JP5399146B2 - ポリプロピレン系樹脂発泡粒子および該発泡粒子からなる発泡粒子成形体 - Google Patents

ポリプロピレン系樹脂発泡粒子および該発泡粒子からなる発泡粒子成形体 Download PDF

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本発明はポリプロピレン系樹脂発泡粒子に関し、詳しくは低い加熱スチーム圧力で成形が可能であり、耐熱性を有し、かつ表面が平滑で可撓性に優れた発泡粒子成形体を得ることができるポリプロピレン系樹脂発泡粒子および該発泡粒子からなる発泡粒子成形体に関する。
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、用途に合わせて様々な形状に成形可能であり、その優れた機械的物性、耐熱性、緩衝性、加工性にバランスがとれており、各種包装材や自動車等の衝撃吸収材等に広く利用されている。
しかしながら、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子においては、ポリプロピレン系樹脂の融点が135℃以上となると、発泡粒子を型内成形する際、発泡粒子間を十分に融着させるためには高い加熱スチーム圧力が必要となる。このため成形に要する用役コストが高くなる。従来、型内成形時の加熱スチーム圧力を下げる方法としては、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子表面を低融点の樹脂で覆うなどの方法が行われている。
例えば、特許文献1には、結晶性の熱可塑性樹脂からなる発泡状態の芯層と、該熱可塑性樹脂よりも融点が低いエチレン系重合体からなり、かつ実質的に非発泡状態の被覆層で構成された発泡粒子が、型閉め圧の低い汎用成型機で成形が可能であることが記載されている。
特許文献2には、高剛性のポリプロピレン系樹脂で形成される芯層と該芯層より低融点のポリプロピレン系樹脂で形成される被覆層からなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子が開示されており、十分な剛性と耐熱性を有する発泡成形体が得られることが記載されている。
特許第3418081号 特開2004−68016号公報
しかしながら、特許文献1に記載の発泡粒子を用いて成形された発泡粒子成形体は、芯層と被覆層とが異質の樹脂の組合せで構成されているために、発泡粒子の芯層と被覆層との間で剥離が生じ易いという問題があった。また、発泡粒子は芯層と被覆層とが異質の樹脂で構成されていることからリサイクル性にも問題があった。
さらに、芯層と被覆層の融点差が大きいことから、発泡粒子の被覆層同士を融着させる温度と芯層が2次発泡する温度との間には大きな温度差があった。このため、芯層を十分に2次発泡させるために高い加熱スチーム圧で成形すると、被覆層が軟化して成形体が成形金型表面に付着してしまい、成形加工性に劣るという問題があった。
特許文献2に記載の発泡粒子を型内成形した発泡粒子成形体においては、表面平滑性が良好な成形体とするためには、高い加熱スチーム圧によって高剛性の芯層を十分に2次発泡させる必要があり、従来のポリプロピレン系樹脂発泡粒子に用いられる成形機の一般的な耐圧性能(0.4MPa)を超えてしまうという問題がある。
一方、従来の成形機の耐圧性能範囲内の加熱スチーム圧力で成形を行った場合には、発泡粒子相互間の融着には大きな問題がないが、芯層の2次発泡が不十分となり、成形体表面の粒子間に空隙が生じ表面平滑性が劣る結果となる。また、このような成形体は成形体表面に亀裂が入り易く、可撓性に課題を残すものであった。
本発明は、従来のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の加熱成形に必要とされる加熱スチーム圧力よりも、低いスチーム圧力で成形が可能であり、成形時に成形金型表面への樹脂付着がなく、発泡粒子相互間の融着性に優れ、表面が平滑であり可撓性に優れた発泡粒子成形体を得ることができるポリプロピレン系樹脂発泡粒子及び表面が平滑であり可撓性に優れるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体を提供することを目的とする。
上記の課題を達成すべく種々の観点から多角的に検討を重ねた結果、前記多層樹脂粒子を形成しているポリプロピレン系樹脂の融点や融解熱量、曲げ弾性率が特定の範囲を満足するポリプロピレン系樹脂であり、前記多層樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子が、発泡粒子相互間の融着性に優れ、低い加熱スチーム圧力で、金型への樹脂付着もなく、加熱成形が可能であり、前記発泡粒子を加熱成形して得られる発泡粒子成形体は表面が平滑で可撓性に優れたものであることが判明し、これに基づき本発明を為すに至った。
すなわち、本発明は
[1]ポリプロピレン系樹脂で形成される芯層と被覆層とからなり、前記芯層と被覆層の重量比率が99.5:0.5〜80:20である多層樹脂粒子を発泡してなる発泡芯層と、非発泡の被覆層とからなる多層発泡粒子であって、下記(a−1)及び/又は(a−2)と、(b)と(c)の要件を満足することを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(a−1)前記芯層を形成しているポリプロピレン系樹脂の樹脂融点Tc(℃)と、前記被覆層を形成しているポリプロピレン系樹脂の樹脂融点Ts(℃)が、下記式(1)を満足する。
(数4)
1.5≦Tc−Ts≦30(℃)・・・(1)
(a−2)前記芯層を形成しているポリプロピレン系樹脂の熱流束示差走査熱量測定によって得られるDSC吸熱曲線における、前記芯層の樹脂融点(Tc)以上の温度範囲の部分融解熱量をEc(J/g)とし、前記被覆層を形成しているポリプロピレン系樹脂の熱流束示差走査熱量測定によって得られるDSC吸熱曲線における、前記芯層の樹脂融点(Tc)以上の温度範囲の部分融解熱量をEs(J/g)としたとき、EcとEsが下記式(2)を満足する。
(数5)
0≦Es/Ec≦0.7・・・・(2)
(b)前記芯層を形成しているポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率:Mc(MPa)と、
前記被覆層を形成しているポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率:Ms(MPa)が、下記式(3)を満足する
(数6)
Mc−Ms≦500(MPa)・・・・(3)
(c)前記芯層を形成しているポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率:Mc(MPa)が1100MPa以下である。
[2]前記芯層を形成しているポリプロピレン系樹脂の融点:Tc(℃)が150℃以下であることを特徴とする上記[1]に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
[3]上記[1]又は[2]に記載の発泡粒子を成形金型内に充填し加熱成形して得られる、見かけ密度が12g/L〜50g/Lであることを特徴とする発泡粒子成形体。
を要旨とする。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、発泡粒子相互間の融着性、および2次発泡性に優れており、成形時に必要とされる加熱スチーム圧力を低くして加熱成形が可能である。
また、本発明の発泡粒子を型内成形した発泡粒子成形体は、表面が平滑で可撓性に優れた発泡粒子成形体であり、衝撃吸収材や各種包装材、緩衝材などに好適であり、特に、包装材や緩衝材として好適である。
本発明の多層発泡粒子を形成する原料樹脂のDSC曲線の一例を示す。 本発明の多層発泡粒子の芯層部及び被覆層部の軟化点を示すマイクロ熱機械測定による曲線の一例を示す。 発泡粒子の第1回目のDSC曲線の一例を示す。 発泡粒子の第2回目のDSC曲線の一例を示す。
本発明のポリプロピレン系樹脂多層発泡粒子は、ポリプロピレン系樹脂で形成される芯層と被覆層とからなり、該芯層と被覆層の重量比率が99.5:0.5〜80:20である多層樹脂粒子を発泡してなる、多層発泡粒子(以下、単に「発泡粒子」ということがある。)である。
前記発泡粒子は、前記多層樹脂粒子の芯層のポリプロピレン系樹脂が発泡してなる芯層部と、前記多層樹脂粒子の被覆層のポリプロピレン系樹脂からなる実質的に非発泡の被覆層部とからなる。
前記(a−1)、(a−2)の要件は、発泡粒子の加熱成形時のスチーム圧力を低いスチーム圧力で成形可能な発泡粒子を得るという、本発明の目的を達成するうえで重要な要件の一つである。また、発泡粒子相互間の融着性や2次発泡性が良好な発泡粒子となり、本発明の発泡粒子を型内成形した成形体は、可撓性に優れ、表面平滑性に優れた発泡粒子成形体となる点で重要である。
具体的には、(a−1)は前記芯層を形成しているポリプロピレン系樹脂の樹脂融点Tc(℃)と、前記被覆層を形成しているポリプロピレン系樹脂の樹脂融点Ts(℃)が、上記式(1)を満足するものである。
(a−2)は、図1に示すように、芯層の樹脂の熱流束示差走査熱量測定によって得られる原料樹脂固有のDSC吸熱曲線において、図1(a)に示すように、芯層の樹脂融点(Tc)以上の温度範囲の部分融解熱量をEc(J/g)とし、一方、被覆層の樹脂の熱流束示差走査熱量測定によって得られる原料樹脂固有のDSC吸熱曲線において、図1(b)〜(c)に示すような、前記芯層の樹脂融点(Tc)以上の温度範囲の部分融解熱量をEs(J/g)としたとき、上記式(2)を満足するものである。
前記多層樹脂粒子の芯層を形成しているポリプロピレン系樹脂の融点:Tc(℃)と、前記多層樹脂粒子の被覆層を形成しているポリプロピレン系樹脂の融点:Ts(℃)の融点差:Tc−Tsが大きすぎる場合には、発泡粒子を型内成型する際に、発泡粒子の被覆層部を形成している樹脂の軟化、融解が起こり、融着性が低下したり、成形時に成型金型表面へ樹脂が付着する虞がある。
また、上記樹脂融点差は、下記式(4)の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは下記式(5)の範囲である。
(数7)
5℃≦Tc−Ts≦25℃・・・(4)
(数8)
7℃≦Tc−Ts≦20℃・・・(5)
上記芯層と被覆層を形成しているポリプロピレン系樹脂の融点は、JIS K 7122(1987年)に基づく熱流束示差走査熱量測定方法(DSC法)により得られた値を採用する。
即ち、多層樹脂粒子を作製する際、芯層用の原料として用いられるポリプロピレン系樹脂2〜4mgを採取し、熱流束示差走査熱量計によって室温(10〜40℃)から220℃まで10℃/分の速度で昇温し、220℃に達した後、220℃から、40℃まで10℃/分の速度で降温した後、再度40℃から220℃まで10℃/分の速度で2回目の昇温を行う。かかる測定により得られた2回目の昇温時のDSC吸熱曲線ピークの頂点温度を融点とする。なお、吸熱曲線ピークが2つ以上ある場合、ピーク強度が最も大きい吸熱曲線ピークの頂点温度をその融点として採用する。
前記多層樹脂粒子の芯層及び被覆層を形成しているポリプロピレン系樹脂の融点差が上記範囲内であれば、被覆層の融点が相対的に低くなることから、発泡粒子の融着性が良好となる。さらに、型内成形時に、発泡粒子の被覆層部を形成している樹脂の軟化、融解が過度になることがなく、成型金型表面へ樹脂が付着することなく、表面平滑性がさらに良好な発泡粒子成形体となる。
又、多層樹脂粒子の被覆層を形成しているポリプロピレン系樹脂は、上述の範囲となるように適宜選択することが好ましい。
前記芯層の樹脂融点(Tc)以上の温度範囲の部分融解熱量Ecは、図1(a)に示すとおり実質的に0(ゼロ)J/gは存在しない。前記部分融解熱量Ecが大きくなると高温側にブロードなDSC曲線の形状となり、高温側での成形が必要となることから、得られる発泡粒子の2次発泡性は低いものとなる虞がある。
前記被覆層の樹脂において、その部分融解熱量Esが前記式(2)の関係を満足せずに、Es/Ecが大きすぎる場合には、芯層の樹脂融点以上での、芯層と被覆層を形成している樹脂の結晶融解挙動が近いものとなることを意味する。後述するように、発泡工程にて芯層の樹脂に高温ピークが形成されるような発泡方法を行なうと、Es/Ecが大きすぎる場合には被覆層の樹脂の結晶にも高温ピークが形成されるようになり、被覆層の樹脂の融解温度が高くなる。その結果、発泡粒子の表面において、高温ピークが形成されるような結晶が多く混在するようになり、低いスチーム圧では発泡粒子表面の結晶を融解し難くなることから、発泡粒子成形体の発泡粒子相互の融着性が相対的に低いものとなり、本発明の所期の目的を達成できなくなる虞がある。
前記Es/Ecが上記範囲内であれば、発泡工程において芯層の樹脂に高温ピークが形成されても、被覆層の樹脂への影響は少なく、被覆層は良好な融着性を有する。Es/Ecの値は、
(数9)
0≦Es/Ec≦0.5・・・(6)
であることが好ましく、
(数10)
0≦Es/Ec≦0.3・・・(7)
であることが更に好ましい。
上記芯層のポリプロピレン系樹脂の融点(Tc)は、上述したように、JIS K 7122(1987年)に基づく熱流束示差走査熱量測定方法(DSC法)により得られた値を採用する。
又、芯層のポリプロピレン系樹脂の部分熱量を算出するDSC吸熱曲線、及び被覆層のポリプロピレン系樹脂の部分熱量を算出するDSC吸熱曲線は、上記した芯層のポリプロピレン系樹脂の融点の測定方法と同様にして得られる2回目の昇温時のDSC吸熱曲線を用いる。
(b)の要件は、前記芯層を形成しているポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率:Mc(MPa)と被覆層を形成しているポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率:Ms(MPa)との差が500MPa以下であることを要する。該McとMsの差が大きすぎると、発泡粒子の芯層部と被覆層部との間に剥離が生じる虞がある。芯層部と被覆層部に剥離が生じた場合には、成形圧の低減が可能である発泡粒子を得ることができなくなる虞がある。また、成形時に剥離した被覆層が成形金型に付着するなど成形加工性が低下する。更に、得られる型内発泡成形体は、表面平滑性が劣るものとなる虞がある。一方、剥離が見られない場合においても、曲げ弾性率の差が大きい樹脂を使用した発泡粒子は、成形時における融着性と2次発泡性のバランスが悪くなり、2次発泡性が低下した発泡粒子となる虞がある。
被覆層を形成しているポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率:Msは、芯層を形成している樹脂の曲げ弾性率と被覆層を形成している樹脂の曲げ弾性率の差:Mc−Msが500以下となるように適宜選択される。該曲げ弾性率の差:Mc−Msが500を超える場合には前述したように発泡粒子の被覆層と芯層の剥離や、発泡粒子成形体の表面平滑性、可撓性の点で問題が生じる虞がある。
前記曲げ弾性率の差:Mc−Msは280MPa以下であることが好ましい。上記範囲内であれば、被覆層と芯層を形成している樹脂の、発泡成形時における融着性と2次発泡性のバランスが良好であり、成形体表面の粒子間隙をより少なくすることができる。
(c)の要件は、前記芯層を形成しているポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率:Mc(MPa)が1100MPa以下であることを要する。前記芯層を形成しているポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率:Mcが高すぎる場合には、低いスチーム圧で成形すると、発泡粒子相互間の融着性は良好であっても、芯層部を形成しているポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率が高いために可撓性に優れる成形体が得られない虞がある。前記曲げ弾性率は、好ましくは1000MPa以下のものが用いられる。
尚、上記の曲げ弾性率は、JIS K 7171(1994年)に記載の測定法に準拠して測定される。
上記曲げ弾性率は、厚み4mm×幅10mm×長さ80mmの試験片を、室温23℃、湿度50%の恒温室内に24時間以上放置後、支点間距離64mm、圧子の半径Rが5.0mm、支持台の半径Rが5.0mm、試験速度が2mm/min、室温23℃、湿度50%の条件で、オートグラフAGS−10kNG(島津製作所製)試験機により測定され、算出された値の算術平均値(5点以上)を採用する。
本発明の多層樹脂粒子の芯層を形成しているポリプロピレン系樹脂は、例えば、プロピレン単独重合体、またはプロピレン成分単位60モル%以上、好ましくは80モル%以上含有するプロピレンと他のコモノマーとの共重合体のいずれか、あるいはこれらの重合体の中から選ばれる2種以上の混合物が挙げられる。
上記のプロピレン成分単位60モル%以上を含有するプロピレンと他のコモノマーとの共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体などが例示される。
前記芯層を形成しているポリプロピレン系樹脂には、本発明の所期の効果を損わない範囲内において、ポリプロピレン系樹脂以外の合成樹脂、及び/又は合成ゴム、及び/又はエラストマー等を添加することができる。ポリプロピレン系樹脂以外の合成樹脂、合成ゴム、エラストマーの合計添加量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、35重量部以下であることが好ましく、より好ましくは25重量部以下、更に好ましくは10重量部以下、5重量部以下であることがより好ましい。
前記のポリプロピレン系樹脂以外の合成樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン‐メタクリル酸エステル共重合体等のエチレン系樹脂、あるいはポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体等のスチレン系樹脂等が挙げられる。
前記の合成ゴムとしては、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−1−ブテンゴム、プロピレン−1−ブテンゴム、スチレン−ブタジエンゴムやその水添物、イソプレンゴム、ネオプレンゴム、ニトリルゴム等が例示される。前記のエラストマーとしては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体やその水添物等が例示される。
前記芯層のポリプロピレン系樹脂中には、所望に応じて各種の添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、難燃剤、金属不活性剤、顔料、染料、核剤、あるいは気泡調整剤等が挙げられる。気泡調整剤としては、例えば、ホウ酸亜鉛、タルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、水酸化アルミニウムなどの無機粉体が例示される。
これらの添加剤の含有量は、芯層を形成しているポリプロピレン系樹脂100重量部に対し20重量部以下、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下、更には5重量部以下であることが好ましい。特に気泡調整剤の含有量は、発泡粒子の平均気泡径を20μm〜300μmとする上で0.005〜1重量部であることが好ましい。
本発明の多層樹脂粒子の被覆層を形成しているポリプロピレン系樹脂は、上述した要件を満足するものとなるようにポリプロピレン系樹脂を選択すること以外は芯層を形成しているポリプロピレン系樹脂と同じものが例示される。
被覆層を形成しているプロピレン系樹脂中には、芯層のポリプロピレン系樹脂と同様に、必要に応じて芯層に添加される添加剤と同様の添加剤を含有させることができる。その含有量は、被覆層の樹脂100重量部に対し、おおよそ30重量部以下、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下、特に5重量部以下であることが好ましい。添加量の下限はおおよそ0.01重量部である。
前記芯層を形成しているプロピレン系樹脂の融点は、発泡粒子の加熱成形時の加熱スチームを低いスチーム圧力で芯層の2次発泡を行わせることが可能であり、可撓性を有し、表面平滑性に優れた発泡成形体を得るという観点から、150℃以下であることが好ましく、135〜145℃であることが好ましい。
一方、芯層を形成しているポリプロピレン系樹脂の融点の下限は、被覆層を形成している樹脂を考慮して、発泡粒子表面の軟化、融解性の観点から115℃以上であることが望ましい。
本発明の発泡粒子の芯層部の軟化点:Nc(℃)は、前記発泡粒子の被覆層部の軟化点:Ns(℃)よりも高いことが好ましい。上述の場合には、発泡粒子相互間の融着性や2次発泡性が良好となり、前記発泡粒子を型内成形した成形体がさらに可撓性、表面平滑性に優れた発泡粒子成形体となる。また、被覆層部の軟化点温度が相対的に高くなると、得られる発泡粒子の融着性が低下したものとなり、樹脂の軟化が過度に進行するため、型内成形時に成型金型表面への樹脂付着が生じる虞がある。
さらに、前記芯層部と被覆層部の軟化点は、次式(8)
(数11)
Nc−Ns≦70℃・・・(8)
の関係を満たすことが好ましく、上記範囲内であれば、前記発泡粒子の芯層部と被覆層部の物性のバランスがとれ、発泡粒子の融着性や2次発泡性がより良好となる。
前記発泡粒子の芯層部の軟化点:Ncは170℃以下であることが好ましい。該芯層部の軟化点が170℃以下であれば、従来のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を成形する耐圧性の高い成形機によらず、低いスチーム圧力で芯層部の2次発泡を十分に行わせることが可能であり、より粒子相互間の融着性に優れる発泡粒子が得られる。さらに、前記発泡粒子から得られた発泡成形体表面の粒子間には空隙が生じることがなく、可撓性を有し、表面平滑性に優れた発泡成形体となる。
本発明において多層発泡粒子の被覆層部の軟化点は80℃以上であることが好ましい。上記範囲であれば、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子全体としての本来の耐熱性を大幅に損ねることがない発泡粒子成形体を得ることができる。
前記軟化点の測定方法は、マイクロ熱機械測定(以下、μTAということがある)、ティ・エイ・インスツルメント・ジャパン社のマイクロ熱分析システム「2990型マイクロサーマルアナライザー」を使用し、25℃から250℃まで昇温速度10℃/秒の条件にて測定することとする。
発泡粒子の被覆層部に対する上記マイクロ熱機械測定は、発泡粒子(1個の発泡粒子がそのままでは大きすぎる場合は例えば半分に切断する等して適当な大きさにしたもの)または発泡粒子成形体から切り出した試験片を装置のサンプルステージに固定し、次いで、発泡粒子または発泡粒子成形体を構成している発泡粒子の表面において無作為に選択した箇所に向けて、プローブチップ(発泡粒子の被覆層部に接触させる部分は縦横各0.2μmの先端部を持つ)を下降させて発泡粒子に接触させた状態で実施される。そして、被覆層にプローブチップが接触し、昇温されて被覆層の軟化点が測定される。その後、被覆層部は融解してしまうが、プローブチップはさらに昇温されて芯層部に到達し、芯層部の軟化点が測定される。
図2は発泡粒子または発泡粒子成形体を構成している発泡粒子の被覆層部と芯層部のμTA曲線の一例を示すものであり、これらの図を使用して該発泡粒子の被覆層部の結晶の軟化に由来する急峻な変曲点の求め方を説明する。
図2において、曲線Cmが多層発泡粒子に対するμTA曲線の一例である。曲線Cmは、低温側に被覆層部に由来する変位量の急峻な領域(Cm1)と、高温側に芯層部に由来する変位量の急峻な領域(Cm2)の少なくとも2つの急激な変位量を示す領域を有する。Cm1、Cm2夫々の領域において、変位量の急峻な温度の前後での曲線Cmに対する接線を二本作成し、それぞれ接線BLと接線TLとする。変曲点Nはこれら接線BLと接線TLとの交点である。この交点を軟化点Nとした。
尚、前記マイクロ熱機械測定による変曲点は、装置の測定温度を一定速度の10℃/秒で昇温して測定する。変曲点の温度は、結晶の軟化による変位量と温度の曲線において、結晶の軟化に由来する変位量の急峻な前後の領域の下降位置の接線の交点とする。
本発明において発泡粒子の熱流束示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線は、ポリプロピレン系樹脂に固有の吸熱曲線ピーク(以下、「固有ピーク」という)と、該吸熱曲線ピークよりも高温側の吸熱曲線ピーク(以下、[高温ピーク]という)とを少なくとも示し、且つ該高温側の吸熱曲線ピークの熱量が1J/g以上、40J/g以下であることが好ましく、更に3J/g〜35J/g、特に5J/g〜30J/gあることが好ましい。かかる発泡粒子は、加熱成形に好適な発泡粒子である。
上記した高温ピークの熱量が小さすぎる場合は、成形する際のスチーム圧力を低くできるものの、得られる発泡粒子成形体の圧縮強度、エネルギー吸熱量などが低下する虞がある。一方、高温ピークの熱量が大きすぎる場合は、目標とする発泡倍率の発泡粒子が得られなかったり、成形時の2次発泡性が抑制されて成形圧を高くしなければ成形体が得られなくなったりする虞がある。
なお、高温ピークの熱量は全ての吸熱曲線ピークの熱量の合計に対して3%以上、更に5%以上、更に8%以上、特に10%以上が好ましい。また、その上限値は、70%以下、更に60%以下、特に50%以下が好ましい。
また、本発明における発泡粒子の全ての吸熱曲線ピークの熱量の合計(全熱量)は、40〜100J/gであることが好ましい。該熱量が小さすぎる場合は、圧縮などの物性が低下する虞がある。一方、該熱量が大きすぎる場合は、成形する際の2次発泡性が悪く隙間の多い発泡粒子成形体となる虞がある。
吸熱曲線ピークの全熱量と、高温ピークの熱量測定は、JIS K7122(1987年)に準拠する測定方法により次のように行う。
まず、発泡粒子2〜10mgを採取し、熱流束示差走査熱量計によって室温(10〜40℃)から220℃まで10℃/分で昇温して測定を行う。かかる測定により得られた1回目のDSC曲線の一例を図3に示す。
図3のDSC曲線には、発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂に由来する固有ピークaと、高温ピークbが現れ、高温ピークbの熱量はそのピーク面積に相当するものであり、具体的には次のようにして求めることができる。
まず、DSC曲線上の80℃に相当する点αと、発泡粒子の融解終了温度Tに相当するDSC曲線上の点βとを結ぶ直線(α−β)を引く。尚、上記融解終了温度Tは、高温ピークbの高温側におけるDSC曲線と高温側ベースラインとの交点と対応する温度である。
次に上記の固有ピークaと高温ピークbとの間の谷部に当るDSC曲線上の点γからグラフの縦軸と平行な直線を引き、上記直線(α−β)と交わる点をσとする。高温ピークbの面積は、DSC曲線の高温ピークb部分の曲線と、線分(σ−β)と、線分(γ−σ)とによって囲まれる部分(図3において斜線を付した部分)の面積であり、これが高温ピークの熱量に相当する。
また、本明細書における全ての吸熱曲線ピークの熱量の合計は、図3のDSC曲線と直線(α−β)とによって囲まれる部分の面積にて表わされ、これが吸熱曲線ピークの全熱量に相当する。
尚、高温ピークbは、上記のようにして測定した第1回目のDSC曲線には認められるが、第2回目のDSC曲線には認められない。第2回目のDSC曲線には、図4に示すように、発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂に固有の吸熱曲線ピーク(固有ピークa)のみが認められる。なお、第2回目のDSC曲線とは、熱流束示差走査熱量測定において、第1回目のDSC曲線を得た後、40℃まで10℃/分で降温して、再度220℃まで10℃/分で昇温してした際に得られるDSC曲線のことである。
本発明の芯層と被覆層とからなる多層樹脂粒子は、それ自体公知の方法、例えば、特公昭41−16125号公報、特公昭43−23858号公報、特公昭44−29522号公報、特開昭60−185816号公報等に記載された共押出法により製造することができる。一般的には、芯層形成用押出機と被覆層形成用押出機を用い、共押出ダイに連結する。芯層形成用押出機で所要の樹脂成分と、必要に応じて添加剤とを溶融混練すると共に、被覆層形成用押出機においても所要の樹脂成分と、必要に応じて添加剤とを溶融混練する。それぞれの溶融混練物を前記ダイ内で合流させて円柱状の芯層と、芯層の外側表面を被覆する被覆層とからなる多層構造として、押出機先端のダイ出口に付設された口金の細孔からストランド状に押出し、ペレタイザーで樹脂粒子の重量が所定重量にとなるように切断することにより多層樹脂粒子が製造される。
本発明において用いる多層樹脂粒子の形状としては、例えば、円柱状、ラグビーボール状、球状などが挙げられる。かかる多層樹脂粒子を発泡して得られる発泡粒子は、発泡前の樹脂粒子形状に応じて円柱状、ラグビーボール状、球状となる。
多層樹脂粒子の1個当たりの平均重量は0.01〜10.0mg、特に0.1〜5.0mgであることが好ましい。なお、発泡粒子の平均重量は、発泡粒子を得るための樹脂粒子の1個当たりの平均重量を目的とする発泡粒子の1個当たりの平均重量に合わせることにより調整することができる。発泡粒子の1個当たりの平均重量が小さすぎると発泡効率が悪くなるため、発泡粒子の1個当たりの平均重量も、0.01〜10.0mg、特に0.1〜5.0mgであることが好ましい。
本発明の多層樹脂粒子は、芯層を形成している樹脂と被覆層を形成している樹脂とが重量比で99.5:0.5〜80:20であり、好ましくは96:4〜90:10であることが望ましい。多層樹脂粒子の被覆層を形成している樹脂の重量比が小さすぎると、発泡粒子の被覆層部の厚みが薄すぎ、融着性改善の効果が得られず、発泡粒子間の融着が不十分となり易くなる虞がある。一方、被覆層を形成している樹脂の重量比が大きすぎると、被覆層を形成している樹脂が発泡し易くなる虞がある。更には、融点や曲げ弾性率の低い樹脂成分の割合が増加することから、発泡粒子成形体の機械的物性が低下し易くなる虞がある。従って、多層樹脂粒子の芯層(すなわち発泡粒子の芯層部)を形成している樹脂と被覆層(すなわち発泡粒子の被覆層部)を形成している樹脂との重量比が前記範囲内にあることにより、発泡粒子間の融着界面付近に気泡が存在することなく、発泡粒子間の融着強度が強くなることから、機械的強度に優れた発泡粒子成形体となる。
本発明の多層樹脂粒子の被覆層の厚みについては、多層樹脂粒子を発泡させたときに被覆層部に気泡が生じ難くなり、また、発泡成形体の強度との観点から、厚みが薄い方が好ましいが、あまりに薄すぎる場合には発泡粒子同士の融着性改善効果が期待できず、芯層部の被覆を十分に行うことが難しくなる。従って、多層樹脂粒子の被覆層の厚みは5〜500μmであることが望ましく、10〜100μmがより好ましい。また、発泡粒子の被覆層部の厚みは0.1〜200μmが望ましく、好ましくは0.5〜50μmであることがより好ましい。
前記多層樹脂粒子の被覆層の厚みは以下により測定される。多層樹脂粒子を二等分し、その断面を顕微鏡下に断面が全て入るように拡大し、二等分した垂直断面において被覆層の全周を光学顕微鏡にて撮影した写真により測定される。具体的には、写真上で断面が凡そ二等分となるように直線を引き、さらにその直線に直角となるように直線を引き、これらの直線と被覆層部とが接する4箇所の長さを求め、その平均を一つの多層樹脂粒子の被覆層の厚さとする。この作業を合わせて10個の多層樹脂粒子で測定し、相加平均した値を多層樹脂粒子における被覆層の厚みとする。発泡粒子の被覆層部の厚みにおいても、同様の方法で測定する。
尚、多層樹脂粒子の被覆層の厚みが分かり難いときには、予め被覆層を構成する樹脂に着色剤を添加して多層樹脂粒子を製造することが好ましい。
本発明の発泡粒子は、前記の芯層と被覆層とからなる多層樹脂粒子を、加圧可能な密閉容器(例えばオートクレーブ)中で水性媒体(通常は水)中に分散させ、所望により分散剤を添加し、所要量の発泡剤を圧入し、加温下で撹拌して樹脂粒子に発泡剤を含浸させた後、加圧容器中から水性媒体と共に内容物を容器内圧よりも低圧域(大気圧下)に放出して発泡させることにより製造される(この方法を、以下、分散媒放出発泡方法という)。この放出時に容器内に背圧をかけて放出することが好ましい。
また、特に高発泡倍率の発泡粒子を得るに際しては、上記の方法で得られた発泡粒子を通常行われる大気圧下での養生した後、加圧可能な密閉容器に充填し、空気などの不活性気体により加圧処理して発泡粒子の内圧を高める操作を行った後、該発泡粒子を該容器内から取り出し、スチームや熱風を用いて加熱することにより、高い発泡倍率の発泡粒子を得ることができる(これを以下二段発泡という)。
本発明において発泡剤は物理発泡剤が用いられ、特に制限されないが、例えば、n−ブタン、i−ブタンおよびこれらの混合物、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、トリクロロフルオリメタン、ジクロロフルオロメタン、テトラコロロジフルオロエタン、ジコロロメタン等のハロゲン化炭化水素等の有機系物理発泡剤、二酸化炭素、窒素、空気等の無機ガスを、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。これらの発泡剤のうち、二酸化炭素、窒素、空気等の無機ガスを主成分とする発泡剤を用いることが好ましく、より好ましくは二酸化炭素が用いられる。本発明において、上記無機ガスを主成分とするとは、全物理発泡剤100モル中に無機ガス発泡剤が50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含有していることを意味する。その他有機系物理発泡剤を使用する場合には、ポリオレフィン系樹脂との相溶性、発泡性の観点から、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタンを使用することが好ましい。
上記の物理発泡剤の添加量は、ポリプロピレン系樹脂の種類や発泡剤の種類、目的とする発泡粒子の見かけ密度(発泡倍率)等に応じて適宜選択されるもので一概には特定することはできないが、例えば、物理発泡剤として二酸化炭素を用いた場合、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜15重量部、より好ましくは1〜10重量部が使用される。
また分散剤としては、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、カオリン、マイカなどの水に難溶性の無機物質、
ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロースなどの水溶性高分子系保護コロイド剤等が挙げられる。またドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤などを使用することができる。
上記分散媒放出発泡方法における高温ピークの具体的な調節方法としては、多層樹脂粒子を水性媒体に分散させて加熱する際に、芯層のポリプロピレン系樹脂の融解終了温度(Tce)以上とならないように昇温し、該樹脂の融点(Tc)より20℃以上低い温度以上、融解終了温度(Tce)未満の範囲内の任意の温度(Ta)で止めてその温度(Ta)で十分な時間、好ましくは10〜60分程度保持し、その後、融点(Tc)より15℃低い温度から融解終了温度(Tce)+10℃の範囲の任意の温度(Tb)に加熱し、その温度で止め、当該温度でさらに十分な時間、好ましくは10〜60分程度、保持してから多層樹脂粒子を密閉容器内から低圧下に放出して発泡させることが好ましい。
分散媒放出発泡方法において、温度Ta、Tb、及び保持時間を上記のように設定することが好ましいのは、発泡粒子の高温ピークの大小が、主として、発泡粒子を製造する際の樹脂粒子に対する上記温度Taと該温度における保持時間および上記温度Tbと該温度における保持時間、ならびに昇温速度に依存するからである。
一般的に、発泡粒子の上記高温ピークの熱量は、温度Ta又はTbが上記温度範囲内において低い程、保持時間が長い程、大きくなる傾向を示す。通常、前記発泡工程における昇温速度は0.5〜5℃/分が採用される。これらの点を考慮して予備実験を繰り返すことにより、所望の高温ピーク熱量を示す発泡粒子の製造条件を容易にかつ正確に知ることができる。
尚、以上説明した樹脂粒子の発泡時の温度調整範囲は、発泡剤として無機系物理発泡剤を使用した場合の適切な温度範囲である。有機系物理発泡剤が併用された場合には、その種類や使用量に応じてその適切な温度範囲は上記温度範囲よりもそれぞれ低温側にシフトする傾向がある。
上記の方法により得られる本発明の発泡粒子は、微細な気泡を有する発泡状態の芯層部と、その表面に実質的に非発泡状態の被覆層部が形成された多層構造を有する。前記発泡粒子は見かけ密度が18〜80g/Lであることが、発泡成形体の物性等の面から好ましい。
前記発泡粒子の見かけ密度は下記により測定される。水を入れたメスシリンダー内に重量W(g)の発泡粒子群を、金網などを使用して沈め、水位の上昇分から発泡粒子群の体積V(L)を求め、発泡粒子群の重量を発泡粒子群の体積で除す(W/V)ことにより求められる値をg/Lに単位換算して求められる。
本発明の発泡粒子の平均気泡径は、50〜900μmであることが、発泡粒子の2次発泡性、金型転写性などの観点から好ましい。更には、平均気泡径は20μm以上であることが好ましく、より好ましくは25μm以上、30μm以上であることがさらに好ましい。一方、その上限は得られる発泡成形品の圧縮応力に対する強度、外観平滑性などの観点から300μm以下が好ましく、250μm以下がより好ましく、さらには200μm以下が好ましい。
発泡粒子の平均気泡径の測定は、発泡粒子を二等分した断面を顕微鏡下にて断面全体が入るように拡大して断面を撮影する。撮影された写真上で断面が凡そ二等分となるように直線を引き、直線の長さを直線に接する全ての気泡の数で除した値を一つの発泡粒子の平均気泡径とし、同様にして20個の発泡粒子について測定し、その相加平均値を発泡粒子の平均気泡径とした。
本発明の発泡粒子を型内成形した発泡成形体の製造方法は、それ自体公知の型内成形方法により製造することができる。
例えば、従来の発泡粒子を型内成形する一対の成形型を用い、大気圧下又は減圧下で発泡粒子を成形型キャビティ内に充填し、型閉めして成形型キャビティ体積を5〜70%減少するように圧縮し、ついで型内にスチーム等の熱媒を供給して加熱し、発泡粒子を加熱融着させる減圧成形法による方法(例えば、特公昭46−38359号公報)。また、発泡粒子を空気等の加圧気体により予め加圧処理して発泡粒子内の圧力を高めて、発泡粒子の2次発泡性を高めて2次発泡性を維持しつつ、大気圧下又は減圧下で発泡粒子を成形型キャビティ内に充填し型閉めし、ついで型内にスチーム等の加熱媒体を供給して発泡粒子を加熱融着させる加圧成形法(例えば、特公昭51−22951号公報)などにより成形することができる。又、圧縮ガスにより大気圧以上に加圧したキャビティ内に、当該圧力以上に加圧した発泡粒子を充填した後、キャビティ内にスチーム等の加熱媒体を供給して発泡粒子を加熱融着させる圧縮充填成形法(例えば、特公平4−46217号公報)により成形することもできる。その他に、2次発泡性の高い発泡粒子を、大気圧下又は減圧下の一対の成形型のキャビティ内に充填した後、ついでスチーム等の加熱媒体を供給して加熱し発泡粒子を加熱融着させる常圧充填成形法(例えば、特公平6−49795号公報)、または上記の方法を組合わせた方法(例えば、特公平6−22919号公報)などによっても成形することができる。
本発明の発泡粒子で製造される発泡粒子成形体の密度は目的によって任意に設定できるが、可撓性を有する発泡成形体であるという観点からは、12g/L〜50g/Lの範囲であることが好ましく、より好ましくは12g/L〜30g/Lである。
尚、発泡粒子成形体の密度は、該成形体から切り出した試験片の重量(g)を該試験片の外形寸法から求められる体積(L)で除すことにより算出される。
以下本発明について実施例、比較例を挙げ説明する。
実施例および比較例に使用したポリプロピレン系樹脂を下記表1に示す。
Figure 0005399146
上記メルトフローレイト(MFR)は、JIS K7210(1976年)に準拠して、230℃、荷重21.17Nの条件で測定した。尚、ポリエチレン系樹脂の場合には、190℃、荷重21.17Nの条件で測定した。
実施例1
内径65mmの芯層形成用押出機および内径30mmの被覆層形成用押出機の出口側に多層ストランド形成用ダイを付設した押出機を用いた。
芯層形成用押出機および被覆層形成用押出機に、それぞれ表1に示す芯層および被覆層を形成するプロピレン系樹脂を、それぞれ表2に示す割合で、夫々の押出機に供給し、溶融混練した。その溶融混練物を前記の多層ストランド形成用ダイに導入してダイ内で合流して押出機先端に取り付けた口金の細孔から、2層(被覆層/芯層構造)に形成されたストランドとして押出し、押出されたストランドを水冷し、ペレタイザーで重量が略1mgとなるように切断し、乾燥して多層樹脂粒子を得た。
なお、芯層のポリプロピレン系樹脂には気泡調整剤としてホウ酸亜鉛を含有量が1000重量ppmとなるように供給した。
得られた多層樹脂粒子1kgを、分散媒の水3Lと共に、5Lの密閉容器内に仕込み、多層樹脂粒子100重量部に対して、分散剤としてカオリン0.3重量部、界面活性剤(商品名:ネオゲン、第一工業製薬株式会社製、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.2重量部(有効成分として)、および硫酸アルミニウム0.01重量部をそれぞれ添加し、密閉容器内に発泡剤として二酸化炭素を圧入し、撹拌下で表2に示す発泡温度まで加熱昇温して、同温度で15分間保持して高温ピーク熱量(DSC測定による吸熱曲線から得られる)を調整した。その後、容器内容物を大気圧下に水とともに一気に放出して見かけ密度60g/Lの発泡粒子を得た。なお、高発泡倍率(低密度)の発泡粒子は、2段発泡法を採用して表2の条件で製造した。すなわち、まず見かけ密度72g/Lの発泡粒子を得た後、該発泡粒子を別の密閉容器に充填し加圧工程後スチームで加熱して、見かけ密度29g/Lの多層発泡粒子を得た。
得られた多層発泡粒子を縦250mm×横200mm×厚さ50mmの平板成形型に充填し、スチーム加熱による加圧成形により型内成形を行なって板状発泡粒子成形体を得た。加熱方法は両面の型のドレン弁を開放した状態でスチームを5秒間供給して予備加熱(排気工程)を行ったのち、本加熱圧力より0.04MPa(G)低い圧力で一方加熱を行い、さらに本加熱圧力より0.02MPa(G)低い圧力で逆方向から一方加熱を行った後、表2に示す最低成形スチーム圧力(尚、最低成形スチーム圧とは、発泡粒子を型内に充填してスチームで加熱する際に、発泡粒子相互が型内で2次発泡して融着し、表面平滑で可撓性に優れる発泡成形体が得られる最低のスチーム圧力をいう)で加熱した。加熱終了後、放圧し、成形体の発泡力による表面圧力が0.04MPa(G)になるまで水冷したのち、型を開放し成形体を型から取り出した。得られた成形体は80℃のオーブンにて12時間養生後、室温まで徐冷してポリプロピレン系樹脂発泡成形体を得た。発泡成形体の物性を評価し、その結果を表2に示した。
実施例2,3
芯層を形成するポリプロピレン系樹脂を表2に示す樹脂に替えた以外は実施例1と同様の操作により多層樹脂粒子を製造し、この樹脂粒子を実施例1と同様にして発泡粒子、および発泡成形体を得た。その物性を表2に示す。
実施例4
被覆層を形成するポリプロピレン系樹脂を表2に示す樹脂に替えた以外は実施例1と同様の操作により多層樹脂粒子を製造し、この樹脂粒子を実施例1と同様にして発泡粒子、および発泡成形体を得た。その物性を表2に示す。
実施例5
被覆層を形成するポリプロピレン系樹脂を表2に示す樹脂に替えた以外は実施例1と同様の操作により多層樹脂粒子を製造し、この樹脂粒子を実施例1と同様にして発泡粒子、および発泡成形体を得た。その物性を表2に示す。
多層樹脂粒子を形成しているプロピレン系樹脂の曲げ弾性率差が300MPaであり、発泡粒子間の間隙が僅かに認められる成形体となったが、本発明の目的は達成されるものであった。
実施例6
被覆層を形成するポリプロピレン系樹脂を表2に示す樹脂に替えた以外は実施例1と同様の操作により多層樹脂粒子を製造し、この樹脂粒子を実施例1と同様にして発泡粒子、および発泡成形体を得た。その物性を表2に示す。
多層樹脂粒子を形成しているプロピレン系樹脂の融解差が6℃であり、実施例1の発泡粒子に比べて融着性が若干低下し、また、試験片を90度曲げても割れを生じないが、180度曲げた場合には割れを生じる成形体となったものの、本発明の目的は達成されるものであった。
実施例7
被覆層を形成するポリプロピレン系樹脂を表2に示す樹脂に替えた以外は実施例1と同様の操作により多層樹脂粒子を製造し、この樹脂粒子を実施例1と同様にして発泡粒子、および発泡成形体を得た。その物性を表2に示す。
多層樹脂粒子を形成しているプロピレン系樹脂の融点差が大きく、成形時、金型に樹脂が稀に付着していたが、本発明の目的は達成されるものであった。
実施例8
被覆層と芯層との比率を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作により多層樹脂粒子を製造し、この樹脂粒子を実施例1と同様にして発泡粒子、および発泡成形体を得た。その物性を表2に示す。
被覆層の重量比率が多いため、成形時、金型に樹脂が稀に付着していたが、本発明の目的は達成されるものであった。
実施例9
実施例1と同様にして表2の条件で得た発泡粒子の二段発泡処理を行わずそのまま型内成形に供して発泡成形体を得た。その物性を表2に示す。
成形体の発泡倍率が低いため、試験片を90度曲げても割れを生じないが、180度曲げた場合には割れを生じる成形体となったものの、本発明の目的は達成されるものであった。
実施例10
被覆層と芯層との比率を表2に示すように変更した以外は、実施例8と同様の操作により多層樹脂粒子を製造し、この樹脂粒子を実施例1と同様にして発泡粒子、および発泡成形品を得た。その物性を表2に示す。
比較例1
実施例の芯層に対して被覆層の融点が高く、Es値の大きい樹脂を使用した以外は実施例1と同様の操作により多層樹脂粒子を製造し、この多層樹脂粒子を実施例1と同様の操作により発泡粒子および発泡成形体を得た。物性の評価結果を表3に示す。
得られた発泡成形体は、芯層及び被覆層を形成する樹脂の融点差や部分融解熱量比が満足しないことから、非発泡の被覆層部の樹脂の融着性が不十分で可撓性に劣る成形体であった。
比較例2
実施例4に使用された芯層部を形成するポリプロピレン系樹脂よりも曲げ弾性率の高い樹脂を使用した以外は、実施例1と同様の操作により多層樹脂粒子、発泡粒子、及び発泡成形体を得た。物性の評価を表3に示す。
得られた発泡成形体の剛性が高くなり、可撓性の点において劣るものであった。さらに、芯層の曲げ弾性率が高いために従来のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の成形に使用される成形機の耐圧性能(0.40MPa)以下では成形体表面の外観は低下した。
比較例3
比較例2において成形時のスチーム圧力を上げて成形を行ったところ、発泡粒子間相互の融着性や表面平滑性は満足できるものとなったが、芯層を形成する樹脂の剛性が高いことから、発泡成形体の可撓性の点において劣るものであった。
比較例4
実施例7に使用された芯層を形成するポリプロピレン系樹脂よりも曲げ弾性率の高い樹脂を使用した以外は、実施例1と同様の操作により多層樹脂粒子、発泡粒子、発泡成形品を得た。物性の評価を表3に示す。
被覆層と芯層間の融点差が大きいため、高い成形圧が必要であり、成形時に樹脂が金型へ付着し易く、成形加工性に劣るものであった。
比較例5
実施例1の被覆層をポリエチレン系樹脂に変更した以外は実施例1と同様の操作により発泡粒子、発泡成形体を得た。その物性の評価を表3に示す。
また、芯層と被覆層を形成する樹脂の曲げ弾性率の差が大きく、表面平滑性に劣るものであった。また、鞘芯間の融点差が大きいために成形時に樹脂が金型へ付着し易く、成形加工性に劣るものであった。
比較例6
比較例4における被覆層を形成する樹脂を表3に示す樹脂に変えた以外は比較例4と同様にして発泡粒子、および発泡成形体を得た。その物性評価を表3に示す。
芯層を形成する樹脂の曲げ弾性率が高いため可撓性に劣り、さらに被覆層と芯層との曲げ弾性率の差も大きいため、表面平滑性にも劣るものであった。また、鞘芯間の融点差が大きいために成形時に樹脂が金型へ付着し易く、成形加工性に劣るものであった。
比較例7
実施例2における被覆層を形成する樹脂を表3に示す樹脂に変えた以外は実施例2と同様にして、多層樹脂粒子、発泡粒子、発泡成形体を得た。その物性評価を表3に示す。
芯層と被服層を形成する樹脂の曲げ弾性率の差が大きく、成形体の表面平滑性が劣り、可撓性の劣るものであった。
発泡成形体の評価は下記により行った。
(表面平滑性)
発泡粒子成形体の外観を目視により下記の基準にて評価した。
◎:成形体の表面が平滑であり、発泡粒子間の融着が良好で粒子間の間隙が殆どない。
○:成形体の表面が平滑であるが、発泡粒子間の間隙が僅かに認められる。
△:成形体の表面は平滑であるが、発泡粒子間の間隙が目立つ。
×:成形体の表面の平滑性に欠け、発泡粒子間の間隙が目立つ、または間隙の間の融着が不十分である。
(可撓性)
発泡粒子成形体の中央部分から縦195×横50×厚み10mmの試験片を切り出し、該試験片を厚み方向に略等分となるように折り曲げたときの割れ性を評価した。
◎:180度曲げても割れを生じない
○:90度曲げても割れを生じない。
△:90度曲げても割れないがヒビが入る。
×:90度曲げると割れる。
(金型への付着性)
表3に記載の条件で成形を行った後の金型に、樹脂が付着しているかどうかで判定した。
◎:付着が認められない。
○:稀に付着が認められる。
△:部分的に付着が認められる。
×:付着する。
Figure 0005399146
Figure 0005399146
Cm マイクロ熱機械測定による曲線
Cm1 被覆層部に由来する変位量の急峻な領域
Cm2 芯層部に由来する変位量の急峻な領域
BL、TL 接線
Ns 被覆層の軟化点
Nc 芯層の軟化点
a DSC曲線上の固有ピーク
b DSC曲線上の高温ピーク
α DSC曲線上の80℃に相当する点
β 融解終了温度に相当する点
γ DSC曲線上の固有ピークと高温ピークとの谷部
δ 直線α−βとの交点
T 融解終了温度
Tm 融点
Te 融解終了温度

Claims (3)

  1. ポリプロピレン系樹脂で形成される芯層と被覆層とからなり前記芯層と被覆層の重量比率が99.5:0.5〜80:20である多層樹脂粒子を、発泡してなる発泡芯層と、非発泡の被覆層とからなる多層発泡粒子であって、下記(a−1)及び/又は(a−2)と、(b)と(c)の要件を満足することを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
    (a−1)
    前記芯層を形成しているポリプロピレン系樹脂の樹脂融点Tc(℃)と、前記被覆層を形成しているポリプロピレン系樹脂の樹脂融点Ts(℃)が、下記式(1)を満足する。
    (数1)
    1.5≦Tc−Ts≦30(℃)・・・(1)
    (a−2)
    前記芯層を形成しているポリプロピレン系樹脂の熱流束示差走査熱量測定によって得られるDSC吸熱曲線における、前記芯層の樹脂融点(Tc)以上の温度範囲の部分融解熱量をEc(J/g)とし、前記被覆層を形成しているポリプロピレン系樹脂の熱流束示差走査熱量測定によって得られるDSC吸熱曲線における、前記芯層の樹脂融点(Tc)以上の温度範囲の部分融解熱量をEs(J/g)としたとき、EcとEsとが下記式(2)を満足する。
    (数2)
    0≦Es/Ec≦0.7・・・(2)
    (b)前記芯層を形成しているポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率:Mc(MPa)と、
    前記被覆層を形成しているポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率:Ms(MPa)とが、下記式(3)を満足する。
    (数3)
    Mc−Ms≦500(MPa)・・・・(3)
    (c)前記芯層を形成しているポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率:Mc(MPa)が1100MPa以下である。
  2. 前記芯層を形成しているポリプロピレン系樹脂の樹脂融点:Tc(℃)が150℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
  3. 請求項1又は2に記載の発泡粒子を成形金型内に充填し加熱成形して得られる、見かけ密度が12g/L〜50g/Lであることを特徴とする発泡粒子成形体。
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