JP6435768B2 - 発泡積層体の製造方法及びその発泡積層体 - Google Patents

発泡積層体の製造方法及びその発泡積層体 Download PDF

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Description

本発明は、発泡層が厚く、優れた断熱性を示す発泡積層体を高い生産効率で製造する方法に関するものである。
従来から、断熱性を有する容器として、合成樹脂、特にポリスチレンを発泡させたものが多く使用されている。しかし、発泡ポリスチレン容器は、廃棄時の環境への負荷が高い、印刷適性に劣るなどの欠点があり、他の素材への代替が検討されている。そのような中、紙カップ胴部の外周面にコルゲートした紙を貼り合わせて断熱層を形成した容器、同紙カップの胴部外周面にパルプ製の不織布とコート紙との積層体を接合した容器などが開発され、使用されている。
しかしながら、いずれの方法も加工、成形が容易でなく、コスト高になるという欠点があった。そこで、水分を含んだ基材の少なくとも一面に低融点の熱可塑性合成樹脂フィルムをラミネートし、加熱することにより、基材に含まれている水分を利用して合成樹脂フィルムを凹凸に発泡させる技術が考案された(例えば、特許文献1〜3参照。)。しかし、このようにして得られる材料は、発泡層の厚みが薄く、断熱性が不十分であった。
また、発泡層の厚い発泡体を得る手段として、発泡面の少なくとも一部を真空吸引して発泡セルの発泡層を厚くする手法が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。また、容器胴部材及び底板部材からなり、容器胴部材及び底板部材の原紙の内壁面に高融点の熱可塑性合成樹脂フィルムをラミネートしてあると共に容器胴部材の原紙の外壁面に低融点の熱可塑性合成樹脂フィルムをラミネートしてあり、この低融点の熱可塑性合成樹脂フィルムを加熱処理して発泡してある断熱紙容器が提案されている(例えば、特許文献5参照。)。更に、紙基材に水を塗布し、発泡層を厚くする手法が提案されている(例えば特許文献6参照)。
しかし、真空吸引により発泡層を厚くする手法は、真空吸引装置が必要であること、製造工程に真空吸引を施す工程を設ける必要があることからコストパフォーマンスに劣るといった問題があった。また、内壁面に高融点の熱可塑性合成樹脂を有する断熱紙容器では、発泡層厚みが薄く、断熱性が不十分であった。そして、紙基材に水を塗布する手法では、一般紙管を使用すると製品ロスが増え、生産効率が劣っていた。
特公昭48−32283号公報 特開昭57−110439号公報 特開2001−270571号公報 特開2004−58534号公報 特開2007−217024号公報 特開2013−78928号公報
本発明の目的は、発泡層が厚く、優れた断熱性を示す発泡積層体を高い生産効率で製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の方法で製造した発泡積層体が、優れた断熱性を示すとともに生産効率が高いことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、少なくとも(A)層/紙基材/(B)層の順に積層されてなる発泡積層体の製造方法であって、(A)層がJIS K6922−1(2010年)により測定された密度が930kg/m以上970kg/m以下であるポリエチレン系樹脂(a)、(B)層がJIS K6922−1(2010年)により測定された密度が910kg/m以上930kg/m以下である高圧法低密度ポリエチレン(b)から構成され、少なくとも下記に示す(i)〜(iii)の工程を経り、(iv)〜(v)の要件を満たすことを特徴とする発泡積層体の製造方法に関するものである。
(i)紙基材の片面又は両面に水を塗布する工程
(ii)(A)層を構成するポリエチレン系樹脂(a)、(B)層を構成する高圧法低密度ポリエチレン(b)を紙基材に積層する工程
(iii)ポリエチレン系樹脂(a)/紙基材/高圧法低密度ポリエチレン(b)からなる積層体に加熱処理を施し、高圧法低密度ポリエチレン(b)を発泡する工程
(iv)少なくとも(i)及び(ii)がロール・ツー・ロールプロセスで製造される。
(v)少なくとも(i)及び(ii)の工程で得られる紙基材又は積層体を防湿性を有するコアに巻き取る。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の積層体を構成するポリエチレン系樹脂(a)のJIS K6922−1(2010年)により測定した密度(以下、単に密度と略す。)は、断熱性、発泡の安定性に優れることから、930〜970kg/mの範囲であり、より好ましくは945〜970kg/m3、最も好ましくは950〜965kg/mである。ポリエチレン系樹脂(a)の密度が930kg/m未満では、断熱性に劣るため好ましくなく、970kg/mを超える範囲では、発泡外観に劣るため好ましくない。
本発明の積層体を構成するポリエチレン系樹脂(a)としては、エチレン単独重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体又はこれらの組成物であり、その分子鎖の形態は直鎖状でもよく、炭素数6以上の長鎖分岐を有していてもよい。このようなポリエチレン系樹脂(a)は、特に限定されるものではなく、前記密度範囲を外れなければよい。
エチレン単独重合体には、低圧法エチレン単独重合体、高圧法低密度ポリエチレンが例示することができる。低圧法エチレン単独重合体は、従来公知の低圧イオン重合法により得ることができる。高圧法低密度ポリエチレンは、従来公知の高圧ラジカル重合法により得ることができる。
エチレン・α−オレフィン共重合体に用いるα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセンなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上が用いられる。
このようなエチレン・α−オレフィン共重合体を得るための方法は特に限定するものではなく、チーグラー・ナッタ触媒やフィリップス触媒、メタロセン触媒を用いた高・中・低圧イオン重合法などを例示することができる。このような共重合体は、市販品の中から便宜選択することができる。
また、本発明を構成するポリエチレン系樹脂(a)には、ポリプロピレンなどの他のポリオレフィンを配合してもよく、これらのポリオレフィンの配合比は1〜30重量%がラミネート成形性と積層体外観の点から好ましい。
本発明の積層体を構成するポリエチレン系樹脂(a)にポリオレフィンを混合する時は、ポリエチレン系樹脂(a)のペレットとポリオレフィンのペレットを固体状態で混合したペレット混合物であってもよいが、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリー等で溶融混練した混合物の方が、品質の安定した製品が得られるので好ましい。溶融混練装置を用いる場合、溶融温度はポリエチレン系樹脂の融点〜300℃程度が好ましい。
さらに、本発明を構成するポリエチレン系樹脂(a)には、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等、ポリオレフィン樹脂に一般に用いられている添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもかまわない。
ポリエチレン系樹脂(a)として、ラミネート成形性に優れることから、高密度ポリエチレン(c)10〜90重量%と高圧法低密度ポリエチレン(d)90〜10重量%から成るエチレン系樹脂組成物(e)であることが好ましい。
高密度ポリエチレン(c)としては、低圧法エチレン単独重合体やエチレン・α−オレフィン共重合体などが挙げられる。
また、高密度ポリエチレン(c)において、エチレン系樹脂組成物(e)のラミネート加工性に優れることから、JIS K6922−1(2010年)により測定したメルトマスフローレート(以下、単にMFRと略す。)は6〜100g/10分の範囲が好ましく、より好ましくは8〜60g/10分の範囲である。
さらに、高密度ポリエチレン(c)において、エチレン系樹脂組成物(e)のラミネート加工性、生産性に優れるため、密度は935〜980kg/mの範囲が好ましく、より好ましくは945〜975kg/mの範囲である。
高圧法低密度ポリエチレン(d)において、エチレン系樹脂組成物(e)の押出ラミネート加工性に優れるため、MFRは0.1〜20g/10分の範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜10g/10分、最も好ましくは1〜4g/10分の範囲である。
また、高圧法低密度ポリエチレン(d)において、エチレン系樹脂組成物(e)の製膜安定性に優れることから、密度は910〜935kg/mの範囲が好ましい。
エチレン系樹脂組成物(e)のMFRは、ラミネート成形性に優れるため、1〜50g/10分の範囲が好ましく、さらに好ましくは3〜20g/10分の範囲である。
本発明の積層体を構成する高圧法低密度ポリエチレン(b)は、従来公知の高圧法ラジカル重合法により得ることができる。
高圧法低密度ポリエチレン(b)の密度は、断熱性及び発泡外観に優れるため、910〜930kg/mの範囲であり、より好ましくは914〜926kg/m、さらに好ましくは916〜924kg/mの範囲である。高圧法低密度ポリエチレン(a)の密度が910kg/m未満では、発泡外観に劣るため好ましくなく、930kg/mを超える範囲では、断熱性に劣るため好ましくない。
また、高圧法低密度ポリエチレン(b)のMFRは、10〜30g/10分の範囲であると、断熱性及び発泡外観に優れるため好ましく、より好ましくは12〜30g/10分、更に好ましくは13〜24g/10分、最も好ましくは13〜18g/10分の範囲である。
本発明を構成する高圧法低密度ポリエチレン(b)には、エチレン・α−オレフィン共重合体などの他のポリオレフィンを配合してもよい。
本発明の積層体を構成する高圧法低密度ポリエチレン(b)にポリオレフィンを混合する時は、高圧法低密度ポリエチレン(b)のペレットとポリオレフィンのペレットを固体状態で混合したペレット混合物であってもよいが、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリー等で溶融混練した混合物の方が、品質の安定した製品が得られるので好ましい。溶融混練装置を用いる場合、溶融温度はポリオレフィン系樹脂の融点〜300℃程度が好ましい。
また、本発明の積層体を構成する高圧法低密度ポリエチレン(b)には、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等、ポリオレフィン樹脂に一般に用いられている添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもかまわない。
本発明の発泡積層体の製造方法は下記(i)〜(iii)の工程を経ることを特徴とする。
(i)紙基材の片面又はは両面に水を塗布する工程
(ii)(A)層としてポリエチレン系樹脂(a)、(B)層として高圧法低密度ポリエチレン(b)を紙基材に積層する工程
(iii)ポリエチレン系樹脂(a)/紙基材/高圧法低密度ポリエチレン(b)からなる積層体に加熱処理を施し、高圧法低密度ポリエチレン(b)を発泡する工程
水を塗布する手法は、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はなく、ロールコート装置、リップコート装置、スプレー装置、ダイコート装置、グラビア装置、ダンプニング装置などを用いた手法が例示することができる。水の塗布量が均一になるため、ダンプニング装置を用いた手法が好ましい。
このようなダンプニング装置は、例えば、鈴木産業(株)より商品名「ハイローターS」が、ニッカ(株)より商品名「WEKOローターダンプニング」が、東機エレクトロニクス(株)より商品名「TSD−3000」が販売されている。
本発明における水の塗布量は、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はないが、高圧法低密度ポリエチレン(b)の発泡倍率が高くでき、かつ、紙基材とポリエチレン系樹脂(a)及び/または高圧法低密度ポリエチレン(b)との接着強度が低下しないことから、1.5〜30g/mが好ましく、より好ましくは3〜20g/m、最も好ましくは3〜10g/mである。
ポリエチレン系樹脂(a)、高圧法低密度ポリエチレン(b)を積層する手法は本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はなく、本発明の積層体を成形する方法としては、押出ラミネート成形法、ドライラミネート成形法、ウェットラミネート成形法、サーマルラミネート成形法、ホットメルトラミネート成形法、圧縮成形法などを例示することができる。ポリエチレン系樹脂(a)、高圧法低密度ポリエチレン(b)の各々の成形方法は、同一の手法を用いてもよく、異なる手法を用いてもよい。
これらの成形方法の中でも生産効率や成形された積層体の品質などの面から、押出ラミネート成形法が好ましい。
押出ラミネート成形法により積層体を得る手法として、シングルラミネート加工法、タンデムラミネート加工法、サンドウィッチラミネート加工法、共押出ラミネート加工法などの各種押出ラミネート加工法を例示することができる。押出ラミネート法における樹脂の温度は260〜350℃の範囲が好ましく、冷却ロールの表面温度は10〜50℃の範囲が好ましい。
また、押出ラミネート加工において、熱可塑性樹脂を溶融状態で押出し層とした直後に、該層の基材接着面を含酸素気体又は含オゾン気体に曝し、基材と貼り合わせる手法を用いると、基材層との接着性に優れることから好ましい。含オゾン気体により熱可塑製樹脂と基材との接着性を向上させる場合は、オゾンガスの処理量としては、ダイより押出された熱可塑製樹脂よりなるフィルム1m当たり0.5mg以上のオゾンを吹き付けることが好ましい。
加熱発泡により本発明の積層体を得る手法における押出ラミネート加工法は、熱可塑製樹脂層と基材層との接着性をさらに向上させるため、熱可塑性樹脂が発泡しない程度の温度、例えば30℃〜60℃の温度で10時間以上熱処理することができる。また必要に応じて、基材の接着面に対してコロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理などの公知の表面処理を施してもよい。また、必要であれば基材にアンカーコート剤を塗布しても良い。
高圧法低密度ポリエチレン(b)を発泡させるために用いる加熱する熱源としては、本目的が達成される限りにおいて特に限定はなく、積層体及び成形した容器では熱風、電熱、電子線などが例示でき、積層体を成形した容器では高温の物体を内填して充填物の熱を利用するなどが例示できる。また、加熱方法は、オーブン内で回分式に行う手法、コンベアなどにより連続的に行う手法などにより行うことができる。
加熱温度、加熱時間などの条件は、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はなく、一般的に、熱風を熱源とする場合は、加熱温度は高圧法低密度ポリエチレン(b)の融点以上150℃以下、風量は0.5〜2.0m/時、加熱時間は10秒〜6分間である。
本発明の加熱条件は、断熱性に優れるため、水の減少速度定数k(分−1)が0.60〜1.30の条件を満たすことが好ましく、より好ましくは0.65〜1.30、最も好ましくは0.80〜1.10である。
ここで、水の減少速度定数k(分−1)とは、高圧法低密度ポリエチレン(b)を発泡させる工程(iii)において、ある加熱時間t(分)における単位時間あたりの水分変化量dW/dtと、ある加熱時間t(分)における紙基材中の水分濃度Wとの関係式である、下式(1)で表される一次速度式における比例定数である。
dW/dt=−kW (1)
この水の減少速度定数k(分−1)は、具体的には、紙基材/ポリエチレン系樹脂の順に積層され、ポリエチレン系樹脂の密度が940kg/m、ポリエチレン系樹脂の厚みが40μmである積層体の加熱時の重量変化を用いて求めることができる。紙基材/ポリエチレン系樹脂からなる積層体を加熱処理した時に得られるある時間t(分)における加熱後の単位面積当たりの重量減少量ΔW(g/m)と式(1)から導出される下式(4)を計算して得られるある時間t(分)における単位面積当たりの重量減少量ΔWt,cal(g/m)を各々0.5分毎に0.5分から6分まで算出した時に、下式(5)で表されるある時間t(分)における誤差εの0.5分から6分までの合計値が最少となるように水の減少速度定数k(分−1)を求める。
ΔWt,cal=W[1−exp(−kt)] (4)
ε=[(ΔW−ΔWt,cal)/ΔW (5)
ここで、Wは紙基材/ポリエチレン系樹脂における加熱前の単位面積あたりの水分量(g/m)である。
本発明の製造方法は、少なくとも(i)及び(ii)の工程をロール・ツー・ロールプロセスで製造する。
ロール・ツー・ロールプロセスとは、ロール状の紙基材若しくは積層体を用い、ある工程を経た後に再度ロール状に巻き取る製造方法である。
本発明の製造方法は、生産効率を高くすることができるため、少なくとも(i)及び(ii)の工程で得られる紙基材又は積層体を防湿性を有するコアに巻き取る。防湿性のないコア、例えば一般紙管を用いると製品ロスが増えるため、好ましくない。ここでいうコアとは、紙基材や積層体をロール状に巻き取る際に用いる巻き芯のことである。
このような防湿性を有するコアは、本発明の目的が達成される限り特に限定はなく、例えば、防湿加工が施された紙管や熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂からなるプラスチックコア、金属からなる金属コアが例示される。
紙管に施される防湿加工は特に限定はなく、紙管表面に熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂をコーティングする手法、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂を積層した紙を紙管表面に巻きつける手法、紙管内部にアルミニウムなどの金属を積層する手法、アルミ箔などの金属箔を紙管内面に積層する手法などが例示できる。
このような防湿加工は紙管表面、紙管内面、紙管内部のいずれに施してもよい。
このような紙管表面に熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂をコーティングした紙管は、シームレス紙管として、田中紙管(株)、三協紙業(株)、(株)昭和丸筒などより販売されている。
また、紙管内部にアルミニウムを積層した紙管は、スパイラル紙業(株)、田中紙管(株)などより販売されている。
プラスチックコアに用いられる熱可塑性樹脂は特に限定はなく、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)などが例示できる。
プラスチックコアに用いられる熱硬化性樹脂は特に限定はなく、ベークライトなどのフェノール樹脂が例示できる。
このようなプラスチックコアは、(株)昭和丸筒、田中紙管(株)、三協紙業(株)、千代田興業(株)、ダイカポリマー(株)などより販売されている。
金属コアに用いられる金属は特に限定はなく、鉄、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウムなどが例示できる。
本発明の製造方法は、生産効率を高くすることができるため、(i)〜(iii)の各工程間において、紙基材又は積層体を透湿度が50g/m・24時間以下である防湿性を有するフィルムで包装することが好ましい。製品ロスが軽減できることから、防湿性フィルムの透湿度は30g/m・24時間以下であればより好ましく、最も好ましくは10g/m・24時間以下である。
このような防湿性フィルムは特に限定はなく、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂からなるフィルム、ポリエチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂を積層した紙、ポリプロピレン系樹脂やポリエステルなどの熱可塑性樹脂からなるフィルムにアルミニウムなどの金属、アルミナなどの金属酸化物、シリカなどのセラミックを蒸着させた蒸着フィルム、またこれらを複数積層した複合フィルムなどが例示できる。
このような防湿性を有するフィルムは、ポリエチレン系樹脂からなる単層フィルム、若しくは少なくともポリエチレン系樹脂を1層含む積層体であると、生産効率を上げることができることから好ましい。
本発明の積層体を構成する紙基材については特に限定はないが、高圧法低密度ポリエチレン(b)の発泡倍率を向上させることができるため、紙基材の坪量は150〜400g/mが好ましく、更に好ましくは、250〜350g/mである。
このような紙基材に含まれる水分は、加熱により高圧法低密度ポリエチレン(b)を発泡させるものである。高圧法低密度ポリエチレン(b)の発泡倍率が向上することから、ポリエチレン系樹脂(a)、高圧法低密度ポリエチレン(b)を積層した後の紙基材の水分量は20〜40g/mの範囲が好ましく、より好ましくは25〜40g/m、最も好ましくは27〜35g/mである。
本発明の製造方法では、本発明の目的が達成される限りにおいては、その他の工程を含んでも構わず、高圧法低密度ポリエチレン(b)の表面に紙、熱可塑性樹脂などの他の層を積層する工程、高圧法低密度ポリエチレン(b)又は/及び紙に印刷を施す工程、ポリエチレン系樹脂(a)/紙基材/高圧法低密度ポリエチレン(b)を容器の形状に製函する工程などが例示できる。
本発明の積層体を構成する(A)層の厚み及び(B)層の発泡前の厚みは、本発明の目的が達成される限りにおいて特に制限はないが、発泡性に優れ、破損などの問題が小さいことから、30μm〜5mmの厚みであることが好ましく、経済性の観点から、30μm〜150μmの範囲が最も好適である。
本発明の発泡積層体について、断熱性に優れるため、発泡層の厚みの総計は1600μm以上が好ましく、より好ましくは1700μm以上、最も好ましくは1800μm以上である。
本発明の発泡積層体は、少なくとも(A)層/紙基材/(B)層が順に積層されてなることを特徴とするものであり、(A)層と紙基材と(B)層の3成分のみからなるものだけでなく他の成分、例えば(C)層を含んでいてもよい。具体的には、(A)層/紙基材/(B)層、(A)層/紙基材/(B)層/(A)層、(B)層/紙基材/(A)層/(B)層、(A)層/紙基材/(B)層/(B)層、(A)層/(A)層/紙基材/(B)層、(A)層/紙基材/(B)層/(C)層、(B)層/紙基材/(A)層/(C)層、(C)層/(B)層/紙基材/(A)層/(B)層/(C)層、(A)層/紙基材/(B)層/(C)層/(B)層/(A)層、(B)層/紙基材/(A)層/(C)層/(A)層/(B)層などが例示される。
(C)層としては、合成高分子重合体から形成される層や織布、不織布、金属箔、紙類、セロファン等が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アイオノマー等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、セルロース系樹脂など合成高分子重合体から形成される層等が挙げられる。更に、これらの高分子重合体フィルム及びシートはさらにアルミ蒸着、アルミナ蒸着、二酸化珪素蒸着、アクリル処理されたものでもよい。また、これらの高分子重合体フィルム及びシートはさらにウレタン系インキ等を用い印刷されたものでもよい。金属箔としては、アルミ箔、銅箔などが例示でき、また、紙類としてはクラフト紙、上質紙、伸張紙、グラシン紙、カップ原紙や印画紙原紙等の板紙などが挙げられる。
本発明の容器は、所定の形、大きさに打ち抜かれた少なくとも胴部材と底部材からなり、断熱性に優れることから、本発明の製造方法により製造された発泡積層体を少なくとも胴部材に使用することが好ましい。容器を製函する手法は、本発明の目的が達成される限りにおいて特に制限はない。
また、容器を製函する工程の順序は特に限定はないが、生産効率が高いことから、高圧法低密度ポリエチレン(b)を発泡する工程の直前に行われることが好ましい。
本発明の製造方法により、高い生産効率で、発泡層が厚く、優れた断熱性を示す発泡積層体の製造ができる。
以下、実施例および比較例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)密度
密度は、JIS K6922−1(2010年)に準拠して測定した。
(2)メルトマスフローレート(MFR)
MFRは、JIS K6922−1(2010年)に準拠して測定した。
(3)加熱発泡
実施例により得られた積層体を10cm×20cmに切り出し円筒状に成形したサンプルを、所定の温度に加熱したギア式老化試験機(安田精機製作所製 No.102−SHF−77)中で熱風をあてながら所定の時間静置した後、取り出して空気中で室温まで冷却した。また、加熱時の風量について「AGING」ボタンの「HIGH」と「LOW」で調節した。
(4)紙基材の水分量
ポリエチレン系樹脂の積層前後の紙基材について、カールフィッシャー法水分測定装置(三菱化学(株)製、商品名CA−05)を使用し測定した。測定温度は165℃である。
(5)水の減少速度定数k
水分量が24.0g/mであり、坪量320g/mである紙基材に、MFRが7g/10分、密度が940kg/mである高密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン LW04−1)を直径90mmφのスクリューを有する単軸押出ラミネーター(ムサシノキカイ(株)製)へ供給し、320℃の温度でTダイより押し出し、紙基材上に引き取り速度が60m/分、エアギャップ長さが130mmで40μmの厚さになるよう押出ラミネート成形を行った後、恒温恒湿槽(日立アプライアンス(株)製、EC−25MHHP)を使用して実施例及び比較例に記載の水分量に調湿した積層体を用いた。これらの積層体を(3)加熱発泡と同様の手法で0.5分毎に6分まで加熱処理を行い、小数点第4桁まで測定できる電子天秤(ザルトリウス(株)製、BP210S)を用いて、加熱処理前後の重量変化を測定し、重量減少量ΔW(g/m)を算出した。このΔWを用いて、水の減少速度定数k(分−1)を明細書中に例示した方法を用いて算出した。
(6)発泡層厚み
実施例により得られた発泡体、及びブランクとして発泡させる前のラミネート積層体をサンプル取りし、光学顕微鏡により断面写真を撮影した。断面写真から発泡層の厚みを測定し、5箇所で測定した。発泡層の厚みが1000μm未満であれば×、1000μm以上1200μm未満であれば△、1200μm以上であれば○とした。なお、発泡層厚みが1000μm以上であれば、良好であると評価した。
(7)発泡表面の状態
得られた発泡体の表面の平滑性を目視で観測した。表面の平滑性が良好である場合を○、良好であるもののやや劣る場合を△、不良の場合を×とした。
(8)生産効率
実施例により得られた発泡前の積層体のロールサンプルについて、23℃・55%Rhの環境下で15日間放置した後、最も再表面(以後、巻外と表記)の積層体と最も再内面(以後、巻内と表記)の積層体を切出し、(4)紙基材の水分量測定と同様の手法で紙基材の水分量を測定した。この水分量が高いほど保管時の水分率低下が少なく生産効率が高いこととなり、その水分量が巻内、巻外共に24g/m以上で◎、23g/m以上で〇、22g/m以上で△、22g/m未満で×とした。
実施例1
ポリエチレン系樹脂(a)として、MFRが7g/10分、密度が940kg/mである高密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン LW04−1)(A1)を、高圧法低密度ポリエチレン(b)として、MFRが13g/10分、密度が919kg/mである高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン 212)(B1)、紙基材として水分量が21.0g/m、坪量が280g/m、幅530mmであるロール状の紙基材を、ロールサンプルを巻き取るコアとして幅530mmである田中紙管(株)製シームレス紙管(C1)を使用した。
まず、ロール状の紙基材を繰出し、(A1)を直径90mmφのスクリューを有する単軸押出ラミネーター(ムサシノキカイ(株)製)へ供給し、320℃の温度でTダイより押し出し、紙基材上に引き取り速度が60m/分、エアギャップ長さが130mmで40μmの厚さになるよう押出ラミネート成形を行い、(C1)に巻き取った。さらに、得られた積層体のロールサンプルを繰出し、(B1)を積層する前に、(B1)を積層する面にハイローターS(スズキ産業(株)製)を用いて、紙基材に8g/m塗布した後、(B1)を直径90mmφのスクリューを有する単軸押出機(ムサシノキカイ(株)製)へと供給し、320℃の温度、60m/分の引き取り速度、130mmのエアギャップ長さで70μmとなるよう押出ラミネートを行い、ポリエチレン系樹脂(A1)、紙基材、高圧法低密度ポリエチレン(B1)の順に積層されてなる積層体を(C1)に巻き取った。得られた積層体を23℃・55%Rh温度120℃で15日間放置した後、ロールサンプルの巻内、巻外、中央部からA4サイズのサンプルを切り出し、それぞれ水分量を測定した。また、中央部のサンプルについては、温度120℃、風量LOWで5分間加熱して発泡させ、発泡積層体を得た。得られた発泡前後の積層体について、発泡層の厚みを評価した。評価の結果を表1に示す。
実施例2
実施例1に使用したポリエチレン系樹脂、紙基材、コアを使用し、発泡する際の風量をHIGHとした以外は、実施例1と同様の手法により発泡前後の積層体を得た。得られた積層体について、発泡層の厚みを評価した。結果を表1に示す。
実施例3
実施例2に使用したポリエチレン系樹脂、紙基材、コアを使用し、紙基材における(A1)を積層する面に4g/mの水を塗布し、(B1)を積層する面に4g/mの水を塗布した以外は、実施例2と同様の手法により発泡前後の積層体を得た。得られた積層体について、発泡層の厚みを評価した。結果を表1に示す。
実施例4
実施例2に使用したポリエチレン系樹脂、紙基材を使用し、コアとして紙管内部にアルミニウム層を積層した田中紙管(株)製防湿性紙管(C2)を用いた以外は、実施例2と同様の手法により発泡前後の積層体を得た。得られた積層体について、発泡層の厚みを評価した。結果を表1に示す。
実施例5
実施例2に使用したポリエチレン系樹脂、紙基材を使用し、コアとしてポリエチレンからなる田中紙管(株)製ポリエチレンコア(C3)を用いた以外は、実施例2と同様の手法により発泡前後の積層体を得た。得られた積層体について、発泡層の厚みを評価した。結果を表1に示す。
実施例6
実施例5に使用したポリエチレン系樹脂、紙基材、コアを使用し、積層体を成形した直後に透湿度が19g/m・24hであり、坪量50g/mであるクラフト紙に密度920kg/mである低密度ポリエチレンを25μm積層したフィルム(F1)で包装した以外は、実施例5と同様の手法により発泡前後の積層体を得た。得られた積層体について、発泡層の厚みを評価した。結果を表1に示す。
実施例7
実施例6に使用したポリエチレン系樹脂、紙基材、コアを使用し、積層体を成形した直後に透湿度が7g/m2・24hであり、坪量50g/mであるクラフト紙に密度950kg/mである高密度ポリエチレンを25μm積層したフィルム(F2)で包装した以外は、実施例6と同様の手法により発泡前後の積層体を得た。得られた積層体について、発泡層の厚みを評価した。結果を表1に示す。
Figure 0006435768
比較例1
水を塗布しなかったこと以外は、実施例1と同様の手法により発泡前後の積層体を得た。得られた積層体について、発泡層の厚みを評価した。結果を表2に示す。発泡後の発泡層厚みに劣っていた。
比較例2
水を塗布しなかったこと以外は、実施例2と同様の手法により発泡前後の積層体を得た。得られた積層体について、発泡層の厚みを評価した。結果を表2に示す。発泡後の発泡層厚み及び生産効率に劣っていた。
比較例3
コアとして防湿処理が施されていない田中紙管(株)製一般紙管を使用したこと以外は、実施例2と同様の手法により発泡前後の積層体を得た。得られた積層体について、発泡層の厚みを評価した。結果を表2に示す。生産効率に劣っていた。
比較例4
コアとして防湿処理が施されていない田中紙管(株)製一般紙管を使用したこと以外は、実施例6と同様の手法により発泡前後の積層体を得た。得られた積層体について、発泡層の厚みを評価した。結果を表2に示す。生産効率に劣っていた。
比較例5
コアとして防湿処理が施されていない田中紙管(株)製一般紙管を使用したこと以外は、実施例7と同様の手法により発泡前後の積層体を得た。得られた積層体について、発泡層の厚みを評価した。結果を表2に示す。生産効率に劣っていた。
Figure 0006435768
本発明の発泡積層体は、コーヒー、スープなどの高温飲料用の紙容器、インスタントラーメンなどの即席食品用の容器等、断熱性を求められる容器に好適に使用される。

Claims (12)

  1. 少なくとも(A)層/紙基材/(B)層の順に積層されてなる発泡積層体の製造方法であって、(A)層がJIS K6922−1(2010年)により測定された密度が930kg/m以上970kg/m以下であるポリエチレン系樹脂(a)、(B)層がJIS K6922−1(2010年)により測定された密度が910kg/m以上930kg/m以下である高圧法低密度ポリエチレン(b)から構成され、少なくとも下記に示す(i)〜(iii)の工程を経り、(iv)〜(v)の要件を満たすことを特徴とする発泡積層体の製造方法。
    (i) 紙基材の片面又は両面に水を塗布する工程
    (ii) (A)層を構成するポリエチレン系樹脂(a)、(B)層を構成する高圧法低密度ポリエチレン(b)を紙基材に積層する工程
    (iii) ポリエチレン系樹脂(a)/紙基材/高圧法低密度ポリエチレン(b)からなる積層体に加熱処理を施し、高圧法低密度ポリエチレン(b)を発泡する工程
    (iv) 少なくとも(i)及び(ii)がロール・ツー・ロールプロセスで製造される。
    (v) 少なくとも(i)及び(ii)の工程で得られる紙基材又は積層体を防湿性を有するコアに巻き取る。
    (vi) 工程(iii)までの各工程間において、得られた紙基材又は積層体を透湿度が50g/m ・24時間以下である防湿性フィルムで包装する。
  2. 水の紙基材への塗布量が1.5g/m以上30g/m以下であることを特徴とする請求項1に記載の発泡積層体の製造方法。
  3. ダンプニング装置を用いて、紙基材に水を塗布することを特徴とする請求1又は2に記載の発泡積層体の製造方法。
  4. 紙基材の坪量が150g/m以上400g/m以下であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項に記載の発泡積層体の製造方法。
  5. 防湿性を有するコアが防湿加工が施された紙管であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか一項に記載の発泡積層体の製造方法。
  6. 防湿性を有するコアが熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなるプラスチックコアであることを特徴とする請求項1乃至4いずれか一項に記載の発泡積層体の製造方法
  7. 防湿性フィルムがポリエチレン系樹脂からなる単層フィルムであることを特徴とする請求項1乃至6いずれか一項に記載の発泡積層体の製造方法。
  8. 防湿性フィルムがポリエチレン系樹脂を少なくとも1層含む積層体であることを特徴とする請求項1乃至6いずれか一項に記載の発泡積層体の製造方法。
  9. 高圧法低密度ポリエチレン(b)を発泡する工程において、水の減少速度定数k(分−1)が0.60以上1.30以下の条件を満たす加熱条件を施すことを特徴とする請求項1乃至8いず一項に記載の発泡積層体の製造方法。
  10. 少なくとも(A)層/紙基材/(B)層の順に積層されてなる積層体であって、(A)層がJIS K6922−1(2010年)により測定された密度が930kg/m 以上970kg/m 以下であるポリエチレン系樹脂(a)、(B)層がJIS K6922−1(2010年)により測定された密度が910kg/m 以上930kg/m 以下である高圧法低密度ポリエチレン(b)、片面又は両面に水が塗布されている紙基材から構成され、防湿性を有するコアにロール状に巻き取られている発泡用積層体。
  11. 透湿度が50g/m ・24時間以下である防湿性を有するフィルムで包装されている請求項10に記載の発泡用積層体。
  12. 紙基材の水分量が20〜40g/m である請求項10又は11に記載の発泡用積層体。
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