JP5880295B2 - 電気泳動素子の製造方法 - Google Patents
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Description
1.実施の形態
1−1.全体構成
1−2.多孔質層の形成方法
2.適用例
3.実験例
図1および図2は、それぞれ本技術の一実施の形態の電気泳動素子の平面構成および断面構成を表したものである。この電気泳動素子は、電気泳動現象を利用してコントラストを生じさせるものであり、例えば、表示装置などの多様な電子機器に適用される。この電気泳動素子は、絶縁性液体1中に極性を有する複数の電気泳動粒子10と、多孔質層20とを含んでいる。本実施の形態では、多孔質層20は繊維状構造体21と、非泳動粒子22とを含み、非泳動粒子22は繊維状構造体21中に所定の範囲内で分散している。
[絶縁性液体]
絶縁性液体1は、例えば、有機溶媒のいずれか1種類または2種類以上であり、具体的にはパラフィンまたはイソパラフィンなどである。この絶縁性液体1の粘度および屈折率はできるだけ低いことが好ましい。電気泳動粒子10の移動性(応答速度)が向上すると共に、それに応じて電気泳動粒子10を移動させるために必要なエネルギー(消費電力)が低くなるからである。また、絶縁性液体1の屈折率と多孔質層20の屈折率との差が大きくなるため、その多孔質層20の反射率が高くなるからである。
電気泳動粒子10は、絶縁性液体1中に分散された荷電粒子であり、電界に応じて多孔質層20を経由して移動可能になっている。この電気泳動粒子10は、例えば、有機顔料、無機顔料、染料、炭素材料、金属材料、金属酸化物、ガラスまたは高分子材料(樹脂)などの粒子(粉末)のいずれか1種類または2種類以上である。また、電気泳動粒子10は、上記した粒子を含む樹脂固形分の粉砕粒子またはカプセル粒子などでもよい。なお、炭素材料、金属材料、金属酸化物、ガラスまたは高分子材料に該当する材料は、有機顔料、無機顔料または染料に該当する材料から除かれることとする。
多孔質層20は、繊維状構造体21により形成された3次元立体構造物であり、この3次元立体構造により形成された複数の細孔23を有している。繊維状構造体21には、複数の非泳動粒子22が含まれており、即ち、複数の非泳動粒子22は、繊維状構造体21により保持されている。3次元立体構造物である多孔質層20では、繊維状構造体21が互いに同一のまたは異なる方向(任意の方向)に延在する繊維210同士が重畳してなる。繊維状構造体21では、これらの繊維210同士がランダムに絡み合っていてもよいし、繊維210同士が集合してランダムに重なっていてもよいし、双方が混在していてもよい。繊維状構造体21が複数の場合、各繊維状構造体21は、1または2以上の非泳動粒子22を保持している。なお、図2では、複数の繊維状構造体21により多孔質層20が形成されている場合を示している。
多孔質層20の形成手順の一例は、以下の通りである。図4は、多孔質層20の形成手順の流れを表したものである。まず、繊維状構造体21に分散させる非泳動粒子22を、高分子材料によりコーティングする(ステップS101)。具体的には、非泳道粒子22(例えば酸化チタン)と、コーティング用の高分子材料(例えばポリアクリル酸)とを混錬し、非泳動粒子22を高分子材料によりコーティングする。
下限:非泳動粒子22:ポリマー2=95:5
上限:非泳動粒子22:ポリマー2=65:35
電気泳動素子では、上記したように、電気泳動粒子10および多孔質層20(非泳動粒子22を含む繊維状構造体21)がそれぞれ明表示または暗表示するため、コントラストが生じる。この場合には、電気泳動粒子10が明表示すると共に多孔質層20が暗表示してもよいし、その逆でもよい。このような役割の違いは、電気泳動粒子10の光学的反射特性と多孔質層20の光学的反射特性との関係により決定される。すなわち、明表示する方の反射率は、暗表示する方の反射率よりも高くなる。
電気泳動素子では、電気泳動粒子10の光学的反射特性と多孔質層20(非泳動粒子22)の光学的反射特性とが異なっている。この場合において、電気泳動素子に電界が印加されると、その電界が印加された範囲内において電気泳動粒子10が多孔質層20(細孔23)を経由して移動する。これにより、電気泳動粒子10が移動した側から電気泳動素子を見ると、電気泳動粒子10が移動した範囲では、その電気泳動粒子10により暗表示(または明表示)されると共に、電気泳動粒子10が移動していない範囲では、多孔質層20により明表示(または暗表示)される。これにより、コントラストが生じる。
本実施の形態では、多孔質層20において、繊維状構造体21が架橋部21aを含むことにより、架橋部21aを持たない繊維状構造体を用いた電気泳動素子に比べ、光散乱効率が高まり、多孔質層20における反射率が向上する。ここで、繊維状構造体21が架橋部21aを含むことにより、3次元的な細孔23の体積が減少し、物理的に電気泳動粒子10が泳動しにくくなることが懸念される。ところが、この体積減少は、電気泳動粒子10の移動方向に沿った幅(繊維状構造体21の厚み)の減少によるものであり、電気泳動粒子10の移動距離の短縮化につながる。また、繊維210同士の交差部分(重なった部分)が連結されていることから、物理的に電気泳動粒子10が捕捉されてしまう空間が減少する。このような理由から、応答速度が向上する。
次に、上記した電気泳動素子の適用例について説明する。電気泳動素子は、さまざまな電子機器に適用可能であり、その電子機器の種類は特に限定されないが、例えば、表示装置に適用される。
図5は、表示装置の断面構成を表しており、図6は、図5に示した表示装置の動作を説明するためのものである。なお、以下で説明する表示装置の構成は、あくまで一例であるため、その構成は、適宜変更可能である。
駆動基板30は、例えば、支持基体31の一面に、複数の薄膜トランジスタ(TFT)32と、保護層33と、平坦化絶縁層34と、複数の画素電極35とがこの順に形成されたものである。TFT32および画素電極35は、画素配置に応じてマトリクス状またはセグメント状に配置されている。
対向基板40は、例えば、支持基体41の一面に対向電極42が全面形成されたものである。ただし、対向電極42は、画素電極32と同様に、マトリクス状またはセグメント状に配置されていてもよい。
電気泳動素子50は、上記した電気泳動素子と同様の構成を有している。具体的には、電気泳動素子50は、絶縁性液体51中に、複数の電気泳動粒子52と、複数の細孔54を有する多孔質層53とを含んでいる。絶縁性液体51は、駆動基板30と対向基板40との間の空間に充填されており、多孔質層53は、例えば、スペーサ60により支持されている。絶縁性液体51が充填されている空間は、多孔質層53を境界として、画素電極35に近い側の待避領域R1と、対向電極42に近い側の移動領域R2とに区分けされている。絶縁性液体51、電気泳動粒子52および多孔質層53の構成は、それぞれ絶縁性液体1、電気泳動粒子10および多孔質層20の構成と同様である。なお、図5および図6では、図示内容を簡略化するために、細孔54の一部だけを示している。
スペーサ60は、例えば、高分子材料などの絶縁性材料により形成されている。
この表示装置では、図5に示したように、初期状態において、複数の電気泳動粒子52が待避領域R1に位置している。この場合には、全ての画素において電気泳動粒子52が多孔質層53により遮蔽されているため、対向基板40側から電気泳動素子50を見ると、コントラストが生じていない(画像が表示されていない)状態にある。
この表示装置によれば、電気泳動素子50が上記した電気泳動素子と同様の構成を有しているため、高コントラスト、高速応答および低消費電力が実現される。よって、低消費電力で高品位な画像を表示できる。
<3.実験例>
以下の手順により、黒色(暗表示用)の電気泳動粒子および白色(明表示用)の多孔質層(粒子含有繊維状構造体)を用いて、表示装置を作製した。
まず、水酸化ナトリウム43gとケイ酸ナトリウム0.37gとを水43gに溶解させて溶液Aを得た。続いて、溶液Aを攪拌しながら複合酸化物微粒子(大日精化工業株式会社製ダイピロキサイドカラーTM9550)5gを加えて攪拌(15分間)したのち、超音波攪拌(30℃〜35℃,15分間)した。次に、溶液Aを加熱(90℃)したのち、0.22mol/cm3の硫酸15cm3(=ml)と、ケイ酸ナトリウム6.5mgおよび水酸化ナトリウム1.3mgが溶解された水溶液7.5cm3とを2時間かけて滴下した。続いて、溶液Aを冷却(室温)したのち、1mol/cm3の硫酸1.8cm3を加えたのち、遠心分離(3700rpm,30分間)およびデカンテーションを行った。次に、エタノールに再分散してから共に遠心分離(3500rpm,30分間)すると共にデカンテーションを行う作業を2回繰り返したのち、各ボトルにエタノール5cm3と水0.5cm3との混合液を加えて超音波攪拌(1時間)して、シラン被覆複合酸化物粒子の分散溶液を得た。
次に、絶縁性液体として、メトキシスルホニルオキシメタン(Lubrizol社製Solsperse17000)を0.75%、ソルビタントリオレート(Span85)を5.0%、第1成分であるイソパラフィン(エクソンモービル社製IsoparG )を94%含む有機溶媒を準備した。この場合には、必要に応じて、絶縁性液体9.7gに電気泳動粒子0.2gを加えて、ガラスビーズ(0.8mmφ)を加えたビーズミルで攪拌(1時間)した。続いて、混合液をガラスファイバーフィルターにかけビーズを取り除いて、電気泳動粒子が分散された絶縁性液体を得た。
(実験例1−1)
次に、繊維状構造体の形成材料としてポリアクリロニトリル(Aldrich 社製:分子量=150000)16gを、DMF84gに溶解させて溶液Dを準備した。一方、非泳動粒子として、例えば酸化チタンを用意し、この非泳動粒子をアクリル樹脂(ポリアクリル酸)によりコーティングした。このときの重量割合は、酸化チタン:アクリル樹脂=95:5とした。続いて、コーティング処理後の酸化チタンを溶液Dに加えたのち、ビーズミルで混合して紡糸溶液を準備した。なお、このときのコーティング処理後の酸化チタンの濃度は30wt%とした。続いて、紡糸溶液をシリンジに入れ、所定のパターン形状の画素電極(ITO)が形成されたガラス基板の上で、電界紡糸装置(株式会社メック製NANON)を用いて8往復分の紡糸を行った。紡糸条件は、電界強度=28kV、吐出速度=0.5cm3/分、紡糸距離=15cm、スキャンレート=20mm/秒とした。続いて、真空オーブン(75℃)中でガラス基板を12時間乾燥して、非泳動粒子を含む繊維状構造体を形成した。走査型電子顕微鏡で観察したところ、繊維状構造体内部に図1に示すような架橋構造が見られた。繊維径は0.1〜2μmであった。
また、酸化チタンとアクリル樹脂との重量比率を90:10とし、溶液Dとして、ポリアクリロニトリル(Aldrich 社製:分子量=150000)15gをDMF85gに溶解させたものを用いたこと以外は、上記実験例1−1と同様にして繊維状構造体を形成した。この実験例1−2においても、走査型電子顕微鏡で観察したところ、繊維状構造体内部に図1に示すような架橋構造が見られた。繊維径は0.1〜2μmであった。
また、酸化チタンとアクリル樹脂との重量比率を70:30とし、溶液Dとして、ポリアクリロニトリル(Aldrich 社製:分子量=150000)11gをDMF89gに溶解させたものを用いたこと以外は、上記実験例1−1と同様にして繊維状構造体を形成した。この実験例1−3においても、走査型電子顕微鏡で観察したところ、繊維状構造体内部に図1に示すような架橋構造が見られた。繊維径は0.1〜2μmであった。
また、酸化チタンとアクリル樹脂との重量比率を65:35とし、溶液Dとして、ポリアクリロニトリル(Aldrich 社製:分子量=150000)10gをDMF90gに溶解させたものを用いたこと以外は、上記実験例1−1と同様にして繊維状構造体を形成した。この実験例1−4においても、走査型電子顕微鏡で観察したところ、繊維状構造体内部に図1に示すような架橋構造が見られた。繊維径は0.1〜2μmであった。
また、酸化チタンとアクリル樹脂との重量比率を65:35とし、溶液Dとして、ポリアクリロニトリル(Aldrich 社製:分子量=150000)7gをDMF93gに溶解させたものを用いたこと以外は、上記実験例1−1と同様にして繊維状構造体を形成した。この実験例1−5においても、走査型電子顕微鏡で観察したところ、繊維状構造体内部に図1に示すような架橋構造が見られた。しかしながら、繊維径は0.1〜3μmと比較的大きく、ところどころに3〜5μmのビーズ状のかたまりが存在した。
上記実験例1−1〜1−5の比較例として、非泳動粒子である酸化チタンをコーティングせずに使用し、溶液Dとして、アクリロニトリル(Aldrich 社製:分子量=150000)17gをDMF83gに溶解させたものを用いて、繊維状構造体を形成した。但し、溶液Dおよび酸化チタンをコーティングしていないこと以外は、上記実験例1−1と同様にした。この比較例においても、走査型電子顕微鏡で観察したところ、繊維径は0.1〜2μmであったが、繊維状構造体内部に図1に示すような架橋構造は見られなかった。
画素電極が形成されたガラス基板から、その画素電極が形成されていない領域に付着した不要な繊維状構造体を除去したのち、対向電極(ITO)が全面形成されたガラス基板の上にスペーサとしてPETフィルム(30μm厚)を置いた。その上に、画素電極および繊維状構造体が形成されたガラス基板を重ねた。なお、多孔質層と重ならない位置にはビーズ(外径=30μm)を含む光硬化性樹脂(積水化学工業株式会社製感光性樹脂フォトレックA-400)を描画した。最後に、2枚のガラス基板の間の隙間に、電気泳動粒子が
分散された絶縁性液体を注入したのち、ローラで全体を押圧して多孔質層を画素電極および対向電極に隣接させた後、再度全体を押圧して多孔質層を圧縮した。
(1)
絶縁性液体中に、複数の電気泳動粒子と、複数の非泳動粒子が含まれた繊維状構造体により形成された多孔質層とを有し、
前記繊維状構造体は、互いに同一のまたは異なる方向にそれぞれ延在する繊維同士が重畳してなり、前記繊維同士の各接点の少なくとも一部にそれらの繊維同士が連結されてなる架橋部を含む
電気泳動素子。
(2)
前記架橋部は、前記繊維状構造体において、積層方向に直交する面内において前記繊維同士の分岐点となっている
上記(1)に記載の電気泳動素子。
(3)
前記繊維状構造体の積層方向に直交する面内における平均孔径は、0.1μm以上10μm以下である
上記(1)または(2)に記載の電気泳動素子。
(4)
前記繊維状構造体の繊維径は50nm以上2000nm以下である
上記(1)〜(3)のいずれかに記載の電気泳動素子。
(5)
前記繊維状構造体は、高分子材料または無機材料により形成されている
上記(1)〜(4)のいずれかに記載の電気泳動素子。
(6)
前記繊維状構造体の平均繊維径は0.1μm以上10μm以下である
上記(1)〜(5)のいずれかに記載の電気泳動素子。
(7)
前記繊維状構造体は静電紡糸法により形成されている
上記(1)〜(6)のいずれかに記載の電気泳動素子。
(8)
前記非泳動粒子は前記電気泳動粒子とは異なる光学的反射特性を有する
上記(1)〜(7)のいずれかに記載の電気泳動素子。
(9)
前記非泳動粒子は、有機顔料、無機顔料、染料、炭素材料、金属材料、金属酸化物、ガラスまたは高分子材料により形成されている
上記(1)〜(8)のいずれかに記載の電気泳動素子。
(10)
前記非泳動粒子は酸化チタンを含む
上記(1)〜(9)のいずれかに記載の電気泳動素子。
(11)
前記非泳動粒子の反射率は前記電気泳動素子の反射率よりも高い
上記(1)〜(10)のいずれかに記載の電気泳動素子。
(12)
互いに同一のまたは異なる方向にそれぞれ延在する繊維同士が重畳してなる繊維状構造体を形成する工程と、
前記繊維状構造体に非泳動粒子を添加し、分散させることにより多孔質層を形成する工程とを含み、
前記繊維状構造体の前記繊維同士の各接点の少なくとも一部にそれらの繊維同士が連結されてなる架橋部を形成する
電気泳動素子の製造方法。
(13)
前記繊維状構造体を静電紡糸法により形成する
上記(12)に記載の電気泳動素子の製造方法。
(14)
前記繊維状構造体における前記架橋部を、表面張力の異なる複数種類の高分子材料を使用して形成する
上記(13)に記載の電気泳動素子の製造方法。
(15)
前記非泳動粒子を前記繊維状構造体に添加する前に、前記繊維状構造体を構成する主たる高分子材料よりも表面張力の大きな高分子材料により、前記非泳動粒子をコーティングする工程を更に含む
上記(14)に記載の電気泳動素子の製造方法。
(16)
少なくとも一方が光透過性であると共にそれぞれに電極が設けられた一対の基体の間に、電気泳動素子を備え、
前記電気泳動素子は、
絶縁性液体中に、複数の電気泳動粒子と、複数の非泳動粒子が含まれた繊維状構造体により形成された多孔質層とを有し、
前記繊維状構造体は、互いに同一のまたは異なる方向にそれぞれ延在する繊維同士が重畳してなり、前記繊維同士の各接点の少なくとも一部にそれらの繊維同士が連結されてなる架橋部を含む
表示装置。
Claims (2)
- 静電紡糸法により、互いに同一のまたは異なる方向にそれぞれ延在する繊維同士が重畳してなる繊維状構造体を含む多孔質層を形成する工程と、
前記繊維状構造体に非泳動粒子を添加し、分散させる工程と
を含み、
表面張力の異なる複数種類の高分子材料を使用することにより、前記繊維同士の各接点の少なくとも一部にそれらの繊維同士が連結されてなる架橋部を形成する
電気泳動素子の製造方法。 - 前記非泳動粒子を前記繊維状構造体に添加する前に、前記繊維状構造体を構成する主たる高分子材料よりも表面張力の大きな高分子材料により、前記非泳動粒子をコーティングする工程を更に含む
請求項1に記載の電気泳動素子の製造方法。
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