JP5399749B2 - プロトンポンプ阻害剤を含有する被覆微粒子 - Google Patents

プロトンポンプ阻害剤を含有する被覆微粒子 Download PDF

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Description

本発明は、収率良く製造され、良好な薬剤放出特性を有する、口腔内崩壊錠の製造に好適なベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤の被覆微粒子およびその製造方法に関する。さらに本発明は、保存安定性に優れたベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤の口腔内崩壊錠に関する。
ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤は、その強力な胃酸分泌抑制作用により、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの治療剤として有用であり、広く使用されている。現在臨床応用されている経口用製剤は、腸溶錠もしくはカプセル剤が主であるが、近年、高齢化社会の到来や患者のコンプライアンス向上のため、水なしでも服用可能な口腔内崩壊錠を要望する声が高まっている。しかしながら、ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤は、酸性条件下では極めて不安定な化合物であり、特に胃酸と接触すると速やかに分解されるため、製剤中の薬物の安定性を確保するとともに、腸内では薬物が良好に放出されて薬効が十分発現するよう、種々の製剤学的工夫が提案されており、例えば以下のような技術が知られている。
特許文献1には、マグネシウムおよび/またはカルシウムの塩基性無機塩を薬物に均一に接触させることにより安定化を図った組成物が開示されている。
特許文献2には、特定のアルカリ化合物と薬物を含有する核部分に1層以上の不活性な中間層を被覆し、さらにその上に腸溶皮膜を被覆した経口用製剤が開示されている。
上記の技術は、腸溶錠やカプセル剤に応用する場合は薬物を十分に安定化することができるが、口腔内崩壊錠の場合、服用時の口当たりなどを考慮すると、平均粒子径が約300〜400μm程度の腸溶被覆微粒子中に薬物を封入しなければならず、そうすると薬物が酸性環境に接触する可能性が必然的に増加する上、打錠時の衝撃により腸溶被覆微粒子の腸溶皮膜が多少なりとも損なわれるため、上記技術のみでは十分な薬物安定化効果を得ることができない。さらなる技術改良が必要である。
特許文献3には、ナトリウムまたはカリウムの水酸化物もしくは炭酸塩、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE、アルギニンアスパラギン酸塩、ヒドロキシプロピルセルロースおよびクロスポビドンから選ばれる1種以上を配合することにより安定化される組成物が開示されている。
特許文献4には、クロスポビドンと水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムを配合する安定化法が開示されている。
しかしながら、特許文献3および4に記載された腸溶錠は、40℃、75%RHの環境下で1ヶ月保存した場合、薬物含量の大幅な低下や錠剤の変色が観察されていることから、腸溶錠よりもさらに十分な保存安定性を確保する必要のある口腔内崩壊錠用被覆微粒子へ応用可能であるとは考えにくい。
ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤の口腔内崩壊錠として、唯一、臨床応用されているタケプロンOD錠(有効成分、ランソプラゾール)の製剤設計は、以下の文献により紹介されている。
特許文献5には、酸に不安定な生理活性物質を10重量%以上含有する組成物が腸溶性被覆層で被覆された、平均粒径400μm以下である細粒および添加剤を含有する口腔内崩壊錠が開示されているが、その腸溶性細粒は、糖を主成分とする核粒子に薬物を含む水性分散液を噴霧して製造されるため、製造工程中に核粒子の割れや造粒粒子の凝集が発生しやすく、一定の品質の造粒粒子を高収率で製造することは困難である。
非特許文献1には、乳糖水和物を主成分とする球形の微粒子を核とし、ランソプラゾール等を含む水性分散液を噴霧して薬物層をコーティングした後、耐胃液性を確保すべく中間層1層および腸溶皮膜層を3重に被覆して製造されたランソプラゾール含有口腔内崩壊錠が開示されているが、上記特許文献5と同様、一定の品質の腸溶性微粒子を高収率で製造することは困難と考えられる。
上記の通り、ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤を含有する口腔内崩壊錠用被覆微粒子の安定化技術は未だ十分に確立されたとは言えず、また、口腔内崩壊錠用被覆微粒子を高品質かつ高収率で製造することは困難であった。
そこで、良好な薬物放出特性および保存安定性を有するのみならず、収率良く製造されうるベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤の口腔内崩壊錠用被覆微粒子、およびその製造方法の確立が求められている。
特開昭62−277322号公報 特開昭62−258316号公報 特開2000−355540号公報 国際公開第01/028559号パンフレット 特開2000−281564号公報
Chem.Pharm.Bull., 51(9), 1029-1035 (2003)
本発明は、極めて収率よく製造され、良好な薬物放出特性を有する、口腔内崩壊錠の製造に好適なベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤の被覆微粒子およびその製造方法を提供すること、さらに、優れた保存安定性を有するベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤の口腔内崩壊錠を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、驚くべきことに、球形結晶セルロース粒子上に、ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤と平均粒子径3〜10μmの微粉状クロスポビドンを含む薬物層を被覆した後、不活性中間層および腸溶皮膜層を被覆して得られる被覆微粒子が、製造工程中に何ら問題が発生することなく収率良く製造されること、所定の条件下で効率よく薬物を放出すること、さらに前記被覆微粒子を含む口腔内崩壊錠が保存安定性に優れることを発見し、本願発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の特徴は以下のとおりである。
〔1〕以下の(a)〜(d)からなるベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤を含有する被覆微粒子。
(a)球形結晶セルロース粒子、
(b)ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤および微粉状クロスポビドンを含んでなる、前記(a)上の薬物層、
(c)不活性中間層、および
(d)腸溶皮膜層
〔2〕微粉状クロスポビドンの平均粒子径が3〜10μmである、請求項1記載の被覆微粒子。
〔3〕前記(b)薬物層がさらにアルカリ化合物を含む、請求項1ないし2記載の被覆微粒子。
〔4〕アルカリ化合物が、メグルミン、L−アルギニン、酸化マグネシウム、無水リン酸水素カルシウム、炭酸マグネシウム、グリセロリン酸カルシウムおよび水酸化アルミニウム・炭酸ナトリウム共沈物からなる群から選択される、請求項3記載の被覆微粒子。
〔5〕ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤がオメプラゾール、ラベプラゾール、ランソプラゾールまたはそれらの生理学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1ないし4記載の被覆微粒子。
〔6〕(a)球形結晶セルロース粒子、(b)ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤および微粉状クロスポビドンを含む前記(a)上の薬物層、(c)不活性中間層および(d)腸溶皮膜層からなるベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤を含有する被覆微粒子の製造方法であって、ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤および微粉状クロスポビドンを含む水性分散液を球形結晶セルロース粒子に噴霧して薬物層を形成した後、不活性中間層および腸溶皮膜層を被覆してなる、前記被覆微粒子の製造方法。
〔7〕請求項1ないし5記載の被覆微粒子を含むことを特徴とする、口腔内崩壊錠。
本発明によれば、高収率で製造され、良好な薬物放出特性を有する、口腔内崩壊錠に好適なベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤含有被覆微粒子およびその製造方法が提供される。さらに、該被覆微粒子を含み、優れた保存安定性を有する口腔内崩壊錠が提供される。
以下、本発明について詳細に説明する。
(本発明の被覆微粒子の構成成分)
本発明では、ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤であるオメプラゾール、ラベプラゾール、ランソプラゾールまたはそれらの生理学的に許容される塩が好適に使用される。薬物の含有量は、被覆微粒子の全重量に対して、好ましくは5〜15重量%、さらに好ましくは6〜12重量%である。
本発明で使用される「球形結晶セルロース粒子」は、球形の形状を有するものであれば特に限定されないが、口腔内崩壊錠用の被覆微粒子を製造するためには、平均粒子径が50〜300μmのものが好ましく、旭化成ケミカルズの製品(商品名セルフィア CP−102)が特に好ましい。その含有量は、被覆微粒子の全重量に対して、好ましくは5〜15重量%、さらに好ましくは9〜12重量%である。
本発明で使用される「微粉状クロスポビドン」としては、平均粒子径が3〜10μmの範囲を有するものであれば特に限定されない。BASF社の製品(商品名Kollidon CL−M)が好適であるが、より大きな平均粒子径を有するクロスポビドンを常法により10μm以下に粉砕して使用してもよい。被覆微粒子中の微粉状クロスポビドンの含有量は、1〜10重量%が好ましく、1.5〜6重量%がさらに好ましい。
ここで、本発明において、平均粒子径とは、気流式分散器を用いる乾式法に基づいて測定した粒度分布における50%累積粒径を表す。
本発明において、薬物層に含まれてもよいアルカリ化合物としては、製薬学的に許容しうる化合物の中から1種もしくは2種以上を適宜選択して使用することができるが、好ましくはメグルミン、L−アルギニン、グリセロリン酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、カラギーナン、酢酸ナトリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、無水リン酸水素カルシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミナ・マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、含水二酸化ケイ素または水酸化アルミニウム・炭酸ナトリウム共沈物(商品名クムライト、協和化学工業)である。被覆微粒子中のアルカリ化合物の含有量は、1〜20重量%が好ましく、2〜15重量%がより好ましい。
薬物層は、さらに結合剤を含んでもよい。好ましい結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒプロメロースなどが挙げられるが、ヒドロキシプロピルセルロースが特に好ましく、被覆微粒子中5重量%未満の含有量で使用すればよい。
不活性中間層は、主として製薬学的に不活性な重合体成分から構成され、さらに、適宜、D−マンニトールなどの賦形剤やタルク他の流動化剤などを添加して、常法により、薬物層上に被覆することができる。重合体成分としては、水溶性、水不溶性のいずれでも良く、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、エチルセルロースなどが挙げられ、これらを1種もしくは2種以上組み合わせて使用してもよい。被覆微粒子中の不活性中間層の含有量は、通常、10〜20重量%程度である。
腸溶皮膜層の構成成分は特に限定されず、腸溶性ポリマー(例、セルロースアセテートフタレート、ヒプロメロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(商品名AQOAT、信越化学)、メタクリル酸コポリマーL(商品名オイドラギットL、レーム社)、メタクリル酸コポリマーLD(商品名オイドラギットL30D−55、レーム社)、メタクリル酸コポリマーS(商品名オイドラギットS、レーム社)など)、胃溶性ポリマー(ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート(商品名AEA「三共」)、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(商品名オイドラギットE、レーム社)など)、水不溶性ポリマー(エチルセルロース、アミノアルキルメタクリラートコポリマーRS(商品名オイドラギットRS、レーム社)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー(商品名オイドラギットNE30D、レーム社)など)、可塑剤(例、マクロゴール類、クエン酸トリエチル)、界面活性剤(例、ポリソルベート80)などを、必要であれば適宜組み合わせて、常法により中間層上に被覆すればよい。通常、腸溶皮膜層は、被覆微粒子中40〜70重量%程度含有される。
(被覆微粒子の製造方法)
本発明の被覆微粒子は、いわゆる流動層造粒法を用いて製造することができる。造粒機としては、流動層造粒法に使用しうるものであれば特に限定されず、例えば、流動層造粒機(フロイント工業製、フローコーターなど)、転動流動層造粒機(パウレック製、マルチプレックスなど)、微粒子コーティング・造粒装置(パウレック製、SFP)、遠心転動造粒コーティング装置(フロイント産業製、グラニュレックス)、複合型造粒コーティング装置(フロイント産業製、スパイラフロー)などが挙げられる。特に、転動流動層造粒機が好ましい。
具体的には、例えば、球形結晶セルロース粒子を転動流動層造粒機などに入れ、ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤、微粉状クロスポビドン他の薬物層構成成分を含む水性分散液を噴霧して球形結晶セルロース粒子上に薬物層をコーティングし、得られた薬物層被覆粒子を乾燥後、慣用の方法を用いて不活性中間層および腸溶被膜層をコーティングすることにより、本発明の被覆微粒子を得ることができる。被覆微粒子の平均粒子径は、口中のザラツキや違和感など服用感の観点から、250〜400μm程度であることが好ましい。
このようにして製造される本発明の被覆微粒子は、良好な薬物放出特性を有するのみならず、製造時に粒子凝集などのトラブルが発生することもなく高収率で所望の粒子が得られる。
本発明の被覆微粒子は、そのまま他の添加剤と混合した後、圧縮成形して口腔内崩壊錠を製造することができる。
あるいは、本発明の被覆微粒子に、乳糖、D−マンニトールなどの糖類や水溶性高分子類を常法によりオーバーコートした後、他の添加剤を混合して打錠してもよい。
本発明の被覆微粒子もしくはそのオーバーコートされた粒子の配合量は、口腔内崩壊錠の全重量に対し、好ましくは70重量%未満、さらに好ましくは55重量%未満である。
(口腔内崩壊錠)
本発明の被覆微粒子あるいはそのオーバーコートされた粒子以外に口腔内崩壊錠に使用される添加剤は特に限定されず、賦形剤、矯味剤、甘味剤、流動化剤、滑沢剤、香料、着色料などを適宜組み合わせて使用することができる。これら添加剤の含有量は特に限定されず、製剤学的に慣用の量を適宜選択すればよいが、本発明の微粒子もしくはそのオーバーコートされた粒子以外の添加剤の総量は、製剤重量に対して、30重量%以上が好ましく、45重量%以上がさらに好ましい。
賦形剤としては、乳糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、シクロデキストリン、トウモロコシデンプン、蔗糖、結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(商品名ノイシリン、富士化学工業)、合成ケイ酸アルミニウム、合成ケイ酸アルミニウム・ヒドロキシプロピルスターチ・結晶セルロース(商品名パーフィラー101、フロイント産業)、合成ヒドロタルサイトなどを適宜組み合わせて使用することができる。乳糖もしくはD−マンニトールが特に好ましい。
甘味剤の例としては、マンニトール、デンプン糖、還元麦芽糖水あめ、ソルビット、砂糖、果糖、乳糖、蜂蜜、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、サッカリン、甘草およびその抽出物、グリチルリチン酸、甘茶、アスパルテーム、ステビア、ソーマチン、アセスルファムK、スクラロースなどが挙げられる。
矯味剤としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、DL−リンゴ酸、グリシン、DL−アラニンなどが挙げられる。
流動化剤および/または滑沢剤としては、例えば、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、水素添加植物油、マイクロクリスタリンワックス、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
着香剤としては、ストロベリー、レモン、レモンライム、オレンジ、l−メントール、ハッカ油などが用いられる。
着色料としては、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、食用タール色素、天然色素などが挙げられる。
上記の添加剤は、粉末の状態で、あるいは、数種の添加剤の混合物を慣用の方法により造粒した後に、本発明の被覆微粒子や着香剤、滑沢剤などと混合し、圧縮成形すればよい。
圧縮成形の方法は特に限定されず、慣用の方法、例えば打錠機を用いて行うことができる。打錠機は、医薬品の製造に使用しうるものであればよく、ロータリー式打錠機や単発打錠機などが使用される。
以下、試験例、実施例、比較例および実験例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
〔試験例〕
球形結晶セルロース粒子(商品名セルフィアCP−102、旭化成ケミカルズ製)30重量部を転動流動層造粒機(パウレック社製、マルチプレックス MP−01)に入れ、ランソプラゾール30重量部、クムライト10重量部およびヒドロキシプロピルセルロース(商品名HPC(SSL)、日本曹達製)10重量部を水180重量部に分散させた液を噴霧しながらコーティングした。得られた薬物層被覆粒子を乾燥および分級後、ヒプロメロース(商品名TC−5EW、信越化学製)17重量部、酸化チタン4重量部、タルク4重量部およびD−マンニトール17重量部を含む中間層用コーティング液を用いて転動流動層造粒機により不活性中間層を被覆した。得られた不活性中間層被覆粒子を乾燥、分級後、オイドラギットL30D−55水分散液190重量部(固形分として57重量部)、オイドラギットNE30D水分散液30重量部(固形分として9重量部)、マクロゴール6000を7.2重量部、モノステアリン酸グリセリン5.6重量部、ポリソルベート80を1.2重量部、微量の三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄およびクエン酸を含む腸溶コーティング液を用いて転動流動層造粒機により腸溶皮膜層を被覆し、さらにもう1回、同様の腸溶コーティング液を用いて腸溶被覆工程を行った後、得られた粒子を乾燥、分級し、平均粒子径約300μmの被覆微粒子を得た。
また、以下の崩壊剤、クロスポビドン(商品名Polyplasdone XL−10、アイエスピー製)、カルボキシメチルスターチナトリウム(商品名Primojel、DMV製)または低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(商品名L−HPC LH−32、信越化学製)各10重量部を薬物層被覆用分散液に添加し、同様の操作によりランソプラゾールを含有する被覆微粒子を製造した。なお、クロスカルメロースナトリウム(商品名Ac−Di−Sol、旭化成ケミカルズ製)は、アルカリ化剤と反応して薬物層被覆用分散液をゲル化するため、被覆微粒子の製造が不可能であった。
得られた各被覆微粒子150重量部に結晶セルロース50重量部、トウモロコシデンプン50重量部、乳糖25重量部および甘味剤5重量部などを添加混合後、卓上型打錠機を用いて打錠し、錠剤を製造した。これらの錠剤について、日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)に従いJP2液を用いて溶出試験を行った。結果を表1に示す。
Figure 0005399749
表1から、薬物層中に崩壊剤を含まない被覆微粒子や、カルボキシメチルスターチナトリウムまたは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含む被覆微粒子を用いて製造された錠剤は、JP2液30分の薬物溶出率が50%前後と低く、120分経過後ですら80〜90%程度にとどまっているため、生体内で薬効が十分に発現しない虞がある。
それに対し、薬物層中にクロスポビドンを含む被覆微粒子を用いて製造された錠剤は、30分で70%、60分でほぼ全量の薬物を放出するという優れた薬物放出特性を示した。
上記試験例の結果に基づき、被覆微粒子の薬物層にクロスポビドンを添加することとし、一定品質の被覆微粒子が収率よく製造されるよう、さらに検討を行った。
〔実施例1〕
(被覆微粒子の製造)
球形結晶セルロース粒子(セルフィアCP−102)30重量部を転動流動層造粒機(マルチプレックス MP−01)に入れ、ランソプラゾール30重量部、クムライト10重量部、微粉状クロスポビドン(Kollidon CL−M、平均粒子径3.7μm)10重量部、およびヒドロキシプロピルセルロース(HPC(SSL))10重量部を水180重量部に分散させた液を噴霧しながらコーティングした。得られた薬物層被覆粒子を乾燥および分級後、ヒプロメロース(TC−5EW)17重量部、酸化チタン4重量部、タルク4重量部およびD−マンニトール17重量部を含む中間層用コーティング液を用いて転動流動層造粒機により不活性中間層を被覆した。得られた不活性中間層被覆粒子を乾燥、分級後、オイドラギットL30D−55水分散液190重量部(固形分として57重量部)、オイドラギットNE30D水分散液30重量部(固形分として9重量部)、マクロゴール6000を7.2重量部、モノステアリン酸グリセリン5.6重量部、ポリソルベート80を1.2重量部、微量の三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄およびクエン酸を含む腸溶コーティング液を用いて転動流動層造粒機により腸溶皮膜層を被覆し、さらにもう1回、同様の腸溶コーティング液を用いて腸溶被覆工程を行った後、得られた粒子を乾燥、分級し、平均粒子径が約300μmの本発明の被覆微粒子を得た。
(口腔内崩壊錠)
結晶セルロース(セオラスKG−802、旭化成ケミカルズ)100重量部、トウモロコシデンプン100重量部、乳糖50重量部およびアスパルテーム8重量部を混合し、乳糖水溶液を結合液として流動層造粒機により添加剤造粒物を製造した。得られた造粒物に、上記のランソプラゾール含有被覆微粒子300重量部、12重量部のノイシリンUFL2、ステアリン酸マグネシウム1.2重量部および微量の着香剤を混合後、ロータリー式打錠機を用いて打圧600kgで打錠し、直径8.5mm、重量285mgの錠剤を得た。
〔比較例1〜2〕
Kollidon CL−Mの代わりに、平均粒子径14.10μmのクロスポビドン(アイエスピー製、商品名Polyplasdone INF−10)または24.01μmのクロスポビドン(アイエスピー製、商品名Polyplasdone XL−10)を添加した以外は実施例1と同様の操作でランソプラゾールを含有する被覆微粒子、および該被覆微粒子を含む口腔内崩壊錠を製造した。

〔実験例1〕
実施例1、比較例1および比較例2の各被覆微粒子の製造工程収率や製造時のトラブルの有無を確認した。また、日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)に従ってJP2液を用いて実施例1、比較例1および比較例2で製造した口腔内崩壊錠の溶出試験を行い、HPLC法により各測定ポイントにおけるランソプラゾールの溶出量を測定した。それらの結果を表2に示す。
Figure 0005399749
上記のとおり、口腔内崩壊錠からの薬物溶出率に関しては、被覆微粒子に使用したクロスポビドンの平均粒子径に係わらず、いずれも良好な結果が得られたが、被覆微粒子製造時の造粒機への粉末付着・残留などのトラブルは、クロスポビドンの平均粒子径が大きくなるにつれて増加し、製造工程収率が顕著に低下した。それに対し、実施例1の被覆微粒子は、全くトラブルもなく、94.1%と非常に高い製造工程収率で製造することができた。
〔実施例2〕
クムライトの代わりにL−アルギニンを使用した他は実施例1と同様の操作により、ランソプラゾールを含有する被覆微粒子、および該被覆微粒子を含む口腔内崩壊錠(直径8.5mm、重量285mg)を製造した。被覆微粒子の製造時にトラブルは何ら発生せず、得られた口腔内崩壊錠の薬物溶出量は、JP1液60分で0.6%、JP2液45分で93%であり、ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤の生体内での薬効発現に必要な「耐胃液性」および「腸内での良好な薬物放出性」の両条件を満たしていた。
〔実施例3〜4〕
クムライトの代わりに炭酸マグネシウムまたはグリセロリン酸カルシウムを使用した他は実施例1と同様の操作により、ランソプラゾールの被覆微粒子、および該被覆微粒子を含む口腔内崩壊錠を製造した。いずれも何らトラブルもなく収率よく被覆微粒子が製造され、口腔内崩壊錠からの薬物放出特性も、実施例1および2と同様、良好であった。
〔実験例2〕
実施例1で製造した口腔内崩壊錠をPTPシートに封入し、乾燥剤とともにアルミピロー包装後、40℃75%RHで6ヶ月間の保存安定性試験を行い、各ポイントにおける錠剤中の主剤含量、溶出量(JP1液60分、JP2液45分)、および錠剤の崩壊時間を測定した。さらに、0、3、6ヶ月目の錠剤の色調を分光式色差計(SE−2000)を用いて測定し、錠剤の色調変化を調べた。それらの結果を表3に示す。
Figure 0005399749
上記のとおり、本発明の口腔内崩壊錠は、40℃75%RHの条件下で6ヶ月間保存した後であっても、主剤含量、JP1液での溶出性(耐胃液性)、JP2液の溶出性(腸内での薬物放出性)、および錠剤崩壊時間の全ての項目について製造当初とほとんど変化が無く、極めて良好な保存安定性を有することが判明した。また、ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤を含有する製剤は、一般に、保管期間中に変色などの外観変化が発生しがちであるのに対し、本発明の口腔内崩壊錠は、表3のとおり、40℃75%RHの条件下で6ヶ月間保管した後であっても、肉眼では判別不可能な程度の僅かな色調変化を示したのみであった。
良好な薬物放出特性を有し、口腔内崩壊錠の製造に好適なベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤の被覆微粒子、およびその製造方法が提供される。本発明の被覆微粒子は、何らトラブルも発生せず高収率で製造されるため、製造コストの低減が可能である。さらに、該被覆微粒子を含む本発明の口腔内崩壊錠は、極めて優れた保存安定性を有する。

Claims (5)

  1. 以下の(a)〜(d)からなるベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤を含有する被覆微粒子を含むことを特徴とする、口腔内崩壊錠
    (a)球形結晶セルロース粒子、
    (b)ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤および平均粒子径が3〜10μmである微粉状クロスポビドンを含んでなる、前記(a)上の薬物層、
    (c)不活性中間層、および
    (d)腸溶皮膜層
  2. 前記(b)薬物層がさらにアルカリ化合物を含む、請求項1記載の口腔内崩壊錠
  3. アルカリ化合物が、メグルミン、L−アルギニン、酸化マグネシウム、無水リン酸水素カルシウム、炭酸マグネシウム、グリセロリン酸カルシウムおよび水酸化アルミニウム・炭酸ナトリウム共沈物からなる群から選択される、請求項記載の口腔内崩壊錠
  4. ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤が、オメプラゾール、ラベプラゾール、ランソプラゾールまたはそれらの生理学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1ないし記載の口腔内崩壊錠
  5. (a)球形結晶セルロース粒子、(b)ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤および平均粒子径が3〜10μmである微粉状クロスポビドンを含んでなる前記(a)上の薬物層、(c)不活性中間層および(d)腸溶皮膜層、からなるベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤を含有する被覆微粒子を含む口腔内崩壊錠の製造方法であって、前記被覆微粒子が、平均粒子径が3〜10μmである微粉状クロスポビドンおよびベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤を含む水性分散液を球形結晶セルロース粒子上に噴霧して薬物層を形成した後、不活性中間層および腸溶皮膜層を被覆してなることを特徴とする、前記口腔内崩壊錠の製造方法。
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