JP6353237B2 - 吸収性物品 - Google Patents

吸収性物品

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Description

本発明は、尿パッド(軽失禁パッドを含む)、生理用ナプキン、使い捨ておむつ等の吸収性物品に関するものである。
従来、シート部材の間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないように構成された吸収体を有する吸収性物品が知られている。例えば特許文献1〜4には、このような吸収体を有する吸収性物品が開示されている。また特許文献5には、厚さ方向の上方に位置する第1シートと厚さ方向の下方に位置する第2シートの間に吸水性樹脂が配された吸収体であって、体液を吸収すると第1シートが第2シートよりも隆起するように形成された吸収体が開示されている。
特開2000−238161号公報 特開2004−275225号公報 特開2009−061230号公報 特開2013−042882号公報 特開2010−063815号公報
シート部材の間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないように構成された吸収体は、パルプ繊維が含まれていないために薄型に形成することができる一方、尿等を吸収すると吸水性樹脂が膨潤して、吸収体の表面に凹凸が形成されやすくなる。そして、このように形成された吸収体の表面の凹凸に着用者の肌が当たると、着用者が違和感を覚えて、着用感が悪化するおそれがある。
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シート部材間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないように構成された吸収体を備えた吸収性物品であって、尿等を吸収しても着用感が良好な吸収性物品を提供することにある。
前記課題を解決することができた本発明の吸収性物品とは、トップシートとバックシートとこれらの間に配された吸収体とを有する吸収性物品であって、吸収体は、トップシート側に配される上側シートと、バックシート側に配される下側シートとを有するとともに、上側シートと下側シートの間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有さず、上側シートの5%伸長時の伸長応力が下側シートの5%伸長時の伸長応力よりも大きいところに特徴を有する。本発明の吸収性物品はこのように構成されているため、吸収体に含まれる吸水性樹脂が尿等を吸収して膨潤すると、吸収体が上側よりも下側に膨らみやすくなる。そのため、吸収体が尿等を吸収しても、吸収体の着用者側の面に大きな凹凸が形成されにくくなり、着用者が違和感を覚えにくくなる。その結果、吸収性物品の着用感が良好なものとなる。
上側シートは、再生セルロース繊維を50質量%以上含有する不織布からなることが好ましい。上側シートを構成する不織布が、再生セルロース繊維を主に含有することにより、パルプ等の天然繊維を主に含有する場合と比較して、上側シートの尿等の吸収能力を高めつつ、上側シートの伸長応力を大きく形成しやすくなる。さらに、上側シートの不織布はパルプ繊維を含有しないことが好ましく、このように上側シートが構成されていれば、上側シートの強度が高められ、上側シートの伸長応力を大きく形成しやすくなる。
上側シートはスパンレース不織布からなり、下側シートはエアスルー不織布からなり、上側シートのスパンレース不織布の繊維配向方向に対する5%伸長時の伸長応力が、下側シートのエアスルー不織布の繊維配向方向に対する5%伸長時の伸長応力よりも大きいことが好ましい。このように上側シートと下側シートが構成されていれば、着用者から排泄された尿等が吸収体に好適に吸収されやすくなるとともに、尿等がバックシート側から漏れるのが防止されやすくなる。
下側シートの5%伸長時の伸長応力は、上側シートの5%伸長時の伸長応力の75%以下であることが好ましい。上側シートと下側シートがこのように形成されていれば、吸収体に含まれる吸水性樹脂が尿等を吸収して膨潤した際、吸収体が上側に膨らむ程度が抑えられ、吸収体の着用者側の面に大きな凹凸が形成されにくくなる。
上側シートの不織布は熱融着性繊維を5質量%以上40質量%以下含有し、吸収体は、上側シートと下側シートとが熱融着されることにより封止部が形成されていることが好ましい。上側シートの不織布が熱融着性繊維を含有していれば、上側シートと下側シートとを熱融着することにより封止部を形成しやすくなる。そして、吸収体に封止部が形成されていれば、封止部が尿等の拡散通路として機能し、吸収体で受けた尿等が封止部を通って拡散しやすくなる。その結果、尿等が吸収体によって速やかに吸収されるようになり、また吸水性樹脂の吸水能が広範囲にわたって活用されやすくなる。
吸収体は、上側シートと下側シートとが接合されて封止部が形成され、封止部が吸収性物品の長手方向に延びるストライプ状に配置されていることが好ましい。このように封止部が形成されていれば、封止部を通って尿等が吸収体を長手方向に拡散しやすくなる。その結果、吸収体に配された吸水性樹脂のより多くが尿等の吸収に寄与しやすくなり、吸収体の吸収能を高めることができる。
本発明の吸収性物品は、上側シートと下側シートの間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないように構成された吸収体を有し、吸収体の上側シートの伸長応力が下側シートの伸長応力よりも大きく形成されているため、吸収体の吸水性樹脂が尿等を吸収して膨潤すると、吸収体が上側よりも下側に膨らみやすくなる。そのため、吸収体が尿等を吸収しても、吸収体の着用者側の面に大きな凹凸が形成されにくくなり、着用者が違和感を覚えにくくなる。その結果、吸収性物品の着用感が良好なものとなる。
本発明の吸収性物品の一例を表し、吸収性物品として尿パッドをトップシート側から見た平面図を表す。 図1に示した吸収性物品のA−A断面図を表す。 図2に示した吸収性物品の吸収体の断面図を表す。
本発明の吸収性物品は、トップシートとバックシートとこれらの間に配された吸収体とを有する。本発明の吸収性物品の態様としては、尿パッド(失禁パッドを含む)、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等が示される。
吸収性物品は、長手方向と幅方向とを有する。「長手方向」とは、吸収性物品を着用した際、着用者の股間の前後方向に延びる方向を意味する。「幅方向」とは、吸収性物品と同一面上にあり、長手方向と直交する方向を意味する。また本発明において、「上側」とは、吸収性物品を着用した際の着用者側を意味し、「下側」とは、吸収性物品を着用した際の着用者とは反対側、すなわち外側を意味する。上側から下側に延びる方向を、上下方向と規定する。
吸収性物品の形状は特に限定されない。吸収性物品が尿パッドや生理用ナプキンである場合、吸収性物品の形状としては、略長方形、砂時計形、ひょうたん形、羽子板形等が示される。
吸収性物品が使い捨ておむつである場合、吸収性物品は、例えば、前腹部と後背部とこれらの間に位置し吸収体が備えられた股部とから構成される。使い捨ておむつとしては、例えば、前腹部と後背部とこれらの間に位置する股部とからなるパンツ部材の肌側面に、トップシートとバックシートの間に吸収体が配された吸収性本体が設けられてもよい。このとき、吸収性本体の形状としては略長方形等が示される。使い捨ておむつとしてはまた、トップシートとバックシートの間に吸収体が配された積層体が、前腹部と後背部とこれらの間に位置する股部とを形成してもよい。なお、前腹部は、使い捨ておむつを着用の際に着用者の腹側に当てる部分に相当し、後背部は、使い捨ておむつを着用の際に着用者の背側に当てる部分に相当する。股部は、前腹部と後背部との間に位置し、着用者の股間に当てる部分に相当する。
吸収性物品が使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつは、左右に一対の止着部材が備えられ、当該止着部材により着用時にパンツ型に形成するオープン型使い捨ておむつであってもよく、ウェスト開口部と一対の脚開口部とが形成されたパンツ型使い捨ておむつであってもよい。
トップシートは、吸収性物品の着用の際に着用者側に位置するシートであり、液透過性であることが好ましい。トップシートとしては、例えば、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維から形成された不織布や、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布であって、疎水性繊維の表面が界面活性剤により親水化されたもの等を用いることができる。また、トップシートとして、織布、編布、有孔プラスチックフィルム等を用いてもよい。
バックシートは、吸収性物品の着用の際に着用者とは反対側、すなわち外側に位置するシートであり、液不透過性であることが好ましい。バックシートとしては、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布や、プラスチックフィルム等を用いることができる。また、不織布とプラスチックフィルムとの積層体を用いてもよい。本発明において、液不透過性には撥水性の意味も含まれる。
パンツ部材は、液透過性であっても液不透過性であってもよく、トップシートやバックシートに使用可能なシート材料を用いることができる。パンツ部材は、内側シートに外側シートが積層されて形成されることが好ましく、親水性の内側シートに液不透過性の外側シートが積層されて形成されることがより好ましい。
上記説明した各シート材料として不織布を用いる場合、不織布としては、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、メルトブロー不織布、エアレイド不織布、SMS不織布等を用いることが好ましい。
吸収体は、トップシートとバックシートとの間に設けられる。吸収体は、トップシート側に配される上側シートと、バックシート側に配される下側シートとを有するとともに、上側シートと下側シートの間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しない。つまり吸収体は、上側シートと下側シートの間に吸水性樹脂が配されるが、これらのシート間にはパルプ繊維は配されない。なお、吸収体において、製造上不可避的に混入するパルプ繊維の存在は許容される。吸収体は、上側シートと下側シートの間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないため、高い吸収容量を有しつつ薄型に形成することができる。
上側シートと下側シートは液透過性であることが好ましく、例えば、パルプ、レーヨン、コットン等の親水性繊維から形成された不織布や、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布であって、疎水性繊維の表面が界面活性剤により親水化されたものを用いることができる。また、上側シートと下側シートとして、織布、編布、有孔プラスチックフィルム等を用いてもよい。好ましくは、上側シートと下側シートとして、不織布製シート部材(不織布シート)を用いる。不織布としては、スパンレース不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等を用いることが好ましい。
吸水性樹脂としては、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸系の吸水性樹脂;デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体、デンプン−アクリル酸グラフト共重合体、デンプン−アクリルアミドグラフト共重合体等のデンプン系の吸水性樹脂;ポリビニルアルコール架橋体等のポリビニルアルコール系の吸水性樹脂等を用いることができる。吸水性樹脂としては、高い液吸収量を有する点で、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸系の吸水性樹脂を用いることが好ましい。
吸収体の形状(平面形状)は特に限定されない。吸収体の形状は用途に応じて適宜決定すればよく、例えば、略長方形、砂時計形、ひょうたん形、羽子板形等が挙げられる。なお、製造容易性の点から、吸収体は略長方形であることが好ましい。
吸収体は、上側シートの5%伸長時の伸長応力が、下側シートの5%伸長時の伸長応力よりも大きくなるように構成されている。つまり、下側シートが上側シートよりも伸びやすく形成されている。なお、伸長応力は、JIS L 1913 6.3.1(2004年度版)に準じて、上側シートと下側シートを吸収性物品の長手方向に伸長させて測定する。この際、引張試験機のつかみ間隔を100mmに設定し、各シートを引張速度を300mm/分で引っ張ったときの5%伸長時の荷重を、5%伸長時の伸長応力として求める。本発明の吸収性物品はこのように構成されているため、吸収体に含まれる吸水性樹脂が尿等を吸収して膨潤すると、吸収体が上側よりも下側に膨らみやすくなる。そのため、吸収体が尿等を吸収しても、吸収体の着用者側の面に大きな凹凸が形成されにくくなり、着用者が違和感を覚えにくくなる。その結果、吸収性物品の着用感が良好なものとなる。
下側シートの5%伸長時の伸長応力は、上側シートの5%伸長時の伸長応力の75%以下であることが好ましく、65%以下がより好ましく、60%以下がさらに好ましい。上側シートと下側シートがこのように形成されていれば、吸収体に含まれる吸水性樹脂が尿等を吸収して膨潤した際、吸収体が上側に膨らむ程度が抑えられ、吸収体の着用者側の面に大きな凹凸が形成されにくくなる。一方、下側シートの上側シートに対する伸長応力の比率の下限は特に限定されないが、下側シートの5%伸長時の伸長応力は、上側シートの5%伸長時の伸長応力の20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましい。上側シートと下側シートがこのように形成されていれば、吸収体に含まれる吸水性樹脂が尿等を吸収して膨潤した際、吸収体が過剰に下側に膨らみにくくなり、吸収体が意図せず歪んだりしにくくなる。
上側シートと下側シートの5%伸長時の伸長応力の具体的な値は特に限定されないが、上側シートと下側シートの5%伸長時の伸長応力は、例えば、1N以上が好ましく、2N以上がより好ましく、また20N以下が好ましく、15N以下がより好ましく、10N以下がさらに好ましい。
上側シートの5%伸長時の伸長応力が下側シートの5%伸長時の伸長応力よりも大きくなるように形成するためには、上側シートと下側シートを構成する材料を適宜選択すればよい。例えば、上側シートの目付を下側シートの目付よりも大きくしたり、上側シートを伸びにくい材料から構成すればよい。上側シートと下側シートが不織布シートである場合は、不織布の構成材料や形成方法を変えることにより、下側シートが上側シートよりも伸びやすくするようにすることもできる。
上側シートと下側シートは不織布からなることが好ましい。すなわち、上側シートと下側シートは不織布シートであることが好ましい。上側シートと下側シートが不織布から構成されていれば、上側シートの尿等の透過性を高めつつ、下側シートの伸長応力を小さく形成しやすくなる。
上側シートは、パルプ等の天然繊維および/またはレーヨン等の再生セルロース繊維を50質量%以上含有する不織布からなることが好ましい。上側シートの不織布は、より好ましくは、天然繊維および/または再生セルロース繊維を60質量%以上含有し、さらに好ましくは70質量%以上含有し、また95質量%以下含有することが好ましく、90質量%以下含有することがより好ましい。このように上側シートが構成されていれば、着用者から排泄された尿等が上側シートによって速やかに吸収されやすくなり、吸収体の吸収能が向上する。
上側シートは、レーヨン等の再生セルロース繊維を50質量%以上含有する不織布からなることが好ましい。上側シートを構成する不織布が、パルプ等の天然繊維でなく再生セルロース繊維を主に含有することにより、上側シートの尿等の吸収能を高めつつ、上側シートの伸長応力を大きく形成しやすくなる。パルプ繊維は一般にパルプを粉砕することにより得られるため、繊維長が比較的短くなるのに対し、再生セルロース繊維はパルプ等の天然セルロースから再合成することにより得られるため、繊維長がパルプ繊維よりも長くなるのが一般的である。そのため、パルプ繊維を含有する不織布と再生セルロース繊維を含有する不織布を比較すると、前者と後者と親水性は大きく変わらないにも関わらず、後者の方が前者よりも強度が高く、伸長応力を大きく形成することが可能となる。従って、上側シートが下側シートよりも伸長応力が大きい吸収体を得ることが容易になる。また、上側シートを構成する不織布が、パルプ等の天然繊維でなく再生セルロース繊維を主に含有することにより、上側シートの風合いも向上させることができる。上側シートの不織布は、より好ましくは、再生セルロース繊維を60質量%以上含有し、さらに好ましくは70質量%以上含有し、また95質量%以下含有することが好ましい。再生セルロース繊維としては、代表的にはレーヨンを用いることが好ましい。
上側シートの不織布はパルプ繊維を含有しないことが好ましい。上側シートの不織布がパルプ繊維を含有していなければ、上側シートの強度が高められ、上側シートの伸長応力を大きく形成しやすくなる。
上側シートの不織布は熱融着性繊維を含有していてもよい。熱融着性繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維や、PET等のポリエステル繊維、ナイロン等のポリアミド繊維等が挙げられる。上側シートの不織布が熱融着性繊維を含有していれば、上側シートと下側シートとを熱融着することにより封止部を形成しやすくなる。封止部の詳細については後述する。上側シートの不織布が熱融着性繊維を含有する場合、上側シートの不織布は熱融着性繊維を5質量%以上含有することが好ましく、10質量%以上含有することがより好ましい。また、上側シートの肌触りを向上させる点から、上側シートの不織布は熱融着性繊維を40質量%以下含有することが好ましく、30質量%以下含有することがより好ましく、25質量%以下含有することがさらに好ましい。なお、上側シートの不織布が熱融着性繊維から構成される場合、上側シートの不織布は異なる融点を有する2種以上の熱融着繊維から形成されていることが好ましく、これにより不織布の強度を高めつつ肌触りを向上させることができる。
下側シートの構成は特に限定されない。下側シートが不織布から構成される場合、下側シートの不織布は、パルプ等の天然繊維やレーヨン等の再生セルロース繊維を含有していてもよく、熱融着性繊維を含有していてもよい。なお下側シートは、上側シートのように尿等を速やかに吸収することが求められないため、パルプ等の天然繊維やレーヨン等の再生セルロース繊維を含有していなくてもよい。また、下側シートが上側シートと熱融着される場合は、下側シートは熱融着性繊維を含有することが好ましい。下側シートは、不織布の代わりに、プラスチックフィルムから構成されてもよい。
上側シートと下側シートが、スパンレース不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等の構成繊維が一方向に配向した不織布からなる場合、これらの不織布は構成繊維が吸収性物品の長手方向に配向していることが好ましい。吸収性物品は、着用の際に、長手方向に対してより強く引っ張られて、負荷がかかりやすい。一方、構成繊維が一方向に配向した不織布は、繊維の配向方向に対して強度が高くなる傾向を示す。従って、上側シートと下側シートの不織布の構成繊維が吸収性物品の長手方向に配向していれば、上側シートや下側シートが破断しにくくなる。特に、吸収性物品を着用の際に、吸収体に含まれる吸水性樹脂が尿等を吸収して膨潤することにより上側シートや下側シートが伸長しても、上側シートや下側シートが破断しにくくなる。
不織布の構成繊維の配向方向は、不織布の表面を顕微鏡等で観察することにより確認できる。例えばスパンボンド不織布は、ポリマー原料を溶融し、紡糸口金から押し出して延伸し、これをコンベアベルト等の上に集積して、ウェブ状に形成することにより得られるが、この際、コンベアベルト上に集積されたウェブ(繊維)はコンベアベルトの進行方向に沿って配列されることとなる。従って、この場合、ウェブ(繊維)はコンベアベルトの進行方向(MD方向)に沿って配向することとなる。エアスルー不織布やスパンレース不織布では、不織布を製造するに当たり、繊維塊形成の際の原料短繊維の集積方法やウェブ形成の際の開繊方法を適宜設定することにより、構成繊維の配向方向を揃えることができる。
上側シートはスパンレース不織布からなることが好ましい。上側シートがスパンレース不織布から構成されていれば、着用者から排泄された尿等が上側シートによって速やかに吸収されやすくなる。特に、尿等が複数回排泄されても、上側シートによる尿等の吸収能を好適に保つことができる。その結果、尿等が吸収体によって好適に吸収されるようになる。
下側シートはエアスルー不織布からなることが好ましい。下側シートがエアスルー不織布から構成されていれば、下側シートが嵩高に形成され、下側シートによる尿等の保持能力を高めることができる。そのため、尿等が吸収体の下側シート側に移行しても、尿等が下側シートによって保持され、尿等がバックシート側から漏れるのを防ぎやすくなる。また、下側シートによるクッション性を高めることができる。
上側シートがスパンレース不織布からなり、下側シートがエアスルー不織布からなる場合、上側シートは、スパンレース不織布の繊維配向方向に対する5%伸長時の伸長応力が、下側シートのエアスルー不織布の繊維配向方向に対する5%伸長時の伸長応力よりも大きくなることが好ましい。この場合、スパンレース不織布とエアスルー不織布は、吸収性物品の長手方向に繊維が配向していることが好ましい。このように上側シートと下側シートが構成されていれば、吸収性物品を使用の際に上側シートと下側シートが破断しにくくなり、また、吸収体が尿等を吸収した際に吸収体の着用者側の面に大きな凹凸が形成されにくくなり、吸収性物品の着用感が向上する。
吸収体は、上側シートと下側シートとが接合されて封止部が形成されていることが好ましい。この場合、上側シートと下側シートとが接合されない非封止部には、吸水性樹脂が配されて、吸収領域が形成されていることが好ましい。封止部は、上側シートと下側シートを接着剤で接合したり、熱融着(ヒートシールや超音波接着)することにより形成される。封止部は、上側シートと下側シートとが接合される部分として規定され、封止部での吸水性樹脂の存在は許容される。吸収体に封止部が形成されていれば、封止部が尿等の拡散通路として機能し、吸収体で受けた尿等が封止部を通って拡散しやすくなる。その結果、尿等が吸収体によって速やかに吸収されるようになり、また吸水性樹脂の吸水能が広範囲にわたって活用されやすくなる。
封止部が接着剤の塗布により形成される場合、接着剤としては、ゴム系接着剤(例えば、天然ゴム系、ブチルゴム系、ポリイソプレン等)やスチレン系エラストマー(例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)等)を用いることが好ましい。このような接着剤を用いることにより、吸収体が尿等を吸収しても、上側シートと下側シートとの接合が十分維持されるようになる。
封止部は、上側シートと下側シートとを熱融着することにより形成されることも好ましい。このように封止部が形成されれば、上側シートと下側シートがより強く接合されるようになる。なお上側シートと下側シートとを熱融着することにより封止部が形成される場合、上側シートと下側シートは熱融着性繊維を含む不織布またはプラスチックフィルムから構成されることが好ましく、このように上側シートと下側シートが構成されることにより、上側シートと下側シートを好適に熱融着しやすくなる。
封止部は、吸収体が尿等を吸収してある程度の厚みまで膨潤することにより、上側シートと下側シートの接合が解除されることも好ましい。このように封止部が形成されれば、吸収体が尿等を繰り返し吸収することにより封止部の接合が解除され、吸水性樹脂が膨潤するスペースが確保されるようになる。その結果、吸収体に配された吸水性樹脂の吸水能が十分活用されやすくなる。封止部の剥離力は、例えば、0.5N以上が好ましく、また10N以下が好ましく、7N以下がより好ましく、3N以下がさらに好ましい。封止部の剥離力は、JIS K 6854−3(2008年度版)の剥離接着強さ試験方法(T形剥離)に従い、吸収体の吸水前の状態で測定する。ただし、試験片は50mm幅で切り出し、剥離速度は300mm/分で設定する。
封止部の剥離力を上記のような範囲に調整するためには、上側シートと下側シートを比較的弱い接合力で熱融着により接合することが好ましい。その点で、上記に説明したように、上側シートは、天然繊維および/または再生セルロース繊維を50質量%以上95質量%以下含有し、熱融着性繊維を5質量%以上40質量%以上含有する不織布からなることが好ましい。
封止部は長手方向に延びるストライプ状に配置されていることが好ましい。具体的には、封止部は、長手方向に延びるように、幅方向に3つ以上並んで設けられることが好ましい。このように封止部が形成されていれば、封止部を通って尿等が吸収体を長手方向に拡散しやすくなる。その結果、吸収体に配された吸水性樹脂のより多くが尿等の吸収に寄与しやすくなり、吸収体の吸収能を高めることができる。
吸収領域に配される吸水性樹脂の量は特に限定されないが、100g/m以上が好ましく、150g/m以上がより好ましく、また400g/m以下が好ましく、385g/m以下がより好ましい。吸収領域に吸水性樹脂が100g/m以上の量で配されていれば、吸収体の吸収容量を高めやすくなる。一方、吸収領域に吸水性樹脂が400g/m以下の量で配されていれば、吸収領域に配された吸水性樹脂の吸収能が効率的に活用されやすくなる。
吸収体では、吸水性樹脂は接着剤により上側シートおよび/または下側シートに固定されていることが好ましい。すなわち、上側シートおよび/または下側シートには接着剤が塗布されて接着剤層が設けられ、吸水性樹脂が接着剤層で上側シートおよび/または下側シートに固定されていることが好ましい。接着剤層は、吸水性樹脂の上側シートと下側シートの少なくとも一方に設けられればよいが、好ましくは、接着剤層は上側シートと下側シートの両方に設けられる。吸水性樹脂は、少なくとも一部が接着剤層に固定されていればよく、例えば、接着剤層に接する吸水性樹脂が接着剤層に固定されていればよい。吸水性樹脂が接着剤層により上側シートおよび/または下側シートに固定されていれば、吸水性樹脂の吸水前においては、吸水性樹脂が上側シートと下側シートの間で移動しにくくなり、吸収層における尿等の吸収能力が確保されやすくなる。吸水性樹脂の吸水後においても、ゲル化した吸水性樹脂がシート部材間で移動しにくくなる結果、吸水性樹脂が塊になって着用者に違和感を与えにくくなる。
接着剤層は、吸水性樹脂を固定しつつ、吸水性樹脂による吸水や膨潤を阻害しないことが好ましい。この点から、接着剤層は断続的なパターンで設けられることが好ましく、例えば、接着剤層は、接着剤を網状やストライプ状や散点状に塗布することにより形成されることが好ましい。接着剤層を網状に形成する場合は、カーテンスプレー法、スパイラルコーティング法、オメガコーティング法等により接着剤を塗布すればよい。
接着剤層を形成する接着剤としては、上記に説明したような封止部を形成するのに使用可能な接着剤を使用することができる。また接着剤層によって、封止部が形成されてもよい。この場合、接着剤層によって上側シートと下側シートとが接合され、これにより封止部が形成されることとなる。
本発明の吸収性物品は、上記に説明した吸収体が複数積層して設けられていてもよい。また、上記以外の吸収体が設けられていてもよい。例えば、上記の吸収体の下側に、さらに別の吸収体として補助吸収体が設けられてもよい。この場合、補助吸収体は、親水性繊維(パルプ繊維、セルロース繊維等)と吸水性樹脂を含有するものであることが好ましく、これによりバックシート側からの尿等の漏れ防止効果が高まる。なお、本発明の吸収性物品においては、上記に説明した吸収体が、吸収体として最もトップシート側に設けられることが好ましく、例えば、トップシートやトップシートの下側に配された拡散シート(セカンドシート)に隣接して設けられる。
吸収性物品には、幅方向の両側に立ち上がりフラップが設けられてもよい。立ち上がりフラップを設けることにより、尿等の横漏れが防止される。立ち上がりフラップは、例えば、トップシートの幅方向両側に、長手方向に延在するサイドシートを接合し、サイドシートの幅方向内方に弾性部材を設けることにより形成される。このようにサイドシートと弾性部材とを設けることにより、弾性部材の収縮力によりサイドシートの幅方向内方が着用者の肌に向かって立ち上がり、立ち上がりフラップが形成される。立ち上がりフラップまたはサイドシートは、液不透過性のプラスチックフィルムや液不透過性の不織布等により構成されることが好ましい。
立ち上がりフラップに設けられる弾性部材としては、ポリウレタン糸、ポリウレタンフィルム、天然ゴム等の通常の吸収性物品に用いられる弾性伸縮材料を用いることができる。弾性部材は、伸長状態で、ホットメルト接着剤で固定されることが好ましい。例えば、繊度40〜1,240dtexのポリウレタン糸を、倍率1.1〜5.0倍に伸長して配設し、固定する。接合手段としては、好ましくは、ゴム系のホットメルト接着剤が用いられる。なお、前記倍率は、非伸長状態を1.0倍とする。
本発明の吸収性物品について、尿パッドを例に挙げ、図1〜図3を参照して説明する。なお、本発明の吸収性物品は、図面に示された実施態様に限定されるものではない。図1は、吸収性物品として尿パッドをトップシート側から見た平面図を表す。図2は、図1に示した吸収性物品のA−A断面図を表す。図3は、図2に示した吸収性物品の吸収体の断面図を表す。
吸収性物品1は、トップシート2とバックシート3とこれらの間に設けられた吸収体11とを有する。トップシート2は、着用者の肌に面するように配され、尿等の体液を透過する。トップシート2を透過した体液は、吸収体11に収容される。バックシート3は液不透過性であり、体液が外部へ漏れるのを防ぐ。
吸収体11は、トップシート2側に配される上側シート12とバックシート3側に配される下側シート13を有する。上側シート12と下側シート13の間には吸水性樹脂15が配され、上側シート12と下側シート13の間にパルプ繊維は配されていない。吸収体11は、上側シート12の5%伸長時の伸長応力が下側シート13の5%伸長時の伸長応力よりも大きくなるように形成されている。そのため、吸収体11の吸水性樹脂15が尿等を吸収して膨潤すると、吸収体11が上側よりも下側に膨らみやすくなり、その結果、吸収体11のトップシート2側の面に大きな凹凸が形成されにくくなり、着用者が違和感を覚えにくくなり、吸収性物品1の着用感が良好なものとなる。
図面に示した吸収体11は、上側シート12に接着剤が塗布されて接着剤層14が形成され、吸水性樹脂15が接着剤層14により上側シート12と下側シート13に固定されている。吸収体11は、上側シート12と下側シート13とが接合された部分に封止部16が形成され、上側シート12と下側シート13とが接合されない部分に非封止部17が形成されている。封止部16は、例えば、上側シート12と下側シート13とが接着剤層14によって互いに接合されるとともに、上側シート12と下側シート13とが熱融着されることにより形成される。非封止部17には吸水性樹脂15が配されて吸収領域が形成されている。図面では、封止部16と非封止部17が長手方向yに延び、幅方向xに交互に並んで設けられている。
トップシート2と吸収体11との間には上側台紙4が設けられることが好ましい。また、バックシート3と吸収体11との間には下側台紙5が設けられることが好ましい。上側台紙4と下側台紙5は、尿等の体液の拡散性を向上させたり、吸収性物品11が型くずれしにくくするために設けられる。上側台紙4は液透過性であることが好ましく、下側台紙5は、液透過性であっても液不透過性であってもよい。上側台紙4と下側台紙5としては、ティッシュペーパーやクレープ紙等を用いることもできる。
吸収性物品11には、トップシート2の幅方向xの両側に、長手方向yに延在するサイドシート6が設けられることが好ましい。サイドシート6は、トップシート2の幅方向xの両側に接合される。図1および図2では、サイドシート6に、各々、幅方向xの内方に起立用弾性部材7が3本設けられている。吸収性物品11の使用時には、起立用弾性部材7の収縮力によりサイドシート6の内方が着用者の肌に向かって立ち上がり、これにより立ち上がりフラップ形成され、尿等の排泄物の横漏れが防止される。
1: 吸収性物品
2: トップシート
3: バックシート
11: 吸収体
12: 上側シート
13: 下側シート
15: 吸水性樹脂
16: 封止部

Claims (6)

  1. トップシートとバックシートとこれらの間に配された吸収体とを有する吸収性物品であって、
    前記吸収体は、前記トップシート側に配される上側シートと、前記バックシート側に配される下側シートとを有するとともに、前記上側シートと前記下側シートの間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有さず、
    前記下側シートの5%伸長時の伸長応力が、前記上側シートの5%伸長時の伸長応力の20%以上75%以下であることを特徴とする吸収性物品。
  2. 前記上側シートは再生セルロース繊維を50質量%以上含有する不織布からなる請求項1に記載の吸収性物品。
  3. 前記上側シートの不織布は熱融着性繊維を5質量%以上40質量%以下含有し、
    前記吸収体は、前記上側シートと前記下側シートとが熱融着されることにより封止部が形成されている請求項2に記載の吸収性物品。
  4. 前記上側シートの不織布はパルプ繊維を含有しない請求項2または3に記載の吸収性物品。
  5. 前記上側シートはスパンレース不織布からなり、前記下側シートはエアスルー不織布からなり、
    前記上側シートのスパンレース不織布の繊維配向方向に対する5%伸長時の伸長応力が、前記下側シートのエアスルー不織布の繊維配向方向に対する5%伸長時の伸長応力よりも大きい請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
  6. 前記吸収体は、前記上側シートと前記下側シートとが接合されて封止部が形成され、
    前記封止部が吸収性物品の長手方向に延びるストライプ状に配置されている請求項1〜のいずれか一項に記載の吸収性物品。
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