JP6495682B2 - 工作機械における送り軸の制御方法及び工作機械 - Google Patents

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本発明は、工作機械の加工中、特にチタン合金といった難削材の重切削加工中において、工具の切れ刃の振れ量を考慮して送り軸を制御することでびびり振動や工具チッピングの発生を抑制するために行う送り軸の制御方法と、当該制御方法を用いて切削加工を行う工作機械とに関する。
ミーリング加工で難削材を加工する場合、加工コスト低減のためにスローアウェイやインサートと呼ばれる脱着式の切れ刃を装着する工具が使用される。この工具においては、工具本体の切れ刃の取付座面や切れ刃自身の加工精度の影響により、装着した切れ刃の高さは均一にならず、切れ刃には振れ量(各切れ刃間の相対取付誤差)が生じる。この振れ量が大きな切れ刃の場合、工具チッピングが生じて工具寿命が短くなるという問題があった。そこで、本件出願人は、特許文献1において、切れ刃の各位置と予め測定した振れ量とに基づいて振幅や位相を設定して、振れ量をキャンセルするように主軸に同期させて送り軸を加工進行方向と逆方向に微小変位させることで、各切れ刃の1刃送り量を本来の指令通りの値に近づけて工具チッピングの抑制を図る発明を提供している。
特開2013−240837号公報
上記特許文献1の加工方法においては、加工進行方向と逆方向に振れ量だけ制御するので、溝切削では十分な効果を発揮する。
しかし、側面切削においては、被加工物に対する工具径方向の切込み量(以下「ae」と表記する。)によって切削の開始角度が変わり、切削力が均一でなくなるため十分な工具寿命を得ることができなかった。
そこで、本発明は、側面切削を行う場合にも制御開始角度を最適化して工具の長寿命化を図ることができる工作機械における送り軸の制御方法及び工作機械を提供することを目的としたものである。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、同心円上に複数配置される切れ刃の段を軸方向へ少なくとも1段装着してなる工具を回転させて所定の加工進行方向へ移動させながら被加工物を加工する工作機械において、加工中の送り軸に対して予め測定した前記切れ刃の振れ量に基づいて、前記切れ刃の段が1段の場合は各前記切れ刃の所定の基準位置からの回転角度を開始角度とし、前記切れ刃の段が複数の場合は前記軸方向の刃列内の各段における前記切れ刃の前記回転角度の平均値を開始角度として、前記加工進行方向に各前記開始角度が一致するタイミングで前記送り軸を加工逆方向に微小変位させる制御を重畳する送り軸の制御方法であって、
前記工具を径方向へ切り込んで前記加工進行方向へ移動させる側面加工を行う際には、前記工具の径方向の切込み量に基づいて前記制御の前記開始角度を前記加工進行方向から工具回転方向側へ変更する角度補正量を算出し、算出した前記角度補正量から前記開始角度を前記工具回転方向側へ補正して、補正した前記開始角度に基づいて前記微小変位の制御を重畳することを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、前記角度補正量θは、以下の計算式で算出されることを特徴とするものである。
ae<Rの場合:θ=sin−1{1−(ae/R)}
ae≧Rの場合:θ=0
ae:径方向の切込み量(mm)、R:工具半径(mm)
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、同心円上に複数配置される切れ刃の段を軸方向へ少なくとも1段装着してなる工具を回転させて所定の加工進行方向へ移動させながら被加工物を加工すると共に、加工中の送り軸に対して予め測定した前記切れ刃の振れ量に基づいて、前記切れ刃の段が1段の場合は各前記切れ刃の所定の基準位置からの回転角度を開始角度とし、前記切れ刃の段が複数の場合は前記軸方向の刃列内の各段における前記切れ刃の前記回転角度の平均値を開始角度として、前記加工進行方向に各前記開始角度が一致するタイミングで前記送り軸を加工逆方向に微小変位させる制御を重畳する工作機械であって、
前記工具を径方向へ切り込んで前記加工進行方向へ移動させる側面加工を行う際に、前記工具の径方向の切込み量に基づいて前記制御の前記開始角度を前記加工進行方向から工具回転方向側へ変更する角度補正量を算出する角度補正量算出手段と、前記角度補正量算出手段で算出した前記角度補正量から前記開始角度を前記工具回転方向側へ補正する開始角度補正手段と、前記開始角度補正手段で補正した前記開始角度に基づいて前記微小変位の制御を重畳する制御手段と、を備えることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項3の構成において、前記角度補正量算出手段は、前記角度補正量θを以下の計算式で算出することを特徴とするものである。
ae<Rの場合:θ=sin−1{1−(ae/R)}
ae≧Rの場合:θ=0
ae:径方向の切込み量(mm)、R:工具半径(mm)
本発明によれば、工具の径方向の切込み量に基づいて制御の開始角度を補正する角度補正量を算出し、算出した角度補正量から開始角度を補正して、工具による側面加工を行う際には、補正した開始角度に基づいて微小変位の制御を重畳する。よって、側面切削を行う場合にも制御開始角度を最適化して工具の長寿命化を図ることができる。
工作機械の構成図である。 送り軸制御方法のフローチャートである。 工具の横断面図である。 ミーリング工具による側面加工の説明図である。 刃数4で1段の切れ刃を使用して加工する場合の制御量(制御の位置及び切れ刃振れ量)である。 径方向の切込み量と工具半径とから計算した角度補正量である。 角度補正量を加えた制御量(制御の位置及び制御量)である。 通常の場合の切削力の測定結果である。 角度補正をしない従来の制御での切削力の測定結果である。 側面切削を考慮した本制御での切削力の測定結果である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る送り軸の制御方法を実施する工作機械の一例を示す構成図である。同図において、1はベッド、2はコラムで、コラム2の前面には、主軸頭3が、X軸制御ユニット4及びZ軸制御ユニット5によってX軸方向及びZ軸方向へ移動制御可能に設けられて、主軸頭3の下部で下向きに設けた主軸6に、工具7が装着されている。一方、ベッド1上には、Y軸制御ユニット8によってY軸方向へ移動制御可能なテーブル9が設けられて、テーブル9上に被加工物10が固定可能となっている。
工作機械の制御系は、主軸6の回転速度を制御する主軸回転制御装置11と、送り軸(各制御ユニット4,5,8)の制御量を演算する、角度補正量算出手段及び開始角度補正手段としての演算装置12と、送り軸を制御する制御手段としての数値制御装置13と、図示しない記憶装置と、を含んでなり、演算装置12には、外部入力装置14によって後述する工具7の切れ刃の振れ量や径方向の切込み量ae、工具半径等が入力可能となっている。
このように構成された工作機械においては、図2のフローチャートに基づいて加工が実施される。なお、工具7は、図3に示すように、4枚の切れ刃7a,7a・・を90°間隔で備えた同心円上の段を軸方向に所定間隔をおいて3段設けてなり、軸方向の各列(図3に示す丸数字)の切れ刃7aは、工具7の先端から回転方向前方側へ徐々にずれて取り付けられて、各列丸数字1〜4では3つの切れ刃7a,7a・・がねじれ方向に配列されている。
まず、S1において、工具7の切れ刃7aの各位置とその振れ量を測定して外部入力装置14を介して演算装置12に入力し、演算装置12において、所定の計算式を使用して回転角度における各刃列の制御量及び制御位置を計算する。この制御量の計算は、例えば以下の通り行われる。
まず、刃列の番号添え字をi(1≦i≦Z、Z:刃数)
各刃列内の切れ刃7aの段番号添え字をj(1≦j≦N、N:刃列内で実加工に使用する切れ刃段数)
測定した各切れ刃振れ量をCi,j(μm)
とすると、各切れ刃における実際の加工代の増減分Di,jは、以下の式(1)で算出できる。
i,j=Ci,j−Ci−1,j ・・(1)
但し、i−1がゼロの場合はZに置き換える。
つまり、各切れ刃7aの振れ量の大小が各切れ刃7aにおける実際の加工代ではなく、各切れ刃7aの振れ量の差(増減分)が実際の加工代の差となる。この差が大きな切れ刃7aほどチッピングが早く進行して工具寿命が短くなるため、この値を計算するのである。
そして、各刃列における制御量Qを以下の式(2)により計算する。
=0として、
=(Di,1からDi,jまでの最大値)−{各刃列iにおける(Di,1からDi,jまでの最大値)の総和を刃数Zで除した値}+Qi−1 ・・(2)
なお、この計算式は、刃列内の実加工代最大値は、各刃列で計算した最大値の平均値より小さくならないことを意味している。
制御の位置(開始角度)は、刃列内の各段における振れ量を測定した位置(基準位置からの回転角度(図3のα))から、例えば、実際に加工に使用する切れ刃7aのみの回転角度平均値を使用する。切れ刃7aの各位置と工具7の本体との位相関係は、例えば、主軸6に接続されているエンコーダで把握するようにしてもよい。このエンコーダの出力に基づいて、主軸回転制御装置11が切れ刃7aの位相情報を得ることができる。
但し、ミーリング加工での側面切削においては、図4に示すように、径方向の切込み量aeによって切削の開始位置が変わるため、その開始位置で制御を行う必要がある。なお、図4において、矢印Aは加工進行方向、矢印Bは工具回転方向を示している。
そこで、S2において、予め径方向の切込み量ae(mm)と工具半径R(mm)とを外部入力装置14を介して入力しておき、演算装置12は、S3において、予め設定した計算式から、制御の位置を補正するための角度補正量θを計算する。この角度補正量θは、以下の計算式で計算される。
θ=sin−1{1−(ae/R)}
但し、この計算はae<Rの場合に限り、ae≧Rの場合は、角度補正量θの計算は行わず(θ=0)、角度補正も行わない。これは、加工進行方向で切削力が最大となるからである。
そして、S4で、演算装置12は、S3で計算した角度補正量θを各切れ刃における制御の位置に加算する。よって、数値制御装置13は、S5において、制御の位置を補正した送り軸指令値に基づいて各送り軸(制御ユニット)を制御して加工を実施する。例えばX−Y平面における加工であれば、加工進行方向に対して計算した制御量をX軸、Y軸方向に分配して加工逆方向に送り軸を制御する。このS4,5の処理は、S6で加工終了となるまで繰り返される。
この制御により、送り動作に対して微小な強制振動が重畳されるが、この強制振動は、工具7の振れに等しい振動数となるため、主軸6の1回転内における工具7の振れ量を抑制するように送り軸に振動を重畳でき、工具振れ量の影響をキャンセルするよう作用させることができる。その結果、切れ刃7aに作用する最大切削力を削減して工具チッピングの発生割合を低減することができる。また、最大切削力の削減によってびびり振動の抑制にも繋がる。
以下、具体例を説明する。
図5は、刃数が4で1段の切れ刃を有する工具を使用することを想定した場合の各切れ刃振れ量測定値を示したものである。
図6は、図5の工具において、切込み量aeと工具半径とから計算した角度補正量θを示したもので、図7が、図4の測定値に角度補正量θを加えて制御の位置を補正した制御量である。
このように、側面切削中に適切な制御の位置で各軸方向の工具振れ量を送り軸側にて補正するので、工具振れ量の影響を抑制して加工できることになり、工具寿命が向上する。
本制御の効果を確認するために、直径φ50mmインサートタイプのミーリング工具にてチタン合金加工を実施した。切削速度V:45m/min、1刃当たり送り量f:0.1mm/刃、軸方向切込みap:8mm、径方向切込みae:15mmの側面切削といった切削条件で、図8が通常の場合の切削力の測定結果、図9が角度補正をしない従来の制御での切削力の測定結果、図10が、側面切削を考慮した本制御での切削力の測定結果となっている。
図10で明らかなように、角度補正を行った場合、切削力が均一になるため、工具寿命が向上することになる。
このように、上記形態の送り軸の制御方法及び工作機械によれば、工具の径方向の切込み量aeに基づいて制御の開始角度を補正する角度補正量θを算出し、算出した角度補正量θから開始角度を補正して、工具7による側面加工を行う際には、補正した開始角度に基づいて微小変位の制御を重畳することで、側面切削を行う場合にも制御開始角度を最適化して工具の長寿命化を図ることができる。
なお、工具における切れ刃の段数や1つの段内の切れ刃の数は上記形態に限らず、適宜増減可能である。また、上記形態では制御方向は加工進行方向となっているが、加工進行方向に角度補正量θを加味した方向でも可能である。
工作機械も、同心円上に複数配置される切れ刃の段を軸方向へ少なくとも1段装着してなる工具を回転させて送り軸制御して加工を行うものであれば、複合加工機やマシニングセンタ等、特に機種を限定するものではない。
1・・ベッド、2・・コラム、3・・主軸頭、4・・X軸制御ユニット、5・・Z軸制御ユニット、6・・主軸、7・・工具、7a・・切れ刃、8・・Y軸制御ユニット、9・・テーブル、10・・被加工物、11・・主軸回転制御装置、12・・演算装置、13・・数値制御装置、14・・外部入力装置。

Claims (4)

  1. 同心円上に複数配置される切れ刃の段を軸方向へ少なくとも1段装着してなる工具を回転させて所定の加工進行方向へ移動させながら被加工物を加工する工作機械において、加工中の送り軸に対して予め測定した前記切れ刃の振れ量に基づいて、前記切れ刃の段が1段の場合は各前記切れ刃の所定の基準位置からの回転角度を開始角度とし、前記切れ刃の段が複数の場合は前記軸方向の刃列内の各段における前記切れ刃の前記回転角度の平均値を開始角度として、前記加工進行方向に各前記開始角度が一致するタイミングで前記送り軸を加工逆方向に微小変位させる制御を重畳する送り軸の制御方法であって、
    前記工具を径方向へ切り込んで前記加工進行方向へ移動させる側面加工を行う際には、前記工具の径方向の切込み量に基づいて前記制御の前記開始角度を前記加工進行方向から工具回転方向側へ変更する角度補正量を算出し、算出した前記角度補正量から前記開始角度を前記工具回転方向側へ補正して、補正した前記開始角度に基づいて前記微小変位の制御を重畳することを特徴とする工作機械における送り軸の制御方法。
  2. 前記角度補正量θは、以下の計算式で算出されることを特徴とする請求項1に記載の工作機械における送り軸の制御方法。
    ae<Rの場合:θ=sin−1{1−(ae/R)}
    ae≧Rの場合:θ=0
    ae:径方向の切込み量(mm)、R:工具半径(mm)
  3. 同心円上に複数配置される切れ刃の段を軸方向へ少なくとも1段装着してなる工具を回転させて所定の加工進行方向へ移動させながら被加工物を加工すると共に、加工中の送り軸に対して予め測定した前記切れ刃の振れ量に基づいて、前記切れ刃の段が1段の場合は各前記切れ刃の所定の基準位置からの回転角度を開始角度とし、前記切れ刃の段が複数の場合は前記軸方向の刃列内の各段における前記切れ刃の前記回転角度の平均値を開始角度として、前記加工進行方向に各前記開始角度が一致するタイミングで前記送り軸を加工逆方向に微小変位させる制御を重畳する工作機械であって、
    前記工具を径方向へ切り込んで前記加工進行方向へ移動させる側面加工を行う際に、前記工具の径方向の切込み量に基づいて前記制御の前記開始角度を前記加工進行方向から工具回転方向側へ変更する角度補正量を算出する角度補正量算出手段と、前記角度補正量算出手段で算出した前記角度補正量から前記開始角度を前記工具回転方向側へ補正する開始角度補正手段と、前記開始角度補正手段で補正した前記開始角度に基づいて前記微小変位の制御を重畳する制御手段と、を備えることを特徴とする工作機械。
  4. 前記角度補正量算出手段は、前記角度補正量θを以下の計算式で算出することを特徴とする請求項3に記載の工作機械。
    ae<Rの場合:θ=sin−1{1−(ae/R)}
    ae≧Rの場合:θ=0
    ae:径方向の切込み量(mm)、R:工具半径(mm)
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