JP6271997B2 - 定着方法 - Google Patents
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Description
前記加熱加圧手段は、加熱部材と、加圧部材とを有する加熱加圧手段であり、
前記加熱部材は、
導電層を有する筒状の回転体と、
前記回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記回転体の母線方向と略平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するための励磁コイルと、
前記螺旋形状部の中に配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するための磁性コアと、
を備え、
前記母線方向に関し、記録材上の画像の最大通過領域の一端から他端までの区間において、前記磁性コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記磁性コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下であって、
前記トナーは、
i)結着樹脂及び着色剤、離型剤を有するトナー粒子と、無機微粉体とを有し、
ii)平均円形度Xが、0.940以上0.990以下であり、
iii)下記式(a)から求められる圧密度Y(%)が、25.0%以上55.0%以下であり、
Y(%)=100×(P−A)/P ・・・(a)
(式中、Aは嵩密度(g/cm3)を表し、Pはタップ密度(g/cm3)を表す。)iv)前記平均円形度Xと前記圧密度Y(%)とが、下記式(b)を満たす、
345≦333×X+Y≦370 ・・・(b)
ことを特徴とする定着方法に関する。
図2は本実施例に係る画像形成装置100の概略構成図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真プロセスを利用したレーザービームプリンタである。101は像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(以下、感光体ドラムと記す)であり、所定の周速度にて回転駆動される。
2−1)概略構成
図3は定着装置1の概略断面図である。定着装置1は、加熱部材と加圧部材とを有する加熱加圧手段により、記録材上のトナーによって形成された画像を加熱加圧定着する定着装置である。具体的構成としては、筒状の加熱回転体しての定着フィルム1(加熱部材)と、定着フィルム1の内面と接触するニップ部形成部材としてのフィルムガイド9(ベルトガイド)と、対向部材としての加圧ローラ7(加圧部材)と、を有する。加圧ローラ7は、定着フィルム1を介してニップ部形成部材と共にニップ部Nを形成する。トナー像Tを担持した記録材Pをニップ部Nを通過させることによって、トナー像Tを加熱し、記録材Pに定着する。
図1は円筒形回転体1a(導電層)と、磁性コア2と、励磁コイル3の斜視図である。
励磁コイル3は、耐熱性のポリアミドイミドで被覆した直径1〜2mmの銅線材(単一導線)を、磁性コア2に約10巻〜100巻で螺旋状に巻いて形成する。本実施例では励磁コイル3の巻き数は18回とする。励磁コイル3は、磁性コア2に定着フィルム1の母線方向に交差する方向に巻回されているため、この励磁コイルに高周波電流を流すと、定着フィルム1の母線方向に平行な方向に交番磁界を発生させることができる。
図1における温度検知部材4は、定着フィルム1中央部の表面温度を検知するために設けられる。本実施例では、温度検知部材4として非当接型サーミスタを用いている。高周波コンバータ5は、励磁コイル3に、給電接点部3a、3bを介して高周波電流を供給する。なお、日本国内では電波法施行規則により電磁誘導加熱の利用周波数は20.05kHzから100kHzの範囲に定められている。また、電源の部品コスト上、周波数は低いことが好ましいため、利用周波数帯の下限付近21kHz〜40kHzの領域において周波数変調制御を行う。以下周波数変調制御について説明する。共振回路を用いて誘導発熱を行う電磁誘導方式においては図4のグラフのように、駆動周波数により出力電力が変化する。これは、駆動周波数が共振周波数と一致するときに電力は最大となり、駆動周波数が共振周波数から遠ざかると電力が下がるという性質を利用したものである。すなわち、目標温度と検温素子9の温度差に応じて、駆動周波数を21kHz〜100kHzまで変化させることにより、出力電力を調整するという方法である。制御回路6は、温度検知部材4によって検出された温度を基に高周波コンバータ5を制御する。これにより、定着フィルム1は電磁誘導加熱されて表面の温度が所定の目標温度(約150℃〜200℃)になるように電力が制御される。
3−1)磁力線の形状と誘導起電力
まず、図5(a)は、同形状のソレノイドコイル3の中心に磁性コア2を挿通して磁路を形成した場合の、コイル形状と磁界の対応図である。本磁力線の向きは、矢印Iの向きに電流が増加している瞬間である。磁性コア2は、ソレノイドコイル3にて生成された磁力線を内部に誘導し、磁路を形成する部材として機能する。定着装置1の磁性コア2は、環状になっているものではなく、長手方向にそれぞれ端部を有するものである。そのため、磁力線は、大多数がソレノイドコイル中央の磁路に集中して通って、磁性コア2の長手方向の端部において拡散する形状の開磁路となる。そのため、コイルの隙間Δdにおける磁力線の漏えいも少なく、両極から出た磁力線は、外周の遥か遠くで繋がる形状の開磁路となる(図の表記上は端部で途切れている)。図5(b)は、ソレノイド中心軸Xにおける磁束密度の分布を示す。磁束密度は、グラフ上の曲線B2に示すように、B1と比較してソレノイドコイル3の端部での磁束密度の減衰が少なくなっており、台形に近い形状となる。
発熱原理はファラデーの法則に従う。ファラデーの法則とは、「回路の中の磁界を変化させると、その回路の中に電流を流そうとする誘導起電力が生じ、誘導起電力は回路を垂直に貫く磁束の時間変化に比例する」というものである。図6(a)に示すソレノイドコイル3の磁性コア2の端部近傍に、コイルと磁性コアより直径の大きな回路Sを置き、コイル3には高周波交流を流す場合を考える。高周波交流を流した場合、ソレノイドコイル周辺には交番磁界(時間と共に大きさと方向が変化を繰り返す磁界)が形成される。その時、回路Sに発生する誘導起電力は、以下の式(1)に従い、ファラデーの法則より回路Sの中を垂直に貫く磁束の時間変化に比例する。
N:コイル巻き数
ΔΦ/Δt:微小時間Δtでの回路を垂直に貫く磁束の変化
すなわち、励磁コイルに直流電流を流して静磁界を形成した状態において、回路Sの中を磁力線の垂直成分がより多く通過していると、高周波の交流電流を流して交番磁界を発生させた時の際の磁力線の垂直成分の時間変化も大きくなる。その結果、発生する誘導起電力も大きくなり、その磁束の変化を打ち消す方向に電流が流れる。すなわち、交番磁界を発生させた結果、電流が流れると、磁束の変化は打消されて静磁界を形成した際とは異なる磁力線形状となる。また、この誘導起電力Vは、交流電流の周波数が高い(すなわちΔtが小さい)ほど大きくなる傾向がある。したがって、50〜60Hzの低周波数の交流電流を励磁コイルに流した場合と、21〜100kHzの高周波数の交流電流を励磁コイルに流した場合では、所定の磁束の量で発生させることのできる起電力は大きく異なる。交流電流の周波数を高周波数にすると、少ない磁束でも高い起電力を発生させることが出来るのである。従って、交流電流の周波数を高周波数することは、断面積の小さな磁性コアで大きい熱量を発生させることができるため、小さな定着装置に大きな熱量を発生させたい場合に非常に有効である。これは、交流電流の周波数を大きくすることによって、トランスを小型化できる事と似ている。例えば、低周波数帯(50〜60Hz)で用いられるトランスは、Δtが大きい分だけ磁束Φを大きくする必要があり、磁性コアの断面積を大きくする必要がある。これに対して高周波数帯(kHz)で用いられるトランスは、Δtが小さい分だけ磁束Φを小さくすることが可能であり、磁性コアの断面積を小さく設計することができる。
(I)円筒形回転体の材質の比透磁率が大きい
(II)円筒形回転体の断面積が大きい
(III)磁性コアの断面積が小さい
(IV)磁性コアの比透磁率が小さい
(V)磁性コアが長手方向に分割して大きなギャップを形成している
図9(c)は、磁性コアが長手方向に複数に分割されていて磁性コアの両端部NP、SP部分以外の箇所MPにおいても磁極ができている場合である。本発明の目的を達成するためには、NPとSPの2つのみを磁極とするよう磁路を形成するのが好ましく、磁性コアを長手方向で複数に分割して磁極MPを作ることは好ましくない。3−3にて後述する理由により、磁性コア全体の磁気抵抗を上昇させてしまい、磁路を形成しにくくなる事、磁極MP部分の付近において発熱量が減少して、均一な画像加熱しにくい場合がある。
次に、3−2に説明した発熱原理を達成するための、具体的な設計指針について説明する。そのためには、定着装置の各構成部品の円筒形回転体の母線方向への磁気の通りやすさを、形状係数によって表現する必要がある。その形状係数は、「静磁界における磁気回路モデル」の「パーミアンス」を用いる。まず、一般的な磁気回路の考え方について説明する。磁束が主として通る磁路の閉回路を、電気回路に対して磁気回路という。磁気回路において磁束を計算する際、電気回路の電流の計算に準じて行うことが出来るものである。磁気回路の基礎計算式は、電気回路に関するオームの法則と同一であり、全磁束をΦ、起磁力をV、磁気抵抗をRとすると、この3つの要素は
全磁束Φ=起磁力V/磁気抵抗R・・・・・(2)
の関係にある(従って、電気回路における電流は磁気回路における全磁束Φと対応し、電気回路における起電力は磁気回路における起磁力Vと対応し、電気回路における電気抵抗は磁気回路における磁気抵抗と対応する)。しかし、ここでは原理をより理解しやすく説明するために磁気抵抗Rの逆数であるパーミアンスPを用いて説明する。従って上記(2)は
全磁束Φ=起磁力V×パーミアンスP・・・・・(3)
で置き換えられる。このパーミアンスPは、磁路の長さをB、磁路の断面積をS、磁路の透磁率をμとした時、
パーミアンスP=透磁率μ×磁路断面積S/磁路長B・・・・・(4)
で表される。パーミアンスPは、磁路長Bが短く、磁路断面積S及び透磁率μが大きい程大きくなることを示し、パーミアンスPが大きい部分に磁束Φがより多く形成される。
φc=φa_in+φcy+φa_out ・・・・・(5)
すなわち、磁性コアの内部を通過した磁束は、φa_in、φcy、φa_outの何れかを必ず通過して磁性コアに戻ってくることを意味する。
φc=Pc・Vm ・・・・・(6)
φa_in=Pa_in・Vm ・・・・・(7)
φcy=Pcy・Vm ・・・・・(8)
φa_out=Pa_out・Vm ・・・・・(9)
よって、(5)に(6)〜(9)を代入すると下記ようになる。
Pc・Vm=Pa_in・Vm+Pcy・Vm+Pa_out・Vm
=(Pa_in+Pcy+Pa_out)・Vm
∴Pc−Pa_in−Pcy−Pa_out=0 ・・・・・(10)
図10(b)より、磁気コイルの断面積:Sc、円筒体内側空気の断面積:Sa_in、円筒体の断面積:Scyとすると、各領域の単位長さ当たりのパーミアンスは以下のように、「透磁率×断面積」で表すことができ、単位は[H・m]である。
Pc=μ1・Sc=μ1・π(a1)2 ・・・・・(11)
Pa_in=μ0・Sa_in=μ0・π・((a2)2−(a1)2) ・・・(12)
Pcy=μ2・Scy=μ2・π・((a3)2−(a2)2) ・・・・(13)
更に、Pc−Pa_in−Pcy−Pa_out=0であるから、円筒体外側空気中のパーミアンスは次のように表すことができる。
Pa_out=Pc−Pa_in−Pcy
=μ1・Sc−μ0・Sa_in−μ2・Scy
=π・μ1・(a1)2
−π・μ0・((a2)2−(a1)2)
−π・μ2・((a3)2−(a2)2) ・・・・・(14)
各領域を通る磁束は、式(5)〜式(10)に示すように、各領域のパーミアンスに比例する。式(5)〜(10)を用いれば、後述する表1のように各領域を通る磁束の比率を算出することができる。尚、円筒体の中空部に、空気以外の材質が存在していた場合も、その断面積と透磁率から、円筒体内の空気と同じ方法でパーミアンスを求めることができる。この場合のパーミアンスの計算の仕方は後述する。
手段1)磁性コアのパーミアンスを大きくする。(磁性コア断面積大、材質の比透磁率大)
手段2)円筒体内のパーミアンスを小さくする。(空気部分の断面積小)
手段3)円筒体内に鉄等のパーミアンスの大きい部材を配置しない。
手段4)円筒体のパーミアンスを小さくする。(円筒体の断面積小、円筒体に用いる材質の比透磁率小)
手段4より、円筒体は比透磁率μの低い材質が好ましい。円筒体として比透磁率μの高い材質を用いる際は、円筒体の断面積をより小さくする必要がある。これは、円筒体の断面積が大きい程、円筒体を貫く磁束が多くなり発熱効率が高くなる従来の定着装置とは反対である。また、円筒体内にはパーミアンスの大きい部材を配置しないことが望ましいものの、やむを得ず鉄等を配置しなければならない場合は、断面積を小さくする等によって、「円筒体外部を通る磁束の比率」をコントロールする必要がある。
Rm_all=(Rm_c1+Rm_c2+・・・・・+Rm_c10)+
(Rm_g1+Rm_g2+・・・・・+Rm_g9)・・・(15)
本構成の場合は、磁性コアの形状と材質、ギャップ幅は一様であるので、Rm_cの足し合わせた合計をΣRm_c、Rm_gの足し合わせた合計をΣRm_gとすると、次のようになる。
Rm_all=(ΣRm_c)+(ΣRm_g)・・・・・(16)
磁性コアの長手:Lc、透磁率:μc、断面積:Sc、ギャップの長手:Lg、透磁率:μg、断面積:Sgとすると、
Rm_c=Lc/(μc・Sc)・・・・・(17)
Rm_g=Lg/(μg・Sg)・・・・・(18)
(16)式に代入して、長手全体の磁気抵抗Rm_allは
Rm_all=(ΣRm_c)+(ΣRm_g)
=(Lg/(μc・Sc))×10+(Lg/(μg・Sg))×9・・(19)
となる。単位長さ当たりの磁気抵抗Rmは、Lcの足し合わせた合計をΣLc、Lgの足し合わせた合計をΣLgとすると、
Rm=Rm_all/(ΣLc+ΣLg)
=Rm_all/(L×10+Lg×9)・・・・・(20)
となり、単位長さあたりのパーミアンスPmは、以下のように求められる。
Pm=1/Rm=(ΣLc+ΣLg)/Rm_all=(ΣLc+ΣLg)/[{ΣLc/(μc+Sc)}+{ΣLg/(μg+Sg)}]・・(21)
ΣLc:分割された磁性コアの長さの合計
μc:磁性コアの透磁率
Sc:磁性コアの断面積
ΣLg:ギャップの長さの合計
μg:ギャップの透磁率
Sg:ギャップの断面積
式(21)より、ギャップLgを大きくすることは、磁性コアの磁気抵抗の増加(パーミアンスの低下)につながる。本定着装置を構成する上で、発熱原理上、磁性コアの磁気抵抗が小さく(パーミアンスが大きく)なるように設計することが望ましいため、ギャップを設けることはあまり望ましくない。しかし、磁性コアを割れにくくするために磁性コアを複数に分割してギャップを設ける場合がある。この場合ギャップLgは極力小さく(好ましくは50μm以下程度)構成し、後述するパーミアンス又は磁気抵抗の設計条件から外れないように設計することで、本発明の目的を達成することができる。
図8(a)において、中心から磁性コア2、励磁コイル3、円筒形回転体(導電層1a)が同心円状に配置されており、励磁コイル3の中に矢印I方向に電流が増加している時は、概念図においては8本の磁力線が磁性コア2の中を通過している。
1)円筒形回転体の熱を奪い、大きく温度低下したとしても、図3のA→Bに至る回転中に発熱し、失われた熱を補給する時間が十分にある。従って、B点における温度低下は小さい。
2)また、(1)式によって誘起される誘導電流は、円筒形回転体の周回方向に、全周にわたって均一な熱を発生させる。従って、円筒形回転体の温度差が起き難い。
定着フィルムの円筒形回転体(導電層)を発熱させる際は、励磁コイルに高周波交流電流を流し、交番磁界を形成する。その交番磁界は円筒形回転体に電流を誘導する。物理モデルとしては、トランスの磁気結合と良く似ている。そのため、電力の変換効率を考える際には、トランスの磁気結合の等価回路を用いることが出来る。その交番磁界によって励磁コイルと円筒形回転体が磁気結合して、励磁コイルに投入した電力が円筒形回転体に伝達される。ここで述べる「電力の変換効率」は、磁界発生手段である励磁コイルに投入する電力と、円筒形回転体により消費される電力の比率である。本実施例の場合、図1に示す励磁コイル3に対して高周波コンバータ5に投入した電力と、円筒形回転体1aで発生した熱として消費される電力の比率である。この電力の変換効率は以下の式で表すことができる。
電力の変換効率=円筒回転体で熱として消費される電力/励磁コイルに投入した電力
励磁コイルに投入して円筒回転体以外で消費される電力は、励磁コイルの抵抗による損失、磁性コア材料の磁気特性による損失などがある。
ZA=R1+jωL1 ・・・・・(22)
とあらわされる。この回路に流れる電流は、R1により損失する。即ちR1はコイル及び磁性コアによる損失を表している。
Mは励磁コイルと円筒形回転体の相互インダクタンスを表す。
が成り立つため、
となる。
となり、円筒形回転体を装荷する前の直列等価抵抗R1と、円筒形回転体を装荷した後の直列等価抵抗Rxを測定すると、励磁コイルに投入した電力のうち、どれだけの電力が円筒回転体で発生する熱として消費されるかを示す電力の変換効率を求めることができる。なお、実施例1の構成においては、電力の変換効率の測定には、Agilent Technologies社製のインピーダンスアナライザ4294Aを用いた。まず、円筒形回転体の無い状態において巻線両端からの直列等価抵抗R1を測定し、次に円筒形回転体に磁性コアを挿入した状態において巻線両端からの直列等価抵抗Rxを測定した。R1=103mΩ、Rx=2.2Ωとなり、この時電力の変換効率は式(27)により、95.3%と求めることが出来る。以後この電力の変換効率を用いて、電磁誘導加熱方式の定着装置の性能を評価する。
本実施例の定着装置においては、静磁界において円筒体外部を通る磁束の比率と、交番磁界において励磁コイルに投入した電力が円筒回転体に伝達される電力の変換効率(電力の変換効率)とは、相関がある。円筒体外部を通る磁束の比率が増加するほど電力の変換効率は高くなる。その理由は、トランスの場合に、漏れ磁束が十分少なく、トランスの1次巻線と2次巻線の中を通過する磁束の数が等しいと電力の変換効率は高くなることと同じ原理である。つまり、磁性コアの内部を通過する磁束と、円筒形回転体の外部を通過する磁束の数が近い程、周回電流への電力の変換効率は高くなる。これは、磁性コアの長手方向の一端から出て他端に戻る磁束(磁性コアの内部を通過する磁束と向きが反対の磁束)が、円筒形回転体の中空部を通過し磁性コアの内部を通過する磁束をキャンセルする割合が少ないということである。つまり、図11(b)の磁気等価回路に示すように、磁性コアの長手方向の一端から出て他端に戻る磁束が円筒形回転体の外(円筒体外空気)を通過するということある。故に本実施例の骨子は、円筒体外部磁束の比率を高くすることによって、励磁コイルに流した高周波電流を円筒形回転体内部の周回電流として効率よく誘導することである。具体的にはフィルムガイド、円筒体内空気、円筒体を通る磁束を減らすことである。
本構成は、磁性コアの断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体(導電層)の直径が143.2mmの場合である。この時インピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は54.4%であった。電力の変換効率は定着装置に投入した電力のうち、円筒(導電層)の発熱に寄与した分を示すパラメータである。従って最大1000W出力可能な定着装置として設計しても約450Wが損失となってしまい、その損失はコイル及び磁性コアの発熱となる。本構成の場合、立ち上げ時数秒間1000Wを投入しただけでもコイル温度は200℃を超える場合がある。コイルの絶縁体の耐熱温度が200℃後半であること、フェライトの磁性コアのキュリー点は通常200℃〜250℃程度であることを考えると、損失45%では励磁コイル等の部材を耐熱温度以下に保つことは難しくなる。また、磁性コアの温度がキュリー点を超えるとコイルのインダクタンスが急激に低下し、負荷変動となる。
本構成は、磁性コアの断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体の直径が127.3mmの場合である。この時インピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は70.8%であった。この時、定着装置の印字動作によっては、励磁コイル等に定常的に大きな熱量が発生し、励磁コイルユニット、特に磁性コアの昇温が課題となる場合がある。本構成の定着装置を60枚/分の印字動作ができる高スペックな装置にすると、円筒形回転体の回転速度は330mm/secとなる。よって、円筒形回転体の表面温度を180℃に維持するケースがある。そうすると、磁性コアの温度は20秒間で240℃を超え、円筒体(導電層)の温度より高くなる場合が考えられる。磁性コアとして用いるフェライトのキュリー温度は通常200℃〜250℃程度であり、フェライトがキュリー温度を超えた場合、透磁率は急激に減少する。透磁率が急激に減少すると、磁性コアの中に磁路を形成することができない。磁路を形成することができなくなると、本実施例においては、周回電流を誘導して発熱することが難しくなる場合がある。
本構成は、磁性コアの断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体の直径が63.7mmの場合である。この時インピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は83.9%であった。この時、励磁コイル等には定常的に熱量が発生したものの、熱伝達と自然冷却で放熱出来る熱量を大きく上回ることはなかった。本構成の定着装置を60枚/分の印字動作ができる高スペックな装置にすると、円筒体の回転速度は330mm/secとなる。従って、円筒体の表面温度を180℃に維持するケースであっても、フェライトの磁性コアの温度は220℃以上に上昇することはなかった。そのため本構成においては、定着装置を前述した高スペックする場合、キュリー温度220℃以上のフェライトを用いることが望ましい。設計条件R2の構成の定着装置を高スペックな定着装置として使用する場合は、フェライト等の耐熱設計を最適化することが望ましい。本構成に、前述した高スペックを要求しない場合は、そこまでの耐熱設計は不要である。
本構成は、磁性コアの断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体の直径が47.7mmの場合である。この時インピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は94.7%であった。本構成の定着装置を60枚/分の印字動作ができる高スペックな装置にすると、円筒体の回転速度は330mm/secとなり、円筒体の表面温度を180℃に維持するケースにおいて励磁コイル等は、180℃以上に上昇することはなかった。これは、励磁コイルがほとんど発熱しないことを示す。円筒体外部磁束の比率94.7%、電力の変換効率94.7%(設計条件R3)は、電力の変換効率が十分高いため、更なる高スペックの定着装置として用いても、冷却手段は必要ない。
R1:円筒体外部磁束の比率70%以上90%未満
R2:円筒体外部磁束の比率90%以上94%未満
R3:円筒体外部磁束の比率94%以上
3−7)「周回電流」による発熱の特徴
3−4で説明した「周回電流」は、図6の回路S内に生じる誘導起電力によって生じるものである。そのため、回路Sに内包する磁束と、回路Sの抵抗値に依存する。後述する「渦電流E//」とは異なり、材料内部の磁束密度とは関係しない。そのため、磁路とならない薄い磁性金属製の円筒形回転体でも、非磁性金属製の円筒回転体でも高い効率で発熱することが可能である。また、抵抗値が大きく変わらない範囲においては、材料の厚みにも依存しない。図16(a)は、厚さ20μmのアルミニウムの円筒形回転体における電力の変換効率の周波数依存性である。20kHz〜100kHzの周波数帯域において、電力の変換効率は90%以上を維持している。特に、21〜40kHzの周波数帯域を発熱に利用する場合において、高い電力の変換効率を持っている。次に図16(b)は、同形状の円筒形回転体における、周波数21kHzでの電力の変換効率の厚み依存性である。黒丸―実線はニッケル、白丸―点線はアルミニウムの実験結果を示している。両者は厚み20μm〜300μmの領域において、電力の変換効率は90%以上を維持しており、両者とも厚みに寄らず、定着装置用発熱材料として使用可能である。
ただし、RsとRaの合成磁気抵抗Rsaは以下のように計算する。
Rs:導電層の磁気抵抗
Ra:導電層と磁性コアとの間の領域の磁気抵抗
Rsa:RsとRaの合成磁気抵抗
上記の関係式を、定着装置の記録材の最大搬送領域全域で、円筒形回転体の母線方向に直交する方向の断面において満足するのが好ましい。
(式中、Aは嵩密度(g/cm3)を表し、Pはタップ密度(g/cm3)を表す。)
iv)前記平均円形度Xと前記圧密度Y(%)とが、下記式(b)を満たす、
345≦333×X+Y≦370 ・・・(b)
平均円形度と圧密度が上記(b)式を満たすことにより、未定着トナーが定着装置のニップ部を通過する溶融直前時に、加熱回転体によるせん断力を受けても、紙の地合いに沿って移動することが防止され、トナー像を均一に加熱溶融することができる。又、全周加熱方式の定着装置と組み合わせることで、加熱回転体の1周目と2周目以降の温度差がほとんど無いので、定着ボソ、飛び散り、尾引きといった画像不良を発生することも無い。更に、平滑度の値が小さい紙を用いた場合でも、未定着トナーが紙の地合いに沿って移動することが飛躍的に抑制され、上記画像不良を発生することなく、画質・質感の高い出力画像を得ることができる。
X線径:100μmφ
出力:100μ25W15kV
Pass Energy:58.7eV
Step Size:8.125eV
本発明に用いられるトナーには、シリカ微粉体及びチタニア微粉体を好ましく使用するが、被覆率は下記式から求めた。
被覆率(%)=100×(SI元素量[atomic%]/30+Ti元素量[atomic%]/20)
次に本発明に用いられるトナーを得るための具体的方法を以下に記述するが、これに限定されるものではない。
ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂等である。中でも好ましく用いられる樹脂として、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂である。
本発明で用いることができるポリエステル樹脂は、上述の2価のカルボン酸化合物および2価のアルコール化合物以外に、1価のカルボン酸化合物、1価のアルコール化合物、3価以上のカルボン酸化合物、3価以上のアルコール化合物を構成成分として含有してもよい。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてTHFを毎分1mLの流速で流し、THF試料溶液を約100μL注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント値との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては例えば、東ソー社製あるいは昭和電工社製の分子量が102〜107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。又、検出器はRI(屈折率)検出器を用いる。尚、カラムとしては市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807、800Pの組み合せや、東ソー社製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKgurd columnの組み合せを挙げることができる。
結晶性ポリエステル樹脂及びワックスの融点は、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定したDSC曲線において、最大吸熱ピークのピーク温度を融点とし、ピークの面積から求められる熱量を融解熱量とする。
結着樹脂のTgは、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的には、試料約2mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。尚、測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での温度40〜100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、結着樹脂のガラス転移温度Tgとする。
結着樹脂及びトナーの軟化点の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行なう。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
試験モード:昇温法
昇温速度:4℃/min
開始温度:50℃
到達温度:200℃
<結着樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂の酸価の測定>
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。ポリエステル樹脂の酸価はJIS K 0070−1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mLに溶かし、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
(A)本試験
粉砕したポリエステル樹脂の試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。尚、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
A=[(C−B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
水酸基価とは、試料1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である。結着樹脂の水酸基価はJIS K 0070−1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
特級無水酢酸25gをメスフラスコ100mLに入れ、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振りまぜてアセチル化試薬を得る。得られたアセチル化試薬は、湿気、炭酸ガス等に触れないように、褐色びんにて保存する。
(A)本試験
粉砕した結着樹脂の試料1.0gを200mL丸底フラスコに精秤し、これに前記のアセチル化試薬5.0mLをホールピペットを用いて正確に加える。この際、試料がアセチル化試薬に溶解しにくいときは、特級トルエンを少量加えて溶解する。
結着樹脂の試料を用いない以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
A=[{(B−C)×28.05×f}/S]+D
ここで、A:水酸基価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)、D:結着樹脂の酸価(mgKOH/g)である。
トナーの重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行ない、算出した。
図3は本発明の定着装置の概略断面図であり、加圧ローラ7は、例えばφ14のアルミあるいは鉄製芯金の外側にシリコーンのソリッドあるいはスポンジゴム等の厚み3mmの弾性層と、PFA等の離型層を厚み30μmで積層している。そして、不図示の軸受け手段・付勢手段により総圧約200N〜100N(約20kgf〜約10kgf)の押圧力をもってフィルムガイド9との間に定着フィルムを挟ませて圧接させてある。そして、不図示の定着器回転制御手段は、加圧ローラ7を矢印方向に回転駆動し、5〜10mm程度の幅のニップ部Nにおける摩擦力で定着スリーブ1に回転力が作用し、従動回転状態になる。フィルムガイド9は、耐熱性樹脂PPS等で構成されている。定着フィルム1は、直径50〜10mmの、基層となる導電性部材でできた発熱層1aと、その外面に積層した弾性層1bと、その外面に積層した離型層1cの複合構造の円筒形回転体である。発熱層1aは、本装置では、厚さ20μmの比透磁率1、断面積1.5×10−6m2、直径は24mmのアルミの円筒形状部材である。弾性層1bは、硬度が20度(JIS−A、1kg加重)のシリコーンゴムを0.3〜0.1mm成形している。そして、弾性層1b上に表層1c(離型層)として50〜10μmの厚さのフッ素樹脂チューブを被覆している。円筒形状部材である定着フィルム1の内部にて、この回転軸線方向に磁性コア2が挿通されている。その磁性コア2の周囲に励磁コイル3が巻き回されている。
Pc=3.5×10−7[H・m]
導電層と磁性コアとの間の領域の単位長さ当たりのパーミアンスPa_inは、フィルムガイドの単位長あたりのパーミアンスと円筒体内の空気の単位長さ当たりのパーミアンスとの合成であるから次のように表される。
Pa_in=1.3×10−10+2.5×10−10[H・m]
導電層の単位長さ当たりのパーミアンスPcyは、表4に記載の円筒体であり、次のように表される。
Pcy=1.9×10−12[H・m]
Pa_outは、表4に記載された円筒体外空気であり、次のように表せる。
Pa_out=Pc−Pa_in−Pcy=3.5×10−7[H・m]
よって、定着装置1は下記のパーミアンスの関係式を満たしている。
Pcy+Pa_in≦0.30×Pc
次に、パーミアンスの逆数である、磁気抵抗を用いた場合について説明する。
磁性コアの単位長さ当たりの磁気抵抗は次のようになる。
Rc=2.9×106[1/(H・m)]
導電層と磁性コアとの間の領域の磁気抵抗は、フィルムガイドの抵抗Rfと円筒体内空気の抵抗Raの合成抵抗となるから、下記の式を用いて計算すると、
Ra=2.7×109[1/(H・m)]となる。
本定着装置2は先に説明をした定着装置1に関する他の例であり、円筒形回転体(導電層)としてオーステナイト系のステンレス(SUS304)を用いた点が定着装置1と異なる。
δ=503×(ρ/fμ)1/2 ・・・・・(30)
δ:浸透深さ〔m〕
f:励磁回路の周波数〔Hz〕
μ:透磁率〔H/m〕
ρ:抵抗率〔Ωm〕
浸透深さδは電磁波の吸収の深さを示しており、これより深いところでは電磁波の強度は1/e以下になるというものである。そしてその深さは周波数と透磁率、抵抗率に依存する。
コアのパーミアンスPc=3.5×10−7[H・m]
円筒体内部のパーミアンスPa=1.3×10−10+2.5×10−10[H・m]
円筒体のパーミアンスPs=2.8×10−12[H・m]
よって、定着装置2は下記のパーミアンスの関係式を満たしている。
Ps+Pa≦0.30×Pc
これを磁気抵抗に置き換えると、
磁性コアの磁気抵抗Rc=2.9×106[1/(H・m)]
円筒体内部の磁気抵抗はフィルムガイドRfと円筒体内空気Rairの磁気抵抗の合成抵抗であるから、下記の式を用いて計算すると、Ra=2.7×109[1/(H・m)]となる。
Rsa=2.7×109[1/(H・m)]となる。
定着装置3として、図21に断面図を示した構成を有する定着装置を用いた。この定着装置は「コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下」を満たしているものの円筒形回転体が一部、磁路になっている構成である。
磁性コアのパーミアンス:Pc=2.6×10−7[H・m]
円筒体内部のパーミアンス:Pa=1.3×10−10+2.0×10−9[H・m]
円筒体のパーミアンス:Ps=2.3×10−8[H・m]
よって、定着装置3は、下記のパーミアンスの関係式を満たす。
Ps+Pa≦0.30×Pc
これを磁気抵抗に置き換えると、
磁性コアの磁気抵抗:Rc=3.9×106[1/(H・m)]
円筒体内部の磁気抵抗:Ra=4.8×108[1/(H・m)]
円筒体の磁気抵抗:Rs=4.4×107[1/(H・m)]
RsとRaの合成磁気抵抗:Rsa=4.0×107[1/(H・m)]
よって、定着装置3は、下記の磁気抵抗の式を満たしており、前記コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下である。
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応槽中に、アルコールモノマーとして1,10−デカンジオール、及びカルボン酸モノマーとして1,10デカン二酸を表8に示す量を投入した。そして、触媒としてジオクチル酸錫をモノマー総量100質量部に対して1質量部添加し、窒素雰囲気下で140℃に加熱して常圧下で水を留去しながら6時間反応させた。次いで、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させ、200℃に到達してから2時間反応させた後、反応槽内を5kPa以下に減圧して200℃で3時間反応させた。
モノマー、結晶核剤及び使用量を表8に記載の様に変更し、それ以外はポリエステル樹脂A1と同様にして、ポリエステル樹脂A2を得た。また得られた樹脂A2のMALDI−TOFMSのマススペクトルにおいて、樹脂Aの分子末端に結晶核剤が結合した組成のピークが確認され、分子末端と結晶核剤とが結合していることが確認された。ポリエステル樹脂A2の物性を表9に示す。
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応槽中に、表10に示す使用量のモノマーを入れた後、触媒としてジブチル錫をモノマー総量100質量部に対して1.5質量部添加した。次いで、窒素雰囲気下にて常圧で180℃まで素早く昇温した後、180℃から210℃まで10℃/時間の速度で加熱しながら水を留去して重縮合を行った。210℃に到達してから反応槽内を5kPa以下まで減圧し、210℃、5kPa以下の条件下にて重縮合を行い、ポリエステル樹脂B1を得た。その際、得られるポリエステル樹脂B1の軟化点が表11の値(115℃)となるように重合時間を調整した。ポリエステル樹脂B1の物性を表11に示す。
モノマー及び使用量を表10に記載の様に変更し、それ以外は、ポリエステル樹脂B1と同様にしてポリエステル樹脂B2を得た。ポリエステル樹脂B2の物性を表11に示す。
・ポリエステル樹脂A1 15.0質量部
・ポリエステル樹脂B1 85.0質量部
・着色剤:ピグメントブルー15:3 7.0質量部
・パラフィンワックス(DSCピーク温度:80℃) 5.0質量部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM−20型、三井三池化工機(株)製)で混合した後、二軸混練機(池貝鉄工(株)製PCM−30型))にて回転数3.3s−1、混練温度120℃の条件で混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(ターボ工業(株)製T−250)にて微粉砕した。さらに、得られた微粉砕粉末をコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径が7.0μmのトナー粒子を得た。
・イソブチルトリメトキシシラン30質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径40nmの酸化チタン微粒子 1.0質量部
・ヘキサメチルジシラザン25質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径30nmの疎水性シリカ微粒子 1.0質量部
・ヘキサメチルジシラザン15質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径110nmの疎水性シリカ微粒子 6.0質量部
得られたトナーの物性を、以下で製造するトナーの物性と合わせて表12に記載する。
トナー1の製造例において、ポリエステル樹脂A1を使用せず、ポリエステル樹脂B1を100質量部とした以外は、トナー1の製造例と同様にして、トナー2を得た。
トナー1の製造例において、個数平均粒径40nmの酸化チタン微粒子を0.5質量部、個数平均粒径30nmの疎水性シリカ微粒子を0.5質量部、個数平均粒径110nmの疎水性シリカ微粒子を1.5質量部、に変更した以外は、トナー1の製造例と同様にして、トナー3を得た。
トナー3の製造例において、ポリエステル樹脂A1を使用せず、ポリエステル樹脂B1を100質量部とした以外は、トナー3の製造例と同様にして、トナー4を得た。
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄元素に対して1.00から1.10当量の苛性ソーダ溶液、鉄元素に対しリン元素換算で0.15質量%となる量のP2O5、鉄元素に対して珪素元素換算で0.50質量%となる量のSiO2を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液のpHを8.0とし、空気を吹き込みながら85℃で酸化反応を行い、種晶を有するスラリー液を調製した。
・ポリエステル樹脂A1 15.0質量部
・ポリエステル樹脂B1 85.0質量部
・着色剤:磁性体1 70.0質量部
・パラフィンワックス(DSCピーク温度:80℃) 5.0質量部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM−20型、三井三池化工機(株)製)で混合した後、二軸混練機(池貝鉄工(株)製PCM−30型))にて回転数3.3s−1、混練温度120℃の条件で混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(ターボ工業(株)製T−250)にて微粉砕した。さらに、得られた微粉砕粉末をコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径が7.0μmのトナー粒子を得た。
・イソブチルトリメトキシシラン30質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径40nmの酸化チタン微粒子 0.5質量部
・ヘキサメチルジシラザン25質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径30nmの疎水性シリカ微粒子 0.5質量部
・ヘキサメチルジシラザン15質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径110nmの疎水性シリカ微粒子 4.0質量部
<トナー6の製造例>
トナー5の製造例において、ポリエステル樹脂A1を使用せず、ポリエステル樹脂B1を100質量部とした以外は、トナー1の製造例と同様にして、トナー6を得た。
トナー1の製造例において、分級後に、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)を用いてトナー粒子を球形化処理した以外は、トナー1の製造例と同様にして、トナー7を得た。
トナー7の製造例において、ポリエステル樹脂A1を使用せず、ポリエステル樹脂B1を100質量部とした以外は、トナー7の製造例と同様にして、トナー8を得た。
トナー7の製造例において、個数平均粒径40nmの酸化チタン微粒子を0.5質量部、個数平均粒径30nmの疎水性シリカ微粒子を0.5質量部、個数平均粒径110nmの疎水性シリカ微粒子を1.5質量部、に変更した以外は、トナー7の製造例と同様にして、トナー9を得た。
トナー9の製造例において、ポリエステル樹脂A1を使用せず、ポリエステル樹脂B1を100質量部とした以外は、トナー9の製造例と同様にして、トナー10を得た。
60℃に加温したイオン交換水900質量部にリン酸三カルシウム2.3質量部を添加し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて10,000rpmにて攪拌し、水系媒体を得た。また、下記の材料をプロペラ式攪拌装置にて100r/minで均一に溶解混合して樹脂含有単量体を調製した。
・スチレン 50.0質量部
・n−ブチルアクリレート 30.0質量部
・ポリエステル樹脂A2 10.0質量部
・ポリエステル樹脂B2 5.0質量部
また、下記の材料をアトライターで分散し、微粒状着色剤含有単量体を得た。
・スチレン 30.0質量部
・着色剤:ピグメントブルー15:3 7.0質量部
・帯電制御剤:ボントロンE−88(オリエント化学社製) 5.0質量部
・パラフィンワックス(DSCピーク温度:80℃) 10.0質量部
次に、該微粒状着色剤含有単量体と該樹脂含有単量体を均一に混合して重合性単量体組成物を得た後、該重合性単量体組成物を60℃に加温し、次いで、該重合性単量体組成物を上記水系媒体中に投入して、重合性単量体組成物を造粒して該重合性単量体組成物の粒子を形成した。なお、回転子の周速G(m/s)は35(m/s)とした。
・イソブチルトリメトキシシラン30質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径40nmの酸化チタン微粒子 0.5質量部
・ヘキサメチルジシラザン25質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径30nmの疎水性シリカ微粒子 0.5質量部
・ヘキサメチルジシラザン15質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径110nmの疎水性シリカ微粒子 3.0質量部
<トナー12の製造例>
トナー11の製造例において、ポリエステル樹脂A2を用いなかった以外は、トナー11の製造例と同様にして、トナー12を得た。
トナー11の製造例において、個数平均粒径40nmの酸化チタン微粒子を1.0質量部、個数平均粒径30nmの疎水性シリカ微粒子を1.0質量部、個数平均粒径110nmの疎水性シリカ微粒子を1.0質量部、に変更した以外は、トナー11の製造例と同様にして、トナー13を得た。
トナー13の製造例において、ポリエステル樹脂A2を用いなかった以外は、トナー13の製造例と同様にして、トナー14を得た。
イオン交換水720質量部に0.1モル/L−Na3PO4水溶液450質量部を投入して60℃に加温した後、1.0モル/L−CaCl2水溶液67.7部を添加して、分散安定剤を含む水系媒体を得た。
・スチレン 78.0質量部
・n−ブチルアクリレート 22.0質量部
・ジビニルベンゼン 0.6質量部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T−77:保土ヶ谷化学社製) 3.0質量部
・着色剤:磁性体1 90.0質量部
・ポリエステル樹脂B2 5.0質量部
上記材料をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を60℃に加温し、そこにフィッシャートロプシュワックス10.0質量部、及びポリエステル樹脂A2を10質量部添加混合し、溶解した後に重合開始剤としてジラウロイルパーオキサイド7.0質量部を溶解した。
・イソブチルトリメトキシシラン30質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径40nmの酸化チタン微粒子 0.5質量部
・ヘキサメチルジシラザン25質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径30nmの疎水性シリカ微粒子 0.5質量部
・ヘキサメチルジシラザン15質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径110nmの疎水性シリカ微粒子 0.5質量部
<トナー16の製造例>
トナー15の製造例において、ポリエステル樹脂A2を用いなかった以外は、トナー15の製造例と同様にして、トナー16を得た。
市販のカラーレーザープリンターColor Laser Jet CP4525(HP社製)の定着装置を取り出し、未定着画像を出力できるように改造を施した。記録材としてはレターサイズのXerox4024用紙(Xerox製、75g/m2)を使用した。使用したLot番号の紙は、ベック試験機法で10枚測定した平滑度の平均値が28(sec)であった。そして、市販のブラックカートリッジから製品トナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、トナー1を150g充填した。なお、マゼンタ、イエロー、シアンの各ステーションには、それぞれ製品トナーを抜き取り、トナー残量検知機構を無効としたマゼンタ、イエロー、およびシアンカートリッジを挿入した。
上記定着試験における定着可能温度で、再度、上記未定着画像を定着し、副走査方向に等間隔となるように10箇所、透過濃度を測定した。透過濃度の測定は、透過濃度計TD−904(マクベス社製)を用いて行った。ボソ評価は、10箇所の透過濃度測定値の最大値と最小値の差分(ΔD)を算出し、評価基準は下記の指標で行った。評価結果を表10に示す。
A:ΔDが0.05未満であり、ベタ画像は非常に均一である。
B:ΔDが0.05以上0.10未満であり、ベタ画像は均一である。
C:ΔDが0.10以上0.15未満であり、ベタ画像のムラが若干見受けられる。
D:ΔDが0.15以上であり、ベタ画像に白いポツポツが見受けられる。
上記定着試験における定着可能温度で、上記画像領域で、副走査方向に等間隔となるように10本、4dotラインの未定着画像を10枚定着(100ライン)した。デジタルマイクロスコープVHX−500(レンズワイドレンジズームレンズVH−Z100:キーエンス社製)を用い、ライン幅に対して半分の幅以上の飛び散り・尾引き箇所をカウントし、1枚当たりに何箇所の画像不良があるか判定を行った。評価基準は下記の指標で行った。評価結果を表10に示す。
A:飛び散り・尾引き箇所が、0.5箇所未満である。
B:飛び散り・尾引き箇所が、0.5箇所以上1.0箇所未満である。
C:飛び散り・尾引き箇所が、1.0箇所以上1.5箇所未満である。
D:飛び散り・尾引き箇所が、1.5箇所以上である。
定着装置及びトナーを表10に記載の様に変更した以外は、実施例1と同様にして、評価を行った。評価結果を表13に示す。
1a 導電層(円筒形回転体)
1b 弾性層
1c 離型層
2 磁性コア
2c 閉磁路の磁性コア
3 励磁コイル
4 温度検知部材
7 加圧ローラ
9 ニップ部形成部材
N ニップ部
M 誘導起電力安定領域
Bin 円筒形回転体としてのローラ1の中を紙面奥方向に向かう磁力線
Bout 円筒形回転体としてのローラ1の外を紙面手前方向に戻ってくる磁力線
11a 導電層
11b 弾性層
11c 離型層
3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h、3i、3j 分割した磁性コア
100 本実施例に従う画像形成装置
200 円筒形回転体
200a 円筒形回転体の材料内部
B// 軸Xと平行方向に発生する磁場
E// B//によって発生する渦電流
B⊥ 軸Xと⊥方向に発生する磁場
E⊥ B⊥によって発生する渦電流
Claims (5)
- トナーにより形成される記録材上のトナー像を、加熱加圧手段によって加熱加圧定着して、記録材に定着画像を形成する定着方法において、
前記加熱加圧手段は、加熱部材と、加圧部材とを有する加熱加圧手段であり、
前記加熱部材は、
導電層を有する筒状の回転体と、
前記回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記回転体の母線方向と略平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するための励磁コイルと、
前記螺旋形状部の中に配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するための磁性コアと、
を備え、
前記母線方向に関し、記録材上の画像の最大通過領域の一端から他端までの区間において、前記磁性コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記磁性コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下であって、
前記トナーは、
i)結着樹脂及び着色剤、離型剤を有するトナー粒子と、無機微粉体とを有し、
ii)平均円形度Xが、0.940以上0.990以下であり、
iii)下記式(a)から求められる圧密度Y(%)が、25.0%以上55.0%以下であり、
Y(%)=100×(P−A)/P ・・・(a)
(式中、Aは嵩密度(g/cm3)を表し、Pはタップ密度(g/cm3)を表す。)iv)前記平均円形度Xと前記圧密度Y(%)とが、下記式(b)を満たす、
345≦333×X+Y≦370 ・・・(b)
ことを特徴とする定着方法。 - 前記導電層は、銀と、アルミニウムと、オーステナイト系ステンレスと、銅と、のうち少なくとも一つで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の定着方法。
- 前記回転体は筒状のフィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の定着方法。
- 前記トナーは、前記無機微粉体による前記トナー粒子表面の被覆率が、20%以上、80%以下であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項に記載の定着方法。
- 前記導電層の厚み方向において、前記導電層を流れる電流の方向が前記導電層の周方向に関して主に同じ方向である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の定着方法。
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