JP5807605B2 - 加熱殺菌処理食品の包装フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物及び包装用フィルム - Google Patents

加熱殺菌処理食品の包装フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物及び包装用フィルム Download PDF

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Description

本発明は、加熱殺菌処理食品の包装フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物及び加熱殺菌処理食品用の包装用フィルムに関するものである。さらに詳しくは、耐寒衝撃性、耐落下破袋性、透明性、耐熱性、耐ベタツキ性、及び食品衛生性などに押しなべて優れる、加熱殺菌処理食品の包装フィルム用樹脂組成物及び加熱殺菌処理食品包装用フィルムに関する。
ポリプロピレン系材料は、その耐熱性や包装適性、更には経済性や環境問題適応性などにより包装材料として汎用されてきた。
一方、昨今の食生活様式の多様化や外食産業利用の普遍化などにより、食品食材産業も多様的に変化発展し、簡易調理済み食品やレトルト食品などが益々重用されるようになってきた。そのため、いわゆるボイル処理やレトルト処理などの加熱殺菌済み食品の需要が顕著に増大しており、加熱殺菌処理食品の包装フィルムとしての需要に応える要請も高くなっている。
その包装用フィルムとしては、ヒートシール性や、加熱殺菌時にフィルム内面が融着しないための耐熱性などの必須性能に加えて、低温下での輸送や取り扱い時に包装用フィルムが破れないための耐寒衝撃性や耐落下破袋性、及び内容物を視認するための透明性、更には食品衛生性の観点からフィルム由来成分の食品内容物への滲出移行が極めて少ないことなどが求められている。
そこで、これまでにもこれらの諸要求を満たすべく、ポリプロピレン系包装材料において種々の改良手法が検討されているが、高度で厳しい市場要求を充分に満たすには至っていない。
例えば、極限粘度などが特定されたプロピレン−エチレンブロック共重合体を用い、耐熱性や低温の耐衝撃性などのバランスに優れ食品衛生性も良好とされるレトルト食品包装用フィルム(特許文献1を参照)があるが、この組成物では厳しい用途での耐寒衝撃性が不充分である。
また、結晶性ポリプロピレンに特定の中和剤と特定の無機系不活性微粒子を配合し、透明性やアンチブロッキング性及び滑り性などを改良したとされる、レトルト用ポリプロピレンフィルムも提示されている(特許文献2を参照)が、耐熱性やヒートシール性及び耐寒衝撃性や食品衛生性に関する記述は無く、レトルト用ポリプロピレンフィルムとしての適性を満たさないものであった。
一方、組成の異なる二種類のプロピレン−エチレンブロック共重合体を用いて、優れた耐寒衝撃性を得る方法も提案されている(特許文献3を参照)。これは、ユズ肌と呼ばれる加熱殺菌後のフィルム表面の凹凸が発生せず耐熱性にも優れているが、透明性については充分な特性が得られていない。
その他にも、組成の異なる二種類のポリプロピレン−エチレンブロック共重合体を配合し、射出成形用途としてはこれまでにない物性バランスを確保することを目的とした発明がある(特許文献4、5を参照)が、フィルム用途、とりわけレトルトフィルム用途としては適していない。
特開平6−93062号公報 特開平9−20846号公報 特開平11−222547号公報 特開平7−157626号公報 特開平9−176406号公報
本発明は、耐寒衝撃性・耐落下破袋性と透明性の両立が成され、ヒートシール性や耐熱性、更には耐ベタツキ性や食品衛生性などが、バランスよく押しなべて向上された、ポリプロピレン系材料による加熱殺菌処理食品の包装用フィルムを提供することにある。
本発明者らは、前述の従来技術では達成できていない耐寒衝撃性・耐落下破袋性と透明性の両立が成され、ヒートシール性、耐熱性、耐ベタツキ性、食品衛生性などが、バランスよく押しなべて向上されたポリプロピレン系材料およびそのフィルムを開発すべく鋭意研究した結果、それぞれ特定のプロピレン−エチレンブロック共重合体二種を主成分とするフィルムにより上記目的を達成し得ることを見出し、本発明に到達した。
本発明は、プロピレン系重合体成分とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分からなるプロピレンとエチレンの多段重合によるブロック共重合体を利用するものであって、加熱殺菌処理食品の包装フィルムとしての各種の性能がバランスよく向上されるために、プロピレン−エチレンランダム共重合体のエチレン含量、およびその重量平均分子量が各々特定の範囲で設定された二種類のプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)および(B)からなることを本発明の主要な特徴とするものである。
本発明の第1の発明によれば、多段重合により得られる、下記(a1)〜(a3)の条件を満たすプロピレン系重合体成分とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分とを含むプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)と、
多段重合により得られる、下記(b1)〜(b3)の条件を満たすプロピレン系重合体成分とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分とを含むプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)を、
共重合体(A)と共重合体(B)との重量比で95/5〜30/70含有し、厚さ60μmの試験片を用いて測定したヘイズ(HAZE)が40%以下であることを特徴とする加熱殺菌処理食品の包装フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物が提供される。
・プロピレン−エチレンブロック共重合体(A);
(a1)プロピレン系重合体成分(A1)、エチレン含量が0〜2重量%のプロピレン単独または共重合体であること。
(a2)プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)は、エチレン含量が10〜40重量%であること。
(a3)プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)のMFRが0.5〜5g/10minであること。
・プロピレン−エチレンブロック共重合体(B);
(b1)プロピレン系重合体成分(B1)、エチレン含量が0〜2重量%のプロピレン単独または共重合体であること。
(b2)プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B2)は、エチレン含量が2055重量%であること。
(b3)プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B2)のMFRが0.01〜0.5g/10minであること。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、さらに、密度が0.860〜0.910g/cmのエチレン−α−オレフィン共重合体を、ブロック共重合体(A)とブロック共重合体(B)の合計100重量部に対し、3〜30重量部含有することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1または第2の発明のポリプロピレン系樹脂組成物を、溶融押出製膜して得られる加熱殺菌処理食品の包装用フィルムが提供される。
さらに、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、フィルムが、レトルト食品の包装用フィルムである請求項3に記載の包装用フィルムが提供される。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、加熱殺菌処理食品の包装フィルムとして、ヒートシール性や耐熱性などの必須性能に加えて、耐寒衝撃性や耐落下破袋性と透明性との両立が成され、更には耐ベタツキ性や食品衛生性などが、バランスよく押しなべて向上されるという、従来には見られなかった格別の効果を発現するものである。
本発明の実施例11で得られたフィルムのMD断面の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例1で得られたフィルムのMD断面の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例12で得られたフィルムのMD断面の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例15で得られたフィルムのMD断面の走査型電子顕微鏡写真である。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、加熱殺菌処理食品の包装用に使用される樹脂組成物であって、多段重合により得られる前記(a1)〜(a3)を満たすプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)と、
多段重合により得られる前記(b1)〜(b3)を満たすプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)を含有することを特徴とする。
以下、本発明の樹脂組成物を構成する各成分について、詳細に説明する。
[プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)]
本発明に用いる、多段重合により得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、エチレン含量が0〜2重量%のプロピレン単独または共重合体であるプロピレン系重合体成分(A1)と、エチレン含量([E(A2)])が10〜40重量%であるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)からなるプロピレン−エチレンブロック共重合体である。
プロピレン系重合体成分(A1)のエチレン含有量([E(A1)])は、0〜2.0重量%であることが必要である。エチレン含量が2.0重量%を超えると、結晶性が減少し、フィルムの加熱条件下での収縮割合が大きくなり、包装袋を加熱殺菌した際の変形が顕著となるため好ましくない。
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)は、共重合体の柔軟性と耐衝撃性に寄与する成分である。この成分は、多段重合法の第2段階以降で、主にプロピレン−エチレンランダム共重合体として重合される。
ここで、本発明の趣旨を外れない限り、更に少量の他のα−オレフィン、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどと共重合させてもよい。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)中のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の比率は、5〜40重量%が好ましく、さらに10〜35重量%が好ましい。成分(A2)の比率が40重量%を超える場合には、耐熱性の低下や、フィルム成形時のベタツキやブリードアウトを抑制し難くなり、また、成分(A2)が5重量%を下回る場合には、柔軟性と透明性に寄与する成分(A2)の量が不充分となり、柔軟性や透明性が低下する。
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)中のエチレン含量([E(A2)])は、10〜40重量%であることが必要であり、15〜35重量%がより好ましい。
[E(A2)]が40重量%を超える場合には、共重合体成分(A2)のプロピレン系重合体成分(A1)に対する相溶性が低下し、フィルム透明性の悪化を引き起こす原因となる。また、[E(A2)]が10重量%を下回る場合には耐衝撃性が低下する。
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)のMFR(以下、MFR(A2))は、0.5〜5g/10minであることが必要であり、0.6〜4.0g/minがより好ましい。
MFR(A2)が0.5g/10minを下回る場合には、フィルム成形時に共重合体成分(A2)の配向性が低下し、フィルム透明性の悪化を引き起こす。また、MFR(A2)が5g/10minを上回る場合には、共重合体(A)成分の低分子量分が過多となり、フィルムのベタツキ悪化の原因となる。
本発明のプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の230℃、2.16kg荷重でのMFR(MFR(A))は、0.3〜20g/10分、さらに0.5〜15g/10分であることが好ましい。MFR(A)が0.3g/10分未満では押出成形性が不充分で。さらにフィルムに成形した場合は、フィッシュアイによる外観不良を招く。また、20g/10分を超えると、耐衝撃性が不充分となる。
[プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)]
本発明に用いる、多段重合により得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)は、エチレン含量が0〜2重量%のプロピレン単独または共重合体であるプロピレン系重合体成分(B1)と、エチレン含量([E(B2)])が10〜60重量%であるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B2)からなるプロピレン−エチレンブロック共重合体である。
プロピレン系重合体成分(B1)のエチレン含有量([E(B1)])は、0〜2.0重量%であることが必要である。エチレン含量が2.0重量%を超えると、結晶性が減少し、フィルムの加熱条件下での収縮割合が大きくなり、包装袋を加熱殺菌した際の変形が顕著となるため好ましくない。
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B2)は、共重合体の柔軟性と耐衝撃性に寄与する成分である。この成分は、多段重合法の第2段階以降で、主にプロピレン−エチレンランダム共重合体として重合されるが、本発明の趣旨を外れない限り、更に少量の他のα−オレフィン、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどと共重合させてもよい。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)中のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B2)の比率は、5〜40重量%が好ましく、さらに10〜35重量%が好ましい。成分(B2)の比率が40重量%を超える場合には、共重合体(B)からなる凝集したポリマー粒子が増大し、フィルム透明性の低下を引き起こす原因となりやすい。また、成分(B2)が5重量%を下回る場合には、耐衝撃性に寄与する共重合体成分(B2)の量が不充分となり、耐衝撃性が低下しやすい。
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B2)中のエチレン含量([E(B2)])は10〜60重量%であることが必要であり、20〜55重量%が好ましい。
[E(B2)]が60重量%を超える場合には、共重合体成分(B2)の相溶性が悪くなることで耐衝撃性が低下し、特に、低温時の耐衝撃性が低下する。また、フィルム成形した際の透明性も悪化する。また、[E(B2)]が10重量%を下回る場合にも耐衝撃性が低下する。
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B2)のMFR(MFR(B2))は、0.01〜0.5g/10minであることが必要であり、0.02〜0.4であることが好ましい。
MFR(B2)が0.01g/10minを下回る場合には、共重合体(B)成分の高分子量成分が過多となり、フィッシュアイと呼ばれる外観欠点増加の原因となる。また、MFR(B2)が0.5g/10minを超える場合には、フィルム中で共重合体(B)成分が塊形状を形成し難くなるため、耐衝撃性の悪化を引き起こす。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)の230℃、2.19kg荷重でのMFR(MFR(B))は、0.3〜20g/10分、さらに0.5〜10g/10分であることが好ましい。MFR(B)が0.3g/10分未満では押出成形性が不充分で、さらにフィルムに成形した場合は、フィッシュアイによる外観不良を招きやすい。また、20g/10分を超えると、耐衝撃性が不充分となりやすい。
[プロピレン−エチレンブロック共重合体の製造方法]
本発明に用いるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)および(B)は、それぞれ上記の物性を有すれば、どのような製造方法によってもよいが、以下の原料、重合方法によって好ましく製造することが出来る。
・使用原料
本発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体を製造するに際し使用される触媒としては、マグネシウム、ハロゲン、チタン、電子供与体を触媒成分とするマグネシウム担持型触媒、あるいは三塩化チタンを触媒とする固体触媒成分と有機アルミニウムからなる触媒、あるいはメタロセン触媒が使用できる。具体的な触媒の製造法は特に限定されるものではないが、一例として特開2007−254671号公報に開示されたチーグラー触媒を例示することが出来る。
また、重合される原料オレフィンは、プロピレン、エチレンであり、必要により、本発明の目的を損なわない程度の他のオレフィン、例えば、ブテン−1、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−ペンテン−1などを使用することもできる。
・重合工程
前記触媒の存在下に行う重合工程は、プロピレン系重合体を製造する重合工程(i)、プロピレンにエチレンを、エチレン含量が10〜40重量%(ブロック共重合体(A)の場合)もしくは10〜60重量%(ブロック共重合体(B)の場合)の割合で重合させる重合工程(ii)の2段階からなる。
重合工程(i);
重合工程(i)は、プロピレン単独かプロピレン/エチレンの混合物を前記触媒を加えた重合系に供給してプロピレン単独重合体またはエチレン含有量が2重量%以下であるプロピレン系重合体を、全重合体量の、好ましくは60〜95重量%に相当する量となるように形成させる工程であり、プロピレン系重合体(A1)と(B1)に共通した工程である。以下の説明はプロピレン系重合体(A1)について行うが、同じ方法でプロピレン系重合体(B1)を製造することが可能である。
プロピレン系重合体成分(A1)のMFR(A1)は水素を連鎖移動剤として用いることにより調整することが出来る。具体的には、連鎖移動剤である水素の濃度を高くするとプロピレン系重合体成分(A1)のMFR(A1)が高くなる。逆も又同様である。重合槽における水素の濃度を高くするには、重合槽への水素の供給量を高くすれば良く、当業者にとって調整は極めて容易である。また、プロピレン系重合体(A1)がプロピレン−エチレンランダム共重合体である場合には、エチレン含量を制御する手段として、重合槽に供給するエチレンの量を制御する方法を用いるのが簡便である。具体的には、重合槽に供給するエチレンのプロピレンに対する量比(エチレン供給量÷プロピレン供給量)を高くすれば、得られるプロピレン系重合体成分(A1)のエチレン含量は高くなる。逆も同様である。重合槽に供給するプロピレンとエチレンの量比と得られるプロピレン系重合体成分(A1)のエチレン含有量との関係は使用する触媒の種類によって異なるが、適宜供給量比を調整することによって目的のエチレン含量を有するプロピレン系重合体成分(A1)を得ることは当業者にとって極めて容易なことである。
重合工程(ii);
重合工程(ii)は、重合工程(i)に引き続いてプロピレン/エチレン混合物をさらに導入して、エチレン含量を重合体(A)については10〜40重量%、重合体(B)については10〜60重量%の各プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)および(B2)を得る工程である。この工程では、全重合体量の、好ましくは5〜40重量%に相当する重合体を形成させる。
以下の説明はプロピレン−エチレンランダム共重合体(A2)について行うが、同じ方法でプロピレン−エチレンランダム共重合体(B2)を製造することが可能である。
プロピレン−エチレンランダム共重合体(A2)のMFR(A2)は水素を連鎖移動剤として用いることにより調整することが出来る。具体的な制御方法は、プロピレン系重合体(A1)のMFRの制御方法と同じである。プロピレン−エチレンランダム共重合体(A2)のエチレン含量を制御する手段として、重合槽に供給するエチレンの量を制御する方法を用いるのが簡便である。具体的な制御方法は、プロピレン系重合体(A1)がプロピレン−エチレンランダム共重合体である場合と同じである。
次に、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)および(B)のインデックスの制御方法について説明する。以下の説明はプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)について行うが、同様の方法によりプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)のインデックスも制御することが出来る。
本発明のプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)はプロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)とからなるものである。従って、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)のインデックスを制御する上で考慮すべき項目は、エチレン含有量E(A)、MFR(A)、プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比の3つである。
まず、プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比の制御方法から説明する。プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比は、プロピレン系重合体成分(A1)を製造する重合工程(i)における製造量と、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)を製造する重合工程(ii)における製造量によって制御する。例えば、プロピレン系重合体成分(A1)の量を増やしてプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の量を減らすためには、重合工程(i)の製造量を維持したまま重合工程(ii)の製造量を減らせばよく、それは、重合工程(ii)の滞留時間を短くしたり、重合温度を下げたりすれば良い。また、エタノールや酸素などの重合抑制剤を添加したり、元々添加している場合にはその添加量を増やしたりすることでも制御することができる。その逆も又同様である。
通常、プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比は、プロピレン系重合体成分(A1)を製造する重合工程(i)における製造量とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)を製造する重合工程(ii)における製造量で定義する。式を以下に示す。
成分(A1)の重量:成分(A1)の重量 = W(A1):W(A2)
W(A1)=
重合工程(i)の製造量÷(重合工程(i)の製造量+重合工程(ii)の製造量)
W(A2)=
重合工程(ii)の製造量÷(重合工程(i)の製造量+重合工程(ii)の製造量)
W(A1)+W(A2)=1
(ここで、W(A1)、W(A2)はそれぞれプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)におけるプロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比率である。)
工業的な製造設備では、各重合槽のヒートバランスやマテリアルバランスから製造量を求めるのが通常である。また、プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の結晶性が充分異なる場合には、TREF(温度昇温溶離分別法)などの分析手法を用いて両者を分離同定し量比を求めることでもよい。
ポリプロピレンの結晶性分布をTREF測定により評価する手法は当業者によく知られたものであり、G.Glokner,J.Appl.Polym.Sci:Appl.Poly.Symp.;45,1−24(1990)、L.Wild,Adv.Polym.Sci.;98,1−47(1990)、J.B.P.Soares,A.E.Hamielec,Polyer;36,8,1639−1654(1995)などの文献に詳細な測定法が示されている。
次に、エチレン含有量E(A)の制御方法について説明する。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)はプロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の混合物であるから、それぞれのエチレン含量の間には以下の関係式が成立する。
E(A)=E(A1)×W(A1)+E(A2)×W(A2)
(ここで、E(A)、E(A1)、E(A2)はそれぞれ、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)、プロピレン系重合体成分(A1)、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)のエチレン含量である。)
この式は、エチレン含量に関するマテリアルバランスを示すものである。ここではプロピレン−エチレンブロック共重合体成分(A)について記載したが、同じ式がプロピレン−エチレンブロック共重合体成分(B)のエチレン含量についても成立する。
E(B)=E(B1)×W(B1)+E(B2)×W(B2)
従って、プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比が決まれば、すなわち、W(A1)とW(A2)が決まれば、E(A)は、E(A1)とE(A2)によって一意的に定まる。つまり、プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比、E(A1)、E(A2)の3つの因子を制御することによりE(A)を制御することが出来る。例えば、E(A)を高くする為にはE(A1)を高くしても良いし、E(A2)を高くしても良い。また、E(A2)がE(A1)よりも高いことに留意すれば、W(A1)を小さくしてW(A2)を大きくしても良いことも容易に理解できよう。逆方向の制御方法も同様である。
なお、実際に測定値を直接得られるのはE(A)とE(A1)であり、両者の測定値を使ってE(A2)を計算することになる。従って、仮にE(A)を高くする操作を行う際に、E(A2)を高くする操作、すなわち、重合工程(ii)に供給するエチレンの量を増やす操作を手段として選ぶ場合、測定値として直接確認できるのはE(A)であってE(A2)ではないが、E(A)が高くなる原因はE(A2)が高くなることにあるのは自明である。
最後に、MFR(A)の制御方法について説明する。本願においては、MFR(A2)を以下の式で定義することにする(当然ながら、MFR(B2)についても同様に定義する。)
MFR(A2)=exp{(loge[MFR(A)]−W(A1)×log[MFR(A1)])÷W(A2)}
(ここで、logはeを底とする対数である。MFR(A)、MFR(A1)、MFR(A2)は、それぞれ、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)、プロピレン系重合体成分(A1)、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)のMFRである。)
この式は一般に粘度の対数加成則と呼ばれる経験式:
log[MFR(A)]=W(A1)×log[MFR(A1)]+W(A2)×log[MFR(A2)]
を変形したものであり、当業界で日常的に使われるものである。
この式で定義する為に、プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比、MFR(A)、MFR(A1)、MFR(A2)は独立ではない。故に、MFR(A)を制御するには、プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比、MFR(A1)、MFR(A2)の3つの因子を制御すればよい。例えば、MFR(A)を高くする為にはMFR(A1)を高くしても良いし、MFR(A2)を高くしても良い。また、MFR(A2)がMFR(A1)より低い場合には、W(A1)を大きくしてW(A2)を小さくしてもMFR(A)を高くすることができることも容易に理解できよう。逆方向の制御方法も同様である。
なお、実際に測定値を直接得られるのはMFR(A)とMFR(A1)であり、両者の測定値を使ってMFR(A2)を計算することになる。従って、仮にMFR(A)を高くする操作を行う際に、MFR(A2)を高くする操作、すなわち、重合工程(ii)に供給する水素の量を増やす操作を手段として選ぶ場合、測定値として直接確認できるのはMFR(A)であってMFR(A2)ではないが、MFR(A)が高くなる原因はMFR(A2)が高くなることにあるのは自明である。
プロピレン−エチレンブロック共重合体の重合プロセスは、回分式、連続式のいずれの方法によっても実施可能である。この際に、ヘキサン、ヘプタンなどの不活性炭化水素溶媒中で重合を行う方法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として使用する方法、実質的に液体溶媒を用いずにガス状の単量体中で重合を行う方法、さらに、これらを組み合わせた方法を採用することが出来る。また、重合工程(i)と重合工程(ii)は同一の重合槽を用いても、別個の重合槽を用いてもよい。
[プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)および(B)の配合比]
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、上記プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)および(B)の配合比が、成分(A)/成分(B)の重量比で、95/5〜30/70であることが必要であり、好ましくは90/10〜50/50である。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)が、30重量部未満では透明性が不充分であり、95重量部を超えると耐衝撃性の低下や、フィルムのベタツキが顕著となる。
[その他成分]
本発明のプロピレン系樹脂組成物には、さらに耐寒衝撃性を向上させる目的でエチレン−α−オレフィン共重合体をプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)および(B)の合計100重量部に対して5〜30重量部添加することができる。
エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、0.880〜0.910g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.885〜0.907g/cmの範囲である。密度が0.910g/cmより高い場合には、フィルムの透明性低下を招き、また、耐衝撃性の向上効果が見られないため、併用する意味が失われる。
ここで、密度は、JIS K7112に準拠して測定する値である。
また、エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレートは、0.5〜10g/10分の範囲内にあることが好ましい。エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレートが0.5g/10分より低いと、フィルム成形時の押出特性が悪化しやすく、フィルムの生産性に悪影響を及ぼす可能性が高くなるため好ましくない。
また、メルトフローレートが10g/10分より高いと、ベタツキやブリードアウトを招きやすくなり、また、耐衝撃性の低下につながるために好ましくない。
ここでのMFRは、JIS K7210に準拠し、加熱温度190℃、荷重21.18Nで測定する値である。
エチレン−α−オレフィン共重合体のプロピレン系樹脂樹脂組成物中の含有量は、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)および(B)の合計100重量部に対して、3〜20重量部の範囲とすることが好ましい。含有量を20重量部以下に抑えることにより、本発明のプロピレン−エチレンブロック共重合体が元来有している剛性を損なうことなく、加熱殺菌処理食品の包装フィルムを得ることが可能である。含有量が20重量部を超えると、剛性が著しく低下し、ベタツキが激しくなる上、成形が非常に困難になるため望ましくない。3重量部未満では、耐寒衝撃性の向上が見込めず添加の効果が期待できないため、3重量部〜20重量部の範囲で用いるのがより好ましい。
エチレン−α−オレフィン共重合体におけるコモノマーとしては、好ましくは炭素数3〜10のα−オレフィン、炭素数4〜10のアルカジエンからなる群のうち少なくとも一種類であり、コモノマーの含有量は10重量%以上であることが望ましい。コモノマー含有量が10重量%より小さくなると、柔軟性が低下するため耐衝撃性が乏しくなり併用効果が薄れる。
コモノマーとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。
エチレン−α−オレフィン共重合体の好ましい代表例としては、エチレン−プロピレン共重合体エラストマー(EPR)、エチレン−ブテン共重合体エラストマー(EBR)、エチレン−ヘキセン共重合体エラストマー(EHR)、エチレン−オクテン共重合体エラストマー(EOR)、エチレン−プロピレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−イソプレン共重合体等が挙げられる。
本発明の加熱殺菌処理食品の包装フィルム用樹脂組成物においては、本発明の効果を損なわない範囲内で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、臭気吸着剤、抗菌剤、顔料、無機質及び有機質の充填剤並びに種々の合成樹脂などの公知の添加剤を必要に応じて随時添加することができる。
[フィルム成形]
本発明の加熱殺菌処理食品の包装用フィルムは、透明性、耐熱性、耐低温衝撃性、食品衛生性に優れ、主として未延伸フィルムとして用いると、その効果が充分に発揮される。
該フィルムは、溶融押出製膜して得ることができ、一般に工業的に行われているキャスト法、インフレーション法などで製造できる。
本発明の加熱殺菌処理食品の包装用フィルムは、高度の透明性を有し、厚さ60μmの試験片を用いて測定したヘイズ(HAZE)が40%以下であることを特徴とする。
本発明のフィルムは、上記樹脂組成物を用いた単層フィルムとしても積層フィルムとしても用いることができる。積層フィルムの場合には、本発明の樹脂組成物よりなる層が全フィルム厚みの50%以上とすることが好ましい。フィルム厚みは5〜200μmが好ましく、10〜100μmが更に好ましい。
フィルムの表面には、表面の濡れ適正向上のためにコロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理などを行うことも可能である。
本発明の樹脂組成物からフィルムを製造するにあたって、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)、プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)および必要に応じてエチレン−α−オレフィン共重合を予め混合し、押出機などでペレット化したものをフィルム成形機に供給してフィルムとしてもよく、また、フィルム製造時にプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)、プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)および必要に応じてエチレン−α−オレフィン共重合の各々ペレットをフィルム成形機に供給してフィルムとしてもよい。
以下、実施例および比較例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により限定して解釈されるものではない。
なお、本発明の詳細な説明および実施例中の各項目の物性測定や分析値などは、下記の方法に従ったものである。
(1)共重合体中のエチレン含有量の測定
第1重合工程終了時に得られたプロピレン系重合体(A1)、(B1)および、第2重合工程を経て得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)、(B)における各々のエチレン含有量は、プロトン完全デカップリング法により以下の条件に従って測定した13C−NMRスペクトルを解析することにより求めた。
機種: 日本電子(株)製 GSX−400又は同等の装置(炭素核共鳴周波数100MHz以上)
溶媒: o−ジクロロベンゼン+重ベンゼン(4:1(体積比))
濃度: 100mg/mL
温度: 130℃
パルス角: 90°
パルス間隔: 15秒
積算回数: 5,000回以上
スペクトルの帰属は、例えば、Macromolecules 17,1950 (1984)などを参考に行う。上記条件により測定されたスペクトルの帰属は下記表1の通りである。表中Sαα等の記号はCarmanら(Macromolecules 10, 536 (1977))の表記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
以下、「P」を共重合体連鎖中のプロピレン単位、「E」をエチレン単位とすると、連鎖中にはPPP、PPE、EPE、PEP、PEE、およびEEEの6種類のトリアッドが存在し得る。Macromolecules 15,1150 (1982)などに記されているように、これらトリアッドの濃度と、スペクトルのピーク強度とは、以下の(1)〜(6)の関係式で結び付けられる。
[PPP]=k×I(TΒΒ) (1)
[PPE]=k×I(TΒδ) (2)
[EPE]=k×I(Tδδ) (3)
[PEP]=k×I(SΒΒ) (4)
[PEE]=k×I(SΒδ) (5)
[EEE]=k×{I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4} (6)
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば[PPP]は全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。したがって、
[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1(7)
である。
また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えば、I(TΒΒ)はTΒΒに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。上記(1)〜(7)の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、更に下式によりエチレン含有量が求まる。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
なお、エチレン含有量のモル%から重量%への換算は以下の式を用いて行う。
エチレン含有量(重量%)=
(28×X/100)/{28×X/100+42×(1−X/100)}×100
ここで、Xはモル%表示でのエチレン含有量である。
(4)MFR
JIS K7210A法・条件Mに従い、以下の条件で測定した。単位はg/10分である。
試験温度:230℃ 公称加重:2.16kg
ダイ形状:直径2.095mm、長さ8.000mm
(5)フィルムの剛性
下記の条件にて、フィルムの引張弾性率を測定し、得られた値を剛性の尺度とした。引張弾性率の計算方法は、JIS K7127に準拠した。なお、サンプル長辺がMDとなるようサンプリングを行った。
サンプル長さ:150mm サンプル幅:15mm
チャック間距離:100mm クロスヘッド速度:1mm/min
(6)フィルムの臭気
得られたフィルムを、容量300mLの清潔な共栓付き三角フラスコに、容器の容積の約1/2になるよう封入し、80℃の恒温槽内で2時間加熱保持した後に取り出し、10分以内に下記基準にて、臭気官能評価を行った。
○:無臭又は僅かに臭いが感じられる
△:やや臭う
×:かなり臭う
××:激しく臭う
(7)フィルムの耐熱性試験(熱収縮変化および熱膨張変化)
MD:100mm、TD:100mmのフィルム試験片を130℃のオーブン中または、130℃のサラダ油中で30分熱処理後、MD、TDそれぞれの寸法変化を測定し、次式にて算出した。なお、オーブン中およびサラダ油中における各々の数値が小さい方が耐熱性により優れている。
耐熱性=MDの寸法変化(%)+TDの寸法変化(%)
(8)T字剥離試験によるフィルムのベタツキ性
MD:20mm×TD:200mmのフィルムのチルロール面同士を内側になるように重ね合わせ、MD片端部から150mmまでの領域に50g/cmの荷重を加えた状態で、60℃の恒温槽にて7日間保管した。MD片端部から密着部150mm、非密着部50mm、TD幅20mmの対となったフィルムの部分密着サンプルを得た。
これをJIS K6854−3法に基づき、剥離速度を300mm/分にてフィルム密着部の剥離強さ(mN)を測定し、その最大値をサンプル幅で除して得られた値をもってフィルムのベタツキ性を評価した。
なお、この値が2.0mN/mmを超えるようなフィルムは、成形製品のブロッキングや外観不良の問題を引き起こし易いため、使用上好ましくない。
(9)レトルト殺菌後のフィルムの耐落袋衝撃性
MD140mm×TD170mmのフィルムのチルロール面同士を外側になるように重ねあわせ、MD2辺、TD1辺を10mm幅で熱圧着(条件:200℃、2kg/cm、1.0秒)して食品包装用袋を得た。次いで、水道水250mlを充填し、121℃×30分のレトルト殺菌を実施した。
レトルト殺菌を実施した後、4℃にて1週間冷温保存した。冷温保存後のサンプルを4℃条件下にて、最終シール部(最後にシールした一辺)が上になるように、コンクリートの床上120cmの高さから連続で10回の垂直落下を行った後、破袋の有無を確認した。なお、実験は複数試料に対して行い、評価結果は、「破袋数/n(n:落袋試験に用いた袋の数)」の様に表す。
(10)レトルト殺菌処理後のフィルムの透明性
MD140mm×TD170mmのフィルムのチルロール面同士を外側になるように重ねあわせ、MD2辺、TD1辺を10mm幅で熱圧着(条件:200℃、2kg/cm、1.0秒)して食品包装用袋を得た。次いで、水道水250mlを充填し、121℃×30分のレトルト殺菌を実施した。
レトルト殺菌を実施した後、食品包装袋の4方の各シール面内側にてフィルムを切開して内容物を抜き、加熱処理後のフィルムを得た。このフィルムをASTM D−1003に準拠してヘイズ(HAZE)を測定した(HAZE/処理後)。
(11)レトルト殺菌後のフィルムの耐衝撃性
雰囲気温度23℃および−10℃の各条件にて、JIS P8134に準拠した装置を使用し、上記方法でレトルト殺菌を施したフィルムを用いた。フィルム試験片を直径50mmのホルダーに固定し、25.4mmの半球型の金属製貫通部で打撃させ、貫通破壊に要した仕事量(J)を測定し、フィルム厚みで除して求めた。
[製造例A−1]
以下の製造例において、触媒組成の分析は、以下のようにして行った。
Ti含量:
試料を精確に秤量し、加水分解した上で比色法を用いて測定した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含量を計算した。
ケイ素化合物含量:
試料を精確に秤量し、メタノールで分解した。ガスクロマトグラフィーを用いて標準サンプルと比較することにより、得られたメタノール溶液中のケイ素化合物濃度を求めた。メタノール中のケイ素化合物濃度と試料の重量から、試料に含まれるケイ素化合物の含量を計算した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含量を計算した。
予備重合触媒の調製
(1)固体成分の調製
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したトルエン2Lを導入した。ここに、室温で、Mg(OEt)を200g投入し、TiClを1Lゆっくりと添加した。温度を90℃に上げて、フタル酸ジ−n−ブチルを50ml導入した。その後、温度を110℃に上げて3hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiClを1L添加し、温度を110℃に上げて2hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiClを1L添加し、温度を110℃に上げて2hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。更に、精製したn−ヘプタンを用いて、トルエンをn−ヘプタンで置換し、固体成分のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分のTi含量は2.7重量%であった。
次に、撹拌装置を備えた容量20Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、上記固体成分のスラリーを固体成分として100g導入した。精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分の濃度が25g/Lとなる様に調整した。SiClを50ml加え、90℃で1hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。
その後、精製したn−ヘプタンを導入して液レベルを4Lに調整した。ここに、ジメチルジビニルシランを30ml、i−PrSi(OMe)を30ml、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして80g添加し、40℃で2hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、固体触媒を得た。得られた固体触媒のスラリーの一部をサンプリングして乾燥し、分析を行った。固体触媒にはTiが1.2重量%、i−PrSi(OMe)が8.9重量%含まれていた。
(2)予備重合
上記で得られた固体触媒を用いて、以下の手順により予備重合を行った。上記のスラリーに精製したn−ヘプタンを導入して、固体触媒の濃度が20g/Lとなる様に調整した。スラリーを10℃に冷却した後、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして10g添加し、280gのプロピレンを4hrかけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に30分反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをオートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行って予備重合触媒を得た。この予備重合触媒は、固体触媒1gあたり2.5gのポリプロピレンを含んでいた。分析したところ、この予備重合触媒のポリプロピレンを除いた部分には、Tiが1.0重量%、i−PrSi(OMe)が8.3重量%含まれていた。
この予備重合触媒を用いて、以下の手順に従ってプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の製造を行った。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の製造
内容積2mの流動床型重合槽が2個直列に繋がった2槽連続重合設備を用いてプロピレン−エチレンブロック共重合体の製造を行った。使用するプロピレン、エチレン、水素、窒素は一般的な精製触媒を用いて精製したものを使用した。第1重合槽におけるプロピレン系重合体成分(A1)の製造量、及び、第2重合槽におけるプロピレン−エチレンランダム重合体成分(A2)の製造量は重合槽の温度制御に使用する熱交換器の冷却水温度の値から求めた。
重合工程(i):プロピレン系重合体成分(A1)の製造
第1重合槽を用いてプロピレンの単独重合を行った。重合温度は65℃、全圧は3.0MPaG、パウダーホールド量は40kgとした。重合槽に連続的にプロピレン、水素、及び、窒素を供給し、プロピレン及び水素の濃度がそれぞれ70.83mol%、0.49mol%となる様に調整した。助触媒として、EtAlを5.0g/hの速度で連続的に供給した。第1重合槽におけるプロピレン系重合体成分(A1)の製造量が20.0kg/hとなる様に、上記で得られた予備重合触媒を重合槽に連続的に供給した。生成したプロピレン系重合体成分(A1)は連続的に抜き出しを行い、パウダーホールド量が40kgで一定となる様に調整した。第1重合槽から抜き出したプロピレン系重合体成分(A1)は第2重合槽に連続的に供給し、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の製造を引き続いて行った。
第1重合槽で生成したプロピレン系重合体成分(A1)の一部を抜き出して分析した所、MFR(A1)は3.90g/10分であった。また、プロピレン系重合体成分(A1)の製造量を供給した触媒量(但し予備重合触媒に含まれるポリプロピレンを除く)で割った値から触媒活性を計算した所、重合工程(i)における触媒活性は22kg−PP/g−触媒であった。
重合工程(ii):プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の製造
第2重合槽を用いてプロピレンとエチレンのランダム共重合を行った。重合温度は65℃、全圧は2.0MPaG、パウダーホールド量は40kgとした。重合槽に連続的にプロピレン、エチレン、水素、及び、窒素を供給し、プロピレン、エチレン、及び、水素の濃度がそれぞれ62.00mol%、9.43mol%、3.57mol%となる様に調整した。重合抑制剤であるエタノールを連続的に供給することによって、第2重合槽におけるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の製造量が5.0kg/hとなる様に調整した。こうして生成したプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は連続的に抜き出しを行い、パウダーホールド量が40kgで一定となる様に調整を行った。第2重合槽から抜き出したプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、更に乾燥機に移送し、充分に乾燥を行った。
生成したプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の一部を分析した所、MFR(A)は3.80g/10分、エチレン含量E(A)は4.6重量%であった。重合工程(i)の製造量と重合工程(ii)の製造量から、プロピレン系重合体成分(A1)の重量比率W(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比率W(A2)を求めた所、それぞれ、0.80、0.20であった。
こうして得られたW(A1)、W(A2)、E(A)、MFR(A1)、MFR(A)から、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)のエチレン含量E(A2)及びMFR(A2)を計算した。計算には以下の式を使用した。
E(A2)={E(A)−E(A1)×W(A1)}÷W(A2)
MFR(A2)=exp{(log[MFR(A)]−W(A1)×log[MFR(A1)])÷W(A2)}
(ここで、プロピレン系重合体成分(A1)はプロピレン単独重合体なのでE(A1)は0重量%である。また上記の2式は前記[0035]および[0038」に記載したものをE(A2)、MFR(A2)について整理しなおしたものである。)
エチレン含量E(A2)は23.0重量%、MFR(A2)は3.42g/10分であった。
[製造例A−2、及び、A−10]
表2に記載の条件を用いた他は製造例A−1と同様にして、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の製造を行った。この際、第1重合槽にはエチレンも連続的に供給することにより、プロピレンとエチレンのランダム共重合を行っている。結果を表2に示す。
[製造例A−3〜A−9]
表2に記載の条件を用いた他は製造例A−1と同様にして、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の製造を行った。結果を表2に示す。
[製造例B−1、及び、B−3〜B−7]
表3に記載の条件を用いた他は製造例A−1と同様にして、プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)の製造を行った。結果を表3に示す。
[製造例B−2、及び、B−8]
表3に記載の条件を用いた他は製造例A−1と同様にして、プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)の製造を行った。この際、第1重合槽にはエチレンも連続的に供給することにより、プロピレンとエチレンのランダム共重合を行っている。結果を表3に示す。
[実施例1〜14(実施例4は参考例)][比較例1〜13]
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)とプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)を、表4に示す割合で混合した組成物100重量部に対し、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.05重量部、トリス−(2,4−ジ−t―ブチルフェニル)ホスファイト0.05重量部、ステアリン酸カルシウム0.05重量部をタンブラーにてそれぞれ混合し均一化し、得られた混合物を35mm径の二軸押出機により230℃で溶融混練し、ペレット化した。
このペレットを用いて、330mm幅のT型ダイスを有する35mm径の押出機にて250℃で溶融押出しした後、40℃に調整された直径300mmのチルロールに巻き付けながら冷却固化し、フィルム厚み60μmの無延伸の加熱殺菌処理食品の包装用フィルムを得た。得られたフィルムについての物性を、前記測定法に準拠し測定した。表4にその評価結果を掲載する。
[実施例15〜18][比較例14〜17]
上記実施例・比較例と同様に得られた実施例15〜18・比較例14〜17のプロピレン−エチレンブロック共重合体組成物の各ペレットの90重量%に対して、10重量%のエチレン−α−オレフィン共重合体(三井化学社製、商品名「タフマーA1085」、エチレン含量75重量%、密度0.886)を均一になるように混ぜ合わせた後、330mm幅のT型ダイスを有する35mm径の押出機にて250℃で溶融押出しした後、40℃に調整された直径300mmのチルロールに巻き付けながら冷却固化し、フィルム厚み60μmの無延伸の加熱殺菌処理食品の包装用フィルムを得た。得られたフィルムについての物性を、前記測定法に準拠し測定した。表4にその評価結果を掲載する。
(混練条件)
混練機:東芝機械社製35mm径同方向二軸混練機 混練温度:230℃
スクリュー回転数:250rpm フィーダー回転数:50rpm
(フィルム成形)
Tダイ成形機:プラコー社製35mm径単軸成形機 押出温度:250℃
チルロール温度:35℃ 引取速度:10.0〜12.0m/分
フィルム厚さ:60μm
[実施例と比較例の結果の考察]
表4における実施例1〜18から明らかなように、本発明によるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)およびプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)を含有する組成物からのフィルムは、無臭性、耐熱性、耐落下破袋性、レトルト処理後のとりわけ低温における耐衝撃性、加熱後の透明性維持のバランス確保に加え、耐ベタツキ性にも優れている(実施例1〜18)。
一方で、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)のみからなるフィルムは、透明性には優れるものの耐寒衝撃性に劣り、フィルムのベタツキが抑制できない(比較例1、7)。また、プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)のみからなるフィルムでは、耐寒衝撃性に優れるものの透明性に劣る(比較例12、13)。
また、ポリプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)および(B)の一方または両方が、本発明の請求項1の各要件を満たさない組成物である場合、透明性、耐熱性、耐寒衝撃性、耐ベタツキ性の各特性をバランスよく確保することが出来ない。
なお、得られた各フィルムのMD断面を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて5000倍の拡大倍率で観察したところ、図に示すように、実施例11(図1)では塊状で存在するエチレン−プロピレンランダム共重合体と細長く配向しているエチレン−プロピレンランダム共重合体とが共に存在することが確認できた。一方で、比較例1(図2)のフィルムのSEM像からは配向形態のみが観察され、また、比較例12(図3)のフィルムのSEM像からは塊状態のみが観察され、比較例15(図4)のSEM像においては太く短く配向するエチレン−プロピレンランダム共重合体が各々観察された。
以上の結果より、本発明の各実施例においては、各比較例に比して、加熱殺菌処理食品の包装用フィルムの各性能が、バランス良くおしなべて顕著に優れており、本発明の構成の合理性と有意性及び従来技術に対する卓越性を明示しているといえる。
本発明の加熱殺菌処理食品の包装フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物は、耐寒衝撃性・耐落下破袋性と透明性の両立が成され、ヒートシール性や耐熱性、更には耐ベタツキ性や食品衛生性などが、バランス良く押しなべて向上されており、包装材料分野において、高温で熱処理されるレトルト食品の包装フィルムなどの用途に有効に用いることができる。

Claims (4)

  1. 多段重合により得られる、下記(a1)〜(a3)の条件を満たすプロピレン系重合体成分とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分とを含むプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)と、
    多段重合により得られる、下記(b1)〜(b3)の条件を満たすプロピレン系重合体成分とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分とを含むプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)を、
    共重合体(A)と共重合体(B)との重量比で95/5〜30/70含有し、厚さ60μmの試験片を用いて測定したヘイズ(HAZE)が40%以下であることを特徴とする加熱殺菌処理食品の包装フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物。
    ・プロピレン−エチレンブロック共重合体(A);
    (a1)プロピレン系重合体成分(A1)、エチレン含量が0〜2重量%のプロピレン単独または共重合体であること。
    (a2)プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)は、エチレン含量が10〜40重量%であること。
    (a3)プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)のMFRが0.5〜5g/10minであること。
    ・プロピレン−エチレンブロック共重合体(B);
    (b1)プロピレン系重合体成分(B1)、エチレン含量が0〜2重量%のプロピレン単独または共重合体であること。
    (b2)プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B2)は、エチレン含量が2055重量%であること。
    (b3)プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B2)のMFRが0.01〜0.5g/10minであること。
  2. さらに、密度が0.860〜0.910g/cmのエチレン−α−オレフィン共重合体を、ブロック共重合体(A)とブロック共重合体(B)の合計100重量部に対し、3〜30重量部含有することを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物を、溶融押出製膜して得られる加熱殺菌処理食品の包装用フィルム。
  4. フィルムが、レトルト食品の包装用フィルムである請求項3に記載の包装用フィルム。
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