JP5946112B2 - 基板加工方法 - Google Patents

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Description

本発明は、シリコン単結晶基板を加工する基板加工方法に関する。
従来、シリコン(Si)ウェハに代表される半導体ウェハを製造する場合には、石英るつぼ内に溶融されたシリコン融液から凝固した円柱形のインゴットを適切な長さのブロックに切断して、その周縁部を目標の直径になるよう研削し、その後、ブロック化されたインゴットをワイヤソーによりウェハ形にスライスして半導体ウェハを製造するようにしている(例えば、特許文献1および2参照。)。
このようにして製造された半導体ウェハは、前工程で回路パターンの形成等、各種の処理が順次施されて後工程に供され、この後工程で裏面がバックグラインド処理されて薄片化が図られることにより、厚さが約750μmから100μm以下、例えば75μmや50μm程度に調整される。
従来における半導体ウェハは、以上のように製造され、インゴットがワイヤソーにより切断され、しかも、切断の際にワイヤソーの太さ以上の切り代が必要となるので、厚さ0.1mm以下の薄い半導体ウェハを製造することが非常に困難であり、製品率も向上しないという問題がある。
一方、集光レンズでレーザ光の集光点をインゴットの内部に合わせ、そのレーザ光でインゴットを相対的に走査することにより、インゴットの内部に多光子吸収による面状の改質層を形成し、この改質層を剥離面としてインゴットの一部を基板として剥離する基板製造方法および基板製造装置が開示されている(例えば、特許文献3および特許文献4参照。)。特許文献3では、同心円状または螺旋状にレーザ光を走査しており、また、特許文献4では、XYステージを利用して、XY方向にレーザ光を走査している。
また、太陽電池を加工したりシリコンインゴットをスライスする際の仮固定用に、二液常温硬化型の接着剤が提供されている(例えば、特許文献5および特許文献6)。このような接着剤は、太陽電池やインゴットのスライスを仮固定して加工した後で容易に剥離して取り外せるように、比較的弱い接着力を有している。
さらに、インゴットに応力を加えながら内部面をレーザ光で加工し、接着剤で保持してインゴットから剥離することによりウェハを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献7参照)。
一方、シリコン単結晶において、波長と透過率には一定の関係があることが知られている(例えば、非特許文献1参照。)
なお、この明細書中においては、別記する場合を除いてウェハのことを基板と称することにする。
特開2008−200772号公報 特開2005−297156号公報 特開2005−277136号公報 特開2005−294325号公報 特開2010−248395号公報 特開2007−039532号公報 特開2006−024782号公報
E.D. Palik ed.: Handbook of Optical Constants of Solids, Academic Press, San Diego, (1985) 547
本発明は、薄いシリコン基板を製品率を確保して提供するような基板加工方法を提供することを目的とする。
上述の課題を解決するために、本発明に係る単結晶シリコン基板を加工する基板加工方法は、単結晶シリコン基板を加工する基板加工方法であって、基板上に非接触にレーザ集光手段を配置する工程と、前記レーザ集光手段により、前記基板の表面にレーザ光を照射し、前記基板内部にレーザ光を集光する工程と、前記レーザ集光手段と前記基板を相対的に移動させて、前記基板の表面から所定の深さの範囲において前記基板の表面に水平方向に形成した、多結晶シリコンの多結晶粒を有してなる改質層を形成する工程と、前記基板を前記改質層又は前記改質層近傍において割断する工程とを有する。
前記改質層は、前記基板の深さ方向に前記多結晶粒の寸法の非対称な分布を有することが好ましい。
前記改質層において、前記多結晶粒の寸法は、150μm以下であることが好ましい。
前記基板の表面を接着剤で金属板に接着する工程をさらに有することが好ましい。
前記接着剤は、アクリル樹脂組成物を含み、水に浸漬することにより被接着物より剥離可能であることが好ましい。
前記水は、80℃以上100℃未満の温水であることが好ましい。
前記基板を割断する工程は、前記基板の表面に接着剤で接着した金属板に力を印加することにより当該基板を割断することが好ましい。
前記金属板に接着剤で接着された前記割断された基板を水中で剥離することが好ましい。
前記照射されるレーザ光は、前記基板の深さ500μmにおいて透過率10%以上の波長を有し、パルス幅50ns以上であることが好ましい。
前記基板の表面は、鏡面仕上げであることが好ましい。
基板加工方法の一連の工程を示すフローチャートである。 基板内部加工装置の斜視図である。 基板を載置したステージの上面図である。 基板を載置したステージの断面図である。 基板に対するレーザ光の照射を説明する図である。 シリコン単結晶における透過率の波長依存性を示す図である。 内部改質層の非対称な構造を説明する図である。 基板に形成された内部改質層を説明する断面図である。 内部改質層の赤外線顕微鏡像である。 基板の片面に対する金属板の接着を説明する断面図である。 基板の両面に対する金属板の接着を説明する断面図である。 割断装置を示す正面図である。 基板の割断面を示す写真である。 基板の割断面における粗さの度数分布を示す図である。 金属板から基板を水中剥離することを説明する図である。 実施例1における基板の内部改質層の写真である。 実施例2における割段面の断面写真である。 比較例における基板の内部改質層の写真である。
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
図1に示すように、本実施の形態の基板加工方法は、基板の内部加工の工程(S11)、金属板の前処理の工程(S12)、接着・硬化の工程(S13)、割断の工程(S14)、水中剥離の工程(S15)及び乾燥の工程(S16)を有する一連の工程から構成されている。以下では、これらの各工程について順に説明する。
(基板の内部加工)
最初の工程S11においては、基板の内部加工を行う。この工程は、基板内部加工装置1によって実施される。本実施の形態では、基板内部加工装置1が加工する基板10には、シリコン単結晶の基板10を使用する。
図2は、基板内部加工装置100の構成を示す斜視図である。基板内部加工装置1は、ステージ110と、ステージ110がXY方向に移動可能なように支持するステージ支持部120と、ステージ110上に配置され、基板10を固定する基板固定具130とを有している。
また、基板内部加工装置100は、レーザ光源160と、集光レンズ170と、収差調整板180とを有し、レーザ光源160から発したレーザ光190を集光レンズ160及び収差調整板180を介して基板10に照射する。
図3は、ステージ110上に置いた基板10を示す上面図である。図4は、ステージ110上に置いた基板10を示す断面図である。
基板10は、ステージ110上において基板固定具130によって保持されている。基板固定具130は、その上に設けられた固定テーブル125によって基板10を固定している。固定テーブル125には、通常の粘着層、機械的なチャック、静電チャックなどが適用可能である。
基板10に集光して照射されるレーザ光190の集光点Pは、基板10内部において、表面から所定の深さの領域に所定の形状の軌跡12を形成することで、表面に水平方向に2次元状の内部改質層14を形成することができる。
図5は、基板10における内部改質層14の形成を説明する図である。
図5(a)に示すように、集光レンズ170と基板10間には、レーザ光190の収差を調整するために、所定の屈折率を有する収差調整板180を配置しても良い。このような収差調整板180を配置することによって、基板10に入射するレーザ光190は、基板10の内部に形成される集光点Pの深さ方向および幅の大きさを有する。このことによっても、基板10の内部に形成される内部改質層14を所定の厚さtを有するように形成することができる。
図5(b)は、収差調整板170による収差を説明する図である。収差調整板180の屈折率又は厚さを大きくすることにより収差が増し、内軸成分190aの集光点P1と外軸成分190bの集光点P2の分離が顕著になる。このような性質を利用することで、内部改質層14の構造を制御することができる。
図6は、シリコン単結晶における光透過率の波長依存性を示す図である。
図6に示す関係は、非特許文献1に記載されている。本実施の形態の基板内部加工装置100のレーザ光源160は、シリコン単結晶の基板10において、表面からの深さ500μmにおいて透過率10%以上の波長を有している。また、レーザ光のパルス幅は50ns以上である。
(非対称な内部改質層)
本実施の形態においては、基板10に形成される内部改質層14は、基板10の深さ方向に非対称な構造を有している。
シリコン単結晶において、同一波長であっても基板厚みによって透過率が異なり、基材厚みが厚いほど、透過率が低下することが知られている。(例えば、非特許文献1参照。)
このことからも非対称な構造は、例えば次のようにして形成することができる。すなわち、照射するレーザ光190の基板10に対する厚み方向における加工部のエネルギー密度の違いによって、内部改質層14よりも上層がより高エネルギーの加工条件となる。
対して、内部改質層14の下層は上層よりも到達するためのエネルギー損失が大きく、結果としてより低エネルギー加工条件となる。これによって、基板10断面には非対称な構造が形成される。
図7は、内部改質層14の非対称な構造を説明する図である。なお、図中の符号は、後述する図8と同様である。
図7においては、基板10に、内部改質層14を構成する加工痕以外にクラックが入る程、高エネルギーなビーム照射を行ったサンプルの断面透過写真及びその断面Lにおけるラマン分光測定データを示している。ラマン分光測定は図中で加工痕以外のクラックAがないエリアを測定している。
加工痕が基板10厚み方向の中央部に形成されたにも関わらず、圧縮応力ひずみが加工痕上部により強く印加されていることを示す。
内部改質層14は、基板10にレーザ光190を集光して照射することによって、シリコン単結晶が溶融した後で冷却されることにより結合状態が変化することにより形成された多結晶シリコンの多結晶粒を有するものである。
多結晶粒の寸法、すなわち粒径は、照射するレーザ光190に関するエネルギー密度、照射回数、照射方法等を制御することによって調整することができる。ただし、多結晶粒の寸法が割断した基板10の表面粗さに大きく影響することから、多結晶粒は150μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。
多結晶粒の寸法およびその数は、基板10の加工中または加工後に、赤外線顕微鏡を用いて非破壊検査により確認することができる。具体的には、赤外線顕微鏡でレーザ光190の照射方向から基板10を透過光で観察し、単結晶部分よりも透過率が低い領域を多結晶として、内部改質層14における透過率の低さでとその分布で多結晶粒の寸法と形成の程度を判断することができる。
内部改質層14は、後述する割断工程における歩留まり向上のため、基板10の端部に露出していることが好ましい。内部改質層14を露出させる方法は、結晶方位のへき開を利用しても、レーザ光190を利用してもよい。
ここで、基板10にレーザ光190を照射して内部改質層14を形成する際には、基板10を冷却することにより所定の温度範囲に維持する。このような冷却方法は、自然冷却でも流体を吹き付けた冷却でもよい。また、冷却する方向は、基板10を固定する基板固定具130の下部からであっても、基板10の上部からであってもよい。
具体的に、レーザ光源160としてJenLas製fiber ns 20を用い、出力0.57W、パルス幅200ns、繰り返し周波数50kHz、走査速度50mm/s、DF(焦点深度)100μm、Si収差補正付き赤外線用対物レンズ100倍(DF100μm)の条件で基板10を加工してサンプルを作製した。
図8は、基板10に形成された内部改質層14の断面透過写真及びその断面におけるラマン分光測定データを示す図である。
図8中の左側の透過写真においては、基板10の深さ方向の所定範囲において厚みtの内部改質層14が形成され、内部改質層14では多結晶粒の存在により光透過率が低下していることが見られる。
図8中の右側は、基板10を断面Lにおける後方ラマン散乱を測定したものである。図中の測定点aは波数、測定点bは半値幅を示している。
この測定結果によると、波数及び半値幅がともに内部改質層14近傍で極大となり、基板10内部の応力も内部改質層14近傍で極大になっていることを示唆している。
ここで、内部改質層14近傍領域とは、レーザ光190の照射により多結晶粒が形成された内部改質層14と単結晶層との境界領域を意味する。この内部改質層14近傍領域では、単結晶と、溶融した単結晶が急冷されてなる単結晶と結合状態を異にする多結晶が不連続に隣接するため、大きな応力が蓄積されている。このような内部改質層14近傍領域の寸法や性質は、レーザ加工条件によって制御することができる。
例えば、内部改質層14近傍領域における多結晶粒の凝集力を制御することができる。多結晶粒の凝集力を制御することにより、基板10を内部改質層14近傍領域において所定の力を加えることにより分割することができるようになる。
図9は、内部改質層14における多結晶粒を示す断面写真である。図9中の(a)、(b)、(c)は、内部改質層14の上面から下面へ、すなわち基板10の表面から深さが大きくなる方向の異なる位置における、基板の表面に平行な断面の写真である。(d)は、さらに(a)の一部を拡大したものである。
これらの断面写真によると、多結晶粒は、レーザ走査方向に沿って形成されるが、基板10における深さによって多結晶粒の寸法及び密度が異なり、内部改質層14は基板10の深さ方向に非対称な構造を有していることがわかる。
なお、これらの写真は、赤外線顕微鏡の焦点深度を順次変化させることによって撮影したものである。撮影には、オリンパス社製赤外線顕微鏡BX51−IRを用いて透過像を使用した。
(金属板前処理)
ステップS12においては、基板10を接着剤により接着して固定する金属板を前処理する。この金属板としては、所定の剛性を有し、基板10の接着と後工程に好適な所定の厚み、寸法を有するものを使用することができる。金属板は所定の平行度および平坦度が得られるならば、装置固定用の抜き穴等の機械加工を行っていても構わない。
金属板は、後述するステップS15における水中での剥離工程を経るため、基板のコンタミネーションを抑制するために不動態であることが好ましく、水中剥離のタクトタイム短縮目的では形成する酸化皮膜層が薄い方が好ましい。
このステップS12においては、水中剥離を容易にするために表面を脱脂処理するとともに、接着剤との接着力を確保するために、表面の酸化皮膜層を除去して活性な金属面を露出させる。
酸化皮膜層の除去には、機械的または化学的方法がある。化学的方法とは、具体的には薬品を用いた酸洗浄や脱脂処理などがある。機械的方法とは、具体的にはサンドブラスト、ショットブラストなどが挙げられるが、サンドペーパーで金属板表面を傷つける方法が最も簡便であり、その粒度は#80〜2000が好ましく、金属板の表面ダメージを考慮すると#150〜800がより好ましい。
(接着・硬化)
ステップS13においては、ステップS11で内部改質層14を形成した基板10とステップS12で前処理した金属板を用い、基板10を金属板に接着剤を用いて接着し、接着剤を硬化させる。このような接着剤としては、基板10の内部改質層14近傍領域を形成する多結晶粒の凝集力よりも強い接着剤であればよい。
図10は、基板10の片面を金属板20に接着剤25を用いて固定する方法を説明する断面図である。図中では、接着剤25が塗布された金属板20上に基板10が載置され、その上にスペーサ31において支持された押し板33が載せられている。
本実施の形態では、金属イオンを反応開始剤として硬化するアクリル系二液モノマー成分からなる接着剤25を使用する。このような接着剤25は、未硬化モノマー及び硬化反応物が非水溶性であり、割断した基板10を水中剥離した際に汚染しない。
接着剤25の塗布厚みは硬化前で0.1〜1mmが好ましく、0.15〜0.35mmがより好ましい。接着剤25の塗布厚みが過度に大きい場合、完全硬化に長時間を必要とする上、基板10の割断時に接着剤25の凝集破壊が起こりやすくなる。また、塗布厚みが小さい場合、割断した基板10の水中剥離に長時間を必要とする。
接着剤25の塗布厚みの制御は、接着する金属板20を任意の高さに固定する方法が取られるが、簡易的にはシムプレートのようなスペーサ31を用いて行うことができる。接着する金属板20間の平行度が1枚のみで得られない場合は、1枚以上の補助スペーサを使用して平行度を得るようにしてもよい。
厳密に塗布厚みを制御したい場合は、片面硬化後にもう片面を接着するのが好ましい。この際、非接着面の基板10に接着剤25が硬化することを抑制するため、金属イオンを含まない樹脂フィルムをカバーレイヤーとして用いてもよい。
基板10の片面ずつ接着する場合、接着剤25が基板10の上面であっても、下面であっても構わない。また、接着剤25は、必ずしも基板10の全面に塗布する必要はない。
図11は、基板10の両面を金属板20に接着剤を用いて固定する方法を説明する断面図である。
この場合、基板10の上面及び下面の両面が、第1の金属板20及び第2の金属板21に接着剤25によって同時に接着される。第1の金属板20及び第2の金属板21の間隔は、図示しないスペーサ31によって設定されている。
このようにして、基板10は両面を第1及び第2の金属板20、21によって挟んで接着してなる、一体の構造体40を構成するようになる。
(割断)
ステップS14においては、ステップS13において金属板20、21に接着剤25によって接着した基板10を割断する。
図12は、基板10を割断するための割断装置50を示す正面図である。この割断装置50において、架台52上に、基板10の両面に第1及び第2の金属板20、21が接着されてなる構造体40が載置される。
例えば、構造体40は、第2の金属板21に設けられた貫孔を利用して架台52に固定してよい。この状態において、第1の金属板20に割断冶具54によって下向きの押圧力を印加する。これによって、基板10は第1及び第2の金属板20、21に接着した上面及び下面の両面の方向に逆向きの力を受けることになる。割断冶具54の駆動源としては、油圧式や空気圧式およびハイブリッド式でもよい。
割段冶具54に印加された力が所定の閾値を越えると、基板10は分割され、構造体40は上下2つに分離される。本実施の形態では、内部改質層14が基板10の深さ方向に非対称に形成されているため、基板10は内部改質層14近傍領域において割断される。
図13は、割断された基板10の割断面を示す写真である。図14は、割断面における粗さ度数分布の一例を示す図である。
図14は、割断面における粗さの分布を示す図である。測定には、非接触三次元測定装置として三鷹光器社製NH−3NTを使用した。
本実施の形態では、割断面においては、粗さ度数は主に80〜100μmの範囲に分布している。このような粗さは、太陽電池に使用する基板10の表面における入射光の反射を抑制するために特に有用である。
(水中剥離)
ステップS15においては、ステップS14において割段された構造体40について、水中で基板10を金属板20、21から剥離する。
図15は、水中で金属板20から基板10を剥離する方法を説明する図である。本実施の形態では、水槽60に蓄えた80〜100℃の温水に、金属板20、21に接着剤25で接着された基板10を浸す。所定時間経過すると接着剤が水と所定の反応を生じ、接着剤25から接着力が失われるので、水中で基板10から接着剤25を剥離することにより、金属板20、21から基板10を分離することができる。
(乾燥)
ステップS16においては、ステップS15において接着剤25が剥離された基板10を乾燥する。
基板10の乾燥は、室内環境で放置することによって行ってもよいし、清浄な水溶性揮発性溶剤で溶媒置換して乾燥を促進してもよいし、熱風を当てて乾燥してもよい。
水溶性揮発性溶剤とは、20℃において蒸気圧2kPa以上の水酸基を有する有機溶剤であり、具体的には2−プロパノールやメチルアルコールなどが挙げられるが、環境に配慮するとエチルアルコールが好ましい。
(実施例1)
鏡面仕上げで研磨された15mm角、厚さ0.7mmの単結晶シリコンインゴットからなる基板10を、基板内部加工装置100のステージ110に設けられた基板固定具130に固定テーブル125を介して固定した。なお、ステージ110に固定する基板10は単数に限らず、複数であってもよい。
そして、ステージ110を支持するステージ支持部120と、レーザ光源160、集光レンズ170及び収差調整板180とを防振性の台座に固定した。
レーザ光源160は、波長1064nm、繰り返し発振周波数50kHz、(対物レンズ170後における)出力0.7W、パルス幅200n秒でパルスファイバーレーザ(1064nm)を照射する装置を使用した。集光レンズ170は、開口数(NA)が0.85で、1.2mmの焦点距離とした。また、収差調整板180としては、厚み0.15mm、屈折率が1.5のカバーガラスを用いた。ここで、後述する実施例2及び比較例とともに、レーザ照射条件を表1に示す。
ステージ110、レーザ光源160等の制御は、図示しない制御装置によって行い、ステージ110やステージ支持部120の位置、移動速度を制御するとともに、レーザ光源160のレーザ照射のON-OFFを制御する装置を使用した。
次いで、ステージ110上の基板10の表面を平坦度±3μmとし、ステージ支持部120によりステージ110を所定方向に移動させてレーザ光源160の集光レンズ170の光軸を回転ステージ110に搭載された基板10の表面周縁部側に位置させた。
こうして集光レンズ170の光軸を基板10の表面周縁部側に位置させたら、基板10の表面に集光点Pが位置するように集光レンズ170を下降させ、その後、基板10の内部に内部改質層14用の集光点Pを形成できるよう収差調整板180を下降させ、基板10の表面に集光レンズ170と収差調整板180とを接近させた。この際の距離は、集光点Pの深さが0.05〜0.2mmの範囲の場合には、集光点Pの深さの0.3〜0.4倍である。
次いで、集光点Pの線速度が10mm/秒となるよう制御しつつ、集光点Pによって形成される軌跡が1μmピッチの格子状の軌跡12を形成するようステージ110が移動するようにステージ支持部120の駆動を制御した。
ここで、ステージ110の駆動を抑制して集光点Pの線速度を3mm/秒に調整し、基板10の表面周縁部側の近傍においてはレーザ光190のピッチ間隔を0.5μmピッチに狭めることにより、基板10の表面周縁部即の近傍にレーザ光190を重点的に照射して、基板10表面を剥離する際の剥離開始領域を形成し、内部改質層14を形成した後、レーザ光190の照射を停止した。
上記作業の際、ステージ支持部120によりステージ110を所定方向に10mm秒で往復移動させた。また、レーザ光190の照射停止後、基板10の外観を観察したが、表面は鏡面仕上げのままであり、外観に変化は見られなかった。
内部改質層14を形成したら、ステージ110から基板10を取り外し、基板10の両面に金属板20、21を接着剤により接着し、この接着剤25を硬化させた。
本実施の形態で用いる接着剤25としては、基板10の内部改質層14近傍領域を形成する多結晶粒の凝集力よりも強いものであればよい。例えば、電気化学工業(株)から太陽電池・半導体シリコンインゴットスライス用の仮固定用接着剤として提供されている2液常温硬化型仮固定用接着剤である、製品名:SOLARLOC、型番:HIK−700M20を使用することができる。このような接着剤25については、特許文献5及び特許文献6に開示されている。
基板10に金属板20、21を接着するに当たっては、金属板20、21に対して、サンドペーパー#400で接着する金属板(SUS304)表面を傷つけ、エタノールで拭きとり、自然乾燥させるという前処理を施した。この後、付属の定量混合ミキサーガンを用いて表面をエタノールで拭いて清浄にした基板10または金属板20、21に接着剤25を塗布した。
そして、接着剤25の塗布厚みが200μmとなるようスペーサ31を2箇所以上に挟み、これらの上にPETフィルム(東レ製ルミラーT60)を載せ、更にPETフィルム上から金属板20を載せた。
さらに、1〜2時間室温にて静置後、基板10の裏面に対しても同様に金属板21を接着した。この際、PETフィルムは使用していない(使用する工程がない)。続いて、12時間以上室温にて静置して、接着剤25を完全硬化させた。
このような一連の工程によって、基板10の両面に金属板20、21を接着剤25で接着してなる構造体40が形成される。
次に、構造体40を割断装置50に装着し、割断冶具54にて構造体40に所定の押圧力を加えたところ、構造体40に含まれる基板10を内部改質層14近傍領域にて割断することができた。
図16は、割断することができた内部改質層14の構造を示す写真である。この写真は、赤外線顕微鏡により撮影したものである。
(実施例2)
実施例1においては対物レンズ後におけるレーザ光190の出力が0.7Wであったが、実施例2では0.5Wとする。他の条件は同一である。
この場合、実施例1と同様に、内部改質層14を形成した基板10を割断装置50にて割断することができた。
図17は、基板10の割段面の断面構造を示す写真である。この写真は、キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX−500により撮影した。
(比較例)
実施例1においてはパルス幅は100nsであったが、この比較例ではパルス幅を200nsとする。他の条件は同一である。
この場合、実施例1と同様に、内部改質層14を形成した基板10を割断装置50にて割断を試みたが、割断に失敗した。
図18は、割断することができなかった内部改質層14の構造を示す写真である。この写真は、赤外線顕微鏡により撮影した。
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
例えば、上記の実施の形態においてはシリコン単結晶基板について例示したが、例えばシリコンカーバイド(SiC)等にも同様に適用することができる。
本発明の基板加工方法により基板を効率良く薄く形成することができることから、薄く切り出された基板は、Si基板であれば、太陽電池に応用可能であり、また、GaN系半導体デバイスなどのサファイア基板などであれば、発光ダイオード、レーザダイオードなどに応用可能であり、SiCなどであれば、SiC系パワーデバイスなどに応用可能であり、透明エレクトロニクス分野、照明分野、ハイブリッド/電気自動車分野など幅広い分野において適用可能である。
10 基板
14 内部改質層
20、21 金属板
25 接着剤
50 割断装置
52 架台
54 割断冶具
100 基板内部加工装置
110 ステージ
120 ステージ支持部
160 レーザ光源
170 集光レンズ
180 収差調整板

Claims (10)

  1. 単結晶シリコン基板を加工する基板加工方法であって、
    基板上に非接触にレーザ集光手段を配置する工程と、
    前記レーザ集光手段により、前記基板の表面にレーザ光を照射し、前記基板内部にレーザ光を集光する工程と、
    前記レーザ集光手段と前記基板を相対的に移動させて、前記基板の表面から所定の深さの範囲において前記基板の表面に水平方向に形成した、多結晶シリコンの多結晶粒を有してなる改質層を形成する工程と、
    前記基板を前記改質層近傍において割断する工程と
    を有し、前記基板を割断する改質層近傍は、前記基板内において内部応力が極大を有する改質層の上部近傍である基板加工方法。
  2. 前記改質層は、前記基板の深さ方向に前記多結晶粒の寸法の非対称な分布を有することを特徴とする請求項1記載の基板加工方法。
  3. 前記改質層において、前記多結晶粒の寸法は、150μm以下であることを特徴とする請求項1記載の基板加工方法。
  4. 前記基板の表面を接着剤で金属板に接着する工程をさらに有することを特徴とする請求項1記載の基板加工方法。
  5. 前記接着剤は、アクリル樹脂組成物を含み、水に浸漬することにより被接着物より剥離可能であることを特徴とする請求項4記載の基板加工方法。
  6. 前記水は、80℃以上100℃未満の温水であることを特徴とする請求項5記載の基板加工方法。
  7. 前記基板を割断する工程は、前記基板の表面に接着剤で接着した金属板に力を印加することにより当該基板を割断することを特徴とする請求項5又は6に記載の基板加工方法。
  8. 前記金属板に接着剤で接着された前記割断された基板を水中で剥離することを特徴とする請求項7記載の基板加工方法。
  9. 前記照射されるレーザ光は、前記基板の深さ500μmにおいて透過率10%以上の波長を有し、パルス幅50ns以上であることを特徴とする請求項1記載の基板加工方法。
  10. 前記基板の表面は、鏡面仕上げであることを特徴とする請求項1記載の基板加工方法。
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