JP5880295B2 - 電気泳動素子の製造方法 - Google Patents

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Description

技術は、絶縁性液体中に複数の電気泳動粒子を含む電気泳動素子の製造方法に関する。
近年、携帯電話機または携帯情報端末などに代表されるモバイル機器の普及に伴い、低消費電力で高品位画質の表示装置(ディスプレイ)に関する需要が高まっている。中でも、最近では、電子書籍の配信事業の誕生により、文字情報を長時間読むことを目的とした読書用途の携帯情報端末(電子書籍端末)が注目されているため、その用途に適した表示品位を有するディスプレイが望まれている。
読書用途のディスプレイとしては、コレステリック液晶ディスプレイ、電子泳動型ディスプレイ、電気酸化還元型ディスプレイまたはツイストボール型ディスプレイなどが提案されているが、中でも、反射型ディスプレイが好ましい。紙と同様に外光の反射(散乱)を利用して明表示するため、紙に近い表示品位が得られるからである。また、バックライトが不要であるため、消費電力が低くなる。
反射型ディスプレイの有力候補は、電気泳動現象を利用してコントラストを生じさせる電気泳動型ディスプレイである。低消費電力であると共に高速応答性に優れているからである。そこで、電気泳動型ディスプレイの表示方法について、さまざまな検討がなされている。
具体的には、絶縁性液体中に光学的反射特性が異なる2種類の荷電粒子を分散して、電界に応じて荷電粒子を移動させる方法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。この方法では、2種類の荷電粒子が反対の極性を有しているため、電界に応じて荷電粒子の分布状態が変化する。
また、絶縁性液体中に多孔質層を配置すると共に荷電粒子を分散させて、電界に応じて多孔質層の細孔を経由して荷電粒子を移動させる方法が提案されている(例えば、特許文献3〜6参照。)。この方法では、多孔質層として、レーザを用いた穴開け加工により細孔が形成された高分子フィルム、合成繊維などにより編まれた布、または連泡多孔性高分子などが用いられている。
特公昭50−015115号公報 特許第4188091号明細書 特開2005−107146号公報 特公昭50−015120号公報 特開2005−128143号公報 特開2002−244163号公報
電気泳動型ディスプレイについてさまざまな表示方法が提案されているにもかかわらず、その表示品位は未だ十分であるとは言えない。今後のカラー化および動画表示などへの展開を考えると、さらなるコントラストおよび応答速度の向上が必要である。
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、高コントラストおよび高速応答を実現可能な電気泳動素子の製造方法を提供することにある。
本技術の電気泳動素子の製造方法は、静電紡糸法により、互いに同一のまたは異なる方向にそれぞれ延在する繊維同士が重畳してなる繊維状構造体を含む多孔質層を形成する工程と、繊維状構造体に非泳動粒子を添加し、分散させる工程とを含み、表面張力の異なる複数種類の高分子材料を使用することにより、繊維同士の各接点の少なくとも一部にそれらの繊維同士が連結されてなる架橋部を形成する。
本技術の電気泳動素子の製造方法では、多孔質層を構成する繊維状構造体が、繊維同士の接点に所定の架橋部を含んで形成されることにより、電気泳動粒子の移動路が確保されつつ多孔質層における光散乱効率が向上する。
本技術の電気泳動素子の製造方法によれば、多孔質層を構成する繊維状構造体が、繊維同士の接点に所定の架橋部を含んで形成されるようにしたので、電気泳動粒子の移動路を確保しつつ多孔質層における光散乱効率を高めることができる。よって、高コントラストおよび高速応答を実現可能となる。
本技術の一実施の形態の電気泳動素子の構成を表す平面図である。 電気泳動素子の構成を表す断面図である。 架橋部の一例を表す模式図である。 図1に示した電気泳動素子の製造工程を表す流れ図である。 本技術の一実施の形態の電気泳動素子を用いた表示装置の構成を表す断面図である。 表示装置の動作を説明するための断面図である。
以下、本技術の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.実施の形態
1−1.全体構成
1−2.多孔質層の形成方法
2.適用例
3.実験例
<1.電気泳動素子>
図1および図2は、それぞれ本技術の一実施の形態の電気泳動素子の平面構成および断面構成を表したものである。この電気泳動素子は、電気泳動現象を利用してコントラストを生じさせるものであり、例えば、表示装置などの多様な電子機器に適用される。この電気泳動素子は、絶縁性液体1中に極性を有する複数の電気泳動粒子10と、多孔質層20とを含んでいる。本実施の形態では、多孔質層20は繊維状構造体21と、非泳動粒子22とを含み、非泳動粒子22は繊維状構造体21中に所定の範囲内で分散している。
1−1.全体構成
[絶縁性液体]
絶縁性液体1は、例えば、有機溶媒のいずれか1種類または2種類以上であり、具体的にはパラフィンまたはイソパラフィンなどである。この絶縁性液体1の粘度および屈折率はできるだけ低いことが好ましい。電気泳動粒子10の移動性(応答速度)が向上すると共に、それに応じて電気泳動粒子10を移動させるために必要なエネルギー(消費電力)が低くなるからである。また、絶縁性液体1の屈折率と多孔質層20の屈折率との差が大きくなるため、その多孔質層20の反射率が高くなるからである。
なお、絶縁性液体1は、必要に応じて、各種材料を含んでいてもよい。このような材料は、例えば、着色剤、電荷制御剤、分散安定剤、粘度調製剤、界面活性剤または樹脂などである。
[電気泳動粒子]
電気泳動粒子10は、絶縁性液体1中に分散された荷電粒子であり、電界に応じて多孔質層20を経由して移動可能になっている。この電気泳動粒子10は、例えば、有機顔料、無機顔料、染料、炭素材料、金属材料、金属酸化物、ガラスまたは高分子材料(樹脂)などの粒子(粉末)のいずれか1種類または2種類以上である。また、電気泳動粒子10は、上記した粒子を含む樹脂固形分の粉砕粒子またはカプセル粒子などでもよい。なお、炭素材料、金属材料、金属酸化物、ガラスまたは高分子材料に該当する材料は、有機顔料、無機顔料または染料に該当する材料から除かれることとする。
有機顔料は、例えば、アゾ系顔料、メタルコンプレックスアゾ系顔料、ポリ縮合アゾ系顔料、フラバンスロン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、アントラピリジン系顔料、ピランスロン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料またはインダンスレン系顔料などである。無機顔料は、例えば、亜鉛華、アンチモン白、カーボンブラック、鉄黒、硼化チタン、ベンガラ、マピコエロー、鉛丹、カドミウムエロー、硫化亜鉛、リトポン、硫化バリウム、セレン化カドミウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クロム酸鉛、硫酸鉛、炭酸バリウム、鉛白またはアルミナホワイトなどである。染料は、例えば、ニグロシン系染料、アゾ系染料、フタロシアニン系染料、キノフタロン系染料、アントラキノン系染料またはメチン系染料などである。炭素材料は、例えば、カーボンブラックなどである。金属材料は、例えば、金、銀または銅などである。金属酸化物は、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、銅−クロム酸化物、銅−マンガン酸化物、銅−鉄−マンガン酸化物、銅−クロム−マンガン酸化物または銅−鉄−クロム酸化物などである。高分子材料は、例えば、可視光領域に光吸収域を有する官能基が導入された高分子化合物などである。このように可視光領域に光吸収域を有する高分子化合物であれば、その種類は特に限定されない。
絶縁性液体1中における電気泳動粒子10の含有量(濃度)は、特に限定されないが、例えば、0.1重量%〜10重量%である。電気泳動粒子10の遮蔽性および移動性が確保されるからである。この場合には、0.1重量%よりも少ないと、電気泳動粒子10が多孔質層20を遮蔽(隠蔽)しにくくなる可能性がある。一方、10重量%よりも多いと、電気泳動粒子10の分散性が低下するため、その電気泳動粒子10が泳動しにくくなり、場合によっては凝集する可能性がある。
この電気泳動粒子10は、任意の光学的反射特性(反射率)を有している。電気泳動粒子10の光学的反射特性は、特に限定されないが、少なくとも電気泳動粒子10は多孔質層20を遮蔽可能であることが好ましい。電気泳動粒子10の光学的反射特性と多孔質層20の光学的反射特性との違いにより、コントラストを生じさせるためである。
ここで、電気泳動粒子10の具体的な形成材料は、コントラストを生じさせるために電気泳動粒子10が担う役割に応じて選択される。具体的には、電気泳動粒子10が明表示する場合の材料は、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウムまたはチタン酸カリウムなどの金属酸化物もしくはメラミン、ベンゾグナアミンなどの有機球状粒子である。一方、電気泳動粒子10が暗表示する場合の材料は、例えば、炭素材料または金属酸化物などである。炭素材料は、例えば、カーボンブラックなどであり、金属酸化物は、例えば、銅−クロム酸化物、銅−マンガン酸化物、銅−鉄−マンガン酸化物、銅−クロム−マンガン酸化物または銅−鉄−クロム酸化物などである。中でも、炭素材料が好ましい。優れた化学的安定性、移動性および光吸収性が得られるからである。
電気泳動粒子10が明表示する場合には、外部から電気泳動素子を見たときに視認される電気泳動粒子10の色は、コントラストを生じさせることができれば特に限定されないが、中でも白色に近い色が好ましく、白色がより好ましい。一方、電気泳動粒子10が暗表示する場合には、外部から電気泳動素子を見たときに視認される電気泳動粒子10の色はコントラストを生じさせることができれば特に限定されないが、中でも黒色に近い色が好ましく、黒色がより好ましい。いずれの場合においても、コントラストが高くなるからである。
なお、電気泳動粒子10は、絶縁性液体1中において長期間に渡って分散および帯電しやすいと共に多孔質層20に吸着しにくいことが好ましい。このため、静電反発により電気泳動粒子10を分散させるために分散剤(または電荷調整剤)を用いたり、電気泳動粒子10に表面処理を施してもよく、両者を併用してもよい。
分散剤は、例えば、Lubrizol社製のSolsperse シリーズ、BYK-Chemie社製のBYK シリーズまたはAnti-Terra シリーズ、あるいはICI Americas 社製Spanシリーズなどである。
表面処理は、例えば、ロジン処理、界面活性剤処理、顔料誘導体処理、カップリング剤処理、グラフト重合処理またはマイクロカプセル化処理などである。中でも、グラフト重合処理、マイクロカプセル化処理またはそれらの組み合わせが好ましい。長期間の分散安定性などが得られるからである。
表面処理用の材料は、例えば、電気泳動粒子10の表面に吸着可能な官能基と重合性官能基とを有する材料(吸着性材料)などである。吸着可能な官能基の種類は、電気泳動粒子10の形成材料に応じて決定される。一例を挙げると、カーボンブラックなどの炭素材料に対しては4−ビニルアニリンなどのアニリン誘導体であり、金属酸化物に対してはメタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピルなどのオルガノシラン誘導体である。重合性官能基は、例えば、ビニル基、アクリル基、メタクリル基などである。
また、表面処理用の材料は、例えば、重合性官能基が導入された電気泳動粒子10の表面にグラフト可能な材料(グラフト性材料)である。このグラフト性材料は重合性官能基と、絶縁性液体1中に分散可能であると共に立体障害により分散性を保持可能な分散用官能基とを有していることが好ましい。重合性官能基の種類は吸着性材料について説明した場合と同様である。分散用官能基は、例えば、絶縁性液体1がパラフィンである場合には分岐状のアルキル基などである。グラフト性材料を重合およびグラフトさせるためには、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などの重合開始剤を用いればよい。
参考までに、上記したように絶縁性液体1中に電気泳動粒子10を分散させる方法の詳細については、「超微粒子の分散技術とその評価〜表面処理・微粉砕と気中/液中/高分子中の分散安定化〜(サイエンス&テクノロジー社)」などの書籍に掲載されている。
[多孔質層]
多孔質層20は、繊維状構造体21により形成された3次元立体構造物であり、この3次元立体構造により形成された複数の細孔23を有している。繊維状構造体21には、複数の非泳動粒子22が含まれており、即ち、複数の非泳動粒子22は、繊維状構造体21により保持されている。3次元立体構造物である多孔質層20では、繊維状構造体21が互いに同一のまたは異なる方向(任意の方向)に延在する繊維210同士が重畳してなる。繊維状構造体21では、これらの繊維210同士がランダムに絡み合っていてもよいし、繊維210同士が集合してランダムに重なっていてもよいし、双方が混在していてもよい。繊維状構造体21が複数の場合、各繊維状構造体21は、1または2以上の非泳動粒子22を保持している。なお、図2では、複数の繊維状構造体21により多孔質層20が形成されている場合を示している。
多孔質層20が繊維状構造体21により形成された3次元立体構造物であるのは、光(外光)が乱反射(多重散乱)するため、多孔質層20の反射率が高くなると共に、その高い反射率を得るための多孔質層20の厚さが薄くて済むからである。これにより、電気泳動素子のコントラストが高くなると共に、電気泳動粒子10を移動させるために必要なエネルギーが低くなる。また、細孔23の平均孔径が大きくなると共に数が多くなるため、電気泳動粒子10が細孔23を経由して移動しやすくなるからである。これにより、応答速度が速くなると共に、電気泳動粒子10を移動させるために必要なエネルギーがより低くなる。
繊維状構造体21(繊維210)は、繊維径(直径)に対して長さが十分に大きい繊維状物質である。この繊維状構造体21は、例えば、高分子材料または無機材料などのいずれか1種類または2種類以上であり、他の材料でもよい。高分子材料は、例えば、ナイロン、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルクロライド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリサルフォン、ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンフロリド、ポリヘキサフルオロプロピレン、セルロースアセテート、コラーゲン、ゼラチン、キトサンまたはそれらのコポリマーなどである。無機材料は、例えば、酸化チタンなどである。中でも、繊維状構造体21の形成材料としては、高分子材料が好ましい。反応性(光反応性など)が低い、即ち化学的に安定であるため、繊維状構造体21の意図しない分解反応が抑制されるからである。なお、繊維状構造体21が高反応性の材料により形成される場合には、その繊維状構造体21の表面は任意の保護層(図示せず)により被覆されることが好ましい。
繊維状構造体21における繊維210の形状(外観)は、上記したように繊維径に対して長さが十分に大きい細長い形状であれば、特に限定されない。具体的には、直線状でもよいし、縮れていたり、途中で折れ曲がっていてもよい。この繊維状構造体21の形成方法は、特に限定されないが、例えば、相分離法、相反転法、静電(電界)紡糸法、溶融紡糸法、湿式紡糸法、乾式紡糸法、ゲル紡糸法、ゾルゲル法またはスプレー塗布法などであることが好ましい。繊維径に対して長さが十分に大きい繊維状物質を容易かつ安定に形成しやすいからである。
繊維状構造体21の繊維径は特に限定されないが、できるだけ小さいことが好ましい。光が乱反射しやすくなると共に、細孔23の孔径が大きくなるからである。ただし、繊維状構造体21が後述する非泳動粒子22を保持できるように決定される必要がある。このため、繊維状構造体21の繊維径は、50nm以上2000nm以下であることが好ましい。また、その平均繊維径は、10μm以下であることが好ましい。なお、平均繊維径の下限は、特に限定されないが、例えば、0.1μmであり、それ以下でもよい。この繊維径および平均繊維径は、例えば、走査型電子顕微鏡などを用いた顕微鏡観察により測定される。なお、繊維状構造体21の平均長さは任意でよい。
特に、繊維状構造体21はナノファイバーであることが好ましい。光が乱反射しやすくなるため多孔質層20の反射率がより高くなると共に、単位体積中に占める細孔23の割合が大きくなるため、電気泳動粒子10が細孔23を経由して移動しやすくなるからである。これにより、コントラストがより高くなると共に、電気泳動粒子10を移動させるために必要なエネルギーがより低くなる。ナノファイバーとは、繊維径が0.001μm〜0.1μmであると共に長さが繊維径の100倍以上である繊維状物質である。ナノファイバーである繊維状構造体21は、静電紡糸法により形成されていることが好ましい。繊維径が小さい繊維状構造体21を容易かつ安定に形成しやすいからである。
この繊維状構造体21は、電気泳動粒子10とは異なる光学的反射特性を有していることが好ましい。具体的には、繊維状構造体21の光学的反射特性は、特に限定されないが、少なくとも多孔質層20全体は電気泳動粒子10を遮蔽可能であることが好ましい。上述したように、電気泳動粒子10の光学的反射特性と多孔質層20の光学的反射特性との違いにより、コントラストを生じさせるためである。このため、絶縁性液体1中において光透過性(無色透明)の繊維状構造体21は好ましくない。ただし、繊維状構造体21の光学的反射特性が多孔質層20の光学的反射特性にほとんど影響を及ぼさず、その多孔質層20の光学的反射特性が実質的に非泳動粒子22の光学的反射特性により決定される場合には、繊維状構造体21の光学的反射特性は任意でよい。
本実施の形態では、上記のような繊維状構造体21が、その一部に架橋部21aを有している。上述したように、繊維状構造体21は、任意の方向に延在する繊維210同士が重畳して形成されたものであるが、架橋部21aは、それらの繊維210同士の接点のうちの少なくとも一部に設けられ、繊維210同士が連結(一体化、癒着)した部分である。詳細には、架橋部21aは、繊維210同士の交差箇所または隣接箇所において、繊維210同士の区別がつかない状態となっている部分である。
図3(A)〜(C)に、このような架橋部21aの一例を模式的に示す。架橋部21aは、図3(A)に示したように、交差する2本の(互いに異なる2つの方向にそれぞれ延在する)繊維210同士の交差箇所に設けられている。また、図3(B)に示したように、3本以上(ここでは3本)の繊維210同士の交差箇所に設けられていてもよい。あるいは、図3(C)に示したように、交差箇所に限らず、XY平面内における2本の繊維210同士の隣接箇所に設けられていてもよい。更に、図3(D)に示したように、架橋部21aが、Y字形状の分岐点を構成していてもよい。このように、架橋部21aは、XY平面内において例えば繊維210の分岐点を構成している。
繊維状構造体21において、架橋部21aを形成する手法としては、詳細は後述するが、繊維状構造体21の構成材料として複数種類の高分子材料を使用する手法が挙げられる。これにより、繊維化速度に差(ばらつき)が生じ、一部の繊維が部分的に付着し、繊維210同士を連結させる架橋部21aが形成される。架橋部21aを形成する手法としては、これ以外にも、例えば高分子材料を複数種あるいは沸点の高い溶媒に溶解させることによって繊維化する速さを制御する方法、あるいは添加剤を投入して表面性を変化させる方法が挙げられる。
このような架橋部21aは、繊維状構造21における繊維210同士の全ての接点の10%〜100%程度の接点に形成されていることが望ましい。繊維同士の架橋点が多いほど、3次元細孔の体積が厚み方向において減少し、電気泳動粒子の移動距離を確保しやすく電気泳動素子の特性が向上することとなる。
細孔23の平均孔径は、特に限定されないが、中でも、できるだけ大きいことが好ましい。電気泳動粒子21が細孔23を経由して移動しやすくなるからである。このため、細孔23の平均孔径は、0.01μm〜10μmであることが好ましい。
多孔質層20の厚さは、特に限定されないが、例えば、5μm〜100μmである。多孔質層20の遮蔽性が高くなると共に、電気泳動粒子10が細孔23を経由して移動しやすくなるからである。
非泳動粒子22は、繊維状構造体21により保持(固定)されており、電気泳動しない粒子である。繊維状構造体21はこの非泳動粒子22を複数含むことにより、光がより乱反射しやすくなり、電気泳動素子のコントラストがより高くなる。
繊維状構造体21中の非泳動粒子22は、所定の範囲内で分散されていることが好ましい。なお、非泳動粒子22は、繊維状構造体21により保持されていれば繊維状構造体21から部分的に露出していてもよいし、繊維状構造体21の内部に埋設されていてもよい。
この非泳動粒子22は、電気泳動粒子10とは異なる光学的反射特性を有している。非泳動粒子22の光学的反射特性は特に限定されないが、少なくとも多孔質層20全体は電気泳動粒子10を遮蔽可能であることが好ましい。上記したように、電気泳動粒子10の光学的反射特性と多孔質層20との光学的反射特性との違いにより、コントラストを生じさせるためである。なお、ここでは非泳動粒子22の光反射率は電気泳動粒子10の光反射率よりも高い。
ここで、非泳動粒子22の形成材料は、コントラストを生じさせるために非泳動粒子22が担う役割に応じて選択される。具体的には、非泳動粒子22が明表示する場合の材料は、電気泳動粒子10が明表示する場合に選択される材料と同様である。一方、非泳動粒子22が暗表示する場合の材料は、電気泳動粒子10が暗表示する場合に選択される材料と同様である。中でも、非泳動粒子22が明表示する場合に選択される材料としては、金属酸化物が好ましい。優れた化学的安定性、定着性および光反射性が得られるからである。コントラストを生じさせることができれば、非泳動粒子22の形成材料は、電気泳動粒子10の形成材料と同じ種類でもよいし、違う種類でもよい。なお、非泳動粒子22が明表示または暗表示する場合に視認される色は、電気泳動粒子10が視認される色について説明した場合と同様である。
1−2.多孔質層の形成方法
多孔質層20の形成手順の一例は、以下の通りである。図4は、多孔質層20の形成手順の流れを表したものである。まず、繊維状構造体21に分散させる非泳動粒子22を、高分子材料によりコーティングする(ステップS101)。具体的には、非泳道粒子22(例えば酸化チタン)と、コーティング用の高分子材料(例えばポリアクリル酸)とを混錬し、非泳動粒子22を高分子材料によりコーティングする。
次に、高分子材料によりコーティングされた非泳動粒子22(説明上、ここでは「非泳動粒子22’」とする)の添加量の最適範囲を決定する(ステップS102)。具体的には、繊維状構造体21の材料(主たる材料)である高分子材料(例えばポリアクリロニトリル)を、有機溶剤(例えばN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)等)に溶解させた高分子溶液を調製する(ステップS102−1)。この高分子溶液を複数に分け、それぞれの高分子溶液に非泳動粒子22’を分散させる。この際、非泳動粒子22’の分散溶液を複数調整し、それぞれの分散溶液の濃度が5重量%刻みで異なるようにして各分散溶液を十分に攪拌する。次いで、静電紡糸法を用い、各分散溶液において紡糸を行い、繊維状構造体21をそれぞれ形成する(ステップS102−2)。この後、各濃度における繊維状構造体21の光反射率を測定し、非泳動粒子22の添加量の最適範囲を決定する(ステップS102−3)。この後、上記ステップ102−1と同様にして、高分子溶液を調製し(ステップS103)、続いて上記ステップS102で決定された最適範囲内の非泳動粒子22’を添加し、分散溶液を調製する(ステップS104)。次いで、非泳動粒子22’が分散された高分子溶液を用いて静電紡糸法により紡糸を行い、繊維状構造体21を形成する(ステップS105)。これにより、電気泳動粒子10の移動路(細孔23)を確保しつつ光散乱効率が向上した多孔質層20が得られる。
ここで、本実施の形態では、上述したように、繊維状構造体21が、所定の架橋部21aを含むが、この架橋部21aの形成手法としては、繊維状構造体21の構成材料として複数種類の高分子材料を使用する手法が挙げられる。表面張力の異なる複数種類の高分子材料を使用することにより、紡糸の際の繊維化速度に差(ばらつき)が生じ、一部の繊維が部分的に付着(癒着)し、繊維210同士を連結させる架橋部21aが形成される。具体的には、ここでは、繊維状構造体21において、主たる高分子材料(ポリマー1とする)(例えばポリアクリロニトリル)とは表面張力の異なる高分子材料(ポリマー2とする)(例えばポリアクリル酸)を添加する。ポリアクリロニトリルの表面張力は45〜55mN/mであり、ポリアクリル酸の表面張力は55〜74mN/mである。電界紡糸法においては、高分子溶液に高電圧をかけ、その電界と表面張力が釣り合ったところで糸が紡ぎ出されることから、表面張力の小さい高分子材料(例えばポリマー1)の方がより速く繊維化され易く、逆に表面張力の大きな高分子材料(例えばポリマー2)の繊維化はポリマー1よりも遅くなる。従って、例えば、ポリマー1に、ポリマー1よりも表面張力が大きなポリマー2を添加することにより、架橋部21aを形成することができる。
このように、表面張力の異なる複数種類の高分子材料を含む溶液を用いて紡糸を行うことにより、架橋部21aを有する繊維状構造体21を形成することができる。但し、ポリマー1,2が同一溶媒に溶解可能であることが必要である。また、これらのポリマー1,2同士の表面張力が互いに異なり、繊維化する速度に少しでも差が生じれば、架橋部21aを形成可能である。ポリマー1,2の割合については、ポリマー1に対する非泳動粒子の添加量が一定である場合、非泳動粒子22とポリマー2との比率が、以下のような上限および下限により規定される範囲内に設定されることが望ましい。下限は、後述の実験例1の結果、上限は実験例4の結果にそれぞれ基づく。
下限:非泳動粒子22:ポリマー2=95:5
上限:非泳動粒子22:ポリマー2=65:35
尚、架橋部21aの形成手法としては、上記以外の手法が用いられてもよく、例えば高分子材料を複数種あるいは沸点の高い溶媒に溶解させることによって繊維化する速さを制御する方法、あるいは添加剤を投入して表面性を変化させる方法が挙げられる。
[電気泳動素子の好ましい表示方法]
電気泳動素子では、上記したように、電気泳動粒子10および多孔質層20(非泳動粒子22を含む繊維状構造体21)がそれぞれ明表示または暗表示するため、コントラストが生じる。この場合には、電気泳動粒子10が明表示すると共に多孔質層20が暗表示してもよいし、その逆でもよい。このような役割の違いは、電気泳動粒子10の光学的反射特性と多孔質層20の光学的反射特性との関係により決定される。すなわち、明表示する方の反射率は、暗表示する方の反射率よりも高くなる。
中でも、電気泳動粒子10が暗表示すると共に、多孔質層20が明表示することが好ましい。これに伴い、多孔質層20の光学的特性が実質的に非泳動粒子22の光学的反射特性により決定される場合には、非泳動粒子22の反射率は電気泳動粒子10の反射率よりも高いことが好ましい。この場合における明表示の反射率は、多孔質層20(3次元立体構造物)による光の乱反射を利用して著しく高くなるため、それに応じてコントラストも著しく高くなるからである。
[電気泳動素子の動作]
電気泳動素子では、電気泳動粒子10の光学的反射特性と多孔質層20(非泳動粒子22)の光学的反射特性とが異なっている。この場合において、電気泳動素子に電界が印加されると、その電界が印加された範囲内において電気泳動粒子10が多孔質層20(細孔23)を経由して移動する。これにより、電気泳動粒子10が移動した側から電気泳動素子を見ると、電気泳動粒子10が移動した範囲では、その電気泳動粒子10により暗表示(または明表示)されると共に、電気泳動粒子10が移動していない範囲では、多孔質層20により明表示(または暗表示)される。これにより、コントラストが生じる。
前述のように電位泳動型ディスプレイの表示品位、特にコントラストおよび応答速度を向上する方法が探索されている。その一つとして、例えば本実施の形態のように明表示(または暗表示)を示す多孔質層を構成する繊維状構造体に、暗表示(または明表示)を行う電気泳動粒子とは異なる光学的反射特性を有する非泳動粒子を添加することで、コントラストを向上する方法がある。これにより、従来の電気泳動素子よりもコントラストが高くなると共に、電気泳動粒子の応答速度が速くなる。
[作用および効果]
本実施の形態では、多孔質層20において、繊維状構造体21が架橋部21aを含むことにより、架橋部21aを持たない繊維状構造体を用いた電気泳動素子に比べ、光散乱効率が高まり、多孔質層20における反射率が向上する。ここで、繊維状構造体21が架橋部21aを含むことにより、3次元的な細孔23の体積が減少し、物理的に電気泳動粒子10が泳動しにくくなることが懸念される。ところが、この体積減少は、電気泳動粒子10の移動方向に沿った幅(繊維状構造体21の厚み)の減少によるものであり、電気泳動粒子10の移動距離の短縮化につながる。また、繊維210同士の交差部分(重なった部分)が連結されていることから、物理的に電気泳動粒子10が捕捉されてしまう空間が減少する。このような理由から、応答速度が向上する。
よって、本実施の形態では、多孔質層20を構成する繊維状構造体21が、繊維210同士の接点に所定の架橋部21aを含むようにしたので、電気泳動粒子10の移動路を確保しつつ多孔質層20における光散乱効率を高めることができる。よって、高コントラストおよび高速応答を実現可能となる。
また、応答速度が向上することから、例えばこのような電気泳動素子を画素に利用した表示装置等の電子機器では、消費電力を低減することが可能となる。
<2.電気泳動素子の適用例>
次に、上記した電気泳動素子の適用例について説明する。電気泳動素子は、さまざまな電子機器に適用可能であり、その電子機器の種類は特に限定されないが、例えば、表示装置に適用される。
[表示装置の全体構成]
図5は、表示装置の断面構成を表しており、図6は、図5に示した表示装置の動作を説明するためのものである。なお、以下で説明する表示装置の構成は、あくまで一例であるため、その構成は、適宜変更可能である。
表示装置は、電気泳動現象を利用して画像(例えば文字情報など)を表示する電気泳動型ディスプレイ(いわゆる電子ペーパーディスプレイ)である。この表示装置は、例えば、図5に示したように、駆動基板30と対向基板40とが電気泳動素子50を介して対向配置されたものであり、例えば、対向基板40側において画像を表示するようになっている。なお、駆動基板30および対向基板40は、スペーサ60により所定の間隔となるように離間されている。
[駆動基板]
駆動基板30は、例えば、支持基体31の一面に、複数の薄膜トランジスタ(TFT)32と、保護層33と、平坦化絶縁層34と、複数の画素電極35とがこの順に形成されたものである。TFT32および画素電極35は、画素配置に応じてマトリクス状またはセグメント状に配置されている。
支持基体31は、例えば、無機材料、金属材料またはプラスチック材料などにより形成されている。無機材料は、例えば、ケイ素(Si)、酸化ケイ素(SiOx )、窒化ケイ素(SiNx )または酸化アルミニウム(AlOx )などである。この酸化ケイ素には、ガラスまたはスピンオングラス(SOG)などが含まれる。金属材料は、例えば、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)またはステンレスなどである。プラスチック材料は、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)またはポリエチルエーテルケトン(PEEK)などである。
この支持基体31は、光透過性でもよいし、非光透過性でもよい。対向基板40側において画像が表示されるため、支持基体31は必ずしも光透過性である必要がないからである。また、支持基体31は、ウェハなどの剛性を有する基板でもよいし、可撓性を有する薄層ガラスまたはフィルムでもよいが、中でも、後者であることが好ましい。フレキシブル(折り曲げ可能)な表示装置を実現できるからである。
TFT32は、画素を選択するためのスイッチング用素子である。なお、TFT32は、チャネル層として無機半導体層を用いた無機TFTでもよいし、有機半導体層を用いた有機TFTでもよい。保護層33および平坦化絶縁層34は、例えば、ポリイミドなどの絶縁性樹脂材料により形成されている。ただし、保護層33の表面が十分に平坦であれば、平坦化絶縁層34はなくてもよい。画素電極35は、例えば、金(Au)、銀(Ag)または銅(Cu)などの金属材料により形成されている。この画素電極35は、保護層33および平坦化絶縁層34に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じてTFT32に接続されている。
[対向基板]
対向基板40は、例えば、支持基体41の一面に対向電極42が全面形成されたものである。ただし、対向電極42は、画素電極32と同様に、マトリクス状またはセグメント状に配置されていてもよい。
支持基体41は、光透過性であることを除き、支持基体31と同様の材料により形成されている。対向基板40側において画像が表示されるため、支持基体41は光透過性である必要があるからである。対向電極42は、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO)、酸化アンチモン−酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)またはアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)などの光透光性導電性材料(透明電極材料)により形成されている。
対向基板40側において画像を表示する場合には、対向電極42を介して電気泳動素子50を見ることになるため、その対向電極42の光透過性(透過率)は、できるだけ高いことが好ましく、例えば、80%以上である。また、対向電極42の電気抵抗は、できるだけ低いことが好ましく、例えば、100Ω/□以下である。
[電気泳動素子]
電気泳動素子50は、上記した電気泳動素子と同様の構成を有している。具体的には、電気泳動素子50は、絶縁性液体51中に、複数の電気泳動粒子52と、複数の細孔54を有する多孔質層53とを含んでいる。絶縁性液体51は、駆動基板30と対向基板40との間の空間に充填されており、多孔質層53は、例えば、スペーサ60により支持されている。絶縁性液体51が充填されている空間は、多孔質層53を境界として、画素電極35に近い側の待避領域R1と、対向電極42に近い側の移動領域R2とに区分けされている。絶縁性液体51、電気泳動粒子52および多孔質層53の構成は、それぞれ絶縁性液体1、電気泳動粒子10および多孔質層20の構成と同様である。なお、図5および図6では、図示内容を簡略化するために、細孔54の一部だけを示している。
[スペーサ]
スペーサ60は、例えば、高分子材料などの絶縁性材料により形成されている。
スペーサ60の形状は、特に限定されないが、中でも、電気泳動粒子52の移動を妨げず、その電気泳動粒子52を均一分布させるような形状であることが好ましく、例えば、格子状である。また、スペーサ60の厚さは、特に限定されないが、中でも、消費電力を低くするためにできるだけ薄いことが好ましく、例えば、10μm〜100μmである。
[表示装置の動作]
この表示装置では、図5に示したように、初期状態において、複数の電気泳動粒子52が待避領域R1に位置している。この場合には、全ての画素において電気泳動粒子52が多孔質層53により遮蔽されているため、対向基板40側から電気泳動素子50を見ると、コントラストが生じていない(画像が表示されていない)状態にある。
TFT32により画素が選択され、画素電極35と対向電極42との間に電界が印加されると、図6に示したように、電気泳動素子52が待避領域R1から多孔質層53(細孔54)を経由して移動領域R2に移動する。この場合には、電気泳動粒子52が多孔質層53により遮蔽されている画素と、電気泳動粒子52が多孔質層53により遮蔽されていない画素とが併存するため、対向基板40側から電気泳動素子50を見ると、コントラストが生じている状態になる。これにより、画像が表示される。
[表示装置の作用および効果]
この表示装置によれば、電気泳動素子50が上記した電気泳動素子と同様の構成を有しているため、高コントラスト、高速応答および低消費電力が実現される。よって、低消費電力で高品位な画像を表示できる。
<3.実験例>
次に、本技術の実験例について詳細に説明する。
(実験例1,2)
以下の手順により、黒色(暗表示用)の電気泳動粒子および白色(明表示用)の多孔質層(粒子含有繊維状構造体)を用いて、表示装置を作製した。
電気泳動粒子の調製]
まず、水酸化ナトリウム43gとケイ酸ナトリウム0.37gとを水43gに溶解させて溶液Aを得た。続いて、溶液Aを攪拌しながら複合酸化物微粒子(大日精化工業株式会社製ダイピロキサイドカラーTM9550)5gを加えて攪拌(15分間)したのち、超音波攪拌(30℃〜35℃,15分間)した。次に、溶液Aを加熱(90℃)したのち、0.22mol/cm3の硫酸15cm3(=ml)と、ケイ酸ナトリウム6.5mgおよび水酸化ナトリウム1.3mgが溶解された水溶液7.5cm3とを2時間かけて滴下した。続いて、溶液Aを冷却(室温)したのち、1mol/cm3の硫酸1.8cm3を加えたのち、遠心分離(3700rpm,30分間)およびデカンテーションを行った。次に、エタノールに再分散してから共に遠心分離(3500rpm,30分間)すると共にデカンテーションを行う作業を2回繰り返したのち、各ボトルにエタノール5cm3と水0.5cm3との混合液を加えて超音波攪拌(1時間)して、シラン被覆複合酸化物粒子の分散溶液を得た。
次いで、水3cm3と、エタノール30cm3と、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−N’−(4−ビニルベンジル)エチレンジアミン塩酸塩(40%メタノール溶液)4gとを混合して攪拌(7分間)したのち、分散溶液を全量投入した。続いて、混合溶液を攪拌(10分間)したのち、遠心分離(3500rpm,30分間)した。次いで、デカンテーションを行ったのち、エタノールに再分散してから遠心分離(3500rpmで30分間)する洗浄作業を2回繰り返した。デカンテーションを行ったのち、減圧環境(室温)中で乾燥(6時間)し、減圧環境(70℃)中で乾燥(2時間)して固形物を得た。続いて、固形物にトルエン50m3を加えて溶液Bとしたのち、ロールミルで攪拌(12時間)した。次いで、溶液Bを3つ口フラスコに移し、アクリル酸0.5gと2,5-ジメチル-1,5-ヘキサジエン2.0gを投入したのち、窒素気流下で攪拌(20分間)した。次に、溶液Bをさらに攪拌(50℃で20分間)したのちAIBN0.01gがトルエン3cm3に溶解された溶液Cを加え加熱(65℃)した。続いて、混合溶液を攪拌(1時間)後、冷却(室温)してから酢酸エチルと一緒にボトルに流し込み、遠心分離(3500rpmで30分間)した。次いで、デカンテーションを行ったのち、酢酸エチルに再分散させてから遠心分離(3500rpmで30分間)する洗浄作業を3回繰り返し減圧環境(室温)中で乾燥(12時間)したのち、さらに減圧環境(70℃)中で乾燥(2時間)した。これにより、重合体被覆顔料からなる黒色の電気泳動粒子が得られた。
[絶縁性液体の調製]
次に、絶縁性液体として、メトキシスルホニルオキシメタン(Lubrizol社製Solsperse17000)を0.75%、ソルビタントリオレート(Span85)を5.0%、第1成分であるイソパラフィン(エクソンモービル社製IsoparG )を94%含む有機溶媒を準備した。この場合には、必要に応じて、絶縁性液体9.7gに電気泳動粒子0.2gを加えて、ガラスビーズ(0.8mmφ)を加えたビーズミルで攪拌(1時間)した。続いて、混合液をガラスファイバーフィルターにかけビーズを取り除いて、電気泳動粒子が分散された絶縁性液体を得た。
[多孔質層の調製]
(実験例1−1)
次に、繊維状構造体の形成材料としてポリアクリロニトリル(Aldrich 社製:分子量=150000)16gを、DMF84gに溶解させて溶液Dを準備した。一方、非泳動粒子として、例えば酸化チタンを用意し、この非泳動粒子をアクリル樹脂(ポリアクリル酸)によりコーティングした。このときの重量割合は、酸化チタン:アクリル樹脂=95:5とした。続いて、コーティング処理後の酸化チタンを溶液Dに加えたのち、ビーズミルで混合して紡糸溶液を準備した。なお、このときのコーティング処理後の酸化チタンの濃度は30wt%とした。続いて、紡糸溶液をシリンジに入れ、所定のパターン形状の画素電極(ITO)が形成されたガラス基板の上で、電界紡糸装置(株式会社メック製NANON)を用いて8往復分の紡糸を行った。紡糸条件は、電界強度=28kV、吐出速度=0.5cm3/分、紡糸距離=15cm、スキャンレート=20mm/秒とした。続いて、真空オーブン(75℃)中でガラス基板を12時間乾燥して、非泳動粒子を含む繊維状構造体を形成した。走査型電子顕微鏡で観察したところ、繊維状構造体内部に図1に示すような架橋構造が見られた。繊維径は0.1〜2μmであった。
(実験例1−2)
また、酸化チタンとアクリル樹脂との重量比率を90:10とし、溶液Dとして、ポリアクリロニトリル(Aldrich 社製:分子量=150000)15gをDMF85gに溶解させたものを用いたこと以外は、上記実験例1−1と同様にして繊維状構造体を形成した。この実験例1−2においても、走査型電子顕微鏡で観察したところ、繊維状構造体内部に図1に示すような架橋構造が見られた。繊維径は0.1〜2μmであった。
(実験例1−3)
また、酸化チタンとアクリル樹脂との重量比率を70:30とし、溶液Dとして、ポリアクリロニトリル(Aldrich 社製:分子量=150000)11gをDMF89gに溶解させたものを用いたこと以外は、上記実験例1−1と同様にして繊維状構造体を形成した。この実験例1−3においても、走査型電子顕微鏡で観察したところ、繊維状構造体内部に図1に示すような架橋構造が見られた。繊維径は0.1〜2μmであった。
(実験例1−4)
また、酸化チタンとアクリル樹脂との重量比率を65:35とし、溶液Dとして、ポリアクリロニトリル(Aldrich 社製:分子量=150000)10gをDMF90に溶解させたものを用いたこと以外は、上記実験例1−1と同様にして繊維状構造体を形成した。この実験例1−4においても、走査型電子顕微鏡で観察したところ、繊維状構造体内部に図1に示すような架橋構造が見られた。繊維径は0.1〜2μmであった。
(実験例1−5)
また、酸化チタンとアクリル樹脂との重量比率を65:35とし、溶液Dとして、ポリアクリロニトリル(Aldrich 社製:分子量=150000)7gをDMF93に溶解させたものを用いたこと以外は、上記実験例1−1と同様にして繊維状構造体を形成した。この実験例1−5においても、走査型電子顕微鏡で観察したところ、繊維状構造体内部に図1に示すような架橋構造が見られた。しかしながら、繊維径は0.1〜3μmと比較的大きく、ところどころに3〜5μmのビーズ状のかたまりが存在した。
(比較例)
上記実験例1−1〜1−5の比較例として、非泳動粒子である酸化チタンをコーティングせずに使用し、溶液Dとして、アクリロニトリル(Aldrich 社製:分子量=150000)17gをDMF83に溶解させたものを用いて、繊維状構造体を形成した。但し、溶液Dおよび酸化チタンをコーティングしていないこと以外は、上記実験例1−1と同様にした。この比較例においても、走査型電子顕微鏡で観察したところ、繊維径は0.1〜2μmであったが、繊維状構造体内部に図1に示すような架橋構造は見られなかった。
[表示装置の組み立て]
画素電極が形成されたガラス基板から、その画素電極が形成されていない領域に付着した不要な繊維状構造体を除去したのち、対向電極(ITO)が全面形成されたガラス基板の上にスペーサとしてPETフィルム(30μm厚)を置いた。その上に、画素電極および繊維状構造体が形成されたガラス基板を重ねた。なお、多孔質層と重ならない位置にはビーズ(外径=30μm)を含む光硬化性樹脂(積水化学工業株式会社製感光性樹脂フォトレックA-400)を描画した。最後に、2枚のガラス基板の間の隙間に、電気泳動粒子が
分散された絶縁性液体を注入したのち、ローラで全体を押圧して多孔質層を画素電極および対向電極に隣接させた後、再度全体を押圧して多孔質層を圧縮した。
これらの実験例1−1〜1−5および比較例の表示装置の性能として、繊維状構造体に絶縁性液体のみを注入したときの反射率X(%)、黒反射率(%)、白反射率(%)、コントラストおよび応答速度(ms)を調べたところ、表1に示した結果が得られた。
Figure 0005880295
黒反射率および白反射率は、交流電圧(0.1Hzおよび15V)を1時間印加したのち、分光光度計(エックスライト株式会社製eye-one pro)により、45°リング照明において標準拡散板に対する基板法線方向の反射率を測定した。コントラスト(CR)比は、白反射率を黒反射率で割った値である。輝度は、ファンクションジェネレータ(東洋テクニカ株式会社製)を用いて矩形波電界(15V)を印加して測定した。応答速度は、白色状態の輝度を1、黒色状態の輝度を0として、電界を印加した際に輝度が0.1から0.9まで変化するために要する時間と電界印加を中止して輝度が0.9から0.1まで変化するために要する時間であり、その平均値である。
表1から、実験例1−1〜1−5および比較例を比較すると、実験例1−1〜1−4の反射率及びコントラストが、比較例に比べて高いことがわかる。これは、電気泳動粒子の通過性が向上したことを表しており、非泳動粒子の反射効率を損なうことなく、反射型表示体の特性向上が可能なことを示唆している。さらに、実験例1−1〜1−5では、コントラストが向上したにもかかわらず、応答速度も速くなっている。これは電気泳動粒子の通過性向上を裏づけする結果である。また、実験例1−5では、繊維状構造体に絶縁性液体のみを注入したときの反射率X(%)が下落している。これは、繊維径が上述した好適範囲から外れていることから、繊維上に非泳動粒子が効率よく分散されず、散乱効率が落ちてしまうことに起因する。但し、コントラストが落ちるため、見かけ上の応答速度が速くなる。従って、繊維状構造体における繊維径は、上述したように2000nm(2μm)以下であることが望ましい。
以上、実施の形態を挙げて本技術を説明したが、本技術は実施の形態で説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本技術の電気泳動素子は、表示装置に限らず、他の電子機器に適用されてもよい。
なお、本技術は以下のような構成であってもよい。
(1)
絶縁性液体中に、複数の電気泳動粒子と、複数の非泳動粒子が含まれた繊維状構造体により形成された多孔質層とを有し、
前記繊維状構造体は、互いに同一のまたは異なる方向にそれぞれ延在する繊維同士が重畳してなり、前記繊維同士の各接点の少なくとも一部にそれらの繊維同士が連結されてなる架橋部を含む
電気泳動素子。
(2)
前記架橋部は、前記繊維状構造体において、積層方向に直交する面内において前記繊維同士の分岐点となっている
上記(1)に記載の電気泳動素子。
(3)
前記繊維状構造体の積層方向に直交する面内における平均孔径は、0.1μm以上10μm以下である
上記(1)または(2)に記載の電気泳動素子。
(4)
前記繊維状構造体の繊維径は50nm以上2000nm以下である
上記(1)〜(3)のいずれかに記載の電気泳動素子。
(5)
前記繊維状構造体は、高分子材料または無機材料により形成されている
上記(1)〜(4)のいずれかに記載の電気泳動素子。
(6)
前記繊維状構造体の平均繊維径は0.1μm以上10μm以下である
上記(1)〜(5)のいずれかに記載の電気泳動素子。
(7)
前記繊維状構造体は静電紡糸法により形成されている
上記(1)〜(6)のいずれかに記載の電気泳動素子。
(8)
前記非泳動粒子は前記電気泳動粒子とは異なる光学的反射特性を有する
上記(1)〜(7)のいずれかに記載の電気泳動素子。
(9)
前記非泳動粒子は、有機顔料、無機顔料、染料、炭素材料、金属材料、金属酸化物、ガラスまたは高分子材料により形成されている
上記(1)〜(8)のいずれかに記載の電気泳動素子。
(10)
前記非泳動粒子は酸化チタンを含む
上記(1)〜(9)のいずれかに記載の電気泳動素子。
(11)
前記非泳動粒子の反射率は前記電気泳動素子の反射率よりも高い
上記(1)〜(10)のいずれかに記載の電気泳動素子。
(12)
互いに同一のまたは異なる方向にそれぞれ延在する繊維同士が重畳してなる繊維状構造体を形成する工程と、
前記繊維状構造体に非泳動粒子を添加し、分散させることにより多孔質層を形成する工程とを含み、
前記繊維状構造体の前記繊維同士の各接点の少なくとも一部にそれらの繊維同士が連結されてなる架橋部を形成する
電気泳動素子の製造方法。
(13)
前記繊維状構造体を静電紡糸法により形成する
上記(12)に記載の電気泳動素子の製造方法。
(14)
前記繊維状構造体における前記架橋部を、表面張力の異なる複数種類の高分子材料を使用して形成する
上記(13)に記載の電気泳動素子の製造方法。
(15)
前記非泳動粒子を前記繊維状構造体に添加する前に、前記繊維状構造体を構成する主たる高分子材料よりも表面張力の大きな高分子材料により、前記非泳動粒子をコーティングする工程を更に含む
上記(14)に記載の電気泳動素子の製造方法。
(16)
少なくとも一方が光透過性であると共にそれぞれに電極が設けられた一対の基体の間に、電気泳動素子を備え、
前記電気泳動素子は、
絶縁性液体中に、複数の電気泳動粒子と、複数の非泳動粒子が含まれた繊維状構造体により形成された多孔質層とを有し、
前記繊維状構造体は、互いに同一のまたは異なる方向にそれぞれ延在する繊維同士が重畳してなり、前記繊維同士の各接点の少なくとも一部にそれらの繊維同士が連結されてなる架橋部を含む
表示装置。
1,51…絶縁性液体、10,52…電気泳動粒子、20,53…多孔質層、21…繊維状構造体、22…非泳動粒子、23,54…細孔、30…駆動基板、31,41…支持基体、32…TFT、33…保護層、34…平坦化絶縁層、35…画素電極、40…対向基板、42…対向電極、50…電気泳動素子、60…スペーサ。

Claims (2)

  1. 静電紡糸法により、互いに同一のまたは異なる方向にそれぞれ延在する繊維同士が重畳してなる繊維状構造体を含む多孔質層を形成する工程と、
    前記繊維状構造体に非泳動粒子を添加し、分散させる工程と
    を含み、
    表面張力の異なる複数種類の高分子材料を使用することにより、前記繊維同士の各接点の少なくとも一部にそれらの繊維同士が連結されてなる架橋部を形成する
    電気泳動素子の製造方法。
  2. 前記非泳動粒子を前記繊維状構造体に添加する前に、前記繊維状構造体を構成する主たる高分子材料よりも表面張力の大きな高分子材料により、前記非泳動粒子をコーティングする工程を更に含む
    請求項に記載の電気泳動素子の製造方法。
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