以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の外観斜視図である。このインクジェット記録装置10(画像形成装置)は、紫外線硬化型インク(液体)を用いて記録媒体12(媒体)上にカラー画像を形成するワイドフォーマットプリンタである。ワイドフォーマットプリンタは、大型ポスターや商業用壁面広告など、広い描画範囲を記録するのに好適な装置である。ここでは、A3ノビ以上に対応するものを「ワイドフォーマット」と呼ぶ。
インクジェット記録装置10は、装置本体20と、この装置本体20を支持する支持脚22とを備えている。装置本体20には、記録媒体(メディア)12に向けてインクを吐出するドロップオンデマンド型のインクジェットヘッド24と、記録媒体12を支持するプラテン26と、ヘッド移動手段としてのガイド機構28及びキャリッジ30(走査手段)が設けられている。
ガイド機構28は、プラテン26の上方において、記録媒体12の搬送方向(X方向)に直交し且つプラテン26の媒体支持面と平行な走査方向(Y方向)に沿って延在するように配置されている。キャリッジ30は、ガイド機構28に沿ってY方向に往復移動可能に支持されている。キャリッジ30には、インクジェットヘッド24が搭載されるとともに、記録媒体12上のインクに紫外線を照射する仮硬化光源(ピニング光源)32A,32B(仮硬化手段)と、本硬化光源(キュアリング光源)34A,34B(本硬化手段)とが搭載されている。
仮硬化光源32A,32Bは、インクジェットヘッド24から吐出されたインク滴が記録媒体12に着弾した後に、隣接液滴同士が合一化しない程度にインクを仮硬化させるための紫外線を照射する光源である。本硬化光源34A,34Bは、仮硬化後に追加露光を行い、最終的にインクを完全に硬化(本硬化)させるための紫外線を照射する光源である。詳細は後述するが、本硬化光源34A,34Bのいずれか一方又は両方は、インクジェットヘッド24及び仮硬化光源32A,32BとY方向について並ぶように、X方向へ移動可能に構成されている。
キャリッジ30上に配置されたインクジェットヘッド24、仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bは、ガイド機構28に沿ってキャリッジ30とともに一体的に(一緒に)移動する。キャリッジ30の往復移動方向(Y方向)を「主走査方向」、記録媒体12の搬送方向(X方向)を「副走査方向」と呼ぶ場合がある。Y方向が「第1方向」に相当し、X方向が「第2方向」に相当する。
記録媒体12には、紙、不織布、塩化ビニル、合成化学繊維、ポリエチレン、ポリエステル、ターポリンなど、材質を問わず、また、浸透性媒体、非浸透性媒体を問わず、様々な媒体を用いることができる。
記録媒体12は、装置の背面側からロール紙状態(図2参照)で給紙され、印字後は装置正面側の巻き取りローラ(図1中不図示、図2の符号44)で巻き取られる。
プラテン26上に搬送された記録媒体12に対して、インクジェットヘッド24からインク滴が吐出され、記録媒体12上に付着したインク滴に対して仮硬化光源32A,32B、本硬化光源34A,34Bから紫外線が照射される。
仮硬化光源32A,32Bを用いて、打滴直後のインク滴の移動、変形を阻止する程度に、インクを部分的に硬化させる工程は、「仮硬化」、「部分硬化」、「半硬化」、「ピニング(pinning)」或いは「セット(set)」などと呼ばれる。本明細書では「仮硬化」、「ピニング」という用語を用いる。一方、仮硬化後に、本硬化光源34A,34Bを用いてさらなるUV照射を行い、インクを十分に硬化させる工程は「本硬化」或いは「キュアリング(curing)」と呼ばれる。
図1において、装置本体20の正面に向かって左側の前面に、インクカートリッジ36の取り付け部38が設けられている。インクカートリッジ36は、紫外線硬化型インクを貯留する交換自在なインク供給源(インクタンク)である。インクカートリッジ36は、本例のインクジェット記録装置10で使用される各色インクに対応して設けられている。色別の各インクカートリッジ36は、それぞれ独立に形成された不図示のインク供給経路によってインクジェットヘッド24に接続される。各色のインク残量が少なくなった場合にインクカートリッジ36の交換が行われる。
また、図示を省略するが、装置本体20の正面に向かって右側には、インクジェットヘッド24のメンテナンス部が設けられている。該メンテナンス部は、非印字時におけるインクジェットヘッド24を保湿するためのキャップと、インクジェットヘッド24のノズル面(インク吐出面)を清掃するための払拭部材(ブレード、ウエブ等)が設けられている。インクジェットヘッド24のノズル面をキャッピングするキャップは、メンテナンスのためにノズルから吐出されたインク滴を受けるためのインク受けが設けられている。
〔記録媒体搬送路の説明〕
図2は、インクジェット記録装置10における記録媒体搬送路を模式的に示す説明図である。図2に示すように、プラテン26は逆樋状に形成され、その上面が記録媒体12の支持面(媒体支持面)となる。プラテン26の近傍における記録媒体搬送方向(X方向)の上流側には、記録媒体12を間欠搬送するための媒体搬送手段を構成する一対のニップローラ40が配設される。このニップローラ40は記録媒体12をプラテン26上で記録媒体搬送方向へ移動させる。
ロール・ツー・ロール方式の媒体搬送手段を構成する供給側のロール(送り出し供給ロール)42から送り出された記録媒体12は、印字部の入り口(プラテン26の記録媒体搬送方向の上流側)に設けられた一対のニップローラ40によって、記録媒体搬送方向に間欠搬送される。インクジェットヘッド24の直下の印字部に到達した記録媒体12は、インクジェットヘッド24により印字が実行され、印字後に巻き取りロール44に巻き取られる。印字部の記録媒体搬送方向の下流側には、記録媒体12のガイド46が設けられている。
印字部においてインクジェットヘッド24と対向する位置にあるプラテン26の裏面(記録媒体12を支持する面と反対側の面)には、印字中の記録媒体12の温度を調整するための温調部50が設けられている。印字時の記録媒体12が所定の温度となるように調整されると、記録媒体12に着弾したインク液滴の粘度や、表面張力等の物性値が所望の値になり、所望のドット径を得ることが可能となる。なお、必要に応じて、温調部50の上流側にプレ温調部52を設けてもよいし、温調部50の下流側にアフター温調部54を設けてもよい。
〔インクジェットヘッドの説明〕
図3は、キャリッジ30上に配置されるインクジェットヘッド24と仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bの配置形態の例を示す平面透視図である。
インクジェットヘッド24には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、クリア(透明)インク(CL)、ホワイト(白)インク(W)の各色のインクごとに、それぞれ色のインクを吐出(打滴)するためのノズル列61Y,61M,61C,61K,61LC,61LM,61CL,61Wが設けられている。
図3ではノズル列を点線により図示し、ノズルの個別の図示は省略されている。また、以下の説明では、ノズル列61Y,61M,61C,61K,61LC,61LM,61CL,61Wを総称して符号61を付してノズル列を表すことがある。
インク色の種類(色数)や色の組合せについては本実施形態に限定されない。例えば、LC、LMのノズル列を省略する形態、CLやWのノズル列のいずれか一方を省略する形態、メタルインクのノズル列を追加する形態、Wのノズル列に代わりメタルインクのノズル列を具備する形態、特別色のインクを吐出するノズル列を追加する形態などが可能である。また、色別のノズル列の配置順序も特に限定はない。ただし、複数のインク種のうち紫外線に対する硬化感度の低いインクを仮硬化光源32A又は32Bに近い側に配置する構成が好ましい。
色別のノズル列61ごとにヘッドモジュールを構成し、これらを並べることによって、カラー描画が可能なインクジェットヘッド24を構成することができる。例えば、イエローインクを吐出するノズル列61Yを有するヘッドモジュール24Yと、マゼンタインクを吐出するノズル列61Mを有するヘッドモジュール24Mと、シアンインクを吐出するノズル列61Cを有するヘッドモジュール24Cと、黒インクを吐出するノズル列61Kを有するヘッドモジュール24Kと、LC、LM、CL、Wの各色のインクを吐出するノズル列61LC,61LM,61CL,61Wをそれぞれ有する各ヘッドモジュール24LC,24LM,24CL,24Wとをキャリッジ30の往復移動方向(主走査方向、Y方向)に沿って並ぶように等間隔に配置する態様も可能である。
色別のヘッドモジュール24Y,24M,24C,24K,24LC,24LMのモジュール群(ヘッド群)を「インクジェットヘッド」と解釈してもよいし、各モジュールをそれぞれ「インクジェットヘッド」と解釈することも可能である。或いはまた、1つのインクジェットヘッド24の内部で色別にインク流路を分けて形成し、1ヘッドで複数色のインクを吐出するノズル列を備える構成も可能である。
各ノズル列61は、複数個のノズルが一定の間隔で記録媒体搬送方向(副走査方向、X方向)に沿って1列に(直線的に)並んだものとなっている。本例のインクジェットヘッド24は、各ノズル列61を構成するノズルの配置ピッチ(ノズルピッチ)が254μm(100dpi)、一列のノズル列61を構成するノズルの数は256ノズル、ノズル列61の全長Lw(ノズル列の全長)は約65mm(254μm×255=64.8mm)である。また、吐出周波数は15kHzであり、駆動波形の変更によって10ピコリットル、20ピコリットル、30ピコリットルの3種類の吐出液滴量を打ち分けることができる。
インクジェットヘッド24のインク吐出方式としては、圧電素子(ピエゾアクチュエータ)の変形によってインク滴を飛ばす方式(ピエゾジェット方式)が採用されている。エネルギー発生素子として、静電アクチュエータを用いる形態(静電アクチュエータ方式)の他、ヒータなどの発熱体(加熱素子)を用いてインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばす形態(サーマルジェット方式)を採用することも可能である。
ただし、紫外線硬化型インクは、一般に溶剤インクと比べて高粘度であるため、紫外線硬化型インクを使用する場合には、吐出力が比較的大きなピエゾジェット方式を採用することが好ましい。
〔作画モードについて〕
本例に示すインクジェット記録装置10は、マルチパス方式の描画制御が適用され、印字パス数の変更によって印字解像度を変更することが可能である。例えば、高生産モード、標準モード、高画質モードの3種類の作画モードが用意され、各モードでそれぞれ印字解像度が異なる。印刷目的や用途に応じて作画モードを選択することができる。
以下の説明では、印字解像度は、(主走査方向の印字解像度)×(副走査方向の印字解像度)の形式で表すこととする。
高生産モードでは、600dpi(ドット毎インチ)×400dpiの解像度で印字が実行される。高生産モードの場合、主走査方向は2パス(2回の走査)によって600dpiの解像度が実現される。
一回目の走査(キャリッジ30の往路)では300dpiの解像度でドットが形成される。2回目の走査(復路)では一回目の走査(往路)で形成されたドットの中間を300dpiで補間するようにドットが形成され、主走査方向について600dpiの解像度が得られる。
一方、副走査方向については、ノズルピッチが100dpiであり、一回の主走査(1パス)により副走査方向に100dpiの解像度でドットが形成される。したがって、4パス印字(4回の走査)により補間印字を行うことで400dpiの解像度が実現される。なお、高生産モードのキャリッジ30の主走査速度は、1270mm/secである。
標準モードでは、600dpi×800dpiの解像度で印字が実行され、主走査方向は2パス印字、副走査は8パス印字により600dpi×800dpiの解像度を得ている。
高画質モードでは、600dpi×1200dpi、又は1200dpi×1200dpiの解像度で印字が実行され、主走査方向は2パス又は4パス、副走査方向が12パスにより600dpi×1200dpi、又は1200dpi×1200dpiの解像度を得ている。
〔シングリング走査によるスワス幅について〕
ワイドフォーマット機の作画モードでは、解像度設定ごとに、それぞれシングリング(インターレス)する作画条件が決定されている。具体的には、インクジェットヘッドの吐出ノズル列の幅Lw(ノズル列の長さ)をパス数(スキャン繰り返し回数)だけ分割してシングリング作画するので、インクジェットヘッドのノズル列幅、並びに、主走査方向及び副走査方向のパス数(インターレースする分割数)によってスワス幅が異なる。
なお、マルチパス方式によるシングリング作画の詳細については、例えば、特開2004‐306617号公報に説明されている。
一例として、FUJIFILM Dimatix社製のQS-10ヘッド(100dpi、256ノズル)を用いた場合のシングリング作画によるパス数とスワス幅の関係は下表(表1)のようになる。作画によって想定されるスワス幅は使用するノズル列幅を主走査方向パス数と副走査方向パス数の積で分割した値となる。
〔紫外線照射部の配置〕
図3に示すように、インクジェットヘッド24のキャリッジ移動方向(Y方向)の左右両脇に、仮硬化光源32A,32Bが配置される。さらに、インクジェットヘッド24の記録媒体搬送方向(X方向)の下流側に本硬化光源34A,34Bが配置されている。本硬化光源34A,34Bは、インクジェットヘッド24からY方向に仮硬化光源32A,32Bよりも外側(さらに遠くの位置)に配置される。本硬化光源34A,34Bは、記録媒体搬送方向と反対方向(‐X方向)へ移動可能に構成されており、キャリッジ移動方向に沿って、仮硬化光源32A,32B及びインクジェットヘッド24と並ぶように配置を変更することができる。
インクジェットヘッド24のカラーインク用のノズル(ノズル列61Y,61M,61C,61K,61LC,61LMに含まれるノズル)から吐出されて記録媒体12上に着弾したカラーインク滴は、その直後にその上を通過する仮硬化光源32A,32Bによって仮硬化のための紫外線が照射される。
詳細は後述するが、仮硬化光源32A,32Bは、記録媒体搬送方向について照射エネルギーに分布を持たせることができ、各ドットに照射される総照射エネルギーの差を低減させることが可能である。照射エネルギーの分布の例として、仮硬化光源32A,32Bが記録媒体搬送方向について二分割され、同方向上流側の照射エネルギーに対して同方向下流側の照射エネルギーが二倍とされる態様が挙げられる。
また、記録媒体12の間欠搬送に伴ってインクジェットヘッド24の印字領域を通過した記録媒体12上のインク滴は、本硬化光源34A,34Bにより本硬化のための紫外線が照射される。このようにして、インク液滴を一旦仮硬化状態にすることで、着弾干渉を防止しつつ、ドットの展開時間(ドットが所定のサイズに広がる時間)を取ることができ、ドットの高さの均一化が図れるとともに、液滴と媒体との相互作用を促進して、密着性を増す事ができる。
〔インクジェット記録装置の制御系の説明〕
図4はインクジェット記録装置10の構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクジェット記録装置10は、制御手段としての制御装置102が設けられている。制御装置102としては、例えば、中央演算処理装置(CPU)を備えたコンピュータ等を用いることができる。制御装置102は、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。
制御装置102には、記録媒体搬送制御部104(搬送制御手段)、キャリッジ駆動制御部106、光源制御部108、画像処理部110、打滴制御部112(打滴制御手段)が含まれる。これらの各部は、ハードウエア回路又はソフトウエア、若しくはこれらの組合せによって実現される。
記録媒体搬送制御部104は、記録媒体12(図1参照)の搬送を行うための搬送駆動部114を制御する。搬送駆動部114は、図2に示すニップローラ40を駆動する駆動用モータ、及びその駆動回路が含まれる。プラテン26(図1参照)上に搬送された記録媒体12は、インクジェットヘッド24による主走査方向の往復走査(印刷パスの動き)に合わせて、スワス幅単位で副走査方向へ間欠送りされる。
図4に示すキャリッジ駆動制御部106は、キャリッジ30(図1参照)を主走査方向に移動させるための主走査駆動部116を制御する。主走査駆動部116は、キャリッジ30の移動機構に連結される駆動用モータ、及びその制御回路が含まれる。
光源制御部108は、光源駆動回路118を介して仮硬化光源32A,32Bの発光を制御するとともに、光源駆動回路119を介して本硬化光源34A,34Bの発光を制御する制御手段である。仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bとして、UV‐LED素子(紫外LED素子、図9に符号314Aを付して図示)やメタルハライドランプなどのUVランプが適用される。
仮硬化光源32A,32Bの発光を制御する光源駆動回路118により、記録媒体搬送方向について発光光量に分布を持たせるように、UV‐LED素子の発光光量が制御される。UV‐LED素子の発光光量は、UV‐LED素子へ供給される電流を調整することで調整が可能である。
例えば、UV‐LED素子へ供給される電流が大きくなると、UV‐LED素子の発光光量は大きくなり、UV‐LED素子へ供給される電流が小さくなると、UV‐LED素子の発光光量は小さくなる。
制御装置102は、操作パネル等の入力装置120、表示装置122が接続されている。入力装置120は、手動による外部操作信号を制御装置102へ入力する手段であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、操作ボタンなど各種形態を採用しうる。
表示装置122には、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRTなど、各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置120を操作することにより、作画モードの選択、印刷条件の入力や付属情報の入力・編集などを行うことができ、入力内容や検索結果等の各種情報は、表示装置122の表示を通じて確認することができる。
また、インクジェット記録装置10には、各種情報を格納しておく情報記憶部124と、印刷用の画像データを取り込むための画像入力インターフェース126が設けられている。画像入力インターフェースには、シリアルインターフェースを適用してもよいし、パラレルインターフェースを適用してもよい。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
画像入力インターフェース126を介して入力された画像データは、画像処理部110にて印刷用のデータ(ドットデータ)に変換される。ドットデータは、一般に、多階調の画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。
色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(例えば、RGB各色について8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置100で使用するインク各色の色データに変換する処理である。
ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色の色データに対して、誤差拡散法や閾値マトリクス等の処理で各色のドットデータに変換する処理である。ハーフトーン処理の手段としては、誤差拡散法、ディザ法、閾値マトリクス法、濃度パターン法など、各種公知の手段を適用できる。ハーフトーン処理は、一般に3以上の階調値を有する階調画像データを元の階調値未満の階調値を有する階調画像データに変換する。
最も簡単な例では、2値(ドットのオンオフ)のドット画像データに変換するが、ハーフトーン処理において、ドットサイズの種類(例えば、大ドット、中ドット、小ドットなどの3種類)に対応した多値の量子化を行うことも可能である。
こうして得られた2値又は多値の画像データ(ドットデータ)は、各ノズルの駆動(オン)/非駆動(オフ)、さらに、多値の場合には液滴量(ドットサイズ)を制御するインク吐出データ(打滴制御データ)として利用される。
打滴制御部112は、画像処理部110において生成されたドットデータに基づいて、ヘッド駆動回路128に対して吐出制御信号を生成する。また、打滴制御部112は、不図示の駆動波形生成部を備えている。駆動波形生成部は、インクジェットヘッド24の各ノズルに対応したエネルギー発生素子(本例では、ピエゾ素子)を駆動するための駆動電圧信号を生成する手段である。
駆動電圧信号の波形データは、予め情報記憶部124に格納されており、必要に応じて使用する波形データが出力される。駆動波形生成部から出力された信号(駆動波形)は、ヘッド駆動回路128に供給される。なお、駆動波形生成部から出力される信号はデジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
ヘッド駆動回路128を介してインクジェットヘッド24の各エネルギー発生素子に対して、共通の駆動電圧信号が印加され、各ノズルの打滴タイミングに応じて各エネルギー発生素子の個別電極に接続されたスイッチ素子(不図示)のオンオフを切り換えることで、対応するノズルからインクが打滴される。
情報記憶部124は、制御装置102のCPUが実行するプログラム、及び制御に必要な各種データなどが格納されている。情報記憶部124は、作画モードに応じた解像度の設定情報、パス数(スキャンの繰り返し数)、仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bの制御情報などが格納されている。
エンコーダ130は、主走査駆動部116の駆動用モータ、及び搬送駆動部114の駆動用モータに取り付けられており、該駆動モータの回転量及び回転速度に応じたパルス信号を出力し、該パルス信号は制御装置102に送られる。エンコーダ130から出力されたパルス信号に基づいて、キャリッジ30の位置、及び記録媒体12の位置が把握される。
センサ132は、キャリッジ30に取り付けられており、センサ132から得られたセンサ信号に基づいて記録媒体12の幅が把握される。
〔マルチパス印字方式の作画方法の説明〕
図5は、マルチパス印字方式による作画動作の模式図である。ここでは説明を簡単にするために、1列のノズル列を有するヘッド240を例に説明する。また、記録媒体を副走査方向へ間欠送りする構成について、図示の便宜上、記録媒体を停止させ、ヘッド240を副走査方向に相対的に間欠移動させるものとして説明する。
このヘッド240は、複数のノズル242が副走査方向に一定のノズルピッチで並んだ一列のノズル列を有する。このノズル列が図3で説明した各色のノズル列61Y、61M、61C、61K等に対応している。
ヘッド240が主走査方向(図5における左右方向)に移動している時にノズル242から打滴が行われる。主走査方向に沿ったヘッド240の往復移動と、副走査方向(図5の縦方向)への記録媒体の間欠送りの組合せによって記録媒体上に2次元の描画が行われる。
N回のスキャン(走査)で所望の記録解像度の画像を完成させる場合、N回の副走査方向の間欠移動(相対移動)によるN+1走査目のときの用紙とヘッドの副走査方向の相対位置は、図示のような関係となる。
つまり、N回書きを行うために、1回目、2回目、3回目…、と間欠送りを行い、N+1回目に丁度、ヘッド(ノズル列)の長さ分に対応した位置につながるようにする。N回書きの動作がシームレスにつながるためには、1走査目の副走査位置から「ノズル列長+1ノズルピッチ」分だけ副走査方向に移動してN+1走査目が行われる。
一例として、ノズル配列密度100npi(ノズル毎インチ)、256個のノズル102が並んだノズル列を有するヘッド100を用いて、主走査方向2パス、副走査方向4パス(主2×副4)の8パス(8回書き)で主走査600dpi×副走査400dpiの記録解像度を実現する場合を考える。
記録解像度から定まる打滴点(画素)の間隔を「打滴点間隔」或いは「画素間隔」、若しくは「ドット間隔」と呼び、記録可能な打滴点の位置を表す格子(マトリクス)を「打滴点格子」或いは「画素格子」と呼ぶ。
主走査600dpi×副走査400dpiの記録解像度の場合、主走査方向の打滴点間隔は、25.4mm(ミリメートル)/600dpi≒42.3μm(マイクロメートル)、副走査方向の打滴点間隔は、25.4mm/400dpi=63.5μmである。これは、打滴点格子の1セル(1画素相当)の大きさ「42.3μm×63.5μm」を表している。
記録媒体の送り制御やヘッド240からの打滴位置(打滴タイミング)の制御については、この記録解像度から定まる打滴点間隔を単位として送り量や位置が制御される。なお、記録解像度から定まる打滴点間隔を「解像度ピッチ」、或いは「画素ピッチ」と呼ぶ場合がある。
N=8(主2×副4)の場合、主走査方向の打滴点ライン(走査線)を2回の走査で埋め、副走査方向の打滴点ライン(走査線)を4回の走査で埋めるように、8回の走査(パス)で2×4個の打滴点格子の記録が行われる。
このような8回書きの描画動作による各走査の番号(1〜8)と、その走査によって記録される打滴位置の関係を模式的に示したものが図6である。図6において1〜8の数字が付された各セルは、ノズル242によって記録される打滴位置(画素位置)を表し、1〜8の数字は、その画素位置が第何回目の走査時に記録されるかという走査の番号を表している。「1」の数字が付されたセル(画素)は、1走査目で記録する打滴位置を表している。
図7から明らかなように、各打滴位置を記録する走査順番を表す1〜8の数字の配置分布は、主2×副4の「2×4」の格子が繰り返しの基本単位となっている。この2×4の格子を「基本単位格子」、或いは「2×4格子」と呼ぶことにする。
2×4格子の埋め方(打滴順序)は、図6、7に示した例に限らず、種々想定できる。図8(a)〜(g)に2×4格子の埋め方の例を示した。もちろん、ここに例示したもの以外の埋め方もある。
〔仮硬化光源の詳細な説明〕
次に、仮硬化光源32A,32Bに適用される仮硬化光源ユニットついて詳説する。なお、仮硬化光源32A,32Bは同一の構成を適用することが可能である。
図9は、仮硬化光源ユニット300の透視斜視図であり、内部の構造物が破線により図示されている。また、図10は、図9に示した仮硬化光源ユニットの内部における光線を記載した透視側面図である。
図9に示すように、仮硬化光源ユニット300は、底板302、LED取付板304A,304B、及びハウジング322により構成される略直方体形状を有する光源箱の構造を有している。
LED取付板304A,304Bは、仮硬化光源ユニット300の長手方向(媒体搬送方向)の両端面に設けられており、それぞれに4つのUV‐LED素子314(図9では、LED取付板304AのUV‐LED素子314Aのみを図示)を含むUV‐LED素子群が設けられている。
ハウジング322内部の上部には、長手方向の両端面から中央部に向かって斜め下方向に傾斜した反射板306が設けられている。また、同方向の略中央部には仕切部材308が設けられており、同方向上流側に設けられているUV‐LED素子群からの紫外線が底板302の同方向下流側領域302Bに到達しないように、かつ、同方向下流側に設けられているUV‐LED素子群からの紫外線が底板302の同方向上流側領域302Aに到達しないように構成されている。
ハウジング322内面、反射板306の底板302と対向する面、及び仕切部材308のUV‐LED素子群と対向する面は、アルミ蒸着による反射面(リフレクター)となっている。
図10は、図9に示した仮硬化光源ユニット300の内部における光線を記載した透視図である。同図に図示したUV‐LED素子314A,314Bから反射板306又は仕切部材308を経て底板302へ至る実線は、UV‐LED素子314A,314Bからの紫外線を表している。
媒体搬送方向上流側のUV‐LED素子314Aから発光させた紫外線を反射させ、該紫外線が底板302の上流側領域302Aへ導かれるように、また、媒体搬送方向下流側のUV‐LED素子314Bから発光させた紫外線を反射させ、該紫外線が底板302の下流側領域302Bへ導かれるように構成されている。
かかる構成を有する仮硬化光源ユニット300は、紫外線の出射部が媒体搬送方向上流側半分と同方向下流側半分とに二分割され、それぞれの照射エネルギーを独立して調整することができる。上流側領域302Aに対応するUV‐LED素子314A、及び下流側領域302Bに対応するUV‐LED素子314314Bの点灯、消灯及び発光光量を適宜調整することで、媒体搬送方向における紫外線の照射エネルギーの分布を発生させることが可能となる。
UV‐LED素子314A,314Bの点灯、消灯及び発光光量の調整は、図4に示す制御系において、制御装置102の指令に応じて光源駆動回路118により、UV‐LED素子314A,314Bへ供給される電流値を調整して行うことができる。
UV‐LED素子314A,314Bには、例えば、発光波長(ピーク値)が385ナノメートル(380ナノメートルから390ナノメートル)の、日亜化学工業(株)社製の紫外発光LED、NC4U134A(商品名)を適用することができる。
仮硬化光源32A,32Bの主走査方向の照射幅は、半値全幅で20ミリメートルとする態様が好ましい。副走査方向の照射幅は半値全幅がノズル列の全長Lwよりわずかに長く(例えば、ノズル列の全長Lwの5%から10%程度長く)とする態様が好ましい。
〔仮硬化光源の照射エネルギーの説明〕
次に、仮硬化光源32A,32Bの媒体搬送方向における上流側領域302Aの照射エネルギーと、下流側領域302Bの照射エネルギーとの関係について詳説する。
(従来技術に係る仮硬化光源の露光条件)
従来、ノズル列61(図3参照)と平行に設けられたUV光源(仮硬化光源32A,32B)の照射エネルギーは、記録媒体の搬送方向について略一様(略均一)であった。
図11は、従来技術に係る露光条件(条件1)の説明図であり、図11(a)は、仮硬化光源32A,32B(図3参照)において、上流側の照射エネルギーが6ミリジュール毎平方センチメートル、下流側の照射エネルギーを6ミリジュール毎平方センチメートルとしたときの、メディア面における照射分布を表す図である。また、図11(b)は、図11(a)におけるメディア搬送方向(X方向)についての照度分布断面を示すグラフである。
図11(a)において、横軸はY方向(キャリッジ30の走査方向)の位置であり、UV‐LEDの中心からの距離(ミリメートル)で表されている。また、縦軸はX方向(記録媒体搬送方向)の位置であり、同方向における露光領域の中央部からの距離(ミリメートル)で表されている。
図11(b)において、横軸は照射エネルギー(ワット毎平方ミリメートル)であり、縦軸はX方向の位置であり、同方向における露光領域の中央部からの距離(ミリメートル)で表されている。
上記の露光条件(条件1)において、キャリッジ(図1参照)の走査速度が1270ミリメートル毎秒、記録解像度が600dpi×400dpi(パス数8)で、黒色の濃度100%(以下、K100%と記載)のべた画像を形成した。
図12は、露光条件を条件1とした場合に形成されたK100%のべた画像を、スキャナによって読み取った読取データであり、横軸はX方向の位置であり、縦軸は読取データ値である。なお、読取データ値は、RGBに分解された8ビットデータであり、濃度を表している。
読取データ値の振幅は濃度差、つまり、濃度ムラを表しており、かかる読取データ値はスワス幅に対応する周期性を有していることから、当該K100%のべた画像はスワス幅周期の濃度ムラ(バンディング)が発生していることが把握される。
すなわち、X方向について、仮硬化光源32A,32Bの照射エネルギーが略一様である場合には、図12に示すように、スワス幅周期に対応する周期性を有する濃度ムラが発生することがありうる。
図13は、従来技術に係る露光条件(条件2)の説明図であり、図13(a)は、上記条件1に対して、上流側の照射エネルギー、下流側の照射エネルギーとも8ミリジュール毎平方センチメートルとしたときの、メディア面における照射分布を表す図である。また、図13(b)は、図13(a)におけるメディア搬送方向(X方向)についての照度分布断面を示すグラフである。
また、図14は、露光条件を条件2とし、キャリッジ30の搬送速度、及び画像の記録解像度(パス数)の条件を上記と同じく、1270ミリメートル毎秒、600dpi×400dpiとして形成されたK100%のベタ画像のスキャナによる読取データを表している。
図14に示すように、紫外線の総照射エネルギーを条件1よりも大きくすると、濃度ムラ(バンディング)の改善がみられるものの、依然として、わずかにスワス幅周期に対応する周期性を有する濃度ムラが発生していることが把握される。
マルチパス記録(シングリング打滴)を行った場合には、ノズル列の同方向下流側(図3における下側)のノズルから打滴されたインクは、同方向上流側(図3における上側)のノズルから打滴されたインクよりも、総露光量(紫外線の総照射エネルギー)が小さくなっている。
例えば、ノズル列を8分割して、パス数が「8」のマルチパス記録をした場合、ノズル列の最上流側のノズルから打滴されたインクは、当該ノズルの脇に位置するUV光源による露光の他に、当該ノズルに後続するノズルの脇に位置するUV光源からの露光もあり、総露光回数(UV光源が当該インクの上を通過する回数)は、パス数と同じく8回となる。
一方、ノズル列の最下流側のノズルから打滴されたインクは、当該ノズルの脇に位置するUV光源のみがその上を通過するので、露光回数は1回となる。
すなわち、ノズル列の記録媒体搬送方向上流側のノズルから打滴されたインクと、同方向下流側のノズルから打滴されたインクとの総照射エネルギー(総露光量)の違いが、スワス幅周期に対応する周期性を有する濃度ムラの原因になっていると考えられる。
(本発明の実施形態に係る仮硬化処理の露光条件)
図15は、本発明の実施形態に係る仮硬化処理における仮硬化光源32A,32B(図3参照)の露光条件(条件3)の説明図である。図15(a)は、仮硬化光源ユニット300において、上流側の照射エネルギーが4ミリジュール毎平方センチメートル、下流側の照射エネルギーを8ミリジュール毎平方センチメートルとしたときの、メディア面における照射分布を表す図である。また、図15(b)は、図15(a)におけるメディア搬送方向(X方向)についての照度分布断面を示すグラフである。
図16は、露光条件を条件3とし、キャリッジ30の搬送速度、及び画像の記録解像度(パス数)の条件を上記と同じく、1270ミリメートル毎秒、600dpi×400dpiとして形成されたK100%のベタ画像のスキャナによる読取データを表している。
同図に示す読取データ値は、スワス幅周期に対応する周期を有する振幅が視認されず、スワス幅周期に対応する周期性を有する濃度ムラが改善されていることが把握できる。
なお、スワス幅周期に対応する周期性を有する濃度ムラの視認性の改善は、100%以外の濃度についても、濃度100%ベタ画像の結果から同様の効果を得ることが可能であると推測される。
つまり、実質的なすべての濃度において、スワス幅周期に対応する周期性を有する濃度ムラの視認性の改善が見込まれるといえる。
(黒(K)以外の色について)
次に、黒以外の色について、黒と同じ条件が適用可能であるかを説明する。図17から図19は、シアン(C)の濃度100%のべた画像(以下、C100%画像と記載)をスキャナによって読み取った読取データであり、図17に示す読取データは、露光条件が条件1のC100%画像のものであり、図18に示す読取データは、露光条件が条件2のC100%画像のものである。また、図19に示す読取データは、露光条件が条件3のC100%画像のものである。
図17及び図18に示すように、露光条件が条件1、2で形成されたC100%画像は、スワス幅周期に対応する周期性を有する振幅が存在している。一方、図19に示すように、露光条件が条件3で形成されたC100%画像は、図17、図18に示す読取データと比較して、周期的を有する振幅成分が低減されているといえる。
以上まとめると、黒以外の色について、シアンでも黒と同様に、スワス幅周期に対応する周期性を有するの濃度ムラが改善されることが確認された。このシアンの結果に基づき、マゼンタ、イエローなどの他の色についても同様の効果を得られると考えられる。
(照射エネルギー比について)
次に、記録媒体搬送方向上流側の照射エネルギーに対する、同方向下流側の照射エネルギーの比率(照射エネルギー比)を変えたときの、周期性を有する濃度ムラの発生の有無について説明する。
図20は、記録媒体搬送方向上流側の照射エネルギーに対する同方向下流側の照射エネルギーの比率を変えたときの、濃度ムラ(バンディング)の評価結果を表す表である。
上流側の照射エネルギー及び下流側の照射エネルギーをそれぞれ2.4ミリジュール毎平方センチメートル、4.0ミリジュール毎平方センチメートル、6.0ミリジュール毎平方センチメートル、8.0ミリジュール毎平方センチメートルの4段階に可変させてベタ画像を形成し、形成されたべた画像について、周期性を有する濃度ムラが発生しているか否かを目視で観察した。
同図における評価「A」は、周期的な濃度ムラがほとんど視認されず良好な画像であることを意味し、評価「B」は、周期的な濃度ムラがわずかに視認されるものの、許容レベルの画像であることを意味している。
一方、評価「C」は、周期的な濃度ムラが視認され、許容レベルに達しない画像であることを意味している。また、同図内のかっこ内の数値は、照射エネルギー比(=下流側照射エネルギー/上流側照射エネルギー)を示している。
同図に示すように、照射エネルギー比が1.0を超える場合は、すべて評価「A」であり、周期的な濃度ムラが視認されない良好な画像が形成されうる。一方、照射エネルギー比が1.0の場合は、照射エネルギーによって評価が「A」、「B」、「C」のいずれにもなることがあり、安定していない。
さらに、照射エネルギー比が1.0未満の場合は、すべて評価「C」であり、周期的な濃度ムラが視認される画像が形成される可能性が高い。
以上、照射エネルギー比についてまとめると、仮硬化光源の露光条件を条件3(下流側照射エネルギー/上流側照射エネルギー=2.0)とすることで、K100%べた画像、C100%べた画像において、スワス幅周期の濃度ムラの視認性を大幅に改善することが可能である。
なお、図20に示す評価結果に基づき、下流側照射エネルギー>上流側照射エネルギー(下流側照射エネルギー/上流側照射エネルギー>1)まで、同様の効果を奏する範囲を拡張することが可能であるといえる。
(効果1:1スワス内のバンディングの改善)
先に述べたように、ノズル列の記録媒体搬送方向上流側のノズルから打滴されたインクと、同方向下流側のノズルから打滴されたインクとの総照射エネルギー(総露光量)の違いが、スワス幅周期の濃度ムラの原因になっていると考えられる。
そうすると、同方向上流側のノズルから打滴されたインクと、同方向下流側のノズルから打滴されたインクとの総照射エネルギーの差を小さくすることで、スワス幅周期の濃度ムラを改善することができると考えられる。
1スワス幅の領域において、記録媒体搬送方向上流側のノズルから打滴されたインク(先に打滴されたインク)の凹凸が低く、より濡れ広がっている方が、同方向下流側のノズルから打滴されたインク(後から打滴されたインク)が記録媒体に直接接触する部分が小さくなり、当該後から打滴されたインクは濡れ広がりやすくなる。
そうすると、濡れ広がりが小さく接触角が大きいまま硬化するインク(ドット)がより少なくなるので、画像を見る際に光を正反射させる凸形状のドット(打滴点)の存在確率が低下する。
つまり、1スワス幅の領域内に存在するドット間の高低差がより小さくなることで、1スワス幅の領域内の先に打滴されたドットと、後から打滴されたドットとの反射の違いが小さくなることで、1スワス幅の領域内の光沢感の差が小さくなり、1スワス幅の領域内のバンディングが改善されたと推測される。
(効果2:1スワス幅周期の濃度ムラの改善)
また、記録媒体搬送方向上流側のノズルから打滴されたインクの半硬化レベル(硬化の程度)と、同方向下流側のノズルから打滴されたインクの半硬化レベルが、同方向上流側の照射エネルギーと同方向下流側の照射エネルギーとの光量差によって調整することで、隣接する1スワス幅の領域において、先に打滴された同方向下流側の領域における上端のドットと、後から打滴される同方向上流側の領域における下端のドットが着弾干渉し、該ドットの移動が発生する際に、どちら側へどの程度移動可能かが調整される。
つまり、隣接する1スワス幅の領域を考えたときに、記録媒体搬送方向下流側の領域における同方向上流側のドットは、仮硬化光源32A,32Bの同方向上流側の照射エネルギーが適用されるので、相対的に弱い紫外線を用いて硬化させる。一方、同方向上流側領域における同方向下流側のドットは、仮硬化光源32A,32Bの同方向下流側の照射エネルギーが適用されるので、相対的に弱い紫外線により硬化される。
これらのドット間では着弾干渉が発生し、一方のドットが他方のドットの方へ移動するか、両方のドットが互いに近づくように移動する。着弾干渉が発生した際のドットの移動は、各ドットの半硬化レベルに依存すると考えられるので、同方向上流側の照射エネルギーと同方向下流側の照射エネルギーを調整することで、ドットの移動の向き、移動量を調整することができると考えられる。
したがって、この着弾干渉によるドットの移動に起因する、1スワス周期に対応する周期性を有する濃度ムラ(隣接する1スワス幅の領域の境界における濃度の低いすじ)の視認性を低減させることが可能である。
(効果3:ドットの記録媒体への密着性の確保)
一方、仮硬化光源32A,32Bの記録媒体搬送方向上流側の照射エネルギーを同方向下流側よりも下げることで、ドットの記録媒体への密着性の低下が懸念される。図1に示す装置構成では、インクジェットヘッド24に後続する本硬化光源34A,34Bによって、本硬化処理が施されるので、ドットの記録媒体への密着性の低下が防止される。
なお、図1に示す装置構成では、記録媒体搬送方向におけるインクジェットヘッド24の長さと、同方向における仮硬化光源32A,32Bの照射領域の長さが略同一となっているが、同方向における仮硬化光源32A,32Bの照射領域の長さをさらに同方向下流側へ延長することでも、ドットの記録媒体への密着性の低下を防止しうる。
特に、仮硬化光源32A,32Bの記録媒体搬送方向下流側に本硬化光源34A,34Bを備え、仮硬化光源32A,32Bによる仮硬化処理の後に、本硬化光源34A,34Bによる本硬化処理を施す態様は、ドットの記録媒体への密着性を改善する効果が著しい。
また、記録媒体搬送方向の両端部にUV‐LED素子を備える場合、照射エネルギーを相対的に低減させる同方向上流側のUV‐LED素子数を、同方向下流側のUV‐LED素子数よりも減らすことも可能である。
また、照射エネルギーを相対的に低減させる同方向上流側のUV‐LED素子に供給される電流を低減させることで、仮硬化光源32A,32Bの省電力化が可能となる。
〔変形例〕
次に、上述した実施形態の変形例について説明する。本変形例に係る仮硬化光源ユニットは、記録媒体搬送方向(X方向)の一方の端部のみに複数個のUV‐LED314が設けられており、複数のUV‐LED314のうち一部が上流側領域へ紫外線を照射し、残りのUV‐LEDが下流側領域へ紫外線を照射するように構成されている。
図21は、本変形例に係る仮硬化光源ユニットが適用された紫外線照射部の配置構成を示す模式図である。なお、図21ではインクジェットヘッドの記載を省略し、仮硬化光源ユニット332A,332Bと本硬化光源334A,334Bの配置形態のみを示した。
また、図21では、本硬化光源334A,334Bを構成する各UV−LED素子315の配置形態を示すためLED背面側を表示した。
図21の本硬化光源334A,334Bは、それぞれ12個のUV−LED素子315を備え、Y方向に6個のLEDが一定間隔で並んだLED素子列をX方向に2列並べた配置形態となっている。この6×2列で配置されるLED素子群は、X方向の上流側のLED素子列と下流側のLED素子列とがY方向に配置位置をずらした千鳥状の配置となっている。なお、本硬化光源334A,334Bを構成するLEDの個数及び配置形態はこの例に限定されない。
図21に示した仮硬化光源ユニット332A,332Bは、X方向の下流側の端面に複数個のUV−LED素子314が配置されており、点灯させるUV−LED素子によって、照射する領域を選択可能な光源箱の構造となっている。
ここでは、仮硬化光源ユニット332A,332Bは、それぞれ4個のUV−LED素子314が上下2段、左右2列の2×2配列形態で配置されている例を示すが、UV−LED素子の個数及び配置形態はこの例に限定されない。
図22は、仮硬化光源ユニット332A(又は332B)を下面側から見た斜視図である。ハウジング322の底面に配置された光拡散板346の光出射面347のうち、UV−LED素子314に近い領域には、光量分布を調整するためのパターン348が形成されている。
図23は、ハウジング322の内部構造を示している。図23では光拡散板346の記載を省略している。図23に示すように、ハウジング322内には、上下に並ぶUV−LED素子314の光伝達空間を隔てる分割部品としてのミラー部材352が配置されている。
図24は、ハウジング322の内部に配置される分割部品(ミラー部材352)の例を示した斜視図である。図23及び図24に示したように、仮硬化光源ユニット(光源箱)332A(332B)の内部は、ミラー部材352によって区画される二重天井の構造となっている。
ミラー部材352の上側の面352A及び下側の面352Bは、いずれも反射面として機能する。また、ハウジング322を構成するフレーム部材354の天井面(ハウジング322の内側の面)も反射面として機能する。
図25は、仮硬化光源ユニット332において、全面照射時の光線を示した透視図である。図26は上流のみ照射時の様子を示す透視図、図27は、下流のみ照射時の様子を示す透視図である。
ハウジング322のX方向片側端面に配置される4個のUV−LED素子314のうち、上段に配置される2個のUV−LED素子314Aから発せられる光は、図26に示すように、ミラー部材352の上面側(352A)及びハウジング322の天面322Aで反射され、記録媒体12上に導かれる。この上段のUV−LED素子314Aによる照射領域261は、当該仮硬化光源ユニット332A(332B)の全照射範囲のうち、X方向の上流側の領域となる。
一方、4個のUV−LED素子314のうち、下段に配置される2個のUV−LED素子314Bから発せられる光は、図27に示すように、ミラー部材352の下面側(352B)で反射され、記録媒体12上に照射される。この下段のUV−LED素子314Bによる照射領域362は、当該仮硬化光源ユニット332A(332B)の全照射範囲のうち、X方向の下流側の領域となる。
このように、ミラー部材352の配置によって、紫外線の照射領域が上流側、下流側の
2領域に分割され、それぞれの照射領域がノズル列の上流側領域、及び下流側領域に対応している。
かかる構成において、記録媒体搬送方向下流側領域に紫外線を照射するための下段のUV‐LED素子314Bの照射エネルギーが、同方向上流側領域に紫外線を照射するための上段のUV‐LED314Aの照射エネルギーを超えるように、上段のUV‐LED素子314A及び下段のUV‐LED素子314Bに供給する電流を調整することで、同方向上流側領域の照射エネルギー>同方向下流側領域の照射エネルギーとなる、仮硬化光源ユニット332A,332の照射エネルギー制御が実現されている。
かかる変形例によれば、UV‐LED素子数を減らすことができ、また、仮硬化光源32A,32Bの省電力化が可能である。
なお、上記した実施形態及び変形例では、記録媒体搬送方向について仮硬化光源の照射領域が二分割される態様を例示したが、仮硬化光源の照射領域を三分割以上として、同方向について照射エネルギーに分布を持たせてもよい。
例えば、仮硬化光源の照射領域が三分割される態様では、同方向上流側から照射エネルギー大、照射エネルギー中、照射エネルギー小としてもよい。また、仮硬化光源の照射領域が四分割される態様では、同方向上流側から照射エネルギー大、照射エネルギー中、照射エネルギー中、照射エネルギー小としてもよいし、照射エネルギー大、照射エネルギー中、照射エネルギー小、照射エネルギー小、照射エネルギー大、照射エネルギー大、照射エネルギー中、照射エネルギー小としてもよい。
また、記録媒体搬送方向について仮硬化光源の照射領域を二分割する態様は、同方向の中央部を境界とする態様に限定されず、該照射領域を2:1や3:1など分割の境界を適宜設けることができる。分割数、分割領域の境界は、パス数に応じて決めてもよい。
さらに、仮硬化光源32A,32Bの記録媒体と対向する面にUV‐LED素子等の発光光源を配置する形態も可能である。
〔活性光線〕
活性光線とは、その照射によりインク組成物中に開始種を発生させるエネルギーを付与できる輻射線(放射線)であり、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含する。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
本例では、インクを硬化させる活性光線の一例として紫外線を例示したが、インクに含まれる重合開始剤分解して、ラジカルなどの重合開始種を発生させ、その開始種の機能に重合性化合物の重合反応が、生起、促進されれば、上記した他の活性光線を適用することも可能である。
活性光線のピーク波長は、増感剤の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600ナノメートルであることが好ましく、300〜450ナノメートルであることがより好ましく、320〜420ナノメートルであることが更に好ましい。特に、活性光線は、ピーク波長が340〜410ナノメートルの範囲の紫外線であることが特に好ましい。
本例に示すインクジェット記録装置では、ピーク波長が380〜390ナノメートル(385ナノメートルを中心としてプラスマイナス5ナノメートルの範囲)が最も好ましい。
本硬化光源34A,34Bの発光光源に適用されるUV‐LED素子は、仮硬化光源32A,32Bと同様に、日亜化学工業(株)社製のNC4U134Aを適用することができる。
なお、本硬化光源34A,34Bの発光源は、UV‐LED素子35に限らず、UVランプなどを用いることも可能である。例えば、活性光線の光源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクの硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。
一方、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更に、LED(UV‐LED)、LD(UV‐LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として好ましい。
〔記録媒体〕
記録媒体は、紙、不織布、塩化ビニル、合成化学繊維、ポリエチレン、ポリエステル、ターポリンなど、材質を問わず、また、浸透性媒体、非浸透性媒体を問わず、様々な媒体を用いることができる。
すなわち、本発明に係るインクジェット記録装置(画像形成方法)に適用可能な記録媒体として、支持体や記録材料として公知の記録媒体を使用することができる。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム(複合アルミ板等)等が挙げられる。また、本発明に係るインクジェット記録装置に適用される記録媒体として、非吸収性記録媒体を好適に使用することができる。
〔インク組成物〕
次に、インク組成物(インク)について詳細に説明する。なお、以下の説明において、「A(数値)〜B(数値)」と記載した場合は、「A以上B以下」を意味することとする。
また、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタアクリル」のいずれか一方、又はこれらの両方を含む語である。「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタアクリレート」のいずれか一方、又はこれらの両方を含む語である。
(インク組成物の概要)
インク組成物は、紫外線等の活性光線(活性放射線、活性エネルギー線)により硬化可能な油性のインク組成物である。
インク組成物は、成分Aとしてラジカル重合性化合物、成分Bとしてラジカル重合開始剤、及び成分Cとして着色剤を含有する。
(ラジカル重合性化合物(成分A)の説明)
ラジカル重合性化合物(成分A)は、単官能ラジカル重合性化合物(成分A‐1)と、多官能ラジカル重合性化合物(成分A‐2)と、を含有する。成分A‐1の含有量は、成分Aの総重量に対して50〜90重量%であり、好ましくは50〜80重量%、更に好ましくは60〜80重量%である。成分A‐1は、エチレン性不飽和基を1つ有するラジカル重合性化合物が好ましい。
成分A‐1は、N‐ビニル化合物(成分A‐1‐1)と、次式(I)で表される化合物(成分A‐1‐2)と、を含有する。
(上記式(I)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、X1は単結合、又は、二価の連結基を表す。)
上記式(I)で表される化合物において、R1は、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基が好ましく、R2及びR3が共に水素原子であることがより好ましい。
X1における二価の連結基としては、本発明の効果を大きく損なうものでない限り特に制限はないが、二価の炭化水素基、又は、炭化水素基及びエーテル結合を組み合わせた二価の基であることが好ましく、二価の炭化水素基、ポリ(アルキレンオキシ)基、又は、ポリ(アルキレンオキシ)アルキレン基であることがより好ましい。また、前記二価の連結基の炭素数は、1〜60であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。
X1は、単結合、二価の炭化水素基、又は炭化水素基及びエーテル結合を組み合わせた二価の基であることが好ましく、炭素数1〜20の二価の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1〜8の二価の炭化水素基であることが更に好ましく、メチレン基であることが特に好ましい。
成分A‐1‐1は、N‐ビニルラクタム類、又はN‐ビニルホルムアミドを好ましく含有することができ、N‐ビニルラクタム類としては、次式(a)で表される化合物が好ましい。
上記式(a)中、nは2〜6の整数を表し、インク組成物が硬化した後の柔軟性、被記録媒体との密着性、及び原材料の入手性の観点から、nは3〜5の整数であることが好ましく、nが3又は5であることがより好ましく、nが5(N‐ビニルカプロラクタム)であることが特に好ましい。上記式(a)で表される化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
N‐ビニルラクタム類は、ラクタム環上の水素原子がアルキル基、アリール基等の置換基により置換されていてもよく、ラクタム環と飽和又は不飽和環構造とが連結していてもよい。
成分A‐1‐1に適用可能なN‐ビニルラクタム類の一例として、N‐ビニルカプロラクタムが挙げられる。N‐ビニルカプロラクタムは安全性に優れ、汎用的で比較的安価に入手でき、特に良好なインク硬化性、及び硬化膜の被記録媒体への良好な密着性が得られるので好ましい。
成分A‐1‐1に適用可能なN‐ビニルホルムアミドとしては、下記構造の化合物が好ましく挙げられる。
成分A‐1‐1の含有量は、成分A‐1の総重量に対して10〜40重量%であり、好ましくは15〜30重量%である。
成分A‐1‐2は、サイクリックトリメチロールプロパンフォーマルアクリレートを適用することができる。以下に成分A‐1‐2の具体例を挙げるが、これらの化合物に限定されるものではない。なお、下記の具体例中、Rは水素原子、又は、メチル基を表す。
これらの中でも、サイクリックトリメチロールプロパンフォーマル(メタ)アクリレートが好ましく、サイクリックトリメチロールプロパンフォーマルアクリレート(CTFA)が特に好ましい。
成分A‐1‐2の含有量は、成分A‐1の総重量に対して5〜90重量%であり、好ましくは30〜90重量%である。
成分A‐2は、式(II)で表される3官能エチレン性不飽和化合物を少なくとも2種含有し、成分A‐2の含有量は、成分Aの総重量に対し0.1〜25重量%が好ましく、0.5〜10重量%がより好ましく、更に好ましくは、2〜9重量%である。
(上記式(II)中、R11はそれぞれ独立に水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、R12は水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、R13はそれぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表し、X2は単結合、又は二価の連結基を表し、p、q及びrはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。)
上記式(II)で表される化合物において、R12は水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、アルキル基は直鎖でも分岐でもよい。置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基が挙げられる。R12は、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、メチロール基、エチロール基が挙げられ、特に好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、又はメチロール基である。
R13はそれぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表し、好ましくは水素原子である。
上記式(II)中、X2は単結合、又は二価の連結基を表し、二価の連結基としては、当該インク組成物の効果を大きく損なうものでない限り特に制限はないが、二価の炭化水素基、又は、炭化水素基及びエーテル結合を組み合わせた二価の連結基であることが好ましい。
X2としては、単結合、炭素数1〜6の二価の炭化水素基、又は炭素数1〜6のオキシアルキレン基であることが好ましく、単結合又はメチレン基であることが特に好ましい。
上記式(II)中、p、q及びrはそれぞれ独立に、0〜5の整数を表す。p、q及びrはそれぞれ独立に、0〜3が好ましく、0〜2が特に好ましい。また、p、q及びrの値の好ましい組み合わせとしては、例えばp=q=r=0、p=q=r=1、又はp=q=r=2等が挙げられる。
以下に、p、q及びrが好ましい値をとる場合の化合物の具体例について説明するが、これらに制限されるものではない。
p=q=r=0を満たす場合の上記式(II)の化合物の好ましい態様としては、トリメチロールプロパントリアクリレート(R12はエチル基、R13は水素原子、X2はメチレン基の場合)、トリメチロールプロパントリメタアクリレート(R12はエチル基、R13はメチル基、X2はメチレン基の場合)、トリメチロールエタントリアクリレート(R12はメチル基、R13は水素原子、X2はメチレンの場合)、トリメチロールエタントリメタアクリレート(R12はメチル基、R13はメチル基、X2はメチレンの場合)、テトラメチロールメタントリアクリレート(R12はメチロール基、R13は水素原子、X2はメチレン基の場合)、テトラメチロールメタントリメタアクリレート(R12はメチロール基、R13はメチル基、X2はメチレン基の場合)、グリセリントリアクリレート(R12は水素原子、R13は水素原子、X2はメチレン基の場合)、グリセリントリメタアクリレート(R12は水素原子、R13はメチル基、X2はメチレン基の場合)が挙げられる。
p=q=r=1の場合の上記式(II)の化合物の好ましい態様としては、下記構造式の化合物が挙げられる。
p、q及びrが、他の値をとる場合の上記式(II)の化合物の好ましい態様としては、下記構造式の化合物が挙げられる。
上記式(II)で表される化合物は、2種類以上を複数組み合わせて使用することが好ましい。その場合の好ましい態様は、上記式(II‐a)と上記式(II‐d)との混合使用、又はトリメチロールプロパントリアクリレートと上記式(II‐d)との混合使用が挙げられ、トリメチロールプロパントリアクリレートと上記式(II‐d)との混合使用が特に好ましい。少なくとも1つがトリメチロールプロパントリアクリレートであることが好ましく、その含有量が成分Aの総重量に対し0.5〜8重量%であることが好ましい。
インク組成物は、成分A‐2として、上記式(II)で表される3官能エチレン性不飽和化合物に代わり、次式(II’)で表される3官能エチレン性不飽和化合物を少なくとも1種含有してもよい。
なお、成分A‐2として次式(II’)で表される化合物が適用される場合でも、その含有量は、成分Aの総重量に対し0.1〜25重量%であり、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは、2〜9重量%である。
(上記式(II’)中、R11は水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、R12は水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、R13はそれぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表し、X2は単結合、又は二価の連結基を表し、p、q及びrはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、p+q+r≧1の関係を満たす。)
上記式(II’)で表される化合物において、R11、R12、R13、及びX2は、上記式(II)中のR11、R12、R13、及びX2と同義であり、好ましい態様も同様である。p、q及びrはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、p+q+r≧1の関係を満たす。p、q及びrはそれぞれ独立に、1〜3が好ましく、1又は2が特に好ましい。
p、q及びrが好ましい値をとる場合の化合物の具体例は、上記式(II)で表される化合物の好ましい態様で挙げた化合物中の、上記式(II‐a)、上記式(II‐b)、上記式(II‐c)等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
(成分A‐1‐3を含む態様)
上記したインク組成物のA‐1は、さらに成分A‐1‐3として芳香族炭化水素環を有する(メタ)アクリレート化合物を好ましく含有することができる。成分A‐1‐3として、特開2009‐96985号公報の段落〔0048〕〜〔0063〕に記載された、芳香族単官能ラジカル重合性モノマーが好ましく挙げられる。本発明においては、芳香族炭化水素環を有する単官能(メタ)アクリレート化合物としては、次式(a‐2)で表される化合物が好ましい。
(式(a‐2)中、R1は水素原子、又は、メチル基を表し、X1は二価の連結基を表し、Arは一価の芳香族炭化水素基を表す。)
上記式(a‐2)中、R1として好ましくは、水素原子である。
X1は二価の連結基を表し、エーテル結合(‐O‐)、エステル結合(‐C(O)O‐若しくは‐OC(O)‐)、アミド結合(‐C(O)NR’‐若しくは‐NR’C(O)‐)、カルボニル基(‐C(O)‐)、イミノ基(‐NR’‐)、置換基を有していてもよい炭素数1〜15のアルキレン基、又は、これらを2以上組み合わせた二価の基であることが好ましい。なお、R’は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基、又は、炭素数6〜20のアリール基を表す。置換基としては、ヒドロキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。
R1及びX1を含む部分(H2C=C(R1)‐C(O)O‐X1‐)は、芳香族炭化水素環上の任意の位置で結合することができる。また、着色剤との親和性を向上させるという観点から、X1の芳香族炭化水素環と結合する端部は、酸素原子であることが好ましく、エーテル性酸素原子であることがより好ましい。式(a‐2)におけるX1は、*‐(LO)q‐であることが好ましい。ここで、*は、式(a‐2)のカルボン酸エステル結合との結合位置を示し、qは0〜10の整数であり、Lは炭素数2〜4のアルキレン基を表す。qは0〜4の整数であることが好ましく、0〜2の整数であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましい。(LO)qは、エチレンオキシド鎖又はプロピレンオキシド鎖であることが好ましい。
Arは、一価の芳香族炭化水素基を表す。
一価の芳香族炭化水素基としては、1〜4つの環を有する一価の単環又は多環芳香族炭化水素基が挙げられ、具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、1H‐インデン、9H‐フルオレン、1H‐フェナレン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、ナフタセン、テトラフェニレン、ビフェニレン、as‐インダセン、s‐インダセン、アセナフチレン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、クリセン、プレイアンデン等から1つの水素原子を除いた基が挙げられる。
中でも、本発明においては、フェニル基、ナフチル基であることが好ましく、単環芳香族炭化水素基、すなわちフェニル基であることがより好ましい。
一価の芳香族炭化水素基は、芳香環上に置換基を有していてもよい。
上記置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシ基、炭素数1〜10のアシル基、ヒドロキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、チオール基、シロキサン基、又は、更に置換基を有していてもよい総炭素数30以下の炭化水素基若しくは複素環基であることが好ましい。
前記置換基は、更に置換基を有していてもよく、例えば、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基が挙げられる。
一価の芳香族炭化水素基が複数の置換基を有する場合、前記置換基は同一でも異なっていてもよい。また置換基同士が結合して5員又は6員の環を形成してもよい
また、一価の芳香族炭化水素基は、芳香環上に置換基を有していないことが好ましい。
本例においては、上記式(a‐2)で表される化合物としては、フェニル基を有する化合物が好ましく、2‐フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましく、2‐フェノキシエチル(メタ)アクリレートが更に好ましく、2‐フェノキシエチルアクリレート(PEA)が特に好ましい。
本例に適用されるインク組成物における、成分A‐1‐3の含有量は、成分A‐1の総重量に対し5〜40重量%であり、より好ましくは8〜30重量%である。
(他の重合性化合物を含む態様)
インク組成物は、上記した化合物以外の、他の重合性化合物を含有していてもよい。他の重合性化合物としては、特に制限はないがエチレン性不飽和化合物が好ましい。
他の重合性化合物としては、公知の重合性化合物を用いることができ、上記した化合物以外の(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物、アリル化合物、不飽和カルボン酸類等が例示できる。
例えば、特開2009‐221414号公報に記載のラジカル重合性モノマー、特開2009‐209289号公報に記載の重合性化合物、特開2009‐191183号公報に記載のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
インク組成物は、上記した化合物以外の、2官能(メタ)アクリレート化合物を好ましく使用できる。2官能(メタ)アクリレート化合物としては、炭素数5以上の分岐を有していてもよい炭化水素鎖を有する2官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
2官能(メタ)アクリレート化合物の好ましい例としては、炭素数5以上の炭化水素鎖を分子内に有する2官能(メタ)アクリレート化合物であり、具体的には、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリデカンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタデカンジオールジ(メタ)アクリレート、3‐メチル‐1,5‐ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2‐n‐ブチル‐2‐エチル‐1,3‐プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及び、シクロヘキサンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが特に好ましく挙げられる。
他の重合性化合物として、さらに、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物を用いることもできる。4官能(メタ)アクリレート化合物の好ましい例としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
その他の多官能(メタ)アクリレートとしては、ビス(4‐(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2‐ビス(4‐(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
また、他の重合性化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。
他の重合性化合物として具体的には、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート、N‐メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられる。
更に具体的には、山下晋三編「架橋剤ハンドブック」(1981年、大成社);加藤清視編「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編「UV・EB硬化技術の応用と市場」79頁(1989年、(株)シーエムシー出版);滝山栄一郎著「ポリエステル樹脂ハンドブック」(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品又は業界で公知のラジカル重合性又は架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。
他の重合性化合物の分子量は、80〜2,000であることが好ましく、80〜1,000であることがより好ましく、80〜800であることが更に好ましい。
他の重合性化合物として、単官能ビニルエーテル化合物を用いることも好ましい。好適に用いられる単官能ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n‐ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2‐エチルヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n‐プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。
また、多官能ビニルエーテル化合物を用いることもできる。好適に用いられる多官能ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物が挙げられる。
他の重合性化合物を含有する場合、他の重合性化合物の含有量は、重合性化合物の全重量に対し、1〜50重量%が好ましく、2〜40重量%がより好ましく、2〜30重量%が特に好ましい。
(ラジカル重合開始剤(成分B)の説明)
ラジカル重合開始剤(成分B)として、モノアシルフォスフィンオキサイド化合物、及び/又はビスアシルホスフィンオキサイド化合物、並びに、チオキサントン化合物を適用することができる。
記録媒体上に打滴されたインク組成物は、活性光線を照射することによって硬化する。これは、インク組成物に含まれるラジカル重合開始剤が活性光線の照射により分解して、ラジカルなどの重合開始種を発生し、その開始種の機能に重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。
なお、ラジカル重合開始剤は、活性光線等の外部エネルギーを吸収して重合開始種を生成する化合物だけでなく、特定の活性エネルギー線を吸収して重合開始剤の分解を促進させる化合物(いわゆる、増感剤)も含まれる。
ラジカル重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が活性放射線を吸収して励起状態となり、ラジカル重合開始剤と接触することによってラジカル重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。増感剤としては例えば、特開2008‐208190号公報に記載のものが挙げられる。
また、成分Bとして、モノアシルフォスフィンオキサイド化合物(成分B‐1)、及び/又はビスアシルホスフィンオキサイド化合物(成分B‐2)、並びにチオキサントン化合物(成分B‐3)を含有することが好ましい。
成分Bと、先に説明した成分A‐1、A‐2、及び着色剤(成分C)との組み合わせにより、硬化性、吐出安定性に優れ、得られる硬化膜の基材密着性及び光沢性に優れたインク組成物が得られる。
以下に、モノアシルホスフィン化合物(成分B‐1)、ビスアシルホスフィンオキサイド化合物(成分B‐2)、及びチオキサントン化合物(成分B‐3)について詳説する。
モノアシルホスフィン化合物(成分B‐1)としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、次式(b‐1)で表されるモノアシルフォスフィンオキサイド化合物であることが好ましい。
(上記式(b‐1)中、R1D、R2D、R3Dは、それぞれ独立に、メチル基又はエチル基を置換基として有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
上記式(b‐1)で表されるモノアシルフォスフィンオキサイド化合物としては、R1D〜R3Dが、それぞれ独立に、置換基としてメチル基を有していてもよいフェニル基であることが好ましく、R2D及びR3Dがフェニル基であり、R1Dが1〜3個のメチル基を有するフェニル基であることがより好ましい。
中でも、2,4,6‐トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(Darocur TPO:チバ・ジャパン社製、Lucirin TPO:BASF社製)が好ましい。
成分B‐1の含有量は、インク組成物全体の0.1〜3重量%が好ましく、0.5〜3重量%であることがより好ましい。
ビスアシルホスフィンオキサイド化合物(成分B‐2)としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、次式(b‐2)で表される化合物であることが好ましい。
(上記式(b‐2)中、R1E、R2E及びR3Eはそれぞれ独立に、メチル基又はエチル基を置換基として有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
ビスアシルホスフィンオキサイド化合物としては、公知の化合物が使用できる。例えば、特開平3‐101686号公報、特開平5‐345790号公報、特開平6‐298818号公報に記載のビスアシルホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。
具体例としては、ビス(2,6‐ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6‐ジクロロベンゾイル)‐2,5‐ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6‐ジクロロベンゾイル)‐4‐エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6‐ジクロロベンゾイル)‐4‐プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6‐ジクロロベンゾイル)‐2‐ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6‐ジクロロベンゾイル)‐1‐ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6‐ジクロロベンゾイル)‐4‐クロロフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6‐ジクロロベンゾイル)‐2,4‐ジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6‐ジクロロベンゾイル)デシルホスフィンオキサイド、ビス(2,6‐ジクロロベンゾイル)‐4‐オクチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)‐2,5‐ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6‐ジクロロ3,4,5‐トリメトキシベンゾイル)‐2,5‐ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6‐ジクロロ‐3,4,5‐トリメトキシベンゾイル)‐4‐エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2‐メチル‐1‐ナフトイル)‐2,5‐ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2‐メチル‐1‐ナフトイル)‐4‐エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2‐メチル‐1‐ナフトイル)‐2‐ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2‐メチル‐1‐ナフトイル)‐4‐プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2‐メチル‐1‐ナフトイル)‐2,5‐ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2‐メトキシ‐1‐ナフトイル)‐4‐エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2‐クロロ‐1‐ナフトイル)‐2,5‐ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6‐ジメトキシベンゾイル)‐2,4,4‐トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
これらの中でも、ビスアシルホスフィンオキサイド化合物としては、ビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(IRGACURE 819:BASFジャパン(株)製)、ビス(2,6‐ジメトキシベンゾイル)‐2,4,4‐トリメチルペンチルホスフィンオキサイドなどが好ましい。
成分B‐2の含有量は、インク組成物全体の0.5〜10重量%が好ましく、1〜5重量%であることがより好ましい。
チオキサントン化合物(成分B‐3)としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、次式(b‐3)で表される化合物であることが好ましい。
上記式(b‐3)において、R1F、R2F、R3F、R4F、R5F、R6F、R7F及びR8Fはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基(一置換及び二置換の場合を含む。なお、以下においても同様である。)、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基又はスルホ基を表す。上記アルキル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、及び、アシル基におけるアルキル部分の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましい。
R1F、R2F、R3F、R4F、R5F、R6F、R7F及びR8Fは、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。これらが環を形成する場合の環構造としては、5又は6員環の脂肪族環、芳香族環などが挙げられ、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士が更に組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。これらの環構造は置換基を更に有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基及びスルホ基が挙げられる。形成された環構造が複素環である場合のヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。
チオキサントン化合物としては、チオキサントン、2‐イソプロピルチオキサントン、4‐イソプロピルチオキサントン、2‐クロロチオキサントン、2‐ドデシルチオキサントン、2,4‐ジクロロチオキサントン、2,3‐ジエチルチオキサントン、1‐クロロ‐4‐プロポキシチオキサントン、2‐シクロヘキシルチオキサントン、4‐シクロヘキシルチオキサントン、2,4‐ジエチルチオキサントン、2,4‐ジメチルチオキサントン、1‐メトキシカルボニルチオキサントン、2‐エトキシカルボニルチオキサントン、3‐(2‐メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4‐ブトキシカルボニルチオキサントン、3‐ブトキシカルボニル‐7‐メチルチオキサントン、1‐シアノ‐3‐クロロチオキサントン、1‐エトキシカルボニル‐3‐クロロチオキサントン、1‐エトキシカルボニル‐3‐エトキシチオキサントン、1‐エトキシカルボニル‐3‐アミノチオキサントン、1‐エトキシカルボニル‐3‐フェニルスルフリルチオキサントン、3,4‐ジ[2‐(2‐メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1‐エトキシカルボニル‐3‐(1‐メチル‐1‐モルホリノエチル)チオキサントン、2‐メチル‐6‐ジメトキシメチルチオキサントン、2‐メチル‐6‐(1,1‐ジメトキシベンジル)チオキサントン、2‐モルホリノメチルチオキサントン、2‐メチル‐6‐モルホリノメチルチオキサントン、n‐アリルチオキサントン‐3,4‐ジカルボキシイミド、n‐オクチルチオキサントン‐3,4‐ジカルボキシイミド、N‐(1,1,3,3‐テトラメチルブチル)チオキサントン‐3,4‐ジカルボキシイミド、1‐フェノキシチオキサントン、6‐エトキシカルボニル‐2‐メトキシチオキサントン、6‐エトキシカルボニル‐2‐メチルチオキサントン、チオキサントン‐2‐ポリエチレングリコールエステル、2‐ヒドロキシ‐3‐(3,4‐ジメチル‐9‐オキソ‐9H‐チオキサントン‐2‐イルオキシ)‐N,N,N‐トリメチル‐1‐プロパンアミニウムクロリドが例示できる。これらの中でも、入手容易性や硬化性の観点から、チオキサントン、2,3‐ジエチルチオキサントン、2,4‐ジエチルチオキサントン、2,4‐ジクロロチオキサントン、1‐クロロ‐4‐プロポキシチオキサントン、2‐シクロヘキシルチオキサントン、4‐シクロヘキシルチオキサントン、2‐イソプロピルチオキサントン、及び、4‐イソプロピルチオキサントンが好ましく、2‐イソプロピルチオキサントン、及び、4‐イソプロピルチオキサントンがより好ましい。
成分B‐3の含有量は、インク組成物全体の0.5〜10重量%が好ましく、1〜5重量%がより好ましい。
なお、成分Bとしてさらに、α‐アミノアルキルフェノン化合物(成分B‐4)を含有することが好ましい。成分B‐4を含有することにより更に硬化性に優れたインク組成物が得られる。成分B‐4は、次式(b‐4)で表される化合物であることが好ましい。
上記式(b‐4)中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立にヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は、置換基を有していてもよいアミノ基を表し、Xは、水素原子、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。R1、R2、又はR3の少なくとも1つは置換していてもよいアミノ基を表す。なお、R1、R2、R3、及びXがアミノ基である場合の置換基は、互いに結合して複素環基を形成してもよい。置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。
成分B‐4としては、次式(b‐4‐1)及び次式(b‐4‐2)のいずれかで表される化合物が好ましい。
上記式(b‐4‐1)中、R4、R5、R6、及びR7は、それぞれ置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R4とR5、及びR6とR7の少なくともいずれかが互いに結合して複素環基を形成してもよい。R1、R2、及び、置換基は、上記式(b‐4)におけるとR1、R2、及び、置換基とそれぞれ同義である。
上記式(b‐4‐2)中、R8は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
R1、R2、及び、置換基は、上記式(b‐4)におけるR1、R2、及び、置換基と同義であり、R4及びR5は、上記式(b‐4‐1)におけるR4及びR5と同義である。
前記複素環基としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、例えば、モルホリノ基が好ましい。
α‐アミノアルキルフェノン化合物としては、例えば、市販品として、IRGACURE369(BASFジャパン(株)製)、IRGACURE907(BASFジャパン(株)製)などが好適に挙げられる。
成分B‐4の含有量は、インク組成物全体の0.5〜10重量%が好ましく、1〜5重量%がより好ましい。
成分Bの好ましい実施態様は、成分B‐1及び/又はB‐2、並びにB‐3とを含有することであり、より好ましくは、少なくとも成分B‐1を含有しその含有量がインク組成物全重量の3重量%以下であることである。更に好ましいのは、成分B‐1、B‐3及びB‐4とを組み合わせて含有することであり、特に好ましいのは、成分B‐1〜B‐3を組み合わせて含有することである。
成分Bの総含有量は、インク組成物全体の1〜20重量%であることが好ましく、5〜15重量%であることがより好ましく、8〜10重量%であることが更に好ましい。
なお、成分Bとして、上記した重合開始剤以外のその他の重合開始剤を含んでもよい。その他の重合開始剤としては、モノアシルホスフィン化合物、α‐ヒドロキシケトン化合物、芳香族ケトン類、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、及び、炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。
上記重合開始剤の詳細については、当業者に公知であり、例えば、特開2009‐185186号公報の段落0090〜0116に記載されている。
(着色剤(成分C)の説明)
着色剤(成分C)は、形成された画像部の視認性を向上させることに寄与している。成分Cとしては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の公知の着色剤から任意に選択して使用できる。成分Cは、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないという観点から、重合禁止剤として機能しない化合物を選択することが好ましい。
以下に、成分Cとして使用される顔料及び染料について説明する。
顔料としては、特に限定されるわけではないが、例えば、カラーインデックスに記載される下記の番号の有機又は無機顔料が使用できる。
赤又はマゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド3(「Pigment Red 3」ともいう。)、5、19、22、31、38、42、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、202、208、216、226、257、C.I.ピグメントバイオレット3(「Pigment Violet 3」ともいう。)、19、23、29、30、37、50、88、C.I.ピグメントオレンジ13(「Pigment Orange 13」ともいう。)、16、20、36、青又はシアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー1(「Pigment Blue 1」ともいう。)、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17‐1、22、27、28、29、36、60、緑顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7(「Pigment Green 7」ともいう。)、26、36、50、黄顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1(「Pigment Yellow 1」ともいう。)、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94、95、97、108、109、110、120、137、138、139、150、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193、黒顔料としては、C.I.ピグメントブラック7(「Pigment Black 7」ともいう。)、28、26、白色顔料としては、C.I.ピグメントホワイト6(「Pigment White 6」ともいう。)、18、21などが目的に応じて使用できる。
水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で分散染料を用いることもできる。分散染料は一般に水溶性の染料も包含するが、水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で用いることが好ましい。
分散染料の好ましい具体例としては、C.I.ディスパースイエロー 5、42、54、64、79、82、83、93、99、100、119、122、124、126、160、184:1、186、198、199、201、204、224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ 13、29、31:1、33、49、54、55、66、73、118、119及び163;C.I.ディスパーズレッド 54、60、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、239、240、258、277、278、283、311、323、343、348、356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット 33;C.I.ディスパーズブルー 56、60、73、87、113、128、143、148、154、158、165、165:1、165:2、176、183、185、197、198、201、214、224、225、257、266、267、287、354、358、365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン 6:1及び9等が挙げられる。
着色剤は、インク組成物に添加された後、適度に当該インク組成物内で分散することが好ましい。着色剤の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各分散装置を用いることができる。
着色剤は、インク組成物の調製に際して、各成分と共に直接添加してもよい。また、分散性向上のため、あらかじめ溶剤又は本発明に使用する重合性化合物のような分散媒体に添加し、均一分散あるいは溶解させた後、配合することもできる。
溶剤が硬化画像に残留する場合の耐溶剤性の劣化、及び、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)の問題を避けるためにも、着色剤は、重合性化合物のような分散媒体に予め添加して、配合することが好ましい。
すなわち、溶剤を含まないことが好ましい。なお、分散適性の観点のみを考慮した場合、着色剤の添加に使用する重合性化合物は、最も粘度の低いモノマーを選択することが好ましい。着色剤はインク組成物の使用目的に応じて、1種又は2種以上を適宜選択して用いればよい。
なお、インク組成物中において固体のまま存在する顔料などの着色剤を使用する際には、着色剤粒子の平均粒径は、好ましくは0.005〜0.5マイクロメートル、より好ましくは0.01〜0.45マイクロメートル、更に好ましくは0.015〜0.4マイクロメートルとなるよう、着色剤、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インク組成物の保存安定性、透明性及び硬化感度を維持することができるので好ましい。
インク組成物中における成分Cの含有量は、色、及び使用目的により適宜選択される。成分Cは、インク組成物全体の重量に対し、0.1〜20重量%であることが好ましく、0.5〜10重量%であることがより好ましく、1〜5重量%であることが更に好ましい。
(分散剤)
インク組成物は、分散剤を含有することが好ましい。特に顔料を使用する場合において、顔料をインク組成物中に安定に分散させるため、分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
高分子分散剤としては、DISPERBYK‐101、DISPERBYK‐102、DISPERBYK‐103、DISPERBYK‐106、DISPERBYK‐111、DISPERBYK‐161、DISPERBYK‐162、DISPERBYK‐163、DISPERBYK‐164、DISPERBYK‐166、DISPERBYK‐167、DISPERBYK‐168、DISPERBYK‐170、DISPERBYK‐171、DISPERBYK‐174、DISPERBYK‐182(BYKケミー社製);EFKA4010、EFKA4046、EFKA4080、EFKA5010、EFKA5207、EFKA5244、EFKA6745、EFKA6750、EFKA7414、EFKA745、EFKA7462、EFKA7500、EFKA7570、EFKA7575、EFKA7580(エフカアディティブ社製);ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(サンノプコ(株)製);ソルスパース(SOLSPERSE)3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、22000、24000、26000、28000、32000、36000、39000、41000、71000などの各種ソルスパース分散剤(Noveon社製);アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P‐123((株)ADEKA製);イオネットS‐20(三洋化成工業(株)製);ディスパロン KS‐860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)(楠本化成(株)製)が挙げられる。
インク組成物中における分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、0.05〜15重量%であることが好ましい。
(界面活性剤)
インク組成物は、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を含有しないか、又は、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤の総含有量が、インク組成物の全重量に対し、0.01重量%未満であることが好ましく、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を含有しないか、又は、0.005重量%以下であることがより好ましく、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を含有しないことが特に好ましい。
なお、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤以外の界面活性剤としては、特開昭62‐173463号、同62‐183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。
また、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤以外の界面活性剤も、含有しないか、又は、その含有量が、インク組成物の全重量に対し、0.01重量%未満であることが好ましく、含有しないか、又は、その含有量が、0.005重量%以下であることがより好ましく、含有しないことが特に好ましい。
市販品で入手できるシリコーン系界面活性剤としては、例えば、BYK‐307(BYK Chemie社製)が挙げられる。
(オリゴマー)
インク組成物は、オリゴマーを含有することが好ましい。オリゴマーは、一般に有限個(一般的には5〜100個)のモノマーが結合した重合体であり、オリゴマーと称される公知の化合物を任意に選択可能であるが、重量平均分子量が400〜10,000(より好ましくは500〜5,000)の重合体を選択することが好ましい。
このオリゴマーは、ラジカル重合性基を有していてもよい。前記ラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。
オリゴマーとしては、いかなるオリゴマーでもよいが、例えば、オレフィン系(エチレンオリゴマー、プロピレンオリゴマー、ブテンオリゴマー等)、ビニル系(スチレンオリゴマー、ビニルアルコールオリゴマー、ビニルピロリドンオリゴマー、アクリレートオリゴマー、メタクリレートオリゴマー等)、ジエン系(ブタジエンオリゴマー、クロロプレンゴム、ペンタジエンオリゴマー等)、開環重合系(ジ‐,トリ‐,テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチルイミン等)、重付加系(オリゴエステルアクリレート、ポリアミドオリゴマー、ポリイソシアネートオリゴマー)、付加縮合オリゴマー(フェノール樹脂、アミノ樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂等)等を挙げることができる。この中で、オリゴエステル(メタ)アクリレートが好ましく、その中では、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートがより好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートが更に好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく挙げられるが、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートがより好ましく挙げられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレートは、4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましく、2官能以下のウレタン(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートを含有することにより、基材の密着性に優れ、硬化性に優れるインク組成物が得られる。
オリゴマーについて、オリゴマーハンドブック(古川淳二監修、(株)化学工業日報社)も参照することができる。
また、オリゴマーの市販品としては、以下に示すものが例示できる。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、第一工業製薬(株)製のR1204、R1211、R1213、R1217、R1218、R1301、R1302、R1303、R1304、R1306、R1308、R1901、R1150等や、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL230、270、4858、8402、8804、8807、8803、9260、1290、1290K、5129、4842、8210、210、4827、6700、4450、220)、新中村化学工業(株)製のNKオリゴU‐4HA、U‐6HA、U‐15HA、U‐108A、U200AX等、東亞合成(株)製のアロニックスM‐1100、M‐1200、M‐1210、M‐1310、M‐1600、M‐1960、Sartomer社製のCN964A85、CN962、CN983等が挙げられる。
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL770、IRR467、81、84、83、80、675、800、810、812、1657、1810、IRR302、450、670、830、870、1830、1870、2870、IRR267、813、IRR483、811等)、東亞合成(株)製のアロニックスM‐6100、M‐6200、M‐6250、M‐6500、M‐7100、M‐8030、M‐8060、M‐8100、M‐8530、M‐8560、M‐9050等が挙げられる。
また、エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL600、860、2958、3411、3600、3605、3700、3701、3703、3702、3708、RDX63182、6040等)等が挙げられる。
オリゴマーは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
オリゴマーの含有量としては、インク組成物の全重量に対して、0.1〜50重量%であることが好ましく、0.5〜20重量%であることがより好ましく、1〜10重量%であることが更に好ましい。
(その他の成分)
インク組成物は、必要に応じて、前記各成分以外に、共増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、塩基性化合物等を含んでいてもよい。これらその他の成分としては、公知のものを用いることができる。例えば、特開2009‐221416号公報に記載されているものが挙げられる。
保存性を高める観点から、重合禁止剤を含有することが好ましい。インクジェット方式による画像形成のインク組成物として使用する場合には、25〜80℃の範囲で加熱、低粘度化して吐出することが好ましく、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐために、重合禁止剤を添加することが好ましい。
重合禁止剤としては、ニトロソ系重合禁止剤、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p‐メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl、ヒンダードアミン等が挙げられ、中でもニトロソ系重合禁止剤、ヒンダードアミン系重合禁止剤が好ましい。ニトロソ系重合禁止剤の具体例を以下に示すがこれらに限定されるものではない。
ニトロソ系重合禁止剤の市販品として、FIRSTCURE ST‐1(Chem First社製)等が挙げられる。ヒンダードアミン系重合禁止剤の市販品としてTINUVIN292、TINUVIN770DF、TINUVIN765、TINUVIN123が挙げられる。
重合禁止剤の含有量は0.01〜2重量%が好ましく、0.1〜1.5重量%がより好ましく、0.2〜1.2重量%が更に好ましい。上記の数値の範囲内であると、インク組成物の調製時、保管時の重合を抑制でき、インクジェットノズルの詰まりを防止できる。
UV‐LED素子35には、例えば、発光波長(ピーク値)が385ナノメートル(380ナノメートルから390ナノメートル)の、日亜化学工業(株)社製の紫外発光LED、NC4U134A(商品名)を適用することができる。
・SR9035:エチレンオキシド15モル付加トリメチロールプロパントリアクリレート、Sartomer社製)
以下に、上記したインク組成物の実施例を示す。なお、インク組成物は実施例によって限定されるものではない。以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「重量部」、「%」は「重量%」を示すものとする。
(素材)
・IRGALITE BLUE GLVO(シアン顔料、BASFジャパン(株)製)
・CINQUASIA MAGENTA RT‐355‐D(マゼンタ顔料、BASFジャパン(株)製)
・NOVOPERM YELLOW H2G(イエロー顔料、クラリアント社製)
・SPECIAL BLACK 250(ブラック顔料、BASFジャパン(株)製)
・SOLSPERSE32000(分散剤、Noveon社製)
・NVC(V‐CAP、N‐ビニルカプロラクタム、アイエスピー・ジャパン(株)製)
・NVF:N‐ビニルホルムアミド(ビームセット770、荒川化学工業(株)製)
・CTFA(SR531、サイクリックトリメチロールプロパンフォーマルアクリレート、5重量%のトリメチロールプロパントリアクリレートを含有、Sartomer社製)
・PEA(SR339、フェノキシエチルアクリレート、Sartomer社製)
・IBOA(SR506、イソボロニルアクリレート、Sartomer社製)
・SR351S(トリメチロールプロパントリアクリレート、Sartomer社製)
・SR454(式(II‐a)の化合物、Sartomer社製)
・SR9020(式(II‐b)の化合物、Sartomer社製)
・SR9021(式(II‐c)の化合物、Sartomer社製)
・DPGDA(SR508、ジプロピレングリコールジアクリレート、Sartomer社製)
・CN964A85(オリゴマー、2官能脂肪族ウレタンアクリレート、15重量%トリプロピレングリコールジアクリレート含有、Sartomer社製)
・CN962(オリゴマー、2官能脂肪族ウレタンアクリレート、Sartomer社製)
・IRGACURE369(α‐アミノアルキルケトン光重合開始剤、2‐ベンジル‐2‐ジメチルアミノ‐1‐(4‐モルフォリノフェニル)‐ブタン‐1‐オン、BASFジャパン(株)製)
・IRGACURE819(光重合開始剤、ビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、BASFジャパン(株)製)
・TPO(DAROCURE TPO、光重合開始剤、2,4,6‐トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、BASFジャパン(株)製)
・ITX(増感剤、イソプロピルチオキサントン、シェルケミカルズジャパン(株)製)
・ST‐1(FIRSTCURE ST‐1、重合禁止剤、トリス(N‐ニトロソ‐N‐フェニルヒドロキシアミン)アルミニウム塩(8重量%)とフェノキシエチルアクリレート(92重量%)との混合物、Chem First社製)
・BYK‐307(シリコーン系界面活性剤、BYK Chemie社製)
(マゼンタミルベースの調製)
・マゼンタ顔料:CINQUASIA MAGENTA RT‐355D(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 30重量部
・SR9003(プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート(ネオペンチルグリコールプロピレンオキサイド2モル付加物をジアクリレート化した化合物、SARTOMER社製) 49重量部
・SOLSPERSE32000(分散剤、Noveon社製) 20重量部
・FIRSTCURE ST‐1(重合禁止剤、Chem First社製) 1重量部
上記の成分を撹拌混合し、マゼンタミルベースを得た。なお、顔料ミルベースの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65ミリメートルのジルコニアビーズを用い、周速9メートル毎秒で8時間分散した。
(シアンミルベースの調製)
・シアン顔料:IRGALITE BLUE GLVO(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 30重量部
・SR9003 49重量部
・SOLSPERSE32000 20重量部
・FIRSTCURE ST‐1 1重量部
上記の成分を、マゼンタミルベースの調製と同様の分散条件で撹拌混合し、シアンミルベースを得た。
(イエローミルベースの調製)
・イエロー顔料:NOVOPERM YELLOW H2G(クラリアント社製)
30重量部
・SR9003 29重量部
・BYK168(分散剤、BYK Chemie社製) 40重量部
・FIRSTCURE ST‐1(重合禁止剤、Chem First社製) 1重量部
上記の成分をマゼンタミルベースの調製と同様の分散条件で撹拌混合し、イエローミルベースを得た。
(ブラックミルベースの調製)
・ブラック顔料:SPECIAL BLACK 250(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 30重量部
・SR9003 49重量部
・SOLSPERSE32000 20重量部
・FIRSTCURE ST‐1 1重量部
上記の成分を、マゼンタミルベースの調製と同様の分散条件で撹拌混合し、ブラックミルベースを得た。
以上、本発明の実施形態に係る画像形成装置及び画像形成方法について詳細に説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜変更が可能である。
〔本明細書が開示する発明〕
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(第1態様):活性光線の照射によって硬化する液体を打滴する複数のノズルが並べられたインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドから打滴された液体を付着させる媒体を搬送する媒体搬送手段と、前記インクジェットヘッドを前記媒体に対して相対移動させる走査手段と、前記走査手段の走査方向に沿う走査線上の打滴位置をm回(mは2以上の整数)の走査で打滴を行い、前記媒体搬送手段の搬送方向に沿う走査線上の打滴位置をn回(nは2以上の整数)の移動で打滴を行うことにより、前記ノズルの配列における前記搬送方向のノズルピッチよりも小さい打滴間隔となる所定の解像度の画像を形成するように、N回(N=m×n)の走査による前記インクジェットヘッドの打滴を制御する打滴制御手段と、前記N回の走査を構成する走査ごとに前記媒体搬送手段による前記搬送方向の送り量を制御する搬送制御手段と、前記走査手段により前記インクジェットヘッドとともに移動し、前記媒体上に付着した液体を不完全に硬化させる程度の活性光線を照射する仮硬化手段と、を備え、前記仮硬化手段は、前記媒体搬送手段の搬送方向の下流側の単位面積あたりの照射エネルギーが上流側の単位面積あたりの照射エネルギーを超える前記搬送方向における照射エネルギーの分布を有し、前記液体は、成分Aとしてラジカル重合性化合物、成分Bとしてラジカル重合開始剤、及び成分Cとして着色剤を含有し、前記成分Aは、成分A‐1として単官能ラジカル重合性化合物、及び成分A‐2として多官能ラジカル重合性化合物を含有し、前記成分A‐1は、成分A‐1‐1としてN‐ビニル化合物、及び成分A‐1‐2として次式(I)で表される化合物を含有し、前記成分A‐1の含有量は、前記成分Aの総重量に対し50重量パーセント以上90重量パーセント以下であり、前記成分A‐1‐1の含有量は、前記成分A‐1の総重量に対し10重量パーセント以上40重量パーセント以下であり、前記成分A‐1‐2の含有量は、前記成分A‐1の総重量に対し5重量パーセント以上90重量パーセント以下であり、前記成分A‐2は、次式(II)で表される化合物を少なくとも2種含有するとともに、前記成分A‐2の含有量は、前記成分Aの総重量に対して0.1重量パーセント以上25重量パーセント以下である画像形成装置。
かかる態様によれば、N(=m×n)回の走査により所定の解像度を有する画像が形成されるマルチパス方式の画素形成において、仮硬化手段の媒体搬送手段の搬送方向下流側の単位面積あたりの照射エネルギーが、上流側の単位面積あたりの照射エネルギーを超える、同方向における活性光線の照射エネルギーの分布を持たせることで、1スワス幅内における同方向の上流側のドットと下流側のドットとの活性光線の単位面積あたりの照射エネルギーの差に起因するスワス幅に対応する周期性を有する濃度ムラが抑制される。
(第2態様):前記仮硬化手段は、照射エネルギーの分布における単位面積あたりの照射エネルギーの最大値に対する、単位面積あたりの照射エネルギーの最小値の比率が、1.3以上3.3以下である画像形成装置。
かかる態様において、照射エネルギーの分布における単位面積あたりの照射エネルギーの最大値に対する、単位面積あたりの照射エネルギーの最小値の比率を2.0以上とする態様が好ましい。
(第3態様):前記仮硬化手段は、前記搬送方向について二分割された活性光線の出射部を有し、前記搬送方向の下流側の出射部の単位面積あたりの照射エネルギーは、前記搬送方向上流側の出射部の単位面積あたりの照射エネルギーを超える画像形成装置。
かかる態様において、出射部の媒体搬送方向上流側と同方向下流側との境界を、分割前の出射部の同方向の中央位置とする態様が好ましい。
(第4態様):前記仮硬化手段は、箱型形状であり、前記媒体と対向する底板に活性光線の出射部を有し、前記箱型形状の内部に向けて活性光線を発生させる発光素子が前記搬送方向の両端面の少なくともいずれか一方に配設され、活性光線を前記出射部へ導く内部構造を有する画像形成装置。
かかる態様において、箱型形状の搬送方向の両端面に発光素子を備えてもよいし、箱型形状の搬送方向の一方の端面に備えてもよい。
(第5態様):前記走査手段により前記インクジェットヘッド及び前記仮硬化手段とともに移動し、前記媒体上に付着した液体を完全に硬化させる程度の活性光線を照射する本硬化手段を備えた画像形成装置。
かかる態様によれば、媒体に付着させた液体を完全に硬化させることで、媒体と液体との密着性が確保される。
かかる態様において、本硬化手段は仮硬化手段の媒体搬送方向上流側に配置される態様が好ましい。
(第6態様):前記液体は、前記成分A‐1‐1がN‐ビニルカプロラクタムである画像形成装置。
(第7態様):前記液体の成分A‐1は、成分A‐1‐3として芳香族炭化水素環を有する(メタ)アクリレート化合物を含有し、前記成分A‐1‐3は、成分A‐1の総重量に対し5重量パーセント以上40重量パーセント以下である画像形成装置。
(第8態様):前記液体の成分Bは、成分B‐1としてモノアシルホスフィンオキサイド化合物、及び/又は成分B‐2としてビスアシルホスフィンオキサイド化合物、並びに成分B‐3としてチオキサントン化合物を含有する画像形成装置。
(第9態様):前記液体は、前記式(II)で表される化合物の少なくとも1つがトリメチロールプロパントリアクリレートであり、その含有量が前記成分Aの総重量に対し0.5重量パーセント以上8重量パーセント以下である画像形成装置。
(第10態様):前記液体の成分Bは、前記成分B‐1を含有し、その含有量がインク組成物全重量に対し3重量%以下である画像形成装置。
(第11態様):前記液体の成分A‐2は、次式(II’)で表される化合物を少なくとも1種含有する画像形成装置。
(式(II’)中、R11は水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1から6のアルキル基を表し、R12は水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1から6のアルキル基を表し、R13はそれぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表し、X2は単結合、又は二価の連結基を表し、p、q及びrはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、p+q+r≧1の関係を満たす。)
(第12態様):活性光線の照射によって硬化する液体を打滴する複数のノズルが並べられたインクジェットヘッドを走査方向へm回(mは2以上の整数)走査させて、前記走査方向の走査線上の打滴位置へ打滴を行い、前記液体を付着させる媒体の搬送方向の走査線上の打滴位置をn回(nは2以上の整数)の移動で打滴を行うことにより、前記ノズルの配列における前記搬送方向のノズルピッチよりも小さい打滴間隔となる所定の解像度の画像を形成するように、N回(N=m×n)の走査により前記インクジェットヘッドから液体を打滴する打滴工程と、前記インクジェットヘッドとともに移動する仮硬化手段から、前記打滴された液体を不完全に硬化させる程度の活性光線を照射する仮硬化工程と、を含み、前記打滴工程は、前記N回の走査を構成する走査ごとに前記媒体の前記搬送方向の送り量が制御され、前記仮硬化工程において照射される活性光線は、前記搬送方向下流側の単位面積あたりの照射エネルギーが、上流側の単位面積あたりの照射エネルギーを超える前記搬送方向における照射エネルギーの分布を有し、前記液体は、成分Aとしてラジカル重合性化合物、成分Bとしてラジカル重合開始剤、及び成分Cとして着色剤を含有し、前記成分Aは、成分A‐1として単官能ラジカル重合性化合物、及び成分A‐2として多官能ラジカル重合性化合物を含有し、前記成分A‐1は、成分A‐1‐1としてN‐ビニル化合物、及び成分A‐1‐2として次式(I)で表される化合物を含有し、前記成分A‐1の含有量は、前記成分Aの総重量に対し50重量パーセント以上90重量パーセント以下であり、前記成分A‐1‐1の含有量は、前記成分A‐1の総重量に対し10重量パーセント以上40重量パーセント以下であり、前記成分A‐1‐2の含有量は、前記成分A‐1の総重量に対し5重量パーセント以上90重量パーセント以下であり、前記成分A‐2は、次式(II)で表される化合物を少なくとも2種含有するとともに、前記成分A‐2の含有量は、前記成分Aの総重量に対して0.1重量パーセント以上25重量パーセント以下である画像形成方法。
(式(I)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、X1は単結合、又は、二価の連結基を表す。)
(式(II)中、R11はそれぞれ独立に水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、R12は水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1から6のアルキル基を表し、R13はそれぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表し、X2は単結合、又は二価の連結基を表し、p、q及びrはそれぞれ独立に0から5の整数を表す。)