JP5708156B2 - 三次元成形用加飾シート、該加飾シートの製造方法、加飾樹脂成形品及び該加飾樹脂成形品の製造方法 - Google Patents

三次元成形用加飾シート、該加飾シートの製造方法、加飾樹脂成形品及び該加飾樹脂成形品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、三次元成形用加飾シート、該加飾シートの製造方法、及び該加飾シートを用いた加飾樹脂成形品並びに該加飾樹脂成形品を製造する方法に関する。
成形品の表面に加飾シートを積層することで加飾した加飾樹脂成形品が、車両内装部品などの各種用途で使用されている。このような加飾樹脂成形品の成形方法としては、加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形しておき、該成形シートを射出成形型に挿入し、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化するインサート成形法と、射出成形の際に金型内に挿入された加飾シートを、キャビティ内に射出注入された溶融樹脂と一体化させ、樹脂成形品表面に加飾を施す射出成形同時加飾法(例えば、特許文献1参照)とがある。
上記の加飾樹脂成形品は表面の耐傷付き性を向上させる目的で表面保護層が設けられる。しかしながら、上述の加飾樹脂成形品の成形方法において、インサート成形法では加飾シートを真空成形型により予め三次元(立体)形状に成形する過程、射出成形同時加飾法では加飾シートが予備成形時にあるいは溶融樹脂の射出時に、キャビティの内周面に沿うように延伸されて密着する過程で、加飾シートが真空圧空作用により、あるいは溶融樹脂の圧力、剪断応力による引っ張りなどによって、金型形状に沿うために最低必要な量以上に伸ばされるため、成形品の曲面部の表面保護層にクラックが入るという問題があった。
上記問題点に対して、表面保護層として紫外線硬化性樹脂などの電離放射線硬化性樹脂を用い、加飾シートの表面保護層を形成する樹脂の架橋密度を高めることにより、加飾樹脂成形品の表面の耐摩耗性や耐傷付き性を向上させる試みがなされたが、依然として成形の際に成形品曲面部にクラックが生じるという問題があった。
また、表面保護層として紫外線硬化性樹脂などの電離放射線硬化性樹脂を用い、加飾シートの段階では半硬化状態とし、加飾成形された後に完全硬化させる方法が試みられたが(特許文献2参照)、未硬化樹脂成分を含む表面保護層は傷つきやすく、取り扱いが困難であり、未硬化樹脂成分が金型に付着することによる金型汚染の問題があった。この問題点を解決するために半硬化状態の表面保護層上に保護フィルムを設ける方法があるが、製造が煩雑になるとともに、コストアップの要因ともなる。
そこで、耐傷付き性と三次元成形性を両立し得る表面保護層が要望されている。
ところで、ポリカーボネート(メタ)アクリレート含有樹脂組成物は知られており(例えば、特許文献3及び4参照)、インサート成形用加飾シートの表面透明シートの背面の内側着色シートに黄変型ポリカーボネート系ウレタンアクリレートオリゴマーを少量含有する樹脂組成物を用いた例はあるが(特許文献5参照)、加飾シートの表面保護層にポリカーボネート(メタ)アクリレートを用いた例はなかった。
他方、アクリルシリコーン樹脂は、アクリルポリマー鎖をシロキサン結合によって強固に架橋した構造を有し、耐候性、耐熱性、耐薬品性、耐水性に優れた特性を持ち、外装用塗料に広く使用されている。しかし、樹脂成形品の表面の耐傷付き性を向上させる目的で表面保護層として用いる場合、形成される皮膜が硬く脆くなりクラックが発生することがある。このクラックを防止するため、アクリルシリコーン樹脂を表面保護層として用いる場合は、真空成形後のインサート成形用シート、あるいは射出成形後の樹脂成形品に紫外線硬化等の硬化処理を行っていた(例えば、特許文献6参照)。
しかしながら、三次元加工後の成形品に硬化処理するのは煩雑であり経済性に劣り、均一な硬化処理もしにくい。
そこで、アクリルシリコーン樹脂の優れた耐薬品性を維持しつつ、三次元成形性と耐傷付き性とを両立し得る表面保護層が要望されている。
一方、自動車の外装材、一般住居の玄関ドアや外装材、公共施設の床材や外壁などの内外装、あるいは建造物や屋外に設置される構造物は、直射日光や風雨に晒されることが多いため、これらの内外装材や建造物の表面保護などに用いられるシートには、極めて厳しい耐候性が求められている。耐候性を向上させるため、種々のシートが検討されている。例えば、特許文献7では、保護層に光安定剤や紫外線吸収剤などの添加剤を含有させることで、耐候性の向上を図っている。しかし、該保護層中の添加剤の含有量を向上させた場合、保護層を形成するバインダー樹脂との相溶性などに起因して、これらの添加剤がブリードアウトし、ベタ付きの原因となっていた。一方、ブリードアウトしない程度の添加剤の含有量では、これらの添加剤の十分な性能を得られず、耐候性の点で満足のいくものが得られないといった問題もあった。
特公昭50−19132号公報 特開平6−134859号公報 特開平3−181517号公報 特開2000−351843号公報 特開2003−145573号公報 特開平6−100799号公報 特開2009−66967号公報
本発明は、優れた耐候性、耐傷付き性及び加工性を有する三次元成形用加飾シート及びその製造方法、該加飾シートを用いた、優れた耐候性及び耐傷付き性を有する加飾樹脂成形品及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ベースフィルム上に、少なくとも絵柄層、プライマー層及び表面保護層を順に有し、かつ該表面保護層が、電離放射線硬化性樹脂として特定の化合物を含むと共に、耐候剤として反応性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなる層である三次元成形用加飾シートが、耐候性、耐傷付き性及び加工性などに優れる上、耐候剤のブリードアウトが抑制されることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1) ベースフィルム上に、少なくとも絵柄層、プライマー層及び表面保護層を順に有する加飾シートであって、該表面保護層が、(A)アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、及び(B)反応性官能基Aを有するヒンダードアミン系光安定剤、を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなる層であり、該アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、1分子中に、アクリル樹脂の構造の一部がシロキサン結合に置換しており、かつ官能基としてアクリル樹脂の側鎖及び/又は主鎖末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有していることを特徴とする三次元成形用加飾シート、
(2)(a)剥離フィルム上にプライマー層を形成する工程、(b)該プライマー層上に絵柄層を形成する工程、(c)該プライマー層及び絵柄層をベースフィルム上に転写する工程、(d)ベースフィルム上の剥離フィルムを剥がす工程、(e)該ベースフィルム上に形成されたプライマー層上に電離放射線硬化性樹脂組成物を積層する工程、及び(f)該電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して表面保護層を形成する工程を含む三次元成形用加飾シートの製造方法であって、該電離放射線硬化性樹脂組成物が、(A)アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、及び(B)反応性官能基Aを有するヒンダードアミン系光安定剤を含み、かつ該アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、1分子中に、アクリル樹脂の構造の一部がシロキサン結合に置換しており、かつ官能基としてアクリル樹脂の側鎖及び/又は主鎖末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有していることを特徴とする三次元成形用加飾シートの製造方法、
(3)上記(1)に記載の三次元成形用加飾シートを用いてなる加飾樹脂成形品、
(4)上記(1)に記載の三次元成形用加飾シートの表面保護層側を金型内に向けて熱盤によって該保護層側から該加飾シートを加熱する工程、加熱された該加飾シートを金型内形状に沿うように予備成形して金型内面に密着させて型締する工程、射出樹脂を金型内に射出する工程、該射出樹脂が冷却した後に金型から加飾樹脂成形品を取り出す工程を含むことを特徴とする加飾樹脂成形品の製造方法、及び
(5)上記(1)に記載の三次元成形用加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、該成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程を含むことを特徴とする加飾樹脂成形品の製造方法、
を提供するものである。
本発明によれば、優れた耐候性、耐傷付き性及び加工性を有する三次元成形用加飾シートを提供することができる。
本発明の三次元成形用加飾シートの一態様の断面を示す模式図である。 本発明の三次元成形用加飾シートを用いて得た加飾樹脂成形品の一態様の断面を示す模式図である。
[三次元成形用加飾シート]
本発明の三次元成形用加飾シートは、ベースフィルム上に、少なくとも絵柄層、プライマー層及び表面保護層を順に有する加飾シートであって、該表面保護層が、(A)ポリカーボネート(メタ)アクリレート及びアクリルシリコーン(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種、及び(B)反応性官能基Aを有するヒンダードアミン系光安定剤、を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなる層であることを特徴とする。
図1は、本発明の加飾シート10の一態様の断面を示す模式図である。図1に示す例では、加飾シート10は、ベースフィルム11上に、絵柄層12、プライマー層13及び表面保護層14を順に有する構成となっている。
まず、本発明の三次元成形用加飾シートの特徴である表面保護層を構成する電離放射線硬化性樹脂組成物について説明する。
[電離放射線硬化性樹脂組成物]
本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性であって、電離放射線硬化性樹脂として、(A)ポリカーボネート(メタ)アクリレート及びアクリルシリコーン(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むと共に、耐候剤として、(B)反応性官能基Aを有するヒンダードアミン系光安定剤(以下、ヒンダードアミン系光安定剤を、「HALS」と称することがある。)を含むことを特徴とする。
この電離放射線硬化性樹脂組成物は、本発明の三次元成形用加飾シートの表面保護層を形成するものであり、該三次元成形用加飾シートに優れた耐候性、耐傷付き性及び加工性を付与するものである。
(電離放射線硬化性樹脂)
本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物においては、電離放射線硬化性樹脂として、(A)ポリカーボネート(メタ)アクリレート及び/又はアクリルシリコーン(メタ)アクリレートを含み、さらに、電離放射線硬化性樹脂として、(C)多官能(メタ)アクリレートを含むことができる。
なお、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。電離放射線硬化性樹脂(化合物)とは、上記電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂(化合物)を指す。
<ポリカーボネート(メタ)アクリレート>
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂として、ポリカーボネート(メタ)アクリレート又はアクリルシリコーン(メタ)アクリレート、あるいはその両方が用いられるが、効果の面から、ポリカーボネート(メタ)アクリレートの使用が好ましい。まず、ポリカーボネート(メタ)アクリレートについて説明する。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。
本発明に用いられるポリカーボネート(メタ)アクリレートは、特に限定されず、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、且つ末端あるいは側鎖に(メタ)アクリレートを有するものであればよい。この(メタ)アクリレートは、架橋、硬化する観点から、2官能以上有することが好ましい。
上記のポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールの水酸基の一部又は全てを(メタ)アクリレート(アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル)に変換して得られる。このエステル化反応は、通常のエステル化反応によって行うことができる。例えば、1)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸ハライド又はメタクリル酸ハライドとを、塩基存在下に縮合させる方法、2)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸無水物又はメタクリル酸無水物とを、触媒存在下に縮合させる方法、あるいは3)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸又はメタクリル酸とを、酸触媒存在下に縮合させる方法などが挙げられる。
上記のポリカーボネートポリオールは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端あるいは側鎖に2個以上、好ましくは2〜50個の、より好ましくは3〜50個の水酸基を有する重合体である。このポリカーボネートポリオールの代表的な製造方法は、ジオール化合物(i)、3価以上の多価アルコール(ii)、及びカルボニル成分となる化合物(iii)とから重縮合反応による方法である。
原料として用いられるジオール化合物(i)は、一般式HO−R1−OHで表される。ここで、R1は、炭素数2〜20の2価炭化水素基であって、基中にエーテル結合を含んでいてもよい。例えば、直鎖、又は分岐状のアルキレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基である。
ジオール化合物の具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。これらジオールは、それを単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
また、3価以上の多価アルコール(ii)の例としては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ソルビトールなどのアルコール類を挙げることができる。さらに、これらの多価アルコールの水酸基に対して、1〜5当量のエチレンオキシド、プロピレンオキシド、あるいはその他のアルキレンオキシドを付加させた水酸基を有するアルコール類であってもよい。多価アルコールは、これらを単独で用いても、あるいは2種以上を混合してもよい。
カルボニル成分となる化合物(iii)は、炭酸ジエステル、ホスゲン、又はこれらの等価体の中から選ばれるいずれかの化合物である。その具体例としては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジフェニル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの炭酸ジエステル類、ホスゲン、あるいはクロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸フェニルなどのハロゲン化ギ酸エステル類などが挙げられる。これらは、単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
ポリカーボネートポリオールは、前記したジオール化合物(i)、3価以上の多価アルコール(ii)、及びカルボニル成分となる化合物(iii)とを、一般的な条件下で重縮合反応することにより合成される。例えば、ジオール化合物(i)と多価アルコール(ii)との仕込みモル比は、50:50〜99:1の範囲にあることが好ましく、また、カルボニル成分となる化合物(iii)のジオール化合物(i)と多価アルコール(ii)に対する仕込みモル比は、ジオール化合物及び多価アルコールの持つ水酸基に対して、0.2〜2当量であることが好ましい。
前記の仕込み割合で重縮合反応した後のポリカーボネートポリオール中に存在する水酸基の当量数(eq./mol)は、1分子中に平均して3以上、好ましくは3〜50、より好ましくは3〜20である。この範囲であると、後述するエステル化反応によって必要な量の(メタ)アクリレート基が形成され、またポリカーボネート(メタ)アクリレート樹脂に適度な可撓性が付与される。なお、このポリカーボネートポリオールの末端官能基は、通常はOH基であるが、その一部がカーボネート基であってもよい。
以上説明したポリカーボネートポリオールの製造方法は、例えば、特開昭64−1726号公報に記載されている。また、このポリカーボネートポリオールは、特開平3−181517号公報に記載されているように、ポリカーボネートジオールと3価以上の多価アルコールとのエステル交換反応によっても製造することができる。
本発明に用いられるポリカーボネート(メタ)アクリレートの分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、2000を超えることがさらに好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から100000以下が好ましく、50000以下がより好ましい。耐傷付き性と三次元成形性とを両立させる観点から、さらに好ましくは、2000を超え50000以下であり、特に好ましくは、5000〜20000である。
<多官能(メタ)アクリレート((C)成分)>
本発明に用いられる多官能(メタ)アクリレートは、2官能以上の(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。ただし、硬化性を高める必要のある場合は3官能以上の(メタ)アクリレートが好ましい。ここで、2官能とは、分子内にエチレン性不飽和結合{(メタ)アクリロイル基}を2個有することをいう。
また、多官能(メタ)アクリレートは、オリゴマー及びモノマーのいずれでもよいが、本発明のコーティング剤組成物を用いて製造されるシートの三次元成形性向上の観点から多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
上記の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えばウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。ここで、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
さらに、他の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。
また、上記の多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
以上述べた多官能性(メタ)アクリレートオリゴマー及び多官能性(メタ)アクリレートモノマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のコーティング剤組成物において、電離放射線硬化性樹脂として前述したポリカーボネート(メタ)アクリレートを用いる場合には、該ポリカーボネート(メタ)アクリレートと該多官能(メタ)アクリレートの質量比がポリカーボネート(メタ)アクリレート:多官能(メタ)アクリレート=98:2〜70:30であることが好ましい。
ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が98:2より大きくなると(即ち、ポリカーボネート(メタ)アクリレートの量が98質量%を超えると)、耐傷付き性が低下する。一方、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が70:30より小さくなると(即ち、ポリカーボネート(メタ)アクリレートの量が70質量%未満となると)、当該コーティング剤組成物を用いて製造されるシートの三次元成形性が低下してしまう。より好ましくは、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が95:5〜80:20である。
<単官能(メタ)アクリレート>
本発明のコーティング剤組成物においては、前記多官能(メタ)アクリレートとともに、コーティング剤組成物の粘度を低下させるなどの目的で、単官能(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<アクリルシリコーン(メタ)アクリレート>
次に、電離放射線硬化性樹脂として用いられるアクリルシリコーン(メタ)アクリレートについて説明する。
本発明に用いられるアクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、特に限定されず、1分子中に、アクリル樹脂の構造の一部がシロキサン結合(Si−O)に置換しており、かつ官能基としてアクリル樹脂の側鎖及び/又は主鎖末端に(メタ)アクリロイルオキシ基(アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基)を2個以上有しているものであればよい。
このアクリルシリコーン(メタ)アクリレートの例としては、例えば、特開2007−070544号公報に開示されるような側鎖にシロキサン結合を有するアクリル樹脂の構造が好ましく挙げられる。
本発明に用いられるアクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、例えばラジカル重合開始剤の存在下、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより合成することができる。
(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これら(メタ)アクリレートモノマーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
シリコーンマクロモノマーは、例えば、n−ブチルリチウム又はリチウムシラノレートを重合開始剤として、ヘキサアルキルシクロトリシロキサンをリビングアニオン重合し、更にラジカル重合性不飽和基含有シランでキャッピングして合成される。シリコーンマクロモノマーとしては、下記式(1);
Figure 0005708156
で表される化合物が好適に用いられる。ここで、式(1)中、R1は、炭素数1〜4のアルキル基を示し、メチル基又はn−ブチル基が好ましい。R2は、1価の有機基を示し、−CH=CH2、−C64−CH=CH2、−(CH23O(CO)CH=CH2又は−(CH23O(CO)C(CH3)=CH2が好ましい。R3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜6の炭化水素基を示し、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基が好ましく、メチル基がより好ましい。また、nの数値は特に制限されず、例えばシリコーンマクロモノマーの数平均分子量は1000〜30000が好ましく、より好ましくは1000〜20000である。
上述の原料を用いて得られるアクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、例えば、下記式(2)、(3)及び(4)で表される構造単位を有する。
Figure 0005708156
式(2)、(3)及び(4)中、R1、R3は式(1)におけるものと同義であり、R4は水素原子又はメチル基を示し、R5は上記(メタ)アクリレートモノマー中のアルキル基又はグリシジル基あるいは上記(メタ)アクリレートモノマー中のアルキル基又はグリシジル基等の官能基を有していてもよいアルキル基を示し、R6は(メタ)アクリロイルオキシ基を有する有機基を示す。
上述のアクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、1種を単独で又は2種を組み合わせて用いられる。
上記のアクリルシリコーン(メタ)アクリレートの分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、1000以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましい。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から150000以下が好ましく、100000以下がより好ましい。当該コーティング剤組成物を用いて製造されるシートの三次元成形性と耐薬品性と耐傷付き性とを両立させる観点から、2000〜100000であることが特に好ましい。
また、アクリルシリコーン(メタ)アクリレートの架橋点間平均分子量は、100〜2500であることが好ましい。架橋点間平均分子量が100以上であれば、該シートの三次元成形性の観点から好ましく、2500以下であれば、耐薬品性及び耐傷付き性の観点から好ましい。
本発明において、電離放射線硬化性樹脂として、前述したアクリルシリコーン(メタ)アクリレートを用いる場合には、該アクリルシリコーン(メタ)アクリレートと前述した多官能(メタ)アクリレートとの質量比が、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート:多官能(メタ)アクリレート=95:5〜50:50であることが好ましい。
アクリルシリコーン(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が95:5より大きくなると(即ち、アクリルシリコーン(メタ)アクリレートの量が95質量%を超えると)、当該電離放射線硬化性樹脂組成物を用いて製造されるシートの耐傷付き性及び三次元成形性が低下する。一方、アクリルシリコーン(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が50:50より小さくなると(即ち、アクリルシリコーン(メタ)アクリレートの量が50質量%未満となると)、該シートの耐薬品性及び耐傷付き性が低下する。より好ましくは、アクリルシリコーン(メタ)アクリレートと多官能性(メタ)アクリレートとの質量比は90:10〜75:25である。
本発明に係る電離放射線硬化性樹脂組成物においては、前記多官能(メタ)アクリレートと共に、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度を低下させるなどの目的で、前述した単官能(メタ)アクリレートを、本発明の目的が損なわれない範囲で、適宜含有することができる。
(耐候剤)
本発明に係る電離放射線硬化性樹脂組成物は、前述した電離放射線硬化性樹脂を含むと共に、耐候剤として、反応性官能基Aを有するHALS(以下、「反応性HALS」と称することがある。)を含む。
<反応性HALS((B)成分)>
この反応性HALSにおける反応性基Aは、前述した電離放射線硬化性樹脂と反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられ、これらから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。なかでも(メタ)アクリロイル基が好ましい。
このような反応性HALSとしては、例えば4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。
これらの反応性HALSは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
当該反応性HALSは、電離放射線の照射によって、それ自体が重合して、高分子量化したり、前述した電離放射線硬化性樹脂と共重合することにより、ブリードアウトが抑制される。
当該反応性HALSの含有量は、前述したポリカーボネート(メタ)アクリレート及び/又はアクリルシリコーン(メタ)アクリレート(A成分)と、多官能(メタ)アクリレート(C成分)との合計量100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、3〜10質量部がより好ましく、5〜10質量部がさらに好ましい。当該反応性HALSの含有量が上記範囲内であれば、該HALSがブリードアウトすることなく、十分な光安定性が得られるので、本発明の三次元成形用加飾シートは優れた耐候性を有するものとなる。
本発明に係る電離放射線硬化性樹脂として、紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を紫外線硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタールなどが挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
本発明に係る電離放射線硬化性樹脂組成物においては、電離放射線硬化性樹脂として電子線硬化性樹脂であることが好ましい。電子線硬化性樹脂の場合は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、かつ、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
また本発明に係る電離放射線硬化性樹脂組成物においては、当該電離放射線硬化性樹脂組成物を用いて製造されるシートの表面保護層の所望物性に応じて、また、本発明の目的が損なわれない範囲で各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤などが挙げられる。
ここで、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や反応性基を有しない光安定剤を用いることができる。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系などを用いることができる。トリアゾール系としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。
トリアジン系としては、例えば2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2'−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが好ましく挙げられ、ベンゾフェノン系としては、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
また、紫外線吸収剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性紫外線吸収剤を用いることもできる。
なお、ヒンダードアミン系光安定剤や紫外線吸収剤は、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有することにより、電離放射線の照射によって、それ自体が重合して高分子量化したり、あるいは共存する電離放射線硬化性樹脂と共重合することにより、ブリードアウトは抑制されるが、それ自体のHALSとしての性能や紫外線吸収剤として性能は低下する傾向がみられる。
一方、反応性基を有しない光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。
耐摩耗性向上剤としては、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素などの粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形などが挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の30〜200%程度とする。これらの中でも球状のα−アルミナは、硬度が高く、耐摩耗性の向上に対する効果が大きいこと、また、球状の粒子を比較的得やすい点で特に好ましいものである。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知の着色用顔料などが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物などが用いられる。
次に、本発明の三次元成形用加飾シートを構成する各要素について、以下詳述する。
(ベースフィルム)
本発明の三次元成形用加飾シート10において、基材として用いるベースフィルム11は、真空成形適性を考慮して選定され、代表的には熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムが使用される。該熱可塑性樹脂としては、一般的には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下、「ABS樹脂」という)、アクリル樹脂、ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂などが使用されるが、これらの中でポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂及びABS樹脂が好適であり、特に当該加飾シートを転写仕様で作製する場合にはポリオレフィン系樹脂が好適である。
また、当該ベースフィルムは、これら樹脂の単層フィルム、あるいは同種又は異種樹脂による複層フィルムとして使用することができる。
当該ベースフィルムの厚みは、用途に応じて選定されるが、通常、100〜500μm程度である。当該ベースフィルムの厚みが100μm以上であると、真空成形において形状が歪むのを抑制することができ、一方500μm以下であると、加飾シートが厚くなって操作性が低下するのを抑制することができる。当該ベースフィルムの厚みは、250〜500μmであることがより好ましく、300〜500μmであることがさらに好ましい。
また、当該ベースフィルムは、JIS K7127に準拠し、試験片としてタイプBを用い、引張速度50m/分の条件で測定した、常温における引張り弾性率が1000〜4000MPa(初期モジュラス)の範囲にあることが好ましい。当該ベースフィルムの常温における引張り弾性率が上記の範囲にあれば、当該ベースフィルムに高い剛性を付与できるため、真空成形時における形状の歪を抑制することができる。より好ましい引張り弾性率は、Roll To Rollで連続生産する際の張力の調整の観点から2000〜3000MPaの範囲である。
当該ベースフィルムはその上に設けられる層との密着性を向上させるために、所望により、片面又は両面に酸化法や凹凸化法などの物理的又は化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、ベースフィルムの種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
また当該ベースフィルムはプライマー層を形成するなどの処理を施してもよいし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていてもよい。
(絵柄層)
図1に示される絵柄層12は、後述の加飾樹脂成形品に装飾性を与えるものであり、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)などの岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様などがあり、これらを複合した寄木、パッチワークなどの模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷などによっても形成される。
絵柄層12に用いる絵柄インキとしては、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などの中から任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられるが、これらの中で特に塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂が好適である。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルーなどの無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルーなどの有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮などの鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛などの鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料などが用いられる。
本発明の加飾シート10は、所望により、ベースフィルム11と絵柄層12との間に隠蔽層(図示しない。)を設けてもよい。ベースフィルム11表面の色の変化、ばらつきにより、加飾シート10の柄の色に影響を及ぼさないようにする目的で設けられる。通常不透明色で形成することが多く、その厚さは1〜20μm程度の、いわゆるベタ印刷層が好適に用いられる。
また、ベースフィルム11と絵柄層12との間に、融点が70〜130℃程度のポリオレフィン系熱接着層を設けてもよい。
(プライマー層)
本発明の加飾シート10は、表面保護層14の延伸部に微細な割れや白化を生じにくくするためや、層間密着性を向上するために、絵柄層12と表面保護層14との間にプライマー層13が設けられる。
このプライマー層13を構成するプライマーとしては、ポリオールを主剤とし、多価イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とする2液硬化型ウレタン樹脂が挙げられる。
ポリオール成分としては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えばアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
また、多価イソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネート;を用いることができ、あるいは、上記各種イソシアネートの付加体又は多量体、例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等も用いることができる。
これらの中で、主剤として、ポリエステルポリオールを用い、該主剤100質量部に対して、硬化剤として1〜10質量部程度の多価イソシアネート化合物を反応させ、熱硬化させてなるポリエステル系プライマーが好適である。
(表面保護層)
本発明の加飾シート10における表面保護層14は、前述した本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物を、前記プライマー層13上に塗布し、架橋硬化することにより、形成することができる。
したがって、該表面保護層には、反応性HALS自体の重合による重合体や、あるいは反応性HALSと電離放射線硬化性樹脂との共重合体が含まれており、HALSのブリードアウトが抑制されると共に、表面保護層に高い耐候性を付与することができる。
なお、該電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗工方式により、プライマー層13の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はない。
本発明においては、前記電離放射線硬化性樹脂組成物を、プライマー層13の表面に、硬化後の厚さが1〜1000μm程度になるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。
本発明においては、このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線などの電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、ベースフィルム11として電子線により劣化する素材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、ベースフィルム11への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線によるベースフィルム11の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。
本発明においては、表面保護層14の硬化後の厚さが1〜1000μmであることが好ましい。表面保護層14の硬化後の厚さが1μm以上であれば、耐傷付き性、耐候性などの保護層としての十分な物性が得られる。一方、表面保護層14の硬化後の厚さが1000μm以下であれば、電離放射線を均一に照射し易く、均一な硬化が得られ易く、経済的にも有利となる。
また、表面保護層14の硬化後の厚さをより好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは1〜30μmとすることにより、三次元成形性が向上し、自動車内装用途などの複雑な3次元形状への高い追従性を得ることができる。従って、本発明の加飾シートにおいて、硬質な電離放射線硬化性樹脂を配合しても優れた三次元成形性を発現させることができ、三次元成形性を損なうことなく、塗膜を硬くすることができるため、加工や実用面で好ましい優れた耐傷付き性を持たせることができる。
本発明の加飾シートは、表面保護層14の厚さを従来のものより厚くしても、十分に高い三次元成形性が得られることから、特に表面保護層に高い膜厚を要求される部材、例えば車両外装部品などの加飾シートとしても有用である。
本発明の三次元成形用加飾シート10は射出樹脂との密着性を向上させるため、所望により、加飾シート10の裏面(表面保護層14とは反対側の面)に接着剤層(図示しない。)を設けることができる。接着剤層には、射出樹脂に応じて、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。また、熱硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
前記絵柄層12はグラビア印刷などの通常の印刷方法により形成される。前記隠蔽層はグラビア印刷などの通常の印刷方法やグラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコートなどの通常の塗工方法により形成される。
前記プライマー層13や接着層及び熱接着層は、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコートなどの通常の塗工方法や転写コーティング法により形成される。転写コーティング法は、一旦、薄いシート(フィルム基材)にプライマー層13や接着層、及び熱接着層の塗膜を形成し、しかる後に加飾シート10中の対象となる層表面に被覆する方法である。
絵柄層12の厚さはその絵柄により適宜選択される。隠蔽層の厚さは1〜20μm程度である。
プライマー層13の厚さは0.1〜10μm程度であることが好ましい。0.1μm以上であると、表面保護層の割れ、破断、白化などを防ぐ効果を十分に発揮させることができる。一方、プライマー層の厚さが10μm以下であれば、プライマー層を塗工した際、塗膜の乾燥、硬化が安定であるので三次元成形性が変動することが無く好ましい。以上の点からプライマー層の厚さは1〜10μmであることがより好ましい。接着層、及び熱接着層の厚さも同様に0.1〜10μm程度であることが好ましい。
本発明の三次元成形用加飾シート10においては、絵柄層12とプライマー層との間に、当該加飾シートの耐傷付き性や、耐候性、耐薬品性などを向上させる目的で、透明フィルム層を介在させることができる。
この透明フィルム層としては、前記効果の観点から、ポリエステル系樹脂からなるフィルム層であることが好ましく、具体的にはポリエチレンテレフタレートフィルム層を挙げることができる。
当該透明フィルム層の厚みは、10〜80μmの範囲であることが好ましい。この厚みが10μm以上であると、良好な印刷適性を付与することができ、80μm以下であると、真空成形後の収縮力が強くなりすぎることがなく、ベースフィルムの引張り弾性率を高くしても、形状の歪を抑制することができる。当該透明フィルム層の厚みは20〜75μmであることがより好ましく、25〜70μmであることがさらに好ましい。
この透明フィルム層には、前述した耐候剤や耐候性改善剤などを含有させてもよい。
[本発明の三次元成形用加飾シートの用途]
本発明の三次元成形用加飾シートは、優れた耐候性、耐傷付き性及び加工性を有し、その具体的用途としては、自動車の外装材、一般住居の玄関ドアや外装材、公共施設の床材や外壁などの内外装材、あるいは建造物や屋外に設置される構造物など、直射日光や風雨に晒されることが多い内外装材や建築物の表面保護に用いられる保護シートや、三次元成形用加飾シートが好適に挙げられる。特に、自動車バンパー等の自動車用外装材用として有用である。
[三次元成形用加飾シートの製造方法]
本発明の三次元成形用加飾シートの製造方法としては、ベースフィルム上に、各層を順に積層する方法であってもよいし、以下に示す転写法であってもよい。
<転写法>
転写法により、本発明の三次元成形用加飾シートを製造する場合には、例えば、下記の方法を採用することができる。
すなわち、(a)剥離フィルム上にプライマー層を形成する工程、(b)該プライマー層上に絵柄層を形成する工程、(c)該プライマー層及び絵柄層をベースフィルム上に転写する工程、(d)ベースフィルム上の剥離フィルムを剥がす工程、(e)該ベースフィルム上に形成されたプライマー層上に電離放射線硬化性樹脂組成物を積層する工程、及び(f)該電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して表面保護層を形成する工程を含む三次元成形用加飾シートの製造方法である。本発明では、ここで用いられる電離放射線硬化性樹脂組成物が、上述のように、(A)ポリカーボネート(メタ)アクリレート及び/又はアクリルシリコーン(メタ)アクリレート、及び(B)反応性官能基Aを有するヒンダードアミン系光安定剤を含むことを特徴とする。
(a)工程における剥離フィルムは、表面が平滑な剥離フィルムであることが好ましくまた、(b)工程である絵柄層形成工程では、絵柄層の他に所望により、隠蔽層を組み合わせることもできる。絵柄層と意匠層を組み合わせた層を以下「意匠層」と表現する。
なお、前記方法における、ベースフィルム、プライマー層、絵柄層、隠蔽層及び電離放射線硬化性樹脂組成物については、前述したとおりである。
また、必要に応じ、前記(b)工程において、絵柄層及び所望により設けられる隠蔽層(意匠層)上に熱接着層を形成してもよい。該熱接着層については、前述したとおりである。
また、前述した透明フィルム層を絵柄層とプライマー層との間に介在させてなる三次元成形用加飾シートを製造する場合には、まず、透明フィルム層を構成する透明フィルムに前記の意匠層を設ける。透明フィルム層及び意匠層については前述のとおりである。なお、該透明フィルムは易接着処理がなされていてもよいが、意匠層を設ける表面は平坦性を確保する点から易接着処理がなされていないことが好ましく、一方、逆の面は表面保護層との接着性の点から易接着処理がなされていることが好ましい。
次いで、該意匠層上に、必要に応じて熱接着層を設ける。
前記(a)工程を施したのち、そのプライマー層上に、前記熱接着層が設けられた透明フィルムを、該熱接着層とは反対側の面が接するように積層する。次いで、プライマー層、並びに意匠層及び必要に応じて設けられた熱接着層を有する透明フィルム層をベースフィルム上に転写する。次に前記(d)工程、(e)工程及び(f)工程を順次施すことにより、絵柄層とプライマー層との間に透明フィルム層を有する加飾シートが得られる。
なお、前記熱接着層は、ベースフィルム上に直接形成しておいてもよい。
なお、前述した三次元成形用加飾シートの製造方法において、剥離フィルムの表面が平滑であるとは、表面粗さ(Ra)が0.5μm以下であることをいい、0.2μm以下であることが好ましい。ここで、表面粗さ(Ra)とは、JIS B 0601:2001に規定された算術平均粗さRaをいう。
当該剥離フィルムは、プライマー層と接触しても後で剥離することができるフィルムであればよく、特に制限されるものではない。ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなるフィルムや紙類、又はそれらにシリコーン等の離型剤がコーティングされた(剥離処理された)フィルムや紙類等が挙げられる。当該剥離フィルムは、剥離処理されている方が剥がし易く好ましい。
本発明の三次元成形用加飾シートは、インサート成形法、射出成形同時加飾法、ブロー成形法、ガスインジェクション成形法などの各種射出成形法に用いることができ、インサート成形法及び射出成形同時加飾法に好適に用いられる。
そして、本発明の三次元成形用加飾シートを用いてなる本発明の加飾樹脂成形品は、耐候性及び耐傷付き性に優れ、自動車の外装材、一般住居の玄関ドアや外装材、公共施設の床材や外壁などの内外装、あるいは建造物や屋外に設置される構造物など、直射日光や風雨に晒されることが多い用途に特に好適に用いることができる。
次に、本発明の加飾樹脂成形品の製造方法について説明する。
[加飾樹脂成形品の製造方法]
本発明の加飾樹脂成形品の製造方法には2つの態様がある。
まず、第1の態様は、前述した本発明の三次元成形用加飾シートの表面保護層側を金型内に向けて熱盤によって該表面保護層側から該加飾シートを加熱する工程、加熱された該加飾シートを金型内形状に沿うように予備成形して金型内面に密着させて型締する工程、射出樹脂を金型内に射出する工程、該射出樹脂を冷却したのちに、金型から加飾樹脂成形品を取り出す工程を含むことを特徴とする。
本発明の加飾樹脂成形品の製造方法(第1の態様)は、以下の工程(1)〜(4)を含むものである。
(1)まず、本発明の三次元成形用加飾シートの表面保護層側を金型内に向けて、熱盤によって該表面保護層側から当該加飾シートを加熱する工程、
(2)加熱された該加飾シートを金型内形状に沿うように予備成形して金型内面に密着させて型締する工程、
(3)射出樹脂を金型内に射出する工程、及び
(4)該射出樹脂が冷却した後に金型から加飾樹脂成形品を取り出す工程、
前記(1)及び(2)において、当該加飾シートを加熱する温度は、通常160〜190℃程度である。
上記工程(3)において、射出樹脂を溶融させて、キャビティ内に射出して当該加飾シートと射出樹脂とを一体化させる。射出樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、加熱溶融によって流動状態にして、また、射出樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、未硬化の液状組成物を室温又は適宜加熱して流動状態で射出して、冷却して固化させる。これによって、当該加飾シートが、形成された樹脂成形体と一体化して貼り付き、加飾樹脂成形品となる。射出樹脂の加熱温度は、射出樹脂によるが、一般に180〜320℃程度である。
次に、第2の態様は、前述した本発明の三次元成形用加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、該成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程を含むことを特徴とする。
上述の第1の態様との相違点は、上述の方法の予備成形に相当する真空成形工程を有し、真空成形型から一旦取り外して、余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程を有する点であり、いわゆるインサート成形と称される方法である。当該加飾シートを加熱する温度及び射出樹脂の加熱温度は、上述と同様である。
図2は、本発明の加飾シートを用いて得た加飾樹脂成形品の一態様の断面を示す模式図であって、加飾樹脂成形品20は、プラスチック基板15上に、ベースフィルム11、絵柄層12、プライマー層13及び表面保護層14を順に有する構造のものである。なお符号10は加飾シートである。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られた三次元成形用加飾シートの諸特性を下記要領に従って評価した。
<三次元成形用加飾シートの諸特性の評価>
(1)成形性
加飾シートを赤外線ヒーターで160℃に加熱し、軟化させる。次いで、真空成形用型を用いて真空成形を行い(最大延伸倍率100%)、型の内部形状に成形する。シートを冷却後、型より加飾シートを離型する。評価基準は以下のとおりである。
○:三次元形状部又は最大延伸部の一部に微細な塗膜割れ又は白化が認められたが実用上問題なし。
△:三次元形状部又は最大延伸部の一部に軽微な塗膜割れ又は白化が発生した。
×:型の形状に追従できずに表面保護層に塗膜割れや白化が見られた。
(2)耐候性
耐候性試験装置「S−UV(雨あり)」にて、耐候性評価を実施する。なお、時間は500時間まで実施した際の色変化を評価する。
◎:変化なし
○:変化軽微
△:若干変化あり
×:変化あり
(3)耐傷付き性
#0000スチールウールを用いて荷重1.5kgf(14.7N)で5回往復後の試験片の外観を評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎:傷付きがなかった。
○:表面に微細な傷が認められたが、塗膜の割れや白化はなかった。
△:表面に軽微な傷があった。
×:表面に著しい傷があった。
(4)密着性
転写後、クロスカットを入れたのち、セロハン粘着テープを貼付し、90度に急激に剥離試験を実施した。評価基準は以下のとおりである。
○:剥離なし
△:若干剥離
×:剥離
<ベースフィルムの引張り弾性率>
各実施例及び比較例で得られた加飾シートをJIS K6251に記載された「引張1号形ダンベル」状にカットしサンプルとした。(株)エー・アンド・デイ製テンシロン万能試験機を用い、チャック間距離80mm、試験速度50mm/minにて測定した。
<電子線硬化性樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量>
東ソー(株)製高速GPC装置を用いた。用いたカラムは東ソー(株)製、商品名「TSKgel αM」であり、溶媒はN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を用い、カラム温度40℃、流速0.5cm3/minで測定を行なった。尚、本発明における重量平均分子量及び数平均分子量は標準ポリスチレン換算の値である。
<電子線硬化性樹脂の硬化後の架橋点間平均分子量>
上記で得た数平均分子量を官能基数で割った値を架橋点間平均分子量とした。
参考例1
ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と記載する。)フィルム(厚さ25μm)の易接着処理されていない面に、グラビア印刷によって、2液硬化型ウレタン樹脂(主剤はポリエステル系、硬化剤はヘキサメチレンジイソシアネート、主剤100質量部に対して、硬化剤5質量部)を塗工し、厚さ2μmのプライマー層を形成した。次いで、該プライマー層上に、厚さ3μmの絵柄層を形成した。該絵柄層上に、融点110℃のポリエチレンを塗工し、厚さ2μmの熱接着層を形成した。
該熱接着層上に、ベースフィルムである透明ポリプロピレンフィルム(厚さ380μm、引張り弾性率2643MPa)を積層し、150℃で10分間加熱して、貼付した。
次に、前記PETフィルムを剥離した後、以下の組成を有する電離放射線硬化性樹脂組成物5g/mを、プライマー層上にグラビア印刷によって塗工し、塗膜を形成した。
次いで、175keV及び5Mrad(50kGy)の条件で電子線を照射して上記塗膜を架橋硬化させることにより、表面保護層を形成させて三次元成形用加飾シートを得た。
該三次元成形用加飾シートについて、上記方法にて評価した。結果を第1表に示す。
(電離放射線硬化性樹脂組成物)
・2官能ポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量:10000)と6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:6000)との混合物(質量比80:20)(本発明の(A)成分、表中では「PC系樹脂組成物」と記載):100質量部
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(「チヌビン479(商品名)」,チバ・ジャパン株式会社製、表中では「UVA」と記載):3.4質量部
・反応性官能基を有する光安定剤(商品名「サノールLS−3410」,1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート,チバ・ジャパン株式会社製、表中では「反応性HALS」と記載):1.7質量部
実施例
参考例1における電離放射線硬化性樹脂組成物において、(A)成分として、アクリルシリコーンアクリレート(重量平均分子量:20000、架橋点間平均分子量200)と6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:5000)との混合物(質量比70:30)(本発明の(A)成分、表中では「アクリルシリコーン系樹脂組成物」と記載)を用いたこと以外は、参考例1と同様にして三次元成形用加飾シートを得た。参考例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
比較例1
参考例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物中の2官能ポリカーボネートアクリレートの代わりにポリエーテル系ウレタンアクリレートオリゴマー(2官能,分子量:約3000)(表中では「ポリエーテル系樹脂組成物」と記載)を用い、反応性官能基を有しないヒンダードアミン系光安定剤(「チヌビン123(商品名)」,チバ・ジャパン株式会社製、表中では「非反応性HALS」と記載)を、樹脂組成物100質量部に対して、2質量部加えたこと以外は、参考例1と同様にして、三次元成形用加飾シートを得た。参考例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
比較例2
参考例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物中の反応性官能基を有する光安定剤のかわりに、非反応性HALSを2質量部加えたこと以外は、参考例1と同様にして三次元成形用加飾シートを得た。参考例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
Figure 0005708156
(注)表中の電離放射線硬化性樹脂組成物に関する数値は全て質量部である。
本発明の三次元成形用加飾シートは、耐候性、耐傷付き性及び加工性などに優れ、インサート成形法や射出成形同時加飾法などにより、耐候性及び耐傷付き性に優れる加飾樹脂成形品を与えることができる。
[符号の説明]
10 加飾シート
11 ベースフィルム
12 絵柄層
13 プライマー層
14 表面保護層
15 プラスチック基板
20 加飾樹脂成形品

Claims (11)

  1. ベースフィルム上に、少なくとも絵柄層、プライマー層及び表面保護層を順に有する加飾シートであって、該表面保護層が、(A)アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、及び(B)反応性官能基Aを有するヒンダードアミン系光安定剤、を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなる層であり、該アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、1分子中に、アクリル樹脂の構造の一部がシロキサン結合に置換しており、かつ官能基としてアクリル樹脂の側鎖及び/又は主鎖末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有していることを特徴とする三次元成形用加飾シート。
  2. 前記反応性官能基Aが、エチレン性二重結合を有する官能基である請求項1に記載の三次元成形用加飾シート。
  3. 前記エチレン性二重結合を有する官能基が、(メタ)アクリロイル基である請求項2に記載の三次元成形用加飾シート。
  4. さらに、前記電離放射線硬化性樹脂組成物中に、(C)多官能(メタ)アクリレートを含む請求項1〜3のいずれかに記載の三次元成形用加飾シート。
  5. 前記多官能(メタ)アクリレートが3官能以上である請求項4に記載の三次元成形用加飾シート。
  6. 前記反応性官能基Aを有するヒンダードアミン系光安定剤の含有量が、(A)成分及び(C)成分の合計量100質量部に対して、1〜10質量部である請求項4又は5に記載の三次元成形用加飾シート。
  7. 前記アクリルシリコーン(メタ)アクリレートの重量平均分子量が、1000〜150000である請求項1〜6のいずれかに記載の三次元成形用加飾シート。
  8. (a)剥離フィルム上にプライマー層を形成する工程、(b)該プライマー層上に絵柄層を形成する工程、(c)該プライマー層及び絵柄層をベースフィルム上に転写する工程、(d)ベースフィルム上の剥離フィルムを剥がす工程、(e)該ベースフィルム上に形成されたプライマー層上に電離放射線硬化性樹脂組成物を積層する工程、及び(f)該電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して表面保護層を形成する工程を含む三次元成形用加飾シートの製造方法であって、該電離放射線硬化性樹脂組成物が、(A)アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、及び(B)反応性官能基Aを有するヒンダードアミン系光安定剤を含み、かつ該アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、1分子中に、アクリル樹脂の構造の一部がシロキサン結合に置換しており、かつ官能基としてアクリル樹脂の側鎖及び/又は主鎖末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有していることを特徴とする三次元成形用加飾シートの製造方法。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載の三次元成形用加飾シートを用いてなる加飾樹脂成形品。
  10. 請求項1〜7のいずれかに記載の三次元成形用加飾シートの表面保護層側を金型内に向けて熱盤によって該保護層側から該加飾シートを加熱する工程、加熱された該加飾シートを金型内形状に沿うように予備成形して金型内面に密着させて型締する工程、射出樹脂を金型内に射出する工程、該射出樹脂が冷却した後に金型から加飾樹脂成形品を取り出す工程を含むことを特徴とする加飾樹脂成形品の製造方法。
  11. 請求項1〜7のいずれかに記載の三次元成形用加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、該成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程を含むことを特徴とする加飾樹脂成形品の製造方法。
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