JP5482855B2 - 高圧ポンプ - Google Patents
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Description
一般に、高圧ポンプは、エンジンヘッドに取り付けられ、カムシャフトの回転により駆動されるプランジャがシリンダ内を往復移動することで、プランジャのカムシャフトと反対側に形成された加圧室の燃料が加圧される。
また、特許文献2の明細書の段落「0043」、「0044」には、シリンダホルダに熱伝導率の小さい材料を用いること、及びシリンダホルダのねじ部に樹脂コーティングすることで、ポンプボディからシリンダへの伝熱を抑制することが記載されている。
また、特許文献3、4に記載の高圧ポンプにおいても、ポンプボディに設けられた穴に耐熱性の高いブッシュをシリンダとして取付け、シリンダの変形を抑制している。
特許文献5に記載の高圧ポンプでは、プランジャの加圧室と反対側に、プランジャの往復移動によって容積の変化する可変容積室が形成されている。シリンダの可変容積室側の径外方向の外壁に複数の溝が設けられている。この溝は、シリンダの軸に対象に2個又は4個設けられている(特許文献5の図11及び図16参照)。この溝を経由し、可変容積室に吸入及び排出する燃料が流れることで、シリンダの可変容積室側の端部が冷却される。
なお、特許文献5の明細書の段落「0088」〜「0090」には、熱伝量は、流速に比例して増大するので、溝の数を増やす場合は、径方向の距離を短くすることで、流速の低下を抑制することが記載されている。
特許文献6に記載の高圧ポンプは、シリンダの径方向外側に筒状の隙間が設けられている。この隙間は、加圧室及びこの加圧室に燃料を供給する低圧側燃料通路と連通している。
また、シリンダ、シリンダホルダ及びポンプボディが面接触しているので、エンジンの放射熱等がポンプボディからシリンダへ伝熱するおそれがある。
特許文献5に記載の高圧ポンプは、シリンダの溝がシリンダの可変容積室側の端部にのみ設けられているので、シリンダ全体を冷却することができない。さらに、シリンダの溝は、シリンダの周方向の一部にのみ設けられているので、シリンダの端部の全周を冷却することが困難である。
また、特許文献5に記載の高圧ポンプは、溝の断面積を小さく形成し、溝を流れる燃料の流速を高めることで、シリンダの冷却効果を向上している。このため、例えば内燃機関の高温再始動時など、内燃機関が高温かつ低回転時のシリンダの冷却効果が低下することが懸念される。
特許文献6に記載の高圧ポンプは可変容積室が形成されておらず、シリンダの径方向外側の隙間は低圧側燃料通路に連通しているのみである。このため、加圧室からのリーク燃料以外、燃料の流通がほとんど期待できない。したがって、隙間の燃料が高温になり、シリンダの冷却効果が低下するおそれがある。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、シリンダの変形を抑制することの可能な高圧ポンプを提供することにある。
可変容積室形成手段は、シリンダの加圧室と反対側に設けられ、プランジャの往復移動により容積が可変する可変容積室を形成する。
シリンダは、加圧室側からテーパ部および小径部を有する。テーパ部は、軸方向加圧室側の肉厚が軸方向可変容積室側の肉厚よりも厚いテーパ状に形成され、小径部は、テーパ部の軸方向可変容積室側の肉厚と同一の肉厚で形成される。
ポンプボディは、低圧側燃料通路から延びる連通路と可変容積室とに連通し、連通路からシリンダの可変容積室側の端部までシリンダの径方向外側の全周で空間をなす筒状空間を有する。
高圧ポンプの加圧室には、高い燃圧が作用する。このため、シリンダとプランジャとの隙間の燃料は、ハーゲン・ポアズイユの式に示されるように、加圧室側から可変容積室側に向かい燃圧が小さくなる。そこで本発明では、この燃圧の変化に対応してシリンダをテーパ状に形成することにより、加圧室の燃料圧力に対し、シリンダの変形を抑制することができる。シリンダの変形が抑制されることにより、シリンダとプランジャとの摺動による摩擦熱の発生を抑制することができる。
また、ポンプボディとシリンダとが別体の場合、シリンダの組み付け時において、シリンダの軸方向加圧室側の径外方向外壁をポンプボディに圧入する場合、シリンダが径方向内側へ変形することを抑制することができる。
なお、シリンダの径外側に筒状空間を形成する場合、筒状空間を軸方向加圧室側に延ばすことで、シリンダの冷却効果を高めることができる。
(第1参考例)
本発明の第1参考例および後述する実施形態の高圧ポンプの設けられる燃料供給系統を図1に示す。
図1中で、破線で囲まれた部分が高圧ポンプ10のポンプボディ11を示し、この破線の中に示されている機構及び部品は、高圧ポンプ10のポンプボディ11に組み込まれていることを示す。
燃料タンク1の燃料は、電子制御ユニット(ECU)2から伝送される信号に基づき低圧ポンプ3によって汲み上げられ、適切な圧力に加圧される。この燃料は、低圧燃料配管4を通り、高圧ポンプ10の燃料入口20に送られる。
フィルタ28は、燃料タンク1から燃料入口20までの間に存在する異物が燃料の流れにより高圧ポンプ10に侵入することを防ぐ。また、ダンパ室201は、圧力脈動を減衰する。
本参考例および後述する実施形態において、燃料入口20とダンパ室201との間の燃料通路、ダンパ室201、導入通路111および供給通路100を低圧側燃料通路101と称する。この低圧側燃料通路101は、特許請求の範囲に記載の「低圧側燃料通路」に相当する。
なお、高圧ポンプ10の構成及び作動の詳細については、後述する。
本参考例において、ポンプボディ11は、円筒状のシリンダ14を一体で有している。シリンダ14には、プランジャ13が軸方向に往復移動可能に収容されている。プランジャ13は、加圧室121に臨むように設けられている。プランジャ13の加圧室121と反対側に設けられたヘッド17は、スプリング座18と結合している。スプリング座18と後述するオイルシールホルダ25との間には、スプリング19が設けられている。スプリング19は、一方の端部がオイルシールホルダ25に当接し、他方の端部がスプリング座18に当接しており、軸方向へ伸びる力を有している。このスプリング19の弾性力により、スプリング座18はエンジンのカムシャフト5の方向へ付勢される。これにより、プランジャ13は、タペット27を介してカムシャフト5のカムと接することで軸方向に往復移動する。プランジャ13の往復移動により、加圧室121の容積が変化することで燃料が加圧される。
ポンプボディ11には、シリンダ14の反対側に、シリンダ側14に凹む筒状の凹部203が設けられている。凹部203は、ポンプボディ11の外側に開口している。この凹部203の開口204を蓋部材12が塞いでいる。凹部203と蓋部材12によって、ダンパ室201が形成される。
パルセーションダンパ210は、2枚の金属ダイアフラムから構成され、内部に所定圧の気体が密封されている。パルセーションダンパ210は、2枚の金属ダイアフラムがダンパ室201の圧力変化に応じて弾性変形することで、ダンパ室207の燃圧脈動を低減する。
波ばね213は、蓋側支持部材212と蓋部材12との間に設けられ、蓋側支持部材212をポンプボディ11側に押圧している。これにより、蓋側支持部材212、パルセーションダンパ210及びボディ側支持部材211がダンパ室201内に固定される。
ポンプボディ11には、シリンダ14の中心軸と略垂直に筒部15が設けられている。筒部15の内側には供給通路100が形成されている。供給通路100は、加圧室121の径方向外側に形成され、深部が加圧室121に連通している。
ダンパ室201と供給通路100とを導入通路111が連通している。燃料入口とダンパ室201との間の燃料通路、ダンパ室201、導入通路111および供給通路100を経由して加圧室121に燃料が供給される。
吸入弁35は弁ボディ31の大径筒部33の内側に配置されている。吸入弁35は、小径筒部32に設けられた孔の内壁に案内されて往復移動する。吸入弁35の弁座34側に、この弁座34に着座可能な凸テーパ状の外周面が形成されている。
ストッパ40には、ストッパ40の軸に対して傾斜する傾斜通路102が周方向に複数形成されている。
電磁駆動部70は、コイル71、固定コア72、可動コア73、フランジ75などから構成される。コイル71は樹脂製のスプール78に巻回されている。固定コア72は磁性材料で作られ、コイル71の内側に収容されている。可動コア73は磁性材料で作られ、固定コア72と対向して配置されている。可動コア73は、フランジ75の内側に軸方向に往復移動可能に収容されている。
ニードル38は略円筒状に形成され、ガイド筒76の内壁に案内されて往復移動する。ニードル38は、一方の端部が可動コア73と一体に組み付けられ、他方の端部が吸入弁35の電磁駆動部70側の端面に当接するように設置されている。
コイル71に通電していないとき、可動コア73は固定コア72に吸引されず、第2スプリング22の弾性力により互いに離れている。このため、可動コア73と一体のニードル38が吸入弁35側へ移動し、ニードル38の端面が吸入弁35を押圧することで吸入弁35が開弁する。
プランジャ13は、ヘッド17側に小径部131を有し、加圧室121側に大径部133を有している。小径部131と大径部133との接続部分には段差面132が形成される。段差面132に向き合うように、シリンダ14の端部に略円環状のプランジャストッパ23が設けられている。
プランジャストッパ23は、加圧室121側の端面に、加圧室121と反対側へ略円板状に凹む凹部231と、凹部231から径外方向へプランジャストッパ23の外縁まで延びる溝路232とを有している。溝路232は、放射状に複数形成されている。プランジャストッパ23の中央部にはプランジャストッパ23を板厚方向に貫く孔233が形成されている。プランジャストッパ23は、孔233にプランジャ13の小径部131が挿通されている。また、プランジャストッパ23は、加圧室121側の端面がシリンダ14の端面に当接している。
プランジャ13の段差面132、小径部131の外壁、シリンダ14の内壁、プランジャストッパ23の凹部231、溝路232、およびシール部材24に囲まれる空間により可変容積室122が形成される。
本参考例および後述する実施形態では、上述したプランジャ13の段差面132、小径部131の外壁、シリンダ14の内壁、プランジャストッパ23、オイルシールホルダ25、シール部材24およびオイルシール26が、特許請求の範囲に記載の「可変容積室形成手段」を構成している。なお、可変容積室形成手段は、シリンダの加圧室と反対側で可変容積室を形成することの可能なものであればよい。
筒状空間80は、オイルシールホルダ25の軸方向加圧室121側で、シリンダ14の径外側に形成される径方向に広い第1筒状空間81と、オイルシールホルダ25の径方向内側の内壁とシリンダ14の径方向外側の外壁との間に形成される径方向に狭い第2筒状空間82とから構成されている。
第1筒状空間81はポンプボディ11に形成された連通路83を経由してダンパ室201に連通している。第2筒状空間82はプランジャストッパ23の溝路232から可変容積室122に連通している。これにより、筒状空間80はダンパ室201と可変容積室122とに連通する。
筒状空間80を加圧室121側に近づけ、供給通路100と筒状空間80の軸方向加圧室121側の内壁との間の肉厚Aを薄くすると、供給通路100の燃圧によって供給通路100を構成するポンプボディ11の内壁が変形するおそれがある。これにより、供給通路100が変形すると、吸入弁部30を構成する各部に隙間が生じ、燃料漏れを生じることが懸念される。このため、供給通路100と筒状空間80の軸方向加圧室121側の内壁との間の肉厚Aは、高圧ポンプ10の通常使用時において、供給通路100の燃圧によって生じる供給通路100の変形が許容可能な程度となるような厚さに形成されている。このような肉厚Aを確保することが可能な位置に筒状空間80の軸方向加圧室121側の内壁は設けられている。
吐出弁部90は、加圧室121において加圧された燃料の排出を許容または遮断する。この吐出弁部90は、吐出弁92、規制部材93、スプリング94などから構成されている。
ポンプボディ11には、シリンダ14の中心軸と略垂直に吐出通路114が形成されている。吐出通路114は、加圧室121の径方向外側に形成され、加圧室121と燃料出口91とを連通している。
吐出弁92は、有底筒状に形成され、吐出通路114に往復移動可能に収容されている。吐出弁92は、ストローク方向にのみ運動するように、吐出通路114の内壁によりガイドされている。吐出弁92は、吐出通路114に形成された弁座95(図3参照)に着座することで吐出通路114を閉塞し、弁座95から離座することで吐出通路114を開放する。
吐出弁92の燃料出口91側に設けられた筒状の規制部材93は、吐出通路114の内壁に固定されている。規制部材93は、吐出弁92の燃料出口91側への移動を規制する。
吐出弁92の開弁のストロークは、規制部材93によって適切に設定されている。仮にストロークが大きすぎると、吐出弁92の閉じ遅れにより、吐出通路114へ吐出された燃料が、再び加圧室121に逆流し、高圧ポンプ10のポンプ効率が低下する。
スプリング94は、一端が規制部材93に当接し、他端が吐出弁92に当接している。スプリング94は、吐出弁92を加圧室121側へ付勢している。
一方、加圧室121の燃圧が低下し、加圧室121側の燃料から吐出弁92が受ける力がスプリング94の弾性力と燃料出口91側の燃料から受ける力との和よりも小さくなると、吐出弁92は弁座95に着座する。これにより、燃料出口91側の燃料が加圧室121へ逆流することが防止される。
ポンプボディ11には、シリンダ14の中心軸と略垂直にリリーフ通路51が形成されている。リリーフ通路51は、加圧室121の径方向外側に形成され、吐出通路114と加圧室121とを連通している。なお、リリーフ通路51のポンプボディ11の外壁側の開口は、プラグ55によって閉塞されている。
圧力調整部50は、リリーフ弁52、アジャストパイプ53、スプリング54及び定残圧弁60などから構成されている。
スプリング54は、一方の端部がリリーフ弁52に接し、他方の端部がアジャストパイプ53に接している。リリーフ弁52は、スプリング54の付勢力により、リリーフ通路51の内壁に形成される弁座56側へ付勢されている。
リリーフ弁52は、弁座56に着座することによりリリーフ弁52の径外側のリリーフ通路51を閉塞し、弁座56から離座することによりリリーフ弁52の径外側のリリーフ通路51を開放する。
(1)吸入行程
カムシャフト5の回転により、プランジャ13が上死点から下死点に向かって下降すると、加圧室121の容積が増加し、燃料が減圧される。吐出弁92は弁座95に着座し、吐出通路114を閉塞する。吸入弁35は、加圧室121と供給通路100との差圧により、第1スプリング21の付勢力に抗して図2の右方向に移動し、開弁状態となる。このとき、コイル71への通電は停止されているので、可動コア73及びこの可動コア73と一体のニードル38は第2スプリング22の付勢力により図2の右方向に移動する。したがって、ニードル38と吸入弁35とが当接し、吸入弁35は開弁状態を維持する。これにより、低圧側燃料通路101から加圧室121に燃料が吸入される。
なお、図5では、コイル71へ通電するECUの制御信号を「ソレノイド制御信号」と示し、ニードル38の位置を「ニードル位置」と示している。
カムシャフト5の回転により、プランジャ13が下死点から上死点に向かって上昇すると、加圧室121の容積が減少する。このとき、所定の時期まではコイル71への通電が停止されているので、第2スプリング22の付勢力によりニードル38と吸入弁35は図2の右方向に位置する。これにより、供給通路100は開放した状態が維持される。このため、一度加圧室121に吸入された低圧燃料が、吸入弁部30を経由し、低圧側燃料通路101へ戻される。したがって、加圧室121の圧力は上昇しない。
吸入弁35が弁座に着座した時から、加圧室121の燃料圧力は、プランジャ13の上死点に向かう上昇と共に高くなる。加圧室121の燃料圧力が吐出弁92に作用する力が、吐出通路114の燃料圧力が吐出弁92に作用する力およびスプリング94の付勢力よりも大きくなると、吐出弁92が開弁する。これにより、加圧室121で加圧された高圧燃料は吐出通路114を経由して燃料出口91から吐出する。
なお、加圧行程の途中でコイル71への通電が停止される。加圧室121の燃料圧力が吸入弁35に作用する力は、第2スプリング22の付勢力より大きいので、吸入弁35は閉弁状態を維持する。
コイル71へ通電するタイミングを制御することで、高圧ポンプ10から吐出される高圧燃料の量を制御することができる。
ECUの指令によりコイル71へ通電するタイミングを早くすれば、調量行程の時間が短くなると共に、加圧行程の時間が長くなる。これにより、加圧室121から低圧側燃料通路101へ戻される燃料が少なくなり、吐出通路114から高圧吐出される燃料が多くなる。
一方、ECUの指令によりコイル71へ通電するタイミングを遅くすれば、調量行程の時間が長くなると共に、吐出行程の時間が短くなる。これにより、加圧室121から低圧側燃料通路101へ戻される燃料が多くなり、吐出通路114から高圧吐出される燃料が少なくなる。
このように、ECUがコイル71へ通電するタイミングを制御することで、高圧ポンプ10から吐出される燃料の量を内燃機関が必要とする量に制御することができる。
本参考例では、シリンダ14の径方向外側の全周で空間をなす筒状空間80が形成されている。この筒状空間80は、可変容積室122と低圧側燃料通路101とに連通している。このため、プランジャ13の往復移動により可変容積室122の容積が可変することで、筒状空間80には、低圧側燃料通路101と可変容積室122の燃料が交互に入れ替わる。これにより、筒状空間80には、常に比較的低温の燃料が流れる。したがって、シリンダ14の全周を確実に冷却することができる。
また、本参考例では、シリンダ14の径方向の肉厚Bが、シリンダ14の変形を許容可能な程度の厚さで形成されている。このように、筒状空間80の内径を小さくし、シリンダ14を薄くすることで、シリンダ14とプランジャ13との摺動による温度上昇の抑制効果を高めることができる。これにより、シリンダ14の熱による許容範囲外の変形が抑制され、シリンダ14とプランジャ13の焼き付きを抑制することができる。
本発明の第1実施形態を図6に示す。以下、複数の実施形態および参考例において、上述した第1参考例と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、筒状空間84は、軸方向加圧室121側の内径が軸方向可変容積室122側の内径よりも大きいテーパ状に形成されている。これにより、シリンダ14は、加圧室121側にテーパ部141を有し、可変容積室122側に小径部142を有し、一体に形成される。シリンダ14のテーパ部141は、軸方向加圧室121側の肉厚Cが軸方向可変容積室122側の肉厚Dよりも厚いテーパ状に形成されている。
本発明の第2参考例を図7に示す。本参考例では、筒状空間80とダンパ室201とを連通する連通路83が複数設けられている。複数の連通路83は、吸入弁部30、吐出弁部90及び圧力調整部50を避け、シリンダ14と平行に軸方向に延びている。複数の連通路83は、一端がダンパ室201の内壁に開口し、他端が筒状空間80の軸方向加圧室121側の内壁にそれぞれ開口している。このため、筒状空間80の内壁には、連通路の開口831が周方向に複数箇所設けられる。
プランジャ13の往復移動に伴う可変容積室122の容積変化により、可変容積室122の燃料と筒状空間80の燃料とが循環する。これと共に、筒状空間80の内壁に複数箇所設けられた開口831から連通路83を経由し、筒状空間80の燃料とダンパ室201の燃料とが循環する。ダンパ室201には、燃料タンクから比較的低温の燃料が供給されている。このため、可変容積室122および筒状空間80の燃料が低温になる。
本発明の第3参考例を図8に示す。本参考例では、ポンプボディ11とシリンダ14とが別体で構成されている。シリンダ14の加圧室121側端部の径外方向の外壁は、ポンプボディ11の内壁に圧入、溶接などにより固定されている。
本参考例では、シリンダ14を例えばマルテンサイト系ステンレス等の比較的硬度の高い材料から形成し、ポンプボディ11を例えばフェライト系ステンレス等のシリンダ14よりも比較的硬度の低い材料から形成することが可能になる。これにより、シリンダ14の変形を抑制することができる。したがって、シリンダ14の変形による燃料漏れを抑制できる。また、シリンダ14とプランジャ13の焼き付きを抑制できる。
本参考例では、比較的硬度の高い材料をシリンダ14のみに使用し、比較的硬度の低い材料をポンプボディ11に使用することで、製造上のコストを低減することができる。また、ポンプボディ11に燃料通路を容易に形成することが可能になり、加工コストを低減することができる。
本発明の第4参考例を図9に示す。本参考例では、連通路85は、一方の側が筒状空間80に連通し、他方の側が吸入弁部30の弁座34よりもダンパ室201側の供給通路100に連通している。
プランジャ13が下死点から上死点へ上昇すると、可変容積室122の容積が増大し、可変容積室122が減圧される。高圧ポンプ10の調量行程において、加圧室121から供給通路100に排出される燃料は、ダンパ室201を経由することなく、供給通路100から連通路85及び筒状空間80を通り、可変容積室122に最短経路で吸入される。したがって、加圧室121と可変容積室122との間の流路の流体抵抗が小さくなるので、加圧室121から可変容積室122への吸入効率を高めることができる。
また、ダンパ室201には、加圧室121から排出される燃料と可変容積室122に吸入される燃料との差分の燃料のみが流入する。これにより、ダンパ室201に伝達される燃圧脈動が小さくなる。パルセーションダンパ210は、この燃圧脈動を確実に低減することが可能である。このため、高圧ポンプ10の脈動減衰性能が向上し、高圧ポンプ10の燃料入口20から低圧燃料配管4に伝わる燃圧脈動を低減することができる。
一方、プランジャ13が上死点から下死点へ下降する高圧ポンプ10の吸入行程において、可変容積室122の容積が減少する。このとき、可変容積室122から筒状空間80及び連通路85を通り、供給通路100に排出される燃料は、加圧室121に最短経路で吸入される。したがって、可変容積室122から加圧室121への吸入効率が高まる。この結果、筒状空間80の燃料の流通が良くなり、シリンダ14の冷却効果を高めることができる。
本発明の第5参考例を図10に示す。本参考例では、第1筒状空間86の中心軸は、シリンダ14の中心軸に対し、偏心して設けられている。
本参考例では、ポンプボディ11のスペースを有効に使用し、第1筒状空間86の容積を大きくすることが可能になる。これにより、シリンダ14の冷却効果を高めることができる。
本発明の第6参考例を図11に示す。本参考例では、第1筒状空間87は、軸方向の加圧室121側の内径が、軸方向の加圧室121と反対側の内径より大きいテーパ状に形成されている。
本参考例においても、第5参考例と同様の作用効果を奏することができる。
本発明の第2実施形態を図12に示す。本実施形態では、シリンダ14がポンプボディ11と別体、かつ、テーパ状に形成されている。シリンダ14は、加圧室121側から、大径部143、テーパ部144、小径部145をこの順で有している。シリンダ14のテーパ部144は、軸方向加圧室121側の肉厚Cが軸方向可変容積室122側の肉厚Dよりも厚いテーパ状に形成されている。
プランジャ13の往復移動により加圧室121には、高い燃圧が作用する。シリンダ14とプランジャ13との隙間の燃料は、加圧室121側から可変容積室122側に向かい燃圧が小さくなる。この燃圧の変化に対応し、シリンダ14にテーパ部144を設けることで、シリンダ14の変形が抑制される。これにより、シリンダ14とプランジャ13との摺動による摩擦熱の発生を抑制することができる。
また、シリンダ14の組み付け時において、シリンダ14の大径部143の径外方向外壁をポンプボディ11に圧入する場合、大径部143が径方向内側へ変形することを抑制することができる。
上述した複数の実施形態および参考例では、吸入弁部30の供給通路100と筒状空間80、84との間の肉厚を、供給通路100の変形が許容可能な程度の厚さで形成した。これに対し、本発明は、仮に吐出弁部又は圧力調整部が吸入弁部よりも軸方向可変容積室側に設けられた場合、吐出通路と筒状空間との間の肉厚、またはリリーフ通路と筒状空間との間の肉厚を、吐出通路またはリリーフ通路の変形が許容可能な程度の厚さで形成してもよい。
また、上記以外に、燃料通路を開放又は閉塞することで燃料の流通を制御する流通制御部が設けられた場合、この流通制御部と筒状空間との間の肉厚を、流通制御部の設けられる燃料通路の変形が許容可能な程度の厚さで形成してもよい。
また、上述した複数の実施形態および参考例では、筒状空間80、84の軸方向加圧室121側の内壁を、シリンダ14の軸に垂直に形成した。これに対し、本発明は、筒状空間の軸方向加圧室側の内壁を、シリンダの軸に垂直な仮想平面に対し傾斜させ、吸入弁部、吐出弁部及び圧力調整部にそれぞれ対応するように形成してもよい。
また、上述した複数の実施形態および参考例では、筒状空間を円筒状または円錐状に形成した。これに対し、本発明は、筒状空間を横断面視において例えば楕円形又は多角形に形成してもよい、或いは筒状空間の一部が径外方向に凸状又は径内方向に凹状となるように形成してもよい。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の形態により実施することができる。
11 ・・・ポンプボディ
13 ・・・プランジャ
14 ・・・シリンダ
30 ・・・吸入弁部
90 ・・・吐出弁部
100 ・・・供給通路(低圧側燃料通路)
101 ・・・低圧側燃料通路
114 ・・・吐出通路
121 ・・・加圧室
Claims (8)
- プランジャ(13)と、
前記プランジャを軸方向に往復移動可能に収容するシリンダ(14)と、
前記プランジャの往復移動により燃料が加圧される加圧室(121)、燃料入口(20)と前記加圧室とを連通する低圧側燃料通路(101、100、111、201)、および前記加圧室と燃料出口(91)とを連通する吐出通路(114)を有するポンプボディ(11)と、
前記低圧側燃料通路を開放又は閉塞する吸入弁部(30)と、
前記吐出通路を開放又は閉塞する吐出弁部(90)と、
前記シリンダの前記加圧室と反対側に設けられ、前記プランジャの往復移動により容積が可変する可変容積室を形成する可変容積室形成手段(23,24,25,26,132,131,14)と、を備え、
前記シリンダは、加圧室側からテーパ部(141,144)および小径部(142,145)を有し、
前記テーパ部は、軸方向加圧室側の肉厚が軸方向可変容積室側の肉厚よりも厚いテーパ状に形成され、
前記小径部は、前記テーパ部の軸方向可変容積室側の肉厚と同一の肉厚で形成され、
前記ポンプボディは、前記低圧側燃料通路から延びる連通路(83,85)と前記可変容積室とに連通し、前記連通路から前記シリンダの前記可変容積室側の端部まで前記シリンダの径方向外側の全周で空間をなす筒状空間(80,81,82,84,86,87)を有することを特徴とする高圧ポンプ(10)。 - 前記筒状空間は、前記連通路が開口する第1筒状空間(81,86,87)と、前記シリンダの前記可変容積室側の端部から前記シリンダの軸方向に延びる第2筒状空間(82)とを有し、
前記第1筒状空間の容積は、前記第2筒状空間の容積より大きいことを特徴とする請求項1に記載の高圧ポンプ。 - 前記第1筒状空間は前記テーパ部の径外側に設けられ、前記第2筒状空間は前記小径部の径外側に設けられることを特徴とする請求項2に記載の高圧ポンプ。
- 通常作動時の前記シリンダと前記プランジャとの間の燃圧により生じる前記シリンダの変形を許容可能な程度に前記シリンダの肉厚が形成される位置に前記筒状空間の径内方向の内壁は設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
- 前記ポンプボディは、前記燃料入口と前記燃料出口との間の燃料通路を開放又は閉塞することで燃料の流通を制御する流通制御部(30,90,50)を前記加圧室の径方向外側に有し、
通常作動時の前記燃料通路の燃圧により生じる前記燃料通路の変形が許容可能な程度に前記流通制御部が設けられる前記燃料通路と前記筒状空間との間の肉厚が形成される位置に前記筒状空間の軸方向加圧室側の内壁は設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。 - 前記流通制御部は、前記燃料出口側の燃圧が所定圧より大きくなったときに吐出弁(92)よりも前記燃料出口側の燃料を前記吐出弁よりも前記燃料入口側の前記燃料通路または前記加圧室に流す圧力調整部(50)、前記吐出弁部及び前記吸入弁部のうちの少なくともいずれか一つであることを特徴とする請求項5に記載の高圧ポンプ。
- 前記シリンダと前記ポンプボディとは、一体に形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
- 前記シリンダと前記ポンプボディとは、別体で形成され、
前記シリンダは、加圧室側から大径部(143)、テーパ部(144)および小径部(145)を有し、
前記テーパ部は、軸方向加圧室側の肉厚が軸方向可変容積室側の肉厚よりも厚いテーパ状に形成され、
前記小径部は、前記テーパ部の軸方向可変容積室側の肉厚と同一の肉厚で形成され、
前記大径部は、前記テーパ部の軸方向加圧室側の肉厚と同一の肉厚で形成されて前記ポンプボディに圧入されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
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