JP5329924B2 - 乳酸菌含有発酵食品およびその製造方法 - Google Patents

乳酸菌含有発酵食品およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ラクトバチルス属及び/又はストレプトコッカス属に属する乳酸菌を含有する発酵食品およびその製造方法に関するものである。
乳酸菌の培養は、種々の態様で行われており、乳酸菌製剤の製造や発酵乳、乳酸菌飲料、チーズなどの製造のために獣乳を培地として行われる場合が最も多い。しかしながら、一般に乳酸菌は、その種類によって栄養の要求性が異なるため、獣乳のみからなる培地ではあまり増殖せず、比較的増殖活性に優れた菌株であっても、獣乳のみからなる培地では、発酵乳や乳酸菌飲料の製造に当たって十分な酸度の発酵物を得るために、数日間の培養を行わなければならないとされている。
ところが、長時間にわたる乳酸菌の培養は、生菌数の低下を招く原因となることから、種々の生理効果を期待する生菌数を重視した乳酸菌飲料や発酵乳等の製造のための培養としては必ずしも好ましい方法とはいえなかった。
また、乳酸菌発酵物の風味を問題とする各種飲食品の製造のためには、増殖性の観点のみから使用菌株を選定することはできないため、増殖性が悪くても風味の良い発酵物を与える乳酸菌を選択、使用する場合もある。
そこで、乳酸菌の培養においては、培養効率を向上させる目的で種々の増殖促進物質を培地に添加しておくことが常法であり、よく知られている。一般に、増殖促進物質として有効とされているものを例示すれば、クロレラエキス、鉄塩、ビタミン類、アミノ酸やペプチドを含有するタンパク分解物、酵母エキスなどを挙げることができる。
また、この他にも、乳酸菌の増殖促進を目的とした技術として、近年では、酒粕の水抽出物および/またはタンパク分解酵素処理した酒粕の水抽出物を用いる方法(特許文献1)、コーヒーノキ属植物の葉から抽出された抽出液を用いる方法(特許文献2)およびカカオ豆および/またはカカオ豆の外皮であるカカオハスクの水と相溶性のある有機溶媒の抽出残渣または該残渣の水抽出物を用いる方法(特許文献3)等が報告されている。
一方で、乳酸菌の有用性あるいは有効性を保持するためには、菌の増殖を促進させるのみならず、乳酸菌発酵物中の菌の死滅を抑制し、生残性を向上させる必要がある。一般に、乳酸菌の生残性の低下は、脱脂粉乳等を用いて得られる乳酸菌発酵物を含有する低脂肪の発酵乳食品を調製する場合や乳酸発酵が進み過ぎた場合に顕著となるため、低カロリーの発酵乳食品を製造したり、pHの低い発酵乳食品を製造するときほど問題となる。このような乳酸菌の生残性の低下を防ぎ、乳酸菌発酵物中の乳酸菌数の維持を目的として使用される素材としては、クロレラ等が知られている。
しかしながら、乳酸菌発酵物やそれを含有してなる発酵乳食品のような飲食品の製造において、従来から知られている乳酸菌の増殖促進効果を目的として添加される物質、或いは乳酸菌の生残性を改善する目的で配合される物質は、十分な効果が得られるほど使用すると製品の風味そのものに影響を与えてしまう場合が多く、また、製品のコストを上昇させる原因となることもある。更に、生きた乳酸菌を多く含有する状態を維持できても、乳酸菌の活性を維持することができず、十分な生理効果が期待できなくなる場合もあった。
また、グァバ葉エキスには、血糖値上昇抑制作用、総コレステロール濃度低下作用(非特許文献1及び非特許文献2)や細菌増殖抑制作用(特許文献4)があることが知られている。
特開平5−15366号公報 特開平6−125771号公報 特開平8−196268号公報 特開2006−55038号公報 出口ヨリ子等,日本農芸化学会誌(1998),第72巻,第8号第923−931頁 出口ヨリ子等,日本食品新素材研究会誌(2000),第3巻,第1号第19−28頁
従って、本発明の目的は、生きた乳酸菌を多く含有する発酵食品及びその製造方法を提供するものである。
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討を行った結果、発酵食品の製造段階においてグァバ葉エキスを乳酸菌培養培地に添加して乳酸菌を培養することにより、乳酸菌、特にラクトバチルス属及び/又はストレプトコッカス属に属する乳酸菌の増殖活性を簡便に向上させ得ること及び製品化後のこれらの生菌数を維持し得ることを見出した。
すなわち、本発明はグァバ葉エキスと、ラクトバチルス属及び/又はストレプトコッカス属に属する乳酸菌とを含有することを特徴とする発酵食品を提供するものである。
また、本発明はラクトバチルス属及び/又はストレプトコッカス属に属する乳酸菌を含有する発酵食品の製造において、グァバ葉エキスを配合することを特徴とするラクトバチルス属及び/又はストレプトコッカス属に属する乳酸菌を含有する発酵食品の製造方法を提供するものである。
また、本発明はグァバ葉エキスを有効成分とする、ラクトバチルス属及び/又はストレプトコッカス属に属する乳酸菌の増殖促進剤を提供するものである。
また、本発明はグァバ葉エキスを配合することを特徴とするラクトバチルス属及び/又はストレプトコッカス属に属する乳酸菌の増殖促進方法を提供するものである。
また、本発明はグァバ葉エキスを有効成分とする、ラクトバチルス属及び/又はストレプトコッカス属に属する乳酸菌の生残性改善剤を提供するものである。
さらに、本発明はグァバ葉エキスを配合することを特徴とするラクトバチルス属及び/又はストレプトコッカス属に属する乳酸菌の生残性改善方法を提供するものである。
本発明の発酵食品に用いられるグァバ葉エキスは、ラクトバチルス属及び/又はストレプトコッカス属に属する乳酸菌に対して優れた増殖促進作用及び/又は生残性改善作用を有するものであるから、これらを添加・混合して得られる発酵食品は、長期に保存しても生菌数を損なうことがなく、また、健康増進に優れたものとなる。
本発明において、グァバ葉エキスとは、グァバ(バンジロウ)の葉を、水溶性溶媒で、抽出釜等の常法の抽出手段により抽出したものである。
グァバとは、学名をPsidium guajava Linn,として知られているフトモモ科に属する植物を意味する。
原料として用いるグァバ葉は、生葉又はその細断物でもよいが、有効成分の抽出効率を考慮してそれを乾燥した乾燥葉又はその細断物を使用するのが好ましい。
生葉の乾燥手段としては、天日乾燥、熱風乾燥、焙煎等が挙げられるが、風味の改善を考慮する場合には、乾燥後焙煎するのが好ましい。この焙煎条件としては、100℃以上で5〜60分間が好ましく、特に230〜260℃で10〜20分間が好ましい。
細断物の平均的な大きさとしては、適当なサイズでよいが、抽出効率や作業効率を考慮して、1〜10mmが好ましく、特に3〜5mmが好ましい。
本発明に用いる水溶性溶媒とは、水或いは親水性の有機溶媒(アルコール類、ケトン類、エステル類等)、又はこれら2種以上を混合した混合溶媒をいう。
親水性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。
この水溶性有機溶媒のうち、摂取時の安全性等を考慮して、水、アルコール類或いはこれらの混合溶媒が好ましい。このアルコール類のうちでも炭素数1〜4の低級アルコール類が好ましく、さらにエタノールが好ましい。このときの水:エタノールの配合割合は、0.1〜99.9:99.9〜0.1(V/V)が好ましく、60〜40:40〜60(V/V)がより好ましい。
また、前記水溶性溶媒は、グァバ葉の酸抽出物又はアルカリ抽出物を得るため、酸やアルカリを用いてpHを調整されたものでもよい。
酸抽出の場合、pH2.5〜5.5が好ましく、使用する酸としては、ギ酸、酢酸、硫酸、塩酸、クエン酸等が挙げられる。
アルカリ抽出の場合、pH8.0〜12.0が好ましく、使用するアルカリとしては炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム等が挙げられる。
また、抽出に用いる水溶性溶媒の使用量は、グァバ葉1質量部に対し、1〜80質量部が好ましく、抽出効率及び濃工程での作業効率を考慮して、5〜50質量部がより好ましい。
本発明におけるグァバ葉の抽出条件は、原料の状態、使用する溶媒の種類などにより異なるが、通常、常圧ないし加圧下、すなわち、約1〜2気圧の範囲で、適宜加温又は加熱して行われる。具体的な抽出条件は、原料の状態、製品等に応じて適宜変更可能であることは言うまでもない。
例えば、水抽出の場合、植物1質量部に対して5〜50質量部の水を用い、30〜100℃、1〜120分間抽出を行なうのが望ましく、更に熱水抽出の場合、50〜100℃、好ましくは60〜98℃の加熱条件下で、1〜120分、好ましくは3〜25分間抽出を行うことが望ましい。
また、例えば、酸抽出の場合、植物1質量部に対して1〜80質量部の酸性(pH2.5〜5.5)の水溶性溶媒を用い、30〜100℃、1〜120分間抽出を行なうのが望ましく、更に、pH3.0〜5.0、好ましくはpH3.0〜4.0と調整された酸の水溶液を用い、50〜100℃、好ましくは60〜98℃の加熱条件下で、1〜120分、好ましくは3〜25分間抽出を行うことが望ましい。
また、例えば、水エタノール抽出の場合、植物1質量部に対して5〜50質量部の水エタノール溶液(水0.1〜99.9:エタノール99.9〜0.1(V/V))を用い、10〜40℃、好ましくは15〜25℃の条件下で、1〜48時間抽出を行なうのが望ましく、更に水エタノール溶媒(水60〜40:エタノール40〜60(V/V))を用い、10〜40℃、好ましくは15〜25℃の条件下で、1〜48時間、好ましくは10〜24時間抽出を行うことが望ましい。
本発明に用いるグァバ葉エキスは、種々の抽出方法にて得られた各抽出物、例えば上記熱水抽出物や親水性有機溶媒による抽出物等を単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。当該抽出物は、これをそのまま使用してもよく、抽出後更に常法により抽出液を分離し、必要により不純物を除去した後使用することもできる。
また、当該抽出物を得た後、更に、適当なクロマトグラフィー処理等の精製処理等を加えて精製してもよく、当該抽出物の精製レベル、使用形態などについては特に制限はない。上記抽出方法によれば、原料のグァバ葉に存在する雑菌、例えば一般細菌、かび、酵母類等に対する殺菌処理が行えるので、得られたグァバ葉エキスは、雑菌汚染の心配が少なく、衛生的観点からみても安全性の高いものであるので好ましい。
また、一旦真空濃縮機等にかけて濃縮し、抽出溶媒を除去して使用してもよく、またフリーズ・ドライ法、熱風乾燥等を用いて、粉末化して用いてもよい。
本発明の発酵食品におけるグァバ葉エキスの使用量は、ラクトバチルス属及び/又はストレプトコッカス属に属する乳酸菌に対して増殖促進作用及び/又は生残性改善作用を発揮させると共にグァバ葉エキスの効能を発揮させるため、当該発酵食品中に、乾燥物換算として、0.01〜0.70重量%であることが好ましく、より0.02〜0.70重量%、特に0.05〜0.60重量%であることが好ましい。
特に、乳酸菌に対して優れた増殖促進作用及び/又は生残性改善作用を発揮させることを考慮して、グァバ葉エキスを乳酸菌培地中に、乾燥物換算として、0.01〜1.00重量%含有させることが好ましく、より0.01〜0.80重量%、特に0.02〜0.70重量%含有させることが好ましい。
例えば、水抽出で得られた抽出エキス(以下、「水抽出エキス」という)であれば、乾燥物換算として、乳酸菌培地中に、0.01〜0.80重量%程度含有させることが好ましく、特に好ましくは0.02〜0.70重量%含有させる。また、例えば、酸抽出で得られた抽出エキス(以下、「酸抽出エキス」という)であれば、乾燥物換算として、乳酸菌培地中に、0.01〜0.95重量%程度含有させることが好ましく、特に好ましくは0.02〜0.83重量%含有させる。
このときの乳酸菌培地への使用量は、発酵食品の風味への影響を考慮して、1.00重量%以下が好ましく、一方、十分にラクトバチルス属及び/又はストレプトコッカス属に属する乳酸菌に対する生残性改善効果及び/又は増殖促進効果が得られる点を考慮して、0.01重量%以上が好ましい。
グァバ葉エキスを添加する乳酸菌培養培地としては、牛乳、山羊乳、馬乳、羊乳等の生乳や、脱脂粉乳、全粉乳、生クリーム等の乳製品等からなる獣乳培地や各種合成培地を挙げることができる。そして、この培地は、通常の乳酸菌培地に使用される成分を添加したものであってもよい。このような成分としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類や、各種ペプチド、アミノ酸類、カルシウム、マグネシウム等の塩類が挙げられる。
本発明における、グァバ葉エキスの発酵食品の製造工程における添加時期は、特に限定されないが、乳酸菌発酵前であることが好ましいが、これに限らず、乳酸菌の発酵の途中で加えても、また乳酸菌の発酵の終了後に加えてもよい。また、複数回に分けて加えることも可能である。特に、後記実施例に示すように、グァバ葉エキスを乳酸菌の発酵前の乳酸菌培地に配合すると、グァバ葉エキスにより菌が増殖促進し、培養終了時の菌数と菌の生残性とを高い状態で維持することができるため好ましい。
本発明において、培養に用いられる乳酸菌としては、ラクトバチルス属及びストレプトコッカス属に属する乳酸菌であれば特に限定されず、例えば、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・クレモリス、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・ユーグルティ、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・デルブルッキー、ラクトバチルス・ジョンソニー、ストレプトコッカス・サーモフィルス等を挙げることができる。これらの乳酸菌の中でもラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス、ストレプトコッカス・サーモフィルスから選ばれる1種以上の乳酸菌が好ましい。
このうち、特に、ラクトバチルス・カゼイYIT9029株(受託番号:FERM BP−1366、寄託日:1987年5月18日)、ストレプトコッカス・サーモフィルスYIT2021株(受託番号:FERM BP−7537、寄託日:2001年4月5日)から選ばれる1種以上の乳酸菌が好ましい。なお、これらの菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されている。
なお、前記乳酸菌の中には、獣乳からなる培地では十分に増殖しないものも含まれており、本発明で用いるグァバ葉エキスは、このような菌の培養において、特に顕著な効果を与える。具体的に挙げれば、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・クレモリス、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス、ストレプトコッカス・サーモフィルス等の乳酸菌を培養する際に培地にグァバ葉エキスを添加すれば優れた増殖促進作用及び/又は生残性改善作用を得ることができる。
更に、本発明の発酵食品におけるグァバ葉エキスによる乳酸菌に対する生残性改善効果及び/又は増殖促進効果は、ラクトバチルス属及び/又はストレプトコッカス属に属する乳酸菌の他に複数種の微生物を含有する場合であっても得ることができる。このため、本発明の発酵食品には、前記する乳酸菌の他に、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス、ラクトコッカス・プランタラム、ラクトコッカス・ラフィノラクチス等のラクトコッカス属細菌、エンテロコッカス・フェカーリス、エンテロコッカス・フェシウム等のエンテロコッカス属細菌、ヒトの腸内フローラの主要なものとして知られるビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム、ビフィドバクテリウム・アングラータム、ヒトの腸内から分離される由来を持つビフィドバクテリウム・ガリカム、食品に利用されているビフィドバクテリウム・ラクチス、ビフィドバクテリウム・アニマリス等のビフィドバクテリウム属細菌を含有させてもよい。
また特に、本発明の発酵食品において、当該発酵食品中のラクトバチルス属及び/又はストレプトコッカス属に属する乳酸菌の菌数は、グァバ葉エキスによる乳酸菌に対する顕著な生残性改善効果及び/又は増殖促進効果が得られるので、1×107/ml以上、特に1×108/ml以上が好ましい。
本発明の発酵食品を得るための乳酸菌の培養条件は特に限定されないが、例えば、30〜40℃程度の温度で5〜24時間程度でよい。また、このときの培養条件としては、静置、攪拌、振盪、通気等から用いる乳酸菌の培養に適した方法を適宜選択して行えばよい。
このようにして得られる発酵食品は、グァバ葉エキスによって、長期間保存した場合でも、生きた乳酸菌を、その活性を低下させることなく、高濃度で含有しているものである。ここで、保存の温度帯は、室温(10〜40℃)〜チルド温度(0〜10℃)が好ましいが、特にチルド温度帯(0〜10℃)が好ましい。
そして、これと通常食品に添加することが認められている他の副素材とを混合することにより所望の発酵食品とすることができる。
本発明の発酵食品は、上記ラクトバチルス属及び/又はストレプトコッカス属に属する乳酸菌(及び必要に応じてその他の微生物)を用いた発酵食品の製造において、任意の段階でグァバ葉エキスを添加する以外は、従来より知られている乳酸菌を使用した発酵食品の製造方法に従い製造することができる。例えば、脱脂粉乳とグァバ葉エキス、甘味料、香料等を一緒に溶解、均質化した後、殺菌処理を行い、所望のラクトバチルス属及び/又はストレプトコッカス属に属する乳酸菌を接種して、容器に充填後、培養すればよい。また、脱脂粉乳溶液を殺菌処理する前または後でグァバ葉エキスを添加し、所望のラクトバチルス属及び/又はストレプトコッカス属に属する乳酸菌を接種して培養し、これを均質化処理して発酵乳ベースを得、次いで、別途調製したシロップ溶液を添加・混合し、更にフレーバー等を添加して最終製品に仕上げればよい。また、殺菌処理した脱脂粉乳溶液を、所望のラクトバチルス属及び/又はストレプトコッカス属に属する乳酸菌を接種して培養し、これを均質化処理して発酵乳ベースを得、次いで、別途調製したシロップ溶液とグァバ葉エキスとを添加・混合し、更にフレーバー等を添加して最終製品に仕上げてもよい。
ここで、発酵食品とは、乳等省令により定められている発酵乳、乳製品乳酸菌飲料等の飲料やハードヨーグルト、ソフトヨーグルト、プレーンヨーグルト、更にはケフィア、チーズ等も包含するものである。また、本発明の発酵食品には、種々の乳酸菌を利用した飲食品、例えば、プレーンタイプ、フレーバードタイプ、フルーツタイプ、甘味タイプ、ソフトタイプ、ドリンクタイプ、固形(ハード)タイプ、フローズンタイプ等の発酵乳、乳酸菌飲料、ケフィア、チーズ等が含まれる。
これらの発酵食品は、必要に応じて、シロップ等の甘味料のほか、それ以外の各種食品素材、例えば、各種糖質、増粘剤、乳化剤、各種ビタミン剤、酸化防止剤、安定化剤等の任意成分を配合することができる。これらの食品素材として具体的なものは、ショ糖、グルコース、フルクトース、パラチノース、トレハロース、ラクトース、キシロース、麦芽糖等の糖質、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット、還元水飴、還元麦芽糖水飴等の糖アルコール、アスパルテーム、ソーマチン、スクラロース、アセスルファムK、ステビア等の高甘味度甘味料、寒天、ゼラチン、カラギーナン、グァーガム、キサンタンガム、ペクチン、ローカストビーンガム、ジェランガム、カルボキシメチルセルロース、大豆多糖類、アルギン酸プロピレングリコール等の各種増粘(安定)剤、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤、クリーム、バター、サワークリームなどの乳脂肪、クエン酸、乳酸、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸等の酸味料、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンE類等の各種ビタミン類、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガン等のミネラル分、ヨーグルト系、ベリー系、オレンジ系、花梨系、シソ系、シトラス系、アップル系、ミント系、グレープ系、アプリコット系、ペア、カスタードクリーム、ピーチ、メロン、バナナ、トロピカル、ハーブ系、紅茶、コーヒー等のフレーバー類を挙げることができる。
斯くして得られる発酵食品は健康増進に優れ、また風味劣化の少ない飲食品として有用性が高いものである。また、本発明の発酵食品は、培地に添加されたグァバ葉エキス又はこれを有効成分とする上記増殖促進剤又は生残性改善剤により乳酸菌の増殖促進作用や生残性改善作用に優れているので、十分な乳酸菌数およびその生菌数が維持されたものとなる。
本発明において、「増殖促進剤」とは、乳酸菌に対する増殖促進作用を有するものを意味し、より具体的には、後述の実施例1乃至3の方法により求められる培養終了時(製造時)の当該増殖促進剤を添加した場合の生菌数(A)が、当該増殖促進剤を添加しない場合の生菌数(B)より大きいものを意味する。当該増殖促進作用は、前記生菌数(B)を100%としたときの前記生菌数(A)の百分率が104%以上であるものが好ましく、さらに200%以上が好ましく、さらに300%以上が好ましく、特に400%以上が好ましい。
また、本発明において、「増殖促進剤」とは、後述の実施例1又は2の方法により求められる培養終了時(製造時)の当該増殖促進剤を添加した場合の酸度が、当該増殖促進剤を添加しない場合の酸度より大きいものを意味する。
本発明において、「生残性改善剤」とは、乳酸菌に対する生残性改善作用を有するものを意味し、より具体的には、後述の実施例1乃至3の方法により求められる保存後の当該生残性改善剤を添加した場合の生菌数(C)が、当該生残性改善剤を添加しない場合の生菌数(D)より大きいものを意味する。当該生残性改善作用は、10℃1週間保存後または10℃2週間保存後における前記生菌数(C)が前記生菌数(D)の1.08倍以上であるものが好ましく、さらに2倍以上が好ましく、さらに5倍以上が好ましく、さらに10倍以上が好ましく、特に50倍以上が好ましい。
また、本発明に用いられるグァバ葉エキスは、上述のとおり、グァバ葉エキスを発酵食品の原材料として発酵食品、特に乳酸菌培養培地に配合することによって、ラクトバチルス属及び/又はストレプトコッカス属に属する生きた乳酸菌を増殖促進させ、高濃度に含有し、しかも長期間保存後の生存性に優れた発酵食品が得られることから、ラクトバチルス属及び/又はストレプトコッカス属に属する乳酸菌の増殖促進剤又は生残性改善剤の有効成分として使用することができる。
当該増殖促進剤又は生残性改善剤は、グァバ葉エキスの他、必要に応じて、一般的な食品素材、例えば、上記の甘味料、各種糖質、増粘剤、乳化剤、各種ビタミン剤、酸化防止剤、安定化剤等の任意成分を配合し、常法により製造することができる。
本発明に用いられるグァバ葉エキスは、血糖値抑制作用を有し、また、糖尿病、高血圧、腎臓疾患、ウイルス感染等の予防・治療に効果があることが知られている。さらに、ヨーグルト等の発酵乳が血糖値抑制作用及びインスリン分泌促進作用を有し、また当該発酵乳に含まれる乳酸菌やビフィズス菌が整腸作用、抗腫瘍作用、抗変異作用、血圧低下作用、抗潰瘍作用、コレステロール低下作用等を有することが知られている。本発明の発酵食品は、グァバ葉エキス及びヨーグルト等の発酵乳に期待される前記の有用作用を複合的に作用させることができ、好適に利用することができる。
特に、グァバ葉エキス及びヨーグルト等の発酵乳を併用することで、個々の成分が示す血糖値抑制作用より一層高い血糖値抑制作用が得られ、より好適に利用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制約されるものではない。
製造例1
(1)グァバ葉熱水抽出物
グァバ葉を乾燥し、250℃で15分間焙煎した後、5mm程度に細断した。この茶葉1kgを95℃の熱水20kgに入れ、10分間抽出を行なった。150メッシュのフィルターで固液分離を行った後、加熱温度60℃、真空度21kPaの条件下での減圧濃縮によりグァバ葉熱水抽出物を得た。
更に、フリーズドライにてグァバ葉熱水抽出物を粉末とした。
このグァバ葉熱水抽出物粉末をグァバ葉エキス粉末として、以下の実施例1〜3に使用した。
実施例1
(1)試験方法
無脂乳固形分8.1重量%(以下、「%」と略す)の牛乳に、グァバ葉エキス粉末を0.374%添加したもの(添加培地)としないもの(無添加培地)を調製し、加熱殺菌後、ラクトバチルス・カゼイYIT9029のスターターを1%、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカスYIT0446のスターター0.5%を接種し、37℃で11時間培養した。グァバ葉エキス無し、有りについて、培養終了後(製造時)、10℃1週間保存後、10℃2週間保存後の生菌数を測定した結果を表1に示す(表中の数値は、グァバ葉エキス無添加の製造時の菌数を100%としたときの百分率で示す)。さらに、培養終了後(製造時)の酸度(培養物を9gとって、その中の有機酸をフェノールフタレインを指示薬として0.1N NaOHで滴定したときの滴定値)を測定した結果を表2に示す。
(2)結果
表1及び表2から明らかなように、グァバ葉エキスを添加した方は、しない方に比べて酸度上昇が大きく、また、培養終了時のラクトバチルス・カゼイYIT9029及びラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカスYIT0446の生菌数が多く、乳酸菌増殖促進効果が見られた。さらに、10℃1週間保存後、10℃2週間保存後のラクトバチルス・カゼイYIT9029及びラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカスYIT0446の生菌数においても、グァバ葉エキスを添加した方は、しない方に比べて生残性が改善されており、特に、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカスYIT0446に対する生残性改善効果が顕著であった。
Figure 0005329924
Figure 0005329924
実施例2
(1)試験方法
脱脂粉乳9.1%、乳タンパク0.8%、更に表3に示すグァバ葉エキス粉末0〜0.7%(0, 0.05, 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.5, 0.6, 0.7%)及びイオン交換水を含む培地を調製し、加熱殺菌後、ラクトバチルス・カゼイYIT9029のスターターを1.0%、ストレプトコッカス・サーモフィルスYIT2021のスターター0.5%を接種し、37℃で9.5時間培養した。培養終了後(製造時)、10℃2週間保存後の生菌数を測定し、また酸度も測定した。
その結果を表3及び表4に示す。
(2)結果
ラクトバチルス・カゼイYIT9029の結果を表3に示す。このように、グァバ葉エキスを添加すると、培養終了後(製造時)のラクトバチルス・カゼイYIT9029の生菌数が多くなり、しかも添加量が増えるに従い、生菌数も多くなった。
また、表4に示すとおり、酸度については、グァバ葉エキス粉末を添加した場合、無添加に比べて高かった。以上のことから、グァバ葉エキス添加により、乳酸菌の増殖が促進され、その添加量が0.30%以上の場合、顕著であった。
また、10℃2週間保存後の生残性に関しては、ラクトバチルス・カゼイYIT9029と共にストレプトコッカス・サーモフィルスYIT2021でも改善効果が確認され、特にストレプトコッカス・サーモフィルスYIT2021については、グァバ葉エキス粉末無添加では、10℃2週間保存後の生菌数が製造時の生菌数(1.3×109/ml)を100%としたときに1%にまで著しく低下したのに対し、グァバ葉エキス粉末0.05%添加で77%、0.10%添加で57%、0.20%添加で48%、0.30%添加で44%、0.40%添加で41%、0.50%添加で35%、0.60%添加で42%、0.70%添加で48% (無添加の製造時の生菌数を100%とする)であり、乳酸菌の生残性が顕著に改善された。
Figure 0005329924
Figure 0005329924
実施例3
(1)試験方法
脱脂粉乳9.1%、乳タンパク0.8%、更に表5に示すグァバ葉エキス粉末0〜0.20%(0, 0.01, 0.03, 0.05, 0.1, 0.2%)及びイオン交換水を含む培地を調製し、加熱殺菌後、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカスYIT0446のスターターを0.5%、ストレプトコッカス・サーモフィルスYIT2021のスターターを0.5%接種し、37℃で7時間培養した。培養終了後(製造時)、10℃2週間保存後の菌数を測定した。
(2)結果
グァバ葉エキス粉末を添加すると、ストレプトコッカス・サーモフィルスYIT2021の培養終了時(製造時)の生菌数が、無添加に比べ、0.01%〜0.20%で増加しており、乳酸菌の増殖が促進された。また、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカスYIT0446については、グァバ葉エキス粉末無添加では、10℃2週間保存後の生菌数が製造時の生菌数(5.6×108/ml)を100%としたときに43%まで低下したのに対し、グァバ葉エキス粉末0.01%添加で102%、0.03%添加で84%、0.05%添加で66%、0.10%添加で71%、0.20%添加で82%と生残性が顕著に改善された。
また、ストレプトコッカス・サーモフィルスYIT2021の培養終了時(製造時)の生菌数が、グァバ葉エキス粉末無添加(グァバ葉エキス粉末無添加の生菌数(4.5×108/ml)を100%とした場合)に比べ、グァバ葉エキス粉末0.01%添加で140%、0.03%添加で162%、0.05%添加で124%、0.10%添加で122%、0.20%添加で120%と、乳酸菌の増殖が促進された。また、10℃2週間保存後の生残性に関しては、0.20%添加で無添加の13倍と生残性改善効果が確認された。

Claims (8)

  1. グァバ葉エキスと、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス及びストレプトコッカス・サーモフィルスから選ばれる1種以上の生きた乳酸菌とを含有することを特徴とする発酵食品。
  2. グァバ葉エキスを、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス及び/又はストレプトコッカス・サーモフィルスの生残性改善剤として含有する請求項1記載の発酵食品。
  3. ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス及びストレプトコッカス・サーモフィルスから選ばれる1種以上の生きた乳酸菌を含有する発酵食品の製造において、グァバ葉エキスを配合することを特徴とするラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス及びストレプトコッカス・サーモフィルスから選ばれる1種以上の生きた乳酸菌を含有する発酵食品の製造方法。
  4. グァバ葉エキスを、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス及び/又はストレプトコッカス・サーモフィルスの生残性改善剤として配合する請求項3記載の製造方法。
  5. グァバ葉エキスを有効成分とする、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカスの増殖促進剤。
  6. グァバ葉エキスを配合することを特徴とするラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカスの増殖促進方法。
  7. グァバ葉エキスを有効成分とする、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス及び/又はストレプトコッカス・サーモフィルスの生残性改善剤。
  8. グァバ葉エキスを配合することを特徴とするラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス及び/又はストレプトコッカス・サーモフィルスの生残性改善方法。
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