JP5923360B2 - 乳酸菌培養物およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、乳酸菌を培養して得られる乳酸菌培養物およびその製造方法に関する。
乳酸菌の培養は、種々の態様で行われており、乳酸菌製剤の製造や発酵乳、乳酸菌飲料、チーズなどの製造のために獣乳を培地として行われる場合が最も多い。しかしながら、一般に乳酸菌は、その種類によって栄養の要求性が異なるため、獣乳のみからなる培地ではあまり増殖せず、比較的増殖活性に優れた菌株であっても、獣乳のみからなる培地では、発酵乳や乳酸菌飲料等の製造に当たって十分な酸度の発酵物を得るために、数日間の培養を行わなければならないとされている。
ところが、長時間にわたる乳酸菌の培養は、生菌数の低下を招く原因となることから、種々の生理効果を期待する生菌数を重視した乳酸菌飲料や発酵乳等の製造のための培養としては必ずしも好ましい方法とはいえなかった。
また、乳酸菌を培養して得られる発酵物の風味を問題とする各種飲食品の製造のためには、増殖性の観点のみから使用菌株を選定することはできないため、増殖性が悪くても風味の良い発酵物を与える乳酸菌を選択、使用する場合もある。
そこで、乳酸菌の培養においては、培養効率を向上させる目的で種々の増殖促進物質を培地に添加しておくことが常法であり、よく知られている。一般に、増殖促進物質として有効とされているものを例示すれば、クロレラエキス、鉄塩、ビタミン類、アミノ酸やペプチドを含有するタンパク分解物、酵母エキスなどを挙げることができる。
本出願人も、乳酸菌の培養において増殖性や生残性を高めるために甜茶エキス等を添加することを報告している(特許文献1)。
しかしながら、甜茶エキスを添加した発酵乳等の製品は、乳酸菌の増殖性や生残性を高めることはできたものの、甜茶由来の苦みがあり、風味的に問題があった。
国際公開WO2006/126476号
従って、本発明は、甜茶エキスの、乳細菌の培養における増殖性や生残性を高める効果を維持しつつ、風味を改善する技術を提供することを課題とした。
本発明は、甜茶エキスに無機塩を添加したものを電気透析し、濃縮液として得られる甜茶エッセンスを含有する培地で、乳酸菌を培養して得られることを特徴とする乳酸菌培養物である。
また、本発明は培地で乳酸菌を培養して得られる乳酸菌培養物の製造において、甜茶エキスに無機塩を添加したものを電気透析し、濃縮液として得られる甜茶エッセンスを任意の段階で培地に配合することを特徴とする乳酸菌培養物の製造方法である。
更に、本発明は培地に、甜茶エキスに無機塩を添加したものを電気透析し、濃縮液として得られる甜茶エッセンスを配合し、乳酸菌で培養することを特徴とする乳酸菌の増殖促進方法である。
本発明の乳酸菌培養物は、乳酸菌の培養の際に甜茶エキスに無機塩を添加したものを電気透析し、濃縮液として得られる甜茶エッセンスを添加しているため乳酸菌の増殖性や生残性が高まっているので、生菌数が多く、また、それが維持されると共に、甜茶由来の苦みがなく、風味良好なものである。
従って、本発明の乳酸菌培養物は、風味上の問題がなく、各種発酵乳食品に利用することができる。そして、この発酵乳食品は、保存時にも風味劣化や生菌数の低下が少なく有用性が高いものであり、健康の増進に役立つ。
本発明の乳酸菌醗酵物は、甜茶エキスに無機塩を添加したものを電気透析し、濃縮液として得られる甜茶エッセンスを含有する培地で、乳酸菌を培養して得られる。
上記乳酸菌発酵物を得る際に用いられる、甜茶エキスに無機塩を添加したものを電気透析し、濃縮液として得られる甜茶エッセンスは、次のようにして得られる。まず、バラ科木イチゴ属の甜茶(学名:Rubus suavissimus S. Lee(Rosaceae))の葉、茎、好ましくは葉を、そのままあるいは必要に応じて洗浄、脱皮、乾燥、破砕等の処理を施した後、溶媒で抽出して甜茶エキスを得る。
上記甜茶エキスの製造に使用される溶媒は、特に限定されないが、例えば、水、エタノール等の炭素数1〜5の低級アルコール、酢酸エチル、グリセリン、プロピレングリコール等の有機溶媒等が挙げられ、これらは1種単独でも2種以上を混合してもよい。これらの溶媒の中でも特に水または水−低級アルコール等の水性溶媒が好ましい。
また、上記溶媒を使用した甜茶エキスの抽出方法は、特に限定されないが、例えば、酸抽出法が好ましい。また、この酸抽出は、pH4.0以下、好ましくはpH3.0〜4.0の酸性条件下で行うことがより好ましい。この酸抽出を行う際に、溶媒のpHを調整するために使用される酸成分としては、酸性のものであれば特に限定されることなく使用することができるが、好ましいものとして、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、乳酸、酢酸等の有機酸を挙げることができる。
更に、上記溶媒を使用した甜茶エキスの抽出条件は、特に限定されないが、例えば、0℃以上、100℃以下の温度、より好ましくは10℃以上、40℃以下の温度で30〜60分間程度抽出処理を行うことが好ましい。
このようにして得られる甜茶エキスは、必要により、ろ過や遠心分離等を行った後、更に無機塩を添加し、電気透析を施す。
甜茶エキスに添加される無機塩としては、無機酸と無機塩基からなる塩であれば特に限定されないが、例えば、塩化カリウム等のカリウム塩、塩化ナトリウム等のナトリウム塩、塩化カルシウム等のカルシウム塩、塩化マグネシウム等のマグネシウム塩から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。これらの無機塩の中でもマグネシウム塩が好ましく、塩化マグネシウムがより好ましい。また、無機塩の添加量は、特に限定されないが無水物換算で0.01〜0.5mol/Lが好ましく、0.02〜0.2mol/Lがより好ましい。なお、これらの無機塩は水和物でも無水物でもよい。
また、電気透析に使用される電気透析処理装置としては、例えば、陰極と陽極の間が複数の陽イオン交換膜と陰イオン交換膜により交互に仕切られ、陰極室、陽極室、複数の脱塩室および複数の濃縮室を備えるもの等が挙げられる。このような電気透析処理装置では、イオン性の物質が濃縮された液(濃縮液)と、イオン性の物質が除去された液(脱塩液)が得られる。すなわち、陽極側にある陽イオン交換膜と陰極側にある陰イオン交換膜で仕切られた部分が濃縮室であり、濃縮室に還流している液体が濃縮液である。そして陽極側にある陰イオン交換膜と陰極側にある陽イオン交換膜とで仕切られた部分が脱塩室であり、脱塩室に還流している液体が脱塩液である。電気透析処理装置は、アシライザー(株式会社アストム)等の名称で市販もされているので、これらを利用することもできる。
上記甜茶エッセンスは、電気透析装置の脱塩室に無機塩を添加した甜茶エキスを還流し、濃縮室に水等を還流して電気透析処理を行い、濃縮液を回収することにより得ることができる。その電気透析の条件は特に制限されるものではないが、例えば、濃縮室に甜茶エキスの5〜50質量%(以下、単に「%」という)相当量、好ましくは10〜30%相当量の水を還流して陰極と陽極の間に10〜200Vの電圧、好ましくは50〜100Vの電圧をかけ、10〜200A、好ましくは50〜100Aの電流を通じて、脱塩室の電気伝導度が平衡(2ミリジーメンス毎センチメートル(mS/cm))となるまで電気透析処理をし、濃縮液を回収することにより得る方法を挙げることができる。濃縮室に還流させる液体は、水以外にも例えば、食塩水、クエン酸水等の電解質溶液も使用することができる。
上記のようにして得られる甜茶エッセンスは電気透析されたそのままの状態で使用しても、また、得られた甜茶エッセンスを限外濾過、遠心分離等の手段により、精製・濃縮した濃縮物、あるいは、これを更に噴霧乾燥や凍結乾燥等の手段により乾燥させた粉末状で使用してもよい。
上記甜茶エッセンスを乳酸菌が生育可能な培地に添加するにあたっての添加量は、特に制限されないが、例えば、Brix.12の甜茶エッセンスとして培地中の濃度で0.01〜1.0%、好ましくは0.01〜0.5%、より好ましくは0.02〜0.2%である。なお、Brixは、例えば、RX−7000α(株式会社アタゴ)等のデジタル屈折計により測定した値である。
また、上記甜茶エッセンスの培地への添加時期は、乳酸菌を発酵する前であることが好ましいが、これに限らず、乳酸菌の発酵の途中で加えても、また乳酸菌の発酵の終了後に加えてもよい。また、複数回に分けて加えることも可能である。特に、上記甜茶エッセンスを乳酸菌の発酵前に添加すると、培養終了時の菌数と菌の生残性とを高い状態で維持することができるため好ましい。
更に、上記甜茶エッセンスを添加する培地としては、牛乳、山羊乳、馬乳、羊乳等の生乳や、脱脂粉乳、全粉乳、生クリーム等の乳製品等からなる獣乳培地や、豆乳等の植物由来の液状乳、各種合成培地を挙げることができる。そして、この培地は、通常の乳酸菌培地に使用される成分を添加したものであってもよい。このような成分としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類や、各種ペプチド、アミノ酸類、カルシウム、マグネシウム等の塩類が挙げられる。
なお、上記培地には、オレイン酸類を添加しても良い。このようなオレイン酸類としては、オレイン酸や、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等のオレイン酸の塩、グリセリンオレイン酸エステル、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル等のオレイン酸エステル等のオレイン酸の誘導体等が挙げられる。これらオレイン酸類はオレイン酸に換算した場合の濃度として概ね培地中に5〜50ppm、好ましくは5〜25ppmとなるように添加すればよい。
本発明の乳酸菌発酵物を得るために、培養される乳酸菌としては、通常、食品製造に使用される乳酸菌であれば特に限定されず、例えば、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・クレモリス(Lactobacillus cremoris)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ユーグルティ(Lactobacillus yoghurti)、ラクトバチルス・デルブルッキィー サブスピーシーズ.ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトバチルス・デルブルッキィー サブスピーシーズ.デルブルッキィー(Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)等のラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)等のストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.ラクチス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ラクチスサブスピーシーズ.クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)、ラクトコッカス・プランタラム(Lactococcus plantarum)、ラクトコッカス・ラフィノラクチス(Lactococcus raffinolactis)等のラクトコッカス属細菌、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)等のエンテロコッカス属細菌を挙げることができる。これらの乳酸菌の中でもラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス属細菌およびラクトコッカス属細菌からなる群より選ばれた乳酸菌の1種以上が好ましく、これらの中でもラクトバチルス・カゼイまたはラクトバチルス・ガセリが好ましく、特にラクトバチルス・カゼイYIT9029(FERM BP−1366、受託日:昭和56年1月12日、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305-8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6))が好ましい。なお、本発明において乳酸菌とは、通性嫌気性菌のものをいい、偏性嫌気性菌であるビフィドバクテリウム属細菌は含まない。
本発明の乳酸菌発酵物を得るための乳酸菌の培養条件は特に限定されないが、例えば、培地に乳酸菌を、培地中の菌数が1.0×10〜1.0×10cfu/ml程度となるように接種し、これを30〜40℃程度の温度で1〜7日間程度培養する条件が挙げられる。また、このときの培養条件としては、静置、攪拌、振盪、通気等から用いる乳酸菌の培養に適した方法を適宜選択して行えばよい。
斯くして得られる乳酸菌発酵物は、生菌数が多く、また、それが維持されると共に、甜茶由来の苦みがなく、風味良好なものである。そしてこの乳酸菌発酵物は、このもの単独で、あるいは通常発酵乳食品に添加することが認められている他の副素材と混合することにより、発酵乳食品とすることができる。
ここで、発酵乳食品とは、発酵豆乳若しくは乳等省令により定められている発酵乳、乳製品乳酸菌飲料等の飲料やハードヨーグルト、ソフトヨーグルト、プレーンヨーグルト、更にはケフィア、チーズ等も包含するものである。また、本発明の発酵乳食品には、種々の乳酸菌を利用した飲食品、例えば、プレーンタイプ、フレーバードタイプ、フルーツタイプ、甘味タイプ、ソフトタイプ、ドリンクタイプ、固形(ハード)タイプ、フローズンタイプ等の発酵乳、乳酸菌飲料、ケフィア、チーズ等が含まれる。
これらの発酵乳食品は、上記した乳酸菌発酵物に必要に応じて、シロップ等の甘味料のほか、それ以外の各種食品素材、例えば、各種糖質、増粘剤、乳化剤、各種ビタミン剤等の任意成分を配合することにより得られる。これらの食品素材として具体的なものは、ショ糖、グルコース、フルクトース、パラチノース、トレハロース、ラクトース、キシロース、麦芽糖等の糖質、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット、還元水飴、還元麦芽糖水飴等の糖アルコール、アスパルテーム、ソーマチン、スクラロース、アセスルファムK、ステビア等の高甘味度甘味料、寒天、ゼラチン、カラギーナン、グァーガム、キサンタンガム、ペクチン、ローカストビーンガム、ジェランガム、カルボキシメチルセルロース、大豆多糖類、アルギン酸プロピレングリコール等の各種増粘(安定)剤、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤、クリーム、バター、サワークリームなどの乳脂肪、クエン酸、乳酸、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸等の酸味料、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンE類等の各種ビタミン類、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガン等のミネラル分、ヨーグルト系、ベリー系、オレンジ系、花梨系、シソ系、シトラス系、アップル系、ミント系、グレープ系、アプリコット系、ペア、カスタードクリーム、ピーチ、メロン、バナナ、トロピカル系、ハーブ系、紅茶、コーヒー系等のフレーバー類を挙げることができる。
斯くして得られる発酵乳食品は風味良好なものであり、しかも保存時にも風味劣化や生菌数の低下が少なく有用性が高いものであり、健康の増進に役立つ。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
参 考 例 1
甜茶エキスの製造:
甜茶葉に粉砕等の処理を施した後、甜茶葉の15倍量の水と甜茶葉の5%相当量のクエン酸を添加してpHを3.8に調整し、20℃で60分間の抽出を行った。更に、得られた抽出液をエバポレーターで5倍濃縮し、ブリックス(Brix.)13の甜茶エキスを得た。
製 造 例 1
甜茶エッセンスの製造(1):
上記の20℃、60分間の抽出後に得た甜茶エキスに、0.05mol/Lの濃度となるように塩化マグネシウム六水和物を添加した。次に、これを電気透析装置(電気透析膜:AC220−50、製品名:マイクロアシライザーS−3、装置メーカー:株式会社アストム社)の脱塩室に入れ、濃縮室にエキスの17%に相当する水を入れて、脱塩室の電気伝導度が平衡になるまで、具体的には電気伝導度が2ミリジーメンス毎センチメートル(mS/cm)となるまで電気透析処理し、濃縮液を回収した。更に、この濃縮液をエバポレーターで5倍に濃縮し、ブリックス12の甜茶エッセンス1を得た。
実 施 例 1
培養物の製造(1):
10%脱脂粉乳溶液を基本培地とし、これに製造例1で調製した甜茶エッセンス1を、0.2%添加し、100℃で15分間加熱殺菌して培養培地を調製した。これらの培地にラクトバチルス・カゼイ(YIT9029)のスターターを0.1%接種して(初発菌数:1.5×10cfu/ml)37℃で24時間培養を行った後に10℃以下まで冷却し、培養物を得た。また、比較のため、基本培地に、甜茶エッセンス1に代えて甜茶エキスを0.2%添加した培地で上記と同様に製造した培養物も得た。
培養物のpHをpHメーター(HORIBA F−52)を用いて測定し、乳酸菌数をBCP培地(栄研化学株式会社製)を用いて測定した。また、培養物の酸度(培養物9gをとり、その中の有機酸を0.1N苛性ソーダでpH8.5となるまで滴定したときの滴定値:単位ml)を測定した。更に、得られた乳製品の風味を下記評価基準により専門パネル3名で評価した結果を表1に示した。
<風味評価基準>
評点 内容
5 : 苦みを全く感じない
4 : 苦みをほとんど感じない
3 : 苦みをやや感じる
2 : 苦みを感じる
1 : 苦みを強く感じる
Figure 0005923360
表1から明らかなように甜茶エキスまたは甜茶エッセンス1を添加した乳製品では、基本培地のみの乳製品に比べて培養物のpHが低くなり、高い生菌数が得られることが認められた。また、甜茶エッセンス1は甜茶エキスと比べて、pHおよび生菌数がほぼ同等であるものの、風味はかなり良好であることが認められた。
製 造 例 2
甜茶エッセンスの製造(2):
製造例1において、塩化マグネシウム六水和物に代えて塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムまたはクエン酸三カリウムを同量用いる以外は同様にして甜茶エッセンス2〜5を製造した。
実 施 例 2
培養物の製造(2):
実施例1において、甜茶エッセンス1に代えて製造例2で製造した甜茶エッセンス2〜5を同量用いる以外は同様にして培養物を得た(初発菌数:1.5×10cfu/ml)。これらの培養物について、実施例1と同様にして培養物のpH、酸度、生菌数を測定し、風味を評価した。これらの結果を表2に示した。
Figure 0005923360
表2から明らかなように塩化マグネシウムを添加して得た甜茶エッセンスは他の塩を添加して得た甜茶エッセンスよりも増殖促進効果に優れていることが認められた。また、有機塩であるクエン酸三カリウムには乳酸菌の増殖促進効果はわずかしか認められなかった。
製 造 例 3
甜茶エッセンスの製造(3):
製造例1において、塩化マグネシウム0.05mol/Lに代えて、塩化マグネシウムを0.01、0.02、0.1、0.2または0.5mol/L用いる以外は同様にして甜茶エッセンス6〜10を製造した。
実 施 例 3
培養物の製造(3):
実施例1において、甜茶エッセンス1に代えて製造で製造した甜茶エッセンス6〜10を同量用いる以外は同様にして培養物を得た(初発菌数:1.5×10cfu/ml)。これらの培養物について、実施例1と同様にして培養物のpH、酸度、生菌数を測定し、風味を評価した。これらの結果を表3に示した。

Figure 0005923360
表3から明らかなように、乳酸菌に対する増殖促進効果は、甜茶エキスに塩化マグネシウムを添加して電気透析し、濃縮液として得られる甜茶エッセンス、特に塩化マグネシウムを0.02%以上添加した甜茶エッセンスを用いることで顕著となる傾向が認められた。また、塩化マグネシウムを添加する場合であっても0.2%以下であれば風味に悪影響を及ぼさないことが認められた。
実 施 例 4
培養物の製造(4):
実施例1において、甜茶エッセンス1の添加量を0.01、0.02、0.05、0.1、0.5%とする以外は同様にして培養物を得た(初発菌数:1.5×10cfu/ml)。これらの培養物について、実施例2と同様にして培養物のpH、酸度、生菌数を測定し、風味を評価した。これらの結果を表4に示した。なお、表4の培養培地5は実施例1の甜茶エッセンス1を添加した培地と同一である。
Figure 0005923360
表4から明らかなように、甜茶エッセンスを添加することにより、乳製品の風味にはほとんど影響を及ぼすこともなく、乳酸菌の増殖促進効果が認められた。特に、甜茶エッセンスを0.02〜0.2%添加することで、高い生菌数と良好な風味が得られることがわかった。
実 施 例 5
培養物の製造(5):
乳酸菌としてラクトバチルス・カゼイ(YIT9029)またはラクトバチルス・ガセリ(YIT0192)を用い、基本培地と、甜茶エッセンスを0.2%含有する培地(培養培地5)を用いて実施例1と同様にして培養物を得た(初発菌数:ラクトバチルス・カゼイ1.5×10cfu/ml、ラクトバチルス・ガセリ4.5×10cfu/ml)。これらの培養物について、実施例1と同様にして培養物のpH、酸度、生菌数を測定し、風味を評価した。これらの結果を表5に示した。
Figure 0005923360
表5から明らかなように、甜茶エッセンスを添加することにより、ラクトバチルス・ガセリのような基本培地ではあまり増殖しない乳酸菌についても増殖促進効果が認められた。
実 施 例 6
培養物の製造(6):
4%のぶどう糖と3%の果糖を含む15%脱脂粉乳を基本培地とし、これに製造例1で調製した甜茶エッセンス1を0.2%添加し、100℃で60分間加熱殺菌して培養培地を調製した。これらの培地にラクトバチルス・カゼイ(YIT9029)のスターターを0.5%接種して(初発菌数:7.6×10cfu/ml)37℃でpH3.7となるまで培養した後、10℃以下まで冷却し、培養物を得た。これらの培養物について、培養に要した時間と、実施例1と同様にして培養物の生菌数を測定した。これらの結果を表6に示した。
Figure 0005923360
表6から明らかなように、甜茶エッセンスを培地に添加することによりラクトバチルス・カゼイの培養に要する時間が3分の2に短縮できた。
実 施 例 7
乳酸菌飲料の製造:
実施例6で製造した培養物を15MPaで均質化したもの25重量部に、30%のぶどう糖果糖液糖、25%の還元水あめ、0.3%のビタミンC、0.3%の大豆多糖類および0.03%のスクラロースを含む水溶液を100℃で10分間殺菌したものを75重量部加え、ヨーグルト香料((株)ヤクルトマテリアル製)を0.1%添加して乳酸菌飲料を製造した。この乳酸菌飲料を65mL容のポリスチレン製容器に充填し、得られた乳酸菌飲料の製造直後(製品化時)と、10℃で21日間保存した後の生菌数を実施例1と同様に測定し、風味を評価した。この結果を表7に示した。また、この乳酸菌飲料の10℃で21日間保存後の生残率を以下の式により求めた。
Figure 0005923360
[数1]
生残率(%)=10℃、21日間保存後の生菌数/製品化時の生菌数×100
表7から明らかなように、甜茶エッセンスを含有する培地で製造された乳酸菌飲料は、これを含まない培地で製造された乳酸菌飲料と比べて、保存後の生菌数の減少が抑制されることが示された。
本発明の乳酸菌培養物は、健康の増進に役立つ発酵乳飲食品等に利用できる。

以 上

Claims (8)

  1. 培地で乳酸菌(ただし、ビフィドバクテリウム属細菌は除く)を培養して得られる乳酸菌培養物の製造において、甜茶エキスに無機塩を添加したものを電気透析し、濃縮液として得られる甜茶エッセンスを任意の段階で培地に配合することを特徴とする乳酸菌培養物の製造方法。
  2. 無機塩が、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩から選ばれる1種または2種以上である請求項1記載の乳酸菌培養物の製造方法。
  3. 無機塩が、マグネシウム塩である請求項1記載の乳酸菌培養物の製造方法。
  4. 無機塩の添加量が、0.02〜0.2mol/Lである請求項1〜3の何れか1項に記載の乳酸菌培養物の製造方法。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載の乳酸菌培養物の製造方法で得られた乳酸菌培養物と副素材とを混合することを特徴とする発酵乳食品の製造方法。
  6. 培地に、甜茶エキスに無機塩を添加したものを電気透析し、濃縮液として得られる甜茶エッセンスを配合し、乳酸菌(ただし、ビフィドバクテリウム属細菌は除く)を培養することを特徴とする乳酸菌の増殖促進方法。
  7. 無機塩を含有する甜茶エキスの電気透析処理濃縮液と、乳酸菌(ただし、ビフィドバクテリウム属細菌は除く)を含有する乳酸菌培養物。
  8. 請求項7に記載の乳酸菌培養物を含有する発酵乳食品。
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