては、電路片213,223は、消弧用磁石25,26よりも下方に位置する。
磁気シールド部材9は、強磁性体であって、例えば、電磁鋼で形成されている。磁気シールド部材9は、矩形板状に形成されている。磁気シールド部材9は、可動接触子8に印加される外部磁界を低減する、具体的には可動接触子8を通る磁束を低減することにより、可動接触子8に作用する、閉位置から開位置へ向かう方向の力を低減させる。ここでいう外部磁界とは、接点装置1とは別の構成要素が発生させる磁界である。ここでは、接点装置1に対して前側に並んで配置された、接点装置1とは別の接点装置1A(以降、他接点装置1Aとも言う)が外部磁界を発生させる場合を例にして説明する(図9参照)。他接点装置1Aは、電磁石装置10Aと共に電磁継電器100Aを構成している。他接点装置1Aは、本実施形態の接点装置1と同様の構成であり、本実施形態の接点装置1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明する。他接点装置1Aは、接点装置1の前側に並んで配置されている。
他接点装置1Aにおいて、固定端子32から固定端子31に向けて可動接触子8に電流I2が流れる場合を想定する(図10参照)。このとき、電流I2は、電路片223、電路片222、電路片221、固定端子32、可動接触子8、固定端子31、電路片211、電路片212、電路片213の順に流れる。電路片213,223においては、電流I2は、右方(固定端子31から見て固定端子32側)に流れる。一方、可動接触子8では、電流I2は、左方(固定端子32から見て固定端子31側)に流れる。他接点装置1Aにおいて、電路片213及び電路片223を流れる電流I2の向きが、可動接触子8を流れる電流I2の向きとは反対向きとなる。
つまり、接点装置1の可動接触子8に流れる電流I1の向き(右方)と、他接点装置1Aの電路片213に流れる電流I2の向き(右方)とが同じとなる。詳細は後述の「(3)利点」の欄で説明するが、他接点装置1Aの電路片213に流れる電流I2によって発生する磁界が、接点装置1の可動接触子8に印加されると、接点装置1の可動接触子8に対して閉位置から開位置へ向かう方向の力が作用する。つまり、本実施形態では、他接点装置1Aが有するバスバー21の電路片213が、外部磁界を発生させる導電部20Aである。
磁気シールド部材9は、厚さ方向が可動接触子8の移動方向(上下方向)に直交する方向(前後方向)となり、前後方向の位置が接点装置1の電路片223と他接点装置1Aの電路片213との間となるように配置されている。具体的には、磁気シールド部材9は、外部磁界を発生させる他接点装置1Aの電路片213と、接点装置1の可動接触子8との間に配置されている。他接点装置1Aの電路片213と、接点装置1の可動接触子8との間とは、他接点装置1Aの電路片213から見て、接点装置1の可動接触子8の全てが重なる(隠れる)位置を少なくとも含む位置である。本実施形態では、磁気シールド部材9は、前後方向の一方(前方)から見て、筐体4及びフランジ5が重なる(隠れる)ように構成されている。磁気シールド部材9は、例えば接点装置1(電磁継電器100)を収納するケースに形成された溝に嵌められることにより位置が固定される。
なお、磁気シールド部材9は、磁性を有していればよく、強磁性体のみで形成された構成に限らず、別部材を備えていてもよい。例えば、磁気シールド部材9は、強磁性体を合成樹脂等でコーティングした構成であってもよい。また、磁気シールド部材9は、平板に形成された構成に限らず、例えば網状に形成されていてもよい。
(1.3)電磁石装置
次に、電磁石装置10の構成について説明する。
電磁石装置10は、可動接触子8の下方に配置される。電磁石装置10は、図1A及び図1Bに示すように、固定子12と、可動子13と、励磁コイル14と、を有している。電磁石装置10は、励磁コイル14への通電時に励磁コイル14で生じる磁界によって固定子12に可動子13を吸引し、可動子13を上方に移動させる。
ここでは、電磁石装置10は、固定子12、可動子13及び励磁コイル14の他に、継鉄上板111を含む継鉄11と、シャフト15と、筒体16と、接圧ばね17と、復帰ばね18と、コイルボビン19と、を有している。
固定子12は、継鉄上板111の下面中央部から下方に突出する形の円筒状に形成された固定鉄芯である。固定子12の上端部は継鉄上板111に固定されている。
可動子13は、円柱状に形成された可動鉄芯である。可動子13は、固定子12の下方において、その上端面を固定子12の下端面に対向させるように配置されている。可動子13は、上下方向に移動可能に構成されている。可動子13は、その上端面が固定子12の下端面に接触した励磁位置(図1B及び図2参照)と、その上端面が固定子12の下端面から離れた非励磁位置との間で移動する。
励磁コイル14は、その中心軸方向を上下方向と一致させる向きで筐体4の下方に配置されている。励磁コイル14の内側に、固定子12と可動子13とが配置されている。
継鉄11は、励磁コイル14を囲むように配置されており、固定子12及び可動子13と共に、励磁コイル14の通電時に生じる磁束が通る磁気回路を形成する。そのため、継鉄11と固定子12と可動子13とはいずれも磁性材料(強磁性体)から形成されている。継鉄上板111は、この継鉄11の一部を構成している。言い換えると、継鉄11の少なくとも一部(継鉄上板111)は、励磁コイル14と可動接触子8との間に位置する。
接圧ばね17は、可動接触子8の下面と絶縁板41の上面との間に配置されている。接圧ばね17は、可動接触子8を上方へと付勢するコイルばねである(図1B参照)。
復帰ばね18は、少なくとも一部が固定子12の内側に配置されている。復帰ばね18は、可動子13を下方(非励磁位置)へ付勢するコイルばねである。復帰ばね18の一端は可動子13の上端面に接続され、復帰ばね18の他端は継鉄上板111に接続されている(図1B参照)。
シャフト15は、非磁性材料からなる。シャフト15は、上下方向に延びた丸棒状に形成されている。シャフト15は、電磁石装置10で発生した駆動力を、電磁石装置10の上方に設けられている接点装置1へ伝達する。シャフト15は、貫通孔83、貫通孔71、接圧ばね17の内側、貫通孔42、継鉄上板111の中央部に形成された貫通孔、固定子12の内側、及び復帰ばね18の内側を通って、その下端部が可動子13に固定されている。シャフト15の上端部には、第1ヨーク6が固定されている。
コイルボビン19は、合成樹脂製であって励磁コイル14が巻き付けられている。
筒体16は、上面が開口した有底円筒状に形成されている。筒体16の上端部(開口周部)は、継鉄上板111の下面に接合される。これにより、筒体16は、可動子13の移動方向を上下方向に制限し、かつ可動子13の非励磁位置を規定する。筒体16は、継鉄上板111の下面に気密接合されている。これにより、継鉄上板111に貫通孔が形成されていても、筐体4、フランジ5及び継鉄上板111で囲まれた接点装置1の内部空間の気密性を確保することができる。
この構成により、電磁石装置10で発生した駆動力で可動子13が上下方向に移動するのに伴い可動接触子8が上下方向に移動する。
(2)動作
次に、上述した構成の接点装置1及び電磁石装置10を備えた電磁継電器100の動作について簡単に説明する。
励磁コイル14に通電されていないとき(非通電時)には、可動子13と固定子12との間に磁気吸引力が生じないため、可動子13は、復帰ばね18のばね力によって非励磁位置に位置する。このとき、シャフト15は、下方に引き下げられている。可動接触子8は、シャフト15にて上方への移動が規制される。これにより、可動接触子8は、その可動範囲における下端位置である開位置に位置する。そのため、一対の可動接点81,82は一対の固定接点311,321から離れることになり、接点装置1は開状態となる。この状態では、一対の固定端子31,32間は非導通である。
一方、励磁コイル14に通電されると、可動子13と固定子12との間に磁気吸引力が生じるため、可動子13は、復帰ばね18のばね力に抗して上方に引き寄せられ励磁位置に移動する。このとき、シャフト15が上方に押し上げられるため、可動接触子8は、シャフト15による上方への移動規制が解除される。そして、接圧ばね17が可動接触子8を上方に付勢することで、可動接触子8は、その可動範囲における上端位置である閉位置に移動する。そのため、一対の可動接点81,82が一対の固定接点311,321に接触することになり、接点装置1は閉状態となる。この状態では、接点装置1は閉状態にあるので、一対の固定端子31,32間は導通する。
このように、電磁石装置10は、励磁コイル14の通電状態の切り替えにより可動子13に作用する吸引力を制御し、可動子13を上下方向に移動させることにより、接点装置1の開状態と閉状態とを切り替えるための駆動力を発生する。
(3)利点
励磁コイル14に通電されると、上述したように、電磁石装置10において、可動子13が非励磁位置から励磁位置に移動する。このとき電磁石装置10で発生する駆動力により、可動接触子8は上方に移動して、開位置から閉位置に移動する。これにより、可動接点81,82が固定接点311,321に接触し、接点装置1は閉状態となる。接点装置1が閉状態にあれば、接圧ばね17により可動接点81,82は固定接点311,321に押し付けられた状態にある。
ところで、接点装置1が閉状態にあるときに、接点装置1(固定端子31,32間)を流れる電流に起因して、可動接点81,82を固定接点311,321から引き離す電磁反発力が生じることがある。すなわち、接点装置1に電流が流れると、ローレンツ(Lorentz)力により、可動接触子8には、可動接触子8を閉位置から開位置に移動させる向き(下方)の電磁反発力が作用することがある。電磁反発力は、通常時には接圧ばね17のばね力よりも小さいので、可動接触子8は、可動接点81,82を固定接点311,321に接触させた状態を維持する。ただし、接点装置1に、例えば短絡電流等の非常に大きな(一例として6kA程度の)電流(異常電流)が流れた場合、可動接触子8に作用する電磁反発力が接圧ばね17のばね力を上回る可能性がある。本実施形態では、このような電磁反発力への対策として、まずバスバー21,22に流れる電流を利用する。
すなわち、本実施形態に係る接点装置1では、バスバー21,22は、可動接触子8に電流Iが流れる向きと反対の向きに電流Iが流れる電路片213,223を有している。そのため、接点装置1に、例えば短絡電流等の異常電流が流れた場合、電路片213と可動接触子8との間、及び電路片223と可動接触子8との間では、斥力F1が発生する(図4A参照)。本開示でいう「斥力F1」は、可動接触子8と電路片213,223との間で相互に作用する力のうち、互いに離れる向きの力である。このような斥力F1は、ローレンツ力によって、可動接触子8及び電路片213,223を流れる電流Iが受ける力である。
本実施形態では、可動接触子8が閉位置に位置するときに、可動接触子8の移動方向(上下方向)において、可動接触子8が電路片213,223と固定接点311,321との間に位置する。電路片213,223は固定端子31,32に固定されているので、筐体2に対して相対的に移動しない。一方、可動接触子8は、筐体2に対して、上下方向に移動可能である。そのため、斥力F1における上下方向の力成分F1xと前後方向の力成分F1yとのうち力成分F1xが可動接触子8に加わる(図4A参照)。その結果、可動接触子8を上方に押し上げる力、つまり可動接点81,82を固定接点311,321に押し付ける力が増す。
したがって、接点装置1に例えば短絡電流等の異常電流が流れた場合でも、可動接点81,82と固定接点311,321との間の接続状態の安定化を図ることができる。
また、本実施形態に係る接点装置1では、バスバー21,22は、固定端子31,32に電流Iが流れる向きと反対の向きに電流Iが流れる電路片212,222を有している。ここで、図3に例示するように、固定端子31から固定端子32に向けて電流Iが流れる場合を想定する。この場合、固定端子31では、電流Iが下方に流れることにより、固定端子31を中心として上面視において(上方から見て)時計回りの磁束φ10(図8参照)が発生する。一方、電路片212では、電流Iが上方に流れることにより、電路片212を中心として上面視において(上方から見て)反時計回りの磁束φ11(図8参照)が発生する。
このとき、可動接触子8を流れる右向きの電流Iと、磁束φ10との関係から、可動接触子8に対して、下向きのローレンツ力F10が作用する。さらに、可動接触子8を流れる右向きの電流Iと、磁束φ11との関係から、可動接触子8に対して、上向きのローレンツ力F11が作用する。つまり、接点装置1は、電路片212を設けることで上向きのローレンツ力F11を発生させることができる。これにより、下向きのローレンツ力F10の少なくとも一部が相殺(キャンセル)されるので、可動接触子8を下方に移動させる力を弱めることができる。
また同様に、固定端子32を流れる電流Iによって生じる磁束と、電路片222を流れる電流Iによって生じる磁束との関係からも、可動接触子8に作用する下向きのローレンツ力の少なくとも一部が相殺(キャンセル)される。つまり、つまり、電路片222により、可動接触子8を下方に移動させる力を弱めることができる。
したがって、接点装置1に例えば短絡電流等の異常電流が流れた場合でも、可動接点81,82と固定接点311,321との間の接続状態の安定化を図ることができる。
また、本実施形態では、電路片213,223の厚み方向(前後方向)は、可動接触子8の移動方向(上下方向)に直交している。これにより、電路片213,223の長手方向に直交する断面において、電路片213(又は223)の中心点と可動接触子8の中心点との距離を比較的短くできる(図4A参照)。比較例として、電路片の厚み方向が可動接触子8の移動方向と平行である場合、電路片の長手方向に直交する断面において、電路片の中心点と可動接触子8の中心点との距離が、本実施形態における上記距離よりも長くなる。そのため、本実施形態に係る接点装置1では、電路片213,223と可動接触子8との間に、比較例の電路片と可動接触子8との間で発生する斥力よりも大きな斥力F1を発生することができる。
その結果、比較例に比べても、接点装置1に例えば短絡電流等の異常電流が流れた場合における可動接点81,82と固定接点311,321との間の接続状態の更なる安定化を図ることができる。
さらに、本実施形態では、第1ヨーク6及び第2ヨーク7もまた、電磁反発力への対策となる。
すなわち、図4Bに示すように、可動接触子8を右方(固定端子31から見て固定端子32側)に電流Iが流れる場合、右方から見て、可動接触子8の周囲には反時計回りの磁束φ1が発生する。このとき、上述したように第1ヨーク6の前端部61及び突出部73の先端面がN極、第1ヨーク6の後端部62及び突出部72の先端面がS極となることで、第1ヨーク6と第2ヨーク7との間に吸引力が作用する。
第1ヨーク6はシャフト15の先端部(上端部)に固定されているので、可動子13が励磁位置にあれば、上記吸引力によって、第2ヨーク7が上方に引き寄せられることになる。第2ヨーク7が上方に引き寄せられることによって、可動接触子8には第2ヨーク7から上向きの力が作用し、結果的に、可動接触子8を上方に押し上げる力、つまり可動接点81,82を固定接点311,321に押し付ける力が増す。
したがって、本実施形態に係る接点装置1では、第1ヨーク6及び第2ヨーク7を備えることにより、接点装置1に例えば短絡電流等の異常電流が流れた場合でも、可動接点81,82と固定接点311,321との間の接続状態の安定化を図ることができる。
また、接点装置1の可動接触子8に流れる電流I1の向きと、他接点装置1Aの電路片213(導電部20A)に流れる電流I2の向きとが同じである(図10参照)。そのため、接点装置1の可動接触子8と、他接点装置1Aの電路片213との間に、吸引力F20が発生する(図10参照)。本開示でいう「吸引力F20」は、接点装置1の可動接触子8と、他接点装置1Aの電路片213との間で相互に作用する力のうち、互いに近づく向きの力である。このような吸引力F2は、ローレンツ力によって、接点装置1の可動接触子8を流れる電流I1、及び他接点装置1Aの電路片213を流れる電流I2が受ける力である。
本実施形態では、他接点装置1Aの電路片213は、接点装置1の可動接触子8よりも下方に位置している。したがって、他接点装置1Aの電路片213に流れる電流I2によって発生する磁界(外部磁界)が、接点装置1の可動接触子8に印加されると、電流I1が流れている状態の接点装置1の可動接触子8に対して閉位置から開位置へ向かう方向の力が作用することとなる。具体的には、吸引力F20における上下方向の力成分F20xと前後方向の力成分F20yとのうち力成分F20xが可動接触子8に作用する(図10参照)。
本実施形態の接点装置1は、磁気シールド部材9を備えている。磁気シールド部材9は、他接点装置1Aの電路片213と、接点装置1の可動接触子8との間に配置されている。したがって、磁気シールド部材9により、他接点装置1Aの電路片213から接点装置1の可動接触子8に印加される磁界(外部磁界)が低減され、接点装置1の可動接触子8を通る磁束が低減する。これにより、他接点装置1aの電路片213が発生する磁界(外部磁界)によって本実施形態の接点装置1の可動接触子8に作用する、閉位置から開位置へ向かう方向の力が低減する。したがって、接点装置1の可動接触子8が閉位置にある場合に、可動接点81,82と固定接点311,321との間の接続状態の安定化を図ることができる。
また、磁気シールド部材9は、接点装置1の電路片223よりも前方に位置している。つまり、磁気シールド部材9は、接点装置1の電路片223と可動接触子8との間には配置されていない。そのため、磁気シールド部材9は、電路片223と可動接触子8との間に発生する斥力F1に影響を与えない。したがって、接点装置1の可動接触子8が閉位置にある場合に、可動接点81,82と固定接点311,321との間の接続状態の安定化を図ることができる。
また、磁気シールド部材9は、接点装置1の電路片223と、他接点装置1Aの可動接触子8との間にも位置している。これにより、接点装置1の電路片223に流れる電流I1によって発生する磁界によって他接点装置1Aの可動接触子8に作用する、閉位置から開位置へ向かう方向の力が低減する。したがって、他接点装置1Aにおいても、可動接触子8が閉位置にある場合に、可動接点81,82と固定接点311,321との間の接続状態の安定化を図ることができる。
(4)変形例
以下、実施形態1の変形例について述べる。以下、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
(4.1)変形例1
バスバーの形状は、実施形態1で示すバスバー21,22の形状に限定されない。
接点装置1は、上述したバスバー21,22の代わりに図11Aに示すバスバー21a,22aを備えてもよい。
本変形例のバスバー21aは、5つの電路片211a,212a,213a,214a,215aを含んでいる(図11B参照)。電路片212aは、電路片211aと連結しており、電路片211aの左端側から下方向に延びるように配置されている。この電路片212aは、固定端子31と固定端子32とを結ぶ直線上に配置されている。電路片213aは、電路片212aと連結しており、筐体4の後方側において電路片212aの後端側から右方向(固定端子31から固定端子32に向かう方向)に延びるように配置されている。この電路片213aは、上下方向の位置が、閉位置にある可動接触子8と略同じとなるように配置されている。電路片214aは、電路片213aと結合しており、電路片213aの右端部から前方向に延びるように、固定端子31と固定端子32とを結ぶ直線上に配置されている。電路片215aは、電路片214aと結合しており、筐体4の後方側において電路片214aの後端側から左方向(固定端子32から固定端子31に向かう方向)に延びるように配置されている。この電路片215aは、上下方向の位置が、電路片214a、及び閉位置にある可動接触子8よりも上方に位置している。
また、バスバー22aは、5つの電路片221a,222a,223a,224a,225aを含んでいる(図11C参照)。電路片222aは、電路片221aと連結しており、電路片221aの右端側から下方向に延びるように配置されている。この電路片222aは、固定端子31と固定端子32とを結ぶ直線上に配置されている。電路片223aは、電路片222aと連結しており、筐体4の前方側において電路片222aの前端側から左方向(固定端子32から固定端子31に向かう方向)に延びるように配置されている。この電路片223aは、上下方向の位置が、閉位置にある可動接触子8と略同じとなるように配置されている。電路片224aは、電路片223aと結合しており、電路片223aの左端部から後ろ方向に延びるように、固定端子31と固定端子32とを結ぶ直線上に配置されている。電路片225aは、電路片224aと結合しており、筐体4の前方側において電路片224aの前端側から右方向(固定端子31から固定端子32に向かう方向)に延びるように配置されている。この電路片225aは、上下方向の位置が、電路片224a、及び閉位置にある可動接触子8よりも上方に位置している。
本変形例の接点装置1aでは、固定端子31から固定端子32に向けて可動接触子8に電流I1が流れる場合を想定する。したがって、可動接触子8、バスバー21aの電路片215a、バスバー22aの電路片225aそれぞれには、同じ方向(右向き)の電流I1が流れる。そのため、電路片215aと可動接触子8との間、及び電路片225aと可動接触子8との間に吸引力F30が発生する(図12参照)。本開示でいう「吸引力F30」は、可動接触子8と電路片215a,225aとの間で相互に作用する力のうち、互いに近づく向きの力である。このような吸引力F30は、ローレンツ力によって、可動接触子8及び電路片215a,225aを流れる電流I1が受ける力である。
電路片215a,225aは、可動接触子8に対して固定接点311,321が存在する側に位置している。そのため、吸引力F30における上下方向の力成分F30xと前後方向の力成分F30yとのうち力成分F30xが可動接触子8に加わる(図12参照)。その結果、可動接触子8が固定接点311,321を押し上げる力が増す。したがって、固定端子31と固定端子32との間で異常電流が流れた場合における可動接点81,82と固定接点311,321との間の接続状態の安定化を図ることができる。
他接点装置1Aは、本変形例の接点装置1aと同様の構成であり、本変形例の接点装置1aの前側に配置されている。他接点装置1Aでは、固定端子32から固定端子31に向かって可動接触子8に電流I2が流れる場合を想定する。したがって、本変形例の可動接触子8に流れる電流I1の向きと、他接点装置1Aの電路片215a(導電部20A)に流れる電流I2の向きとが反対となる。そのため、接点装置1aの可動接触子8と、他接点装置1Aの電路片215aとの間に斥力F40が発生する。したがって、他接点装置1Aの電路片215aに流れる電流I2によって発生する磁界(外部磁界)が、接点装置1aの可動接触子8に印加されると、接点装置1aの可動接触子8に対して閉位置から開位置へ向かう方向の力が作用することとなる。具体的には、斥力F40における上下方向の力成分F40xと前後方向の力成分F40yとのうち力成分F40xが可動接触子8に作用する(図12参照)。
本変形例の磁気シールド部材9は、他接点装置1Aの電路片215aと、接点装置1aの可動接触子8との間に配置されている。したがって、磁気シールド部材9により、他接点装置1Aの電路片215aから接点装置1aの可動接触子8に印加される磁界(外部磁界)が低減される。これにより、他接点装置1Aの電路片215aが発生する磁界(外部磁界)によって本変形例の接点装置1aの可動接触子8に作用する、閉位置から開位置へ向かう方向の力が低減する。したがって、接点装置1aの可動接触子8が閉位置にある場合に、可動接点81,82と固定接点311,321との間の接続状態の安定化を図ることができる。
(4.2)その他の変形例
以下に、その他の変形例について列記する。なお、以下に説明する変形例は、上記実施形態、変形例と適宜組み合わせて適用可能である。
上記の実施形態及び変形例では、他接点装置1Aの電路片213,215aが外部磁界を発生させる導電部20Aである場合を説明したが、この構成に限定されない。導電部20Aは、例えば他接点装置1Aの可動接触子8であってもよい。
また、導電部20Aは、他接点装置1Aが備える構成要素に限らず、他接点装置1A以外の構成要素(例えばハーネス等)であってもよいし、接点装置1自体が備えている構成要素であってもよい。
また、バスバー21,22を例えば強磁性体で構成し、バスバー21,22が磁気シールド部材9を兼用するように構成されていてもよい。
上記の実施形態において、筐体4は、固定端子31,32の一部を露出した状態とする構成としたが、この構成に限定されない。筐体4は、固定端子31,32の全体を筐体4の内部に収容してもよい。つまり、筐体4は、固定接点311,321と、可動接触子8とを少なくとも収容する構成であればよい。
上記の実施形態において、接点装置はカプセルヨークを備えていなくてもよい。カプセルヨークが設けられている場合、カプセルヨークによって、電路片213,223と可動接触子8との間の斥力が弱まる可能性がある。そこで、カプセルヨークを省略することにより、カプセルヨークに起因した斥力の低下を抑制し、結果的に、可動接触子8を上方に押し上げる力をより大きくすることができる。
上記の実施形態において、電磁継電器は、励磁コイル14に通電されていないときには、可動接触子8が開位置に位置する、いわゆるノーマリオフタイプの電磁継電器としたが、ノーマリオンタイプの電磁継電器であってもよい。
上記の実施形態において、可動接触子8に保持される可動接点の数は2つであるが、この構成に限定されない。可動接触子8に保持される可動接点の数は、1つでもよいし、3つ以上であってもよい。同様に、固定端子(及び固定接点)の数も2つに限らず、1つ又は3つ以上であってもよい。
上記の実施形態において電磁継電器は、ホルダ無タイプの電磁継電器であるが、この構成に限らず、ホルダ付タイプの電磁継電器であってもよい。ここで、ホルダは、例えば左右方向の両面が開口した矩形筒状であって、可動接触子8がホルダを左右方向に貫通するように、ホルダが可動接触子8と組み合わされる。ホルダの下壁と可動接触子8との間に接圧ばね17が配置される。つまり、可動接触子8の左右方向の中央部がホルダにて保持される。ホルダにはシャフト15の上端部が固定されている。励磁コイル14に通電されると、シャフト15が上方に押し上げられるため、ホルダが上方へ移動する。この移動に伴って、可動接触子8は、上方へ移動し、一対の可動接点81,82を一対の固定接点311,321に接触する閉位置に位置させる。
上記の実施形態において接点装置は、プランジャタイプの接点装置としたが、ヒンジタイプの接点装置であってもよい。
上記の実施形態においてバスバーは、固定端子31,32にかしめ結合されることで固定端子31,32と機械的に接続されるとしたが、ねじ止めにより固定端子31,32と機械的に接続されてもよい。
上記の実施形態の消弧用磁石は、筐体4の外側(つまりカプセルヨークと筐体4との間)に配置される構成としたが、この構成に限定されない。消弧用磁石は、筐体4の内側に配置されてもよい。
実施形態の接点装置において、ヨーク、消弧用磁石及びカプセルヨークは必須の構成ではない。
(まとめ)
第1態様に係る接点装置(1,1a)は、固定端子(31,32)と、可動接触子(8)と、磁気シールド部材(9)と、を備える。固定端子(31,32)は、固定接点(311,321)を保持する。可動接触子(8)は、可動接点(81,82)を保持し、可動接点(81,82)が固定接点(311,321)に接触する閉位置と可動接点(81,82)が固定接点(311,321)から離れる開位置との間で移動する。磁気シールド部材(9)は、電流が流れている状態の可動接触子(8)に対して閉位置から開位置へ向かう方向の力を作用させる磁界を通電時に発生させる導電部(20A)と可動接触子(8)との間に配置され、磁性を有する。
この態様によれば、磁気シールド部材(9)により、導電部(20A)から可動接触子(8)に印加される磁界が低減される。これにより、可動接触子(8)に作用する、閉位置から開位置へ向かう方向の力が低減する。したがって、接点装置(1,1a)の可動接触子(8)が閉位置にある場合に、可動接点(81,82)固定接点(311,321)との間の接続状態の安定化を図ることができる。
第2態様に係る接点装置(1,1a)は、第1態様において、バスバー(21)を更に備える。バスバー(21)は、固定端子(31,32)と電気的に接続され、電流が流れている状態の可動接触子(8)に対して開位置から閉位置へ向かう方向の力を作用させる磁界を通電時に発生させる。磁気シールド部材(9)は、バスバー(21)と可動接触子(8)との間とは異なる位置に配置されている。
この態様によれば、バスバー(21)が発生させる磁界によって可動接触子(8)に作用する力に対してシールド部材(9)が影響を与えないので、可動接点(81,82)と固定接点(311,321)との間の接続状態の安定化を図ることができる。
第3態様に係る接点装置(1,1a)は、第2態様において、磁気シールド部材(9)は、バスバー(21)と、他の接点装置(1A)が有する可動接触子(8)との間に配置されている。
この態様によれば、バスバー(21)が発生する磁界が、他の接点装置(1A)が有する可動接触子(8)に与える影響がが抑制される。
第4態様に係る接点装置(1,1a)は、第1〜第3態様のいずれかにおいて、可動接触子(8)は、導電部(20A)に流れる電流の方向に沿って配置されている。可動接触子(8)に流れる電流の方向は、導電部(20A)に流れる電流の方向と同じである。可動接触子(8)は、可動接触子(8)の移動方向において、可動接触子(8)の位置が閉位置である場合に導電部(20A)と固定接点(311,321)との間に位置する。
この態様によれば、可動接触子(8)と導電部(20A)との間で発生する吸引力が抑制され、可動接点(81,82)と固定接点(311,321)との間の接続状態の安定化を図ることができる。
第5態様に係る接点装置(1,1a)は、第1〜第3態様のいずれかにおいて、可動接触子(8)は、導電部(20A)に流れる電流の方向に沿って配置されている。可動接触子(8)に流れる電流の方向は、導電部(20A)に流れる電流の方向と反対である。可動接触子(8)は、可動接触子(8)の移動方向において、可動接触子(8)の位置が閉位置である場合、導電部(20A)に対して固定接点(311,321)が存在する側と同一側に位置する。
この態様によれば、可動接触子(8)と導電部(20A)との間で発生する斥力が抑制され、可動接点(81,82)と固定接点(311,321)との間の接続状態の安定化を図ることができる。
第6態様に係る接点装置(1,1a)は、第1〜第5態様のいずれかにおいて、固定端子(31,32)は、第1固定端子(31)及び第2固定端子(32)を有する。固定接点(311,321)は、第1固定端子(31)に保持される第1固定接点(311)と、第2固定端子(32)に保持される第2固定接点(321)と、を有する。可動接点(81,82)は、可動接触子(8)が閉位置に位置するときに、第1固定接点(311)及び第2固定接点(321)にそれぞれ接触する第1可動接点(81)及び第2可動接点(82)を有する。
この態様によれば、可動接点(81,82)と固定接点(311,321)との間の接続状態の安定化を図ることができる。
第7態様に係る電磁継電器(100)は、第1〜第6態様のいずれかの接点装置(1,1a)と、可動接触子(8)を移動させる電磁石装置(10)と、を備える。
この態様によれば、接点装置(1,1a)における可動接点(81,82)と固定接点(311,321)との間の接続状態の安定化を図ることができる。
第2〜第5の態様に係る構成については、接点装置(1,1a)の必須の構成ではなく、適宜省略可能である。