JP4734396B2 - 積層多孔性フィルム、それを利用したリチウム電池用セパレータおよび電池 - Google Patents
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Description
一方、大型の二次電池はロードレベリング、UPS、電気自動車をはじめ、エネルギー/環境問題に関連する多くの分野において研究開発が進められ、大容量、高出力、高電圧および長期保存性に優れている点より非水電解液二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池の用途が広がっている。
非水電解液用の溶媒としては、より多くのリチウムイオンを存在させることができる高誘電率有機溶媒が用いられ、該高誘電率有機溶媒としてポリプロピレンカーボネートやエチレンカーボネート等の有機炭酸エステルが主に使用されている。溶媒中でリチウムイオン源となる支持電解質として、6フッ化リン酸リチウム等の反応性の高い電解質を溶媒中に溶かして使用している。
電池用セパレータの安全に寄与する特性として、シャットダウン特性(以後、「SD特性」と称す)がある。このSD特性は、100〜140℃程度の高温状態になると微細孔が閉塞され、その結果電池内部のイオン伝導が遮断されるため、その後の電池内部の温度上昇を防止できるという機能である。電池用セパレータとして使用する場合は、このSD特性を具備していることが必要である。
ここで、「BD温度」とは、本発明の積層多孔性フィルムを枠にはめてオーブンで加熱したときにフィルムが破膜する温度のうち最も低い温度をいう。
一方で、優れたSD特性の為には100℃前後の高温で適度な収縮率を有している方が望ましい。このことは寸法安定性とは背反するので、収縮率とSD特性とのバランスをとることは極めて重要である。
さらに、当該方法では、多孔膜全体に含まれている溶媒を洗浄用の有機溶媒で洗浄することにより除去しているため、有機溶媒が大量に必要となり、環境上の観点から好ましくない。
また、前記特許文献2について、当該製造方法は厳密な製造条件の制御を必要とし、かつ生産性が良いとは言い難い。例えば、多孔質化する前の積層フィルムの作成時に高いドラフト比で高次構造を制御しながら製膜を行っているが、このような高いドラフト比で安定的な製膜を行うことは非常に困難である。また、多孔構造の発現を行うためには、低温度領域と高温度領域の2段階でかつ小さい延伸速度で多段延伸を行う必要があり、延伸速度が大きく制限され、生産性が非常に悪くなる。
さらに、当該製造方法により製造されたセパレータはフィルムの流れ方向への一軸延伸で製造されるため、フィルムの流れ方向に対して垂直方向の寸法安定性が悪いだけでなく、フィルムの流れ方向に対して垂直方向の引裂きに非常に弱く、流れ方向に裂け目が生じやすいという問題点もある。
本発明において、「SD温度」とは微細孔が閉塞する最も低い温度をいい、具体的には本発明の積層多孔性フィルムを実施例に記載の方法で加熱した際に加熱後の透気度が加熱前の透気度の10倍以上になる温度のうち最も低い温度をいう。
本発明の積層多孔性フィルムにおいて、「β活性」の有無は、後述する示差走査型熱量計によりβ晶に由来する結晶融解ピーク温度が検出された場合、もしくは、後述する広角X線回折測定装置を用いた測定により、β晶に由来する回折ピークが検出された場合、β活性を有すると判断している。
前記β活性は、本発明の積層多孔性フィルムが前記A層及び前記B層のみで構成される場合、さらに他の多孔質層が積層される場合のいずれにおいても積層多孔性フィルムの状態で測定している。
さらに、前記ポリプロピレン系樹脂にβ晶核剤を配合して、前記A層が前記β活性を得ていることが好ましく、該β晶核剤の配合量は、前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.0001〜5.0質量部であることが好ましい。
前記多孔質層の1層がポリプロピレン系樹脂を主成分とするA層と、ポリエチレン系樹脂を含むB層とを有するので、従来のポリプロピレン系樹脂製の積層多孔性フィルムのBD特性を維持したまま、適切な温度範囲で孔が閉塞するSD特性を備えている。
さらに、本発明の積層多孔性フィルムは、β活性を有するので、微細孔を有し、十分な連通性を確保することができ、前記A層で強度を保持することができるので、ピン刺し強度や引裂強度などの機械的強度においても優れている。そのため、構造維持や耐衝撃性の観点からも電池用セパレータに有用である。
また、本発明の積層多孔性フィルムは、25℃での透気度が10〜1000秒/100ml以下であり、かつ、135℃で5秒間加熱後の透気度が50000秒/100ml以上であることを特徴とする。
なお、本発明において、「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含し、特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分(2成分以上が主成分である場合には、これらの合計量)は組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100%含む)を占める意を包含するものである。
また、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」を意図し、「Xより大きくYよりも小さいことが好ましい」旨の意図も包含する。
β活性は、延伸前の膜状物においてポリプロピレン系樹脂がβ晶を生成していたことを示す一指標と捉えることができる。延伸前の膜状物中のポリプロピレン系樹脂がβ晶を生成していれば、その後延伸を施すことで微細孔が形成されるため、透気特性を有する多孔性フィルムを得ることができる。
具体的には、示差走査型熱量計で積層多孔性フィルムを25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃から25℃まで冷却速度10℃/分で降温後1分間保持し、更に25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で再昇温させた際に、再昇温時にポリプロピレンのβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)が検出された場合、β活性を有すると判断している。
β活性度(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
例えば、ホモポリプロピレンの場合は、主に145℃以上160℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に160℃以上175℃以下に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。また、例えばエチレンが1〜4モル%共重合されているランダムポリプロピレンの場合は、主に120℃以上140℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に140℃以上165℃以下の範囲に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。
β活性度の上限値は特に限定されないが、β活性度が高いほど前記効果がより有効に得られるので100%に近いほど好ましい。
詳細には、ポリプロピレン系樹脂の融点を超える温度である170〜190℃の熱処理を施し、徐冷してβ晶を生成・成長させた積層多孔性フィルムについて広角X線回折測定を行い、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の(300)面に由来する回折ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出された場合、β活性が有ると判断している。
ポリプロピレン系樹脂のβ晶構造と広角X線回折測定に関する詳細は、Macromol.Chem.187,643−652(1986)、Prog.Polym.Sci.Vol.16,361−404(1991)、Macromol.Symp.89,499−511(1995)、Macromol.Chem.75,134(1964)、及びこれらの文献中に挙げられた参考文献を参照することができる。β活性の詳細な評価方法については、後述の実施例にて示す。
中でも、前記A層の樹脂組成物にβ晶核剤を添加してβ活性を得ることが特に好ましい。
β晶核剤を添加することで、より均質に効率的にポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成を促進させることができ、β活性を有する多孔質層を備えたリチウムイオン電池用セパレータを得ることができる。
まず、A層について以下に詳細に説明する。
(ポリプロピレン系樹脂の説明)
A層に含まれるポリプロピレン系樹脂としては、ホモプロピレン(プロピレン単独重合体)、またはプロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセンなどα−オレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体などが挙げられる。この中でも、積層多孔性フィルムの機械的強度の観点からはホモポリプロピレンがより好適に使用される。
アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味する。メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al(Macromolecules8,687,(1975))に準拠している。
本発明で用いるβ晶核剤としては以下に示すものが挙げられるが、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成・成長を増加させるものであれば特に限定される訳ではなく、また2種類以上を混合して用いても良い。
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分aと周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分bとからなる二成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられる。
A層には、前述のような本発明の目的やA層の特性を損なわない程度の範囲で、一般に樹脂組成物に配合される添加剤または他の成分を含んでいてもよい。前記添加剤としては、成形加工性、生産性および積層多孔性フィルムの諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂やシリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤または着色剤などの添加剤が挙げられる。具体的には、酸化防止剤として、ハロゲン化銅、芳香族アミン等のアミン系酸化防止剤、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−5メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。市販されているものとしては、「イルガノックスB225」(チバスペシャル社製)がある。他にも、「プラスチックス配合剤」のP178〜P182に記載されている紫外線吸収剤、P271〜P275に記載されている帯電防止剤としての界面活性剤、P283〜294に記載されている滑剤などが挙げられる。
次に、B層について説明する。
この結晶融解ピーク温度は、JIS K7121に準拠して、示差走査型熱量計を用いて、25℃から加熱速度10℃/分で昇温させた際の結晶融解温度のピーク値である。
MFRはJIS K7210に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定している。
石油樹脂としては、例えばC5留分を主原料とする脂肪族系石油樹脂、C9留分を主原料とする芳香族系石油樹脂、それらの共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂がある。テルペン樹脂としてはβ−ピネンからのテルペン樹脂やテルペン−フェノール樹脂が、またロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジンなどのロジン樹脂、グリセリンやペンタエリスリトールで変性したエステル化ロジン樹脂などが例示できる。脂環族飽和炭化水素樹脂及びその変性体はポリエチレン系樹脂に混合した場合に比較的良好な相溶性を示すが、色調や熱安定性といった面から石油樹脂がより好ましく、水添石油樹脂を用いることが更に好ましい。
中でも、核剤はポリエチレン系樹脂の結晶構造を制御し、延伸開孔時の多孔構造を細かくするという効果があるため好ましい。市販されているものとして、「ゲルオールD」(新日本理化社製)、「アデカ スタブ」(旭電化工業社製)、または「IRGACLEAR D」(チバ スペシャルケミカルズ社製)等が挙げられる。マスターバッチとして市販されているものとして、「リケマスター」(理研ビタミン社製)等が挙げられる。
本発明の積層多孔性フィルムの積層構成について説明する。
基本的な構成となるA層とB層が少なくとも存在すれば特に限定されるものではない。最も単純な構成がA層とB層の2層構造、次に単純な構造が両外層と中層の2種3層構造であり、これらは好ましい構成である。2種3層の形態の場合、A層/B層/A層であってもB層/A層/B層であっても構わない。また、必要に応じて他の機能を持つ層と組み合わせて3種3層の様な形態も可能である。更に層数としては4層、5層、6層、7層と必要に応じて増やしても良い。
A層とB層との積層比については、A層/B層の値が0.05〜20であることが好ましく、0.1〜10であることがより好ましく、0.3〜5であることが更に好ましい。A層/B層の値が0.05以上とすることで、A層のBD特性及び強度を十分に発揮することができる。また20以下とすることで、例えば電池に適用した時にSD特性が十分に発揮することができ、安全性を確保することができる。また、B層およびA層以外の他の層が存在する場合、他の層の厚みの合計は全体の厚み1に対して0.1〜0.5が好ましく、0.1〜0.3がより好ましい。
積層多孔性フィルムの形態としては平面状、チューブ状の何れであってもよいが、製品として数丁取りが可能であることから生産性がよく、さらに内面にコートなどの処理が可能できること等の観点から、平面状がより好ましい。
本発明の積層多孔性フィルムの厚みは、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましい。一方で下限として、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上が更に好ましい。電池用セパレータとして使用する場合、厚みが50μm以下であれば、積層多孔性フィルムの電気抵抗が小さくできるので電池の性能を十分に確保することができる。また、厚みが5μm以上あれば、実質的に必要な電気絶縁性を得ることができ、例えば大きな電圧がかかった場合にも短絡しにくく安全性に優れる。
本発明の積層多孔性フィルムのSD温度は、下限として100℃以上が好ましく、110℃がより好ましく、120℃以上が更に好ましい。一方で上限として140℃以下が好ましい。100℃以下でSD特性が発現してしまうと、例えば本発明の積層多孔性フィルムをリチウムイオン電池用セパレータとして使用し、その電池が夏場に自動車車内に放置された場合に、場所によっては100℃近くまで上昇する可能性があるので、この状態で電池としての機能しなくなることは好ましくない。一方、140℃より高い温度の場合は、電池として安全性を確保するという意味では不十分である。
SD温度を調整する手段としては、B層に含まれる熱可塑性樹脂として希望するSD温度に近い結晶融解ピーク温度を有する熱可塑性樹脂を選択する、B層の層比を増加させるなどの手段が有効である。
BD温度を調整する手段としては、A層の層比を増加させるなどの手段が有効である。
本発明の積層多孔性フィルムは、25℃での透気度は1000秒/100ml以下であることが必要であり、好ましくは950秒/100ml以下、より好ましくは900秒/100ml以下である。1000秒/100ml以下とすることで、リチウムイオン電池用セパレータとして使用する場合、室温使用時に優れた電池性能を有することができる。
また、積層多孔性フィルムの25℃での透気度が低いということは、リチウムイオン電池用セパレータとして使用時に電荷の移動が容易であることを意味し、電池性能に優れるため好ましい。
一方、下限については10秒/100ml以上であることが好ましく、より好ましくは50秒/100ml以上、更に好ましくは100秒/100ml以上である。25℃での透気度は10秒/100ml以上あれば、リチウムイオン電池用セパレータとして使用時に内部短絡等のトラブルを回避することができる。
本発明の積層多孔性フィルムは、リチウムイオン電池用セパレータとして使用時にSD特性が発現することが重要である。これより、135℃で5秒間加熱した後の透気度は50000秒/100ml以上であることが必要であり、好ましくは75000秒/100ml以上である。135℃で5秒間加熱後の透気度抗が50000秒/100ml以上とすることで、電池が熱暴走を起こした場合に空孔が速やかに閉塞するため、電池の破裂等のトラブルを回避することができる。
135℃で5秒間加熱後の透気度を50000秒/100ml以上とするためには、孔径や空孔率に左右される。以下の内容に限られないが、例えば、ポリエチレン系樹脂に化合物(X)を加え、前記化合物(X)の種類や配合量を調整すること、若しくは、結晶核剤を添加してポリエチレン系樹脂の結晶を微小化することによって、135℃で5秒間加熱後の透気度を制御することができる。
また、製造方法において、延伸条件を調整することによって、135℃で5秒間加熱後の透気度を50000秒/100ml以上とすることが可能である。
空孔率は多孔構造を規定する為の重要なファクターであって、フィルム中の空間部分の割合を示す数値である。本発明の積層多孔性フィルムにおいては、空孔率が15%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上、特に好ましくは40%以上である。一方で、上限については80%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、65%以下が更に好ましい。空孔率が15%以上であれば、連通性を十分に確保し透気特性に優れた積層多孔性フィルムとすることができる。また、空孔率が80%以下であれば、積層多孔性フィルムの機械的強度を十分に保持することができ、ハンドリングの観点からも好ましい。
本発明の積層多孔性フィルムの特徴の一つとして、バランスの良い収縮率を示す。
一方、収縮率STD2の下限については2%以上が好ましく、より好ましくは2.3%以上である。SD特性を示すにはある程度の熱収縮が必要であるため、収縮率STD2が2%以上あれば、十分なSD特性を有することができる。
一方、前記収縮率SMD2の下限については0%以上が好ましい。収縮率SMD2が0%未満、すなわち膨張した場合、巻物の状態で保存時に巻きズレが起こり、シワや折れが発生するため好ましくない。
寸法安定性の為にはMD及びTDとも収縮率が小さい方が好ましいが、SD特性を発現する為にはある程度の熱収縮が必要であり、各方向の収縮率はより等方的であることが必要である。前記SMD2/STD2が0.1未満であればTDの収縮率が大きくなり過ぎ、3.0より大きいと、MDの収縮率が大きくなり過ぎるため、いずれの場合も異方性が大きくなり好ましくない。
一方、前記収縮率STD1の下限は、0%以上が好ましい。収縮率STD1が0%未満、すなわち膨張した場合、たとえば巻物の状態で保存時に巻きズレが起こり、シワや折れが発生するため好ましくない。
一方、前記収縮率SMD1の下限は、0%以上が好ましい。収縮率SMD1が0%未満、すなわち膨張した場合、たとえば巻物の状態で保存時に巻きズレが起こり、シワや折れが発生するため好ましくない。
一方、前記収縮率STD3の下限は、0%以上が好ましい。収縮率STD3が0%未満、すなわち膨張した場合、巻物の状態で保存した場合に巻きズレが起こり、シワや折れが発生するため好ましくない。
一方、前記収縮率SMD3の下限は0%以上が好ましい。前記収縮率SMD3が0%未満、すなわち膨張した場合、巻物の状態で保存した場合に巻きズレが起こり、シワや折れが発生するため好ましくない。
積層多孔性フィルムの引張弾性率を上げる方法の一つとして、分子鎖をMDに沿って配向させる方法が上げられる。本発明の積層多孔性フィルムでは、収縮率や引張弾性率等においてバランスの良い特性を示す為に必要な分子鎖配向の度合いとして、広角X線回折測定による(−113)面の方位角(β)方向プロファイルにより、OMD/OTD(OMD:MDの積分強度、OTD:TDの積分強度)を算出する。
ここで、(−113)面は、2θ/θスキャンで得られるX線回折プロファイルにおいて、分子鎖軸方向の成分を含んだ結晶格子面であり、2θ=41°付近に得られる。また、OMD及びOTDは、後述の測定方法で記載した通り、前記(−113)面の回折ピークの頂点が得られるθ、2θに、サンプル、およびカウンターの位置を固定し、サンプルをフィルム面内で方位角(β)方向に回転した際に得られる強度分布のプロファイルから算出した積分強度である。同じサンプルにおいて、方位角に対してX線が照射されるサンプルの体積が一定であれば、前記(−113)の方位角方向の強度分布プロファイルは、フィルム面内における結晶鎖の配向分布に対応している。すなわち、OMDがフィルム面内の結晶鎖のうち、MDに配向した成分に、OTDがTDに配向した成分に対応する。例えば、OMDに比較してOTDが十分高い場合、フィルム面内の結晶鎖は、主にTDに配向していることに対応する。したがって、OMD/OTDの大小は、フィルム面内の結晶鎖がどの程度MDに配向しているかを示す尺度といえる。すなわち、高度にMDに配向したフィルムについては、OMD/OTDは高くなり、主にTDに配向しているフィルムについては、OMD/OTDは逆に小さくなる。
次に本発明の積層多孔性フィルムの製造方法について説明するが、本発明はかかる製造方法により製造される積層多孔性フィルムのみに限定されるものではない。
本発明の積層多孔性フィルムの製造方法は、多孔化と積層の順序によって次の3つに大別される。
(a)ポリプロピレン系樹脂を主成分とするA層の多孔性フィルム(以後、「多孔性フィルムPP」と称する)と、ポリエチレン系樹脂を含むB層の多孔性フィルム(以後、「多孔性フィルムPE」と称する)を作製し、ついで少なくとも多孔性フィルムPPと多孔性フィルムPEを積層する方法。
(b)ポリプロピレン系樹脂を主成分とする膜状物(以後、「無孔膜状物PP」と称する)とポリエチレン系樹脂を含む膜状物(以後、「無孔膜状物PE」と称する)の少なくとも2層からなる積層無孔膜状物を作製し、ついで該無孔膜状物を多孔化する方法。
(c)ポリプロピレン系樹脂を主成分とするA層とポリエチレン系樹脂を含むB層の2層のうちいずれか1層を多孔化したのち、もう1層の無孔膜状物と積層し、多孔化する方法。
前記の方法としては、無孔膜状物PPと無孔膜状物PEをそれぞれ作製し、無孔膜状物PPと無孔膜状物PEをラミネートや接着剤等で積層した後に多孔化する方法、または、共押出で積層無孔膜状物を作製した後、多孔化する方法などが挙げられる。
前記(c)の方法としては、多孔性フィルムPPと無孔膜状物PE、または無孔膜状物PPと多孔性フィルムPEをラミネートする方法や接着剤等で積層化する方法が挙げられる。
本発明においては、その工程の簡略さ、生産性の観点から(b)の方法が好ましく、共押出を用いる方法がより好ましい。
すなわち、A層はβ活性を有する場合、延伸することにより微細孔を容易に形成することができる。一方、B層を多孔化する方法としては、例えば延伸法、相分離法、抽出法、化学処理法、照射エッチング法、発泡法、またはこれらの技術の組み合わせなど公知の方法を用いることができる。なかでも本発明においては延伸法を用いることが好ましい。
前記相分離法は、転換法またはミクロ相分離法とも呼ばれる技術で、高分子溶液の相分離現象に基づき細孔を形成する方法である。具体的には、(a)高分子の相分離により微細孔を形成する方法、(b)重合時に微細孔を形成させながら多孔化する方法に大別される。前者の方法としては溶媒を用いる溶媒ゲル化法と熱溶融急冷凝固法があり、いずれを用いてもよい。
高分子添加剤を用いた例としては、有機溶媒に対する溶解性が異なる2種のポリマーを用いて無孔層または無孔膜状物を形成し、前記2種のポリマーのうち一方のポリマーのみが溶解する有機溶媒に浸漬して該一のポリマーを抽出する方法が挙げられる。より具体的にはポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルからなる無孔層または無孔膜状物を形成し、アセトンおよびn−ヘキサンを用いてポリ酢酸ビニルを抽出する方法、または、ブロックあるいはグラフト共重合体に親水性重合体を含有させて無孔層または無孔膜状物を形成し、水を用いて親水性重合体を除去する方法などが挙げられる。
前記物質としては、例えばステアリルアルコールもしくはセリルアルコールなどの高級脂肪族アルコール、n−デカンもしくはn−ドデカンなどのn−アルカン類、パラフィンワックス、流動パラフィンまたは灯油等が挙げられ、これらはイソプロパノール、エタノール、ヘキサンなどの有機溶媒で抽出できる。また、前記物質としてショ糖や砂糖などの水可溶性物質も挙げられ、これらは水で抽出できるため環境への負担が少ないという利点がある。
前記照射エッチング法は中性子線またはレーザーなどを照射して微小な穴を形成させる方法である。
前記融着法は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリマー微細パウダーを用い、成形後に前記ポリマー微細パウダーを焼結する方法である。
前記発泡法としては機械的発泡法、物理的発泡法、化学的発泡法等があり、本発明においてはいずれも用いることができる。
積層無孔膜状物の延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法などの手法があり、これらを単独あるいは2つ以上組み合わせて二軸延伸を行うことが好ましい。
使用するTダイのギャップは、最終的に必要なフィルムの厚み、延伸条件、ドラフト率、各種条件等から決定されるが、一般的には0.1〜3.0mm程度、好ましくは0.5〜1.0mmである。0.1mm未満では生産速度という観点から好ましくなく、また3.0mmより大きければ、ドラフト率が大きくなるので生産安定性の観点から好ましくない。
キャストロールによる冷却固化温度は、本発明において非常に重要であり、延伸前の膜状物中のβ晶を生成・成長させ、膜状物中のβ晶の比率を調整することができる。キャストロールの冷却固化温度は好ましくは80〜150℃、より好ましくは90〜140℃、更に好ましくは100〜130℃である。冷却固化温度を80℃以上とすることで冷却固化させた膜状物中のβ晶の比率を十分に増加させることができ好ましい。また、150℃以下とすることで押出された溶融樹脂がキャストロールへ粘着し巻き付いてしまうなどのトラブルが起こりにくく、効率よく膜状物化することが可能であるので好ましい。
延伸前の膜状物のβ晶比率は、示差走査型熱量計を用いて、該膜状物を25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温させた際に、検出されるポリプロピレンのα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)とβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)を用いて下記式で計算される。
β晶比率(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
また、縦延伸倍率は好ましくは2〜10倍、より好ましくは3〜8倍、更に好ましくは4〜7倍である。前記範囲内で縦延伸を行うことで、延伸時の破断を抑制しつつ、適度な空孔起点を発現させることができる。一方、横延伸での延伸温度は概ね80〜150℃、好ましくは90〜140℃である。また、横延伸倍率は好ましくは1.1〜10倍、より好ましくは1.2〜8倍、更に好ましくは1.4〜7倍である。前記範囲内で横延伸することで、縦延伸により形成された空孔起点を適度に拡大させ、微細な多孔構造を発現させることができる。前記延伸工程の延伸速度としては、500〜12000%/分が好ましく、1500〜10000%/分がより好ましく、2500〜8000%/分であることが更に好ましい。
次に、本発明の前記積層多孔性フィルムを電池用セパレータとして収容している非水電解液電池について、図1に参照して説明する。
正極板21、負極板22の両極は電池用セパレータ10を介して互いに重なるようにして渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体としている。この渦巻き状に巻回する際、電池用セパレータ10は厚みが5〜40μmであることがなかでも好ましく、5〜30μmであることが特に好ましい。厚みを5μm以上にすることにより電池用セパレータが破れにくくなり、40μm以下にすることにより所定の電池缶に捲回して収納する際電池面積を大きくとることができ、ひいては電池容量を大きくすることができる。
なかでも、エチレンカーボネート1質量部に対してメチルエチルカーボネートを2質量部混合した溶媒中に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.0mol/Lの割合で溶解した電解質が好ましい。
負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料としてはリチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などを用いることができる。
次に実施例および比較例を示し、本発明の積層多孔性フィルムについて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、プライムポリプロ F300SV、MFR:3g/10分)100質量部に対し、酸化防止剤(チバ スペシャルティケミカルズ社製、イルガノックスB225)0.2重量部、及びβ晶造核剤として、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボン酸アミド0.2質量部を加え、東芝機械株式会社製の同方向二軸押出機(口径40mmφ、L/D=32)を用いて270℃にて溶融混練してペレット状に加工した樹脂組成物A1を得た。
また ポリエチレン系樹脂として、高密度ポリエチレン(プライムポリマー社製、Hi−ZEX3300F、密度:0.950g/cm3、MFR:1.1g/10分)80質量部に、マイクロクリスタリンワックス(日本精蝋社製、Hi−Mic1090)20質量部、及び核剤としてジベンジリデンソルビトール(新日本理化社製、ゲルオールD)0.2重量部加え、同型の同方向二軸押出機を用いて230℃にて溶融混練してペレット状に加工した樹脂組成物B1を得た。
樹脂組成物A1およびB1を別々の押出機にて200℃で押出し、2種3層のフィードブロックを通じて多層成型用のTダイを用いて共押出し、延伸後の膜厚比率がA1/B1/A1=3/1/3となるように積層させた後、125℃のキャストロールで冷却固化させて、厚さ80μmの積層無孔膜状物を作製した。
前記積層無孔膜状物を110℃でMDに5倍、次いで110℃でTDに2.4倍に逐次二軸延伸した後、125℃でTDに22%弛緩して積層多孔質フィルムを得た。
得られた積層多孔性フィルムの諸特性の測定および評価を行い、その結果を表1にまとめた。
樹脂組成物A1およびB1を実施例1と同様に積層させた後、130℃のキャストロールで冷却固化させて、厚さ80μmの積層無孔膜状物を作製した。
前記積層無孔膜状物を、93℃でMDに3.6倍、次いで98℃でTDに2.6倍に逐次二軸延伸した後、125℃でTDに18%弛緩して積層多孔質フィルムを得た。
得られた積層多孔性フィルムの諸特性の測定および評価を行い、その結果を表1にまとめた。
樹脂組成物A1およびB1を実施例1と同様に積層させた後、131℃のキャストロールで冷却固化させて、厚さ80μmの積層無孔膜状物を作製した。
前記積層無孔膜状物を、98℃でMDに3.6倍、次いで108℃でTDに2倍に逐次二軸延伸した後、125℃でTDに19%弛緩して積層多孔質フィルムを得た。
得られた積層多孔性フィルムの諸特性の測定および評価を行い、その結果を表1にまとめた。
延伸倍率をTDに2.2倍延伸した後、125℃でTDに15%弛緩した以外は、実施例1と同様に行った。
得られた積層多孔性フィルムの諸特性の測定および評価を行い、その結果を表1にまとめた。
積層多孔性フィルムの断面を切り出し、走査型電子顕微鏡(日立製作所社製、S−4500)にて観察し、その層構成及び厚みから層比を測定した。
(2)厚み
1/1000mmのダイアルゲージにて、面内の厚みを不特定に30箇所測定しその平均を厚みとした。
(3)空孔率
フィルムの実質量W1を測定し、樹脂組成物の密度と厚みから空孔率0%の場合の質量W0を計算し、それらの値から下記式に基づき算出した。
空孔率(%)={(W0−W1)/W0}×100
(4)40℃及び105℃における収縮率
積層多孔性フィルムを測定方向に150mm、測定方向に対して垂直方向に15mmの大きさに切り、測定方向に沿って100mmの間隔で標線を引き、あらかじめ予熱したベーキング試験装置(大栄科学精器製作所製、DK−1M)の中に吊るした。1時間後サンプルを取出し、室温まで放冷した後、サンプルの標線間の長さを金属スケールで測定し、加熱前後の変化を収縮率とした。
(5)150℃における収縮率
積層多孔性フィルムを60mmx60mmの大きさに切り、標線を50mmx50mmの間隔で引き、測定サンプルとした。これを面積100mmx100mm、厚み5mmのガラス板に挟み、あらかじめ予熱したベーキング試験装置(大栄科学精器製作所製、DK−1M)の中に入れた。1時間後サンプルを取出し、ガラスに挟んだまま室温まで放冷した後、サンプルの標線間の長さを金属スケールで測定し、加熱前後の変化を収縮率とした。
(6)25℃での透気度
25℃の空気雰囲気下にて、JIS P8117に準拠して透気抵抗(秒/100ml)を測定した。測定には、デジタル型王研式透気度専用機(旭精工社製)を用いた。
(7)135℃で5秒間加熱後の透気度
積層多孔性フィルムを縦60mm×横60mm角に切り出し、図2(A)に示すように中央部にφ40mmの円状の穴を空けたアルミ板(材質:JIS A5052、サイズ:縦60mm、横60mm、厚さ1mm)2枚の間にはさみ、図2(B)に示すように周囲をクリップ(コクヨ社製、ダブルクリップ「クリ−J35」)で固定した。次に、グリセリン(ナカライテスク社製、1級)を底面から100mmとなるまで満たした、135℃のオイルバス(アズワン社製、OB−200A)の中央部に、アルミ板2枚で固定された状態のフィルムを浸漬し、5秒間加熱した。加熱後直ちに、別途用意した25℃のグリセリンを満たした冷却槽に浸漬して5分間冷却した後、2−プロパノール(ナカライテスク社製、特級)、アセトン(ナカライテスク社製、特級)で洗浄し、25℃の空気雰囲気下にて15分間乾燥した。この乾燥後のフィルムの透気度を前記(6)の方法に従い測定した。
(8)引張弾性率
測定には、引張圧縮試験機(インテスコ社製、200X型)を用いた。試験片としては、積層多孔性フィルムをMDに長さ200mm、TDに幅5mmで切り出したものを使用した。試験片のチャック間距離150mm、クロスヘッドスピード5mm/minの条件で引張した。チャック間が3%伸張したときロードセルにかかる負荷より、次の式から引張弾性率を求めた。サンプルの厚みは3ヶ所測定した平均値から求めた。
引張弾性率(MPa)={負荷(kg)×9.8(m/s2)/伸張距離(mm)}/断面積(mm2)×チャック間距離(mm)
5点測定した引張弾性率の平均値を引張弾性率とした。
フィルムをパーキンエルマー社製の示差走査型熱量計(DSC−7)を用いて、25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃から25℃まで冷却速度10℃/分で降温後1分間保持し、更に25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で再昇温した。再昇温時にポリプロピレンのβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)である145℃〜160℃にピークが検出されるか否かにより、以下のようにβ活性の有無を評価した。
○:Tmβが145℃〜160℃の範囲内に検出された場合(β活性あり)
×:Tmβが145℃〜160℃の範囲内に検出されなかった場合(β活性なし)
なお、β活性の測定は、試料量10mgで、窒素雰囲気下にて行った。
フィルムを縦60mm×横60mm角に切り出し、図2(A)(B)に示すように固定した。
アルミ板2枚に拘束した状態のフィルムを設定温度180℃、表示温度180℃である送風定温恒温器(ヤマト科学株式会社製、型式DKN602)に入れ3分間保持した後、設定温度を100℃に変更し、10分以上の時間をかけて100℃まで徐冷を行った。表示温度が100℃になった時点でフィルムを取り出し、アルミ板2枚に拘束した状態のまま25℃の雰囲気下で5分間冷却して得られたフィルムについて、以下の測定条件で、中央部がφ40mmの円状の部分について広角X線回折測定を行った。
・広角X線測定装置:マックサイエンス社製 型番XMP18A
・X線源:CuKα線、出力:40kV、200mA
・走査方法:2θ/θスキャン、2θ範囲:5°〜25°、走査間隔:0.05°、走査速度:5°/min
得られた回折プロファイルについて、ポリプロピレンのβ晶の(300)面に由来するピークより、β活性の有無を以下のように評価した。
○:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出された場合(β活性あり)
×:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出されなかった場合(β活性なし)
なお、フィルム片が60mm×60mm角に切り出せない場合は、中央部にφ40mmの円状の穴にフィルムが設置されるように調整し、試料を作成しても構わない。
広角X線回折測定(ディフラクトメーター法)により、2θ=41°付近に観測される(−113)面の回折ピークについて、下記の測定条件下で円周方向(方位角(β)方向)の強度分布を測定した。
・ 広角X線測定装置:マックサイエンス社製 型番XMP18A
・ X線源:CuKα線
・ 出力:40kV、20mA
・ 2θ/θ測定:2θ範囲:35°〜55°、走査間隔:0.05°、走査速度:1.5°/min
・ 配向測定:2θ=41°(固定)、β測定範囲0〜180°、0.5°ステップ走査速度:1.5°/min
・ 光学系:理学電機(株)製ピンホール光学系(2mmφ)
・ ゴニオメーター:RINT200 縦型ゴニオメーター
・ 検出器:シンチレーションカウンター
・ 発散スリット:2mmφ、1°
・ 受光スリット:4mmφ
・ 散乱スリット:1mmφ
・ 測定方法:反射法
・ 試料台:極点用多目的試料台
1.フィルムの方向を揃えて、厚みが1mm程度になるよう重ね合わせて切り出し、端をボンドで固定して測定に用いた。
2.まず、β=0°をTDに固定し、前記条件で2θ/θスキャンする。次に、2θ=41°付近のピークの頂点となるθ、2θに、サンプル、およびカウンターの位置を固定する。引き続き、サンプルをβ方向に前記条件でスキャンし、目的のX線強度分布を得た。
3.得られたβ方向プロファイルを用い、下記の手法で縦方向の積分強度(OMD)、横方向の積分強度(OTD)を求めた。
3−1 0〜180°のβの範囲において、データ回析プログラムの加重平均法にて自動でスムージングを行い、最低強度を通るベースラインを引いた。
3−2 それぞれ下記のβの範囲でベースラインとX線強度曲線に囲まれる部分の面積として、積分強度OMD、OTDを算出した。
OMD:45≦β≦135°、OTD:0≦β≦45°及び135≦β≦180°
3−3 これより、OMD/OTDを算出し、得られた値をフィルム面内における結晶鎖の配向バランスの尺度とした。
本発明で規定する範囲内で構成された実施例の積層多孔性フィルムは、本発明で規定する以外の範囲で構成された比較例のフィルムに比し優れた寸法安定性及びSD特性を有することがわかる。
一方、比較例1から収縮率の比SMD2/STD2の値が大きい場合には、SD特性を発現しないことがわかる。また、比較例2から、SD特性を発現しても寸法安定性が不十分であり、内部短絡等の電池の安全上の問題が生じる。
なお、実施例の中でも、引張弾性率の観点から実施例1がより好ましい態様である。
20 リチウムイオン電池
21 正極板
22 負極板
31 アルミ板
32 フィルム
33 クリップ
34 フィルム縦方向
35 フィルム横方向
Claims (10)
- ポリプロピレン系樹脂を主成分とするA層と、ポリエチレン系樹脂を含むB層とを有し、かつ、β活性を有する積層多孔性フィルムであり、
1)当該積層多孔性フィルムの流れ方向に対して垂直方向(TD)において、105℃で1時間加熱後の収縮率STD2が10%以下
2)当該積層多孔性フィルムの流れ方向(MD)、及び、MDに対して垂直方向(TD)における105℃で1時間加熱後の収縮率の比SMD2/STD2が、0.1〜3.0
であることを特徴とする積層多孔性フィルム。 - 前記積層多孔性フィルムの流れ方向に対して垂直方向(TD)において、40℃で1時間加熱後の収縮率STD1が1%未満であることを特徴とする請求項1に記載の積層多孔性フィルム。
- 前記積層多孔性フィルムの流れ方向に対して垂直方向(TD)において、150℃で1時間加熱後の収縮率STD3が、25%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積層多孔性フィルム。
- 前記積層多孔性フィルムの流れ方向(MD)において、
1)40℃で1時間加熱後の収縮率SMD1が1%未満
2)105℃で1時間加熱後の収縮率SMD2が10%以下
であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層多孔性フィルム。 - 前記積層多孔性フィルムの流れ方向(MD)において、150℃で1時間加熱後の収縮率SMD3が、18%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層多孔性フィルム。
- 前記積層多孔膜フィルムの流れ方向(MD)、及び、MDに対して垂直方向(TD)において、広角X線回折測定より求められる分子配向の比OMD/OTDが5以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層多孔性フィルム。
- 前記B層に、変性ポリオレフィン樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂若しくはその変性体、エチレン系共重合体、またはワックスから選ばれる化合物(X)のうち少なくとも1種が含まれていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層多孔性フィルム。
- 25℃での透気度が10〜1000秒/100mlであり、かつ、135℃で5秒間加熱後の透気度が50000秒/100ml以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の積層多孔性フィルム。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層多孔性フィルムからなることを特徴とするリチウム電池用セパレータ。
- 請求項9に記載のリチウム電池用セパレータが組み込まれていることを特徴とする電池。
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