JP5962814B2 - 加飾シート及びこれを用いた加飾樹脂成形品 - Google Patents

加飾シート及びこれを用いた加飾樹脂成形品 Download PDF

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Description

本発明は特定の電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる表面保護層を有する加飾シートに関する。
成形品の表面に加飾シートを積層することにより加飾した加飾樹脂成形品が、車両内装部品等の各種用途で使用されている。このような加飾樹脂成形品の成形方法としては、加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形しておき、該成形シートを射出成形型に挿入し、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化するインサート成形法(例えば、特許文献1)と、射出成形の際に金型内に挿入された加飾シートを、キャビティ内に射出注入された溶融樹脂と一体化させ、樹脂成形体表面に加飾を施す射出成形同時加飾法(例えば、特許文献2,3)とがある。
上記の加飾樹脂成形品においては、表面の耐傷付き性を向上させる目的で表面保護層が設けられている。しかしながら、上述の加飾樹脂成形品の成形方法において、インサート成形法では加飾シートを真空成形型により予め三次元(立体)形状に成形する過程、射出成形同時加飾法では加飾シートが予備成形時に、又は溶融樹脂の射出時に、キャビティの内周面に沿うように延伸されて密着する過程で、加飾シートが真空圧空作用により、又は溶融樹脂の圧力、剪断応力による引っ張り等によって、金型形状に沿うために最低必要な量以上に伸ばされるため、成形品の曲面部の表面保護層にクラックが入るという問題があった。
上記問題点に対して、表面保護層として紫外線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂を用い、加飾シートの表面保護層を形成する樹脂の架橋密度を高めることにより、加飾樹脂成形品の表面の耐摩耗性や耐傷付き性を向上させる試みがなされたが、依然として成形の際に成形品曲面部にクラックが生じるという問題があった。
また、表面保護層として紫外線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂を用い、加飾シートの段階では半硬化状態とし、加飾成形された後に完全硬化させる方法が試みられたが(特許文献4)、未硬化樹脂成分を含む表面保護層は傷つきやすく、取り扱いが困難であり、未硬化樹脂成分が金型に付着することによる金型汚染の問題があった。この問題点を解決するために半硬化状態の表面保護層上に保護フィルムを設ける方法があるが、製造が煩雑になると共に、コストアップの要因ともなる。
特開2004−322501号公報 特公昭50−19132号公報 特公昭61−17255号公報 特開平6−134859号公報
本出願人は、耐傷付き性と三次元成形性とを両立し得る表面保護層を有する加飾シートとして、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを特定の質量比で含有する電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる表面保護層を有する加飾シートを先に特許出願した(特願2009−229015)。
この加飾シートは、耐傷付き性と三次元成形性とを両立し得る表面保護層を有する加飾シートであるが、耐傷付き性と三次元成形性との更なる向上が望まれていた。
本発明は、上記従来の課題を鑑みてなされたものであって、耐傷付き性と三次元成形性とをより高い水準で兼ね備える表面保護層を有する加飾シート、及びこれを用いた加飾樹脂成形品を提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、加飾シートの表面保護層を特定の電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物とすることにより、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)基材上に少なくとも表面保護層を有する加飾シートであって、表面保護層が、少なくとも、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)と、多官能(メタ)アクリレート(B)とを含有し、且つ該ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)と、該多官能(メタ)アクリレート(B)との質量比((A)/(B))が、98/2〜70/30である電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなることを特徴とする加飾シート、及び
(2)前記加飾シートを用いてなる加飾樹脂成形品、
を提供するものである。
本発明の加飾シートは、その表面保護層が優れた耐傷付き性と良好な三次元成形性とを高い水準で兼ね備えるため、インサート成形法及び射出成形同時加飾法のいずれにおいても、表面保護層にクラック等が入ることがなく、且つ三次元成形しやすい加飾シートを得ることができる。
本発明の加飾シートの一態様の断面を示す模式図である。
本発明の加飾シートは、基材上に少なくとも表面保護層を有する加飾シートであって、表面保護層が、少なくとも、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)と、多官能(メタ)アクリレート(B)とを含有し、且つ該ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)と、該多官能(メタ)アクリレート(B)との質量比((A)/(B))が、98/2〜70/30である電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなることを特徴とするものである。
ここで、電離放射線硬化性樹脂組成物とは、電離放射線硬化性樹脂を含有する組成物をいう。電離放射線硬化性樹脂とは、電磁波又は荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線又は電子線等を照射することにより、架橋、硬化する樹脂を指す。
本発明においては、少なくとも、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)と、多官能(メタ)アクリレート(B)とを質量比((A)/(B))が98/2〜70/30となるように含む電離放射線硬化性樹脂を表面保護層として用いる。この質量比が、98/2より大きくなると(すなわち、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートの量が98質量%を超えると)、塗膜の強靭性が低下し軟質化すると共に、耐傷付き性が低下し、更に耐溶剤性、耐薬品性も低下する。一方、前記質量比が70/30より小さくなると(すなわち、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートの量が70質量%未満となると)、塗膜が硬質化し、三次元成形性が低下してしまう。本発明において、前記質量比は、95/5〜80/20であることがより好ましく、95/5〜85/15であることが更に好ましい。
本発明において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。
<ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)>
本発明に用いられるポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)は、特に限定されないが、耐傷付き性、三次元成形性を向上させる観点から、重量平均分子量が500以上であるものが好ましく、1,000以上であるものがより好ましく、2,000を超えるものが更に好ましい。この重量平均分子量の上限については、特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から、100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましい。耐傷付き性と三次元成形性とを両立させる観点から、更に好ましくは、2,000を超え50,000以下であり、特に好ましくは、5,000〜20,000である。
本明細書における重量均分子量は、GPC分析によって測定され、且つ標準ポリスチレンで換算されたものである。
更に、このポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートとしては、架橋、硬化する観点から、分子内にエチレン性不飽和結合を2官能以上有するものが好ましい。
本発明において用いるポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、ポリカーボネート骨格を有するポリオールと、有機ポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることにより容易に製造することができる。
≪ポリカーボネート骨格を有するポリオール≫
前記ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートの製造に用いるポリカーボネート骨格を有するポリオールとしては、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端又は側鎖に2個以上、好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜10個の水酸基を有する重合体を挙げることができ、これらの中では、工業的に容易に入手でき比較的安価である、ポリカーボネート骨格を有するジオールが好ましい。
ポリカーボネート骨格を有するポリオールの代表的な製造方法としては、ジオール化合物(X)及び/又は3価以上の多価アルコール(Y)、及びカルボニル成分となる化合物(Z)とを重合させる方法が挙げられる。
なお、前記ポリカーボネート骨格を有するジオールを製造するにあたっては、前記(X),(Y)及び(Z)の各成分を重合させることにより製造することも可能であるが、効率的に製造を行う観点から、ジオール化合物(X)及びカルボニル成分となる化合物(Z)を重合させることにより製造することが好ましい。
原料として用いられるジオール化合物(X)は、一般式:HO−R1−OHで表される。ここで、R1は、炭素数2〜20の2価炭化水素基であって、基中にエーテル結合を含んでいてもよい。例えば、直鎖、又は分岐状のアルキレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基等が挙げられる。
ジオール化合物(X)としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、あるいは、ビスフェノールAにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを反応させた付加物等の低分子ジオール類等が挙げられる。これらの中では、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましい。これらのジオール化合物(X)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、3価以上の多価アルコール(Y)としては、トリメチロールプルパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ソルビトール等のアルコール類を挙げることができる。更に、これらの多価アルコールの水酸基に対して、1〜5当量のエチレンオキシド、プロピレンオキシド、又はその他のアルキレンオキシドを付加させた水酸基を有するアルコール類であってもよい。これらの多価アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カルボニル成分となる化合物(Z)としては、炭酸ジエステル、ホスゲン、又はこれらの等価体等が挙げられる。具体例としては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジイソプロピル、炭酸エチレン(エチレンカーボネート)、炭酸プロピレン(プロピレンカーボネート)等の炭酸ジエステル類、ホスゲン、又はクロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸フェニル等のハロゲン化ギ酸エステル類等が挙げられる。前記炭酸ジエステル類としては、炭酸ジフェニル(ジフェニルカーボネート)等の炭酸ジアリールエステル(ジアリールカーボネート)類であってもよい。これらのカルボニル成分となる化合物(Z)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリカーボネート骨格を有するポリオールは、前記のジオール化合物(X)及び/又は3価以上の多価アルコール(Y)、及びカルボニル成分となる化合物(Z)とを、一般的な条件下で重縮合反応させることにより合成される。
前記(X)、(Y)及び(Z)の3成分を用いて重縮合させる際のジオール化合物(X)と多価アルコール(Y)に対する、カルボニル成分となる化合物(Z)の仕込みモル比は、ジオール化合物(X)及び多価アルコール(Y)の持つ水酸基に対して、0.2〜2当量であることが好ましい。
また、ジオール化合物(X)及びカルボニル成分となる化合物(Z)の2成分を重合させて、ポリカーボネート骨格を有するジオールを製造する場合においては、ジオール化合物(X)の持つ水酸基に対して、カルボニル成分となる化合物(Z)の仕込みモル比が、0.2〜2当量となるようにすることが好ましい。
前記の仕込みモル比で重縮合反応した後のポリカーボネート骨格を有するポリオール中に存在する水酸基の当量数(eq./mol)は、1分子中に平均して2以上、好ましくは2〜50、より好ましくは2〜10である。この範囲であると、十分な量の(メタ)アクリレート基が形成され、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートに適度な可撓性が付与される。なお、前記ポリカーボネート骨格を有するポリオールの末端官能基は、通常は水酸基(OH基)であるが、その一部がカーボネート基であってもよい。
≪有機ポリイソシアネート化合物≫
前記有機ポリイソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の無黄変型のものが好ましい。
≪ヒドロキシ(メタ)アクリレート≫
ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びカプロラクトン変性−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
なお、本発明においては、重量平均分子量や構成単位の構造が異なる複数のポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートを混合して用いてもよい。
<多官能(メタ)アクリレート>
本発明に用いられる多官能(メタ)アクリレートは、2官能以上の(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。ただし、硬化性の観点から3官能以上の(メタ)アクリレートが好ましい。ここで、2官能とは、分子内にエチレン性不飽和結合{(メタ)アクリロイル基}を2個有することをいう。
また、多官能(メタ)アクリレートは、オリゴマー及びモノマーのいずれでもよいが、三次元成形性向上の観点から多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
上記の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えばウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。ここで、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、又は多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
更に、他の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー及びシリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。これらの中では、耐傷付き性、三次元成型性、すべり性向上の観点から、シリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
また、上記の多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
以上述べた多官能(メタ)アクリレートオリゴマー及び多官能(メタ)アクリレートモノマーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、前記多官能(メタ)アクリレートと共に、その粘度を低下させる等の目的で、単官能(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
電離放射線硬化性樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂組成物を用いる場合には、光重合用開始剤を紫外線硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤等を用いることができる。
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂組成物として電子線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂組成物は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、且つ光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
また本発明における表面保護層を構成する電離放射線硬化性樹脂組成物には、得られる硬化樹脂層の所望物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤等が挙げられる。
ここで、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛等を好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステル等が挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2'−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。また、本発明のポリマーの表面保護層としての性能(耐傷付き性と三次元成形性)を損なわない程度に共重合して使用することもできる。
耐摩耗性向上剤としては、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の30〜200%程度とする。これらの中でも球状のα−アルミナは、硬度が高く、耐摩耗性の向上に対する効果が大きいこと、また、球状の粒子を比較的得やすい点で特に好ましいものである。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコール等が、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物等が用いられる。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等が用いられる。
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラック等の公知の着色用顔料等が用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
また、本発明においては、加飾シートの滑り性を向上させる観点から、末端及び/又は側鎖に、例えば(メタ)アクリレートのようなラジカル重合性基を有する反応性のシリコーンや、ラジカル重合性基を含まない非反応性のシリコーンオイル等を添加してもよい。 このようなシリコーンで構成される添加剤は、電離放射線硬化性樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部添加することが好ましい。
次に、本発明の加飾シートの構成について図1を用いて詳細に説明する。
図1はインサート成形に用いる場合の本発明の加飾シート10の一態様の断面を示す模式図である。図1に示す例では、基材11上に絵柄層12、プライマー層13及び表面保護層14が順次積層されている。ここで、表面保護層14は上述の電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して形成されるものである。
基材11としては、真空成形適性を考慮して選定され、代表的には熱可塑性樹脂からなる樹脂シートが使用される。該熱可塑性樹脂としては、一般的には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」という)、アクリル樹脂、ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂等が使用される。また、基材11は、これら樹脂の単層シート、又は同種又は異種樹脂による複層シートとして使用することができる。
基材の厚さは、用途に応じて選定されるが、通常、0.05〜1.0mm程度であり、コスト等を考慮すると0.1〜0.7mm程度が一般的である。
これらの基材はその上に設けられる層との密着性を向上させるために、所望により、片面又は両面に酸化法や凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン−紫外線処理法等が挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性等の面から好ましく用いられる。
また該基材はプライマー層を形成する等の処理を施してもよいし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様が予め形成されていてもよい。
図1に示される絵柄層12は加飾樹脂成形品に装飾性を与えるものであり、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
絵柄層12に用いる絵柄インキとしては、バインダーに顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂等の中から任意のものが、1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
本発明の加飾シート10は、所望により、基材11と絵柄層12との間に隠蔽層(図示しない。)を設けてもよい。基材11表面の色の変化、ばらつきにより、加飾シート10の柄の色に影響を及ぼさないようにする目的で設けられる。通常不透明色で形成することが多く、その厚さは1〜20μm程度の、いわゆるベタ印刷層が好適に用いられる。
本発明の加飾シート10は、表面保護層14の延伸部に微細な割れや白化を生じにくくするため、所望により、絵柄層12と表面保護層14との間にプライマー層13を設けることができる。プライマー層13を構成するプライマー組成物は、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が用いられる。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの樹脂の中では、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、及び(メタ)アクリル/ウレタン共重合体樹脂が好ましい。また、絵柄層12、表面保護層14との密着性の観点から、プライマー層13の形成においては架橋剤を用いることが好ましい。すなわち、本発明におけるプライマー層13としては、架橋剤又は硬化剤としてのイソシアネートと、ポリオールとを混合する2液硬化タイプの材料により構成されることが好ましい。
(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられ、具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなる(メタ)アクリル樹脂が好適に用いられる。
ウレタン樹脂としては、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタンを使用できる。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えばポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が使用される。前記イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、又はヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが用いられる。また、ウレタン樹脂とブチラール樹脂を混ぜて構成することも可能である。
本発明においては、絵柄層12との密着性や、架橋後の表面保護層14との密着性を向上させる観点、及び物性、成形性を向上させる観点から、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオール等のポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネート及び4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の架橋剤とを適宜組み合わせて用いることが好ましい。これらの中では、アクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを組み合わせて用いることがより好ましい。
(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂としては、例えばアクリル/ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂が好ましい。硬化剤としては、上記の各種イソシアネートが用いられる。アクリル/ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂は所望により、アクリル/ウレタン比(質量比)を好ましくは(9/1)〜(1/9)、より好ましくは(8/2)〜(2/8)の範囲で調整し、種々の加飾シートに用いることができるので、プライマー組成物に用いられる樹脂として特に好ましい。
また、プライマー層14には、必要に応じて、公知の耐候性改善剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、ブロッキング防止剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤を添加してもよい。
本発明の加飾シート10は射出樹脂との密着性を向上させるため、所望により、加飾シート10の裏面(表面保護層14とは反対側の面)接着剤層(図示しない。)を設けることができる。接着剤層には、射出樹脂に応じて、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。また、熱硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
表面保護層14の形成は上述の電離放射線硬化性樹脂組成物を含有する塗布液を調製し、これを塗布し、架橋硬化することで得ることができる。なお、塗布液の粘度は、後述の塗布方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はない。
本発明においては、三次元成形性等の観点から、調製された塗布液を絵柄層12又はプライマー層13の表面に、硬化後の厚さが1〜1000μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗布し、未硬化樹脂層を形成させる。
本発明においては、このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚さに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材11として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚さが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材11への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
更に、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
このようにして、形成された硬化樹脂層には、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐傷付き性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能等を付与することもできる。
本発明においては、表面保護層14の硬化後の厚さが1〜1000μmであることが好ましい。表面保護層14の硬化後の厚さが1μm以上であれば、耐傷付き性、耐候性等の保護層としての十分な物性が得られる。一方、表面保護層14の硬化後の厚さが1000μm以下であれば、電離放射線を均一に照射しやすく、均一な硬化が得られやすく、経済的にも有利となる。
また、表面保護層14の硬化後の厚さをより好ましくは1〜50μm、更に好ましくは1〜30μmとすることにより、三次元成形性が向上し、自動車内装用途等の複雑な3次元形状への高い追従性を得ることができる。従って、本発明の加飾シートにおいて、硬質な電離放射線硬化性樹脂を配合しても優れた三次元成形性を発現させることができ、三次元成形性を損なうことなく、塗膜を硬くすることができるため、加工や実用面で好ましい優れた耐傷付き性を持たせることができる。
本発明の加飾シートは、表面保護層14の厚さを従来のものより厚くしても、十分に高い三次元成形性が得られることから、特に表面保護層に高い膜厚を要求される部材、例えば車両外装部品等の加飾シートとしても有用である。
絵柄層12はグラビア印刷等の通常の印刷方法により形成される。隠蔽層はグラビア印刷等の通常の印刷方法やグラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート等の通常の塗布方法により形成される。
プライマー層13や接着層は、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等の通常の塗布方法や転写コーティング法により形成される。転写コーティング法は、一旦、薄いシート(フィルム基材)にプライマー層13や接着層の塗膜を形成し、しかる後に加飾シート10中の対象となる層表面に被覆する方法である。
絵柄層12の厚さはその絵柄により適宜選択される。隠蔽層の厚さは、三次元成形性の観点から、1〜20μm程度が好ましい。
プライマー層13の厚さは0.1〜10μm程度であることが好ましい。0.1μm以上であると、表面保護層の割れ、破断、白化等を防ぐ効果を十分に発揮させることができる。一方、プライマー層の厚さが10μm以下であれば、プライマー層を塗布した際、塗膜の乾燥、硬化が安定であるので三次元成形性が変動することが無く好ましい。以上の点からプライマー層の厚さは1〜10μmであることがより好ましい。接着層の厚さも同様に0.1〜10μm程度であることが好ましい。
本発明の加飾シートは、インサート成形法、射出成形同時加飾法、ブロー成形法、ガスインジェクション成形法等の各種射出成形法に用いることができ、インサート成形法及び射出成形同時加飾法に好適に用いられる。
インサート成形法では、真空成形工程において、本発明の加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。
前記成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させ、加飾樹脂成形品を製造する。
射出樹脂は用途に応じた樹脂が使用され、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂が代表的である。また、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等も用途に応じ用いることができる。
次に、射出成形同時加飾法においては、本発明の加飾シートを射出成形の吸引孔が設けられた真空成形型との兼用雌型に配置し、この雌型で予備成形(インライン予備成形)を行った後、射出成形型を型締めして、流動状態の樹脂を型内に射出充填し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させ、加飾樹脂成形品を製造する。
なお、射出成形同時加飾法では、射出樹脂による熱圧を加飾シートが受けるため、平板に近く、加飾シートの絞りが小さい場合には、加飾シートは予熱してもしなくてもよい。
なお、ここで用いる射出樹脂としてはインサート成形法で説明したものと同様のものを用いることができる。
以上のようにして製造された加飾樹脂成形品は、その表面保護層に成形過程でクラックが入ることがなく三次元成形性が良好であり、その表面は高い耐傷付き性を有する。また、耐溶剤性及び耐薬品性が高い。更に前記製造方法では、加飾シートの製造段階で表面保護層が完全硬化されるので、加飾樹脂成形品を製造した後に表面保護層を架橋硬化する工程が不要である。なお、本発明の加飾樹脂成形品は、前記本発明の加飾シートを用いるものであればどのようなものであってもよく、前記の製造方法に限定されずに製造することが可能である。
次に、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によってなんら限定されるものではない。
<評価方法>
(1)三次元成形性(真空成形)
各実施例及び比較例で得た加飾シートについて以下に示す方法で真空成形を行い、成形後の外観にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎;表面保護層に塗膜割れや白化が全く見られず、良好に型の形状に追従した。
○;三次元形状部又は最大延伸部の一部に微細な塗膜割れ又は白化が認められたが実用
上問題なし。
△;三次元形状部又は最大延伸部の一部に軽微な塗膜割れ又は白化が発生した。
×;型の形状に追従できずに表面保護層に塗膜割れや白化が見られた。
(真空成形)
加飾シートを赤外線ヒーターで160℃に加熱し、軟化させる。次いで、真空成形用型を用いて真空成形を行い(最大延伸倍率150%)、型の内部形状に成形する。シートを冷却後、型より加飾シートを離型する。
(2)耐傷付き性
#0000スチールウールを用いて荷重1.5kgfで5回往復後の試験片の外観を評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎;傷付きがなかった。
○;表面に微細な傷が認められたが、塗膜の削れや白化はなかった。
△;表面に軽微な傷があった。
×;表面に著しい傷があった。
(3)耐薬品性
加飾シートの表面にエタノールを滴下し、滴下部分を時計皿で被覆した。次いで室温(25℃)で1時間静置した後、時計皿を外して当該滴下部分を評価した。評価基準は以下のとおりである。
○;塗膜に著しい変化はない。
×;塗膜の膨潤又は剥離があった。
(4)分子量の測定
東ソー(株)製高速GPC装置を用いた。用いたカラムは東ソー(株)製、商品名「TSKgel αM」であり、溶媒はN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を用い、カラム温度40℃、流速0.5cc/minで測定を行なった。尚、本発明における重量平均分子量はポリスチレン換算を行った。
<実施例1〜7及び比較例1〜7>
基材としてABS樹脂フィルム(曲げ弾性率;2000MPa、厚さ;400μm)を用い、該フィルムの表面に、アクリル系樹脂組成物を用いグラビア印刷により木目柄の絵柄層を形成した。次いで、絵柄層の表面にアクリルポリオール及びヘキサメチレンジイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートは、NCO当量がアクリルポリオールのOH当量と同量になるように配合した。)を含む組成物をプライマー層としてグラビアコートにより塗布した。プライマー層の厚さは3μmであった。
次に、プライマー層の表面に、表1に示す組成の電子線硬化性樹脂組成物を樹脂組成物の硬化後の厚さ(μm)が表1に示す値となるようにグラビアコートにより塗布した。この未硬化樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて、14種類の加飾シートを得た。
該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を表1に示す。
[電子線硬化性樹脂組成物I]
2官能のポリカーボネート骨格を有するウレタンアクリレート、
重量平均分子量:8,000
<組成>
≪ポリカーボネート骨格を有するポリオール≫
以下の成分を重合してなるポリオール
ジオール化合物(X) :1,4−ブタンジオール
カルボニル成分となる化合物(Z):炭酸ジエチル(ジエチルカーボネート)
≪有機ポリイソシアネート化合物≫
ヘキサメチレンジイソシアネート
≪ヒドロキシ(メタ)アクリレート≫
2−ヒドロキシエチルメタクリレート
[電子線硬化性樹脂組成物II]
6官能のポリカーボネート骨格を有するウレタンアクリレート
重量平均分子量:7,000
<組成>
≪ポリカーボネート骨格を有するポリオール≫
以下の成分を重合してなるポリオール
ジオール化合物(X) :1,6−ヘキサンジオール
カルボニル成分となる化合物(Z):炭酸ジメチル(ジメチルカーボネート)
≪有機ポリイソシアネート化合物≫
ヘキサメチレンジイソシアネート
≪ヒドロキシ(メタ)アクリレート≫
2−ヒドロキシエチルメタクリレート
[電子線硬化性樹脂組成物III]
6官能のウレタンアクリレートオリゴマー
重量平均分子量:6,000
[電子線硬化性樹脂組成物IV]
6官能シリコン変性ウレタンアクリレート
重量平均分子量:6,000
[電子線硬化性樹脂組成物V]
2官能ウレタンアクリレート
重量平均分子量:10,000
[反応性シリコーン]
末端にメタクリレートを有するシリコーン
[シリコーンオイル(非反応性)]
末端がメチル基のシリコーン
本発明の加飾シートは、通常のインサート成形法や射出成形同時加飾法において、160℃程度の加熱温度から金型に接触時の温度まで急激な温度低下と急激な伸張速度、高伸張度の条件であってもクラックや割れが発生することがなく、三次元成形性が良好であった。更に、製造された加飾樹脂成形品の表面は高い耐傷付き性を有することが確認された。
本発明の加飾シートは各種加飾樹脂成形品に用いられ、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材、幅木、回縁等の造作部材、窓枠、扉枠等の建具、壁、床、天井等の建築物の内装材、テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体、容器等の用途の加飾樹脂成形品に好適に用いられる。
10 加飾シート
11 基材
12 絵柄層
13 プライマー層
14 表面保護層

Claims (4)

  1. 基材上に少なくとも表面保護層を有する加飾シートであって、表面保護層が、少なくとも、2官能以上6官能以下のポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)と、多官能(メタ)アクリレート(B)とを含有し、且つ該2官能以上6官能以下のポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)と、該多官能(メタ)アクリレート(B)との質量比((A)/(B))が、98/2〜70/30である電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、前記多官能(メタ)アクリレート(B)がシリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレートであることを特徴とする加飾シート。
  2. 前記多官能(メタ)アクリレート(B)が、3官能以上であることを特徴とする請求項1に記載の加飾シート。
  3. 前記2官能以上6官能以下のポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)の重量平均分子量が、2,000を超えることを特徴とする請求項1又は2に記載の加飾シート。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の加飾シートを用いてなる加飾樹脂成形品。
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