JP5460025B2 - 多孔性フィルム、それを利用したリチウム電池用セパレータ、および電池 - Google Patents

多孔性フィルム、それを利用したリチウム電池用セパレータ、および電池 Download PDF

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Description

本発明は多孔性フィルムに関し、包装用品、衛生用品、畜産用品、農業用品、建築用品、医療用品、分離膜、光拡散板、リチウム電池用セパレータとして利用でき、特にリチウム電池用セパレータとして好適に利用できるものである。
多数の微細連通孔を有する高分子多孔性フィルムは、超純水の製造、薬液の精製、水処理などに使用する分離膜、衣類・衛生材料などに使用する防水透湿性フィルム、あるいは電池などに使用する電池セパレータなど各種の分野で利用されている。
二次電池はOA、FA、家庭用電器または通信機器等のポータブル機器用電源として幅広く使用されている。特に機器に装備した場合に容積効率がよく機器の小型化および軽量化につながることからリチウムイオン二次電池を使用したポータブル機器が増加している。
一方、大型の二次電池はロードレベリング、UPS、電気自動車をはじめ、エネルギー/環境問題に関連する多くの分野において研究開発が進められ、大容量、高出力、高電圧および長期保存性に優れている点より非水電解液二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池の用途が広がっている。
リチウムイオン二次電池には内部短絡の防止の点からセパレータが正極と負極の間に介在されている。当該セパレータにはその役割から当然絶縁性が要求される。また、リチウムイオンの通路となる透気性と電解液の拡散・保持機能を付与するために微細孔構造である必要がある。これらの要求を満たすためセパレータとしては多孔性フィルムが使用されている。
透過性の高い、多孔性フィルムを得る方法として、β晶を含むポリプロピレンシートを延伸する方法が種々提案されている。例えば、特許2509030号公報(特許文献1)では、β晶含有率が高い(K>0.5)オリジナルポリプロピレンフィルムより二軸延伸して得られる超透過性ポリプロピレンのミクロポーラスフィルムが提案され、また、国際公開2002/066233号パンフレット(特許文献2)では、針状β晶を含むポリプロピレンを逐次二軸延伸することにより得られるポリプロピレン製多孔性フィルムおよびその製造方法が提案されている。
特許2509030号公報 国際公開2002/066233号パンフレット
前記特許文献1,2により得られる多孔性フィルムは非常に空孔率が高い反面、その空孔率の高さゆえ弾性率が低くなる傾向にあった。しかも、延伸時に延伸倍率を高くすることで分子配向を促進させ、弾性率を向上させようとした場合、空孔率がより高くなり、結果として弾性率が逆に下がってしまう問題があった。そこで本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、延伸の際に発生する空孔を適度に制御し、弾性率の高い多孔性フィルムを提供することを目的としている。
本発明の多孔性フィルムは、ポリプロピレン系樹脂(A)と、結晶融解ピーク温度が120℃未満である熱可塑性樹脂(B)としてポリブテン系樹脂を含有する混合樹脂層を少なくとも1層以上有し、3%伸張時の引張弾性率(F3値)が400MPa以上であり、かつβ活性を有することを特徴とする多孔性フィルムを提供している。
本発明は、前記多孔性フィルムを用いた電池用セパレータを提供しており、優れた透気特性と弾性率を有するため、該電池用セパレータを組み込んだ電池は良好な電池性能を有する。さらに、本発明の多孔性フィルムは、厳密な製造条件の制御を必要とせず、簡便にかつ効率よく生産することができる。
本発明の多孔性フィルムは、延伸処理のみで多孔化するため、例えば多孔化するための添加剤を溶媒で除去する工程などが無く環境への悪影響が少なく、前記添加剤の残存によるセパレータ特性の悪化もない。さらに、多孔化するためのフィラーも含まないので、より軽量な多孔性フィルムとすることができる。
以下、本発明の多孔性フィルムの実施形態、ならびにリチウム電池用セパレータとしての電池への適応形態について詳細に説明する。
なお、本発明において、「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含し、特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分は組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100%含む)を占める意を包含するものである。
また、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
本発明の多孔性フィルムはβ活性を有するものとしているため、微細な多孔構造を設けることができ、透気特性を発揮させることができる。 特に、β晶を含有する樹脂組成物から成形した膜状物を逐次2軸延伸を行うことにより製造すると、フィラー等の添加剤を使用しない場合においても、容易に微細孔を多数設けて多孔化することができる。
また、ポリプロピレン系樹脂(A)と結晶融解ピーク温度が120℃未満である熱可塑性樹脂(B)としてポリブテン系樹脂を含有する混合樹脂層とすることで、過度な空孔の増加が抑制でき、適度に空孔率を調整することで、弾性率の優れた多孔性フィルムを得る事が可能である。
本発明の多孔性フィルムは、前記β活性を有することを重要な特徴としている。
β活性は、延伸前の膜状物においてポリプロピレン系樹脂(A)がβ晶を生成していたことを示す一指標と捉えることができる。延伸前の膜状物中のポリプロピレン系樹脂(A)がβ晶を生成していれば、その後延伸を施すことで微細孔が形成されるため、透気特性を有する多孔性フィルムを得ることができる。
また、前記β活性は、本発明の多孔性フィルムが単層構造である場合であっても、他の多孔性層が積層される場合のいずれにおいても多孔性フィルム全層の状態で測定している。
本発明の多孔性フィルムにおいて、「β活性」の有無は、後述する示差走査型熱量計によりβ晶に由来する結晶融解ピーク温度が検出された場合か、及び/又は後述する広角X線回折装置を用いた測定により、β晶に由来する回折ピークが検出された場合、「β活性」を有すると判断している。
具体的には、示差走査型熱量計で多孔性フィルムを25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃から25℃まで冷却速度10℃/分で降温後1分間保持し、更に25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で再昇温させた際に、ポリプロピレン系樹脂(A)のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)が検出された場合、β活性を有すると判断している。
また、前記多孔性フィルムのβ活性度は、検出されるポリプロピレン系樹脂(A)のα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)とβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)を用いて下記式で計算している。
β活性度(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
例えば、ポリプロピレン系樹脂(A)がホモポリプロピレンの場合は、主に145℃以上160℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に160℃以上170℃以下に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。また、例えばエチレンが1〜4モル%共重合されているランダムポリプロピレンの場合は、主に120℃以上140℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に140℃以上165℃以下の範囲に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。
前記多孔性フィルムのβ活性度は大きい方が好ましく、β活性度は20%以上であることが好ましい。40%以上であることがさらに好ましく、60%以上であることが特に好ましい。多孔性フィルムが20%以上のβ活性度を有すれば、延伸前の膜状物中においてもポリプロピレン系樹脂(A)のβ晶が多く生成することができることを示し、延伸により微細かつ均一な孔が多く形成され、結果として機械的強度が高く、透気性能に優れたリチウムイオンリチウム電池用セパレータとすることができる。
β活性度の上限値は特に限定されないが、β活性度が高いほど前記効果がより有効に得られるので100%に近いほど好ましい。
また前記β活性の有無は、特定の熱処理を施した多孔性フィルムの広角X線回折測定により得られる回折プロファイルでも判断できる。
詳細には、ポリプロピレン系樹脂(A)の融点を超える温度である170℃〜190℃の熱処理を施し、徐冷してβ晶を生成・成長させた多孔性フィルムについて広角X線測定を行い、ポリプロピレン系樹脂(A)のβ晶の(300)面に由来する回折ピークが2θ=16.0°〜16.5°の範囲に検出された場合、β晶生成力が有ると判断している。
ポリプロピレン系樹脂(A)のβ晶構造と広角X線回折測定に関する詳細は、Macromol.Chem.187,643−652(1986)、Prog.Polym.Sci.Vol.16,361−404(1991)、Macromol.Symp.89,499−511(1995)、Macromol.Chem.75,134(1964)、及びこれらの文献中に挙げられた参考文献を参照することができる。広角X線回折測定を用いたβ活性の詳細な評価方法については、後述の実施例にて示す。
前述した多孔性層のβ活性を得る方法としては、ポリプロピレン系樹脂(A)のα晶の生成を促進させる物質を添加しない方法や、特許3739481号公報に記載されているように過酸化ラジカルを発生させる処理を施したポリプロピレンを添加する方法、及び組成物にβ晶核剤を添加する方法などが挙げられる。
仮に、ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)を含有する混合樹脂層以外に、ポリプロピレン系樹脂(A)を含有する層などを積層させる場合には、両層ともにβ活性を有することが好ましい。
本発明において、β晶核剤は、ポリプロピレン系樹脂(A)に配合していることが好ましい。前記ポリプロピレン系樹脂(A)に添加するβ晶核剤の割合は、β晶核剤の種類またはポリプロピレン系樹脂(A)の組成などにより適宜調整することが必要であるが、ポリプロピレン系樹脂(A)100質量部に対しβ晶核剤0.0001〜5.0質量部が好ましい。0.001〜3.0質量部がより好ましく、0.01〜1.0質量部が更に好ましい。0.0001質量部以上であれば、製造時において十分にポリプロピレン系樹脂(A)のβ晶を生成・成長させることができ、セパレータとした際にも十分なβ活性が確保でき、所望の透気性能が得られる。また、5.0質量部以下の添加であれば、経済的にも有利になるほか、多孔性フィルム表面へのβ晶核剤のブリ−ドなどがなく好ましい。
また、仮にポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)を含有する混合樹脂層以外に、ポリプロピレン系樹脂(A)を含有する層などを積層させる場合には、各層のβ晶核剤の添加量は同じであっても、異なっていても良い。β晶核剤の添加量を変更することで各層の多孔構造を適宜調整することができる。
以下に、本発明の多孔性フィルムを構成する各成分について説明する。
[ポリプロピレン系樹脂(A)の説明]
ポリプロピレン系樹脂(A)としては、ホモプロピレン(プロピレン単独重合体)、またはプロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセンなどα−オレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体などが挙げられる。この中でも、β活性度の高さや、多孔性フィルムの機械的強度、耐熱性などを維持する観点から、ホモポリプロピレンがより好適に使用される。
また、ポリプロピレン系樹脂(A)としては、立体規則性を示すアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が80〜99%であることが好ましい。より好ましくは83〜98%、更に好ましくは85〜97%であるものを使用する。アイソタクチックペンタッド分率が低すぎるとフィルムの機械的強度が低下するおそれがある。一方、アイソタクチックペンタッド分率の上限については現時点において工業的に得られる上限値で規定しているが、将来的に工業レベルで更に規則性の高い樹脂が開発された場合についてはこの限りではない。
アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味する。メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al(Macromolecules8,687,(1975))に準拠した。
また、ポリプロピレン系樹脂(A)としては、分子量分布を示すパラメータであるMw/Mnが2.0〜10.0であることが好ましい。より好ましくは1.5〜8.0、更に好ましくは2.0〜6.0であるものが使用される。Mw/Mnが小さいほど分子量分布が狭いことを意味するが、Mw/Mnが1.5未満であると押出成形性が低下する等の問題が生じるほか、工業的に生産することも困難である。一方、Mw/Mnが10.0を超えた場合は低分子量成分が多くなり、多孔性フィルムの機械的強度が低下しやすい。Mw/MnはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって得られる。
また、ポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、通常、MFRは0.5〜15g/10分であることが好ましく、1.0〜10g/10分であることがより好ましい。MFRが0.5g/10分未満では成形加工時の樹脂の溶融粘度が高く生産性が低下する。一方、15g/10分を超えると得られる多孔性フィルムの機械的強度が不足するため実用上問題が生じやすい。MFRはJIS K7210に従い、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定する。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、商品名「ノバテックPP」「WINTEC」(日本ポリプロ社製)、「バーシファイ」「ノティオ」「タフマーXR」(三井化学社製)、「ゼラス」「サーモラン」(三菱化学社製)、「住友ノーブレン」「タフセレン」(住友化学社製)、「プライム TPO」(プライムポリマー社製)、「Adflex」「Adsyl」、「HMS−PP(PF814)」(サンアロマー社製)、「インスパイア」(ダウケミカル)など市販されている商品を使用できる。
[β晶核剤の説明]
本発明で用いるβ晶核剤としては以下に示すものが挙げられるが、ポリプロピレン系樹脂(A)のβ晶の生成・成長を増加させるものであれば特に限定される訳ではなく、また2種類以上を混合して用いても良い。
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分aと周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分bとからなる二成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられる。そのほか核剤の具体的な種類については、特開2003−306585号公報、特開平06−289566、特開平09−194650に記載されている。
β晶核剤の市販品としては新日本理化社製β晶核剤「エヌジェスターNU−100」、β晶核剤の添加されたポリプロピレン系樹脂の具体例としては、Aristech社製ポリプロピレン「Bepol B−022SP」、Borealis社製ポリプロピレン「Beta(β)−PP BE60−7032」、Mayzo社製ポリプロピレン「BNX BETAPP−LN」などが挙げられる。
[熱可塑性樹脂(B)の説明]
本発明において、熱可塑性樹脂(B)を混合することで、多孔性フィルムの多孔構造を微細均一化することができる。前記熱可塑性樹脂(B)としては、結晶融解ピーク温度が120℃未満である熱可塑性樹脂であり、ポリプロピレン系樹脂(A)との相溶性が良好であり、かつβ活性を阻害しない観点から、前記のように、ポリブテン系樹脂を用いている。
また、前記熱可塑性樹脂(B)として用いるポリブテン系樹脂は結晶融解ピーク温度が120℃未満であることが重要であり、好ましくは115℃以下、より好ましくは110℃以下である。前記熱可塑性樹脂(B)の結晶融解ピーク温度が120℃未満であれば微細な多孔構造を促進できるため、優れた透気特性を発現できる。
一方、下限としては50℃以上が好ましく、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。前記熱可塑性樹脂(B)の結晶融解ピーク温度が50℃以上であれば、微細な多孔構造を促進できるため、優れた透気特性を発現できるため、好ましい。
ここで熱可塑性樹脂(B)の結晶融解ピーク温度は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて25〜240℃まで加熱速度10℃/分で昇温後1分保持した後、240〜25℃まで冷却速度10℃/分で降温後1分間保持し、更に25〜240℃まで加熱速度10℃/分で再昇温させた際に、検出される結晶融解ピーク温度をさす。
前記熱可塑性樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、通常MFRは0.5〜15g/10分であることが好ましく、1.0〜10g/10分であることがより好ましい。MFRが0.5g/10分以上であれば成形加工時の樹脂の溶融粘度が十分に低いため生産性に優れ好ましい。一方、15g/10分以下であれば、混合するポリプロピレン系樹脂(A)の溶融粘度に近いため分散性が向上し、結果として均質な多孔性フィルムとなるため好ましい。MFRはJIS K7210に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
前記ポリブテン系樹脂としては結晶性ブテン−1系樹脂が好ましく、ブテン−1の単独重合体であってもよいし、他のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。ブテン−1と共重合させることができるα−オレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、ペンテン−1、ヘキセン−1等が挙げられ、これらは1種類のみを共重合させても良いし、2種類以上を組み合わせて共重合させてもよい。
ポリブテン系樹脂としては商品名「タフマーBL」「ビューロン」(三井化学社製)、「ポリブテン−1」(サンアロマー社製)など市販されている商品を使用できる。
本発明においては、前記熱可塑性樹脂(B)の含有量が、前記ポリプロピレン系樹脂(A)100質量部に対して1質量部以上80質量部以下であることが好ましく、5質量部以上60質量部であることがより好ましく、10質量部以上40質量部以下であることが更に好ましい。熱可塑性樹脂(B)を1質量部以上含有することで、微細な多孔構造を形成するほか、適度な空孔率を有した弾性率に優れた多孔性フィルムを得る事ができる。一方、熱可塑性樹脂(B)を80質量部以下で含有することで、多孔性フィルムが優れた透気特性を維持することができるため好ましい。
なお、前記ポリプロピレン系樹脂(A)、及び熱可塑性樹脂(B)の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた重合方法等が挙げられる。
[他の成分の説明]
本発明においては、前述した成分のほか、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、一般に樹脂組成物に配合される添加剤を適宜添加できる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性および多孔性フィルムの諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂やシリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤または着色剤などの添加剤が挙げられる。具体的には、「プラスチックス配合剤」のP154〜P158に記載されている酸化防止剤、P178〜P182に記載されている紫外線吸収剤、P271〜P275に記載されている帯電防止剤としての界面活性剤、P283〜294に記載されている滑剤などが挙げられる。
[多孔性フィルムの構成の説明]
第1実施形態の多孔性フィルムの構成は、ポリプロピレン系樹脂(A)と結晶融解ピーク温度が120℃未満である熱可塑性樹脂(B)のポリブテン系樹脂を含有する混合樹脂層(以後「I層」と称す)が少なくとも1層存在すれば特に限定されるものではない。また、本発明の多孔性フィルムの機能を妨げない範囲で他の層(以後「II層」と称す)を積層することもできる。強度保持層や、例えばリチウム電池用セパレータに使用する場合は、安全性を機能する層であるシャットダウン層(低融解温度樹脂層)、耐熱層(高融解温度樹脂層)などを積層させた構成が挙げられる。
具体的にはI層/II層を積層した2層構造、I層/II層/I層、若しくは、II層/I層/II層として積層した3層構造などが例示できる。また、他の機能を持つ層と組み合わせて3種3層の様な形態も可能である。この場合、他の機能を持つ層との積層順序は特に問わない。更に層数としては4層、5層、6層、7層と必要に応じて増やしても良い。なお、I層が2つ以上ある場合、それぞれの成分含有量が同じであってもよいし、異なっていても良い。
[多孔性フィルムの形状及び物性の説明]
第1実施形態の多孔性フィルムの形態としては平面状、チューブ状の何れであってもよいが、幅方向に製品として数丁取りが可能であることから生産性がよく、さらに内面にコートなどの処理が可能できること等の観点から、平面状がより好ましい。
本発明の多孔性フィルムの厚みは1〜500μmであり、好ましくは5〜300μm、更に好ましくは7〜100μmである。特に電池用セパレータとして使用する場合は1〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。電池用セパレータとして使用する場合、厚みが1μm以上、好ましくは10μm以上であれば、実質的に必要な電気絶縁性を得ることができ、例えば大きな電圧がかかった場合にも短絡しにくく安全性に優れる。また、厚みが50μm以下、好ましくは30μm以下であれば、多孔性フィルムの電気抵抗が小さくできるので電池の性能を十分に確保することができる。
本発明の多孔性フィルムの物性は、層構成や積層比、各層の組成、製造方法によって自由に調整できる。
本発明の多孔性フィルムの透気度は1000秒/100ml以下が好ましく、10〜900秒/100mlがより好ましく、50〜800秒/100mlが更に好ましい。透気度が1000秒/100ml以下であれば、多孔性フィルムに連通性があることを示し、優れた透気性能を示すことができるため好ましい。
透気度はフィルム厚み方向の空気の通り抜け難さを表し、具体的には100mlの空気が当該フィルムを通過するのに必要な秒数で表現されている。そのため、数値が小さい方が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方がフィルムの厚み方向の連通性が良いことを意味し、その数値が大きい方がフィルムの厚み方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とはフィルム厚み方向の孔のつながり度合いである。本発明の多孔性フィルムの透気度が低ければ様々な用途に使用することができる。例えば電池用セパレータとして使用した場合、透気度が低いということはリチウムイオンの移動が容易であることを意味し、電池性能に優れるため好ましい。
本発明の多孔性フィルムにおいて、空孔率は多孔構造を規定する為の重要なファクターである。
空孔率は30%以上が好ましく、35%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましい。空孔率が30%以上であれば、連通性を確保し透気特性に優れた多孔性フィルムとすることができる。
一方、上限については60%以下が好ましく、55%以下がより好ましく、50%以下が更に好ましい。空孔率が60%以下であれば、微細孔が増えすぎてフィルムの弾性率が低下する問題もなくなり、ハンドリングの観点からも好ましい。なお、空孔率は後述の実施例に測定方法が記載されている。
本発明の多孔性フィルムでは、フィルムのいずれか1方向についての3%伸張時の引張弾性率(以後、「F3値」と称する)は400MPa以上としている。450MPa以上がより好ましく、500MPa以上が更に好ましい。一方、上限については特に限定しないが、1000MPa以下であることが好ましく、900MPa以下がより好ましく、800MPa以下が更に好ましい。前記F3値が400MPa以上あれば、フィルムを捲回・搬送などハンドリングする際に、多孔性フィルムが伸ばされる、シワが入るなどの問題が無く、好適に多孔性フィルムを使用することができる。なお、前記F3値は後述の実施例に測定方法が記載されている。
[多孔性フィルムの製造方法の説明]
次に本発明の多孔性フィルムの製造方法について説明するが、本発明はかかる製造方法により製造される多孔性フィルムのみに限定されるものではない。
具体的には、ポリプロピレン系樹脂(A)と結晶融解ピーク温度が120℃未満である熱可塑性樹脂(B)のポリブテン系樹脂を主成分とする混合樹脂組成物を用いて、溶融押出により無孔膜状物を作製し、当該無孔膜状物を延伸することにより厚さ方向に連通性を有する微細孔を多数形成した多孔性フィルムを得る事ができる。
無孔膜状物の作製方法は特に限定されず公知の方法を用いてよいが、例えば押出機を用いて熱可塑性樹脂組成物を溶融し、Tダイから押出し、キャストロールで冷却固化するという方法が挙げられる。また、チューブラー法により製造した膜状物を切り開いて平面状とする方法も適用できる。
無孔膜状物の延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法などの手法があり、これらを単独あるいは2つ以上組み合わせて一軸延伸あるいは二軸延伸を行う。中でも、多孔構造制御の観点から二軸延伸が好ましい。
また、本発明において、積層多孔性フィルムとする場合、製造方法は、多孔化と積層の順序によって次の2つに大別される。
(a)各層を多孔化したのち、多孔化された各層をラミネートしたり接着剤等で接着したりして積層する方法。
(b)各層を積層して積層無孔膜状物を作製し、ついで当該無孔膜状物を多孔化する方法。
(c)各層のうちいずれか1層を多孔化したのち、もう1層の無孔膜状物と積層し、多孔化する方法。
本発明においては、その工程の簡略さ、生産性の観点から(b)の方法を用いることが好ましく、なかでも2層の層間接着性を確保するために、共押出で積層無孔膜状物を作製した後多孔化する方法が特に好ましい。
以下に、製造方法の詳細を説明する。
まず、ポリプロピレン系樹脂(A)と結晶融解ピーク温度が120℃未満である熱可塑性樹脂(B)のポリブテン系樹脂を主成分とする混合樹脂組成物を作製する。例えば、ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、β晶核剤、および所望によりその他添加物等の原材料を、好ましくはヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー型ミキサー等を用いて、または袋の中に全成分を入れてハンドブレンドにて混合した後、一軸あるいは二軸押出機、ニーダー等、好ましくは二軸押出機で溶融混練後、カッティングしてペレットを得る。
前記のペレットを押出機に投入し、Tダイ押出用口金から押出して膜状物を成形する。Tダイの種類としては特に限定されない。例えば本発明の多孔性フィルムが2種3層の積層構造をとる場合、Tダイは2種3層用マルチマニホールドタイプでも構わないし、2種3層用フィードブロックタイプでも構わない。
使用するTダイのギャップは、最終的に必要なフィルムの厚み、延伸条件、ドラフト率、各種条件等から決定されるが、一般的には0.1〜3.0mm程度、好ましくは0.5〜1.0mmである。0.1mm未満では生産速度という観点から好ましくなく、また3.0mmより大きければ、ドラフト率が大きくなるので生産安定性の観点から好ましくない。
押出成形において、押出加工温度は樹脂組成物の流動特性や成形性等によって適宜調整されるが、概ね180〜350℃が好ましく、200〜330℃がより好ましく、220〜300℃が更に好ましい。180℃以上の場合、溶融樹脂の粘度が十分に低く成形性に優れ生産性が向上することから好ましい。一方、350℃以下にすることにより、樹脂組成物の劣化、ひいては得られる多孔性フィルムの機械的強度の低下を抑制できる。
キャストロールによる冷却固化温度は本発明において非常に重要であり、膜中のポリプロピレン系樹脂(A)のβ晶の比率を調整することができる。キャストロールの冷却固化温度は好ましくは80〜150℃、より好ましくは90〜140℃、更に好ましくは100〜120℃である。冷却固化温度を80℃以上とすることで冷却固化させ、膜状物中のβ晶の比率を十分に増加させることができ好ましい。また、150℃以下とすることで押出された溶融樹脂がキャストロールへ粘着し巻き付いてしまうなどのトラブルが起こりにくく、効率よく膜状物化することが可能であるので好ましい。
前記温度範囲にキャストロールを設定することで、延伸前の膜状物のポリプロピレン系樹脂(A)のβ晶比率は30〜100%に調整することが好ましい。40〜100%がより好ましく、50〜100%が更に好ましく、60〜100%が最も好ましい。延伸前の膜状物中のβ晶比率を30%以上とすることで、その後の延伸操作により多孔化が行われやすく、透気特性の良い多孔性フィルムを得ることができる。
延伸前の膜状物中のβ晶比率は、示差走査型熱量計を用いて、該膜状物を25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温させた際に、検出されるポリプロピレン系樹脂(A)のα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)とβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)を用いて下記式で計算される。
β晶比率(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
ついで、得られた無孔膜状物を少なくとも一軸方向に延伸することが好ましく、二軸延伸することがより好ましい。二軸延伸は同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよい。なかでも、各延伸工程で延伸条件を選択でき、多孔構造を制御し易い逐次二軸延伸がより好ましい。なお、膜状物の引き取り(流れ)方向への延伸を「縦延伸」、その直角方向への延伸を「横延伸」と称する。
逐次二軸延伸を用いる場合、延伸温度は用いる樹脂組成物の組成、熱可塑性樹脂(B)のポリブテン系樹脂の結晶融解ピーク温度、ポリプロピレン系樹脂(A)の結晶化度等によって適時選択する必要があるが、下記条件の範囲内で選択することが好ましい。
縦延伸での延伸温度は概ね20℃〜130℃、好ましくは40℃〜120℃、更に好ましくは60℃〜110℃の範囲で制御される。また、縦延伸倍率は好ましくは2〜10倍、より好ましくは3〜8倍、更に好ましくは3〜7倍である。前記範囲内で縦延伸を行うことで、延伸時の破断を抑制しつつ、適度な空孔起点を発現させることができる。
縦延伸における延伸温度が20℃以上であれば、延伸時の破断が抑制され、均一な延伸が行われるため好ましい。一方、縦延伸における延伸温度が130℃以下であれば、ポリプロピレン系樹脂(A)中の空孔形成が起こるため、適切な空孔形成を行うことができる。
一方、横延伸での延伸温度は概ね100℃〜160℃、好ましくは105℃〜150℃、更に好ましくは110℃〜140℃である。また、横延伸倍率は好ましくは1.5〜10倍、より好ましくは2〜8倍、更に好ましくは2.5〜6倍である。前記範囲内で横延伸することで、縦延伸により形成された空孔起点を適度に拡大させ、微細な多孔構造を発現させることができるため、結果として優れた透気特性を有する多孔性フィルムを得ることができる。
前記延伸工程の延伸速度としては、500〜12000%/分が好ましく、1500〜10000%/分がより好ましく、2500〜8000%/分であることが更に好ましい。この範囲の延伸速度であれば効率よく本発明の多孔性フィルムを製造することができる。
このようにして得られた多孔性フィルムは、寸法安定性の改良を目的として熱処理を施すことが好ましい。この際、温度を100℃以上とすることで、寸法安定性の効果が十分に期待できる。一方、熱処理温度は160℃以下が好ましい。また、熱処理工程中には、必要に応じて1〜20%の弛緩処理を施しても良い。この熱処理後均一に冷却して巻き取ることにより、本発明の多孔性フィルムが得られる。
本発明の多孔性フィルムは、透気性が要求される種々の用途に応用することができる。電池用セパレータ;使い捨て紙オムツ、生理用品等の体液吸収用パットもしくはベッドシーツ等の衛生材料;手術衣もしくは温湿布用基材等の医療用材料;ジャンパー、スポーツウエアもしくは雨着等の衣料用材料;壁紙、屋根防水材、断熱材、吸音材等の建築用材料;乾燥剤;防湿剤;脱酸素剤;使い捨てカイロ;鮮度保持包装もしくは食品包装等の包装材料等の資材として極めて好適に使用できる。
[リチウム電池用セパレータの説明]
次に、前記多孔性フィルムをリチウム電池用セパレータとして収容している非水電解液電池について、図1を参照して説明する。
正極板21、負極板22の両極はリチウム電池用セパレータ10を介して互いに重なるようにして渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体としている。この渦巻き状に巻回する際、リチウム電池用セパレータ10は厚さが5〜40μmであることがなかでも好ましく、5〜30μmであることが特に好ましい。厚みを5μm以上とすることによりリチウム電池用セパレータが破れにくくなり、40μm以下にすることにより所定の電池缶に捲回して収納する際電池面積を大きくとることができ、ひいては電池容量を大きくすることができる。
前記正極板21、リチウム電池用セパレータ10および負極板22を一体的に巻き付けた捲回体を有底円筒状の電池ケース内に収容し、正極および負極のリード体24、25と溶接する。ついで、前記電解質を電池缶内に注入し、リチウム電池用セパレータ10などに十分に電解質が浸透した後、電池缶の開口周縁にガスケット26を介して正極蓋27を封口し、予備充電、エージングを行い、筒型の非水電解液電池を作製している。
電解液としては、リチウム塩を電解液とし、これを有機溶媒に溶解した電解液が用いられる。有機溶媒としては特に限定されるものではないが、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート、プロピオン酸メチルもしくは酢酸ブチルなどのエステル類、アセトニトリル等のニトリル類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジメトキシメタン、ジメトキシプロパン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランもしくは4−メチル−1,3−ジオキソランなどのエーテル類、またはスルホランなどが挙げられ、これらを単独でまたは二種類以上を混合して用いることができる。
なかでも、エチレンカーボネート1質量部に対してメチルエチルカーボネートを2質量部混合した溶媒中に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.0mol/Lの割合で溶解した電解質が好ましい。
負極としてはアルカリ金属またはアルカリ金属を含む化合物をステンレス鋼製網などの集電材料と一体化させたものが用いられる。前記アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウムまたはカリウムなどが挙げられる。前記アルカリ金属を含む化合物としては、例えばアルカリ金属とアルミニウム、鉛、インジウム、カリウム、カドミウム、スズもしくはマグネシウムなどとの合金、さらにはアルカリ金属と炭素材料との化合物、低電位のアルカリ金属と金属酸化物もしくは硫化物との化合物などが挙げられる。
負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料としてはリチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などを用いることができる。
本実施形態では、負極として、フッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液に平均粒径10μmの炭素材料を混合してスラリーとし、この負極合剤スラリーを70メッシュの網を通過させて大きな粒子を取り除いた後、厚み18μmの帯状の銅箔からなる負極集電体の両面に均一に塗布して乾燥させ、その後、ロールプレス機により圧縮成形した後、切断し、帯状の負極板としたものを用いている。
正極としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、二酸化マンガン、五酸化バナジウムもしくはクロム酸化物などの金属酸化物、二硫化モリブデンなどの金属硫化物などが活物質として用いられ、これらの正極活物質に導電助剤やポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤などを適宜添加した合剤を、ステンレス鋼製網などの集電材料を芯材として成形体に仕上げたものが用いられる。
本実施形態では、正極としては、下記のようにして作製される帯状の正極板を用いている。すなわち、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)に導電助剤としてリン状黒鉛を(リチウムコバルト酸化物:リン状黒鉛)の質量比90:5で加えて混合し、この混合物と、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液とを混合してスラリーにする。この正極合剤スラリーを70メッシュの網を通過させて大きな粒子を取り除いた後、厚さ20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に均一に塗布して乾燥し、その後、ロールプレス機により圧縮成形した後、切断し、帯状の正極板としている。
[実施例の説明]
次に実施例および比較例を示し、本発明の多孔性フィルムについて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、多孔性フィルムの流れ方向を「縦方向」、流れ方向に対して垂直方向を「横方向」と称する。
(実施例、参考例、比較例)
表1に示すように、各原材料を東芝機械株式会社製の2軸押出機(口径40mmφ、L/D=32)に投入し、設定温度280℃で溶融混合後、水槽にてストランドを冷却固化し、ペレタイザーにてストランドをカットし、混合ペレットを作製した。次いで、三菱重工株式会社製の単軸押出機(口径40mmφ、L/D=32)2台を用い、200℃で溶融混合後Tダイより押出した溶融樹脂シートを表1に記載の温度のキャストロールで引き取り、冷却固化させて、幅300mm、厚み120μmの膜状物を得た。この際、溶融樹脂シートとキャストロールの接触時間は15秒であった。
次いで、得られた膜状物に対し、フィルムロール縦延伸機を用い、ロール間で表1に記載の延伸温度および延伸倍率で縦方向に延伸を行った後、次いで京都機械社製フィルムテンター設備にて、表1に記載の延伸温度および延伸倍率で横方向に延伸した。更に表1に記載の条件で熱弛緩を行い、多孔性フィルムを得た。
実施例、比較例で使用した原材料は以下の通りである。
なお、各ポリプロピレン系樹脂(βPP−1、βPP−2)については、パーキンエルマー社製の示差走査型熱量計(DSC−7)を用いて、25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃から25℃まで冷却速度10℃/分で降温後1分間保持し、更に25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で再昇温させた場合に、再昇温時に145℃以上160℃未満の範囲にβ晶由来の結晶融解ピーク(Tmβ)が検出されるか否かを併記した。
(a)ポリプロピレン系樹脂
・PP−1:プライムポリプロ社製「プライムPP F300SV(商品名)」(MFR3.0g/10分)
再昇温時には166℃にポリプロピレンのα晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmα)のみが検出され、β晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)は検出されなかった。すなわち、PP−1のみではβ活性を有していなかった。
・βPP−1
前記ポリプロピレン系樹脂(PP−1)100質量部にβ晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボン酸アミドを0.1質量部添加した後、ハンドブレンドし、東芝機械株式会社製の2軸押出機(口径40mmφ、L/D=32)に投入し、設定温度280℃で溶融混合後、ストランドダイより押し出した後、水槽にてストランドを冷却固化し、ペレタイザーにてカットし、ポリプロピレン系樹脂(PP−1)とβ晶核剤の混合ペレットを作製した。
再昇温時には、ポリプロピレンのβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)が154℃に、α晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmα)が168℃に検出された。
すなわち、βPP−1はβ活性を有しており、下記式から算出したβ活性度は80%であった。
β活性度(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
ΔHmβ:145℃以上160℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量
ΔHmα:160℃以上175℃以下に検出されるα晶由来の結晶融解熱量
・βPP−2:β晶核剤の配合されたポリプロピレン樹脂であるAristech社製「Bepol B−022SP(商品名)」(MFR0.3g/10分)のペレットを用いた。
再昇温時には、ポリプロピレンのβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)が151℃に、α晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmα)が169℃に検出された。
すなわち、βPP−2はβ活性を有しており、上記式から算出したβ活性度は78%であった。
(b)熱可塑性樹脂
・PB:サンアロマー社製 ポリブテン系樹脂「ポリブテン PB0110M」、結晶融解ピーク温度117℃
・TPS:クレイトンジャパン社製 ポリスチレン系軟質樹脂「クレイトン MD6932」、ガラス転移温度98℃
・HDPE:日本ポリエチレン社製 ポリエチレン樹脂「ノバテックHD HF560」、結晶融解ピーク温度134℃
Figure 0005460025
得られた多孔性フィルムについて次のようにして各種特性の測定および評価を行い、その結果を表2にまとめた。
(1)厚み
1/1000mmのダイアルゲージにて、面内の厚みを不特定に10箇所測定して、その平均を厚みとした。
(2)透気度(ガーレ値)
JIS P8117に準拠して透気度(秒/100ml)を測定した。
(3)F3値
JIS K7127に準じて、温度23℃の条件でフィルムの縦方向についてインテスコ社製の万能試験機を用いて引張測定を行った。フィルムは短冊状、フィルム縦方向に200mm、横方向に5mmの試験片に切出した後、チャック間150mmとして、フィルム縦方向について引張速度200mm/minで伸長させた際の、3%伸長時の引張弾性率を測定した。
(4)空孔率
空孔率はフィルム中の空間部分の割合を示す数値である。空孔率は、フィルムの実質量W1を測定し、樹脂組成物の密度と厚みから空孔率0%の場合の質量W0を計算し、それらの値から下記式に基づき算出した。
空孔率Pv(%)={(W0−W1)/W0}×100
フィルムをパーキンエルマー社製の示差走査型熱量計(DSC−7)を用いて、25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃から25℃まで冷却速度10℃/分で降温後1分間保持し、更に25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で再昇温した。再昇温時にポリプロピレンのβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)である145〜160℃にピークが検出されるか否かにより、以下のようにβ活性の有無を評価した。
○:Tmβが145℃〜160℃の範囲内に検出された場合(β活性あり)
×:Tmβが145℃〜160℃の範囲内に検出されなかった場合(β活性なし)
なお、β活性の測定は、試料量10mgで、雰囲気ガスを窒素として行った。
(6)広角X線回折測定
フィルムを縦60mm×横60mm角に切り出し、図2(A)(B)に示すように固定した。
アルミ板2枚に拘束した状態のフィルムを設定温度180℃、表示温度180℃である送風定温恒温器(ヤマト科学株式会社製、型式DKN602)に入れ3分間保持した後、設定温度を100℃に変更し、10分以上の時間をかけて100℃まで徐冷を行った。表示温度が100℃になった時点でフィルムを取り出し、アルミ板2枚に拘束した状態のまま25℃の雰囲気下で5分間冷却して得られたフィルムについて、以下の測定条件で、中央部の40mmφの円状の部分について広角X線回折測定を行った。
・広角X線回折測定装置:マックサイエンス社製、型番:XMP18A
・X線源:CuKα線、出力:40kV、200mA
・走査方法:2θ/θスキャン、2θ範囲:5°〜25°、走査間隔:0.05°、走査速度:5°/min
得られた回折プロファイルについて、ポリプロピレンのβ晶の(300)面に由来するピークより、β活性の有無を以下のように評価した。
○:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出された場合(β活性あり)
×:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出されなかった場合(β活性なし)
なお、フィルム片が60mm×60mm角に切り出せない場合は、中央部に40mmφの円状の穴にフィルムが設置されるように調整し、試料を作成しても構わない。
Figure 0005460025
本発明で規定する範囲内で構成された実施例の多孔性フィルムは、優れた透気特性を有し、かつシャットダウン特性を具備していることがわかった。
これに対し、熱可塑性樹脂(B)を含まない比較例1、結晶融解ピーク温度が120℃以上の樹脂を含む比較例2は、3%伸張時の引張弾性率(F3値)が共に低い結果となった。
本発明の多孔性フィルムは、優れた透気特性と弾性率を有するため、各種分野における多孔性フィルムとして用いることができる。
本発明のリチウムイオンリチウム電池用セパレータを収容しているリチウムイオン電池の一部破断斜視図である。 広角X線回折測定におけるフィルムの拘束方法を説明する図である。
符号の説明
10 リチウムイオン電池用セパレータ
20 リチウムイオン電池
21 正極板
22 負極板
31 アルミ板
32 フィルム
33 クリップ
34 フィルム縦方向
35 フィルム横方向

Claims (5)

  1. ポリプロピレン系樹脂(A)と、結晶融解ピーク温度が120℃未満である熱可塑性樹脂(B)としてポリブテン系樹脂を含有する混合樹脂層を少なくとも1層以上有し、3%伸張時の引張弾性率(F3値)が400MPa以上であり、かつβ活性を有することを特徴とする多孔性フィルム。
  2. 記熱可塑性樹脂(B)の配合量は前記ポリプロピレン系樹脂(A)100質量部に対して10質量部以上40質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の多孔性フィルム。
  3. 空孔率が30%以上60%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多孔性フィルム。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の多孔性フィルムからなることを特徴とするリチウム電池用セパレータ。
  5. 請求項4に記載のリチウム電池用セパレータが組み込まれていることを特徴とする電池。
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