JP5754090B2 - ガラスフリット、およびこれを用いた導電性ペースト、電子デバイス - Google Patents

ガラスフリット、およびこれを用いた導電性ペースト、電子デバイス Download PDF

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Description

本発明は、ガラスフリット、およびこれを用いた導電性ペースト、ならびに電子デバイスに関する。
従来から、シリコン(Si)等の半導体基板の上に電極となる導電層を形成した電子デバイスが、種々の用途に使用されている。
この電極となる導電層は、アルミニウム(Al)や銀(Ag)、銅(Cu)等の導電性金属粉末とガラスフリットを有機ビヒクル中に分散させた導電性ペーストを、半導体基板上に塗布し、導電性金属粉末の融点以上の温度で焼成することにより形成されている。
従来から、導電性ペーストに配合されるガラスフリットとしては、酸化鉛を含有するものが用いられているが、環境保護等の理由から、鉛を含有しない組成のものが求められている。また、電極となる導電層は、腐食性ガス等に対する耐久性が良好であることが求められている。しかし、従来からのガラスフリットを使用した導電性ペーストでは、このような要求を十分に満足させることができなかった。
ところで、厚膜電極配線材料として、酸化バナジウムを主成分とするガラス組成物と銀粉末とを含有する材料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1に示されている電極配線材料は、ガラス組成物中にMnOを5重量%以上含むため、ガラスの流動性が阻害されやすく、この電極材料により形成された銀電極は、腐食性ガスに対する耐久性が十分ではなかった。
特開2009−209032号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、腐食性ガス等に対する耐久性に優れた導電層(電極)を形成することができる導電性粒子バインダー用ガラスフリットを提供することを目的とする。
本発明のガラスフリットは、実質的にPbおよびMnを含まず、酸化物換算で、Vを20mol%以上80mol%以下、ZnOを5mol%以上22.2mol%以下、BaOを2mol%以上40mol%以下、Sbを0mol%以上15mol%以下、Pを0mol%以上22.3mol%以下含有し、平均粒径(50%粒径D50)が0.1μm以上5.0μm以下であることを特徴とする。
本発明の導電性ペーストは、導電性金属粉末、ガラスフリット、および有機ビヒクルを含有する導電性ペーストであって、前記ガラスフリットとして上記した本発明のガラスフリットを、前記導電性金属粉末100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有することを特徴とする。
本発明の電子デバイスは、半導体基板と、前記半導体基板上に設けられた導電層を備えた電子デバイスであって、前記導電層が、上記本発明の導電性ペーストの焼成により形成された層であることを特徴とする。
本発明の電子デバイスにおいて、前記導電層は、前記導電性ペーストを赤外線加熱炉により10℃/秒以上の昇温速度で加熱・焼成して形成された層であることが好ましい。また、前記導電層は、前記導電性ペーストに含有される前記ガラスフリットの焼成により、前記導電性金属粒子表面にガラス析出物が存在することが好ましい。
本発明によれば、半導体基板上に電極となる導電層を形成するためのガラスフリットの組成を所定のものとすることで、腐食性ガス等に対する耐久性に優れた導電層を得ることができる。
また、本発明によれば、このようなガラスフリットを用いて導電性ペーストを調製することで、腐食性ガス等に対する耐久性に優れた導電層を形成することができる。
さらに、本発明によれば、このような導電性ペーストの焼付けにより半導体基板上に導電層を形成することで、腐食性ガスに対する耐久性等の信頼性に優れた電子デバイスを得ることができる。
本発明の半導体デバイスの一例を示す断面図である。 実施例2のガラスフリットを用いて形成された銀電極の断面のSEMによる画像を示す。 比較例2のガラスフリットを用いて形成された銀電極の断面のSEMによる画像を示す。 実施例4のガラスフリットを用いて形成されたアルミニウム電極の断面のSEMによる画像を示す。 参考例7のガラスフリットを用いて形成されたアルミニウム電極の断面のSEMによる画像を示す。 参考例8のガラスフリットを用いて形成されたアルミニウム電極の断面のSEMによる画像を示す。 比較例2のガラスフリットを用いて形成されたアルミニウム電極の断面のSEMによる画像を示す。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のガラスフリットは、実質的にPbおよびPを含まず、酸化物換算で、Vを20mol%以上80mol%以下、ZnOを5mol%以上45mol%以下、BaOを0mol%以上40mol%以下、Sbを0mol%以上15mol%以下、Pを0mol%以上40mol%以下含有している。そして、このガラスフリットは、0.1μm以上5.0μm以下の平均粒径(50%粒径D50)を有している。
本発明のガラスフリットにおいて、Vは、ガラスの軟化温度を下げ、流動性を向上させる成分である。また、Vは、ガラスを着色させることで、焼成の際の赤外線の吸収率を向上させるので、導電性金属粒子の外周にガラス析出物が形成される。すなわち、Vを配合したガラスでは、赤外線の吸収率が高くなり高温になりやすいため、このガラスフリットを銀粉末のような導電性金属粉末と混合してなる導電性ペーストを赤外線で加熱して焼成する際に、ガラスが揮発して導電性金属粒子の表面に凝結し、粒子の外周を覆うことになる。こうして導電性金属粒子の周りに前記ガラス析出物が形成されることで、腐食性ガス等に対する耐久性が向上される。
このVは、ガラスフリット中に20mol%以上80mol%以下の割合で含有させる。Vの含有量が20mol%未満であると、焼成の際の赤外線の吸収が不十分で、ガラスが十分に揮散しないため、導電性金属粒子の周りにガラス層が形成されないおそれがある。Vの含有量が80mol%を超えると、結晶化によりガラスが得られないおそれがある。Vのより好ましい含有量は、22mol%以上75mol%以下であり、さらに好ましい含有量は24mol%以上72mol%以下である。
ZnOは、ガラスを安定化させる成分である。このZnOは、ガラスフリット中に5mol%以上45mol%以下の割合で含有させる。ZnOの含有量が、5mol%未満もしくは45mol%を超える場合には、結晶化によりガラスが得られないおそれがある。ガラスの安定化の観点から、ZnOのより好ましい含有量は7mol%以上40mol%以下であり、さらに好ましい含有量は8mol%以上35mol%以下である。
BaOは、ガラスを安定化させる成分である。このBaOは、ガラスフリット中に40mol%以下の割合で含有させる。BaOの含有量が40mol%を超える場合には、結晶化によりガラスが得られないおそれがある。ガラスの安定化の観点から、BaOのより好ましい含有量は2mol%以上38mol%以下であり、さらに好ましい含有量は4mol%以上36mol%以下である。
Sbはガラスの耐水性を向上させる成分である。このSbは、ガラスフリット中に15mol%以下の割合で含有させることができる。Sbの含有量が15mol%を超えると、ガラスの軟化温度が上昇するため、焼成中にガラスが十分に流動せず、導電性金属粒子の周りにガラス析出物が形成されなくなる。そのため、腐食性ガス等に対する耐久性が悪くなるおそれがある。Sbのより好ましい含有量は13mol%以下であり、さらに好ましい含有量は12mol%以下である。
はガラスの安定性を向上させる成分である。このPは、ガラスフリット中に40mol%以下の割合で含有させることができる。Pの含有量が40mol%を超えると、ガラスの軟化温度が上昇するため、焼成中にガラスが十分に流動せず、導電性金属粒子の周りにガラス析出物が形成されなくなる。そのため、腐食性ガス等に対する耐久性が悪くなるおそれがある。Pのより好ましい含有量は35mol%以下であり、さらに好ましい含有量は33mol%以下である。
本発明のガラスフリットは、実質的にMnを含有しない。Mnを含有するとガラスの流動性が阻害されやすくなるため、導電性粒子の周りにガラス析出物が形成されなくなり、腐食性ガス等に対する耐久性が悪くなるおそれがある。
本発明のガラスフリットは、環境への配慮から、実質的にPbを含有しない。
本発明のガラスフリットは、上記した必須成分であるVとZnO、および必要に応じてさらにBaO、Sb、P等をそれぞれ所定の割合で配合し、十分に混合した後、例えば温度を1100℃以上1300℃以下、時間を10分以上120分以下とした熱処理を行い、さらに冷却、粉砕することにより容易に得ることができる。
このようにして得られるガラスフリットの平均粒径は、0.1μm以上5.0μm以下とする。ここで、平均粒径は累積中位径(50%粒径(D50))とする。50%粒径(D50)が0.1μm未満であると、フリットの凝集性が強くなり、フリットが凝集体として存在するため、後述する導電性ペーストの調製において、導電性金属粉末中に十分に分散しないおそれがある。その結果、焼成中にガラスが十分に流動しない。また、50%粒径(D50)が5.0μmを超える場合には、フリットの比表面積が小さくなるため、実質的にガラスフリットが吸収する赤外線量が少なくなるため、焼成中にガラスが十分に揮散しないおそれがある。その結果、導電性金属粒子の周りをガラス析出物で覆うことができなくなり、腐食性ガス等に対する十分な耐久性が得られないおそれがある。なお、本明細書において、粒径はレーザ回折・散乱法による粒子径測定装置により得られる値とする。
本発明の導電性ペーストは、このような本発明のガラスフリットを含有するものである。具体的には、導電性金属粉末、ガラスフリット、および有機ビヒクルを含有するものであり、このガラスフリットの少なくとも一部、好適には全部が本発明のガラスフリットからなるものである。
導電性ペーストにおけるガラスフリットの含有量(割合)は、導電性金属粉末100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下とすることが好ましい。導電性金属粉末100質量部に対してガラスフリットの含有量が0.1質量部未満であると、導電性金属粒子の周りをガラス析出物で覆うことができなくなるおそれがある。また、導電性ペーストの焼成により形成される導電層(電極)とシリコン等の半導体基板との密着性が不十分になるおそれがある。ガラスフリットの含有量が10質量部を超えると、この導電性ペーストにより形成される導電層の導電性が不十分になるおそれがある。また、導電性と半導体基板との密着強度が大きくなり過ぎて、半導体基板の反りが大きくなるおそれがある。
本発明の導電性ペーストに含有させる導電性金属粉末としては、導電性アルミニウム粉末、銀粉末、銅粉末等を挙げることができる。それらの導電性金属粉末の形状や製造方法は特に限定されない。また、導電性金属粉末の粒径も特に限定されるものではなく、平均粒径(50%粒径D50)が0.1〜20μmという広い範囲のものを使用することができる。特に、50%粒径(D50)が0.1〜10μmのものを使用することが好ましい。50%粒径(D50)が0.1μm未満、もしくは10μmを超えると、適正な粘度のペーストが得られず好ましくない。
有機ビヒクルとしては、この種の導電性ペーストに通常用いられる有機樹脂バインダーを用いることができ、例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース等を用いることができる。有機質ビヒクルの含有量は、導電性ペースト全体の5質量%以上40質量%以下であることが好ましい。有機質ビヒクルの含有量が5質量%未満になると、ペースト粘度が上昇するために導電性ペーストの印刷等の塗布性が低下し、良好な導電層(電極)を形成することができない。また、有機質ビヒクルの含有量が40質量%を超えると、ペーストの固形分率が低くなり、十分な塗布膜厚が得られないという問題が生じる。
本発明の導電性ペーストには、上記した導電性金属粉末、ガラスフリット、および有機ビヒクルに加え、必要に応じてペーストの特性を調整する分散剤、可塑剤、沈降防止剤、チクソ剤、など各種添加剤を含有させることができる。添加剤の組成は特に制限されないが、含有量は10質量%以下とすることが好ましい。
本発明の導電性ペーストは、有機ビヒクルとしての有機樹脂バインダーを溶媒に溶解させて得られる有機ビヒクル溶液に、導電性金属粉末、ガラスフリット、および必要に応じて前記添加剤を加え、十分に混練することにより調製することができる。
図1に示す本発明の電子デバイス1は、半導体基板2と、その上に設けられた導電層(電極)3を備えており、導電層(電極)3は、前記した導電性ペーストの焼付けにより形成されている。このような電子デバイス1は、以下に示す方法で製造することができる。すなわち、半導体基板1の主面の所定の領域に、本発明の導電性金属ペーストをスクリーン印刷等の方法で塗布し、乾燥させる。その後、半導体基板1を例えば600℃以上900℃以下の温度に加熱し、導電性金属ペーストを焼成して、導電層3を形成する。
導電性金属ペーストの焼成による導電層3の形成においては、空気雰囲気で赤外線焼成炉を使用して昇温速度10℃/秒以上で加熱することが好ましい。さらに、最高温度600〜900℃、最高温度保持時間1〜10秒間の条件で焼成することが好ましい。
前記条件で加熱し焼成することにより、本発明の導電性金属ペースト中のガラスフリットが十分な流動性を示して、導電性金属粒子の表面をガラス析出物が覆う。Vを配合したガラスでは、赤外線の吸収率が高くなり高温になりやすいため、導電性金属粉末等と混合してなる導電性ペーストを赤外線で加熱して焼成する際に、ガラスが揮発して導電性金属粒子の表面に凝結し、導電性金属粒子の外周を覆うことになる。こうして導電性金属粒子の周りにガラス析出物が形成されることで、特性が改善される。すなわち、導電性金属粒子が銀粒子の場合には、銀粒子の外周に前記ガラス析出物が形成されることで、導電性ペーストを加熱・焼成してなる導電層3の腐食性ガス等に対する耐久性が大幅に改善される。また、導電性金属粒子がアルミニウム粒子の場合には、アルミニウム粒子の外周に前記ガラス析出物が形成されることで、水分等に対する耐久性が大幅に改善される。さらに、導電性金属粒子が銅粒子の場合には、銅が酸化される前に粒子の外周に前記ガラス析出物が形成されることで、銅の酸化を防止することができる。さらに、この酸化防止の効果は、表面処理や合金化により耐酸化性が高められた銅粒子において、より顕著に得られる。
焼成の際の昇温速度が10℃/秒未満である場合には、導電性金属ペースト中のガラスフリットが十分に揮散しないため、導電性金属粒子の周りをガラス析出物で覆うことができず、前記特性の改善効果が十分に得られなくなるおそれがある。
以下、本発明の実施例について記載する。
参考例1、実施例2〜6、参考例7,8、比較例1〜5)
まず、表1に示す組成を有するガラスフリットを製造した。すなわち、表1に示す組成となるように原料粉末を配合して混合し、1100〜1300℃の電気炉中で白金ルツボを用いて1時間溶融させ、薄板状ガラスを成形した。次いで、この薄板状ガラスをボールミルで粉砕し、平均粒径D50が0.9〜2.0μmの範囲で表1に示す値となるように、気流分級装置で分級した。こうして、参考例1、実施例2〜6、参考例7,8および比較例2,3および比較例5の電極形成用ガラスフリットを製造した。比較例4については、平均粒径D50が6.5μmとなるようにボールミルで粉砕して製造した。
比較例4のガラスフリットは実施例6のガラスフリットと同一の組成を有するものである。また、比較例2および3のガラスフリットは、Vを含有しないものであり、比較例5のガラスフリットはMnを含有するものである。
次に、参考例1、実施例2〜6、参考例7,8および比較例2〜5のガラスフリットを用いて、以下に示すようにして導電性ペースト(銀ペースト)を調製した。まず、エチルセルロース10質量部にターピネオール90質量部を混合し、85℃で2時間撹拌して有機ビヒクルを調製した。次に、こうして得られた有機ビヒクル10質量部を、導電性銀粉末(DOWAエレクトロニクス社製銀パウダー:AG4−8F)90質量部に混合した後、自転公転ミキサーにより混練した。その後、参考例1、実施例2〜6、参考例7,8および比較例2〜5のガラスフリットを、銀粉末100質量部に対して1.1質量部の割合で配合し、さらに自転公転ミキサーにより混練し銀ペーストとした。なお、表1に示すように、比較例1においては、ガラスフリットを配合しなかった他は前記と同様にして銀ペーストを調製した。
次に、実施例4、参考例7,8および比較例2のガラスフリットを用いて、以下に示すようにして導電性ペースト(アルミニウムペースト)を調整した。まず、エチルセルロース10質量部にターピネオール90質量部を混合し、85℃で2時間撹拌して有機ビヒクルを調製した。次に、こうして得られた有機ビヒクル20質量部を、アルミニウム粉末(東洋アルミニウム社製アルミニウムパウダー:D50=5μm)80質量部に混合した後、自転公転ミキサーにより混練した。その後、実施例4、参考例7,8および比較例2のガラスフリットを、アルミニウム粉末100質量部に対して1.4質量部の割合で配合し、さらに自転公転ミキサーにより混練しアルミニウムペーストとした。
次いで、上記のようにして得られた銀ペーストおよびアルミペーストを、6インチ角の多結晶シリコン基板の上に#325のスクリーン印刷版を用いて印刷し、150℃の乾燥機で10分間乾燥した後、空気雰囲気中で赤外線焼成炉により、昇温速度35℃/秒、最高温度720℃、最高温度保持時間2秒間の条件で焼成した。こうして、銀電極およびアルミニウム電極が形成されたシリコン基板(電極焼成基板)を得た。
こうして得られた電極焼成基板の銀電極の断面を、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、銀粒子のガラス析出物による被覆状態を調べた。ここで、実施例2のガラスフリットを用いて形成した銀電極の断面SEM画像を図2に示し、比較例2のガラスフリットを用いて形成した銀電極の断面SEM画像を図3に示す。図2の断面SEM画像から、実施例2のガラスフリットを用いて形成された銀電極において、銀粒子の表面にガラス析出物が形成されていることがわかる。これに対して、図3の断面SEM画像からわかるように、比較例2のガラスフリットを用いて形成された銀電極では、銀粒子の周りにガラス析出物が見られていない。
次に、プラスチック容器の中にイオン交換水25gおよび硫化アンモニウム0.5gを入れ、その中に、電極焼成基板を入れて蓋を載せた小さめのプラスチック容器を入れ、外側のプラスチック容器の蓋をきつく閉めた。室温で2時間放置した後、電極焼成基板を取り出し、電極上に斑点状の腐食があるか否かを、顕微鏡で目視観察した。斑点状の腐食が見られないものを○、見られたものを×とした。電極焼成基板が入れられた小さめのプラスチック容器内の硫化水素濃度を検知管で測定したところ、23ppmであった。
表1から明らかなように、比較例1で得られた銀ペーストは、ガラスフリットを含有していないので、この銀ペーストにより形成された銀電極では、銀粒子の周りにガラス析出物がなく、硫化水素が銀粒子表面と反応するため、斑点状の腐食が発生する。また、比較例2および3のガラスフリットを用いて調製された銀ペーストは、Vを含有しないガラスフリットが使用されているので、この銀ペーストにより形成された銀電極では、銀粒子の周りにガラス析出物が存在することがなく、硫化水素が銀粒子表面と反応するため、斑点状の腐食が発生する。比較例4で得られた銀ペーストは、所定の組成ではあるが所定の平均粒径(5μm)を超える大きさのガラスフリットが使用されているので、この銀ペーストにより形成された銀電極においても、銀粒子の周りにガラス析出物が十分に存在せず、斑点状の腐食が発生してしまう。比較例5のガラスフリットを用いて得られた銀ペーストは、MnOを含有するガラスフリットが使用されているので、この銀ペーストにより形成された銀電極では、銀粒子の周りにガラス析出物がなく、硫化水素が銀粒子表面と反応するため、斑点状の腐食が発生する。
これに対して、参考例1、実施例2〜6、参考例7,8のガラスフリットを用いて得られた銀ペーストは、所定の組成でかつ所定の平均粒径を有するガラスフリットを含有しているので、これらの銀ペーストの印刷・焼成により形成された銀電極では、銀粒子の周りにガラス析出物が存在し、硫化水素に対する耐性が優れているものであることがわかる。
次に、電極焼成基板のアルミニウム電極の断面をSEMで観察し、アルミニウム粒子のガラス析出物による被覆状態を調べた。ここで、実施例4のガラスフリットを用いて得られたアルミニウム電極の断面SEM画像を図4に示し、参考例7のガラスフリットを用いて得られたアルミニウム電極の断面SEM画像を図5に示し、参考例8のガラスフリットを用いて得られたアルミニウム電極の断面SEM画像を図6に示し、比較例2のガラスフリットを用いて得られたアルミニウム電極の断面SEM画像を図7に示す。図4、5および6の断面SEM画像から、実施例4、参考例7,8のガラスフリットを用いて得られたアルミニウム電極において、アルミニウム粒子の表面にガラス析出物が形成されていることがわかる。これに対して、図7の断面SEM画像からわかるように、比較例2のガラスフリットを用いて得られたアルミニウム電極では、アルミニウム粒子の周りにガラス析出物が見られていない。実施例4、参考例7,8のアルミニウム電極は、アルミニウム粒子表面にガラス析出物が存在するため、水分等に対する耐久性が向上すると考えられる。
1…半導体デバイス、2…半導体基板、3…導電層(電極)

Claims (6)

  1. 実質的にPbおよびMnを含まず、酸化物換算で、Vを20mol%以上80mol%以下、ZnOを5mol%以上22.2mol%以下、BaOを2mol%以上40mol%以下、Sbを0mol%以上15mol%以下、Pを0mol%以上22.3mol%以下含有し、平均粒径(50%粒径D50)が0.1μm以上5.0μm以下であることを特徴とする導電性粒子バインダー用のガラスフリット。
  2. の含有量が24mol%以上72mol%以下、ZnOの含有量が5mol%以上22.2mol%以下、BaOの含有量が17.8mol%以上36mol%以下である、請求項1記載のガラスフリット。
  3. 導電性金属粉末、ガラスフリット、および有機ビヒクルを含有する導電性ペーストであって、前記ガラスフリットとして請求項1または2記載のガラスフリットを、前記導電性金属粉末100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有することを特徴とする導電性ペースト。
  4. 半導体基板と、前記半導体基板上に設けられた導電層を備えた電子デバイスであって、
    前記導電層が、請求項記載の導電性ペーストの焼成により形成された層であることを特徴とする電子デバイス。
  5. 前記導電層は、前記導電性ペーストを赤外線加熱炉により10℃/秒以上の昇温速度で加熱・焼成して形成された層であることを特徴とする請求項記載の電子デバイス。
  6. 前記導電層は、前記導電性ペーストに含有される前記ガラスフリットの焼成により、前記導電性金属粒子表面にガラス析出物が存在することを特徴とする請求項4または5記載の電子デバイス。
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