JP6854189B2 - トナーの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナーの製造方法に関する。
近年、印刷装置の高速化、省エネルギー化の観点から、低温定着性に優れたトナーが要求されている。
結晶性ポリエステルは、結晶性を有し低温定着性の向上に寄与するが、溶融時に非晶性樹脂と部分相溶するために、相溶した部分が熱的に弱くなり、粉砕時にわれやすくトナー表面に出やすくなる。結晶性ポリエステルがトナー表面に多いと、帯電部材(キャリア、現像ローラー)の汚染等が起こりやすく、耐久性が悪化する。
このような課題に対し、例えば、特許文献1には、結晶性樹脂、非晶質樹脂、及び離型剤を含有する電子写真用トナーであって、前記結晶性樹脂が、特定の成分を含む結晶性複合樹脂Cを含有し、前記非晶質樹脂が、特定の成分を含む非晶質複合樹脂Aを含有し、前記トナーの平均円形度が0.940以上であり、前記トナー中の粒径が3μm以下の粒子の含有量が5.0個数%以下である電子写真用トナーが、低温定着性及び耐久性に優れ、定着時の用紙巻き付きが抑制される電子写真用トナーであることが開示されている。
特開2016−114829号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法により製造したトナーでは、いまだ、低温定着性と耐久性の両立が十分とは言えず、さらなる改良が望まれる。
本発明は、低温定着性と耐久性のいずれにも優れたトナーの製造方法に関する。
本発明は、結晶性ポリエステル系樹脂と非晶質ポリエステル系樹脂を含有するトナー粒子を、ハンマーとライナーを備えた機械式表面改質装置で球形化する球形化工程を含む、トナーの製造方法に関する。
本発明の方法により、低温定着性と耐久性のいずれにも優れたトナーを得ることができる。
本発明に使用する表面改質装置の一実施態様の概略断面図である。 図1における回転体の一実施態様の上面図である。 本発明に使用する表面改質装置の一実施態様の概略断面図である。
本発明の方法は、結晶性ポリエステル系樹脂と非晶質ポリエステル系樹脂を含有するトナー粒子を、ハンマーとライナーを備えた機械式表面改質装置で球形化する球形化工程を含む点に大きな特徴を有する。結晶性ポリエステル系樹脂は、結晶性を有し低温定着性の向上に寄与するが、溶融時に非晶性樹脂と部分相溶するために、相溶した部分が熱的に弱くなり、粉砕時にわれやすく、角の部分を形成しやすい。結晶性ポリエステル系樹脂がトナー表面に過多に露出すると、帯電部材(キャリア、現像ローラー)の汚染等が起こりやすく、耐久性が悪化する。そこで、本発明では、ハンマーとライナーを備えた機械式表面改質装置を用いてトナー粒子に球形化処理を施すことにより、トナー粒子表面の結晶性ポリエステル系樹脂の面積を低減することができ、耐久性に優れたトナーが得られる。従来汎用されている摩擦を利用した機械式粉砕機や熱式球形化処理のように、トナー粒子表面に熱がかかる球形化処理では、結晶性ポリエステル系樹脂と非晶質ポリエステル系樹脂との相溶部分の溶解により、球形化とともに新たに表面に露出する結晶性ポリエステル系樹脂の面積が増えるのに対し、本発明では、トナー粒子表面の特に角の部分を効率的に削ることができるため、トナー粒子表面の結晶性ポリエステル系樹脂の面積を低減することができる。
球形化処理に供するトナー粒子は、結着樹脂として、結晶性ポリエステル系樹脂と非晶質ポリエステル系樹脂を含有する。樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最高ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、1.4以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下の樹脂である一方、非晶質樹脂は、結晶性指数が1.4を超える、好ましくは1.5を超える、より好ましくは1.6以上の樹脂であるか、または、0.6未満、好ましくは0.5以下の樹脂である。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。結晶性樹脂においては、吸熱の最高ピーク温度を融点とする。
結晶性ポリエステル系樹脂は、2価以上のアルコールを含むアルコール成分と2価以上のカルボン酸系化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物である結晶性ポリエステル樹脂を含み、脂肪族モノマーを90モル%以上含有する原料モノマーの重縮合物であることが好ましい。脂肪族モノマーの含有量は、結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマー中、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
結晶性ポリエステル樹脂のアルコール成分は、非晶質ポリエステル樹脂との相溶性の観点から、炭素数9以上14以下の脂肪族ジオールを含有していることが好ましい。
炭素数9以上14以下の脂肪族ジオールとしては、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等が挙げられる。
脂肪族ジオールの炭素数は、非晶質ポリエステルとの相溶性を下げる観点から、好ましくは9以上、より好ましくは10以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
また、炭素数9以上14以下の脂肪族ジオールは、トナーの低温定着性を向上させる観点から、水酸基を炭素鎖の末端に有していることが好ましく、α,ω−直鎖アルカンジオールであることがより好ましい。
アルコール成分には、炭素数9以上14以下の脂肪族ジオール以外のアルコールが含まれていてもよいが、炭素数9以上14以下の脂肪族ジオールの含有量は、低温定着性及び耐久性の観点から、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
炭素数9以上14以下の脂肪族ジオール以外のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール等の炭素数2〜8の脂肪族ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール、グリセリン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂のカルボン酸成分は、炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物を含有していることが好ましい。
炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物としては、アゼライン酸(炭素数:9)、セバシン酸(炭素数:10)、ドデカン2酸(炭素数:12)、テトラデカン2酸(炭素数:14)、側鎖にアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸、これらの酸の無水物、それらの炭素数1〜3のアルキルエステル等が挙げられる。なお、本発明において、カルボン酸系化合物には、遊離酸だけでなく、反応中に分解して酸を生成する無水物、及びアルキル基の炭素数が1以上3以下のアルキルエステルも含まれる。ただし、アルキルエステル部のアルキル基の炭素数は、脂肪族ジカルボン酸系化合物の炭素数には含めない。
脂肪族ジカルボン酸系化合物における鎖状炭化水素基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、脂肪族ジカルボン酸系化合物の炭素数は、耐久性の観点から、好ましくは9以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物の含有量は、耐熱保存性の観点から、アルコール成分100モルに対して、好ましくは70モル以上、より好ましくは80モル以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは130モル以下、より好ましくは120モル以下である。
カルボン酸成分には、炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物以外のカルボン酸系化合物が含まれていてもよいが、炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは85モル%以上、より好ましくは87モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
他のカルボン酸系化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸系化合物、炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸系化合物、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上のカルボン酸系化合物等が挙げられる。
カルボン酸成分及びアルコール成分との重縮合反応は、例えば、不活性ガス雰囲気中にて、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒等の存在下、180℃以上250℃以下の温度で行うことができる。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられる。エステル化触媒とともに用い得るエステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分及びカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.6質量部以下である。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分及びカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
本発明において、結晶性ポリエステル系樹脂は、耐久性の観点から、前記結晶性ポリエステル樹脂とスチレン系樹脂とを含む結晶性複合樹脂であることが好ましい。
スチレン系樹脂は、少なくとも、スチレン、又はα−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体(以下、スチレンとスチレン誘導体をまとめて「スチレン化合物」という)を含む原料モノマーの付加重合物である。
スチレン化合物、好ましくはスチレンの含有量は、スチレン系樹脂の原料モノマー中、トナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、そして、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
また、スチレン系樹脂は、原料モノマーとしてアルキル基の炭素数が7以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含んでも良い。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)オクチル、(メタ)アクリル酸(イソ)デシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ステアリル等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることが好ましい。なお、本明細書において、「(イソ)」は、この基が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。また、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸、メタクリル酸、又はその両者を示す。
スチレン系樹脂の原料モノマーとしての(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは7以上、より好ましくは8以上であり、そして、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。なお、該アルキルエステルの炭素数は、エステルを構成するアルコール成分由来の炭素数をいう。
スチレン化合物及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外のスチレン系樹脂の原料モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸エステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類等が挙げられる。
スチレン系樹脂の原料モノマーの付加重合反応は、例えば、必要に応じて、ジクミルパーオキサイド等の重合開始剤、重合禁止剤、架橋剤等の存在下、有機溶媒存在下又は無溶媒下で、常法により行うことができるが、温度条件としては、好ましくは110℃以上、より好ましくは140℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下である。
付加重合反応の際に有機溶媒を使用する場合、キシレン、トルエン等を用いることができる。有機溶媒の使用量は、スチレン系樹脂の原料モノマー100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下が好ましい。
結晶性複合樹脂において、結晶性ポリエステル樹脂とスチレン系樹脂とは、結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマーとスチレン系樹脂の原料モノマーのいずれとも反応し得る両反応性モノマーを介して化学的に結合した樹脂であることが好ましい。
両反応性モノマーは、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基、好ましくは水酸基及び/又はカルボキシ基、より好ましくはカルボキシ基と、エチレン性不飽和結合とを有する化合物が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種がより好ましく、重縮合反応及び付加重合反応の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸及びフマル酸からなる群より選ばれた少なくとも1種がさらに好ましい。但し、重合禁止剤と共に用いた場合は、フマル酸等のエチレン性不飽和結合を有する多価カルボン酸系化合物は、ポリエステル樹脂の原料モノマーとして機能する。この場合、フマル酸等は両反応性モノマーではなく、ポリエステル樹脂の原料モノマーである。
両反応性モノマーの使用量は、低温定着性の観点から、結晶性ポリエステル樹脂のアルコール成分の合計100モルに対して、好ましくは1モル以上、より好ましくは2モル以上であり、そして、スチレン系樹脂と結晶性ポリエステル樹脂との分散性を高め、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは30モル以下、より好ましくは20モル以下、さらに好ましくは10モル以下である。
また、両反応性モノマーの使用量は、低温定着性の観点から、スチレン系樹脂の原料モノマーの合計100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、スチレン系樹脂と結晶性ポリエステル樹脂との分散性を高め、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。ここで、スチレン系樹脂の原料モノマーの合計に重合開始剤は含める。
結晶性複合樹脂は、具体的には、以下の方法により製造することが好ましい。両反応性モノマーを用いる場合、両反応性モノマーは、トナーの耐久性を向上させる観点、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、スチレン系樹脂の原料モノマーとともに付加重合反応に用いることが好ましい。
(i) ポリエステル樹脂の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)の後に、スチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)を行う方法
この方法では、重縮合反応に適した反応温度条件下で工程(A)を行い、反応温度を低下させ、付加重合反応に適した温度条件下で工程(B)を行う。スチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーは、付加重合反応に適した温度で反応系内に添加にすることが好ましい。両反応性モノマーは付加重合反応をすると共にポリエステル樹脂とも反応する。
工程(B)の後に、再度反応温度を上昇させ、必要に応じて架橋剤となる3価以上のポリエステル樹脂の原料モノマー等を重合系に添加し、工程(A)の重縮合反応や両反応性モノマーとの反応をさらに進めることができる。
(ii) スチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)の後に、ポリエステル樹脂の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)を行う方法
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(B)を行い、反応温度を上昇させ、重縮合反応に適した温度条件下で、工程(A)の重縮合反応を行う。両反応性モノマーは付加重合反応と共に重縮合反応にも関与する。
ポリエステル樹脂の原料モノマーは、付加重合反応時に反応系内に存在してもよく、重縮合反応に適した温度条件下で反応系内に添加してもよい。前者の場合は、重縮合反応に適した温度でエステル化触媒を添加することで重縮合反応の進行を調節できる。
(iii) ポリエステル樹脂の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)とスチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)とを、並行して進行する条件で反応を行う方法
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(A)と工程(B)とを並行して行い、反応温度を上昇させ、重縮合反応に適した温度条件下で、必要に応じて架橋剤となる3価以上のポリエステル樹脂の原料モノマーを重合系に添加し、工程(A)の重縮合反応をさらに行うことが好ましい。その際、重縮合反応に適した温度条件下では、重合禁止剤を添加して重縮合反応だけを進めることもできる。両反応性モノマーは付加重合反応と共に重縮合反応にも関与する。
上記(i)の方法においては、重縮合反応を行う工程(A)の代わりに、予め重合した重縮合系樹脂を用いてもよい。上記(iii)の方法において、工程(A)と工程(B)を並行して進行する条件で反応を行う際には、ポリエステル樹脂の原料モノマーを含有した混合物中に、スチレン系樹脂の原料モノマーを含有した混合物を滴下して反応させることもできる。
上記(i)〜(iii)の方法は、同一容器内で行うことが好ましい。
結晶性複合樹脂における結晶性ポリエステル樹脂とスチレン系樹脂の質量比(結晶性ポリエステル樹脂/スチレン系樹脂)は、粉砕性の観点から、好ましくは98/2以下、より好ましくは95/5以下、さらに好ましくは90/10以下であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは60/40以上、より好ましくは70/30以上、さらに好ましくは80/20以上である。なお、上記の計算において、ポリエステル樹脂の質量は、用いられるポリエステル樹脂の原料モノマーの質量から、重縮合反応により脱水される反応水の量(計算値)を除いた量であり、両反応性モノマーの量は、ポリエステル樹脂の原料モノマー量に含める。また、スチレン系樹脂の量は、スチレン系樹脂の原料モノマーの量であるが、重合開始剤の量はスチレン系樹脂の原料モノマー量に含める。
結晶性ポリエステル系樹脂の軟化点は、トナーの耐久性の観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは110℃以下、より好ましくは100℃以下である。
結晶性ポリエステル系樹脂の融点は、トナーの耐久性の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは110℃以下、より好ましくは100℃以下である。
結晶性ポリエステル系樹脂の含有量は、結着樹脂中、低温定着性の観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、そして、トナーの耐久性の観点から、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
非晶質ポリエステル系樹脂は、2価以上のアルコールを含むアルコール成分と2価以上のカルボン酸系化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物である非晶質ポリエステル樹脂を含む。
2価のアルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール、好ましくは炭素数2以上20以下、より好ましくは炭素数2以上15以下の脂肪族ジオールや、式(I):
Figure 0006854189
(式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。脂肪族ジオールとして、具体的には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。
アルコール成分としては、トナーの耐久性の観点から、式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
2価のカルボン酸系化合物としては、例えば、炭素数3以上30以下、好ましくは炭素数3以上20以下、より好ましくは炭素数3以上10以下のジカルボン酸、それらの無水物、又はアルキル基の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。ジカルボン酸の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸や、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
3価以上のカルボン酸系化合物としては、例えば、炭素数4以上20以下、好ましくは炭素数6以上20以下の3価以上のカルボン酸、それらの無水物、又はアルキル基の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)、又はそれらの酸無水物等が挙げられる。
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、ポリエステル樹脂の分子量及び軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
ポリエステル樹脂におけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステル樹脂の軟化点を調整する観点から、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.75以上であり、そして、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.15以下である。
ポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、好ましくは130℃以上、より好ましくは170℃以上、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下の温度で重縮合させて製造することができる。
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、錫化合物が好ましい。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。重合禁止剤としては、t-ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
なお、本発明において、非晶質ポリエステル樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル樹脂であってもよい。変性されたポリエステル樹脂としては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステル樹脂が挙げられるが、変性されたポリエステル樹脂のなかでは、ポリエステル樹脂をポリイソシアネート化合物でウレタン伸長したウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
本発明において、非晶質ポリエステル系樹脂は、低温定着性の観点から、前記非晶質ポリエステル樹脂とスチレン系樹脂とを含有する非晶質複合樹脂が好ましい。複合樹脂については、ポリエステル樹脂が結晶性ポリエステル樹脂ではなく非晶質ポリエステル樹脂である以外は、前記結晶性複合樹脂と同様である。
非晶質ポリエステル系樹脂の軟化点は、保存安定性の観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下である。
なお、非晶質ポリエステル系樹脂が2種以上の樹脂からなる場合は、それらの加重平均値が上記範囲内であることが好ましく、本発明では、定着性の観点から、非晶質ポリエステル系樹脂は、軟化点の異なる2種の非晶質ポリエステル系樹脂を含有することが好ましい。2種の非晶質ポリエステル系樹脂の軟化点の差は、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上である。
軟化点が高い方の非晶質ポリエステル系樹脂Hの軟化点は、トナーの耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点から、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上であり、また、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは140℃以下である。また、軟化点が低い方の非晶質ポリエステル系樹脂Lの軟化点は、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは95℃以上であり、また、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは135℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは115℃以下である。
非晶質ポリエステル系樹脂Hと非晶質ポリエステル系樹脂Lの質量比(非晶質ポリエステル系樹脂H/非晶質ポリエステル系樹脂L)は、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上であり、そして、好ましくは45/55以下、より好ましくは42/58以下である。軟化点が高い樹脂と低い樹脂では、軟化点が低い樹脂の方が割れやすく、通常、軟化点が低い樹脂が多いと耐久性には不利に働くが、本発明では、軟化点が低い非晶質ポリエステル系樹脂よりも、結晶性ポリエステル系樹脂の界面の方が割れやすいため、軟化点が低い非晶質ポリエステル系樹脂Lが多量に含まれていても、耐久性が低下することなく、本発明の効果がより顕著に発揮される。
非晶質ポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、保存安定性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下である。
非晶質ポリエステル系樹脂の酸価は、帯電の立ち上がり性の観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上、さらに好ましくは5mgKOH/g以上であり、そして、吸湿性の観点から、好ましくは20mgKOH/g以下、より好ましくは15mgKOH/g以下である。
非晶質ポリエステル系樹脂の含有量は、結着樹脂中、低温定着性の観点から、好ましくは65質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、そして、耐久性の観点から、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
結着樹脂における、結晶性ポリエステル系樹脂と非晶質ポリエステル系樹脂の質量比(結晶性ポリエステル系樹脂/非晶質ポリエステル系樹脂)は、保存性の観点から、好ましくは3/97以上、より好ましくは5/95以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは35/65以下、より好ましくは30/70以下、さらに好ましくは20/80以下である。
結着樹脂として、本発明の効果を損なわない範囲で、前記の結晶性ポリエステル系樹脂と非晶質ポリエステル系樹脂以外の公知の樹脂が併用されていてもよいが、両者の樹脂の含有量は、結着樹脂中、好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
トナー粒子は、結晶性ポリエステル系樹脂と非晶質ポリエステル系樹脂を含有する組成物を溶融混練する混練工程、及び得られた混練物を粉砕する粉砕工程を含む方法により得ることが好ましい。
溶融混練に供する組成物には、着色剤、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が含有されていてもよい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料、磁性体等を使用することができる。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等が挙げられる。なお、本発明において、トナー粒子は、黒用トナー、カラー用トナーのいずれであってもよい。
着色剤の含有量は、トナーの画像濃度を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を用いることができる。これらの中では、耐久性の観点から、カルナウバワックスが好ましい。
離型剤の融点は、トナーの転写性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは130℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。
離型剤の含有量は、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点及び結着樹脂中への分散性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下である。
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリエント化学工業(株)製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリエント化学工業(株)製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリエント化学工業(株)製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業(株)製)等;スチレン−アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成(株)製)等が挙げられる。
また、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリエント化学工業(株)製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業(株)製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット(株)製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリエント化学工業(株)製)、「TN-105」(保土谷化学工業(株)製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
溶融混練に供する組成物は、一度に混練に供しても、分割して混練に供してもよいが、あらかじめヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましい。
溶融混練には、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができる。溶融混練時の温度を低減し、トナーの耐久性を向上させる観点から、オープンロール型混練機を用いることが好ましく、該オープンロール型混練機には、ロールの軸方向に沿って供給口と混練物排出口が設けられていることが好ましい。
オープンロール型混練機とは、混練部が密閉されておらず開放されているものをいい、混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。また、連続式オープンロール型混練機は、少なくとも2本のロールを備えた混練機であることが好ましく、本発明に用いられる連続式オープンロール型混練機は、周速度の異なる2本のロール、即ち、周速度の高い高回転側ロールと周速度の低い低回転側ロールとの2本のロールを備えた混練機であることが好ましい。本発明においては、離型剤の結着樹脂への分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及びトナーの耐久性を向上させる観点から、高回転側ロールは加熱ロール、低回転側ロールは冷却ロールであることが好ましい。
ロールの温度は、例えば、ロール内部に通す熱媒体の温度により調整することができ、各ロールには、ロール内部を2以上に分割して温度の異なる熱媒体を通じてもよい。
高回転側ロールの原料投入側端部温度は、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及びトナーの耐久性を向上させる観点から、80℃以上、160℃以下が好ましく、同様の観点から、低回転側ロールの原料投入側端部温度は30℃以上、100℃以下が好ましい。
高回転側ロールは、原料投入側端部と混練物排出側端部の設定温度の差が、混練物のロールからの脱離防止の観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及びトナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上であり、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下である。低回転側ロールは、原料投入側端部と混練物排出側端部の設定温度の差が、離型剤の結着樹脂への分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及びトナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは0℃以上であり、そして、好ましくは50℃以下である。
高回転側ロールの周速度は、離型剤の結着樹脂への分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及びトナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは2m/min以上、より好ましくは10m/min以上、さらに好ましくは25m/min以上であり、そして、好ましくは100m/min以下、より好ましくは75m/min以下、さらに好ましくは50m/min以下である。低回転側ロールの周速度は、同様の観点から、好ましくは1m/min以上、より好ましくは5m/min以上、さらに好ましくは15m/min以上であり、そして、好ましくは90m/min以下、より好ましくは60m/min以下、さらに好ましくは30m/min以下である。また、2本のロールの周速度の比(低回転側ロール/高回転側ロール)は、好ましくは1/10以上、より好ましくは3/10以上であり、そして、好ましくは9/10以下、より好ましくは8/10以下である。
また、各ロールの構造、大きさ、材料等について特に限定はない。ロール表面は、混練に用いられる溝を有しており、この形状は直線状、螺旋状、波型、凸凹型等が挙げられる。
溶融混練の後、混練物を粉砕可能な硬度に達するまで適宜冷却し、粉砕工程、及び必要に応じて分級工程を行ってトナー粒子を得ることが好ましい。ここで、冷却とは、混練物を0℃以上50℃以下まで冷却すること、または、混練物中の結着樹脂のガラス転移温度以下まで冷却することを言う。
粉砕工程は、得られた混練物を粉砕して、トナー粒子を得る工程であり、本発明では、混練物をジェットミルにより粉砕することが好ましい。混練物は、所望の粒径まで一度に粉砕しても、段階的に粉砕してもよいが、効率よく、かつより均一に粉砕する観点から、粗粉砕と微粉砕の2段階で行い、微粉砕でジェットミルを使用することが好ましい。
粗粉砕に用いられる粉砕機としては、ハンマーミル、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられる。
粗粉砕では、最大径が3mm以下になるまで粉砕することが好ましい。最大径が3mm以下の粉砕物は、混練物を、粒径が0.05mm以上3mm以下程度になるまで適宜粗粉砕した後、目開きが3mmの篩に通し、篩を通過した粉砕物として得ることができる。
微粉砕に用いる粉砕機としては、流動層式ジェットミル、気流式ジェットミル等のジェットミル、機械式ミル等が挙げられ、これらの中では、ジェットミルが好ましく、粉砕効率の観点から、流動層式ジェットミルがより好ましい。トナー同志の衝突により粉砕されるために、流動性が維持されやすいことから、下方部分に複数のジェットノズルが対向するように配置された粉砕室を少なくとも有する流動層式ジェットミルがより好ましい。
前記流動層式ジェットミルは、ジェットノズルから噴出する高速のガス噴流により、粉砕容器内に供給された粒子の流動層が形成され、流動層において、粒子の加速、相互衝突が繰り返されることにより、粒子が微粉砕される構造・原理を有する。
前記構造を有する流動層式ジェットミルにおいて、ジェットノズルの本数は特に限定されないが、風量、流量、流速のバランスや粒子の衝突効率等の観点から、複数、好ましくは3〜4本のジェットノズルが、対向して配置されていることが好ましい。
さらに、粉砕室の上方部分には粉砕により小粒径化され、上昇した小粒径の粒子を捕集する分級ローターが設けられていてもよい。粒度分布は、かかる分級ローターの回転数により容易に調整することができる。分級ローターによる分級により、粗粉が除去された粉砕物(上限分級粉)が得られる。
分級ローターは、鉛直方向に対して縦向き、横向きのいずれに配置されていてもよいが、分級性能の観点から、縦向きに配置されていることが好ましい。
複数のジェットノズルが備えられ、さらに分級ローターを有する流動層式ジェットミルの具体例としては、特開昭60−166547号公報、特開2002−35631号公報に開示された粉砕機が挙げられる。
また、本発明において好適に用いられる流動層式ジェットミルの市販品としては、ホソカワミクロン(株)製の「TFG」シリーズ、「AFG」シリーズ等が挙げられる。
微粉砕の程度は、目的とするトナーの粒径に応じて、適宜調整することが好ましい。
分級工程に用いられる分級機としては、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。
続いて、得られたトナー粒子を、ハンマーとライナーを備えた機械式表面改質装置で球形化する球形化工程を行う。本発明で用いる機械式表面改質装置は、回分式の表面改質装置であることが好ましい。該回分式の表面改質装置としては、微粉を装置外へ連続的に排出除去する分級手段、ハンマーとライナーを備えた表面処理手段、及び被処理物を分級手段に導入する第一の空間と被処理物を表面処理手段に導入する第二の空間とに装置内を仕切る案内手段を有する装置が好ましい。
前記回分式の表面改質装置を使用した球形化(表面改質ともいう)処理について、図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本発明に使用する表面改質装置の一例を示し、図2は図1において高速回転する回転体の上面図の一例を示す。
図1に示す表面改質装置は、
ケーシング13、
冷却水又は不凍液を通水できるジャケット(図示しない)、
表面処理手段である、ケーシング13内にあって中心回転軸に取り付けられた、上面にハンマー10を複数個有し、高速で回転する円盤上の回転体である分散ローター6、
分散ローター6の外周に一定間隔を保持して配置されている表面に多数の溝が設けられているライナー4(固定体)(ライナー表面上の溝はなくても構わない)、
表面改質された被処理物を所定粒径に分級するための手段である分級ローター1、
分級ローターにより選別された所定粒径以下の微粉を排出除去するための微粉排出口2、
冷風を導入するための冷風導入口5、
被処理物を第一の空間11へ導入するための原料供給口3、
表面改質時間を自在に調整可能となるように、開閉可能なように設置された排出弁8、
処理後の粉体を排出するための粉体排出口7、及び
装置内の分級ゾーンと表面改質ゾーンの間の空間を、被処理物を分級ローター1に導入するための第一の空間11と、被処理物を分散ローター6に導入するための第二の空間12とに仕切る案内手段である円筒形のガイドリング(案内板)9
とから構成されている。なお、分級ローター1及びローター周辺部分が分級ゾーンであり、分散ローター6とライナー4との間隙部分が表面改質ゾーンである。
分級ローター1の設置方向は図1に示したような縦型だけでなく、横型でもよい。また、分級ローター1の個数は図1に示したような単体だけでなく、複数でもよい。
球形化処理に供するトナー粒子は、図1のように第一の空間に導入しても図3のように第二の空間に導入してもよい。トナー粒子を第二の空間に導入する場合は、第二の空間に導入して表面改質処理を行い、次いで、第一の空間に導入し分級処理した後、再度第二の空間に導入してトナー粒子を第一の空間と第二の空間を循環させることにより、分級処理と表面改質処理を繰り返して、球形化されたトナー粒子を得る。
前記構成を有する表面改質装置における表面改質処理、分級処理の工程を具体的にさらに説明すると、図3の装置のように、トナー粒子を第二の空間に導入する場合、排出弁8を閉とした状態で原料供給口3からトナー粒子を一定量投入すると、投入されたトナー粒子は、まずブロワー(図示しない)により吸引され、第二の空間へ導入される。トナー粒子は、ガイドリング(案内板)9の内周(第二の空間12)に沿いながら分散ローター6により発生する循環流に乗り表面改質ゾーンへ導かれる。表面改質ゾーンに導かれたトナー粒子は分散ローター6のハンマー10とライナー4間で機械式衝撃力を受け、表面改質処理される。表面改質された表面改質粒子は、機内を通過する冷風に乗って、ガイドリング9の外周(第一の空間11)に沿いながら分級ゾーンに導かれる。表面改質粒子は、分級ローター1により、所定粒径以下の微粉と所定粒径以上の粗粉に分級され、微粉は機外へ排出され、粗粉は、循環流に乗り、再度第二の空間12に戻され、表面改質ゾーンで繰り返し表面改質作用を受ける。一定時間経過後、排出弁8を開とし、粉体排出口7より球形化されたトナー粒子を回収する。
微粉を排出除去しながら表面改質処理を繰り返すことが可能な表面改質装置を用いることにより、表面改質時における微粉量の増加を防止しながら、収率よく表面改質処理を行うことができる。
また、排出弁を開放する時間を任意に設定することにより、装置内におけるトナーの滞留時間を調整でき、トナー粒子の表面形状を任意にコントロールでき、円形度が高いトナー粒子を得ることができる。
トナー粒子の表面形状は、表面改質装置内でのトナー粒子の滞留時間に依存している。つまり、トナー粒子の表面形状をコントロールするためには、表面改質装置内のトナー粒子の循環時間をコントロールすることが重要である。本発明において、表面改質工程で使用する表面改質装置を、図1に示すような回分式の表面改質装置とすることで、排出弁開放までの時間、分散ローター上面の歯形状及び回転周速、分散ローターとライナーとの間隔、ガイドリングと分散ローターとの間隔等を適切な状態に制御することにより、表面改質時における微粉増加を防止し、トナー粒子の表面改質装置内での滞留時間をコントロールでき、トナーの表面形状を任意にコントロールすることができる。また、表面改質されたトナーを所定粒径に分級する分級ローターを内蔵しているため、分級ローターの回転周速を適切な状態に制御することにより、所定粒子以下の微粉は装置外へ連続的に排出され、粗粉は再度表面改質できるため、微粉が除かれた表面改質粒子を得ることができる。
表面改質装置において表面改質処理と分級処理を繰り返す循環時間は、表面改質効果を得る観点から、好ましくは5秒以上、より好ましくは10秒以上であり、そして、表面改質時間の長時間化に伴う、表面改質時に発生する熱によるトナーの表面変質や、機内融着の発生、及び処理能力の低下を避ける観点から、好ましくは720秒以下、より好ましくは600秒以下である。
なお、表面改質時に発生する熱によるトナーの表面変質や、機内融着を防止する観点から、冷風を送ったり、ジャケット内に冷媒を通したりして、装置内の温度を制御することが好ましい。
本発明では、球形化されたトナー粒子の球形化の度合いを示すものとして、平均円形度をその指標とする。
球形化されたトナー粒子の平均円形度は、トナーの耐久性及び転写性の観点から、好ましくは0.945以上、より好ましくは0.955以上である。平均円形度は、トナー粒子の凹凸の度合を示す指標であり、トナー粒子が完全な球形の場合の円形度、即ち平均円形度の上限値は、1.000である。一方、粒子表面の凹凸が大きくなるほど、円形度の値は小さくなる。
本発明では、さらに、転写性を向上させるために、球形化されたトナー粒子を外添剤と混合する工程を含むことが好ましい。
外添剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂粒子等の有機微粒子が挙げられ、2種以上が併用されていてもよい。これらの中では、シリカが好ましく、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであることがより好ましい。
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
外添剤の個数平均粒径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、好ましくは6nm以上、より好ましくは8nm以上であり、そして、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは150nm以下である。
外添剤の使用量は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、球形化されたトナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。
球形化されたトナー粒子と外添剤との混合には、ヘンシェルミキサー等の混合機を用いることができる。
本発明の方法により得られるトナーの体積中位粒径(D50)は、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナー粒子を外添剤で処理している場合には、外添剤で処理する前のトナー粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
本発明の方法により得られるトナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、0℃にて1分間保持する。その後、昇温速度10℃/minで測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度を離型剤の融点とする。
〔トナーの体積中位粒径(D50)及び粒径が3μm以下又は4μm以下の粒子の含有量〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター(株)製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター(株)製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター(株)製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)と粒径が3μm以下(3μm≧)又は4μm以下(4μm≧)の粒子の含有量を求める。
〔トナーの平均円形度〕
測定機:FPIA-3000(シスメックス(株)製)
標準ユニット(対物レンズ10倍)
測定モードHPFモード
分散液:エマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB13.6)5質量%電解液
分散条件:分散液10mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、蒸留水10mlを添加し、さらに、超音波分散機にて2分間分散させる。
測定条件:分散液に分散したトナーの円形度を、粒子濃度1800〜2200個になる濃度で20℃で測定し、数平均値を求める。
〔外添剤の個数平均粒径〕
走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの平均値を個数平均粒径とする。
樹脂製造例1
表1に示す無水トリメリット酸以外のポリエステル樹脂の原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、200℃に昇温して6時間反応させた。さらに210℃に昇温した後、無水トリメリット酸を添加し、常圧(101.3kPa)にて1時間反応させ、さらに40kPaにて所望の軟化点に達するまで反応させて非晶質ポリエステル樹脂(樹脂A1)を得た。得られた樹脂の物性を表1に示す。
樹脂製造例2
表1に示すポリエステル樹脂の原料モノマー、及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、235℃に昇温して反応率が80%に到達するまで反応を行った後、8kPaにて所望の軟化点に達するまで反応を行い、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂A2)を得た。得られた樹脂の物性を表1に示す。なお、反応率とは、生成反応水量/理論生成水量×100の値をいう。
樹脂製造例3
表1に示す無水トリメリット酸以外のポリエステル樹脂の原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃に昇温して12時間反応を行った後、8.3kPaに減圧して1時間反応させた。その後、常圧に戻して160℃に降温し、スチレン系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及び重合開始剤の混合液を滴下ロートより1時間かけて滴下した。160℃に保持したまま1時間付加重合反応を行った後、210℃に昇温し、8.3kPaにて1時間保持した。さらに、210℃にて、無水トリメリット酸を添加し、所望の軟化点に達するまで反応させて非晶質複合樹脂(樹脂A3)を得た。得られた樹脂の物性を表1に示す。
樹脂製造例4
表2に示すポリエステル樹脂の原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、130℃まで加熱し、その後130℃から200℃まで10時間かけて昇温を行い、さらに200℃に保持したまま8kPaに減圧して1時間反応させて、結晶性ポリエステル樹脂(樹脂C1)を得た。得られた樹脂の物性を表2に示す。
樹脂製造例5
表2に示すポリエステル樹脂の原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、160℃まで加熱し6時間反応させた。その後、表2に示すスチレン系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及び重合開始剤の混合液を1時間かけて滴下した。160℃に保持したまま1時間付加重合反応を行った後、8.3kPaに減圧して1時間保持した。さらに、200℃まで8時間かけて昇温し、8.3kPaにて2時間反応させて結晶性複合樹脂(樹脂C2)を得た。得られた樹脂の物性を表2に示す。
Figure 0006854189
Figure 0006854189
実施例1、2、7及び比較例1(実施例1は参考例である)
表3に示す結着樹脂と、負帯電性荷電制御剤「T-77」(保土ヶ谷化学工業社製)1.0質量部、カーボンブラック「MOGUL-L」(キャボットコーポレーション社製)6.0質量部、及び離型剤「SP-105」(加藤洋行社製、フィッシャートロプシュワックス、融点:105℃)5.0質量部をヘンシェルミキサーにて1分間撹拌混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」(三井鉱山社製、ロール外径:14cm、有効ロール長:80cm)を使用した。連続式二本オープンロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)回転数75r/min(周速度32.97m/min)、低回転側ロール(バックロール)回転数50r/min(周速度21.98m/min)、混練物供給口側端部のロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側が135℃及び混練物排出側が90℃であり、低回転側ロールの原料投入側が35℃及び混練物排出側が35℃であった。また、原料混合物の供給速度は10kg/h、平均滞留時間は約6分間であった。
得られた溶融混練物を冷却ロールで圧延しながら20℃以下に冷却し、冷却された溶融混練物をロートプレックス(東亜機械社製)で3mmに粗粉砕した。次いで、流動層式ジェットミル「400型TFG」(ホソカワミクロン社製)を用いて微粉砕を行った。
得られた微粉砕品を、TTSP分級機(ホソカワミクロン社製)を用いて分級を行った。
得られた分級品を、ハンマー及びライナーを具備した表面改質装置ファカルティ「F430型」(ホソカワミクロン社製)の原料投入口を、被処理物を第二の空間に導入するように改造した装置を用いて、分散回転数5100r/min、分級回転数5200r/min、風量20Nm3、ハンマー12本の条件を固定し、投入量と撹拌時間を変更して、所定の円形度になるように球形化を行い、トナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部と、外添剤として疎水性シリカ「RY50」(日本アエロジル社製、個数平均粒径40nm)1.5質量部、及び疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル社製、個数平均粒径16nm)0.7質量部をヘンシェルミキサーにて3分間混合して、トナーを得た。
実施例3〜5
溶融混練に供する原料として、表3に示す結着樹脂と、負帯電性荷電制御剤「ボントロンE-84」(オリエント化学社製)1.0質量部、銅フタロシアニン顔料「ECB-301」(大日精化工業社製)5.0質量部、及び離型剤「SP-105」(加藤洋行社製、フィッシャートロプシュワックス、融点:105℃)5.0質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、外添処理まで行い、トナーを得た。
実施例6
離型剤として、「SP-105」の代わりに「カルナウバワックス1号」(加藤洋行社製、カルナウバワックス、融点85℃)5.0質量部を用いた以外は、実施例3と同様にして、トナーを得た。
実施例8
溶融混練に、連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」の代わりに、同方向回転二軸押出機「PCM-30」(池貝鉄工社製)を使用した以外は、実施例7と同様にして、外添処理まで行い、トナーを得た。同方向回転二軸押出機の運転条件は、バレル設定温度100℃、軸回転数200r/min(軸の回転の周速0.30m/sec)、混合物供給速度10kg/hであった。
比較例2
実施例1と同様にして、ロートプレックスを用いた粗粉砕まで行った後、流動層式ジェットミル「400型TFG」と表面改質装置ファカルティ「F430型」を使用せず、ターボミル「T-400RS」(フロイント ターボ社製)を用いて、微粉砕・球形化した。その後、実施例1と同様にして、分級と外添処理を行い、トナーを得た。
比較例3
球形化工程において、表面改質装置ファカルティ「F430型」の代わりに、表面改質機「MR-10」(日本ニューマチック社製)を用いて、所定の円形度になるように、温度、投入量を変更して球形化を行った以外は、実施例1と同様にして、外添処理まで行い、トナーを得た。
比較例4
球形化工程を行わず、分級品を外添処理した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
試験例1〔低温定着性〕
非磁性一成分現像装置「OKI MICROLINE 5400」(沖データ社製)にトナーを実装し、トナー付着量を0.50mg/cm2に調整して、20mm×30mmのベタ画像を「Color Copy90紙」(富士ゼロックスオフィスサプライ社製)に印字した。定着機を通過する前にベタ画像を取りだして未定着画像を得た。得られた未定着画像を有する用紙を非磁性一成分現像装置「OKI MICROLINE 3020c」(沖データ社製)の定着機を改造した外部定着機にて、定着ロール温度を110℃に設定し、150mm/secの定着速度で定着させた。その後、定着ロール温度を115℃に設定し、同様の操作を行った。これを5℃ずつ上昇させながら、各温度で未定着画像の定着処理を行ない、定着画像を得た。
底面が50φである1000gの重りに白紙「L紙」(Xerox社製)を巻き付け、このおもりを、各定着温度で得られた画像部分に置き、画像部分の幅にて5往復させ、擦り前後の画像濃度を画像濃度測定器「SPM-50」(Gretag社製)を用いて測定し、擦り前後の比率([擦り後の画像濃度/擦り前の画像濃度]×100)が最初に90%を超える定着ロールの温度を最低定着温度とし、低温定着性の指標とした。値が小さいほど低温定着性に優れる。結果を表3に示す。
試験例2〔耐久性〕
非磁性一成分現像装置「OKI MICROLINE 5400」(沖データ社製)のIDカートリッジにトナーを実装し、低温低湿(10℃・20%)の環境下で、70r/min(36枚/分相当)で空回し運転を行い、現像ロール表面のスジムラ発生を目視にて観察し、スジムラが発生するまでの時間を測定し、耐久性の指標とした。数値が大きいほど、耐久性に優れる。結果を表3に示す。
なお、スジムラとは現像ロール上に付着しているトナー量にばらつきが発生している状態のことをいい、スジムラの発生により、印字の際に画像濃度に濃淡が発生する。
Figure 0006854189
以上の結果より、実施例1〜8で得られたトナーは、低温定着性と耐久性のいずれもが良好である。
これに対し、結晶性ポリエステル系樹脂を用いていない比較例1のトナーは低温定着性に欠けており、所定の装置を用いた球形化処理を行っていない比較例2〜4のトナーは、耐久性が欠けている。
本発明の方法により得られるトナーは、静電荷像現像法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられるものである。
1 分級ローター
2 微粉排出口
3 原料供給口
4 ライナー
5 冷風導入口
6 分散ローター
7 粉体排出口
8 排出弁
9 ガイドリング
10 ハンマー
11 第一の空間
12 第二の空間
13 ケーシング

Claims (5)

  1. 結晶性ポリエステル系樹脂と非晶質ポリエステル系樹脂を含有するトナー粒子を、ハンマーとライナーを備え、分級手段を備えた回分式の機械式表面改質装置で球形化する球形化工程を含む、トナーの製造方法であって、前記結晶性ポリエステル系樹脂が、炭素数9以上14以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物を含有するカルボン酸成分との重縮合物である重縮合系樹脂成分と、スチレン系樹脂成分とを含む結晶性複合樹脂である、トナーの製造方法
  2. 非晶質ポリエステル系樹脂が、軟化点の異なる2種の非晶質ポリエステル系樹脂を含有する、請求項1記載の製造方法。
  3. 軟化点が高い方の非晶質ポリエステル系樹脂Hと軟化点が低い方の非晶質ポリエステル系樹脂Lの質量比(非晶質ポリエステル系樹脂H/非晶質ポリエステル系樹脂L)が、5/95以上45/55以下である、請求項2記載の製造方法。
  4. 結晶性ポリエステル系樹脂と非晶質ポリエステル系樹脂を含有する組成物を溶融混練する混練工程、及び得られた混練物を粉砕する粉砕工程を含む方法によりトナー粒子を得る工程を含み、前記粉砕工程において、混練物をジェットミルにより粉砕する、請求項1〜いずれか記載の製造方法。
  5. 回分式の表面改質装置が、微粉を装置外へ連続的に排出除去する分級手段、ハンマーとライナーを備えた表面処理手段、及び被処理物を該分級手段に導入する第一の空間と被処理物を該表面処理手段に導入する第二の空間とに装置内を仕切る案内手段を有する装置である、請求項1〜4いずれか記載の製造方法。
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