JP5929048B2 - 熱間圧延方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄鋼の熱間圧延方法に関する。
圧延機では、圧延材の非対称性や圧延ロールの軸線の交叉などにより、圧延ロールに圧延材幅方向のスラスト力(幅方向スラスト力)が発生する。このスラスト力はキーパープレートを介してハウジングで支えられる(例えば、特許文献1参照)。
このスラスト力は設備保全上好ましくなく、これの軽減のために、従来はワークロール及びバックアップロールのうち少なくとも1つのロールに潤滑剤を吹付け又は塗布するような方法により低減していた(例えば、特許文献2参照)。
また、ペアクロスミルにおいては、ワークロールとバックアップロールとの間に生じるスラスト力を低減するために、バックアップロール同士のクロス角をワークロール同士のクロス角より小さく設定する方法がある。(例えば、特開文献3参照)。
特開昭57−202909号公報 特開平03−234305号公報 特開昭58−157504号公報
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、設備保全上好ましくないスラスト力の軽減には有効であるが、圧延中に生じる非対称性によるスラスト力を減じることができないという問題点があった。非対称性の原因としては、上下ワークロール軸線の交差点すなわちクロスポイントの幾何学的な正規位置からのずれや、圧延材幅方向の圧延荷重差すなわち差荷重の発生が挙げられる。スラスト力起因の差荷重が発生することにより圧延ロールに偏摩耗が生じる問題点もある。
また、特許文献3に記載の方法では、ペアクロスミルは一般にワークロールとバックアップロールの軸線は圧延方向前後にオフセットしており、バックアップロールのクロス角を小さくすることでスラスト力は低減できるものの、バックアップロールに接触しているワークロールの位置が正規の位置と変わり、圧延材のクラウン制御、形状、通板性に悪影響を及ぼす。一般にペアクロスミルは他ミルと比較して、バックアップロールとワークロールの位置は厳格に管理されるため、バックアップロールのみクロス角を変更することは操業上好ましくない。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、鉄鋼の熱間圧延を行うに際して、圧延ロールに生じる幅方向スラスト力を適切に打ち消すことができる熱間圧延方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
[1]鉄鋼の熱間圧延において、仕上圧延機または/および粗圧延機のバックアップロールの幅方向スラスト力を測定して、バックアップロールとワークロールをクロスさせて当該スラスト力を打ち消すことを特徴とする熱間圧延方法。
[2]鉄鋼の熱間圧延において、仕上圧延機または/および粗圧延機のワークロールの幅方向スラスト力を測定して、バックアップロールとワークロールをクロスさせて上下ワークロールのスラスト力の絶対値を等しくすることを特徴とする熱間圧延方法。
[3]歪ゲージをチョックの応力集中部に貼り付けて幅方向スラスト力を測定することを特徴とする前記[1]または[2]に記載の熱間圧延方法。
[4]幅方向スラスト力をシフトシリンダ圧から測定することを特徴とする前記[1]または[2]に記載の熱間圧延方法。
[5]測定した幅方向スラスト力を用いて、下記(1)、(2)式からスキュー角θ’を求め、このスキュー角θ’が0になる様に、バックアップロールとワークロールをクロスさせることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の熱間圧延方法。
Figure 0005929048
本発明においては、鉄鋼の熱間圧延を行うに際して、圧延ロールに生じる幅方向スラスト力を適切に打ち消すことができる。
本発明の一実施形態における圧延ロールのスラスト力測定方法(歪ゲージ)を示す図である。 本発明の一実施形態における圧延ロールのスラスト力測定方法(シリンダ圧)を示す図である。 ペアクロスミルにおいてロールに作用するスラスト力を示す図である。 ペアクロスミルにおける上下のワークロールのクロス角を示す図である。 本発明の一実施形態におけるスキュー角の是正方法を示す図である。 本発明の実施例における測定結果を示す図である。 本発明の実施例における測定結果を示す図である。
本発明の一実施形態について述べる。
まず、本発明の一実施形態における基本的な考え方を説明する。
一般の圧延機においては、圧延材幅方向にバックアップロールおよびワークロールを幅方向に移動することで組み換えを行うため、ハウジングにロードセルを設置して幅方向スラスト力(以下、単に「スラスト力」という)を測定することが難しい。
そこで、本発明の一実施形態においては、仕上圧延機または/および粗圧延機の圧延ロール(バックアップロールまたはワークロール)について、そのチョックに歪ゲージを貼り付けるか、または、シフトミルの場合はシフトシリンダ圧を測定することで、スラスト力を測定できるようにする。
その際に、一般に、クロスミルにおいてはクロス角1度程度ではワークロールに作用するスラスト力は小さく、特に、ペアクロスミルにおいてはワークロールとバックアップロールはほぼ平行であり、バックアップロールに作用するスラスト力は0が理想であり、わずかな値のスラスト力を測る必要から、応力集中部に歪ゲージを貼り付けるのが好ましい。
そして、この実施形態においては、ワークロールまたはバックアップロールのスラスト力測定値を用いて、双方の軸線の平行ずれ量と方向を算出し、チョック位置決め装置の位置調整シムを増減させて、双方を適切にクロスさせることでスラスト力を打ち消すようにする。
このようにして、ロールに作用するスラスト力を打ち消すことができるため、設備保全上有効である。バックアップロールのスラストベアリングは常用荷重の1/4程度で焼損した例もあることから、安定した圧延を継続するには、バックアップロールのスラスト力は小さいほど好ましい。
また、上下ワークロールのスラスト力の絶対値を等しくし、双方のワークロールから圧延材に及ぼす幅方向の力の和を0とすることができて、圧延材の蛇行量が減少し、操業上好ましい。
また、上下ワークロールのスラスト力を比較することで、上下ワークロール軸線の交差点すなわちクロスポイントの幾何学的な正規位置からのずれを算出し、それに基づいて上または下のバックアップロールを適切にクロスすることで、絶対値を等しくして圧延材の蛇行を軽減する効果もある。
また、ワークロールまたはバックアップロールのスラスト力測定値を用いて、双方の軸線の平行ずれ量と方向を算出し、両者を適切にクロスさせることによってスラスト力を打ち消すことで、双方の摩耗量が減り、交換周期を延長できるため、圧延機の稼働率を上げることができる。
また、スラスト力測定値からワークロールとバックアップロールの軸線を平行にすることができて、レベリング誤差が減少し、圧延材の蛇行が防止できて操業上好ましい。
次に、本発明の一実施形態の詳細を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態において、ペアクロスミルの圧延ロール(ワークロール、バックアップロール)に対して、歪ゲージを用いてスラスト力を測定している状態を示すものである。ここで、図1(a)は斜視図、図1(b)は上面図である。圧延ロール1はチョック2により拘束され、チョック2をハウジングに幅方向に動かないよう固定すると、スラスト力Fによりチョック2に曲げが生じ、歪ゲージ3、歪ゲージ測定ケーブル4、歪測定装置5により歪が測定される。測定した歪を用いて応力計算によってスラスト力Fが求められる。
図2は、本発明の一実施形態において、シフトミルの圧延ロール(ワークロール、バックアップロール)に対して、シフトシリンダの背圧を用いてスラスト力を測定している状態を示すものである。圧延ロール6にスラスト力Fが作用することで、シフトシリンダ7に背圧が生じ、それを用いてスラスト力Fを求めることができる。
図3は、ペアクロスミルにおける圧延ロールに作用するスラスト力を示すものである。圧延材8と上ワークロール9と下ワークロール10は図4のようにクロス角θをなし、速度方向差があるため、それぞれスラスト力F、Fが同じ大きさで互いに逆向きに作用する。また、図5に示すように、ワークロールとバックアップロールの軸線にずれがあると、そのスキュー角(ワークロールとバックアップロールとのクロス角)がθ’をなす場合、速度方向差があるためスラスト力F、Fが生じる。ロールのクロスポイントのずれがあると幅方向に荷重差が生じ、F11とF12は異なる値となる。
図5は、スラスト力の測定結果を用いたスキュー角θ’の是正方法を示すものである。スキュー角θ’によりバックアップロールにスラスト力が生じ、歪ゲージによりチョックの変形を測定し、スラスト力に換算する。さらに、下記の式(1)、(2)によりスキュー角θ’を求める。スキュー角θ’が小さくなるように、チョックと接するチョック位置決め装置13の位置調整シム14を増減させる。すると、バックアップロールのスラスト力とクロスポイントのずれは小さくなる。したがって、スラスト力および差荷重が小さくなり、設備保全上好ましく、圧延中の非対称性が小さく、操業上好ましい。
Figure 0005929048
図4は、上下のワークロールのクロスポイントを示すものである。クロスポイント15は上ワークロールと下ワークロールの軸線の交点であり、圧延材の幅方向中心を通るようにチョック位置決め装置16の位置調整シム17を増減することで、蛇行を防ぐ効果がある。クロスポイント位置はスラスト力測定値F、Fが等しくなるように決定すればよい。スラスト力測定値F、F(それぞれ逆方向の力)の和が小さくなるように設定すると(スラスト力の絶対値を等しくなるように設定すると)、圧延材に作用するスラスト力が小さくなり、圧延材を蛇行させようとする力が小さくなり、操業上好ましい。
本発明の実施例として、ワークロール(直径φ575mm×胴長2030mm)、バックアップロール(直径φ1630mm×胴長2030mm)のペアクロスミルを対象に、板厚3.1mm×板幅900mmの熱延鋼板を圧延し、その圧延ロール(ワークロール、バックアップロール)に作用するスラスト力を調査した。
その際に、上記の本発明の実施形態に基づいて、ワークロールとバックアップロールを適切にクロスさせた場合を本発明例とし、従来通りの場合を従来例とした。
その結果を図6、図7に示す。図6は下バックアップロールのスラスト係数(スラスト力/圧延荷重)を従来例と本発明例とで比較したものであり、本発明例として、バクアップロールのスラスト力をチョックに歪みゲージを貼り付けて測定し、バックアップロールのスラスト力をほぼ0にするようにバックアップロールとワークロールのクロス角を調整して圧延したものであり、図7は下ワークロールのスラスト係数(スラスト力/圧延荷重)を本発明例として、ワークロールのスラスト力をシフトシリンダの背圧から測定し、上下ワークロールのスラスト力の絶対値を等しくするように、バックアップロールとワークロールのクロス角を調整しつつ圧延したものであり、従来のクロス角を調整しない例とで比較したものである。
図6に示すように、本発明例においては、従来例に比べてバックアップロールのスラスト係数が0に近づいており(すなわち、スラスト係数の絶対値が小さくなっており)、バックアップロールのスラスト力の低減効果が示されている。また、図7に示すように、本発明例においては、従来例に比べて上下ワークロールのスラスト係数の差が0に近づいており、上下ワークロールのスラスト力がほぼ等しくなって、圧延材の蛇行や差荷重によるロール偏摩耗が生じにくく安定した圧延ができる。
1 圧延ロール
2 チョック
3 歪ゲージ
4 歪ゲージ測定ケーブル
5 歪測定装置
6 圧延ロール
7 シフトシリンダ
8 圧延材
9 上ワークロール
10 下ワークロール
11 上バックアップロール
12 下バックアップロール
13 バックアップロールチョック位置決め装置
14 位置調整シム
15 クロスポイント
16 ワークロールチョック位置決め装置
17 位置調整シム

Claims (4)

  1. 鉄鋼の熱間圧延において、仕上圧延機または/および粗圧延機のバックアップロールの幅方向スラスト力を測定して、バックアップロールとワークロールをクロスさせて当該スラスト力を打ち消すとともに、測定した幅方向スラスト力を用いて、下記(1)、(2)式からスキュー角θ’を求め、このスキュー角θ’が0になる様に、バックアップロールとワークロールをクロスさせることを特徴とする熱間圧延方法。
    Figure 0005929048
  2. 鉄鋼の熱間圧延において、仕上圧延機または/および粗圧延機のワークロールの幅方向スラスト力を測定して、バックアップロールとワークロールをクロスさせて上下ワークロールのスラスト力の絶対値を等しくするとともに、測定した幅方向スラスト力を用いて、下記(1)、(2)式からスキュー角θ’を求め、このスキュー角θ’が0になる様に、バックアップロールとワークロールをクロスさせることを特徴とする熱間圧延方法。
    Figure 0005929048
  3. 歪ゲージをチョックの応力集中部に貼り付けて幅方向スラスト力を測定することを特徴とする請求項1または2に記載の熱間圧延方法。
  4. 幅方向スラスト力をシフトシリンダ圧から測定することを特徴とする請求項1または2に記載の熱間圧延方法。
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