JP6762719B2 - 熱交換器の製造方法 - Google Patents

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本発明は、クロスフィンチューブ型の熱交換器の製造方法に関する。
近年では、熱交換器の材料費低減のために、アルミニウム製の伝熱管及び接続管が用いられ始めている。そこで、フィン等の薄肉材の座屈変形防止やろう付け温度の低温化を図るためのAl−Cu−Si系やAl−Cu−Si−Zn系の低融点ろう材が、例えば特許文献1で提案されている。
特開2001−62587号公報
ここで、発明者らは、上述のAl−Cu−Si系やAl−Cu−Si−Zn系の低融点ろう材が、伝熱管、接続管、及びフィンを含んで構成されたクロスフィンチューブ型の熱交換器の部分ろう付けにも有効な手段になり得ると考えた。そこで、発明者らは、従来の銅製からアルミニウム製に変更した熱交換器への低融点ろう材の適用検討を進めた。しかしながら、以下の低融点ろう材特有の問題があることを発見した。
まず、Al−Cu−Si系やAl−Cu−Si−Zn系の低融点ろう材は、Al−Si系のろう材と比較して比重が1.5倍〜1.6倍と重いので、部分ろう付け時に重力の影響を受けて低融点ろう材が重力方向の下側へ流れやすいという特徴がある。そのため、溶融した低融点ろう材がろう材充填部に流れ込む際に、シリコンを含む成分がアルミニウムの母材に侵入して母材の一部をろう材化させてしまう。すなわち、低融点ろう材が母材の一部を浸食して母材の著しい減肉が起こり易くなってしまう。
本発明は上記点に鑑み、アルミニウム製のクロスフィンチューブ型の熱交換器において製造の歩留まりを向上させることができる製造方法を提供することを目的とする
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、アルミニウム製の接続管(40)と、アルミニウム製のフィン(20)が接合されていると共に先端部(13)の内径が接続管の外径よりも大きいアルミニウム製の伝熱管(10)と、を用意し、接続管が重力方向の上側に位置すると共に伝熱管が重力方向の下側に位置するように接続管を伝熱管の先端部に差し込んで嵌合部(42)を構成し、当該嵌合部を部分ろう付けする接合工程を含んでいる。
そして、接合工程では、Al−Cu−Si系またはAl−Cu−Si−Zn系のろう材(60)を用いて部分ろう付けを行い、さらに、接続管として伝熱管よりも厚肉のものを用いると共に、ろう材が溶融して接続管の一部を浸食してろう材化するために嵌合部にろう材が流れる際に接続管に減肉が発生するろう付け方法であって、接合工程では、ろう材として、Al−Si系のろう材と比較して比重が大きいものを用いる。接合工程では、部分ろう付けの前に、少なくともろう材の一部が伝熱管の先端部の端面(16)の上方に位置するように、接続管の外壁面にろう材を供給する。
これによると、部分ろう付け時にアルミニウム製の接続管がろう材に浸食されて減肉が起きても、厚肉の接続管が減肉するだけであるので、接続管の厚みを一定以上に維持することができる。したがって、熱交換器の製造の歩留まりを向上させることができる。
なお、この欄及び特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
本発明の一実施形態に係る熱交換器の斜視図である。 図1に示された伝熱管の断面図である。 伝熱管と接続管との嵌合部付近の一部断面図である。 図3のA部拡大断面図である。 熱交換器の製造工程のうちの拡管工程を説明するための図である。 熱交換器の製造工程のうちの接合工程を説明するための図である。 比較例の一つを示した嵌合部付近の一部断面図である。 図7とは異なる比較例を示した嵌合部付近の一部断面図である。
以下、本発明の一実施形態について図を参照して説明する。本実施形態に係る熱交換器は、例えば冷凍サイクルの冷媒と空気との間で熱交換を行うクロスフィンチューブ型の熱交換器に適用される。
図1に示されるように、クロスフィンチューブ型の熱交換器1は、伝熱管10、フィン20、サイドプレート30、31、接続管40、及びヘッダ50、51を備えている。これら伝熱管10、フィン20、サイドプレート30、31、接続管40、及びヘッダ50、51は、アルミニウム製である。アルミニウム製とは、アルミニウムまたはアルミニウム合金により構成されていることを意味する。
伝熱管10は、内部を冷媒が流通する管部品である。伝熱管10は、ヘアピン状すなわち略U字状に曲折されて構成されている。伝熱管10は、長手部分が並列に配置されるように熱交換器1に複数設けられている。各伝熱管10のU字部分はそれぞれ長手部分の一方向に配置されている。そして、各伝熱管10はフィン20に接合されている。
図2に示されるように、伝熱管10の内面には、複数の溝11が螺旋状に形成されている。すなわち、伝熱管10は内面溝付管である。溝11は、伝熱管10の管軸と傾斜する方向に延びている。伝熱管10の内面には、螺旋状の溝11間の突起として螺旋状に延びるフィン12が形成されている。伝熱管10の内面に溝11及びフィン12が形成されていることにより、伝熱管10の内面と冷媒との接触面積が増えるので、伝熱管10の伝熱性能が向上する。
フィン20は、空気と伝熱管10との伝熱面積を増大させて空気と冷媒との熱交換を促進する伝熱促進部材である。フィン20は、プレート状に形成されたプレートフィンである。フィン20は熱交換器1に複数設けられている。サイドプレート30、31は、複数のフィン20の最上層と最下層とに設けられた板部品である。
接続管40は、複数の伝熱管10の先端部13同士を接続する管部品である。接続管40は、U字状に形成されている。接続管40は、伝熱管10よりも厚肉のものである。例えば、接続管40として、肉厚が伝熱管10の底肉厚の1.5倍以上の平滑管が用いられる。なお、底肉厚は、伝熱管10の溝11の底面から外壁面までの厚みである。ヘッダ50、51は、伝熱管10に対して冷媒の分配または集合を行う部品である。
次に、伝熱管10と接続管40との接続構造について説明する。図3に示されるように、伝熱管10の先端部13は、口拡部14及びフレア加工部15を有している。口拡部14は、内径が接続管40の外径よりも大きくされた部分である。フレア加工部15は、口拡部14の先端部分が円錐状に広げられた部分である。
そして、接続管40の先端部41が伝熱管10の先端部13に差し込まれることで嵌合部42が構成されている。図4に示されるように、嵌合部42における伝熱管10の長手方向の長さ、すなわち伝熱管10の径方向に伝熱管10と接続管40とがオーバーラップしている部分の長さは1mm以上になっている。
また、嵌合部42において口拡部14の内面と接続管40の外面との管の隙間は管径差で0.05mm以上である。当該隙間にろう材60が充填されている。ろう材60は、伝熱管10の長手方向において、伝熱管10の先端部13の端面16よりも接続管40の先端部41側の位置から、接続管40の先端部41の端面43の一部を覆う位置まで充填されている。なお、図3ではろう材60を省略している。
ろう材60は、嵌合部42おいて伝熱管10と接続管40とを固定する固定材である。ろう材60は、弗化セシウム系の非腐食性フラックスを塗布したAl−Cu−Siの3元素系共晶組成近傍のものや、その成分にZnを添加したものが用いられる。すなわち、ろう材60は、Al−Cu−Si系またはAl−Cu−Si−Zn系のものである。
Al−Cu−Si系のろう材60は、固相線温度510℃、液相線温度540℃程度に成分調整されている。これにより、ろう材60は、従来のAl−Si系の固相線温度577℃に対して大幅に低温化されている。すなわち、本実施形態に係るろう材60は低融点ろう材である。この温度域でろう付けするためにフラックスは420℃の低温から活性を有する。
ここで、接続管40は凹部44を有している。凹部44は、ろう付け時にろう材60によって接続管40の一部が浸食されて形成された部分である。一方、ろう付けによって接続管40に凹部44が形成されない場合もある。しかしながら、接続管40に凹部44が形成される場合も形成されない場合も、ろう材60のSi成分が接続管40に侵入する。このため、凹部44に対応する部分には必ずSi成分が残されている。以上が、熱交換器1の全体構成である。
次に、熱交換器1の製造方法について説明する。まず、引き抜き加工によりアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる管を形成する。また、管の内面に転造加工を施すことにより内面に溝11が設けられた伝熱管10を形成する。
続いて、複数のフィン20及びサイドプレート30、31を用意し、各フィン20及びサイドプレート30、31に伝熱管10が挿通される図示しない貫通孔を形成する。そして、複数のフィン20を等間隔に配置した後、貫通孔に伝熱管10を挿通する。
この後、伝熱管10を拡管する拡管工程を行う。図5に示されるように、伝熱管10の内径より径が大きい拡管子100を伝熱管10内に挿通し、拡管子100により伝熱管10を機械的に拡管する。伝熱管10を拡管することで、複数のフィン20及びサイドプレート30、31と伝熱管10とを密着させて接合する。また、同様の工法で伝熱管10の先端部13に口拡部14及びフレア加工部15を形成する。なお、図5では伝熱管10の内面の溝11を省略している。
次に、伝熱管10に接続管40を接合する接合工程を行う。このため、拡管工程で取得した伝熱管10と接続管40とを用意する。接続管40として、伝熱管10よりも厚肉のものを用いる。また、接続管40が重力方向の上側に位置すると共に伝熱管10が重力方向の下側に位置するように接続管40を伝熱管10の先端部13に差し込んで嵌合部42を構成する。
そして、嵌合部42の部分ろう付けの前に、図6に示されるように、少なくともろう材60の一部が伝熱管10の先端部13の端面16の上方に位置するように、接続管40の外壁面45にろう材60を供給する。例えば、ろう材60を接続管40の周方向に連続的に一周配置するか、または周方向に断続的に部分配置する。上述のように、ろう材60としてAl−Cu−Si系またはAl−Cu−Si−Zn系のものを用いる。
このようにろう材60を接続管40に供給することで、溶けたろう材60が嵌合部42の隙間に引き込まれるようにすることができる。また、ろう材60にボイドが含まれた状態で嵌合部42に引き込まれることを抑制することができる。なお、ろう材60の全体を先端部13の端面16の上方に位置させることでこのような効果をさらに高めることができる。
続いて、嵌合部42を部分ろう付けする。このため、まず、接続管40を伝熱管10よりも優先的に加熱する。具体的には、接続管40のうちろう材60を配した部位を550℃程度に局所加熱してろう材60を溶融させる。また、伝熱管10の温度を接続管40の温度よりも低く加熱する。例えば、嵌合部42の下部すなわち伝熱管10の口拡部14の下部の温度をろう材60の固相線温度以下(例えば410℃)に調整する。
このように嵌合部42を加熱することで、溶融したろう材60が厚肉の接続管40側から薄肉の伝熱管10側のフレア加工部15を介して嵌合部42の隙間に流れ込む。上述のように、伝熱管10の内面には複数の溝11が形成されているので、毛細管現象によってろう材60が当該隙間に引き込まれる。
ここで、接続管40に塗布されたろう材60が溶融温度に到達すると、ろう材60は伝熱管10の口拡部14と接続管40の先端部41との隙間に流れ込むが、ろう材60の比重が高いので、接続管40には少なからず母材の浸食が発生して減肉が起こる。しかしながら、厚肉の接続管40が減肉するだけであるので、接続管40の厚みを一定以上に維持することができる。もちろん、接続管40の耐圧強度上の問題も起きない。
また、伝熱管10の口拡部14の下部の温度がろう材60の固相線温度以下に調整されているので、ろう材60は口拡部14の下部で凝固しやすくなっている。したがって、伝熱管10として内面溝付管を用いたとしても、ろう材60が嵌合部42よりもさらに重力方向の下側に流れていくことはない。また、ろう材60が嵌合部42よりも重力方向の下側に流れにくくなるので、嵌合部42がろう付け不良になる恐れがない。そして、伝熱管10は接続管40よりも温度が低いので、伝熱管10はろう材60に浸食されることがほぼない。
さらに、ヘッダ50、51を伝熱管10にろう付け接合する。その他、仕上げ工程等を行う。こうして、熱交換器1が完成する。
ここで、部分ろう付けの比較例を説明する。図7に示す比較例では、接続管110の温度が伝熱管120よりも高いが、接続管110の厚みが伝熱管120とほぼ同じである。この構成では、接続管110側にろう材60の浸食による顕著な減肉が発生した。この場合、耐圧上必要な接続管110の肉厚を確保できなくなる。また、伝熱管120の長手方向における嵌合部130のろう付け長さも上記の構成よりも短くなった。
図8に示す別の比較例では、伝熱管120の温度が接続管110よりも高くなっており、接続管110の厚みが伝熱管120とほぼ同じである。この場合、ろう材60が嵌合部130の隙間に留まらずに、嵌合部130の下部に流れてしまった。このため、伝熱管120の長手方向におけるろう付け長さが極端に短くなり、耐圧上必要なろう付け長さを確保できない。また、伝熱管120にろう材60の浸食が発生して減肉が起こってしまった。
上記の比較例に対し、本実施形態では、接続管40が伝熱管10よりも厚肉であるので、熱交換器1の製造の歩留まりを向上させることができる。また、接続管40の温度が伝熱管10よりも高いので、ろう材60が嵌合部42に留まりやすくなり、ろう材60のろう付け長さを確保することができる。
そして、伝熱管10は拡管子100によって広げられるが、アルミニウム製の伝熱管10では拡管荷重が高いほど拡管時に拡管子100が凝着して拡管できないことがある。しかし、伝熱管10でろう材60の浸食が起こりにくいので、伝熱管10を薄肉に構成することができる。伝熱管10を薄肉化できるので低い拡管荷重で伝熱管10を拡管することができ、伝熱管10の拡管不良が発生することもない。また、伝熱管10の圧力損失を低減することができる。
さらに、低融点のろう材60を用いることで、母材とろう材60との融点差が大きくなる。このため、ろう付け可能な温度域が広がるので、ラインバーナ等の設備を用いた加熱によって多数のろう付け部位で温度バラツキが発生しても、歩留り良く熱交換器1を製造することができる。
(他の実施形態)
上記各実施形態で示された熱交換器1の構成は一例であり、上記で示した構成に限定されることなく、本発明を実現できる他の構成とすることもできる。例えば、接合工程では、接続管40を伝熱管10よりも優先的に加熱する必要はない。
また、接続管40に浸食が発生しても接続管40の品質を維持できるという観点では、接合工程で伝熱管10の温度を接続管40の温度よりも低くする必要はない。具体的には、伝熱管10の口拡部14下部すなわち嵌合部42よりも重力方向の下側の温度は必ずしもろう材60の固相線温度以下でなくても良い。
接合工程における接続管40へのろう材60の供給方法は、リング状のろう材鋳物、樹脂バインダの成形品、ゴムバインダ成形品等を用いても良い。
上記では、伝熱管10として内面溝付管を用いる例について説明したが、伝熱管10として平滑管を用いても良い。
10 伝熱管
13 先端部
20 フィン
40 接続管
42 嵌合部
60 ろう材

Claims (3)

  1. アルミニウム製の接続管(40)と、アルミニウム製のフィン(20)が接合されていると共に先端部(13)の内径が前記接続管の外径よりも大きいアルミニウム製の伝熱管(10)と、を用意し、前記接続管が重力方向の上側に位置すると共に前記伝熱管が前記重力方向の下側に位置するように前記接続管を前記伝熱管の前記先端部に差し込んで嵌合部(42)を構成し、当該嵌合部を部分ろう付けする接合工程を含んだクロスフィンチューブ型の熱交換器の製造方法であって、
    前記接合工程では、Al−Cu−Si系またはAl−Cu−Si−Zn系のろう材(60)を用いて前記部分ろう付けを行い、さらに、前記接続管として前記伝熱管よりも厚肉のものを用いると共に、前記ろう材が溶融して前記接続管の一部を浸食してろう材化するために前記嵌合部に前記ろう材が流れる際に前記接続管に減肉が発生するろう付け方法であって、前記接合工程では、前記ろう材として、Al−Si系のろう材と比較して比重が大きいものを用い
    前記接合工程では、前記部分ろう付けの前に、少なくとも前記ろう材の一部が前記伝熱管の前記先端部の端面(16)の上方に位置するように、前記接続管の外壁面に前記ろう材を供給する熱交換器の製造方法。
  2. 前記接合工程では、前記接続管として前記伝熱管よりも1.5倍以上の厚肉のものを用いる請求項1に記載の熱交換器の製造方法。
  3. 前記接合工程では、前記接続管を前記伝熱管よりも優先的に加熱し、さらに、前記伝熱管の温度を前記接続管の温度よりも低くする請求項1または2に記載の熱交換器の製造方法。
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