以下、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係るトナー製造方法を実施する本発明に係るトナー製造装置の一実施形態について図1の模式的構成図を参照して説明する。
このトナー製造装置1は、液滴化手段及び貯留部を備える液滴噴射ユニット2と、この液滴噴射ユニット2が上方に配置され、液滴噴射ユニット2から放出されるトナー組成液の液滴を固化してトナー粒子Tを形成する粒子化手段としての粒子形成部3と、粒子形成部3で形成されたトナー粒子Tを捕集するトナー捕集部4と、トナー捕集部4で捕集されたトナー粒子Tがチューブ5を介して移送され、移送されたトナー粒子Tを貯留するトナー貯留手段としてのトナー貯留部6と、トナー組成液10を収容する原料収容部7と、この原料収容部7内からトナー組成液10稼動時などにトナー組成液10を圧送供給するためのポンプ9とを備えている。
ここでは、液滴噴射ユニット2が1個配置されている例で図示しているが、好ましくは、図2に示すように、複数、例えば制御性の観点からは100〜1,000個(図2では4個のみ図示)の液滴噴射ユニット2を、粒子形成部3の天面部3Aに並べて配置し、各液滴噴射ユニット2には配管8を原料収容部7(共通液溜め)に通じさせてトナー組成液10を供給するようにする。これによって、一度により多くの液滴を放出させることができて、生産効率の向上を図ることができる。
また、原料収容部7からのトナー組成液10は、液滴噴射ユニット2による液滴化現象により自給的に液滴噴射ユニット2に供給されるが、装置稼働時等には上述したように補助的にポンプ9を用いて液供給を行う構成としている。なお、トナー組成液10として、ここでは、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成物を溶剤に溶解又は分散した溶液、分散液を用いている。
次に、液滴噴射ユニット2について図3ないし図5を参照して説明する。なお、図3は同液滴噴射ユニット2の断面説明図、図4は図3を下側から見た要部底面説明図、図5は液滴化手段の概略断面説明図である。
この液滴噴射ユニット2は、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成液10を液滴化して放出させる液滴化手段11と、この液滴化手段11にトナー組成液10を供給する貯留部(液流路)12を形成した流路部材13とを備えている。
液滴化手段11は、複数のノズル(吐出口)15が形成された薄膜16と、この薄膜16を振動させる円環状の振動発生手段である電気機械変換手段(素子)17とで構成されている。ここで、薄膜16は、薄膜が振動を行う際に、振動が殆ど起きない円環状の節部分(図4の斜線を施して示す領域、図5の13A)をハンダによって流路部材13に接合固定している。この節円は原理的には面積を持たない線状であるはずだが、ハンダにより接合するような場合には、どうしても0.2mm〜0.5mm程度の幅を持つことになる。ハンダの幅を変化させて振動モードを検証したところ、この範囲の幅であれば、自由振動を阻害することはないことが判った。また接合箇所は、円環全てを支持する形で接合しても良いが、必ずしもそうである必要もなく、円環上を複数の点でスポット支持させても良い。この場合、支持点はなるべく等間隔にした方が良い。また、ハンダはなるべく低融点のものを使うことが望ましく、これは、圧電振動体の熱による解分極を防止するためである。これまで200℃までのハンダ接合で問題が発生したことはない。
また、上記ハンダによる接合部分13Aの両端部(図5の13B)は、フッ素ゴムあるいはシリコンゴムなどの弾性体により流路部材13に接合固定するのも有効である。接合する幅はどちらの側も特に限定はされないが、充分な強度とシール性を持たせる意味では0.5〜2mmの範囲が望ましい。ノズル配置領域を広くとる意味では、中心側の接合幅はなるべく狭く、周辺側を広くとることが好ましい。節円全てを非弾性体で接合させる場合は、必ずしもこの弾性層は必要ないが、機械的強度の面ではあった方が望ましい。また円環上をスポットで支持固定する場合は、トナー組成液のシールは、全て弾性接着層でまかなうため円環状に接合することになる。電気機械変換手段17は、この薄膜16の変形可能領域16A(流路部材13に固定されていない領域)内の周囲に配されている。この電気機械変換手段17にはリード線21、22を通じて駆動回路(駆動信号発生源)23から所要周波数の駆動電圧(駆動信号)が印加されることで、例えば撓み振動を発生する。
薄膜16の材質、ノズル15の形状としては、特に制限はなく、適宜選択した形状とすることができるが、例えば、薄膜16は厚み5〜500μmの円形の金属板で形成され、かつ、ノズル15の開口径が3〜35μmであることが、ノズル15からトナー組成液の液滴を噴射させるときに、極めて均一な粒子径を有する微小液滴を発生させる観点から好ましい。なお、前記ノズル15の開口径は、真円であれば直径を意味し、楕円であれば短径を意味する。また、複数のノズル15の個数は、2ないし3000個が好ましい。
電気機械変換手段17としては、薄膜16に確実な振動を一定の周波数で与えることができるものであれば特に制限はないが、上述したように、バイモルフ型のたわみ振動の励起される圧電体が好ましい。圧電体としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスが挙げられるが、一般に変位量が小さいことから、積層して使用されることが多い。この他にも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子や、水晶、LiNbO3、LiTaO3、KNbO3、等の単結晶、などが挙げられる。
流路部材13には貯留部12にトナー組成液を供給する液供給チューブ18及び気泡排出用の気泡排出チューブ19がそれぞれ少なくとも1箇所に接続されている。この流路部材13に取り付けた支持部材20によって粒子形成部3の天面部に設置保持されている。なお、ここでは、粒子形成部3の天面部に液滴噴射ユニット2を配置している例で説明しているが、粒子形成部3となる乾燥部側面壁又は底部に液滴噴射ユニット2を設置する構成とすることもできる。
このように、液滴化手段11は、貯留部12に臨む複数のノズル15を有する薄膜16の変形可能領域16A内の周囲に円環状の電気機械変換手段17が配されていることによって、例えば図6に示す比較例構成のように電気機械変換手段17Aが薄膜16の周囲を保持している構成に比べて、相対的に薄膜16の変位量が大きくなり、この大きな変位量が得られる比較的大面積(φ1mm以上)の領域に複数のノズル15を配置することができ、これら複数のノズル15より一度に多くの液滴を安定的に形成して放出することができるようになる。
この液滴化手段11の動作原理について図7を参照して説明すると、図7(a)、(b)に示すような単純円形薄膜16の周辺部16Bを固定した(より具体的には、変形可能領域16Aの外周が固定された状態である)場合、この円形薄膜16に振動を与えると、基本振動は周辺が節になり、図8に示すように、薄膜16の中心Oで変位量ΔLが最大(ΔLmax)となる断面形状となり、振動方向に周期的に上下振動する。
図8に示すような、薄膜16を、周辺が節となり、直径方向(径方向)に節を持たない低次振動モードで振動させることが好ましいものの、周波数領域によっては、図9及び図10に示すような高次の振動モードしかとれない場合がある。これらのモードでは、円形薄膜16内に、同心円状に節を1ないし複数持ち、実質的に径方向に対称な変形形状となる。図8のような低次振動モードは、周波数が10KHz以下の範囲で、且つ振動薄膜の直径が2mmより小さい場合には達成できるが、周波数が10KHzを超えるような条件においては、薄膜直径によらず、殆どが図9及び図10の2次以上の振動をとることになる。そこで、図9あるいは図10のような高次振動時には、この節円上を支持し、固定することによって、自由振動を阻害しない構成をとることが必要となってくる。これは、圧電ブザーなどにおいても良く知られているが、支持位置が節以外である場合は、その部分の振動を強く拘束することになるため、薄膜本来の共振周波数より極端に周波数が下がり、また明確な共振点が得られないことになる。支持位置を薄膜の周囲まで接合した、いわゆる周辺支持がこれにあたる。すなわち薄膜のインピーダンス特性を忠実に再現する為には、節円あるいは節円上の点を支持する以外には方法がない。この節円支持条件においては、自由振動に近い振動を与えることが可能となるため、振動の効率に最も優れ、更に接合部分での機械的応力も最小となることから、機械的耐久性が高くなる。更に、薄膜に自由振動させることができるということは、狙いの2次あるいは3次の振動を安定して得ることができ、これによりノズル配置領域での単一振動が担保されることになる。
また、均一な単一振動にするためには、図10の3次振動よりは、図9の2次振動モードであることがより望ましいが、これはノズル配置領域が拡大することがその主な理由であり、均一な液滴形成をさせるという意味においては、図10のような3次振動であっても全く問題はない。単一な振動により、吐出される液滴体積が一定となり、吐出時の速度を一定範囲に揃えることが可能となり、高速吐出時に発生する尾引き現象による微小液滴の発生を効果的に抑制することが可能となる。
また、図11に示すように、薄膜16に設けた凸形状部16Dの直径方向に節を持たない振動モードも利用できるが、この場合も、図9に示した2次のモードを使用した方がより望ましい。また、節の位置を凸形状部16Dと凸形状部外周部分の境界に設定することが好ましい。図12に示すように、凸形状部16Dの振動は、凸形状中心部と周辺部で振動変位、振動速度差が少なくなりピストニックな運動となるため、ノズル配置領域の拡大も図れるが、薄膜直径を大きくすると、面積的に拡大した凸形状部16Dが高次振動モードいわゆる分割振動をしてしまう危険性も高くなる。この場合、分割振動を避け、単一振動モードにするには、凸形状部16Dの剛性向上が有効である。剛性向上には、よりヤング率の高い金属を薄膜に利用する、フィラー添加したハイブリッド材料を利用する、厚膜化を図る、凸形状を最適化することにより達成することができる。
振動モードの測定には、市販のレーザードップラー振動測定器が使用できる。例えば、ポリテック社製のスキャニング型振動計(PSV−200)を使用すれば、数100μmの立体形状を有する金属板であっても計測でき、少なくとも50μm間隔で格子状に測定を行うことで振動モードを正確に把握することができる。
さらに、図13に示すように、円形薄膜16の中心部を凸形状16Cとすることで、液滴の進行方向を制御し、かつ振動振幅量を調整することが可能となる(なお、この図13の例の詳細については後述する。)。
ここで、円形薄膜16の振動により、円形薄膜16に設けられた複数のノズル15近傍の液体(トナー組成液)には、薄膜16の振動速度Vmに比例した圧力Pacが与えられる。圧力は、媒質(トナー組成液)の放射インピーダンスZrの反作用として生じることが知られており、放射インピーダンスと膜振動速度Vmの積で次の(1)式で示す方程式を用いて表すことができる。
薄膜16の振動速度Vmは、時間とともに周期的に変動しているため時間の関数であり、例えばサイン波形、矩形波形など、様々な周期変動を形成することが可能である。また、前述したとおり、薄膜16の各部位で振動方向の振動変位は異なっており、振動速度Vmは、薄膜16上の位置座標の関数でもある。好ましい薄膜の振動形態は、上述のとおり径方向に対称な変形形状であるので、実質的には半径座標の関数となる。
以上のように、分布を持った薄膜16の振動変位速度に対して、それに比例する圧力が発生し、圧力の周期的変化に対応して貯留部12内のトナー組成液10が、気相へ吐出される。そして、気相へ周期的に排出されたトナー組成液10は、液相と気相との表面張力差によって球体を形成するため、液滴化が周期的に発生し、トナー組成液10は複数のノズル15から液滴化されて放出される。
この様子を図14に模式的に示している。薄膜16の変形可能領域内の周囲に配された電気機械変換手段17に対して撓み振動を与えることによって、薄膜16は、同図(a)に示すように貯留部12側と反対側に撓んだ状態と、同図(b)に示すように貯留部12側に撓んだ状態との間で振動することになる。その結果、この薄膜16の振動によってトナー組成液10が液滴化されて液滴31が噴射(吐出)される。
ここで、液滴化を可能とする薄膜16の振動周波数としては20kHz〜2.0MHzの領域が好ましく、50kHz〜500kHzの範囲がより好ましい。20kHz以上の振動周期であれば、液体の励振によって、トナー組成液10中の顔料やワックスなどの微粒子の分散が促進される。
また、圧力が10kPa以上となることによって、上述の微粒子分散促進作用がより好適に発生する。
この場合、形成される液滴31の直径は、薄膜16の複数のノズル15が形成された領域における振動変位が大きいほど大きくなる傾向にあり、振動変位が小さい場合、小滴が形成されるか、または液滴化しない。このような、複数のノズル15が形成された領域における液滴サイズのばらつきを低減するためには、複数のノズル15の配置を薄膜16の振動変位の最適な位置に規定することが必要である。
実験によれば、図8ないし図10に示す、電気機械変換手段17によって発生する薄膜16の複数のノズル15が形成された領域における薄膜16の振動方向変位(変位量)ΔLの最大値ΔLmaxと最小値ΔLminの比R(=ΔLmax/ΔLmin)が、2.0以内である、つまり、比Rが2.0以内になる領域内に複数のノズル15を配置することにより、液滴サイズのばらつきを、高画質な画像を提供することのできるトナー粒子として必要な領域に保てることを見出した。
振動方向変位(変位量)ΔLの最大値ΔLmaxと最小値ΔLminの比R(=ΔLmax/ΔLmin)が、2.0以内である範囲を拡大するには、図11及び図12に示したように、薄膜に設けた凸形状部の直径方向に節を持たない振動モードを利用する方が有利である。この場合は、むしろ図9に示した2次のモードを使用した方がよい。節の位置を凸形状部16Fと凸形状外周部分の境界に設定することが好ましい。したがって、凸形状部16Fと凸形状部周辺の薄膜とでは、位相が180°異なることとなる。
さらに、液滴サイズ(直径)のばらつきの大きな要因として、サテライト粒子(主に形成される液滴のおよそ10分の1の直径の粒子)の発生が挙げられる。つまり、図15は、好適に液滴31が発生している様子を撮影したものである。図16は、これを乾燥固化したときのトナー粒子Tの図であり、単分散である。これに比較して、圧力が500kPaを超えた条件においては、図17のように主滴31の後方に複数個のサテライト32が発生していることが分かる。この場合、図18に示すように、主粒子に比較して小さな粒子Tsが多数発生する。
この場合、トナー組成液の条件を変更して実験を行ったところ、粘度20mPa・s以下、表面張力20ないし75mN/mの領域においてサテライトの発生開始領域が同様であったことから、前記圧力が、10Pa以上500kPa以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは100kPa以下である。圧力をこの範囲にする、つまり、圧力がこの範囲になる薄膜16の領域内に複数のノズル15を配置することでサテライトの発生を抑制できる。
次に、図1に戻って、トナー組成液10の液滴31を固化してトナー粒子Tを形成する粒子形成部3について説明する。
ここでは、トナー組成液10として、前述したように、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成物を溶剤に溶解又は分散した溶液、分散液を用いているので、液滴31を乾燥して固化することでトナー粒子Tを形成している。つまり、この実施形態では、粒子形成部3は液滴31の溶媒を乾燥して除去することによってトナー粒子Tを形成する溶媒除去部としている(以下では、粒子形成部3を「溶媒除去部」あるいは「乾燥部」とも称する。)。
具体的には、この粒子形成部3は、液滴噴射ユニット2のノズル15から放出される液滴31を、この液滴31の飛翔方向と同方向に流れる乾燥した気体(乾燥気体)35によって搬送することで、液滴31の溶媒を除去してトナー粒子Tを形成する。なお、乾燥気体35とは、大気圧下の露点温度が−10℃以下の状態の気体を意味する。乾燥気体35としては、液滴31を乾燥可能な気体であればよく、例えば、空気、窒素などを用いることができる。
次に、この粒子形成部3にて形成されたトナー粒子Tを捕集するトナー捕集手段としてのトナー捕集部4について説明する。
このトナー捕集部4は、粒子形成部3の粒子飛翔方向下流側に粒子形成部3に連続して設けられ、開口径が入口側(液体噴射ユニット2側)から出口側に向けて漸次縮小するテーパ面41を有している。そして、例えば、図示しない吸引ポンプなどでトナー捕集部4内から吸引を行うことによってトナー捕集部4内に下流側に向かう渦流である気流42を発生させ、この気流42によってトナー粒子Tを捕集するようにしている。このように渦流(気流42)によって遠心力を発生させてトナー粒子Tを捕集することで確実にトナー粒子Tを捕集して下流側のトナー貯留部6に移送することができる。
また、トナー捕集部4の入口部には、粒子形成部3で形成されたトナー粒子Tの電荷を一時的に中和する(除電する)除電手段43を備えている。この除電手段43は、トナー粒子Tに対して軟X線を照射する軟X線照射装置43Aを用いているが、図19に示すように、除電手段43としてトナー粒子Tに対してプラズマ照射を行うプラズマ照射装置43Bを用いることもできる。
このトナー捕集部4で捕集されたトナー粒子Tは、渦流(気流42)によってそのままチューブ5を介してトナー貯留部6に移送されて貯留される。この場合、トナー捕集部4、チューブ5、トナー貯留部6を導電性の材料で形成したときには、これらが接地されている(アースに接続されている。)ことが好ましい。なお、この製造装置は全体が防爆仕様であることが好ましい。また、トナー捕集部4からトナー粒子Tをトナー貯留部6に向けて圧送したり、あるいは、トナー貯留部6側からトナー粒子Tを吸い込む構成としたりすることもできる。
次に、このように構成したトナー製造装置1による本発明に係るトナー製造方法の概要について説明する。
前述したように液滴噴射ユニット2の貯留部12に少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成物を分散ないし溶解させたトナー組成液10を供給した状態で、液滴化手段11の電気機械変換手段17に対して所要の駆動周波数の駆動信号を印加することによって電気機械変換手段17に撓み振動が発生し、この電気機械変換手段17の撓み振動によって薄膜16が周期的に振動し、この薄膜16の振動によって複数のノズル15から貯留部12のトナー組成液10が周期的に液滴化されて液滴31として溶媒除去部としての粒子形成部3(図1参照)内に放出される。
そして、粒子形成部3内に放出された液滴31は、粒子形成部3内で液滴31の飛翔方向と同方向に流れる乾燥気体35によって搬送されることで、溶媒が除去され、トナー粒子Tが形成される。この粒子形成部3にて形成されたトナー粒子Tは下流側のトナー捕集部4にて気流42にて捕集され、チューブ5を介してトナー貯留部6に送られて貯留される。
このように、液滴噴射ユニット2の液滴化手段11には複数のノズル15が設けられているので、同時に複数の液滴化されたトナー組成液の液滴31が連続的に多数放出されることから、トナーの生産効率が飛躍的に向上する。加えて、前述したように、液滴化手段11は、貯留部12に臨む複数のノズル15を有する薄膜16の変形可能領域16A内の周囲に円環状の電気機械変換手段17を配した構成としているので、大きな薄膜16の変位が得られ、この大きな変位量が得られる領域に複数のノズル15を配置することによって一度に多くの液滴31をノズル15の目詰まりを発生することなく安定して放出することができ、安定して効率的なトナー製造が可能になる。さらに、これまでにない粒度の単一分散性を有したトナーを得ることができるようになることが確認された。
なお、この実施形態では、トナー組成液10として、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成物を溶剤に溶解又は分散した溶液、分散液を用いて、液滴を固化する手段として、液滴に含まれる有機溶媒を溶媒除去部(粒子化手段)において乾燥気体へ蒸発させ、乾燥による収縮固化を行ってトナー粒子を形成しているが、これに限られるものではない。
例えば、加熱した貯留部内にトナー組成物を溶融し液状化してトナー組成液とし、液滴として吐出、放出させた後、この液滴を冷却固化してトナー粒子を形成する構成とすることもできる。また、熱硬化性物質を含むトナー組成液を使用して、液滴として放出させた後、加熱し硬化反応させて固化してトナー粒子を形成する構成とすることもできる。
次に、本発明に係るトナーについて説明する。本発明に係るトナーは上述したトナー製造装置を用いたトナー製造方法により製造されたトナーであり、これにより、粒度分布が単分散なものが得られる。
具体的には、前記トナーの粒度分布(重量平均粒径/数平均粒径)としては、1.00〜1.05の範囲内にあるのが好ましい。また、重量平均粒径としては、1〜20μmの範囲内にあることが好ましい。
上述したように本発明に係るトナー製造方法によって製造されたトナーは、静電反発効果により、容易に気流に再分散、すなわち浮遊させることができる。このため、従来の電子写真方式で利用されるような搬送手段を用いなくても、現像領域まで用意にトナーを搬送することができる。すなわち、微弱な気流でも充分な搬送性があり、簡単なエアーポンプでトナーを現像域まで搬送し、そのまま現像することができる。現像は、いわゆるパワークラウド現像となり、気流による像形成の乱れがないことから、極めて良好な静電潜像の現像が行える。また、本発明に係るトナーは、従来の現像方式であっても問題なく応用することができる。このとき、キャリアや現像スリーブ等の部材は、単にトナー搬送手段として使用することになり、従来、機能分担していた摩擦帯電機構を考慮する必要が全くない。したがって、材料の自由度が大きく増すことから、耐久性を大きく向上させたり、安価な材料を使用したりすることもでき、コストの低減を図ることもできる。
次に、本発明で使用できるトナー材料(トナー組成液)について説明する。先ず、前述したようにトナー組成物を溶媒に分散、溶解させたトナー組成液について説明する。
トナー材料としては、従来の電子写真用トナーと全く同じ物が使用できる。すなわち、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂、エポキシ系樹脂、等のトナーバインダーを各種有機溶媒に溶解し、着色剤を分散、かつ、離型剤を分散又は溶解し、これを前記トナー製造方法により微小液滴とし乾燥固化させることで、目的とするトナー粒子を作製することが可能である。また、上記材料を熱溶融混練し得られた混練物を各種溶媒に一度溶解乃至分散した液を、前記トナー製造方法により微小液滴とし乾燥固化させることで、目的のトナーを得ることも可能である。
〔トナー用材料〕
前記トナー用材料としては、少なくとも樹脂と着色剤とを含有し、必要に応じて、キャリア、ワックス等のその他の成分を含有する。
〔樹脂〕
前記樹脂としては、少なくとも結着樹脂が挙げられる。
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等のビニル重合体、これらの単量体又は2種類以上からなる共重合体、ポリエステル系重合体、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂、などが挙げられる。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フエニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−アミルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−へキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロロスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン、又はその誘導体、などが挙げられる。
アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸、あるいはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸、又はそのエステル類、などが挙げられる。
メタクリル系単量体としては、例えば、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸又はそのエステル類、などが挙げられる。
前記ビニル重合体、又は共重合体を形成する他のモノマーの例としては、以下の(1)〜(18)が挙げられる。(1)エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフイン類;(2)ブタジエン、イソプレン等のポリエン類;(3)塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;(4)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;(5)ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;(6)ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;(7)N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;(8)、ビニルナフタリン類;(9)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体等;(10)マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;(11)マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;(12)マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、アルケニルコハク酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、メサコン酸モノメチルエステルの如き不飽和二塩基酸のモノエステル;(13)ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;(14)クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;(15)クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物;(16)該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物、アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマー;(17)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;(18)4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルへキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマー。
本発明に係るトナーにおいて、結着樹脂のビニル重合体、又は共重合体は、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよい。この場合に用いられる架橋剤としては、芳香族ジビニル化合物として、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、などが挙げられる。アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、などが挙げられる。エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの、などが挙げられる。
その他、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物、ジメタクリレート化合物も挙げられる。ポリエステル型ジアクリレート類として、例えば、商品名MANDA(日本化薬社製)が挙げられる。
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.01〜10質量部用いることが好ましく、0.03〜5質量部用いることがより好ましい。これらの架橋性モノマーのうち、トナー用樹脂に定着性、耐オフセット性の点から、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を1つ含む結合鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が好適に挙げられる。これらの中でも、スチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
本発明のビニル重合体又は共重合体の製造に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、1,1'−アゾビス(1−シクロへキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2',4'−ジメチル−4'−メトキシバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパ−オキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロへキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジークミルパーオキサイド、α−(tert−ブチルパーオキシ)イソプロピルべンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルへキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−エトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロへキシルスルホニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサレート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチル−オキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキアリルカーボネート、イソアミルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキシへキサハイドロテレフタレート、tert−ブチルパーオキシアゼレート、などが挙げられる。
結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂の場合、樹脂成分のテトラヒドロフラン(THF)に可溶分のGPCによる分子量分布で、分子量3千〜5万(数平均分子量換算)の領域に少なくとも1つのピークが存在し、分子量10万以上の領域に少なくとも1つのピークが存在する樹脂が、定着性、オフセット性、保存性の点で好ましい。また、THF可溶分としては、分子量分布10万以下の成分が50〜90%となるような結着樹脂が好ましく、分子量5千〜3万の領域にメインピークを有する結着樹脂がより好ましく、5千〜2万の領域にメインピークを有する結着樹脂が最も好ましい。
結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂等のビニル重合体のときの酸価としては、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gであることがより好ましく、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gであることが最も好ましい。
ポリエステル系重合体を構成するモノマーとしては、以下のものが挙げられる。
2価のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、又は、ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオール、などが挙げられる。 ポリエステル樹脂を架橋させるためには、3価以上のアルコールを併用することが好ましい。
前記3価以上の多価アルコールとしては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、例えば、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、などが挙げられる。
ポリエステル系重合体を形成する酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類又はその無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物、などがあげられる。また、3価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、又はこれらの無水物、部分低級アルキルエステル、などが挙げられる。
結着樹脂がポリエステル系樹脂の場合は、樹脂成分のTHF可溶成分の分子量分布で、分子量3千〜5万の領域に少なくとも1つのピークが存在するのが、トナーの定着性、耐オフセット性の点で好ましく、また、THF可溶分としては、分子量10万以下の成分が60〜100%となるような結着樹脂も好ましく、分子量5千〜2万の領域に少なくとも1つのピークが存在する結着樹脂がより好ましい。
結着樹脂がポリエステル樹脂の場合、その酸価としては、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gであることがより好ましく、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gであることが最も好ましい。
本発明において、結着樹脂の分子量分布は、THFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
本発明に係るトナーに使用できる結着樹脂としては、前記ビニル重合体成分及びポリエステル系樹脂成分の少なくともいずれか中に、これらの両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含む樹脂も使用することができる。ポリエステル系樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物、などが挙げられる。ビニル重合体成分を構成するモノマーとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸若しくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
また、ポリエステル系重合体、ビニル重合体とその他の結着樹脂を併用する場合、全体の結着樹脂の酸価が0.1〜50mgKOH/gを有する樹脂を60質量%以上有するものが好ましい。
本発明において、トナー組成物の結着樹脂成分の酸価は、以下の方法により求め、基本操作はJIS K−0070に準ずる。
(1)試料は予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂及び架橋された結着樹脂以外の成分の酸価及び含有量を予め求めておく。試料の粉砕品0.5〜2.0gを精秤し、重合体成分の重さをWgとする。例えば、トナーから結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤又は磁性体等の酸価及び含有量を別途測定しておき、計算により結着樹脂の酸価を求める。
(2)300(ml)のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(体積比4/1)の混合液150(ml)を加え溶解する。
(3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。
(4)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB(ml)とし、以下の式で算出する。ただしfはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)=[(S−B)×f×5.61]/W
トナーの結着樹脂及び結着樹脂を含む組成物は、トナー保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が35〜80℃であるのが好ましく、40〜75℃であるのがより好ましい。Tgが35℃より低いと高温雰囲気下でトナーが劣化しやすく、また定着時にオフセットが発生しやすくなることがある。また、Tgが80℃を超えると、定着性が低下することがある。
本発明で使用できる磁性体としては、例えば、(1)マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄、(2)鉄、コバルト、ニッケル等の金属、又は、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金。(3)及びこれらの混合物、などが用いられる。
磁性体として具体的に例示すると、Fe3O4、γ−Fe2O3、ZnFe2O4、Y3Fe5O12、CdFe2O4、Gd3Fe5O12、CuFe2O4、PbFe12O、NiFe2O4、NdFe2O、BaFe12O19、MgFe2O4、MnFe2O4、LaFeO3、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも特に、四三酸化鉄、γ−三二酸化鉄の微粉末が好適に挙げられる。
また、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、又はその混合物も使用できる。異種元素を例示すると、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、などが挙げられる。好ましい異種元素としては、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、又はジルコニウムから選択される。異種元素は、酸化鉄結晶格子の中に取り込まれていてもよいし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていてもよいし、又は表面に酸化物あるいは水酸化物として存在していてもよいが、酸化物として含有されているのが好ましい。
前記異種元素は、磁性体生成時にそれぞれの異種元素の塩を混在させ、pH調整により、粒子中に取り込むことができる。また、磁性体粒子生成後にpH調整、あるいは各々の元素の塩を添加しpH調整することにより、粒子表面に析出することができる。
前記磁性体の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、磁性体10〜200質量部が好ましく、20〜150質量部がより好ましい。これらの磁性体の個数平均粒径としては、0.1〜2μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。前記個数平均径は、透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。
また、磁性体の磁気特性としては、10Kエルステッド印加での磁気特性がそれぞれ、抗磁力20〜150エルステッド、飽和磁化50〜200emu/g、残留磁化2〜20emu/gのものが好ましい。
前記磁性体は、着色剤としても使用することができる。
〔着色剤〕
前記着色剤としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びこれらの混合物、などが挙げられる。
前記着色剤の含有量としては、トナーに対して1〜15質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。
本発明に係るトナーで用いる着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、先にあげた変性、未変性ポリエステル樹脂の他に、例えば、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
前記マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練して得る事ができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いる事ができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の、水を含んだ水性ペーストを、樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も、着色剤のウエットケーキをそのまま用いる事ができるため、乾燥する必要がなく、好適に使用される。混合混練するには、3本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に使用される。
前記マスターバッチの使用量としては、結着樹脂100量部に対して、0.1〜20質量部が好ましい。
また、前記マスターバッチ用の樹脂は、酸価が30mgKOH/g以下、アミン価が1〜100で、着色剤を分散させて使用することが好ましく、酸価が20mgKOH/g以下、アミン価が10〜50で、着色剤を分散させて使用することがより好ましい。酸価が30mgKOH/gを超えると、高湿下での帯電性が低下し、顔料分散性も不十分となる
ことがある。また、アミン価が1未満であるとき、及び、アミン価が100を超えるときにも、顔料分散性が不十分となることがある。なお、酸価はJIS K0070に記載の方法により測定することができ、アミン価はJIS K7237に記載の方法により測定することができる。
また、分散剤は、顔料分散性の点で、結着樹脂との相溶性が高いことが好ましく、具体的な市販品としては、「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」(味の素ファインテクノ社製)、「Disperbyk−2001」(ビックケミー社製)、「EFKA−4010」(EFKA社製)、などが挙げられる。
前記分散剤は、トナー中に、着色剤に対して0.1〜10質量%の割合で配合することが好ましい。配合割合が0.1質量%未満であると、顔料分散性が不十分となることがあり、10質量%より多いと、高湿下での帯電性が低下することがある。
前記分散剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるスチレン換算重量での、メインピークの極大値の分子量で、500〜100000が好ましく、顔料分散性の観点から、3000〜100000がより好ましい。特に、5000〜50000が好ましく、5000〜30000が最も好ましい。分子量が500未満であると、極性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがあり、分子量が100000を超えると、溶剤との親和性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがある。
前記分散剤の添加量は、着色剤100質量部に対して1〜200質量部であることが好ましく、5〜80質量部であることがより好ましい。1質量部未満であると分散能が低くなることがあり、200質量部を超えると帯電性が低下することがある。
〔その他の成分〕
<キャリア>
本発明に係るトナーは、キャリアと混合して2成分現像剤として使用してもよい。前記キャリアとしては、通常のフェライト、マグネタイト等のキャリアも樹脂コートキャリアも使用することができる。
前記樹脂コートキャリアは、キャリアコア粒子とキャリアコア粒子表面を被覆(コート)する樹脂である被覆材からなる。
該被覆材に使用する樹脂としては、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン−アクリル系樹脂、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素含有樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂が好適に挙げられる。この他にも、アイオモノマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等のキャリアの被覆(コート)材として使用できる樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、樹脂中に磁性粉が分散されたバインダー型のキャリアコアも用いることができる。
樹脂コートキャリアにおいて、キャリアコアの表面を少なくとも樹脂被覆剤で被覆する方法としては、樹脂を溶剤中に溶解若しくは懸濁せしめて塗布したキャリアコアに付着せしめる方法、あるいは単に粉体状態で混合する方法が適用できる。
前記樹脂コートキャリアに対する樹脂被覆材の割合としては、適宜決定すればよいが、樹脂コートキャリアに対し0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜1質量%がより好ましい。
2種以上の混合物の被覆(コート)剤で磁性体を被覆する使用例としては、(1)酸化チタン微粉体100質量部に対してジメチルジクロロシランとジメチルシリコンオイル(質量比1:5)の混合物12質量部で処理したもの、(2)シリカ微粉体100質量部に対してジメチルジクロロシランとジメチルシリコンオイル(質量比1:5)の混合物20質量部で処理したものが挙げられる。
前記樹脂中、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、含フッ素樹脂とスチレン系共重合体との混合物、シリコーン樹脂が好適に使用され、特にシリコーン樹脂が好ましい。
含フッ素樹脂とスチレン系共重合体との混合物としては、例えば、ポリフッ化ビニリデンとスチレン−メタクリ酸メチル共重合体との混合物、ポリテトラフルオロエチレンとスチレン−メタクリル酸メチル共重合体との混合物、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合(共重合体質量比10:90〜90:10)とスチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体(共重合質量比10:90〜90:10)とスチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル−メタクリル酸メチル共重合体(共重合体質量比20〜60:5〜30:10:50)との混合物が挙げられる。
シリコーン樹脂としては、含窒素シリコーン樹脂及び含窒素シランカップリング剤と、シリコーン樹脂とが反応することにより生成された、変性シリコーン樹脂が挙げられる。キャリアコアの磁性材料としては、例えば、フェライト、鉄過剰型フェライト、マグネタイト、γ−酸化鉄等の酸化物や、鉄、コバルト、ニッケルのような金属、又はこれらの合金を用いることができる。
また、これらの磁性材料に含まれる元素としては、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムが挙げられる。これらの中でも特に、銅、亜鉛、及び鉄成分を主成分とする銅−亜鉛−鉄系フェライト、マンガン、マグネシウム及び鉄成分を主成分とするマンガン−マグネシウム−鉄系フェライトが好適に挙げられる。
前記キャリアの抵抗値としては、キャリアの表面の凹凸度合い、被覆する樹脂の量を調整して106〜1010Ω・cmにするのがよい。
前記キャリアの粒径としては、4〜200μmのものが使用できるが、10〜150μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。特に、樹脂コートキャリアは、50%粒径が20〜70μmであることが好ましい。
2成分系現像剤では、キャリア100質量部に対して、本発明のトナー1〜200質量部で使用することが好ましく、キャリア100質量部に対して、トナー2〜50質量部で使用するのがより好ましい。
<ワックス>
また、本発明では、結着樹脂、着色剤とともにワックスを含有させることもできる。
ワックスとしては、特に制限はなく、通常使用されるものを適宜選択して使用することができるが、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合体、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう等の植物系ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス、オゾケライト、セレシン、ペテロラタム等の鉱物系ワックス、モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類。脱酸カルナバワックスの等の脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したもの、などが挙げられる。
前記ワックスの例としては、更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に直鎖のアルキル基を有する直鎖アルキルカルボン酸類等の飽和直鎖脂肪酸、プランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウピルアルコール、セリルアルコール、メシリルアルコール、あるいは長鎖アルキルアルコール等の飽和アルコール、ソルビトール等の多価アルコール、リノール酸アミド、オレフィン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド、メチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセパシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類、m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス、ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物、植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
より好適な例としては、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン、低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒の如き触媒を用いて重合したポリオレフィン、放射線、電磁波又は光を利用して重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィツシャートロプシュワックス、ジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス、炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス、水酸基又はカルボキシル基の如き官能基を有する炭化水素系ワックス、炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物、これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート、無水マレイン酸の如きビニルモノマーでグラフト変性したワックスが挙げられる。
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は溶液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
前記ワックスの融点としては、定着性と耐オフセット性のバランスを取るために、70〜140℃であることが好ましく、70〜120℃であることがより好ましい。70℃未満では耐ブロッキング性が低下することがあり、140℃を超えると耐オフセット効果が発現しにくくなることがある。
また、2種以上の異なる種類のワックスを併用することにより、ワックスの作用である可塑化作用と離型作用を同時に発現させることができる。
可塑化作用を有するワックスの種類としては、例えば、融点の低いワックス、分子の構造上に分岐のあるものや極性基を有する構造のもの、などが挙げられる。
離型作用を有するワックスとしては、融点の高いワックスが挙げられ、その分子の構造としては、直鎖構造のものや、官能基を有さない無極性のものが挙げられる。使用例としては、2種以上の異なるワックスの融点の差が10℃〜100℃のものの組み合わせや、ポリオレフィンとグラフト変性ポリオレフィンの組み合わせ、などが挙げられる。
2種のワックスを選択する際には、同様構造のワックスの場合は、相対的に、融点の低いワックスが可塑化作用を発揮し、融点の高いワックスが離型作用を発揮する。この時、融点の差が10〜100℃の場合に、機能分離が効果的に発現する。10℃未満では機能分離効果が表れにくいことがあり、100℃を超える場合には相互作用による機能の強調が行われにくいことがある。このとき、機能分離効果を発揮しやすくなる傾向があることから、少なくとも一方のワックスの融点が70〜120℃であることが好ましく、70〜100℃であることがより好ましい。
前記ワックスは、相対的に、枝分かれ構造のものや官能基の如き極性基を有するものや主成分とは異なる成分で変性されたものが可塑作用を発揮し、より直鎖構造のものや官能基を有さない無極性のものや未変性のストレートなものが離型作用を発揮する。好ましい組み合わせとしては、エチレンを主成分とするポリエチレンホモポリマー又はコポリマーとエチレン以外のオレフィンを主成分とするポリオレフィンホモポリマー又はコポリマーの組み合わせ、ポリオレフィンとグラフト変成ポリオレフィンの組み合わせ、アルコールワックス、脂肪酸ワックス又はエステルワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせ、フイシャートロプシュワックス又はポリオレフィンワックスとパラフィンワックス又はマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、フィッシャトロプシュワックスとポルリオレフィンワックスの組み合わせ、パラフィンワックスとマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、カルナバワックズ、キャンデリラワックス、ライスワックス又はモンタンワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせが挙げられる。
いずれの場合においても、トナー保存性と定着性のバランスをとりやすくなることから、トナーのDSC測定において観測される吸熱ピークにおいて、70〜110℃の領域に最大ピークのピークトップ温度があることが好ましく、70〜110℃の領域に最大ピークを有しているのがより好ましい。
前記ワックスの総含有量としては、結着樹脂100質量部に対し、0.2〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
本発明では、DSCにおいて測定されるワックスの吸熱ピークの最大ピークのピークトップの温度をもってワックスの融点とする。
前記ワックス又はトナーのDSC測定機器としては、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。測定方法としては、ASTM D3418−82に準じて行う。本発明に用いられるDSC曲線は、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、温度速度10℃/minで、昇温させた時に測定されるものを用いる。
<流動性向上剤>
本発明に係るトナーには、流動性向上剤を添加してもよい。該流動性向上剤は、トナー表面に添加することにより、トナーの流動性を改善(流動しやすくなる)するものである。
前記流動性向上剤としては、例えば、カーボンブラック、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナ、それらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤若しくはシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカ,処理酸化チタン,処理アルミナ、などが挙げられる。これらの中でも、微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナが好ましく、また、これらをシランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカが更に好ましい。
前記流動性向上剤の粒径としては、平均一次粒径として、0.001〜2μmであることが好ましく、0.002〜0.2μmであることがより好ましい。
前記微粉末シリカは、ケイ素ハロゲン化含物の気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。
ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば、AEROSIL(日本アエロジル社商品名、以下同じ)−130、−300、−380、−TT600、−MOX170、−MOX80、−COK84:Ca−O−SiL(CABOT社商品名)−M−5、−MS−7、−MS−75、−HS−5、−EH−5、Wacker HDK(WACKER−CHEMIE社商品名)−N20 V15、−N20E、−T30、−T40:D−CFineSi1ica(ダウコーニング社商品名):Franso1(Fransi1社商品名)、などが挙げられる。
さらには、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が好ましくは30〜80%の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化は、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的あるいは物理的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する方法がよい。
有機ケイ素化合物としては、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジビニルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、へキサメチルジシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロルエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し、未端に位置する単位にそれぞれSiに結合した水酸基を0〜1個含有するジメチルポリシロキサン等がある。更に、ジメチルシリコーンオイルの如きシリコーンオイルが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
流動性向上剤の個数平均粒径としては、5〜100nmになるものが好ましく、5〜50nmになるものがより好ましい。
BET法で測定した窒素吸着による比表面積としては、30m2/g以上が好ましく、60〜400m2/gがより好ましい。 表面処理された微粉体としては、20m2/g以上が好ましく、40〜300m2/gがより好ましい。
これらの微粉体の適用量としては、トナー粒子100質量部に対して0.03〜8質量部が好ましい。
本発明に係るトナーには、他の添加剤として、静電潜像担持体・キャリアーの保護、クリーニング性の向上、熱特性・電気特性・物理特性の調整、抵抗調整、軟化点調整、定着率向上等を目的として、各種金属石けん、フッ素系界面活性剤、フタル酸ジオクチルや、導電性付与剤として酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化アンチモン等や、酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ等の無機微粉体などを必要に応じて添加することができる。これらの無機微粉体は、必要に応じて疎水化してもよい。また、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデン等の滑剤、酸化セシウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、ケーキング防止剤、更に、トナー粒子と逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子とを、現像性向上剤として少量用いることもできる。
これらの添加剤は、帯電量コントロール等の目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤、又は種々の処理剤で処理することも好ましい。
現像剤を調製する際には、現像剤の流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、先に挙げた疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を添加混合してもよい。外添剤の混合は、一般の粉体の混合機を適宜選択して使用することができるが、ジャケット等を装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。外添剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中または漸次外添剤を加えていけばよいし、混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを変化させてもよく、はじめに強い負荷を、次に比較的弱い負荷を与えても良いし、その逆でも良い。
使用できる混合機の例としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、などが挙げられる。
得られたトナーの形状をさらに調節する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、結着樹脂、着色剤からなるトナー材料を溶融混練後、微粉砕したものをハイブリタイザー、メカノフュージョン等を用いて、機械的に形状を調節する方法や、いわゆるスプレードライ法と呼ばれるトナー材料をトナーバインダーが可溶な溶剤に溶解分散後、スプレードライ装置を用いて脱溶剤化して球形トナーを得る方法、水系媒体中で加熱することにより球形化する方法、などが挙げられる。
前記外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。
前記無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、などを挙げることができる。前記無機微粒子の一次粒子径は、5mμ〜2μmであることが好ましく、5mμ〜500mμであることがより好ましい。
前記BET法による比表面積は、20〜500m2/gであることが好ましい。
前記無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5質量%であることが好ましく、0.01〜2.0質量%であることがより好ましい。
この他、高分子系微粒子たとえばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
このような外添剤は、表面処理剤により、疎水性を上げ、高湿度下においても外添剤自身の劣化を防止することができる。
前記表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、などが好適に挙げられる。
前記無機微粒子の一次粒子径としては、5mμ〜2μmであることが好ましく、5mμ〜500mμであることがより好ましい。また、BET法による比表面積としては、20〜500m2/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合としては、トナーの0.01〜5重量%であることが好ましく、0.01〜2.0重量%であることがより好ましい。
静電潜像担持体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合によって製造されたポリマー微粒子、などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
本発明に係るトナーを用いた現像方法は、従来の電子写真法に使用する静電潜像担持体が全て使用できるが、例えば、有機静電潜像担持体、非晶質シリカ静電潜像担持体、セレン静電潜像担持体、酸化亜鉛静電潜像担持体、などが好適に使用可能である。
次に、粒子化手段(粒子化工程)で冷却固化を行う場合に使用するトナー組成液について説明する。
加熱溶融して冷却固化して得るトナー組成物としては、以下の溶融して低粘度の溶融液が得られる材料を主成分として用いることが好ましい。
具体的には、モノアミド、ビスアミド、テトラアミド、ポリアミド、エステルアミド、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、アクリル酸系及びメタクリル酸系高分子、スチレン系高分子、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリケトン、シリコーン、クマロン、脂肪酸エステル、トリグリセライド、天然樹脂、天然及び合成ワックス等から選択された1ないし多成分から成ることが可能である。
ポリアミド樹脂として、バーサミド711、バーサミド725、バーサミド930、バーサミド940、バーサロン1117、バーサロン1138、バーサロン1300(以上ヘンケル製)、トーマイド391、トーマイド393、トーマイド394、トーマイド395、トーマイド397、トーマイド509、トーマイド535、トーマイド558、トーマイド560、トーマイド1310、トーマイド1396、トーマイド90、トーマイド92(以上富士化成製)、ポリエステルとして、KTR2150(以上花王製)、ポリ酢酸ビニルとして、AC401、AC540、AC580(以上アライドケミカル製)、シリコーンとして、シリコーンSH6018(東レシリコーン製)、シリコーンKR215、シリコーンKR216、シリコーンKR220(以上信越シリコーン製)、クマロンとして、エスクロンG−90(新日鐵化学製)などが使用できる。
脂肪酸類としては、例えばステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などから選ばれる酸及びそれらのエステル類の少なくとも1種または2種以上を混合して用いることができる。
脂肪酸アミドとしては、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸エステルアミド、パルミチン酸アミド、ベヘン酸アミド、ブラシジン酸アミドなど、N−置換脂肪酸アミドとしてN,N’−2−ヒドロキステアリン酸アミド、N,N´−エチレンビスオレイン酸アミド、N,N´−キシレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸モノメチロールアミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N,N´−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N´−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N´−ジステアリルイソフタル酸アミド、2−ステアラミドエチルステアレートなどから選ばれる少なくとも1種または2種以上を混合して用いることができる。
N−置換脂肪酸アミドとしてN,N’−2−ヒドロキステアリン酸アミド、N,N´−エチレンビスオレイン酸アミド、N,N´−キシレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸モノメチロールアミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N,N´−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N´−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N´−ジステアリルイソフタル酸アミドなどから選ばれる少なくとも1種または2種以上を混合して用いることができる。
脂肪酸エステルとしては一価または多価アルコール脂肪酸エステルが好ましい。例えば、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、エチレングリコールジステアレート等が選ばれる。
具体的には、レオドールSP−S10、レオドールSP−S30、レオドールSA10、エマゾールP−10、エマゾールS−10、エマゾールS−20、エマゾールB、レオドールスーパSP−S10、エマノーン3199、エマノーン3299、エキセパールPE−MS(以上花王製)等が使用できる。
更に好ましいのは、グリセリンの脂肪酸エステルである。
例えば、ステアリン酸モノグリセライド、パルミチンモノグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、ベヘニン酸モノグリセライドなどが選ばれる。具体的には、レオドールMS−50、レオドールMS−60、レオドールMS−165、レオドールMO−60、エキセパールG−MB(以上花王製)、脱臭精製カルナバワックスNo.1、精製キャンデリラワックスNo.1(以上野田ワックス製)、シンクロワックスERL−C、シンクロワックスHR−C(以上クローダ製)、KF2(川研ファインケミカル製)が使用できる。また、特殊エステル系ワックスとして、エキセパールDS−C2(花王製)、カワスリップ−L、カワスリップ−R(以上川研ファインケミカル製)等も選ばれる。セロチン酸ミリシル、セロチン酸セリル、モンタン酸セリル、パルミチン酸ミリシル、ステアリン酸ミリシル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸セチル等の高級脂肪酸の高級アルコールエステル類等も選ばれる。
ここで、アルキル基は、脂肪酸およびアルコールの両方に存在する。これらの脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種、または2種以上を混合して用いることができる。この脂肪酸エステル類は溶融粘度が低く、インク溶融時の流動性が安定している他に、炭素−炭素の結合に比べて、可撓性が高く表面保護力が強いため、印刷画像の折り曲げにも耐える。好ましい脂肪酸エステルは、針入度が1より大きく加圧処理し易いものである。更に、噴射時の粘度が20mPa・sより小さいものが適している。
ポリアミド類は、一般に芳香族ポリアミドとダイマー酸ポリアミドに大別されるが、本発明では特にダイマー(二量体)酸ベースのポリアミドが好ましい。さらに、このベースとなる酸がオレイン酸、リノール酸、リノレイン酸またはエレオステアリン酸であることが最適である。具体的には、Macromelt 6030、Macromelt 6065、Macromelt 6071、Macromelt6212、Macromelt 6217、Macromelt 6224、Macromelt 6228、Macromelt 238、Macromelt 6239、Macromelt 6240、Macromelt 6301、Macromelt 6900、DPX 335−10、DPX H−415、DPX 335−11、DPX 830、DPX 850、DPX 925、DPX 927、DPX 1160、DPX 1163、DPX 1175、DPX 1196、DPX 1358(以上ヘンケル白水製)、SYLVAMIDE−5(アリゾナケミカル製)、UNIREZ 2224、UNIREZ 2970(以上ユニオンキャンプ製)等が選ばれる。
グリセライドとしては、ロジンエステル、ラノリンエステル、硬化ひまし油、部分水添ひまし油、大豆油の極度硬化油、ナタネ油の極度硬化油、植物性極度硬化油などから選ばれる少なくても1種または2種以上を混合して用いることができる。
ワックス系としては、具体的にはパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックスに代表される植物系ワックス、ポリエチレンワックスや硬化ひまし油、ステアリン酸、ベヘン酸等の高級脂肪酸、および高級アルコール、ステアロン、ラウロン等のケトン、特に脂肪酸エステルアミド、飽和あるいは不飽和脂肪酸アミド、脂肪酸エステルが好ましい。
更に上記の脂肪酸、脂肪酸アミド、グリセライド、ワックス等他のインク成分と適応性である限り、考えられるどの組み合わせにおいても使用できる。
なお、着色剤等は前述したと同様である。
上記の成分の混合、分散には周知の各種の粉砕又は分散装置が特に制限無く使用できる。これらには、高速回転ミル、ローラーミル、容器駆動媒体ミル、媒体撹拌ミル、ジェットミル等の区分ないしは回転円筒式ミル、振動ボールミル、遠心式ボールミル、媒体撹拌式ミル及びコロイドミル等の区分があり、例えば、カッターミル、ケージミル、ハンマーミル、遠心分級ミル、スタンプミル、フレットミル、遠心ミル、ボールベアリングミル、リングロールミル、テーブルミル、転動ボールミル、チューブミル、コニカルミル、トリコンミル、ポットミル、カスケードミル、遠心流動化ミル、アニュラーミル、ハイスピードデイスパーサ、インペラデイスパーザ、ゲートミキサ、ビーズミル、サンドミル、パールミル、コブラミル、ピンミル、モリネックスミル、撹拌ミル、ユニバーサルミル、センチュリーミル、プレッシャミル、アジテータミル、2本ロールエクストルーダ、2本ロールミル、3本ロールミル、ニッチェミル、ニーダ、ミキサ、ストーンミル、ケーデイミル、遊星ミル、ハイスイングミル、環状ミル、撹拌槽型撹拌ミル、竪型流通管撹拌ミル、ボールミル、パドルミキサ、タワーミル、アトライタ、セントリミル、サンドグラインダ、グレンミル、アトリションミル、プラネタリーミル、振動ミル、フロージェットミキサ、スラッシャーミル、ペグミル、マイクロフルダイザ、クレアミックス、ライノミル、ホモジナイザ、ピン付きビーズミル、横型ビーズミル、ピンミル、マジャックミル等がある。
上記の粉砕又は分散装置で、トナー材料を混合、粉砕、分散したトナー組成液を、融解状態を維持したまま貯留部12に導入して液滴化手段11のノズル15から吐出して液滴を形成してもよいし、あるいは、上記の粉砕又は分散装置で得られたトナー組成液をいったん冷却し固化し粗粉砕して取り置き、該粗粉砕物を貯留部12に導入加熱溶融した後、液滴化手段11のノズル15から吐出して液滴を形成してもよい。
次に、放射線硬化性物質を含むトナー組成液を粒子化して、光照射し硬化反応させて、微粒子を形成させる場合のトナー組成液について説明する。
ここで、放射線硬化性物質としては、一般に感放射線性樹脂あるいは放射線硬化性樹脂として知られている還化ポリイソプレン、還化ポリブタジエン、ポリエーテルのポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリビニルアルコールの桂皮酸エステル、ノボラック樹脂、ポリメタクリル酸グリシジル、塩素化ポリメチルスチレン等が挙げられる。
これらの放射線硬化性物質は、溶媒または重合性単量体によって希釈され、放射線架橋剤あるいは放射線重合開始剤が加えられる。重合性単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、ジビニルベンゼン等のビニル芳香族単量体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、エチレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル等のアクリル系単量体、蟻酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル系単量体、およびジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等が挙げられる。
これらの重合性単量体は、単独でも、2種以上の組み合わせで用いても良く、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、ジビニルベンゼンを0.05〜3重量部含有する。ことが、定着性を維持しつつオフセット現象を防止できるため好適である。
前記放射線架橋剤あるいは放射線重合開始剤としては、芳香族アジド、トリクロロメチルトリアジド等のアジド化合物、ハロゲン化銀、ビスイミダゾール誘導体、シアニン色素、ケトクマリン色素等が挙げられる。また、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル等のアゾ系ラジカル重合開始剤を用いることもできる。
また、放射線硬化性物質を含むトナー組成液の液滴31を浮遊中に硬化させるための光の波長は、紫外〜480nm、特に250〜410nmが好ましく、光源として高圧あるいは低圧水銀灯を用いることができる。この硬化に要するエネルギーは、数mJ/cm2〜数J/cm2が好ましい。
次に、本発明に係るトナー製造装置の他の実施形態について図20ないし図23を参照して説明する。なお、図20は同実施形態の第1例における液滴化手段の底面説明図、図21は同じく断面説明図、図22は同実施形態の第2例における液滴化手段の底面説明図、図23は同じく断面説明図である。この実施形態において、液滴化手段11の薄膜16は、液滴を放出させる方向に凸形状に形成した凸形状部16D(第1例)、16E(第2例)を有し、この凸形状に形成された部分である凸形状部16D、16Eに複数のノズル15が形成されている。
ここで、図20及び図21に示す第1例において、薄膜16の凸形状部16Dは、円錐形状であって、この円錐形状の凸形状部16Dの高さをh、凸形状部16Dの底面直径(円錐直径)をRとしたとき、R/hが14〜40の範囲内になるように形成している。
また、図22及び図23に示す第2例において、薄膜16の凸形状部16Eは、円錐台形状であって、この円錐台形状の凸形状部16Eの高さをh、凸形状部16Eの底面直径(円錐直径)をR、凸形状部16Eの上面(平坦部)直径をrとしたとき、R/hが14〜40の範囲内にあり、且つ、r/Rが0.125〜0.375の範囲内になるように形成している。
つまり、薄膜16を振動させることによる液滴形成のメカニズムは、前述したように、複数のノズル15を有する薄膜16の周囲(変形可能領域内の)に円環状に形成された振動発生手段(例えば電気機械変換手段17)に配して、薄膜16を上下に振動させることによって液滴を吐出させる。この場合、円環状の振動発生手段17によって薄膜16を上下に撓ませることにより薄膜16を大きく(大きな変位量で)振動させることができ、この撓み振動を効率良く行うことで、より効率の良い液滴吐出を行うことができる。
そこで、本発明者らは薄膜の形状について鋭意検討した結果、円環状に形成された振動発生手段により与えられる振動を、より効率的に、複数ノズルを有する薄膜に伝搬し、あるいは振動発生手段による薄膜の振幅量(変位量)を増幅することによって、少ないエネルギーで液滴吐出を達成する構成を見出した。
すなわち、薄膜16を前記実施形態のように単なる平板にした場合においては、液滴を吐出するノズル15は薄膜16のほぼ中央部に配置されたノズル15に限られ、全ノズル数に対し最大で20%しか吐出されておらず、ノズル15の使用効率という点で十分でないことが判明した。これでは、複数ノズルを有する薄膜1枚当たりの吐出滴数が十分でない。
トナー生産のような極めて生産効率の高さが要求される製造プロセスにおいては、薄膜に設けたノズルから極めて効率よく液滴吐出させること不可欠である。特に、液滴噴射ユニットを乾燥除去部の上流に設ける構成を採用した場合、液滴噴射ユニットの投影面積に限界があるためであり、この関係から計算すると、ノズルの有効使用率を少なくとも70%、好ましくは80%を越えるところまで向上する必要がある。
ところが、複数のノズル15を有する薄膜16を単なる平板とした場合には、円環状に形成された振動発生手段により与えられる振動は、薄膜16が平板であるためにうまく撓むことができず、効率的に振動を薄膜に伝えることができないことが判明した。
そこで、複数のノズル15を有する薄膜16をうまく撓み振動させるには、少なくともその一部を凸形状とすることが好適であることが確認された。なお、薄膜16の少なくとも一部を凸形状とする場合でも、吐出効率をより高くする場合には、その凸形状にも最適範囲があることが判明し、実験的には上述した第1例、第2例のような高さ、径の関係にすることが好ましいことが確認された。
ここで、薄膜16に凸形状部を形成するには、一般的には平板に複数のノズル15を設けた薄膜16を機械的に圧延させることにより、円錐状に凸形状を設けることができる。逆に、凸形状をすでに設けているノズルのない薄膜16に、後からノズル15を形成することも、レーザー加工などの手段を用いれば可能ではあるが、曲率のついた板に加工を行うということから、ノズル15の径精度、加工コストの点からは、上述したようにノズル形成後に凸形状を形成することが好ましい。
この場合、薄膜16に凸形状部16Dを形成するには、金属薄膜に細く尖った棒状の加工治具を押しつけることで当接部分が圧延され略円錐形状の凸形状部16Dが得られる。押さえつけ時の圧力を調整することにより、凸形状部16Dの高さhを制御することができる。ただし、金属薄膜の強度及び厚みによって高さhは異なるが、圧延が進むと、必ず薄膜そのものが破断するので制限が生じる。つまり、凸形状部16Dの高さhにはおのず
と上限値が存在することになる。この上限値は薄膜16の厚みによる影響が大きく、金属種による差は余りない。
また、棒状加工治具の先端部、すなわち薄膜16に接する部分の形状を変化させることにより、薄膜16につける凸形状部の中央部のみを平坦にすることができる。具体的には、円錐状又は棒状の加工治具の先端を平坦面とすることで、凸形状部を円錐の中央部のみ平坦としたいわゆるドーム状ないし円錐台形状の凸形状部Eを形成することができる。
次に、この実施形態における具体的な実施例について説明する。なお、本発明は、下記実施例に何ら限定されるものではない。
先ず、複数のノズル15を形成した薄膜16に対する凸形状部の加工方法について説明する。
第1に、20μmの厚みであるNi膜を用い、複数のノズル15を設けた直径9.5mmの薄膜16に前述した加工方法を用いて、凸形状部の高さhを、75μmから300μmまで25μm刻みで加工を行った。また、凸形状部の底面直径(円錐直径)Rは、4000μmとした。この場合、破断は250μmまでは発生しなかったが、275μmにおいて薄膜の一部が破断するに至った。
第2に、同様に20μmの厚みである白金の薄膜を用いて同様の実験を行ったが、この場合も、破断は250μmまでは発生しなかったが、275μmにおいてノズル間の一部が破断する結果となった。
第3に、同様に20μmの厚みであるSUS304の薄膜を用いても同様の実験を行ったが、この場合は、破断は225μmまでは発生しなかったが、250μmにおいてノズル15間に一部クラック(裂け目)が生じる結果となった。また、やはり275μmでは破断が生じた。
これらの結果から、20μmの厚さの薄膜では4000μmのエリアに円錐形状の凸形状部16Dを設けようとすると、金属種にはあまり影響を受けることなく、250μm程度までは加工可能なことが判明した。
さらに、凸形状部を設けるエリアを4000μmから5000μmに代え、20μm厚みのNi薄膜で同様の加工を実施したが、この場合は、破断は300μmまでは発生せず、325μmにおいてノズル15間の一部にクラックが生じる結果となった。
次に、棒状加工治具の先端を円板状とし、この円板部の直径をかえることにより、凸形状部の円錐中央部のみ平坦としたいわゆるドーム状をなした円錐台形状の凸形状部16Eにおいて、中央の平坦部のエリアを変化させたものの加工を行った。
先ず、20μmの厚みであるNi膜を用いた場合、複数のノズル15を設けた直径9.5mmの薄膜に前述の加工法を用いて、棒状加工治具の円板直径を500μm〜3000μmまで500μm刻みで変えて加工を実施した。さらに、凸形状部16Eの高さhを75μmから350μmまで25μm刻みで加工を行った。また、凸形状部16Eの底面直径(円錐直径)Rは4000μmとした。
この結果、円板直径が500μm〜1000μmの場合、破断は250μmまでは発生しなかったが、275μmにおいて薄膜の一部が破断するに至った。また、円板直径が1500μmの場合は、破断は225μmまでは発生しなかったが、250μmにおいて薄膜の一部が破断するに至った。さらに、円板直径が2000μmの場合は225μmまで破断の発生は生じないものの、250μmの凸高さhにまで圧延することができなかった。
以上の結果から、圧延による金属薄膜の破断が発生することによる制約によって、複数のノズル15を有する薄膜16に設けた円錐形状の凸形状部16Dの高さhと円錐直径(底面直径)Rの関係は、R/hがおおよそ14が上限となることが判った。また、円錐の中央部のみを平坦としたドーム状(円錐台形状)の凸形状部16Eの、ドームの高さhと円錐直径(底面直径)Rにおいては、R/hが16で、中央の平坦部の直径rと円錐直径Rとの比r/Rが0.125から0.375の範囲は作製可能範囲であることが判った。
このようにして、加工作製した凸形状部を設けた種々の薄膜を用いて、ノズル15の利用率との関係を求めたところ、表2に示すような関係が得られた。なお、表2における「ノズルNo.」とは、凸形状部の異なる薄膜16の種類を示している。また、ここで、ノズル利用率とは、実測した液滴吐出量(ml/min)を、全ノズルから一定周波数で液滴吐出すると想定した場合における計算上の液滴吐出量(ml/min)で割った値に100をかけたものとした。
ここで得られた関係から、複数のノズル15を有する薄膜16の少なくとも一部が凸形状をなしている場合は、全くの平板である場合に対し、著しく液滴吐出効率が高まることが確認された。
また、複数のノズル15を有する薄膜16に円錐形状の凸形状部16Dを設け、円錐の高さhと円錐の直径(底面直径)Rにおいて、R/hが14から40、好ましくは15〜27の範囲である場合に、複数のノズル15を有する薄膜16に凸形状を加工することが可能であり、更に液滴吐出量、すなわちトナー生産効率が極めて良好となることが判った。
さらに、複数のノズル15を有する薄膜16に設けた凸形状を、円錐の中央部のみを平坦としたドーム状とした円錐台形状の凸形状部16Eとし、このドームの高さhと円錐の直径(底面直径)Rにおいて、R/hが14から40、好ましくは15〜27の範囲であって、且つ中央の平坦部の直径(平坦部直径:上面直径)rと円錐の直径(底面直径)Rにおいて、r/Rが0.125から0.375、好ましくは0.25〜0.375の範囲である場合には、90%以上のノズルを有効に利用できることが判明した。
次に、この実施形態における具体的な実施例について説明する。なお、本発明は、下記実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
−着色剤分散液の調製−
先ず、着色剤としての、カーボンブラックの分散液を調製した。
カーボンブラック(Regal400;Cabot社製)17質量部、顔料分散剤3質量部を、酢酸エチル80質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用し、一次分散させた。該顔料分散剤としては、アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製)を使用した。得られた一次分散液を、ダイノーミルを用いて強力なせん断力により細かく分散し、5μm以上の凝集体を完全に除去した二次分散液を調製した。
−ワックス分散液の調整−
次にワックス分散液を調整した。
カルナバワックス18質量部、ワックス分散剤2質量部を、酢酸エチル80質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用し、一次分散させた。この一次分散液を攪拌しながら80℃まで昇温しカルナバワックスを溶解した後、室温まで液温を下げ最大径が3μm以下となるようワックス粒子を析出させた。ワックス分散剤としては、ポリエチレンワックスにスチレン−アクリル酸ブチル共重合体をグラフト化したものを使用した。得られた分散液を、更にダイノーミルを用いて強力なせん断力により細かく分散し、最大径が2μm以下なるよう調整した。
−トナー組成分散液の調製−
次に、結着樹脂としての樹脂、上記着色剤分散液及び上記ワックス分散液を添加した下記組成からなるトナー組成分散液を調製した。
結着樹脂としてのポリエステル樹脂100質量部、前記着色剤分散液30質量部、ワックス分散液30質量部を、酢酸エチル840質量部を、攪拌羽を有するミキサーを使用して10分間攪拌を行い、均一に分散させた。溶媒希釈によるショックで顔料やワックス粒子が凝集することはなかった。なお、この分散液の電気伝導度は1.8×10-7S/mであった。
−トナーの作製−
得られた分散液を、前述したトナー製造装置の液滴化手段11のノズル15に供給した。使用した薄膜(以下、「ノズルプレート」とも称する。)16は、外径20.0mmで厚み20μmのニッケル板に、真円形状の直径10μmの吐出孔(ノズル)15を、電鋳法による加工で作製した。吐出孔は各吐出孔間の距離が100μmとなるように千鳥格子状に、薄膜16中心の約5mmφの範囲にのみ設けた。この場合の計算上の有効吐出孔数は1000個となる。
外径20mmのノズルプレートは、外径16.0mmの液室を構成する円筒状の筐体にハンダにより幅1mmの範囲(内径15mmから外径16mm)を接合し、その周囲を内側、外側にそれぞれ1mmずつフッ素ゴムで接合した。
分散液調製後、以下のようなトナー作製条件で、液滴を吐出させた後、該液滴を乾燥固化することにより、トナー母体粒子を作製した。ノズル通過時に帯電した粒子が捕集時に静電気で壁面に付着しトナー捕集効率が低下することを防止するため、捕集直前に軟X線照射を行い除電した。軟X線照射装置43Aとしては、浜松ホトニクス製の防爆型フォトイオナイザ(L9499型)を使用した。軟X線照射による除電を行うことにより、捕集部でのトナー粒子の壁面付着は発生しなかった。
〔トナー作製条件〕
分散液比重 :ρ=1.19g/cm3
乾燥空気流量 :装置内乾燥窒素 30.0L/分
装置内温度 :27〜28℃
露点温度 :−20℃
ノズル振動数 :114kHz
印加電圧サイン波ピーク値:8.0V
なお、「ノズル振動数」とは、「薄膜16の振動数」の意味である。また、上述した振動変位の測定結果により計算されるトナー組成液に与えられる圧力は約20kpaであった。この条件で、トナー組成液はノズル目詰まりを生じる(閉塞する)ことなく、安定的に噴射された。
乾燥固化したトナー粒子は、軟X線照射による除電をして、1μmの細孔を有するフィルターで吸引捕集した。捕集した粒子の粒度捕集した粒子の粒度分布をフロー式粒子像解析装置(FPIA−2000)で下記に示す測定条件において測定したところ、重量平均粒径(D4)は5.2μm、個数平均粒径(Dn)が4.9μmであり、D4/Dnが1.06のトナー母体粒子が得られた。
−トナーの評価−
得られたトナーについて、以下の評価を行った。なお、その結果を表1に示している。
<粒度分布>
フロー式粒子像分析装置(Flow Particle Image
Analyzer)を使用した測定方法に関して以下に説明する。
トナー、トナー粒子及び外添剤のフロー式粒子像分析装置による測定は、例えば、東亜医用電子社(株)製フロー式粒子像分析装置FPIA−2000を用いて測定することができる。
測定は、フィルターを通して微細なごみを取り除き、その結果として10−3cm3の水中に測定範囲(例えば、円相当径0.60μm以上159.21μm未満)の粒子数が20個以下の水10ml中にノニオン系界面活性剤(好ましくは和光純薬社製コンタミノンN)を数滴加え、更に、測定試料を5mg加え、超音波分散器STM社製UH−50で20kHz,50W/10cm3の条件で1分間分散処理を行い、さらに、合計5分間の分散処理を行い測定試料の粒子濃度が4000〜8000個/10−3cm3(測定円相当径範囲の粒子を対象として)の試料分散液を用いて、0.60μm以上159.21μm未満の円相当径を有する粒子の粒度分布を測定する。
試料分散液は、フラットで偏平な透明フローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するために、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。
約1分間で、1200個以上の粒子の円相当径を測定することができ、円相当径分布に基づく数及び規定された円相当径を有する粒子の割合(個数%)を測定できる。結果(頻度%及び累積%)は、表1に示す通り、0.06−400μmの範囲を226チャンネル(1オクターブに対し30チャンネルに分割)に分割して得ることができる。実際の測定では、円相当径が0.60μm以上159.21μm未満の範囲で粒子の測定を行う。
<帯電量>
吸引式の帯電量測定装置により測定した。具体的には、トナーを捕集できるフィルターを具備したファラデーケージにトナー重量200〜250mgの範囲を吸引し、これにエレクトロメーターを接続し、吸引したトナーの総電荷量を測定した。前もって測定したフィルター重量からの増加重量をフィルター上のトナー重量として5桁精度の化学天秤で計量し、総電荷量を捕集したトナー重量で除し、単位重量当たりの帯電量(q/m)として求めた。同様の測定原理の帯電量測定装置で市販されているものとしてトレックジャパン株式会社製の「モデル210HS−2A」があるが、同様の構成である自作の測定装置を使用した。トナーを捕集するフィルタとしては直径21mmのガラスマイクロファイバー(Whatman)を使用した。吸引する時間による測定差は殆どないが、吸引時間を30秒以内に規定した。
<常温高湿下(NH)帯電量>
温度30℃、湿度90%の環境試験室で上記の帯電量測定法により測定を行った。試料を12時間この環境に放置した上で測定を行った。
<帯電量分布>
トナーの帯電量分布は帯電量分布測定装置(ホソカワミクロン社製E−Spartアナライザー、EST−2型)により測定した。具体的には、トナーを直接測定機のトナー吸入口にフィーダーで一定量導入し、帯電量分布を測定した。帯電量の分布を示す指標としては、最頻度(ピーク)値[q/d]及び、最頻度の2分の1の高さの位置での分布の幅、いわゆる半値幅で表した。トナーの特性としては、帯電量分布がよりシャープであることが望ましいが、一般的に帯電量が高くなるほど半値幅も大きくなる傾向がある。
<細線再現性>
現像剤を、市販の複写機(イマジオネオ271;リコー社製)の現像器部分を改良した改造機に入れ、画像占有率7%の印字率でリコー社製6000ペーパーを用いてランニングを実施した。その時の初期10枚目の画像と3万枚目の画像の細線部を原稿と比較し、光学顕微鏡で100倍で拡大観察し、ラインの抜けの状態を段階見本と比較しながら4段階で評価した。表1中、◎>○>△>×の順に画像品質が高い。特に、「×」の評価は製品として採用できないレベルである。負帯電極性のトナーの場合には、有機静電潜像担持体を使用し、正帯電極性のトナーの場合は非晶質シリコン静電潜像担持体を使用した。
現像方法1では、トナーを気流で直接現像部位にまで搬送し、パウダークラウドにより現像した。
現像方法2では、搬送手段として従来の電子写真で使用される樹脂コートキャリアを使用した。キャリアとしては以下のものを用いた。
〔キャリア〕
芯材:平均粒径50μmの球形フェライト粒子
コート材構成材料:シリコーン樹脂
そして、シリコーン樹脂をトルエンに分散させ、分散液を調整後、加温状態にて上記芯材にスプレーコートし、焼成、冷却後、平均コート樹脂膜厚み0.2μmのキャリア粒子を作成した。
(実施例2)
実施例1で使用した液滴化手段において、ノズルプレートを外径16.0mmの液室を構成する円筒状の筐体にハンダにより幅1mmの範囲(内径15mmから外径16mm)を接合し、その周囲を内側、外側にそれぞれ1mmずつシリコンゴムで接合したとした以外は、全て実施例1と同様にして、目的のトナーを得た。トナーの重量平均粒径(D4)は5.2μm、個数平均粒径(Dn)が4.9μmであった。得られたトナーについて、上述の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1で使用した液滴化手段において、ノズルプレートを外径15.5mmの液室を構成する円筒状の筐体にハンダにより幅0.5mmの範囲(内径15.5mmから外径16mm)を接合し、その周囲を内側、外側にそれぞれ1mmずつフッ素ゴムで接合したとした以外は、全て実施例1と同様にして、目的のトナーを得た。トナーの重量平均粒径(D4)は5.1μm、個数平均粒径(Dn)が4.8μmであった。得られたトナーについて、上述の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1で使用した液滴化手段において、ノズルプレートを外径15.5mmの液室を構成する円筒状の筐体にハンダにより幅0.5mmの範囲(内径15.5mmから外径16mm)を接合し、その周囲を内側、外側にそれぞれ1mmずつシリコンゴムで接合したとした以外は、全て実施例1と同様にして、目的のトナーを得た。トナーの重量平均粒径(D4)は5.1μm、個数平均粒径(Dn)が4.8μmであった。得られたトナーについて、上述の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1で使用した液滴化手段において、ノズルプレートを外径15.5mmの液室を構成する円筒状の筐体にハンダにより幅0.5mmの範囲(内径15.5mmから外径16mm)を接合し、その周囲には弾性接着層を設けないこと以外、全て実施例1と同様にして、目的のトナーを得た。トナーの重量平均粒径(D4)は5.1μm、個数平均粒径(Dn)が4.8μmであった。得られたトナーについて、上述の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
−トナー組成分散液の調製−
着色剤及びワックスの分散液、樹脂を添加した分散液を、実施例1と同様の条件で調製した。
−トナーの作製−
実施例1で用いた装置の代わりに、ノズルプレートを、外径20.0mmの液室を構成する円筒状の筐体にハンダにより幅2mmの範囲(内径18mmから外径20mm)を接合した以外は、全て実施例1と同様にしてトナーを得た。実施例1と同じ駆動電圧ではトナー液が吐出しなかったことから、電圧を20Vppに上げて吐出を行ったが、液と出量は、実施例1の半分以下であった。
乾燥固化したトナー粒子は、1μmの細孔を有するフィルターで吸引捕集した。捕集した粒子の粒度捕集した粒子の粒度分布をフロー式粒子像解析装置(FPIA−2000)で測定したところ、重量平均粒径は8.2μm、個数平均粒径が3.9μmであり、粒度分布の広いトナー母体粒子が得られた。また、得られたトナーについて、上述の評価を行った、結果を表1に示す。
比較例1で用いた装置の代わりに、ノズルプレートを、外径20.0mmの液室を構成する円筒状の筐体に弾性体であるフッ素ゴムにより幅2mmの範囲(内径18mmから外径20mm)を接合した以外は、全て実施例1と同様にしてトナーを得た。
乾燥固化したトナー粒子は、1μmの細孔を有するフィルターで吸引捕集した。捕集した粒子の粒度捕集した粒子の粒度分布をフロー式粒子像解析装置(FPIA−2000)で測定したところ、重量平均粒径は4.6μm、個数平均粒径が3.2μmであり、非常に微細粒子の割合が多いトナー母体粒子が得られた。
また、得られたトナーについて、上述の評価を行った、結果を表1に示す。
この表1に示すように、本発明によりトナーを効率よくトナー化することが可能となり、またそのトナー特性も極めて良好なことが判った。また、本発明で作製したトナーを用いて現像を行い得られた画像は、静電潜像に忠実な極めて画像品質に優れたものであった。
このように、本発明に係るトナー製造方法、及びそれにより製造されたトナーは、トナーを効率よく生産することができ、更にこれまでにない粒度の単一分散性を有した粒子であることにより、流動性や帯電特性といったトナーに求められる多くの特性値において、これまでの製造方法にみられた粒子による変動の幅が全くないか、非常に少ない、電子写真、静電記録、静電印刷等に於ける静電荷像を現像するための現像剤に使用可能である。