JP6332617B2 - ポリイミド前駆体フィルム層/無機基板積層体、およびその製造方法、ポリイミドフィルム層/無機基板積層体の製造方法、およびフレキシブル電子デバイスの製造方法 - Google Patents

ポリイミド前駆体フィルム層/無機基板積層体、およびその製造方法、ポリイミドフィルム層/無機基板積層体の製造方法、およびフレキシブル電子デバイスの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、フレキシブルなポリイミドフィルムをリジッドな仮支持用無機基板に仮固定し積層体として、次いでポリイミドフィルム上に各種電子デバイスを形成した後に、ポリイミドフィルムを電子デバイス部ごと剥離して、フレキシブル電子デバイスを得る製造技術、該積層体、および該積層体を得るための積層中間体に関する。
情報通信機器(放送機器、移動体無線、携帯通信機器等)、レーダー、高速情報処理装置等における電子部品として、半導体素子、MEMS素子、ディスプレイ素子などの機能素子(デバイス)が用いられるが、これらは従来、ガラス、シリコンウエハ、セラミック基材等の無機基板上にて形成ないし搭載されるのが一般的であった。しかし、近年、電子部品の軽量化、小型・薄型化、フレキシビリティ化が求められるなか、ポリイミドフィルム上に各種機能素子を形成する試みがなされている。
各種機能素子をポリイミドフィルム表面に形成するにあたっては、ポリイミドフィルムの特性であるフレキシビリティを利用した、いわゆるロール・トゥ・ロールプロセスにて加工することが理想とされる。しかしながら、半導体産業、MEMS産業、ディスプレイ産業等の業界においては、これまでウエハベースまたはガラス基板ベース等のリジッドな平面基板を対象としたプロセス技術が主流であった。そこで、既存インフラを利用して各種機能素子をポリイミドフィルム表面に形成するために、ポリイミドフィルムを無機物(ガラス板、セラミック板、シリコンウエハ、金属板など)からなるリジッドな支持体に貼り合わせておき、所望の素子を形成した後に支持体から剥離するというプロセスが考案された。
一般に機能素子を形成する工程においては、比較的高温が用いられることが多い。例えば、ポリシリコンや酸化物半導体などの機能素子の形成においては200〜500℃程度の温度域が用いられる。低温ポリシリコン薄膜トランジスターの作製においては脱水素化のために450℃程度の加熱が必要になる場合がある。水素化アモルファスシリコン薄膜の作製においても200〜300℃程度の温度域が必要になる。ここに例示した温度域は、無機材料にとってはさほど高い温度ではないが、ポリイミドフィルムや、一般にポリイミドフィルムの貼り合わせに利用される接着剤にとっては、相当に高い温度であると云わざるを得ない。先に述べたポリイミドフィルムを無機基板に貼り合わせ、機能素子形成後に剥離するという手法に於いて、用いられるポリイミドフィルムや貼り合わせに用いられる接着剤、粘着剤にも十分な耐熱性が求められる所以であるが、現実問題としてかかる高温域にて実用に耐えるポリイミドフィルムは限られている。また、従来の貼り合わせ用接着剤、粘着剤に至っては十分な耐熱性を有したものが得られていない。
一般に、ポリイミドフィルムを無機基板に仮貼り付けする耐熱接着手段が得られないため、かかる用途においては、無機基板上にポリイミドフィルムの溶液、ないし前駆体溶液を塗布して無機基板上で乾燥・硬化させてフィルム化して当該用途に使用する、所謂ワニス法ないしCoat−debond法と呼ばれる技術が知られている。
例えば特許文献1には、ガラス基板にポリイミド層を塗布した後、加熱処理により硬化させて形成し、その上に薄膜アクティブ素子を形成し、ガラス基板から剥離するフレキシブルなアクティブマトリクス層の製造方法が開示されている。しかしながら、かかる手段により得られる高分子膜は、限られた面積に前駆体溶液を塗布しなければならない制約上、厚膜を得ることが難しく、また膜厚斑が大きく、中央から端部まで均質な厚さを有するフィルムを得る事が極めて難しい。また、本手法で得られるフィルムは脆く裂けやすいため、無機基板から剥離する際に機能素子を破壊してしまう場合が多い。特に大面積のデバイスを剥離することは極めて難度が高く、およそ工業的に成り立つ歩留まりを得ることはできない。
本発明者らは、このような事情に鑑み、機能素子を形成するためのポリイミドフィルムと支持体との積層体として、耐熱性に優れ強靭で薄膜化が可能なポリイミドフィルムを、カップリング剤を介して無機物からなる支持体(無機層)に貼り合わせてなる積層体を提案した(特許文献2〜4)。
特開2001−356370号公報 特開2010−283262号公報 特開2011−11455号公報 特開2011−245675号公報
上述した特許文献2〜4に記載の積層体によれば、所謂接着剤、粘着剤的な要素を用いることなく、ポリイミドフィルムと無機基板との貼り合わせが可能となり、さらにその積層体は薄膜デバイスを製作するに必要な高温に暴露されても、ポリイミドフィルムの剥離は生じない。従って当該積層体を、従来のガラス板やシリコンウエハなどの無機物の基板上に直接電子デバイスを形成するプロセスに、供することにより、ポリイミドフィルム上に電子デバイスを製作することが可能であり、ポリイミドフィルムを無機基板から剥離することによりフレキシブルな電子デバイスの実現が可能となった。
しかしながら、かかる技術は、以下に示すような工業生産上の課題が残るものであった。
特に高精細な電子デバイスの製作を行う場合には、収率が課題となる。ポリイミドフィルムと無機基板間に異物が混入した場合、異物上、およびその周辺においては、異物を支柱と見立てたテント状の構造が生じる。これはポリイミドフィルムと無機基板の間に空隙を生じ、部分的に接着していない箇所を生じさせることになる。かかる空隙に閉じこめられた気体は、加熱環境下や減圧環境下において膨らもうとするため、膨れ欠陥(ブリスタートも云う)の原因となる。また、空隙部分は接着していない訳であるから、巨視的に接着強度を捉えた場合には、接着強度の変動が大となる。
異物が存在する近傍は、ポリイミドフィルム自体が盛り上がった状態となり、特にフォトリソグラフを用いるパターン形成や、マイクロコンタクト印刷のような高精細なパターン形成の際に、阻害要因となり、良好な電子デバイス形成が行えない場合が生じる。
かかる異物は、無機基板表面とポリイミドフィルム表面の清浄化と、作業環境のクリーン化により減ずることが可能である。しかしながら、高クリーン度の環境下での作業は設備に多大なる費用を要し、作業員の出入り、資材の搬入についても大きな制限が必要となる。電子回路素子のような、比較的小さい面積のデバイスであれば、加工装置サイズも小さくすることが可能であり、また欠点が生じたとしても欠点部分を避けて使用することができ、実用上十分な収率が望めるが、ディスプレイのような大面積デバイスの場合には、収率が極めて低くなるであろう事が容易に推察される。
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ワニス法とフィルムを直接貼りつける手法との短所を解決し、無機基板上に、耐熱性とフレキシブル性を備え、フレキシブル電子デバイスの基材として有用なポリイミドフィルム層を、欠点無く形成することを可能ならしめる発明に到達した。
すなわち本発明は以下の構成からなる。
1.少なくともフィルム厚が5μm以上、500μm以下かつ、フィルム厚の厚さ斑が20%以下であるポリイミド前駆体フィルム層と、厚さ5μm以上5000μm以下の無機基板が直接積層されてなることを特徴とする、ポリイミド前駆体フィルム層/無機基板積層体。
2.無機基板の表面があらかじめ有機化処理されていることを特徴とする1.記載の、ポリイミド前駆体フィルム層/無機基板積層体。
3.基材上にポリイミド前駆体フィルム層を形成する工程と、次いで該ポリイミド前駆体フィルム層を基材から無機基板に転写する工程を有する1.〜2.のいずれかに記載のポリイミド前駆体フィルム層/無機基板積層体の製造方法。
4.基材上にポリイミド前駆体フィルム層を形成する工程と、次いで基材と共にロール状に巻き上げて、ポリイミド前駆体フィルム層/基材積層体ロールを得る工程と、得られたポリイミド前駆体フィルム層/基材積層体ロールのポリイミド前駆体フィルム層側を基材と共に無機基板にラミネートする工程を含む1.〜2.のいずれかに記載のポリイミド前駆体フィルム層/無機基板積層体の製造方法。
5.前記1.〜2.のいずれかに記載されたポリイミド前駆体フィルム層/無機基板積層体の、ポリイミド前駆体フィルム層に加熱、冷却、活性エネルギー線照射、触媒との接触からなる群より選択されてなる少なくとも1種以上の外部刺激を与え、ポリイミドフィルム層に転化する事を特徴とするポリイミドフィルム層/無機基板積層体の製造方法。
6.前記3.又は4.に記載の製造方法にて製造されたポリイミド前駆体フィルム層/無機基板積層体に、加熱、冷却、活性エネルギー線照射、触媒との接触からなる群より選択されてなる少なくとも1種以上の外部刺激を与えてポリイミド前駆体を高分子に転化させる工程を含むポリイミドフィルム層/無機基板積層体の製造方法。
7.前記5.〜6.のいずれかに記載の製造方法にて得られるポリイミドフィルム層/無機基板積層体のポリイミドフィルム層上に電子デバイスを形成し、次いでポリイミドフィルム層ごと無機基板から剥離することを特徴とするフレキシブル電子デバイスの製造方法。
先に述べたように、ガラス板などの耐熱性無機基板にてポリイミドフィルムを仮支持し、ポリイミドフィルム上にデバイスを形成した後に、仮支持基板から剥離して、ポリイミドフィルム上に電子デバイスが形成されたフレキシブル電子デバイスの製法において、ポリイミドフィルムを接着剤・粘着剤にて貼り付ける場合には 接着剤、粘着剤の耐熱性が足りず、ポリイミドフィルムを接着材・粘着剤等を用いずに貼り付ける場合には、ポリイミドフィルムと基板間の異物による影響が顕著で、結果的に収率が低下し、さらに、ポリイミド前駆体をガラスに塗布した後に硬化させてフィルム層と成す製法においては、ポリイミドフィルム層の厚さの不均一性が大きく、物性の不均一性によるソリ。ネジレなどの変形を生じ易い、という問題があった。
本発明によれば、高精度の膜厚制御が可能であるためにポリイミドフィルム層の厚さの均一性は高く、初期乾燥が一様に行われるためポリイミドフィルム層の物性の均一性も高くなり、結果、ソリ、ネジレなどの不均一性を原因とする変形が生じにくくなる。
ポリイミドフィルム前駆体は柔軟性があり、また適度に塑性変形も可能であるため、ポリイミドフィルム前駆体と無機基板との間に異物が介在した場合においても、欠点とならないように積層中間体を作製することが可能となり、
さらに、接着材を用いずにフィルムの貼り合わせを行う際に必要となるカップリング剤層等の形成工程にてカップリング剤の凝集塊やカップリング剤処理の不均一性が生じた場合においても、当技術に寄れば不具合の回避が可能となる。仮にそのような表面処理を行った場合に無機基板上に異物が生じた場合でも、異物の大きさがポリイミド前駆体フィルム層厚より概略小さければ、実用上問題となる欠点となることを防止することが出来る。
本発明によれば、カップリング剤層を、同カップリング剤層の形成時に所定のパターンにて無機基板の一部をマスキングすること、ないし、カップリング剤層を形成後に、カップリング剤層の一部に所定のパターンに沿って活性エネルギー線照射を行い、意図的に接着力の有/無、ないし強/弱を得て、電子デバイスを形成する際に、デバイス形成プロセス時にポリイミドフィルムの剥離を生じさせないだけの十分な接着力有する良好接着部分と、比較的容易にポリイミドフィルムを剥離することが出来る易剥離部分とを所望のパターンで作り分けることができ、該易剥離部分周辺に沿って切り込みを入れて、当該エリア形成された機能素子部分を剥離することが可能となる。
本発明の積層中間体を経たフレキシブル電子デバイス製造工程を模式的に示した概略図である。 従来の液状材料を用いたフレキシブル電子デバイス製造工程を模式的に示した概略図である。 従来のポリイミドフィルム直接貼り付け法を用いたフレキシブル電子デバイス製造工程を模式的に示した概略図である。
<ポリイミド前駆体フィルム層/無機基板積層体、ポリイミドフィルム層/無機基板積層体>
本発明のポリイミド前駆体フィルム層/無機基板積層体は、少なくとも無機基板とポリイミド前駆体フィルム層から構成される。また、本発明のポリイミドフィルム層/無機基板積層体は、少なくとも無機基板と、該ポリイミド前駆体フィルム層から得られるポリイミドフィルム層から構成される。
<無機基板>
本発明においてはポリイミドフィルムの支持体として無機基板を用いる。無機基板とは無機物からなる基板として用いることのできる板状のものであればよく、例えば、ガラス板、セラミック板、半導体ウエハ、金属等を主体としているもの、および、これらガラス板、セラミック板、シリコンウエハ、金属の複合体として、これらを積層したもの、これらが分散されているもの、これらの繊維が含有されているものなどが挙げられる。
前記ガラス板としては、石英ガラス、高ケイ酸ガラス(96%シリカ)、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス(パイレックス(登録商標))、ホウケイ酸ガラス(無アルカリ)、ホウケイ酸ガラス(マイクロシート)、アルミノケイ酸塩ガラス等が含まれる。これらの中でも、線膨張係数が5ppm/K以下のものが望ましく、市販品であれば、液晶用ガラスであるコーニング社製の「コーニング(登録商標)7059」や「コーニング(登録商標)1737」、「EAGLE」、旭硝子社製の「AN100」、日本電気硝子社製の「OA10」、SCHOTT社製の「AF32」などが望ましい。
セラミック板としては、Al2O3、Mullite、AlN、SiC、Si3N4、BN、結晶化ガラス、Cordierite、Spodumene、Pb−BSG+CaZrO3+Al2O3、Crystallized glass+Al2O3、Crystallized Ca−BSG、BSG+Quartz、BSG+Quartz、BSG+Al2O3、Pb+BSG+Al2O3、Glass−ceramic、ゼロデュア材などの基板用セラミックス、TiO2、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、アルミナ、MgO、ステアタイト、BaTi4O9、BaTiO3、BaTi4+CaZrO3、BaSrCaZrTiO3、Ba(TiZr)O3、PMN−PTやPFN−PFWなどのキャパシター材料、PbNb2O6、Pb0.5Be0.5Nb2O6、PbTiO3、BaTiO3、PZT、0.855PZT−95PT−0.5BT、0.873PZT−0.97PT−0.3BT、PLZTなどの圧電材料が含まれる。
半導体ウエハとしては、シリコンウエハ、半導体ウエハ、化合物半導体ウエハ等を用いることができ、シリコンウエハとしては単結晶ないし多結晶のシリコンを薄板上に加工した物であり、n型或はp型にドーピングされたシリコンウエハ、イントリンシックシリコンウエハ等の全てが含まれ、また、シリコンウエハの表面に酸化シリコン層や各種薄膜が堆積されたシリコンウエハも含まれ、シリコンウエハ以外にも、ゲルマニウム、シリコン−ゲルマニウム、ガリウム−ヒ素、アルミニウム−ガリウム−インジウム、窒素−リン−ヒ素−アンチモン、SiC、InP(インジウム燐)、InGaAs、GaInNAs、LT、LN、ZnO(酸化亜鉛)やCdTe(カドミウムテルル)、ZnSe(セレン化亜鉛) などの半導体ウエハ、化合物半導体ウエハなどを用いることが出来る。
金属としては、W、Mo、Pt、Fe、Ni、Au、Ag、Ti、Al、Cuといった単一元素金属、インコネル、モネル、ニモニック、炭素銅、珪素鋼、黄銅、青銅、白銅、洋白、ニッケルシルバー、Fe−Ni系インバー合金、スーパーインバー合金、ステンレス鋼といった合金等が含まれる。また、これら金属に、他の金属層、セラミック層を付加してなる多層金属板も含まれる。この場合、付加層との全体のCTEが低ければ、主金属層にCu、Alなども用いられる。付加金属層として使用される金属としては、ポリイミドフィルムとの密着性を強固にするもの、拡散がないこと、耐薬品性や耐熱性が良いこと等の特性を有するものであれば限定されるものではないが、クロム、ニッケル、TiN、Mo含有Cuが好適な例として挙げられる。
無機基板の平面部分は、充分に平坦である事が望ましい。具体的には、表面粗さのP−V値が50nm以下、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは5nm以下である。これより粗いと、ポリイミドフィルムと無機基板との接着強度が不充分となる場合がある。
前記無機基板の厚さは特に制限されないが、取り扱い性の観点より10mm以下の厚さが好ましく、3mm以下がなお好ましく、1.3mm以下がなお好ましい。厚さの加減については特に制限されないが、0.07mm以上、好ましくは0.15mm以上、なお好ましくは0.3mm以上が好ましく用いられる。
前記無機基板の面積は、積層体やフレキシブル電子デバイスの生産効率・コストの観点より、大面積であることが好ましい。1730cm以上であることが好ましく、4300cm以上であることがより好ましく、6700cm以上であることがさらに、13000cm以上であることがなおさらに好ましい。
<ポリイミド前駆体>
本発明におけるポリイミド前駆体フィルム層/無機基板積層体を構成するポリイミド前駆体フィルム層とは、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸、イソイミド、溶剤、可塑剤などから構成される層であり、概ね半固体状である程度の弾性変形と塑性変形が可能な状態のフィルム層を意味する。本発明のポリイミド前駆体層は、高粘度の液体、あるいは極めて柔らかい固体、ないしスラリー、ゲル、ゾル、等と呼ばれる固液複合体などいずれの状態でも良いが、少なくとも自重で流れ出すような状態ではなく、好ましくは別途準備されるセパレーターフィルム等とともに巻き取ることができる程度の自己支持性を有する物である。
前駆体には、乾燥固化することによりポリイミドフィルム層となる様な溶剤可溶性ポリイミドの高濃度溶液のような物理的前駆体が含まれる。また、前駆体には、イソイミドのように、残り1ないし数段階の化学反応を経て最終的な高分子となる化学的前駆体も含まれる。
本発明において用いられるポリイミド前駆体フィルム層には、無機フィラーないし無機物の構造体の前駆体となりうる化合物を併用することができる。かかる場合得られるポリイミドフィルム層は有機無機のハイブリッド材料となる。
本発明のポリイミド前駆体フィルム層には、主成分となるポリイミド前駆体の他、溶剤、ゲル化剤、増粘剤、フィラー、などを必要に応じて適宜配合できる。
本発明のポリイミドフィルム層の厚さは5μm以上であり、8μm以上が好ましく、13μm以上がなお好ましく、さらには21μm以上が好ましく、なおさらには38μm以上が好ましい。ポリイミドフィルムの厚さの上限は特に制限されないが、フレキシブル電子デバイスとしての要求より450μm以下であることが好ましく、さらに240μm以下、なおさらには190μm以下が好ましい。
本発明のポリイミド前駆体フィルム層の厚さは7μm以上であり、11μm以上が好ましく、19μm以上がなお好ましく、さらには32μm以上が好ましく、なおさらには51μm以上が好ましい。ポリイミド前駆体フィルム層の厚さの上限は特に制限されないが、フレキシブル電子デバイスとしての要求より700μm以下であることが好ましく、さらに360μm以下、なおさらには250μm以下が好ましい。
本発明で特に好ましく用いられるポリイミドフィルム層は、芳香族ポリイミド、脂環族ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどのフィルム層を用いることが出来る。本発明を特にフレキシブルディスプレイ素子製造に用いる場合には、無色透明性を有するポリイミド系樹脂フィルム層を用いることが好ましいが、反射型、ないし自発光型のディスプレイの背面素子を形成する場合においては、特にこの限りではない。
一般にポリイミドフィルムは、溶媒中でジアミン類とテトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリアミド酸(ポリイミド前駆体)溶液を、ポリイミドフィルム作製用支持体に塗布、乾燥してグリーンフィルム(「前駆体フィルム」または「ポリアミド酸フィルム」ともいう)となし、さらにポリイミドフィルム作製用支持体上で、あるいは該支持体から剥がした状態でグリーンフィルムを高温熱処理して脱水閉環反応を行わせることによって得られる。
本発明においては、このグリーンフィルム状態を前駆体フィルム層として取り扱う。ポリイミドの組成によっては、塗布・乾燥のみならず、化学イミド化剤を配合し、前駆体フィルム段階で、一部イミド化反応を促進させておく場合もある。
ポリアミド酸を構成するジアミン類としては、特に制限はなく、ポリイミド合成に通常用いられる芳香族ジアミン類、脂肪族ジアミン類、脂環式ジアミン類等を用いることができる。
芳香族ジアミン類としては、例えば、2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、1,4−ビス[2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン(ビスアニリン)、1,4−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、2,2'−ジトリフルオロメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、3,3'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,3'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4'−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4'−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、3,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノベンゾフェノン、3,4'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、3,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4'−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4'−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4'−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4'−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4'−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノ−5,5'−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4'−ジアミノ−4,5'−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4'−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4'−ジアミノ−5'−フェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノ−5,5'−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4'−ジアミノ−4,5'−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4'−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4'−ジアミノ−5'−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリル、および上記芳香族ジアミンの芳香環上の水素原子の一部もしくは全てが、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシル基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
前記脂肪族ジアミン類としては、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン等が挙げられる。
前記脂環式ジアミン類としては、例えば、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4'−メチレンビス(2,6−ジメチルシクロヘキシルアミン)等が挙げられる。
芳香族ジアミン類以外のジアミン(脂肪族ジアミン類および脂環式ジアミン類)の合計量は、全ジアミン類の20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。換言すれば、芳香族ジアミン類は全ジアミン類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。

本発明では、耐熱性の観点からは、芳香族ジアミン類が好ましく、芳香族ジアミン類の中では、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類がより好ましい。ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類を用いると、高い耐熱性とともに、高弾性率、低熱収縮性、低線膨張係数を発現させることが可能になる。ジアミン類は、単独で用いてもよいし二種以上を併用してもよい。
ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類としては、特に限定はなく、例えば、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、5−アミノ−2−(m−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6−アミノ−2−(m−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2,2'−p−フェニレンビス(5−アミノベンゾオキサゾール)、2,2'−p−フェニレンビス(6−アミノベンゾオキサゾール)、1−(5−アミノベンゾオキサゾロ)−4−(6−アミノベンゾオキサゾロ)ベンゼン、2,6−(4,4'−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d']ビスオキサゾール、2,6−(4,4'−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d']ビスオキサゾール、2,6−(3,4'−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d']ビスオキサゾール、2,6−(3,4'−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d']ビスオキサゾール、2,6−(3,3'−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d']ビスオキサゾール、2,6−(3,3'−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d']ビスオキサゾール等が挙げられる。
ポリアミド酸を構成するテトラカルボン酸類としては、ポリイミド合成に通常用いられる芳香族テトラカルボン酸類(その酸無水物を含む)、脂肪族テトラカルボン酸類(その酸無水物を含む)、脂環族テトラカルボン酸類(その酸無水物を含む)を用いることができる。中でも、芳香族テトラカルボン酸無水物類、脂環族テトラカルボン酸無水物類が好ましく、耐熱性の観点からは芳香族テトラカルボン酸無水物類がより好ましく、光透過性の観点からは脂環族テトラカルボン酸類がより好ましい。これらが酸無水物である場合、分子内に無水物構造は1個であってもよいし2個であってもよいが、好ましくは2個の無水物構造を有するもの(二無水物)がよい。テトラカルボン酸類は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
脂環族テトラカルボン酸類としては、例えば、シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸等の脂環族テトラカルボン酸、およびこれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも、2個の無水物構造を有する二無水物(例えば、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物等)が好適である。なお、脂環族テトラカルボン酸類は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
脂環式テトラカルボン酸類は、透明性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
芳香族テトラカルボン酸類としては、特に限定されないが、ピロメリット酸残基(すなわちピロメリット酸由来の構造を有するもの)であることが好ましく、その酸無水物であることがより好ましい。このような芳香族テトラカルボン酸類としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4'−オキシジフタル酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン酸無水物等が挙げられる。
芳香族テトラカルボン酸類は、耐熱性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
本発明のポリイミドフィルム層は、ガラス転移温度が好ましくは250℃以上、より好ましくは300℃以上、さらに好ましくは350℃以上であり、あるいは500℃以下の領域においてガラス転移点が観測されないことが好ましい。本発明におけるガラス転移温度は、示差熱分析(DSC)により求めるものである。
本発明のポリイミドフィルム層の線膨張係数(CTE)は、好ましくは、−5ppm/K〜+20ppm/Kであり、より好ましくは−5ppm/K〜+15ppm/Kであり、さらに好ましくは1ppm/K〜+10ppm/Kである。CTEが前記範囲であると、一般的な支持体との線膨張係数の差を小さく保つことができ、熱を加えるプロセスに供してもポリイミドフィルム層と無機物からなる支持体とが剥がれることを回避できる。なお、かかるポリイミドフィルム層の特性は無機基板からポリイミドフィルム層を剥がして測定される。
本発明におけるポリイミド前駆体層ならびにポリイミドフィルム層の厚さ斑は、20%以下であることが好ましく、より好ましくは12%以下、さらに好ましくは6%以下、特に好ましくは3%以下である。厚さ斑が20%を超えると、狭小部へ適用し難くなる傾向がある。なお、フィルムの厚さ斑は、例えば接触式の膜厚計にて被測定フィルムから無作為に10点程度以上、好ましくは30点の位置を抽出してフィルム厚を測定し、下記式に基づき求めることができる。
フィルムの厚さ斑(%)
=100×(最大フィルム厚−最小フィルム厚)÷平均フィルム厚
ポリイミド前駆体フィルム層の厚さ斑は、ほぼポリイミドフィルム層の厚さ斑に反映される。ポリイミドフィルム層はフィレキシブル電子デバイスの基板材料であり、電子デバイスそのものの機械的な特性を支配するため、厚さ斑が、ほぼ機械特性のム斑に対応することになる。電子デバイスの製造には、コーティング法、印刷法、フォトリソグラフ法などが組み合わされて用いられる。被印刷物であるフィルム基板の厚さ斑は被印刷物表面の凹凸として反映されるため、接触型の印刷法を用いた場合に凹部にパターンが転写されない場合が生じる。この現象はスクリーン印刷では比較的少ないが、接触転写を伴う平版印刷、平版オフセット印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、凸版印刷、マイクロコンタクト印刷、反転印刷などの手法を用いた場合に問題となる場合が多い。また、フォトリソグラフ法を用いる場合には、フィルムの厚さ斑が、露光用マスクと被露光部との距離の斑に反映されるため、投影画像の焦点ずれ、エッジのぼやけなどが生じやすくなり、特に微細線や小さなドット形成おいては、大きな支障が出る。
本発明では、基材上でポリイミド前駆体フィルム層を形成し、次いで該ポリイミド前駆体フィルム層を塗布基材から無機基板に転写することにより積層中間体を得る。
本発明における基材には、極一般的な樹脂フィルムを用いることが出来る。基材としての樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、全芳香族ポリエステル、その他の共重合ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリイミド、脂環族ポリイミド、フッ素化ポリイミド、酢酸セルロース、硝酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリスチレン等、溶融延伸法ないし溶液製膜法で得られる樹脂のフィルムを用いることができる。本発明で好ましい塗布基材としての樹脂フィルムはポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルムである。かかる基材としての樹脂フィルムの塗布面側は、平坦化処理がなされている事が好ましい。平坦化処理された表面とは、一般的に樹脂フィルムに添加される滑材粒子を配合しない表面、通常より添加量を減じた表面、通常より滑材粒子サイズを小さくした表面、あるいは通常表面上に平坦化層を形成した表面を云う。
本発明ではかかる基材上に、ポリイミド前駆体フィルム層を形成する。ポリイミド前駆体フィルム層は、ポリイミド前駆体の溶液ないし溶融液、配合液などを基材に塗布し、乾燥ないし半硬化処理、ゲル化処理などにより半固体状態とすることで形成する。塗布方法は、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、カーテンコート法、スリットダイコート法、コンマコート法、リバースコート法、アプリケータ法、バーコート法、スクリーン印刷法、グラビアコート法などの塗布方法を用いればよい。本発明においてはポリイミド前駆体フィルム層を連続した長尺形態で得ることが好ましい。そのために有用な塗布方法は、カーテンコート法、スリットダイコート法、コンマコート法である。かかるコート法を用いることにより、本発明の必須要件であるフィルム厚のバラツキ精度が達成される。
かかるポリイミド前駆体フィルム層は、次いで無機基板に転写される。転写方法については以下に示すように幾通りかの方法が例示できる。ただしこれらの例示は本発明を限定する物ではなく、塗布基材、ポリイミド前駆体フィルム層、無機基板層などの固有の特性および、プロセス上の都合などに応じ、適宜最適と考えられる手法で転写を行えばよい。
(1) 塗布基材ごとポリイミド前駆体フィルム層を無機基板に貼りつけてから塗布基材を剥離する方法。
(2) 塗布基材からポリイミド前駆体フィルム層を剥がし、無機基板に直接貼りつける方法。
(3) 塗布基材からポリイミド前駆体フィルム層を別のキャリア材に転写し、次いでキャリア材ごとポリイミド前駆体フィルムを無機基板に貼りつけ、キャリア材を剥離する方法。
本発明を産業上有用な形で実施するためのひとつの形態としては、ポリイミド前駆体フィルムの状態にて流通させる例を挙げることができる。すなわち、ポリイミド前駆体合成と、基材への塗布乾燥などのプロセッシング技術を有する第一の事業体が、ポリイミド前駆体フィルム層までを製造し、次いで、無機基板へのラミネートと、外部刺激によるポリイミド前駆体を高分子に転化させるプロセスを有し、さらに、薄膜デバイスの製造技術を有する第二の事業体が、かかるポリイミド前駆体フィルム層を入手して、最終的なフレキシブル薄膜デバイスを製造する形式を、好ましい事業例として考えることが出来る。
本発明においてはシランカップリング剤を用いることが出来る。シランカップリング剤は、ポリイミド前駆体に配合して使用することができる。またシランカップリング剤は、無機基板表面に予め塗布・反応させる(シランカップリング剤処理)ことができる
本発明において、無機基板を、あらかじめ有機化処理するとは、主にはこのシランカップリング剤処理の事をいう。
<シランカップリング剤>
本発明におけるシランカップリング剤は、無機基板とポリイミドフィルム層との間に物理的ないし化学的に介在し、両者間の接着力を高める作用を有する化合物を云う。
シランカップリング剤の好ましい具体例としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、クロロメチルフェネチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。
n−プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ドデシルリクロロシラン、ドデシルトリメトキシラン、エチルトリクロロシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリクロロシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、トリエトキシエチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシフェニルシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ペンチルトリクロロシラン、トリアセトキシメチルシラン、トリクロロヘキシルシラン、トリクロロメチルシラン、トリクロロオクタデシルシラン、トリクロロプロピルシラン、トリクロロテトラデシルシラン、トリメトキシプロピルシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、トリクロロ−2−シアノエチルシラン、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、などを使用することもできる。
かかるシランカップリング剤の中で、本発明にて好ましく用いられるシランカップリング剤はカップリング剤の、一分子あたりに一個の珪素原子を有する化学構造のシランカップリング剤が好ましい。
本発明では、特に好ましいシランカップリング剤としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシランなどが挙げられる。プロセスで特に高い耐熱性が要求される場合、Siとアミノ基の間を芳香族基でつないだものが望ましい。
なお本発明では必要に応じて、リン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等を併用しても良い。
<シランカップリング剤の塗布方法>
本発明におけるシランカップリング剤の塗布方法としては、液相での塗布方法、気相での塗布方法を用いることが出来る。
液相での塗布方法としては、シランカップリング剤をアルコールなどの溶媒で希釈した溶液を用いて、スピンコート法、カーテンコート法、ディップコート法、スリットダイコート法、グラビアコート法、バーコート法、コンマコート法、アプリケーター法、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の一般的な液体塗布方法を例示することが出来る。液相での塗布方法を用いた場合、塗布後に速やかに乾燥し、さらに100±30℃程度で数十秒〜10分程度の熱処理を行うことが好ましい。熱処理により、シランカップリング剤と被塗布面の表面とが化学反応により結合される。
本発明ではシランカップリング剤を気相を介して塗布することができる。気相法による塗布は、基板をシランカップリング剤の蒸気、すなわち実質的に気体状態のシランカップリング剤に暴露することによる。シランカップリング剤の蒸気は、液体状態のシランカップリング剤を40℃〜シランカップリング剤の沸点程度までの温度に加温することによって得ることが出来る。シランカップリング剤の沸点は、化学構造によって異なるが、概ね100〜250℃の範囲である。ただし250℃以上の加熱は、シランカップリング剤の有機基側の分解や副反応等を招く恐れがあるため好ましくない。
シランカップリング剤を加温する環境は、加圧下、略常圧下、減圧下のいずれでも構わないが、シランカップリング剤の気化を促進する場合には略常圧下ないし減圧下が好ましい。多くのシランカップリング剤は可燃性液体であるため、密閉容器内にて、好ましくは容器内を不活性ガスで置換した後に気化作業を行うことが好ましい。
無機基板をシランカップリング剤に暴露する時間は特に制限されないが、20時間以内、好ましくは60分以内、さらに好ましくは15分以内、なおさらに好ましくは1分以内である。
無機基板をシランカップリング剤に暴露する間の無機基板温度は、シランカップリング剤の種類と、求めるシランカップリング剤層の厚さにより−50℃から200℃の間の適正な温度に制御することが好ましい。
シランカップリング剤に暴露された無機基板は、好ましくは、暴露後に、70℃〜200℃、さらに好ましくは75℃〜150℃に加熱される。かかる加熱によって、無機基板表面の水酸基などと、シランカップリング剤のアルコキシ基やシラザン基が反応し、シランカップリング剤処理が完了する。加熱に要する時間は10秒以上10分程度以内である。温度が高すぎたり、時間が長すぎる場合にはカップリング剤の劣化が生じる場合がある。また短すぎると処理効果が得られない。なお、シランカップリング剤に暴露中の基板温度が既に80℃以上である場合には、事後の加熱を省略することも出来る。
本発明では、無機基板のシランカップリング剤塗布面を下向きに保持してシランカップリング剤蒸気に暴露することが好ましい。液相の塗布方法では、必然的に塗布中および塗布前後に無機基板の塗布面が上を向くため、作業環境下の浮遊異物などが無機基板表面に沈着する可能性を否定できない。しかしながら気相による塗布方法では無機基板を下向きに保持することが出来るため。環境中の異物付着を大幅に減ずることが可能となる。
なおシランカップリング剤処理前の無機基板表面を短波長UV/オゾン照射などの手段により清浄化すること、ないしは液体洗浄剤で清浄化すること等は、有意義な好ましい操作である。
カップリング剤の塗布量、厚さについては理論上は1分子層あれば事足り、機械設計的には無視できるレベルの厚さで十分である。一般的には400nm未満(0.4μm未満)であり、200nm以下(0.2μm以下)が好ましく、さらに実用上は100nm以下(0.1μm以下)が好ましく、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは10nm以下である。ただし計算上5nm以下の領域になるとカップリング剤が均一な塗膜としてではなく、クラスター状に存在するケースが想定され、余り好ましくはない。
カップリング剤層の膜厚は、エリプソメトリー法または塗布時のカップリング剤溶液の濃度と塗布量から計算して求める方法、表面元素分析によりシランカップリング剤特有の元素の存在量から換算する方法などを用いることができる。
<無機基板のパターン化処理>
本発明においては無機基板側にパターン化処理を行うことができる。ここにパターン化とは、意図的にカップリング剤の塗布量ないし活性度等を操作した領域を作ることを云う。これにより、積層体において無機基板とポリイミドフィルム層との間の剥離強度が異なる良好接着部分と易剥離部分を有し、該良好接着部分と該易剥離部分とが所定のパターンを形成することができる。パターン化処理として、シランカップリング剤塗布を行う際に、あらかじめ所定のパターンで準備されたマスクを用いて、シランカップリング剤の塗布量を操作する方法を例示できる。またシランカップリング剤の塗布面に活性エネルギー線照射を行い、その際に、マスキングないしスキャン操作などの手法を併用することによりパターン化することも可能である。ここに活性エネルギー線照射とは、紫外線、電子線、X線等のエネルギー線を照射する操作、さらには極短波長の紫外線照射処理のように紫外線照射光効果と同時に照射面近傍で発生するオゾンガスガス暴露の効果を併せ持つものを含める。さらにこれらの他に、コロナ処理、真空プラズマ処理、常圧プラズマ処理、サンドブラスと処理等によってパターン化処理を行うことも可能である。
本発明における良接着部分とは、無機基板とポリイミドフィルム層の接着強度が強い部分を指し、本発明における易剥離部分とは、無機基板とポリイミドフィルム層の接着強度が弱い部分を指す。前記易剥離部分の接着強度は、良好接着部分の接着強度の1/2以下であることが好ましく、より好ましくは、1/3以下、さらに好ましくは1/4以下である。接着強度の下限値は特に制限されないが、前記良好接着部分においては0.5N/cm以上、前記易剥離部分においては0.01N/cm以上であることが好ましい。
<フレキシブル電子デバイスの製造方法>
本発明のポリイミド前駆体フィルム層/無機基板積層体からポリイミドフィルム層/無機基板積層体を得て、これを電子デバイス形成用の基板として用いると、既存の電子デバイス製造用の設備、プロセスを用いて積層体のポリイミドフィルム層上に電子デバイスを形成し、積層体からポリイミドフィルム層ごと剥離することで、フレキシブルな電子デバイスを作製することができる。
本発明における電子デバイスとは、電気配線を担う配線基板、トランジスタ、ダイオードなどの能動素子や、抵抗、キャパシタ、インダクタなどの受動デバイスを含む電子回路、他、圧力、温度、光、湿度などをセンシングするセンサー素子、発光素子、液晶表示、電気泳動表示、自発光表示などの画像表示素子、無線、有線による通信素子、演算素子、記憶素子、MEMS素子、太陽電池、薄膜トランジスタなどを云う。
積層体からポリイミドフィルム層を剥離する方法としては、無機基板側から強い光を照射し、無機基板とポリイミドフィルム層間の接着部位を熱分解、ないし光分解させて剥離する方法、あらかじめ接着強度を弱めておき、ポリイミドフィルムの弾性強度限界値未満の力でポリイミドフィルムを引きはがす方法、加熱水、加熱蒸気などに晒し、無機基板とポリイミドフィルム層界面の結合強度を弱めて剥離させる方法などを例示することが出来る。
本発明において、無機基板側、ないし、ポリイミドフィルム層側、さらには両方にパターン化処理が成された場合、パターン化処理によりポリイミドフィルム層と無機基板との接着力が低くなる領域(易剥離部と呼ぶ)に電子デバイスを形成し、次いで、その領域の外周部に切り込みを入れ、ポリイミドフィルムの電子デバイスが形成されたエリアを無機基板から剥離する事によりフレキシブル電子デバイスを得ることが出来る。該方法により、ポリイミドフィルム層と無機基板の剥離がより容易になる。
積層体の易剥離部の外周に沿ってポリイミドフィルム層に切り込みを入れる方法としては、刃物などの切削具によってポリイミドフィルム層を切断する方法や、レーザーと積層体を相対的にスキャンさせることによりポリイミドフィルムを切断する方法、ウォータージェットと積層体を相対的にスキャンさせることによりポリイミドフィルム層を切断する方法、半導体チップのダイシング装置により若干ガラス層まで切り込みつつポリイミドフィルム層を切断する方法などを用いることができる。また、これらの方法の組み合わせや、切削具に超音波を重畳させたり、往復動作や上下動作などを付け加えて切削性能を向上させる等の手法を適宜採用することもできる。
積層体の易剥離部外周のポリイミドフィルム層に切り込みを入れるにあたり、切り込みを入れる位置は、少なくとも易剥離部の一部を含んでいればよく、基本的には所定のパターンに従って切断すれば良いが、誤差の吸収、生産性の観点などより、適宜判断すればよい。
ポリイミドフィルム層を支持体から剥離する方法としては、特に制限されないが、ピンセットなどで端から捲る方法、デバイス付きのポリイミドフィルム層の切り込み部分の1辺に粘着テープを貼着させた後にそのテープ部分から捲る方法、デバイス付きのポリイミドフィルムの切り込み部分の1辺を真空吸着した後にその部分から捲る方法等が採用できる。なお、剥離の際に、デバイス付きのポリイミドフィルムの切り込み部分に曲率が小さい曲がりが生じると、その部分のデバイスに応力が加わることになりデバイスを破壊する虞があるため、極力曲率の大きな状態で剥がすことが望ましい。例えば、曲率の大きなロールに巻き取りながら捲るか、あるいは曲率の大きなロールが剥離部分に位置するような構成の機械を使って捲ることが望ましい。
また、剥離する部分に予め別の補強基材を貼りつけて、補強基材ごと剥離する方法も有用である。剥離するフレキシブル電子デバイスが、表示デバイスのバックプレーンである場合、あらかじめ表示デバイスのフロントプレーンを貼りつけて、無機基板上で一体化した後に両者を同時に剥がし、フレキシブルな表示デバイスを得ることも可能である。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は下記の通りである。
<ポリアミド酸溶液の還元粘度>
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN,N−ジメチルアセトアミドに溶解した溶液についてウベローデ型の粘度管を用いて30℃で測定した。
<ポリイミドフィルムの厚さ>
ポリイミドフィルムの厚さは、マイクロメーター(ファインリューフ社製「ミリトロン1245D」)を用いて測定した。
<ポリイミド前駆体フィルムの厚さ>
ポリイミド前駆体フィルムと無機基板とからなる積層中間体の厚さをマイクロメーター(ファインリューフ社製「ミリトロン1245D」)を用いて測定し、無機基板の厚さを差し引くことによりポリイミド前駆体フィルム厚さを求めた。
<ポリイミドフィルム、ポリイミド前駆体フィルムの厚さ斑>
ポリイミドフィルム、ポリイミド前駆体フィルムの厚さを所定の方法で無作為に30点測定し、平均値、最大値、最小値、および標準偏差を求め、次式より厚さ斑を求めた。
フィルムの厚さ斑(%)=100×(最大フィルム厚−最小フィルム厚)÷平均フィルム厚
<ポリイミドフィルムの引張弾性率、引張強度および引張破断伸度>
測定対象とするポリイミドフィルムから、流れ方向(MD方向)及び幅方向(TD方向)がそれぞれ100mm×10mmである短冊状の試験片を切り出し、引張試験機(島津製作所社製「オートグラフ(登録商標);機種名AG−5000A」)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、引張弾性率、引張強度および引張破断伸度を測定した。なお連続長尺ロールのようにフィルムに方向性が有る場合はMD方向(フィルム長さ方向)の物性値とした。
<ポリイミドフィルムの線膨張係数(CTE)>
測定対象とするポリイミドフィルムの流さ方向(MD方向)について、下記条件にて伸縮率を測定し、15℃の間隔(30℃〜45℃、45℃〜60℃、…)での伸縮率/温度を測定し、この測定をガラス転移温度まで、ガラス転移温度が300℃以上の場合には300℃まで行って、MD方向の平均値を線膨張係数(CTE)として算出した。
機器名 ; MACサイエンス社製「TMA4000S」
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/分
雰囲気 ; アルゴン
初荷重 ; 34.5g/mm2
<ガラス転移温度>
DSC示差熱分析装置を用いて、室温から500℃までの範囲での構造変化に起因する吸放熱の有無からポリイミドフィルムのガラス転移温度を求めた。
<外観>
品位については、積層体全体の目視検査での結果である。
<異物密度>
30mm×30mmの領域をサンプリングし、100倍拡大の測長機能付き顕微鏡にてサンプリング領域を観察し、100倍観察にて確認された異物については、さらに拡大率を400倍として長径長さを測定し、10μm以上のものの個数を係数し、観察面積で除して異物密度とした。
<接着強度>
積層体上にてポリイミドフィルム層に10mm間隔となるようにカミソリ刃で切り込みを入れ、JIS C6471に記載の180度剥離法に従い、下記条件で測定した。
装置名 : 島津製作所社製「オートグラフ(登録商標)AG−IS」
測定温度 : 室温
剥離速度 : 50mm/分
雰囲気 : 大気
測定サンプル幅 : 10mm
(実施例1)
温度計、攪拌装置及び原料投入口を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、脱水N,N−ジメチルアセトアミド(以下DMAcと略す)1410質量部を入れ、更に1,4−フェニレンジアミン54.34質量部及び1,3−フェニレンジアミン9.588質量部を加え溶解するまで攪拌した。その後、氷浴にて3℃まで冷却し、この冷却した芳香族ジアミン化合物DMAc溶液に無水ピロメリット酸128.5質量部を3等分に分けて添加し3時間かけて反応溶液の温度は30℃まで上げつつ攪拌を継続し、さらに10分間にて該反応液を60℃まで加温し、3分間保持した後に水浴にて25℃まで冷却し、粘稠溶液として12wt%ポリアミド酸DMAc溶液(A1)を得た。得られたポリアミド酸の還元粘度は4.95dl/gであった。
得られた12wt%ポリアミド酸DMAc溶液(D1)を、アプリケーターを用いて厚さ125μm、幅500mmのポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製「A−4100」)の平滑面(無滑材面)上に、最終膜厚(イミド化後の膜厚)が18μmとなるように塗布し、別途、連続浸漬浴に調整した無水酢酸2100容量部、ピリジン900容量部、及びNMP3000容量部からなる35℃のイミド/イソイミド化剤溶液中に、滞留時間が15分間となるように浸漬しイミド/イソイミド化させ、さらに室温下、DMAc浴に15分浸漬させた後、120℃にて10分間乾燥し、ポリエステルフィルムと共に巻き取りポリイミド前駆体フィルム層/基材積層体ロール(A2)を得た。
得られたポリイミド前駆体フィルム層/基材積層体のロールD2を巻き出し、PETフィルムごと360mm×460mmの四角形状に切り出した。次いで、370mm×470mmの白板ガラスに、先に切り出したポリイミド前駆体フィルム側を、白板ガラスの端が5mm露出するように位置あわせし、クライムプロダクツ社製のラミネータを用いて、無機基板側温度30℃、ラミネート時のロール圧力5kg/cm2、ロール速度5mm/秒にてラミネートした。次いでポリイミド前駆体と接しているPETフィルムを剥離し、白板ガラスとポリイミド前駆体からなるポリイミド前駆体フィルム層/無機基板積層体(A5)を得た。 積層中間体のポリイミド前駆体フィルムの厚さは、 平均25.1μm、最大25.8μm、最小24.5、 厚さ斑 5.18% であった。
得られた積層中間体を防爆仕様のオーブンに入れ、まず150℃に昇温して15分保持し、次いで260℃に10分、300℃にて10分間加熱し、さらに300℃5分、450℃5分間の熱処理を経て、室温まで冷却し、白板ガラスとポリイミドフィルム層からなるポリイミドフィルム層/無機基板積層体(A6)を得た。
積層体(A6)から、ポリイミドフィルムを剥離し、膜厚分布を測定した。 結果、 平均17.9μm、最大18.4μm、最小17.5、 厚さ斑 5.03% であった。
(実施例2)
攪拌機、分水器、温度計および窒素ガス導入管を備えた反応装置に、グリシドール(日本油脂(株)製、商品名「エピオールOH」)1400質量部およびテトラメトキシシラン部分縮合物(多摩化学(株)製、商品名「メチルシリケート51」、Siの平均個数が4)8957.9質量部を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら、90℃に昇温した後、触媒としてジブチル錫ジラウレート2.0質量部を加え、反応させた。反応中、分水器を使って生成したメタノールを留去し、その量が約630質量部に達した時点で冷却した。昇温後冷却までに要した時間は5時間であった。ついで、さらに約10分間、系内を減圧してメタノール約80質量部を除去した。このようにして、エポキシ基含有メトキシシラン部分縮合物(B1)を得た。
攪拌機、分水器、温度計および窒素ガス導入管を備えた反応装置に、ジフェニルスルホン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸無水物43.20質量部、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン45.00質量部、N−メチルピロリドン248.82質量部、キシレン62.20質量部を仕込み、170℃で4時間、生成する水を分水器より回収しながら脱水閉環反応させ、有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂溶液(B2)を得た。
得られた有機溶剤可溶ポリイミド溶液(B2)を90℃に加熱し、先に得られたエポキシ基含有メトキシシラン部分縮合物(A1)7.21質量部を加え、90℃で8時間反応させ、室温まで冷却し、硬化残分26%のメトキシ基含有シラン変性ポリイミド樹脂溶液(B3)を得た。
得られたメトキシ基含有シラン変性ポリイミド樹脂溶液(B3)を、スリットダイを用いて厚さ125μm、幅500mmの長尺ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製「A−4100」)の平滑面(無滑材面)上に、最終膜厚(イミド化後の膜厚)が20μmとなるように塗布し、120℃にて15分間乾燥し、360mm幅になるようにスリットしてロール状に巻きとり、ポリイミド前駆体フィルムのロール(B4)を得た。
室温23℃±2℃、湿度50±5%RH、クリーン度10000に調整された実験室内において、得られたポリイミド前駆体フィルムのロールB4を、フィルム切断機構付きのMCK社製ロールラミネーターにセットし、PETフィルムごと370mm×470mmの白板ガラスに、白板ガラスの新工法に対して横側が5mm露出するように位置あわせしてラミネートした。条件は、無機基板側温度、ロール温度は共に25℃、ラミネート時のロール圧力4.5kg/cm2、ロール速度10mm/秒である。次いでポリイミド前駆体と接しているPETフィルムを剥離し、白板ガラスとポリイミド前駆体からなるポリイミド前駆体フィルム層/無機基板積層体(B5)を得た。
積層中間体のポリイミド前駆体フィルムの厚さは、 平均34.1μm、最大35.8μm、最小32.9、 厚さ斑 8.50% であった。
得られた積層中間体を防爆仕様のオーブンに入れ、まず150℃に昇温して90分保持し、次いで2℃/分の速度で温度を220℃に上げ、20分保持し、さらにそこから5℃/分の速度で380℃まで温度を上げ、15分間保持した後、10℃/分の速度で50℃まで冷却し、白板ガラスとシリカハイブリッドポリイミドフィルム層からなるポリイミドフィルム層/無機基板積層体(B6)を得た。
積層体(B6)は外観品位良好であり、ポリイミドフィルム層表面に、ブリスター、突起、異物等は観察されなかった。一連の作業が行われた実験室はクリーン度10000程度であり、ガラス板上には相応レベルの微小異物等が存在しているが、ポリイミド前駆体フィルムに埋め込まれて、欠点としては顕在化しなかったものと解釈される。
積層体(B6)から、シリカハイブリッドポリイミドフィルム層を剥離し、膜厚分布を測定した。結果 平均20.3μm、最大21.0μm、最小19.1μm、標準偏差 0.12μm 厚さ斑 9.36% であった。得られたフィルムの弾性率は4.1GPa、線膨張係数は17.2ppm/Kであった。
(実施例3)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール(DAMBO)223質量部と、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部とを加えて完全に溶解させ、次いで、ピロメリット酸二無水物(PMDA)217質量部を加え、25℃の反応温度で36時間攪拌して、還元粘度3.8の褐色で粘調なポリアミド酸溶液(C1)を得た。
上記で得られたポリアミド酸溶液を用い、コンマコーターを用いて幅800mmの長尺ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製「A−4100」)の平滑面(無滑材面)上に、最終膜厚(イミド化後の膜厚)が38μmとなるように塗布し、105℃にて25分間乾燥した。ポリエステルフィルムと共に巻き取りポリイミド前駆体フィルム層/基材積層体フィルムロール(C2)を得た。
室温23℃±2℃、湿度50±5%RH、クリーン度10000に調整された実験室内において、得られたポリイミド前駆体層/基材積層フィルムのロールC2を巻き出し、PETフィルムごと360mm×460mmの四角形状に切り出した。次いで、370mm×470mmの白板ガラスに、先に切り出したポリイミド前駆体フィルム側を、白板ガラスの端が5mm露出するように位置あわせし、クライムプロダクツ社製のラミネータを用いて、無機基板側温度30℃、ラミネート時のロール圧力5kg/cm2、ロール速度5mm/秒にてラミネートした。次いでポリイミド前駆体と接しているPETフィルムを剥離し、白板ガラスとポリイミド前駆体からなるポリイミド前駆体層/無機基板積層体(C5)を得た。積層体のポリイミド前駆体フィルムの厚さを測定した結果、 平均51.3μm、最大52.0μm、最小50.8μm、厚さ斑 2.34% であった。
得られた積層体を防爆仕様のオーブンに入れ、まず150℃に昇温して10分保持し、次いで220℃に10分、480℃にて10分間加熱し、室温まで冷却し、白板ガラスとポリイミドフィルム層からなるポリイミドフィルム層/無機基板積層体(C6)を得た。
積層体(C6)は外観品位良好であり、ポリイミドフィルム層表面に、ブリスター、突起、異物等は観察されなかった。
積層体(C6)から、ポリイミドフィルムを剥離し、膜厚分布を測定した。
結果、 平均37.7μm、最大38.1μm、最小37.0μm、最大標準偏差 0.08μm 厚さ斑 1.86%であった。またフィルムの弾性率は9.0GPa、線膨張係数は0.8ppm/Kであった。
(実施例4)
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)398質量部と、パラフェニレンジアミン(PDA)147質量部とを、4600質量部のN、N−ジメチルアセトアミドに溶解させて加え、25℃の反応温度で24時間攪拌して、表1に示す還元粘度3.6を有する褐色で粘調なポリアミド酸溶液を得た。
上記で得られたポリアミド酸溶液を用い、コンマコーターを用いて幅800mmの長尺ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製「A−4100」)の平滑面(無滑材面)上に、最終膜厚(イミド化後の膜厚)が12.5μmとなるように塗布し、105℃にて20分間乾燥した。ポリエステルフィルムと共に巻き取りポリイミド前駆体フィルム層/基材積層体ロール(D2)を得た。
室温23℃±2℃、湿度50±5%RH、クリーン度10000に調整された実験室内において、得られたポリイミド前駆体フィルムのロールD2を巻き出し、PETフィルムごと360mm×460mmの四角形状に切り出した。次いで、370mm×470mmの白板ガラスに、先に切り出したポリイミド前駆体フィルム側を、白板ガラスの端が5mm露出するように位置あわせし、クライムプロダクツ社製のラミネータを用いて、無機基板側温度30℃、ラミネート時のロール圧力5kg/cm2、ロール速度5mm/秒にてラミネートした。次いでポリイミド前駆体と接しているPETフィルムを剥離し、白板ガラスとポリイミド前駆体からなるポリイミド前駆体フィルム層/基材積層体(D5)を得た。積層体のポリイミド前駆体フィルムの厚さを測定した結果、 平均18.4μm、最大19.0μm、最小17.9μm、厚さ斑 5.98% であった。
得られた積層中間体を防爆仕様のオーブンに入れ、まず150℃に昇温して10分保持し、次いで220℃に10分、340℃に30分、450℃にて20分間加熱し、室温まで冷却し、白板ガラスとポリイミドフィルム層からなるポリイミドフィルム層/無機基板積層体(D6)を得た。
積層体(D6)は外観品位良好であり、ポリイミドフィルム層表面に、ブリスター、突起、異物等は観察されなかった。
積層体(D6)から、ポリイミドフィルムを剥離し、膜厚分布を測定した。
結果、 平均12.6μm、最大12.8μm、最小12.3μm、最大標準偏差 0.04μm 厚さ斑 3.97%であった。またフィルムの弾性率は9.0GPa、線膨張係数は7.4ppm/Kであった。
(実施例5)
(シランカップリング剤塗布ガラス板)
換気口と吸気口を備えた密閉チャンバーの中に置いた加熱バットに、シラン系カップリング剤、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(商品名KBM−503、信越シリコーン社製)を満たし、75℃に加温した。次いで、一辺250mmの正方形とした白板硝子を、加熱バット上100mmに保持し、シランカップリング剤蒸気が均一に当たるように水平方向にガラス板の位置を揺らし、5分間暴露した後に取りだし、100℃に加温したホットプレート上に置いて、10分間加熱し、シランカップリング剤塗布ガラス板を得た。
(パターン化処理)
得られたシランカップリング剤塗布ガラス板を、200mm四方の窓が開けられた厚さ0.5mmのステンレススチール製のマスクにて被い、ガラス板の周辺25mmを光遮蔽し、LANテクニカルサービス社製のUV/オゾン照射装置を用いて、300秒間のUV/オゾン照射を行い、パターン化ガラス板とした。
室温23℃±2℃、湿度50±5%RH、クリーン度10000に調整された実験室内において、実施例3にて得られたポリイミド前駆体フィルムのロールC2を巻き出し、PETフィルムごと220mm×220mmの四角形状に切り出した。次いで、先に得たパターン化ガラス板に、先に切り出したポリイミド前駆体フィルム側を、白板ガラスの端が15mm露出するように位置あわせし、MCK社製のロールラミネーターを用いて、無機基板側温度30℃、ラミネート時のロール圧力5kg/cm2、ロール速度5mm/秒にてラミネートした。次いでポリイミド前駆体と接しているPETフィルムを剥離し、白板ガラスとポリイミド前駆体からなるポリイミド前駆体層/無機基板積層体(E5)を得た。積層体のポリイミド前駆体フィルムの厚さを測定した結果、 平均51.0μm、最大51.8μm、最小50.6μm、厚さ斑 2.35% であった。
得られた積層中間体を防爆仕様のオーブンに入れ、まず150℃に昇温して10分保持し、次いで220℃に10分、480℃にて10分間加熱し、室温まで冷却し、白板ガラスとポリイミドフィルム層からなるポリイミドフィルム層/無機基板積層体(E6)を得た。
積層体(E6)は外観品位良好であり、ポリイミドフィルム層表面に、ブリスター、突起、異物等は観察されなかった。
積層体(E6)から、ポリイミドフィルムを剥離し、膜厚分布を測定した。
結果、 平均37.7μm、最大38.1μm、最小37.0μm、最大標準偏差 0.08μm 厚さ斑 1.86%であった。またフィルムの弾性率は8.7Pa、線膨張係数は1.2ppm/Kであった。
得られた積層体(E6)の高分子フィルム層のガラス板との接着強度は、ガラス端面から概略25mmの範囲では4.2N/cm、それより内側では0.5N/cmであった。すなわち、先のUVオゾン処理時にマスクされていた部分の接着強度は強く、マスクされずにUV/オゾン処理が行われた部分の接着力は弱くなっていたことが示された。
(実施例6)
(シランカップリング剤塗布シリコンウエハ)
スピンコーターを用いて、シラン系カップリング剤、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(商品名KBM−503、信越シリコーン社製)の0.5%イソプロピルアルコール溶液を8インチ、700μm厚のシリコンウエハに、2000rpmにてコーティングし、その後100℃に加温したホットプレート上にて10分間加熱し、シランカップリング剤塗布シリコンウエハを得た。
(パターン化処理)
得られたシランカップリング剤塗布シリコンウエハに、100mm四方の窓が開けられた厚さ0.5mmのステンレススチール製のマスクにて被い、LANテクニカルサービス社製のUV/オゾン照射装置を用いて、300秒間のUV/オゾン照射を行い、パターン化シリコンウエハ板とした。
実施例3にて得られたポリアミド酸溶液を用い、コンマコーターを用いて幅450mm、厚さ50μmの長尺ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製「E5100」)に、最終膜厚(イミド化後の膜厚)が6μmとなるように塗布し、105℃にて10分間乾燥した。ポリエステルフィルムと共に巻き取りポリイミド前駆体フィルム層/基材積層体ロール(F2)を得た。
室温23℃±2℃、湿度50±5%RH、クリーン度1000に調整された実験室内において、得られたポリイミド前駆体フィルム層/基材積層体のロールF2を巻き出し、サークルカッターにて直径180mmの円形に切り出した。次いで、先に得られたパターン化シリコンウエハに、ウエハの端が約10mm露出するように位置あわせし、MCK社製のロールラミネーターを用いて、ウエハ側温度20℃、ラミネート時のロール圧力3kg/cm2、ロール速度5mm/秒にてラミネートした。次いでポリイミド前駆体と接しているPETフィルムを剥離し、シリコンウエハとポリイミド前駆体からなる積層中間体(F4)を得た。積層中間体のポリイミド前駆体フィルムの厚さを測定した結果、 平均10.3μm、最大10.5μm、最小10.0μm、厚さ斑 4.85% であった。
得られた積層中間体を防爆仕様のオーブンに入れ、まず150℃に昇温して10分保持し、次いで220℃に5分、480℃にて5分間加熱し、室温まで冷却し、ポリイミドフィルム層とシリコンウエハからなるポリイミドフィルム層/無機基板積層体(F6)を得た。
積層体(F6)は外観品位良好であり、ポリイミドフィルム層表面に、ブリスター、突起、異物等は観察されなかった。
得られた積層体(F6)のポリイミドフィルムのシリコンウエハとの接着強度は、シリコンウエハ周辺部では2.8N/cm以上、中央100mm角部分(UVオゾン処理された部分)では0.3N/cmであった。周辺部では接着強度測定時にフィルム切れが多発して正確な値を求めることが出来ていないが、中央部分よりも強く接着していることは明らかである。すなわち、先のUVオゾン処理時にマスクされていた部分の接着強度は強く、マスクされずにUV/オゾン処理が行われた部分の接着力は弱くなっていることが示されている。
積層体(F6)の剥離しやすい中央部分において、ポリイミドフィルムを剥離し、膜厚分布を測定した。
結果 平均6.25μm、最大6.38μm、最小6.14μm、最大標準偏差 0.08μm 厚さ斑 3.84%であった。
またフィルムの弾性率は9.2GPa、線膨張係数は−0.2ppm/Kと若干の負膨張を示した。
(比較例1)
実施例2にて得られたメトキシ基含有シラン変性ポリイミド樹脂溶液(B3)をスリットダイコーターに仕込み、実施例1にて用いた白板ガラスに、硬化後の膜厚が10μm程度となるように吐出量を調整して直接塗布を行った。塗布後の白板ガラスを、120℃にて15分間乾燥し、積層中間体とした。積層中間体におけるポリイミド前駆体フィルムの厚さを測定した結果、 平均14.6μm、最大18.5μm、最小10.3μm、厚さ斑 56.16%であった。
得られた積層中間体を、さらに防爆仕様のオーブンに入れ、まず150℃に昇温して60分保持し、次いで2℃/分の速度で温度を220℃に上げ、20分保持し、さらにそこから5℃/分の速度で450℃まで温度を上げ、5分間保持した後、10℃/分の速度で50℃まで冷却し、白板ガラスとシリカハイブリッドポリイミドフィルム層からなるポリイミドフィルム層/無機基板積層体(G6)を得た。
積層体(G6)のポリイミドフィルム層側には、さざ波状の繰り返し模様が生じており、またフィルム層厚が厚い部分にブリスター発生が見られた。
積層体(G6)から、ポリイミドフィルムを剥離し、膜厚分布を測定した。なお測定においては塗布開始箇所、塗布終了箇所、塗布両端部などは、膜厚の異常点が出やすい。本例においてはかかる点を排除するために塗布領域の端から15mmは避けて膜厚を測定した。結果。
結果、 平均9.8μm、最大15.34μm、最小6.75μm、標準偏差 1.35μm 厚さ斑 87.7%であった。
得られたフィルムの弾性率は4.2GPa、線膨張係数は7.2ppm/Kであった。
(比較例2)
大型スピンコータの回転ステージに、実施例2で用いたガラス板を吸着固定した。次いで実施例3にて得られたポリアミド酸溶液(C3)を、スピンコートが可能な粘度までN,N−ジメチルアセトアミドを用いて希釈し、1500rpmで塗布し90℃にて45分間乾燥し、積層中間体(H5)を得た。積層中間体におけるポリイミド前駆体フィルムの厚さを測定した結果、 平均7.6μm、最大12.4μm、最小5.2μm、厚さ斑 94.7%であった。
得られた積層中間体を防爆仕様のオーブンに入れ、まず150℃に昇温して10分保持し、次いで220℃に10分、480℃にて10分間加熱し、室温まで冷却し、白板ガラスとポリイミドフィルム層からなるポリイミドフィルム層/無機基板積層体(H6)を得た。
積層体(H6)には、ガラス板の中央部から周囲に向かって放射状の斑が観察された。
積層体(H6)から、ポリイミドフィルムを剥離し、膜厚分布を測定した。本例においても塗布領域の端から15mmは避けて膜厚を測定した。
結果、 平均4.2μm、最大6.7μm、最小3.1μm、標準偏差 1.1μm 厚さ斑 85.7%であった。
(比較例3)
実施例2にて得られたメトキシ基含有シラン変性ポリイミド樹脂溶液(B3)を、スリットダイを用いて厚さ125μm、幅500mmの長尺ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製「A−4100」)の平滑面(無滑材面)上に、最終膜厚(イミド化後の膜厚)が20μmとなるように塗布し、120℃にて15分間乾燥し、400mm幅になるようにスリットしてロール状に巻きとり、ポリイミド前駆体フィルムのロール(B4)を得た。得られたポリイミド前駆体フィルムをポリエステルフィルムから剥離し、350mm角の開口部を有するステンレス製の枠に固定して防爆仕様のオーブンに入れ、まず150℃に昇温して60分保持し、次いで5℃/分の速度で温度を220℃に上げ、10分保持し、さらにそこから10℃/分の速度で380℃まで温度を上げ、10分間保持した後、10℃/分の速度で50℃まで冷却し、平均厚さ25.4μm、最大26.4μm、最小24.4μm、厚さ斑7.87%のシリカハイブリッドポリイミドフィルムを得た。得られたシリカハイブリッドポリイミドフィルムを真空チャンバーに入れ、平行平板型の電極を使ったRIEモード、RFプラズマによるプラズマ処理を、真空チャンバー内に窒素ガスを導入し、13.54MHzの高周波電力にて3分間実施し、フィルム端をカットして290mm×290mmのプラズマ処理シリカハイブリッドポリイミドフィルムを得た
大型スピンコータの回転ステージに、300mm×300mmの白板ガラスを吸着固定し先に調整したコート液を 次いでビニルトリメトキシシラン(商品名、KBM−1003、信越シリコーン社製)の3%メタノール溶液を用いて、回転数1500rpmにてガラス板にスピンコーティングを行い、100℃のホットプレートにて10分間加熱してシランカップリング剤塗布ガラスを得た。室温23℃±2℃、湿度50±5%RH、クリーン度10000に調整された実験室内において、得られたシランカップリング剤塗布ガラスに、先に得られたシリカハイブリッドポリイミドフィルムのプラズマ処理面を、ガラス端が5mm露出する様に重ね、MCK社製ロールラミネータにて、ロール温度30℃にて仮ラミネートを行い、次いで85℃にて30分熱処理を行いポリイミドフィルム層/無機基板積層体(I6)を得た。
積層体(I6)には、フィルム/ガラス間に入った異物の影響であると推察される突起が多数見られた、また一部はブリスター化しており、ブリスター内には比較的大きな異物の残存が観察された。
(応用例1)
実施例1〜6により得られたポリイミド前駆体層/無機基板積層体を用い、各々の実施例に示された方法にてポリイミド前駆体を最終生成物である高分子にまで反応を進め、以下の工程により、フィルム上に低温ポリシリコンを用いた薄膜トランジスタアレイ製作を模擬的に行った。所定のテストパターンを用いて、平坦化層兼ガスバリア層として反応性スパッタリング法にて形成した酸化珪素層、ソース、ドレイン電極層としてスパッタリング法にて形成したタンタル層、バリアメタル層、半導体層としてCVD法にて形成したアモルファスシリコン層を積層した。次いで、425℃にて120分間アニール処理することによりアモルファスシリコン層から脱水素を行い、さらにレーザーアニールによりアモルファスシリコン層を微多結晶化させた後、ゲート絶縁層としてSiN層、ゲート電極層としてアルミニウムを重ねた。なお、各々の層は所定のテストパターンに応じて、マスキングないしフォトリソ法にてパターニングし、模擬的なデバイス:薄膜トランジスタアレイとした。接着強度の強弱パターンを形成した場合においては、接着力が弱となる領域に薄膜トランジスタアレイを形成した。以上のプロセス中、ポリイミドフィルム層/無機基板積層体は、真空雰囲気、高温下、フォトリソグラフ法に用いられるレジスト液、現像液、エッチング液、剥離液に曝露されたが、ポリイミド層はガラス層から剥離することなく、プロセス適性は良好であった。
得られた薄膜トランジスタアレイをバックプレーンとし、フロントプレーンに電気泳動表示媒体を重ねることにより、ディスプレイ素子とし、トランジスタの収率と表示性能を、各ピクセルのON/OFFにて判定した。結果、実施例において得られた薄膜トランジスタアレイについては、いずれも表示性能は良好であった。
本発明のポリイミド前駆体層/無機基板積層体を用いることにより、ポリイミド層を仮支持基板にて保持し、ポリイミド層上に電子デバイスを形成するフレキシブル電子デバイスの製造工程において、均一なフィルム膜厚を実現し、同時に、極端に高いガラス面清浄度も要求されず、高品位な、ポリイミドフィルム層/無機基板の積層体を得ることが可能となり、結果として高い収率にてフレキシブル電子デバイスを得ることが可能となる。
1 溶液容器
2 ポリイミド前駆体溶液
3 基材
4 ポリイミド前駆体層
5 無機基板(仮支持基板)
6 ポリイミドフィルム層
7 電子デバイス
8フレキシブル電子デバイス

Claims (4)

  1. 基材上にポリイミド前駆体フィルム層を形成する工程と、次いで基材と共にロール状に巻き上げてポリイミド前駆体フィルム層/基材積層体ロールを得る工程と、得られたポリイミド前駆体フィルム層/基材積層体ロールのポリイミド前駆体フィルム層側を基材と共に無機基板にラミネートする工程を含む事を特徴とする、
    少なくともフィルム厚が5μm以上、500μm以下かつ、フィルム厚の厚さ斑が20%以下であるポリイミド前駆体フィルム層と、厚さ5μm以上5000μm以下の無機基板が直接積層されてなるポリイミド前駆体フィルム層/無機基板積層体の製造方法。
  2. 無機基板の表面があらかじめ有機化処理されていることを特徴とする請求項1記載の、ポリイミド前駆体フィルム層/無機基板積層体の製造方法
  3. 請求項1〜2のいずれか記載されたポリイミド前駆体フィルム層/無機基板積層体の製造方法により得られたポリイミド前駆体フィルム層に、加熱、冷却、活性エネルギー線照射、振動、触媒との接触からなる群より選択されてなる少なくとも1種以上の外部刺激を与え、ポリイミドフィルム層に転化する事を特徴とする、ポリイミドフィルム層/無機基板積層体の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法にて得られるポリイミドフィルム層/無機基板積層体の、ポリイミドフィルム層上に電子デバイスを形成し、次いでポリイミドフィルム層ごと無機基板から剥離することを特徴とするフレキシブル電子デバイスの製造方法。
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