本発明の吸収性物品は、トップシートとバックシートとこれらの間に設けられた吸収性積層体とを有する。本発明の吸収性物品の態様としては、尿パッド(失禁パッドを含む)、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等が示される。
吸収性物品の形状は特に限定されない。吸収性物品が例えば、尿パッド、生理用ナプキンである場合、吸収性物品の形状としては、略長方形、砂時計型、ひょうたん型、羽子板型等が示される。
吸収性物品が使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつは、左右に一対の止着部材が備えられ、当該止着部材により着用時にパンツ型に形成するオープン型使い捨ておむつであってもよく、ウェスト開口部と一対の脚開口部とが形成されたパンツ型使い捨ておむつであってもよい。
トップシートは、吸収性物品の着用の際、着用者側に位置するシートであり、液透過性であることが好ましい。バックシートは、吸収性物品の着用の際、着用者とは反対側、すなわち外側に位置するシートであり、液不透過性であることが好ましい。
トップシートやバックシートは、例えば、不織布、織布、編布、プラスチックフィルム、プラスチックフィルムと不織布との積層体等から構成される。積層体としては、例えば、不織布とプラスチックフィルムとが一層ずつ重ねられたものや、プラスチックフィルムを不織布で挟んで重ねられたものが示される。なお、プラスチックフィルムやプラスチックフィルムを含む積層体をトップシートに用いる場合は、プラスチックフィルムには液を通過させるための孔が形成されていることが好ましい。トップシートは、好ましくは不織布から構成される。バックシートは、好ましくは不織布またはプラスチックフィルムから構成される。
トップシートとバックシートとして不織布を用いる場合、不織布としては、スパンボンド法、エアスルー法、ポイントボンド法、メルトブロー法、エアレイド法やそれらの製法の組み合わせ等により製造されるものが好ましい。また、スパンボンド法とメルトブロー法を組み合わせたSMS法により製造された不織布を用いてもよい。
トップシートとバックシートとして不織布を用いる場合、不織布の材質としては、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド等の合成繊維、パルプ、絹等の天然繊維から適宜選択できる。また、合成繊維として、複合繊維を用いてもよい。なかでも、ポリプロピレン、ポリエチレン、PET、またはそれらを組み合わせた複合繊維が好ましい。このような不織布を用いれば、高強度で風合いに優れたシートが得やすくなる。
吸収性積層体は、トップシートとバックシートとの間に設けられ、尿等の体液を吸収する。吸収性積層体は、上側吸収体と、上側吸収体の下側に幅方向の一方側に配された第1下側吸収体と、上側吸収体の下側に幅方向の他方側に配された第2下側吸収体とを有する。
本発明において、「上側」とは、吸収性物品を着用した際の着用者側を意味し、「下側」とは、吸収性物品を着用した際の着用者とは反対側、すなわち外側を意味する。また、上側から下側に延びる方向を、上下方向と規定する。
吸収性積層体は、長手方向と幅方向とを有する。「長手方向」とは、吸収性物品を着用者が着用した際、着用者の股間の前後方向に延びる方向を意味する。「幅方向」とは、吸収性積層体と同一面上にあり、長手方向と直交する方向を意味する。また、長手方向と幅方向から形成される面上の方向を、平面方向と定義付ける。
吸収性積層体の形状(平面形状)は特に限定されない。吸収性積層体の形状は、用途に応じて適宜決定すればよく、例えば、長方形、砂時計型、ひょうたん型、羽子板型等が挙げられる。
上側吸収体と第1下側吸収体と第2下側吸収体について説明する。なお、以下、第1下側吸収体と第2下側吸収体をまとめて、下側吸収体と称する場合がある。
上側吸収体は、下側吸収体よりもトップシートの近くに配される。つまり、上側吸収体は、下側吸収体のトップシート側に配される。従って、上側吸収体は、トップシートを通過し、吸収性積層体に移行した尿等の体液を、下側吸収体よりも基本的に先に受ける。
下側吸収体は、上側吸収体よりもバックシートの近くに配される。つまり、下側吸収体は、上側吸収体のバックシート側に配される。下側吸収体は、基本的に、上側吸収体を通過した尿等の体液を受ける。
吸収性積層体は、下側吸収体として、上側吸収体の下側に幅方向の一方側に配された第1下側吸収体と、上側吸収体の下側に幅方向の他方側に配された第2下側吸収体とを有する。つまり、第1下側吸収体と第2下側吸収体は、上側吸収体の下側に幅方向に並んで配される。第1下側吸収体と第2下側吸収体は、互いに幅方向に離間して配されてもよく、互いに接するように配されてもよい。なお、第1下側吸収体と第2下側吸収体は互いに接着されていない。このように第1下側吸収体と第2下側吸収体が配されることにより、吸収性積層体は、第1下側吸収体と第2下側吸収体の間、または、第1下側吸収体と第2下側吸収体とが接する部分で、幅方向に折り曲げることが容易になる。
第1下側吸収体と第2下側吸収体が互いに離間して配される場合、第1下側吸収体と第2下側吸収体の間には下側吸収体非存在部が形成されることとなる。このとき、第1下側吸収体と第2下側吸収体の離間距離はできるだけ短いことが好ましく、具体的には、下側吸収体非存在部の幅方向の長さが10mm以下であることが好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下がさらに好ましく、2mm以下がさらにより好ましい。このように第1下側吸収体と第2下側吸収体を配することにより、第1下側吸収体と第2下側吸収体をより広い面積で設けることができるとともに、尿等の体液が下側吸収体非存在部を大量に通過しにくくなり、バックシート側への漏れを抑えることができる。
第1下側吸収体と第2下側吸収体が互いに接するように配される場合、第1下側吸収体と第2下側吸収体が互いに接する下側吸収体接触部が形成されることとなる。このとき、第1下側吸収体が第2下側吸収体に重なる部分ができるだけ少ないことが好ましく、具体的には、下側吸収体接触部の幅方向の長さが5mm以下であることが好ましく、3mm以下がより好ましく、2mm以下がさらに好ましい。このように第1下側吸収体と第2下側吸収体を配することにより、吸収性積層体を幅方向に折り曲げることが容易になる。
第1下側吸収体と第2下側吸収体は、接着剤等により上側吸収体と接着していることが好ましい。第1下側吸収体と第2下側吸収体が上側吸収体と接着していれば、第1下側吸収体と第2下側吸収体を上側吸収体に対し所望の位置に配することが容易になる。第1下側吸収体または第2下側吸収体と上側吸収体との接着は、例えば、網状に形成された接着剤層により行われる。
上側吸収体と第1下側吸収体と第2下側吸収体の形状(平面形状)や大きさは特に限定されない。しかし、第1下側吸収体は第2下側吸収体に対し略線対称の形状であることが好ましく、第1下側吸収体と第2下側吸収体は、吸収性積層体の幅方向中心線(つまり長手方向に延びる中心線)に対して略線対称に配されることが好ましい。また、第1下側吸収体と第2下側吸収体の長手方向の長さは、上側吸収体の長手方向の長さとほぼ等しいことが好ましい。第1下側吸収体と第2下側吸収体の幅方向の長さと下側吸収体非存在部の幅方向の長さの和、あるいは、第1下側吸収体と第2下側吸収体の幅方向の長さの合計から下側吸収体接触部の幅方向の長さを引いた値は、上側吸収体の幅方向の長さとほぼ等しいことが好ましい。
上側吸収体と下側吸収体はそれぞれ、不織布シート間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有していない。つまり、上側吸収体と下側吸収体はそれぞれ、不織布シート間に吸水性樹脂が設けられて構成されるが、不織布シート間にはパルプ繊維は設けられない。上側吸収体と下側吸収体は、不織布シート間にパルプ繊維を有しないため、高い吸収容量を有しつつ薄型に形成することができる。
上側吸収体と下側吸収体に設けられる吸水性樹脂としては、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸系の吸水性樹脂;デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体、デンプン−アクリル酸グラフト共重合体、デンプン−アクリルアミドグラフト共重合体等のデンプン系の吸水性樹脂;ポリビニルアルコール架橋体等のポリビニルアルコール系の吸水性樹脂等を用いることができる。吸水性樹脂としては、高い液吸収量を有する点で、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸系の吸水性樹脂を用いることが好ましい。
上側吸収体と下側吸収体に用いられる不織布シートは液透過性であり、そのような不織布シートとしては、例えば、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維;ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の疎水性繊維を界面活性剤で親水化したものを用いればよい。なお、後述するように、不織布シートどうしが熱融着される場合は、熱融着が容易になる点から、ポリオレフィン、ポリエステル等の疎水性繊維を界面活性剤で親水化したものを不織布シートとして用いることが好ましい。上側吸収体と下側吸収体は、例えば、2枚の不織布シートの間に吸水性樹脂が配されたり、1枚の不織布シートが折り返された内側に吸水性樹脂が配されることにより形成される。
以上のように、本発明の吸収性物品は、不織布シート間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しない上側吸収体が、不織布シート間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しない第1下側吸収体と第2下側吸収体に重ねられた吸収性積層体を有している。そのため本発明の吸収性物品は、高い吸収容量を有しながら、薄型に形成することが容易になる。
本発明の吸収性物品はまた、上側吸収体の下側に、第1下側吸収体と第2下側吸収体が幅方向に並んで配されているため、吸収性積層体を幅方向に折り曲げることが容易になり、吸収性物品の着用者の股間へのフィット性を高めることができる。つまり、本発明の吸収性物品は、幅方向に折り曲げると第1下側吸収体と第2下側吸収体が幅方向に独立して動くことができるため、吸収性積層体を幅方向に折り曲げることが容易になる。
さらに本発明の吸収性物品では、上側吸収体を2つに分割するのではなく、下側吸収体を2つに分割している、つまり下側吸収体として第1下側吸収体と第2下側吸収体が設けられることにより、尿等の体液が吸収性積層体の長手方向へ漏れることが起こりにくくなる。例えば、上側吸収体が幅方向に2つに分割される場合、上側吸収体が2つに分割されることにより形成された溝で体液が長手方向に拡散しやすくなり、体液が吸収性積層体の長手方向へ漏れやすくなるところ、本発明の吸収性物品では、吸収性積層体に移行した体液が上側吸収体上を幅方向と長手方向に広がって、体液が吸収性積層体から溢れにくくなる。
本発明の吸収性物品においては、吸収性積層体を幅方向に折り曲げやすくするために、上側吸収体が、不織布シート間に、吸水性樹脂が配された複数の吸水性樹脂存在領域と、隣接する吸水性樹脂存在領域の間に吸水性樹脂非存在領域とを有し、吸水性樹脂非存在領域で不織布シートどうしが接合されていることが好ましい。このとき、吸水性樹脂非存在領域は長手方向に延びるように形成されていることが好ましく、その結果、吸水性樹脂非存在領域に長手方向に延びる折り目が形成されやすくなる。つまり、上側吸収体を幅方向に折り曲げやすくなる。より好ましくは、吸水性樹脂非存在領域は、上側吸収体の全長にわたって長手方向に延びている。
上側吸収体の吸水性樹脂非存在領域はまた、上側吸収体と下側吸収体の吸収能力を高めるように作用する。吸水性樹脂非存在領域で不織布シートどうしが接合されることにより封止部が形成され、封止部では、体液が上側吸収体上を平面方向に拡散しやすくなる。平面方向に拡散した体液は、吸水性樹脂存在領域に配された吸水性樹脂によって吸収され、体液が上側吸収体によって効率的に吸収されるようになる。また封止部では、体液が吸水性樹脂非存在領域を通って下側吸収体に移行しやすくなり、その結果、下側吸収体でも体液が効率的に吸収されるようになる。つまり、上側吸収体と下側吸収体のそれぞれに配された吸水性樹脂が体液の吸収に効率的に寄与するようになり、吸収性積層体としての吸収容量が高められるとともに、体液が吸収性積層体によって速やかに吸収されるようになる。
封止部は、不織布シートどうしを接着剤で接合したり、ヒートシール(熱融着)や超音波接着することにより形成すればよい。封止部における尿等の体液の拡散性を高める点からは、封止部は、不織布シートどうしが熱融着されて形成されていることが好ましい。また、封止部における尿等の体液の拡散性と透過性をバランス良く実現するために、吸水性樹脂非存在領域において不織布シートどうしが部分的に熱融着されていてもよい。この場合、例えば、不織布シートどうしを所定のエンボスパターンで熱融着することにより、不織布シートどうしを部分的に熱融着すればよい。
上側吸収体の吸水性樹脂非存在領域は、下側吸収体非存在部または下側吸収体接触部と重なるように設けられることが好ましい。つまり、第1下側吸収体と第2下側吸収体が互いに離間して配されて、第1下側吸収体と第2下側吸収体の間に下側吸収体非存在部が形成される場合は、上側吸収体の吸水性樹脂非存在領域が下側吸収体非存在部と重なるように長手方向に延びていることが好ましく、第1下側吸収体と第2下側吸収体が互いに接するように配されて、第1下側吸収体と第2下側吸収体が互いに接する下側吸収体接触部が形成される場合は、上側吸収体の吸水性樹脂非存在領域が下側吸収体非存在部と重なるように長手方向に延びていることが好ましい。上側吸収体の吸水性樹脂非存在領域が下側吸収体非存在部または下側吸収体接触部と重なるように長手方向に延びていれば、吸収性積層体を幅方向に折り曲げることが容易になり、吸収性物品の着用者の股間へのフィット性を高めることができる。また、上側吸収体の吸水性樹脂非存在領域が下側吸収体非存在部または下側吸収体接触部と重なるように設けられていれば、たとえ上側吸収体の吸水性樹脂非存在領域で不織布シートどうしが熱融着されて硬化していても、吸収性積層体を折り曲げることが容易になる。
上側吸収体の吸水性樹脂非存在領域は、好ましくは、下側吸収体非存在部または下側吸収体接触部と重なるように、上側吸収体の全長にわたって長手方向に延びている。このように上側吸収体に吸水性樹脂非存在領域が設けられていれば、上側吸収体を当該吸水性樹脂非存在領域で折り曲げやすくなる。つまり、吸収性積層体を幅方向に折り曲げやすくなる。
上側吸収体の吸水性樹脂非存在領域が下側吸収体非存在部と重なるように設けられる場合、上側吸収体の吸水性樹脂非存在領域は下側吸収体非存在部の少なくとも一部と重なっていればよい。例えば、下側吸収体非存在部は、上側吸収体の吸水性樹脂非存在領域よりも幅広に形成されていてもよく、幅狭に形成されていてもよく、同幅で形成されていてもよい。
一方、上側吸収体の吸水性樹脂非存在領域が下側吸収体接触部と重なるように設けられる場合は、上側吸収体の吸水性樹脂非存在領域は下側吸収体接触部と同幅かそれよりも幅広に形成されることが好ましい。上側吸収体の吸水性樹脂非存在領域が下側吸収体接触部よりも幅狭に形成されていると、上側吸収体の吸水性樹脂非存在領域と下側吸収体接触部とが重なる部分で、吸収性積層体を折り曲げにくくなるおそれがあるためである。
上側吸収体は、下側吸収体非存在部または下側吸収体接触部とは重ならない吸水性樹脂非存在領域を有していてもよい。上側吸収体は、例えば、長手方向に延びる複数の吸水性樹脂非存在領域と長手方向に延びる複数の吸水性樹脂存在領域が、幅方向に交互に設けられていてもよい。好ましくは、上側吸収体は、下側吸収体非存在部または下側吸収体接触部と重なる吸水性樹脂非存在領域の幅方向の両側に吸水性樹脂存在領域を有し、さらにその両外側に第1下側吸収体と重なる吸水性樹脂非存在領域と第2下側吸収体と重なる吸水性樹脂非存在領域を有している。このように上側吸収体に第1下側吸収体と重なる吸水性樹脂非存在領域と第2下側吸収体と重なる吸水性樹脂非存在領域が設けられていれば、これらの吸水性樹脂非存在領域を通って上側吸収体から下側吸収体に体液が移行しやすくなり、下側吸収体で体液が効率的に吸収されるようになる。
本発明の吸収性物品においては、下側吸収体も、不織布シート間に、吸水性樹脂が配された複数の吸水性樹脂存在領域と、隣接する吸水性樹脂存在領域の間に吸水性樹脂非存在領域とを有し、吸水性樹脂非存在領域で不織布シートどうしが接合されていることが好ましい。このように下側吸収体が形成されていれば、吸水性樹脂非存在領域で不織布シートどうしが接合されて形成された封止部で、体液が下側吸収体上を拡散しやすくなる。その結果、下側吸収体の吸水性樹脂存在領域に配された吸水性樹脂によって、体液が効率的に吸収されるようになる。
下側吸収体の吸水性樹脂非存在領域は長手方向に延びるように形成されていることが好ましく、その結果、吸収性積層体を幅方向に折り曲げやすくなる。より好ましくは、吸水性樹脂非存在領域は、下側吸収体の全長にわたって長手方向に延びている。
下側吸収体に形成される封止部の説明は、上側吸収体の封止部の説明と同じである。好ましくは、下側吸収体は封止部で不織布シートどうしが熱融着されている。下側吸収体が封止部で不織布シートどうしが熱融着されていれば、尿等の体液が下側吸収体の封止部を透過して下側吸収体の下側に移行しにくくなり、体液のバックシート側への漏れを抑えることができる。
下側吸収体の吸水性樹脂非存在領域は、上側吸収体の吸水性樹脂非存在領域と重なるように設けられることが好ましい。すなわち、上側吸収体は、下側吸収体非存在部または下側吸収体接触部と重なる吸水性樹脂非存在領域の両側に吸水性樹脂存在領域と、さらにその両外側に、第1下側吸収体の吸水性樹脂非存在領域と重なる吸水性樹脂非存在領域と、第2下側吸収体の吸水性樹脂非存在領域と重なる吸水性樹脂非存在領域を有することが好ましい。下側吸収体の吸水性樹脂非存在領域が上側吸収体の吸水性樹脂非存在領域と重なるように設けられていれば、上側吸収体の吸水性樹脂非存在領域を通って体液が下側吸収体の上に移行した際、体液が下側吸収体の吸水性樹脂非存在領域に移行しやすくなり、下側吸収体上で体液が好適に拡散するようになる。その結果、下側吸収体で体液が効率的に吸収されるようになる。
吸水性樹脂非存在領域に封止部が形成される場合、封止部は、上側吸収体または下側吸収体が吸水しても、不織布シートどうしの接合が維持されることが好ましい。つまり、上側吸収体においては、上側吸収体が吸水して、上側吸収体の不織布シートどうしの接合が維持されることが好ましく、下側吸収体においては、下側吸収体が吸水して、下側吸収体の不織布シートどうしの接合が維持されることが好ましい。上側吸収体または下側吸収体が吸水すると、不織布シート間に配された吸水性樹脂が膨潤して、封止部における不織布シートどうしの接合が解けるおそれがある。この場合、吸水性樹脂非存在領域を通って体液が通過しにくくなったり、吸水性樹脂非存在領域における体液の拡散性が低下する。従って、封止部は、上側吸収体または下側吸収体が吸水しても、不織布シートどうしの接合が維持されることが好ましい。
封止部で不織布シートどうしの接合が維持されるようにするには、吸水性樹脂存在領域における吸水性樹脂含有量の上限を定めることが好ましい。従って、吸水性樹脂存在領域における吸水性樹脂含有量は400g/m2以下が好ましく、385g/m2以下がより好ましい。一方、吸水性樹脂存在領域における吸収容量を確保する点から、吸水性樹脂存在領域における吸水性樹脂含有量は100g/m2以上が好ましく、150g/m2以上がより好ましい。
封止部で不織布シートどうしの接合が維持されるようにするには、後述するように、不織布シートどうしをゴム系接着剤やスチレン系エラストマーで接着したり、熱融着することも好ましい。
上側吸収体または下側吸収体の不織布シートには、接着剤が塗布されて接着剤層が設けられ、吸水性樹脂存在領域の吸水性樹脂は、接着剤層により不織布シートに固定されていることが好ましい。接着剤層は、吸水性樹脂を挟む少なくとも一方の不織布シートに設けられればよいが、好ましくは、接着剤層は吸水性樹脂を挟む両方の不織布シートに設けられる。吸水性樹脂存在領域に配された吸水性樹脂は、少なくとも一部が接着剤層に固定されていればよく、例えば、接着剤層に接する吸水性樹脂が接着剤層に固定されていればよい。吸水性樹脂が接着剤層により不織布シートに固定されていれば、吸水性樹脂の吸水前においては、吸水性樹脂が不織布シート間で移動しにくくなり、上側吸収体または下側吸収体の体液の吸収能力が確保されやすくなる。吸水性樹脂の吸水後においても、ゲル化した吸水性樹脂が不織布シート間で移動しにくくなる結果、吸水性樹脂が塊になって着用者に違和感を与えにくくなる。
上側吸収体または下側吸収体に接着剤層が設けられる場合、吸水性樹脂非存在領域は、接着剤層により不織布シートどうしが接合されていることが好ましい。この場合、吸水性樹脂存在領域に配された吸水性樹脂が吸水して膨潤しても、不織布シートどうしの接合、すなわち封止部が維持されやすくなる。
接着剤層は、吸水性樹脂存在領域において、吸水性樹脂を固定しつつ、吸水性樹脂による吸水や膨潤を阻害しないことが好ましい。この点から、接着剤層は、網状に形成されることが好ましい。接着剤層を網状に形成する方法としては、カーテンスプレー法、スパイラルコーティング法、オメガコーティング法等を採用すればよい。
接着剤層に用いる接着剤としては、例えば、天然ゴム系、ブチルゴム系、ポリイソプレン等のゴム系接着剤;スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)等のスチレン系エラストマー;エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA);ポリエステル;アクリル系;ポリオレフィン系エラストマー等を用いることができる。これらの接着剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。接着剤としては、吸水後の吸水性樹脂の脱落を防ぎ得る程度の接着力を有し、吸水性樹脂の膨潤に追従し得る程度の伸びやすさを有するものが好ましい。また、吸水性樹脂が吸水して膨潤しても、不織布シートどうしの接合が維持される程度の接着力を有するものが好ましい。これらの点で、ゴム系接着剤やスチレン系エラストマーを用いることが好ましい。
吸収性積層体の構成例について、図面を参照して説明する。図1には、吸収性積層体の幅方向断面図の一例を示す。なお、本願の図では、矢印xが幅方向、矢印yが長手方向を表し、矢印x,yにより形成される面に対して垂直方向が上下方向zを表す。図1では、図の上側が吸収性積層体の上側に相当し、図の下側が吸収性積層体の下側に相当する。
図1に示した吸収性積層体10は、上側吸収体11と、上側吸収体11の下側に幅方向xの一方側に配された第1下側吸収体21と、上側吸収体11の下側に幅方向xの他方側に配された第2下側吸収体31とを有する。第1下側吸収体21と第2下側吸収体31は幅方向xに互いに離間して配され、第1下側吸収体21と第2下側吸収体31の間に下側吸収体非存在部41が形成されている。
上側吸収体11は、不織布シート12間に吸水性樹脂13が配されている。詳細には、上側吸収体11は、不織布シート12間に、吸水性樹脂13が配された複数の吸水性樹脂存在領域14と、隣接する吸水性樹脂存在領域14の間に吸水性樹脂非存在領域15とを有し、吸水性樹脂非存在領域15で不織布シート12どうしが接合されている。不織布シート12には接着剤が塗布されて接着剤層16が形成されている。吸水性樹脂存在領域14では吸水性樹脂13が接着剤層16により不織布シート12に固定され、吸水性樹脂非存在領域15では接着剤層16により不織布シート12どうしが接合されている。上側吸収体11では、吸水性樹脂存在領域14と吸水性樹脂非存在領域15がそれぞれ長手方向に延在し、吸水性樹脂存在領域14と吸水性樹脂非存在領域15が幅方向xに交互に配されている。
第1下側吸収体21と第2下側吸収体31も上側吸収体11と同じように形成されている。従って、第1下側吸収体21に関する説明は、上側吸収体11に関する上記説明と同じである。ただし、「上側吸収体11」、「不織布シート12」、「吸水性樹脂13」、「吸水性樹脂存在領域14」、「吸水性樹脂非存在領域15」、「接着剤層16」をそれぞれ、「第1下側吸収体21」、「不織布シート22」、「吸水性樹脂23」、「吸水性樹脂存在領域24」、「吸水性樹脂非存在領域25」、「接着剤層26」と読み替える。第2下側吸収体31に関する説明も、上側吸収体11に関する上記説明と同じである。ただし、「上側吸収体11」、「不織布シート12」、「吸水性樹脂13」、「吸水性樹脂存在領域14」、「吸水性樹脂非存在領域15」、「接着剤層16」をそれぞれ、「第2下側吸収体31」、「不織布シート32」、「吸水性樹脂33」、「吸水性樹脂存在領域34」、「吸水性樹脂非存在領域35」、「接着剤層36」と読み替える。
上側吸収体11は、下側吸収体非存在部41と重なる吸水性樹脂非存在領域15Aの両側に吸水性樹脂存在領域14と、さらにその両外側に吸水性樹脂非存在領域15B,15Cを有している。上側吸収体11は、吸水性樹脂非存在領域15Aが下側吸収体非存在部41と重なるように長手方向に延びているため、吸水性樹脂非存在領域15Aを折り目として吸収性積層体10を幅方向xに折り曲げることが容易になる。
上側吸収体11の吸水性樹脂非存在領域15Bは、第1下側吸収体21の吸水性樹脂非存在領域25と重なり、上側吸収体11の吸水性樹脂非存在領域15Cは、第2下側吸収体31の吸水性樹脂非存在領域35と重なっている。つまり、上側吸収体11は、第1下側吸収体21の吸水性樹脂非存在領域25と重なる吸水性樹脂非存在領域15Bと、第2下側吸収体31の吸水性樹脂非存在領域35と重なる吸水性樹脂非存在領域15Cを有している。従って、吸収性積層体10で受けた尿等の体液は、上側吸収体11の吸水性樹脂非存在領域15B,15Cを通って第1下側吸収体21と第2下側吸収体31のそれぞれの上面に移行しやすくなり、このように移行した体液は、第1下側吸収体21の吸水性樹脂非存在領域25と第2下側吸収体31の吸水性樹脂非存在領域35で長手方向に拡散しやすくなる。その結果、第1下側吸収体21と第2下側吸収体31で体液が効率的に吸収されるようになる。
図1に示した吸収性積層体10では、第1下側吸収体21と第2下側吸収体31がそれぞれ1層から構成されていたが、第1下側吸収体21と第2下側吸収体31がそれぞれ複数積層していてもよい。なお、上側吸収体11は1層から構成されていることが好ましく、それにより吸収性積層体10を折り曲げることが容易になる。
次に、図1に示した吸収性積層体とは異なる吸収性積層体の構成例について、図2を参照して説明する。図2には、吸収性積層体の幅方向断面図の他の一例を示す。図2に示した吸収性積層体は、図1に示した吸収性積層体とは、第1下側吸収体と第2下側吸収体の構成が異なる。なお、下記において、図1に示した吸収性積層体の説明と重なる部分は、説明を省略する。
図2に示した吸収性積層体10では、第1下側吸収体21が長手方向に延びる吸水性樹脂非存在領域25で折り返されて、第1の折り目27が形成され、第2下側吸収体31が長手方向に延びる吸水性樹脂非存在領域35で折り返されて、第2の折り目37が形成されている。そして、第1下側吸収体21と第2下側吸収体31は、第1の折り目27と第2の折り目37が互いに対向するように配されている。このように第1下側吸収体21と第2下側吸収体31が形成されていれば、吸収性積層体10の吸収容量が高められるとともに、第1下側吸収体21と第2下側吸収体31の間または境界に折り目を形成して、吸収性積層体10を幅方向xに折り曲げやすくなる。さらに、第1の折り目27と第2の折り目37が位置する部分で、吸収性積層体10のトップシート側表面に盛り上がりが形成されやすくなり、この盛り上がりによって、吸収性積層体10の着用者の股間(特に女性の排尿部)へのフィット性が高められるようになる。
第1下側吸収体21が第1の折り目27で折り返される場合、第1下側吸収体21は、第1の折り目27が形成された吸水性樹脂非存在領域25の両側に吸水性樹脂存在領域24を介して設けられた吸水性樹脂非存在領域25が、互いに重なって配されることが好ましい。同様に、第2下側吸収体31が第2の折り目37で折り返される場合、第2下側吸収体31は、第2の折り目37が形成された吸水性樹脂非存在領域35の両側に吸水性樹脂存在領域34を介して設けられた吸水性樹脂非存在領域35が、互いに重なって配されることが好ましい。このように第1下側吸収体21と第2下側吸収体31が形成されていれば、第1下側吸収体21で、折り畳まれた第1下側吸収体21の上側の層と下側の層の両方で尿等の体液が効率的に吸収されるようになり、第2下側吸収体31で、折り畳まれた第2下側吸収体31の上側の層と下側の層の両方で尿等の体液が効率的に吸収されるようになる。つまり、折り畳まれた第1下側吸収体21の上側の層の吸水性樹脂非存在領域25を通過した体液が、下側の層の吸水性樹脂非存在領域25で長手方向に拡散しやすくなるとともに、折り畳まれた第2下側吸収体31の上側の層の吸水性樹脂非存在領域35を通過した体液が、下側の層の吸水性樹脂非存在領域35で長手方向に拡散しやすくなり、その結果、第1下側吸収体21と第2下側吸収体31で体液が効率的に吸収されるようになる。
第1下側吸収体21が第1の折り目27で折り返され、第2下側吸収体31が第2の折り目37で折り返される場合、第1下側吸収体21と第2下側吸収体31は、上側吸収体11が幅方向xに折り返されることにより形成されるものであることが好ましい。図2では、第1下側吸収体21と第2下側吸収体31はこのように形成されている。この場合、上側吸収体11の製造工程の後に、上側吸収体11を幅方向xに折り曲げる工程を設けることにより、第1下側吸収体21と第2下側吸収体31を製造することができ、吸収性積層体10の製造が容易になるとともに、吸収性物品の製造コストを低く抑えることができる。
以上、図面を参照しながら、吸収性積層体の構成例について説明したが、吸収性積層体の構成は図面に示した実施態様に限定されない。例えば、第1下側吸収体と第2下側吸収体の下側に、さらに別の吸収体として補助吸収体が設けられてもよい。この場合、補助吸収体は、親水性繊維(パルプ繊維、セルロース繊維等)と吸水性樹脂を含有するものであることが好ましい。例えば、親水性繊維の集合体に吸水性樹脂を混合または散布したものを用いることができる。親水性繊維と吸水性樹脂を含有する吸収体は比較的柔軟に形成することができるため、このような補助吸収体を第1下側吸収体と第2下側吸収体の下側にさらに設けても、吸収性積層体の幅方向への折り曲げが阻害されにくくなる。そして、補助吸収体を第1下側吸収体と第2下側吸収体の下側に設けることにより、第1下側吸収体と第2下側吸収体の下側に移行した尿等の体液がバックシートを透過して漏れ出るのが防止されるようになる。
吸収性物品には、幅方向の両側に、一対の立ち上がりフラップが設けられることが好ましい。立ち上がりフラップが設けられることにより、尿等の排泄物の横漏れを防ぐことができる。立ち上がりフラップは、例えば、トップシートの幅方向両側に、長手方向に延在するサイドシートを接合し、サイドシートの幅方向内方に弾性部材を設けることにより形成される。このようにサイドシートと弾性部材とを設けることにより、弾性部材の収縮力によりサイドシートの幅方向内方が着用者の肌に向かって立ち上がり、立ち上がりフラップが形成される。立ち上がりフラップまたはサイドシートは、液不透過性のプラスチックフィルムや液不透過性の不織布等により構成されることが好ましい。
弾性部材としては、ポリウレタン糸、ポリウレタンフィルム、天然ゴム等の通常の使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられる弾性伸縮材料を用いることができる。弾性部材は、伸張状態で、ホットメルト接着剤で固定されることが好ましい。例えば、繊度100〜2,500dtexのポリウレタン糸を、倍率1.1〜5.0倍に伸張して配設し、固定する。接合手段としては、好ましくは、ゴム系のホットメルト接着剤が用いられる。
次に、本発明の吸収性物品について、尿パッドを例に挙げ、図3および図4を参照して説明する。なお、本発明は、図面に示された実施態様に限定されるものではない。図3および図4では、図2に示した吸収性積層体10を備えた吸収性物品を示した。図3は、吸収性物品として尿パッドをトップシート側から見た平面図を表す。図4は、図3の吸収性物品のA−A断面図を表す。図3では、図の上側が吸収性物品の前側に相当し、図の下側が吸収性物品の後側に相当する。
吸収性物品1は、トップシート2とバックシート3とこれらの間に設けられた吸収性積層体10とを有する。トップシート2は、着用者の肌に面するように配され、尿等の体液を透過する。トップシート2を透過した体液は、吸収性積層体10に収容される。バックシート3は、体液が外部へ漏れるのを防ぐ。
吸収性積層体10は、上側吸収体11と、上側吸収体11の下側に幅方向xの一方側に配された第1下側吸収体21と、上側吸収体11の下側に幅方向xの他方側に配された第2下側吸収体31とを有している。上側吸収体11、第1下側吸収体21、第2下側吸収体31の詳細な説明は上記の通りである。吸収性積層体10に移行した体液は、まず上側吸収体11により吸収され、上側吸収体11を透過した体液は第1下側吸収体21と第2下側吸収体31により吸収される。吸収性物品1は、上側吸収体11の下側に、第1下側吸収体21と第2下側吸収体31が幅方向xに並んで配されているため、吸収性積層体10を幅方向xに折り曲げることが容易になり、吸収性物品1の着用者の股間へのフィット性を高めることができる。
図4に示すように、トップシート2と吸収性積層体10(上側吸収体11)との間には上側台紙4が設けられ、バックシート3と吸収性積層体10(第1下側吸収体21、第2下側吸収体31)との間には下側台紙5が設けられることが好ましい。上側台紙4と下側台紙5は、尿等の体液の拡散性を向上させたり、吸収性積層体10が型くずれしにくくするために設けられる。上側台紙4は液透過性であることが好ましく、下側台紙5は、液透過性であっても液不透過性であってもよい。上側台紙4と下側台紙5としては、ティッシュペーパーや薄葉紙、クレープ紙等を用いることができる。
吸収性物品1には、トップシート2の幅方向xの両側に、長手方向yに延在するサイドシート6が設けられることが好ましい。サイドシート6は、接合部7でトップシート2に接合されている。図3および図4では、サイドシート6には、各々、幅方向xの内方に起立用弾性部材8が3本設けられている。吸収性物品1の使用時には、起立用弾性部材8の収縮力によりサイドシート6の内方が着用者の肌に向かって立ち上がり、これにより尿等の排泄物の横漏れが防止される。