JP5053832B2 - 紙おむつ - Google Patents

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Description

本発明は、外装シートが腹側及び背側の2つに分割されているパンツ型紙おむつに関するものである。
一般的なパンツ型紙おむつは、前身頃の両側部と後身頃の両側部とがそれぞれ接合されることにより、両側に接合部が形成されるとともに、胴開口部及び左右一対の脚開口部が形成された外装シートと、その内面の幅方向中央に沿って腹側から股間を通り背側までの範囲に固定された吸収性本体とを備えているものであり、装着者の両足を胴開口部に通して脚開口部に挿入することにより装着するものである。
このような一体的な外装シートを用いる種類に対して、近年、外装シートを腹側及び背側の2つに分割した2分割タイプともいうべき紙おむつが提案されている(例えば特許文献1参照)。2分割タイプでは、製造時に脚開口部を打ち抜く際のトリム(余分な廃棄部分)が少ないことや、腹側外装シート及び背側外装シートの各素材を個別に選択できる利点がある。
一方、2分割タイプではトリムを完全に排除することもできるが、その場合、臀部の両側を覆う部分が無くなるため、外観および装着感が悪化するおそれがある。そのため、背側外装シートについては、接合部と同じ上下方向範囲を占める本体部の下側に、吸収性本体と重なる幅方向中央部と、その両側に延出した臀部カバー部とを有する延出部が設けられている。
特開2005−027839号公報
しかし、従来のものは、延出部における臀部カバー部が膨らんだり、捲れたりし、見栄えが悪いという問題点があった。
そこで、本発明の主たる課題は、背側外装シートの下側延出部における膨らみや捲れを防止することにある。
上記課題を解決した本発明は次記の通りである。
<請求項1記載の発明>
装着者の胴回りのうち腹側を覆う腹側外装シートと背側を覆う背側外装シートとからなり、腹側外装シートの幅方向両側縁の接合部と背側外装シートの幅方向両側縁の接合部とが接合されて形成された筒状の胴回り部と、
前端部が前記腹側外装シートの幅方向中央部内面に連結されるとともに、後端部が前記背側外装シートの幅方向中央部内面に連結され、且つ背側から股間部を通り腹側までを覆う吸収性本体とを備え、
前記腹側外装シートと背側外装シートとが股間側で連続しておらず、離間されているパンツ型紙おむつにおいて、
前記背側外装シートは、前記接合部と同じ上下方向範囲を占める背側本体部と、この背側本体部の下側に延出する背側延出部とを有しており、
この背側延出部は、前記吸収性本体と重なる幅方向中央部と、その両側に延出した臀部カバー部とを有しており、
前記腹側外装シートは、前記接合部と同じ上下方向範囲を占める腹側本体部のみからなるか、又は前記接合部と同じ上下方向範囲を占める腹側本体部と、この腹側本体部の下側に延出する腹側延出部とを有しており、
前記背側本体部における上下方向の上端部、下端部及びこれらの間の中間部のうち、上端部に、所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定された背側ウエスト部弾性伸縮部材が上下方向に間隔を空けて複数設けられるとともに、中間部及び下端部における少なくとも前記吸収性本体と重ならない部分に、所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定された第1の細長状弾性伸縮部材が上下方向に間隔を空けて複数設けられるとともに、少なくとも前記臀部カバー部に、所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定された第2の細長状弾性伸縮部材が上下方向に間隔を空けて複数設けられており、
前記腹側外装シートにおいて、前記腹側本体部における上下方向の上端部、下端部及びこれらの間の中間部のうち、上端部に、所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定された腹側ウエスト部細長状弾性伸縮部材が上下方向に間隔を空けて複数設けられるとともに、中間部における少なくとも前記吸収性本体と重ならない部分に、所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定された第3の細長状弾性伸縮部材が上下方向に間隔を空けて複数設けられ、且つ下端部における少なくとも前記吸収性本体と重ならない部分に、所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定された第4の細長状弾性伸縮部材が上下方向に間隔を空けて複数設けられており、
前記第2の細長状弾性伸縮部材の伸張率が第1の細長状弾性伸縮部材の伸張率よりも高かつ前記第4の細長状弾性伸縮部材の伸張率が第1の細長状弾性伸縮部材の伸張率よりも高い、
ことを特徴とするパンツ型紙おむつ。
(作用効果)
2分割タイプでないパンツ型紙おむつにおいて、本発明の背側本体部及び臀部カバー部に相当する部分に、上下方向に間隔を空けて複数本の細長状弾性伸縮部材を同様の伸張率で幅方向に沿って伸張した状態で固定することは公知である。この形態では、臀部カバー部に相当する部分の全体が伸縮するため、脚回りに沿って弾性伸縮部材を配置してギャザーを形成するよりもフィット性に優れ、膨らみや捲れが発生し難く、また脚通しも容易になる。このため、当初は2分割タイプでも同様の構成を採用することにより、臀部カバー部のフィット性が向上するものと考えていたが、予想に反して、臀部カバー部のフィット性が向上しない。
この原因について更に研究した結果、次のような知見を得た。すなわち、2分割タイプにおける臀部カバー部に、上下方向に間隔を空けて複数本の細長状弾性伸縮部材を幅方向に沿って伸張した状態で固定した場合、臀部カバー部に対して股間側と両接合部とを結ぶ斜め上方への力が作用する。この斜め上方への力は2分割タイプであってもなくても同じく発生する。しかし、2分割タイプの背側外装シートは股間まで延出しないため、この斜め上方へ力の角度が浅くなるとともに、強さも弱くなる。その結果、一見して同様な構成にしても捲れ上がりが発生し易くなっていたのである。
本発明はこのような知見に基づいてなされたものであって、背側外装シートの背側本体部に設ける第1の細長状弾性伸縮部材の伸張率よりも、臀部カバー部に設ける第2の細長状弾性伸縮部材の伸張率を高くしたことを特徴とするものである。このように構成することによって、2分割タイプであっても、臀部カバー部に対して股間側と両接合部とを結ぶ斜め上方への力が、より深い角度で、より強く発生するため、臀部カバー部のフィット性が向上し、捲れ上がりや膨れが発生し難くなる。
また、臀部カバー部において股間側から両接合部へ向かう方向(斜め上方)の延長線上には、腹側外装シートにおける第4の細長状弾性伸縮部材が位置している。よって、本発明のように、第4の細長状弾性伸縮部材の伸張率が、腹側の第4の細長状弾性伸縮部材に対応して背側に配置される第1の細長状弾性伸縮部材の伸張率よりも高くされていると、臀部カバー部を斜め上方へ引き上げる力が働くため、臀部カバー部の捲れ上がりや膨れがさらに発生し難くなる。
<請求項記載の発明>
前記第1〜第4の細長状弾性伸縮部材の伸張率の大小関係が、
第4の細長状弾性伸縮部材≧第2の細長状弾性伸縮部材>第1の細長状弾性伸縮部材≧第3の細長状弾性伸縮部材、
となっていることを特徴とする請求項記載のパンツ型紙おむつ。
(作用効果)
このように構成されていると、臀部カバー部を斜め上方へ引き上げる力がさらに効果的に働くため、臀部カバー部のフィット性が向上して捲れ上がりや膨れが発生しにくいという本発明の効果がより一層のものとなる。
<請求項記載の発明>
接合部傾斜試験における接合部傾斜角度が20度以下となるように、前記背側ウエスト部細長状弾性伸縮部材、前記腹側ウエスト部細長状弾性伸縮部材、前記第1の細長状弾性伸縮部材、前記第2の細長状弾性伸縮部材、前記第3の細長状弾性伸縮部材、及び前記第4の細長状弾性伸縮部材の各々における本数、太さ、伸張率、間隔、素材の種類、及び上下方向配置が定められている、請求項又は記載のパンツ型紙おむつ。
(作用効果)
また、従来のおむつでは、図9に示すように、使用時において背側外装シート12B及び腹側外装シート12Fの接合部12Aが下端側ほど背側にずれていく現象が発生し、このずれが原因で臀部カバー部における膨らみや捲れが発生しているとの知見も得られた。
そこで更に研究したところ、このような現象は、おむつ各部における伸縮特性が密接に関連して発生しており、その主要因は、臀部カバー部に設けた細長状弾性伸縮部材の収縮力により、接合部を境とした腹側・背側間の収縮力バランスが崩れ、接合部の下端側ほど背側への収縮力が強く作用していたことにあった。
本項記載の発明はこのような知見に基づいてなされたものであって、接合部傾斜試験における接合部傾斜角度が20度以下となるように、各細長状弾性伸縮部材における本数、太さ、伸張率、間隔、素材の種類、及び上下方向配置が定められていることを特徴とするものである。このように構成することによって、2分割タイプにおける利点を維持しながら、臀部カバー部における捲れ上がりや膨れを効果的に防止できるようになる。
なお、接合部傾斜試験は次のようにして接合部の傾斜角度を測定するものである。すなわち先ず、図10(a)に示すように、紙おむつから吸収性本体を取り除いた胴回り部12のみを供試体として作製し、この供試体12を、腹側外装シート12Fの製品幅方向の中央線及び背側外装シート12Bの製品幅方向の中央線を折線として、それぞれ内面相互が重なるように折り畳み、両接合部12Aの基端線L1(接合部12Aの幅方向中央側の端縁)を重ねるようにする。次に、この折り畳み状態の供試体12を、一方の折線から接合部側に10mmの範囲を製品上下方向全体にわたり引張試験機の一方のチャックC1に挟み、他方の折線から接合部側に10mmの範囲を製品上下方向全体にわたり引張試験機の他方のチャックC2に挟み、矢印で示す製品前後方向に沿って引張試験を行う。そして、供試体12を引っ張らずに自然に収縮させた状態におけるチャック間距離(自然収縮時長さ)をAとし、弾性伸縮部材による収縮がない状態まで引っ張ったときのチャック間距離(最大伸張時長さ)をBとしたとき、図10(b)に示すようにチャック間距離が(A+B)/2となるように引っ張ったときの、製品上下方向に対する接合部基端線L1の上下端を結ぶ仮想線L2の傾斜角度θ1を分度器を用いて計測し、これを接合部傾斜角度とする。
<請求項記載の発明>
前記外装シートの各部に働く幅方向の収縮力の大小関係が、
前記腹側本体部の下端部≧前記背側延出部>前記背側本体部の中間部及び下端部≧前記腹側本体部の中間部、
となっていることを特徴とする請求項記載のパンツ型紙おむつ。
(作用効果)
このように構成されていると、接合部を境とした腹側・背側間の収縮力のバランスが整い、接合部傾斜試験における接合部傾斜角度が20度以下となり、また、臀部カバー部に対して股間側と両接合部とを結ぶ斜め上方への力が深い角度で強く発生するため、臀部カバー部のフィット性がさらに向上し、臀部カバー部における捲れ上がりや膨れをより効果的に防止できるようになる。なお、上記の大小関係における「背側本体部の中間部及び下端部」に関しては、それぞれが背側延出部より収縮力が小さく、かつ腹側本体部の中間部以上の収縮力を有するものとする。
<請求項記載の発明>
前記背側延出部の少なくとも上端部は、前記背側本体部と同幅で前記背側本体部の下側に延出されている、請求項1〜のいずれか1項に記載のパンツ型紙おむつ。
(作用効果)
このように構成されていると、トリム量を減らしつつ臀部カバー部の面積(幅)を拡大できる。この場合、背側本体部と同幅の部分が捲れ易くなるが、本発明ではこのような広幅部分における捲れも効果的に防止できる。
<請求項記載の発明>
前記臀部カバー部の幅方向外側の縁が、股間側に近づくにつれて前記吸収性本体側に近づくような直線状または曲線状をなしている、請求項1〜のいずれか1項に記載の紙おむつ。
(作用効果)
臀部カバー部の幅方向外側の縁がこのような形状であると、臀部を被覆し易く、捲れも発生し難いため好ましい。これに対して、臀部カバー部の形状が方形である場合は、見た目の形状が良くない。
<請求項記載の発明>
前記臀部カバー部の幅方向の長さが80〜160mmであり、前記臀部カバー部の上下方向の長さが30〜80mmである、請求項記載のパンツ型紙おむつ。
(作用効果)
本項記載の寸法を有する臀部カバー部は特に捲れ易いため、本発明に好適である。
以上のとおり、本発明によれば、背側外装シートの下側延出部における膨らみや捲れが防止される等の利点がもたらされる。
以下、本発明を図面に示す実施の形態によってさらに詳説する。
<第1の実施形態>
図1〜図5は、本発明に係るパンツ型紙おむつの一例を示している。図1の符号において、「前後方向」とは、腹側と背側を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向を意味し、「上下方向」とは胴回り方向と直交する方向、換言すればウエスト開口部WO側と股間部側とを結ぶ方向を意味する。
このパンツ型紙おむつ10は、装着者の胴回りのうち腹側を覆う腹側外装シート12Fと背側を覆う背側外装シート12Bとを有しており、腹側外装シート12Fの幅方向両側縁の接合部12Aと背側外装シート12Bの幅方向両側縁の接合部12Aとが、ヒートシールや超音波溶着等により接合されて筒状の胴回り部12が形成されるように構成されている。図示形態のように、背側外装シート12Bが接合部12Aよりも下側に延出している場合には、この部分までを含む上下方向範囲に一体的にヒートシール等の加工を施した延出溶着部を設けることができる。延出溶着部を設けることにより、後述する背側延出部14の第2の細長状弾性伸縮部材16の引き込みを防止することができる。この場合、脇部の破りやすさを考慮して、接合部12Aは小さな溶着部の集合からなり、接合部12Aにおける溶着面積の比率が低い接合パターンとすることが一般的であるが、延出溶着部では破りやすさを考慮する必要が無いため、溶着パターンは接合部12Aよりも溶着面積の比率を高くすることにより第2の細長状弾性伸縮部材16が確実に溶着固定されるようにしてもよい。また、延出溶着部は臀部カバー部14Cの縁部をカーブしたラインで溶着し、臀部カバー部14Cの第2の細長状弾性伸縮部材16の引き込みを防止することもできる。
また、胴回り部12における腹側外装シート12Fの幅方向中央部内面に吸収性本体20の前端部が連結されるとともに、背側外装シート12Bの幅方向中央部内面に吸収性本体20の後端部が連結されており、腹側外装シート12Fと背側外装シート12Bとが股間側で連続しておらず、離間されている。この離間距離Yは150〜250mm程度とすることができる。
図4及び図5からも判るように、胴回り部12の上部開口は、装着者の胴を通すウエスト開口部WOとなり、吸収性本体20の幅方向両側において胴回り部12の下縁および吸収性本体20の側縁によりそれぞれ囲まれる部分が脚を通す脚開口部LOとなる。各接合部12Aを剥がして展開した状態では、図1に示すように砂時計形状をなす。吸収性本体20は、背側から股間部を通り腹側までを覆うように延在するものであり、排泄物を受け止めて液分を吸収し保持する部分であり、胴回り部12は吸収性本体20を装着者に対して支持する部分である。
(外装シート)
腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bは、図3にも示すように不織布等のシートS1,S2を2枚貼り合せてなり、胴回りに対するフィット性を高めるために、両シートS1,S2間に糸ゴム等の細長状弾性伸縮部材15〜18,19T,19Uが所定の伸張率で設けられているものである。不織布を用いる場合、その坪量は10〜30g/m2程度とするのが好ましい。不織布は、その原料繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。また、細長状弾性伸縮部材15〜18,19T,19Uとしては、合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。
そして本実施形態では、外装シート12の腹側・背側間の、接合部を境とした幅方向の収縮力のバランスが整い、接合部傾斜試験における接合部傾斜角度が20度以下、特に好ましくは10度以下、更に好ましくは5度以下となるように、各細長状弾性伸縮部材の本数、太さ、伸張率、間隔、素材の種類、及び配置が定められている。
より詳細には、背側外装シート12Bは、接合部12Aと同じ上下方向範囲を占める背側本体部13と、この背側本体部13の下側に延出する背側延出部14とを有している。背側延出部14は、吸収性本体20と重なる幅方向中央部14Mと、その両側に延出した臀部カバー部14Cとを有している。
背側延出部14の形状は適宜定めることができるが、図示例では、背側延出部14の上端部は、背側本体部13と同幅で背側本体部13の下側に延出されており、その下側は股間側に近づくにつれて幅が狭められている。背側本体部13と同幅の部分は省略することもできる。このように構成されていると、臀部カバー部14Cの幅方向外側の縁14eが、股間側に近づくにつれて吸収性本体20側に近づくような直線状または曲線状をなすようになり、臀部を覆い易い形状となる。背側延出部14の寸法は適宜定めることができるが、臀部カバー部14Cの幅方向長さ14x(臀部カバー部14Cの幅方向外側の縁14eと吸収性本体20の側縁との幅方向の最大離間距離)が80〜160mmであり、臀部カバー部14Cの上下方向の長さ14y(延出長さ)が30〜80mmであると、より好ましい。また、延出部14の幅方向に最も広い部位と上下方向に最も広い部位により定まる四角形の面積をSとすると、延出部14の面積はSに対して20〜80%、特に40〜60%程度であると、臀部の外観および装着感に優れるため、好ましい。
背側本体部13は、上下方向において概念的に上側部分(図示例では上端部、すなわちウエスト部)Wと下側部分Uとに分けることができ、このうち下側部分Uは更に下端部Zと、上側部分W及び下端部Z間の中間部Mとに分けることができ、その範囲は製品のサイズによって異なるが、一般に、上側部分Wの上下方向長さは15〜80mm、下側部分Uの上下方向長さは50〜220mmとすることができ、中間部Mは下側部分Uの上下方向長さの40〜90%、下端部Zは残りの部分とすることができるが、明確な境界が定まらない(細長状弾性伸縮部材の太さ、伸張率、間隔、素材の種類、及び上下方向あるいは幅方向の配置形態等による区分が明確でない)場合は、下端部Zは上側部分Wと同じ上下方向長さを有するものとし、上側部分Wは上端から30mmの範囲とする。
背側本体部13の上側部分(ウエスト部)Wには、幅方向全体にわたり連続するように、複数のウエスト部弾性伸縮部材17が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。また、ウエスト部弾性伸縮部材17のうち、背側本体部13における中間部Mに隣接する領域に配設される1本または複数本については、吸収体20と重なっていてもよい。このウエスト弾性伸縮部材17としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、4〜12mmの間隔で3〜22本程度、それぞれ伸張率200〜400%、特に220〜320%程度で固定するのが好ましい。また、ウエスト部弾性伸縮部材17は、その全てが同じ太さと伸張率にする必要はなく、例えばウエスト部の上部と下部で弾性伸縮部材の太さと伸張率が異なるようにしてもよい。このウエスト部弾性伸縮部材17は、第1及び第2の細長状弾性伸縮部材15,16に対して大小関係無く、自由に定めることができる。
また、背側本体部13の下側部分U(中間部M及び下端部Z)においては、吸収性本体20と重なる幅方向中央部を除いて、その上側および幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の第1の細長状弾性伸縮部材15が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。第1の細長状弾性伸縮部材15の上下方向配設範囲は、背側本体部13の一部としても良いが、実質的に全体(全体に伸縮力が作用する範囲)とするのが好ましい。
第1の細長状弾性伸縮部材15としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを用いるのが好ましい。また、第1の細長状弾性伸縮部材15は、中間部Mでは伸張率150〜300%、特に240〜300%程度で、1〜15mm、特に3〜8mmの間隔で2〜20本程度、下端部Zでは伸張率150〜300%、特に240〜300%程度で、1〜15mm、特に3〜8mmの間隔で3〜22本程度設けるのが好ましい。
さらに、背側延出部14においては、吸収性本体20と重なる幅方向中央部を除いて、その幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり(少なくとも臀部カバー部14C全体にわたり)連続するように、複数の第2の細長状弾性伸縮部材16が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。第2の細長状弾性伸縮部材16の上下方向配設範囲は、延出部14の一部としても良いが、実質的に全体(全体に伸縮力が作用する範囲)とするのが好ましい。
第2の細長状弾性伸縮部材16としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、1〜15mm、特に3〜8mmの間隔で3〜10本程度、伸張率240〜400%、特に280〜360%の範囲内で第1の細長状弾性伸縮部材よりも高い伸張率でそれぞれ固定するのが好ましい。第2の細長状弾性伸縮部材16は、上下方向両端部に配置されるものの伸張率を、中間部のものよりも高めに設定するのが好ましい。また、第2の細長状弾性伸縮部材16の太さは、第1の細長状弾性伸縮部材15と同じにするのが好ましいが、より太いものとすることも、またより細いものとすることもできる。また、ウエスト弾性伸縮部材17や、細長状弾性伸縮部材15,16には、合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。
そして、第2の細長状弾性伸縮部材16の伸張率が第1の細長状弾性伸縮部材15の伸張率よりも高くなっていると、図5に白抜き矢印で示すように、臀部カバー部14Cに対して股間側と両接合部12Aとを結ぶ斜め上方への力円弧が、より深い角度θで、より強く発生するため、臀部カバー14Cの捲れ上がりや膨らみが発生し難く、フィット性が良好となる。なお、伸張率の比較は、それぞれ複数本配置される細長状弾性伸縮部材の伸張率の平均による比較である。また、腹側外装シート12F及び/または背側外装シート12Bを構成する際に、幅方向における不織布S1,S2の引っ張りを調整することにより、S2の張力がS1よりも大きいようにすることで、臀部カバー部14Cが内向きにカールし、臀部のフィット性がさらに向上する。
また、背側延出部14は、背側本体部13の中間部M及び下端部Zより強い収縮力を発揮するように、第1及び第2の細長状弾性伸縮部材15,16の太さ、伸張率、本数、間隔、素材の種類又は上下方向配置を適宜定めるのが好ましい。
なお、背側延出部14の収縮力が背側本体部13の中間部M及び下端部Zより強いこととは、その両方よりも強いということを意味し、単に下側部分U全体の平均より強いということのみを意味するわけではない。
また、収縮力とは、シートを製品幅方向に引っ張ったときにシートの一定幅(上下方向幅)にかかる応力(単位上下方向幅あたりの収縮力)であり、次のようにして測定するものである。すなわち先ず、外装シート12から測定したい領域を切り取って供試体とし、この供試体の製品幅方向の一方の端部を引張試験機の一方のチャックC1に挟み、他方の端部を他方のチャックC2に挟み、製品幅方向に沿って引張試験を行う。そして、供試体を引っ張らずに自然に収縮させた状態におけるチャック間距離(自然収縮時長さ)をAとし、弾性伸縮部材による収縮がない状態まで引っ張ったときのチャック間距離(最大伸張時長さ)をBとしたとき、チャック間距離が(A+B)/2となるように引っ張ったときのチャック間にかかる応力を計測し、これを供試体の上下方向幅で割ったものを収縮力(N/10mm)とする。なお、例えば背側延出部14の収縮力とは、背側延出部14全体を供試体とし、上記方法により計測した応力を背側延出部14の上下方向幅で割ったものであるが、第2の細長状弾性伸縮部材16を有する部分が背側延出部14の一部である場合でも、背側延出部14の収縮力は上記の通り求めるものとする。
一方、腹側外装シート12Fは背側外装シート12Bの背側本体部13と基本的に同様の腹側本体部(接合部12Aと同じ上下方向範囲を占める部分)のみからなるものであり、胴回り方向に沿って延在する矩形状をなし、背側外装シート12Bのような背側延出部14を有していないものである。よって、上下方向の上端部W、下側部分U(中間部M及び下端部Z)については同じ符号を用いている。これら上端部W、下側部分U(中間部M及び下端部Z)の上下方向長さは背側外装シート12Bと等しくするのが好ましいが、腹側及び背側間の収縮力バランスを調節するために異ならしめることもできる。なお、腹側外装シート12Fにおいても、下側部分Uを構成する中間部Mと下端部Zの明確な境界が定まらない(細長状弾性伸縮部材の太さ、伸張率、間隔、素材の種類、及び上下方向あるいは幅方向の配置形態等による区分が明確でない)場合は、下端部Zは上側部分Wと同じ上下方向長さを有するものとし、上側部分Wは上端から30mmの範囲とする。
すなわち、腹側外装シート(腹側本体部)12Fの上端部(ウエスト部)Wには、幅方向全体にわたり連続するように、複数のウエスト部弾性伸縮部材18が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。この腹側外装シート12Fにおけるウエスト部弾性伸縮部材18は、背側外装シート12Bにおけるウエスト部弾性伸縮部材17に対して、本数、太さ、伸張率、間隔、及び上下方向配置をできるだけ近づけるのが好ましいが、腹側及び背側間の収縮力バランスを調節するためにある程度までは異ならしめることもできる。具体的には、本数の差は5本以下、好ましくは3本以下、太さの差は450dtex以下、好ましくは300dtex以下、伸張率の差は50%以下、好ましくは20%以下、間隔の差は5mm以下、好ましくは3mm以下である。
また、腹側外装シート(腹側本体部)12Fの中間部Mにおいては、吸収性本体20と重なる幅方向中央部を除いて、その上側および幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の第3の細長状弾性伸縮部材19Tが上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。第3の細長状弾性伸縮部材19Tの上下方向配設範囲は、中間部Mの一部としても良いが、実質的に全体(全体に伸縮力が作用する範囲)とするのが好ましい。
第3の細長状弾性伸縮部材19Tとしては、第1の細長状弾性伸縮部材15のうち中間部Mに配置されたものと、本数、太さ、伸張率、間隔、及び上下方向配置をできるだけ近づけるのが好ましいが、腹側及び背側間の収縮力バランスを調節するためにある程度までは異ならしめることもできる。具体的には、本数の差は5本以下、好ましくは3本以下、太さの差は450dtex以下、好ましくは300dtex以下、伸張率の差は50%以下、好ましくは20%以下、間隔の差は5mm以下、好ましくは3mm以下である。特に、第3の細長状弾性伸縮部材19Tの伸張率は、第1の細長状弾性伸縮部材15のうち中間部Mに配置されたものより低いのが好ましい。また、腹側本体部の中間部Mの収縮力は、背側本体部13の中間部M及び下端部Zの収縮力と同じかまたは弱くなっていることが好ましい。この収縮力は、第1及び第3の細長状弾性伸縮部材15,19Tの太さ、伸張率、本数、間隔、素材の種類又は上下方向配置を適宜定めることにより調節することができる。
さらに、腹側外装シート12F(腹側本体部)の下端部Zにおいては、吸収性本体20と重なる幅方向中央部を除いて、その上側および幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の第4の細長状弾性伸縮部材19Uが上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。第4の細長状弾性伸縮部材19Uの上下方向配設範囲は、下端部Zの一部としても良いが、実質的に全体(全体に伸縮力が作用する範囲)とするのが好ましい。
第4の細長状弾性伸縮部材19Uとしては、本数は2〜20本程度で、間隔、及び上下方向配置については、第2の細長状弾性伸縮部材16にできるだけ近づけるのが好ましいが、腹側及び背側間の収縮力バランスを調節するためにある程度までは異ならしめることもできる。具体的には、本数の差は10本以下、好ましくは5本以下、間隔の差は10mm以下、好ましくは5mm以下である。ここで、臀部カバー部14Cにおいて股間側から両接合部へ向かう方向(斜め上方)の延長線上に位置する第4の細長状弾性伸縮部材19Uの伸張率を、第4の細長状弾性伸縮部材19Uに対応して背側に配置される第1の細長状弾性伸縮部材15の伸張率よりも高くすると、臀部カバー部14Cを斜め上方へ引き上げる力が働くため、臀部カバー部14Cの捲れ上がりや膨れがさらに発生し難くなり、好ましい。さらに、第1〜第4の細長状弾性伸縮部材15,16,19T,19Uの伸張率の大小関係(高低関係)が、第4の細長状弾性伸縮部材≧第2の細長状弾性伸縮部材>第1の細長状弾性伸縮部材≧第3の細長状弾性伸縮部材、となっていると、臀部カバー部14Cを斜め上方へ引き上げる力がより効果的に働くため、臀部カバー部14Cのフィット性が向上して捲れ上がりや膨れが発生しにくいという本発明の効果がより一層のものとなる。
また、第4の細長状弾性伸縮部材19Uは、太さは155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)とするのが好ましく、伸張率は240〜400%、特に280〜360%程度とするのが好ましい。
特に、腹側本体部12Fの下端部Zの収縮力は、背側本体部13の中間部M及び下端部Zの収縮力よりも強いことが好ましく、背側延出部14の収縮力と同じかまたは強いことがより好ましい。さらに、外装シート12の各部の収縮力は、腹側本体部の下端部≧背側延出部>背側本体部の中間部及び下端部≧腹側本体部の中間部、となっていることが好ましい。この外装シート12の各部の収縮力は、第1、第2、第3及び第4の細長状弾性伸縮部材15,16,19T,19Uの太さ、伸張率、本数、間隔、素材の種類又は上下方向配置を適宜定めることにより調節することができる。
腹側及び背側間の収縮力バランスが適切に調節されたパンツ型紙おむつにおいては、図8に示すように、2分割タイプにおける利点を維持しながら、また臀部カバー部14Cにおける捲れ上がりや膨れを抑制しながらも、腹側外装シート12Fの各細長状弾性伸縮部材による収縮力と背側外装シート12Bの各細長状弾性伸縮部材による収縮力とが、接合部12Aを境としてバランスし、接合部傾斜角度θ1が20度以下となる、つまり、使用時において、接合部12Aが下端側ほど背側にずれていく現象(図9参照)が発生し難くなる。そしてこの結果、臀部カバー部14Cにおける捲れ上がりや膨れを効果的に防止される。
他方、図示のように、第1、第2、第3及び第4の細長状弾性伸縮部材15,16,19T,19Uが、吸収性本体20と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けられている形態には、幅方向両側にのみ弾性伸縮部材が存在する形態の他、吸収性本体20を横切ってその幅方向一方側から他方側まで弾性伸縮部材が存在しているが、吸収性本体20と重なる幅方向中央部では弾性伸縮部材が切断され、伸縮力が作用しない(実質的には、弾性伸縮部材を設けないことに等しい)ように構成されている形態も含まれる。また、本発明では、外装シート12の幅方向全体にわたり伸縮力が作用するように、第1、第2、第3及び第4の細長状弾性伸縮部材15,16,19T,19Uを、吸収性本体20を横切ってその幅方向一方側から他方側まで設けることもできる。
第2の細長状弾性伸縮部材16は、第1の細長状弾性伸縮部材15のように側縁の接合部12Aによりシートに溶着されることがないため、特に本願のように第1の細長状弾性伸縮部材15よりも伸張率を高くするような場合においては、第2の細長状弾性伸縮部材16の引き込み防止の処置を施すことが望ましい。先に述べたように、接合部12Aから延出する延出溶着部を設けるのは、好ましい手段の一つである。また、別の方法で第2の細長状弾性伸縮部材16とシートS1,S2の接着強度を向上させても良い。例えば第2の細長状弾性伸縮部材16に接着剤を直接塗布することで接着強度を向上させることができるが、接着剤の使用量が多くなると、伸縮部の風合いが低下する恐れがあるため、以下に示す溶着による固定方法を用いるのが望ましい。なお、上記のような、吸収性本体20と重なる幅方向中央部では第2の細長状弾性伸縮部材16が切断され、伸縮力が作用しないように構成されている形態においては、第2の細長状弾性伸縮部材16の幅方向中央部における端部にも、同様の引き込み防止の処置を施すことが好ましい。例えば端部を溶着する場合には、幅方向に複数配置された第2の細長状弾性伸縮部材16を縦断するように配置される略直線状の溶着線により、第2の細長状弾性伸縮部材16と不織布S1,S2とを溶着固定すればよい。また、これらの引き込み防止処置は相互に組合わせてもよい。
(溶着による弾性伸縮部材の固定方法)
図6は、第2の細長状弾性伸縮部材16に引張力をかけた状態で、第2の細長状弾性伸縮部材16の幅方向の両端部近傍で腹側外装シート12F及び/または背側外装シート12Bを構成するシートS1,S2が所定の間隔をもって溶着されることにより、第2の細長状弾性伸縮部材16がシートS1,S2との摩擦力によって固定される方法を示している。図中の符号Mは溶着部分を示しており、符号Nは非溶着部分を示している。このような構造とすることで、接着剤を用いずに、第2の細長状弾性伸縮部材16を強固に固定することができる。また、第2の細長状弾性伸縮部材16が接着されていないことにより、通気性や柔らかさが確保された伸縮部を形成することができる。溶着は、超音波溶着又は熱溶着とすることができる。ただし、第2の細長状弾性伸縮部材16やシートS1,S2周辺部に与える熱及び圧力の影響が熱溶着よりも超音波溶着の方が少ないため、超音波溶着を用いることがより好適である。
また、図7は、第2の細長状弾性伸縮部材16に引張力をかけた状態で、第2の細長状弾性伸縮部材16の幅方向の両端部と、シートS1,S2とが所定の間隔をもって溶着されることにより、第2の細長状弾性伸縮部材16がシートS1,S2との摩擦力及び第2の細長状弾性伸縮部材16の幅方向の端部の接着力によってシートS1,S2に固定される方法を示している。図中の符号Mは溶着部分を示しており、符号Nは非溶着部分を示している。このような構造とすることにより、シートS1,S2との摩擦力に加えて第2の細長状弾性伸縮部材16の幅方向の端部の接着力によって第2の細長状弾性伸縮部材16がより強固に固定される。なお、接着は第2の細長状弾性伸縮部材16の幅方向の端部だけのため、第2の細長状弾性伸縮部材16の劣化や切断の虞はない。
なお、第2の細長状弾性伸縮部材16がシートS1,S2との摩擦力によって固定される仕組は、第2の細長状弾性伸縮部材16に引張力をかけた状態で、第2の細長状弾性伸縮部材16の幅方向の両端部近傍で内側層と外側層とを間欠的に溶着し、第2の細長状弾性伸縮部材16をシートS1,S2に固定することで、その後に負荷をなくすと(ノーテンション)、第2の細長状弾性伸縮部材16の断面外径が大きくなり、シートS1,S2との溶着部分により第2の細長状弾性伸縮部材16の幅方向を両側部から挟むように押圧力がかかるようになる。その結果、第2の細長状弾性伸縮部材16を接着剤で固定することなく、シートS1,S2との摩擦力のみによって第2の細長状弾性伸縮部材16が固定されるものである。
(吸収性本体)
吸収性本体20は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。吸収性本体20は、図2に示されるように、使用面側から順に、液を透過させるたとえば不織布などからなるトップシート30と、吸収要素50とを備えている。通常の場合、吸収要素50の裏面側にはプラスチックシートなどからなる液不透過性シート70が設けられる。この液不透過性シート70の裏面側には、吸収性本体20の裏面全体を覆うように、あるいは腹側外装シート12Fと背側外装シート12Bとの間に露出する部分全体を覆うように、股間部外装シート12Mを固定することもできる。この股間部外装シート12Mとしては、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bと同様の素材を用いることができるが、異なる素材を用いることもできる。また、トップシート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させるために、トップシート30と吸収要素50との間に、中間シート(セカンドシート)40を設けることができる。さらに、吸収部20の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、吸収部20の両側に起立するバリヤーカフス60、60を設けることができる。なお、図示しないが、吸収性本体20の各構成部材は、ホットメルト接着剤などのベタ、ビードまたはスパイラル塗布などにより相互に固定することができる。
吸収性本体20は、メカニカルファスナーや粘着材を用い、外装シート20に対して着脱自在に取り付けることもできる。
(トップシート)
トップシート30は、液を透過する性質を有する。したがって、トップシート30の素材は、この液透過性を発現するものであれば足り、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンボンド法、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、エアスルー法、ポイントボンド法、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
(中間シート)
トップシート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、トップシート30より液の透過速度が速い、通常「セカンドシート」と呼ばれる中間シート40を設けることができる。この中間シート40は、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止し、トップシート30上を常に乾燥した状態とすることができる。中間シート40は省略することもできる。
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布及びスパンボンド不織布が好ましい。
図示の形態の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、吸収体56の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。中間シート40の代表的な素材は液の透過性に優れる不織布である。
(液不透過性シート)
液不透過性シート70は、単に吸収体56の裏面側に配されるシートを意味し、本実施の形態においては、トップシート30との間に吸収体56を介在させるシートとなっている。したがって、本液不透過性シートは、その素材が、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この不透液性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート70として用いることができる。
液不透過性シート70は、いわゆる額巻きする形態で使用面に延在させる(図示せず)ことで、液の横漏れを防止できるが、実施の形態においては、横漏れについては、バリヤーカフス60を形成する二重のバリヤーシート64間に第2液不透過性シート72を介在させることにより防止している。この形態によれば、バリヤーカフス60の起立まで第2液不透過性シート72が延在しているので、トップシート30を伝わって横に拡散した液やバリヤーカフス60、60間の軟便の横漏れを防止できる利点もある。
また、液不透過性シートの内面または外面には、印刷や着色によるデザインを施しても良い。さらに液不透過性シートの外側に、股間部外装シートとは別部材の、印刷または着色を施したデザインシートを貼り付けても良い。また、液不透過性シートの内側に、排尿を視覚的変化により表示するインジケータを備えても良い。
(バリヤーカフス)
製品の両側に設けられたバリヤーカフス60、60は、トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を阻止し、横漏れを防止するために設けられているが、付加的な要素である。
図示のバリヤーカフス60は、撥水性不織布シートを二重にしたものであり、吸収体56の裏面側からトップシート30の下方への折り込み部分を覆って、表面側に突出するように形成されている。トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿を阻止するために、バリヤーカフス60を形成する二重の不織布シート間に第2液不透過性シート72を介在させている。図示しないが、二重の不織布シート間に液不透過性シート70の側部を挿入し、表面側に突出するバリヤーカフス60の途中まで延在させてもよい。
また、バリヤーカフス60自体の形状は適宜に設計可能であるが、図示の例では、バリヤーカフス60の突出部の先端部及び中間部に弾性伸縮部材、たとえば糸ゴム62が伸張下で固定され、使用状態においてその収縮力により、バリヤーカフス60が起立するようになっている。中間部の糸ゴム62が先端部の糸ゴム62、62よりも中央側に位置してトップシート30の前後端部に固定される関係で、図2のように、バリヤーカフス60の基部側は中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端部は外側に斜めに起立する形態となる。
(吸収要素)
吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の少なくとも裏面及び側面を包む包被シート58とを有する。包被シート58は省略することもできる。さらに、図示形態では、吸収体56と包被シート58の裏面側部位(下側の部分)との間に保持シート80が設けられているが、この保持シート80は省略することもできる。
(吸収体)
吸収体56は、綿状パルプ等の短繊維を積繊したものの他、フィラメント52,52…の集合体からなるもの等も使用できる。
フィラメント52,52…の集合体は、トウ(繊維束)を開繊することにより得ることができる。トウ構成繊維としては、例えば、多糖類又はその誘導体(セルロース、セルロースエステル、キチン、キトサンなど)、合成高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリラクタアミド、ポリビニルアセテートなど)などを用いることができるが、特に、セルロースエステル及びセルロースが好ましい。
セルロースとしては、綿、リンター、木材パルプなど植物体由来のセルロースやバクテリアセルロースなどが使用でき、レーヨンなどの再生セルロースであってもよく、再生セルロースは紡糸された繊維であってもよい。
好適に採用できるセルロースエステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースプロピオネートなどの有機酸エステル;セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸酢酸セルロースなどの混酸エステル;及びポリカプロラクトングラフト化セルロースエステルなどのセルロースエステル誘導体などを用いることができる。これらのセルロースエステルは単独で又は二種類以上混合して使用できる。セルロースエステルの粘度平均重合度は、例えば、50〜900、好ましくは200〜800程度である。セルロースエステルの平均置換度は、例えば、1.5〜3.0(例えば、2〜3)程度である。
セルロースエステルの平均重合度は、例えば10〜1000、好ましくは50〜900、さらに好ましくは200〜800程度とすることができ、セルロースエステルの平均置換度は、例えば1〜3程度、好ましくは1〜2.15、さらに好ましくは1.1〜2.0程度とすることができる。セルロースエステルの平均置換度は、生分解性を高める等の観点から選択することができる。
セルロースエステルとしては、有機酸エステル(例えば、炭素数2〜4程度の有機酸とのエステル)、特にセルロースアセテートが好適である。セルロースアセテートの酢化度は、43〜62%程度である場合が多いが、特に30〜50%程度であると生分解性にも優れるため好ましい。特に好ましいセルロースエステルは、セルロースジアセテートである。
トウ構成繊維は、種々の添加剤、例えば、熱安定化剤、着色剤、油剤、歩留り向上剤、白色度改善剤等を含有していても良い。
トウ構成繊維の繊度は、例えば、1〜16デニール、好ましくは1〜10デニール、さらに好ましくは1〜6デニールが望ましい。トウ構成繊維は、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。捲縮繊維を用いると、嵩高で軽量な吸収体を製造できるとともに、繊維間の絡み合いにより一体性の高いトウを容易に製造できる。トウ構成繊維の断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、異形(例えば、Y字状、X字状、I字状、R字状など)や中空状などのいずれであってもよい。トウ構成繊維は、例えば、1,000〜1,000,000本、好ましくは2,000〜1,000,000本程度の単繊維を束ねることにより形成されたトウ(繊維束)の形で使用することができる。繊維束は、1,000〜1,000,000本程度の連続繊維を集束して構成するのが好ましい。
本発明において好適に使用できるセルロースジアセテートのトウのベールは、セラニーズ社やダイセル化学工業などにより市販されている。セルロースジアセテートのトウのベールは、密度は約0.5g/cm3であり、総重量は400〜600kgである。このベールから、トウを引き剥がし、所望のサイズ、嵩となるように広い帯状に開繊する。トウの開繊幅は任意であり、例えば、幅50〜2000mm、好ましくは製品の吸収体の幅の50〜300mm程度とすることができる。また、トウの開繊度合いを調整することにより、吸収体の密度を調整することができる。
好適には、図2に示すように、吸収体56中に高吸収性ポリマー粒子54,54…を含ませる。そして、少なくとも液受け入れ領域において、フィラメント52,52…の集合体に対して高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)が実質的に厚み方向全体に分散されているものが望ましい。この実質的に厚み方向全体に分散されている状態を図2の要部拡大図として概念的に示した。
吸収体56の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、フィラメントの集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子がフィラメント52,52…の集合体中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子がフィラメントフィラメント52,52…の集合体を通り抜けて包被シート58上にある形態や保持シート80上にある形態も排除されるものではない。
(高吸収性ポリマー粒子)
高吸収性ポリマー粒子54とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子54の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子54の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子54としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子54の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
高吸収性ポリマー粒子54としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
また、高吸収性ポリマー粒子54としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
高吸収性ポリマー粒子54の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量を50g/m2以下とすることにより、ポリマーの重量によって、合成連続繊維を採用することにより軽量化効果が発揮されにくくなるのを防止できる。350g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子54の過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
必要であれば、高吸収性ポリマー粒子54は、吸収体56の平面方向で散布密度あるいは散布量を調整できる。たとえば、液の排泄部位を他の部位より散布量を多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の散布密度(量)を高め、女用は中央部の散布密度(量)を高めることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)にポリマーが存在しない部分を設けることもできる。
必要により、高吸収性ポリマー粒子54として、粒径分布が異なる複数用意し、厚み方向に順次供給し、吸収体56内の下側に粒径分布が小さいものを、上側に粒径分布が大きいものを分布させることができる。
高吸収性ポリマー粒子54と連続繊維との割合は吸収特性を左右する。吸収体56における液を直接受ける領域での5cm×5cmの平面面積内における重量比としては、高吸収性ポリマー粒子/連続繊維重量が、1〜14、特に2〜9であることが望ましい。
(包被シート)
包被シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
この包被シート58は、図2のように、連続繊維52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…の層全体を包む形態のほか、その層の裏面及び側面のみを包被するものでもよい。また図示しないが、吸収体56の上面及び側面のみをクレープ紙や不織布で覆い、下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態、吸収体56の上面をクレープ紙や不織布で覆い、側面及び下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態などでもよい(これらの各素材が包被シートの構成要素となる)。必要ならば、連続繊維52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…の層を、上下2層のシートで挟む形態や下面のみに配置する形態でもよいが、高吸収性ポリマー粒子の移動を防止でき難いので望ましい形態ではない。
(保持シート)
保持シート80を設ける場合、保持シート80と吸収体56上との間には、高吸収性ポリマー粒子54をその散布などにより介在させることができる。高吸収性ポリマー粒子54は、連続繊維52の集合体への供給時又はその後の工程、あるいは消費者が使用するまでの流通過程で、連続繊維52の集合体を通り抜けることがある。連続繊維の集合体を通り抜けた高吸収性ポリマー粒子群の凹凸は、消費者が使用する際に手で触ったときジャリジャリした違和感を与える。そこで、吸収体56と包被シート58との間に高吸収性ポリマー54の保持性能を有する保持シート80を介在させるのも好ましい形態である。この保持シート80は、ティッシュペーパ(クレープ紙)などの包被シート58のみでは足りないコシを補強して、消費者が使用する際に手で触ったとき違和感を軽減又は防止する。
保持シート80の素材は、特に限定されず、高吸収性ポリマー54の保持性能を有するものであれば足りる。具体的には、例えば、不織布、捲縮パルプ、低吸収性のコットン繊維(例えば、未脱脂のコットン繊維、脱脂されたコットン繊維、レーヨン繊維を撥水剤や疎水化剤で処理したものなど。)、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、絹、綿、麻、ナイロン、ポリウレタン、アセテート繊維等を例示することができる。
保持シート80を不織布とする場合、その保持シート80は、KES試験に基づく圧縮エネルギーが0.01〜10.00gfcm/cm2、好ましくは、0.01〜1.00gfcm/cm2で、かつ圧縮レジリエンスが10〜100%、好ましくは、70〜100%の不織布であるとよい。
保持シート80を設ける理由は先にも触れたように、たとえば吸収体56から下方に抜け落ちた(抜け出た)高吸収性ポリマー54を保持することにある。したがって、抜け出た高吸収性ポリマー粒子54に対して、包被シート58及び保持シート80を介して使用者に接触するので、使用者にジャリジャリした違和感として、伝わるおそれがない。特に上記の縮エネルギー及び圧縮レジリエンスである不織布であると、その機能が十分に発揮する。
また、抜け出た高吸収性ポリマー54は、保持シート80によって保持され、包被シート58上を移動することがないため、吸収能力の偏在が生じるおそれもない。特に、保持シート80上を高吸収性ポリマー粒子54が移動を防止するために、予め粘着性を有するホットメルト接着剤などを保持シート80上に塗布することができる。また、保持シート80の上面(使用面側に向かう面)を粗面とすることで、保持シート80上を高吸収性ポリマー粒子54が移動を防止するようにしてもよい。このための粗面化又は毛羽立ち手段としては、不織布の製造時におけるネット面でない非ネット面とする、マーブル加工を行う、ニードルパンチにより加工する、ブラシッング加工するなどを挙げることができる。
保持シート80は、図2に示すように吸収体56の下方にのみ設けても、また図示しないが、吸収体56の側面を通り吸収体56の上面にまで巻き上げて延在させてもよい。また、保持シート80を複数枚重ねて使用することも可能である。
上記例は、吸収体56と包被シート58の裏面側部位との間に保持シート58を設ける例であるが、保持シートは、包被シートより裏面側であってもよく(その形態は図示していない)、要は、吸収体56に対して裏面側に保持シートを設ければ、製品の裏面から触る場合におけるジャリジャリした違和感を軽減させるあるいは生じさせないものとなる。
(股間部外装シート)
吸収性本体20の裏面側には、製品外面に露出する股間部外装シート12Mが設けられている。この股間部外装シート12Mの素材としては、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bと同様のものを用いることができるが、より高強度の素材や消臭剤を含有するもの等、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bとは異なる素材を用いることもできる。具体的には、PP、PP/PE、PP/PET等の繊維からなる、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、エアーポイント不織布、スパンレース不織布、SMS不織布等の各種不織布、あるいはこれに消臭剤等を添加したもの等を用いることができる。
股間部外装シート12Mには座位時に高い体圧がかかる。よって、摩擦堅牢度の高い(毛羽立たない)特性を有する素材が好ましく、特に以下の摩擦堅牢度試験で「◎」または「○」の評価が得られるものを用いるのが好ましい。
(摩擦堅牢度試験)
摩擦堅牢度は、JIS L 0849に準拠し、次の方法で測定する。すなわち、250mm×25mmの摩擦堅牢度測定用シート片を作成し、測定用シート片の外面側(吸収性本体の外面側)の摩擦堅牢度を測定する。摩擦堅牢度の測定には、例えばCOLOR FASTNESS RUBBING TESTER(テスター産業株式会社製、型式;AB−301)を使用することができる。測定は、摩擦試験機II型を使用し、50回の振動を加えて行う。試験の結果得られる測定用シート片を目視にて限度見本と比較し、{◎:よれ玉および毛羽立ち無し○:よれ玉無し、毛羽立ちあり△:よれ玉あり、毛羽立ちあり×:不織布が破断}の4段階で評価する。
股間部外装シート12Mは、印刷や着色を行い、デザイン要素を備えたシートとしてもよい。前述のデザインシートと併用する場合は、それぞれのデザインが重ならないように配置することが好ましい。
股間部外装シート12Mとして伸縮不織布を用い、吸収性本体20の長手方向に伸長して貼り付けると、股間部のフィット性が向上するため好ましい。
吸収体56が、繊維目付100g/m2以下で高吸収ポリマー目付が100g/m2以上の超薄型吸収体である場合、吸収体56のコシが無いため、はかせやすさを低下させないように股間部においてコシを強化する必要がある。一方、腹部及び背部においてはコシはあまり必要ではない。従って、このような形態においては、股間部外装シート12Mに剛度(コシ度)の高いシートを用いることが好ましい。具体的には、クラーク法(JISL1096 C法)によって測定される剛軟度の、シートのMD方向とCD方向との和が100mm以上、好ましくは150mm以上のシートを用いるとよい。
図示例では、腹側及び背側外装シート12F,12Bと吸収性本体20とが重なる部分において、股間部外装シート12Mは吸収性本体20と腹側及び背側外装シート12F,12Bとの間に挟まれているが、腹側及び背側外装シート12F,12Bの外側に貼り付けることも可能である。股間部外装シート12Mは、ホットメルト接着剤等により吸収性本体20の裏面、並びに腹側及び背側外装シート12F,12Bの内面若しくは外面に貼り付けられる。
(その他)
上記実施形態の腹側外装シート12Fは、接合部12Aと同じ上下方向範囲を占める部分のみからなるものとしたが、接合部12Aと同じ上下方向範囲を占める腹側本体部と、この腹側本体部の下側に延出する腹側延出部とからなる構成とすることもできる。これにより、腹側外装シート12Fの脚周り形状を鼠蹊部に沿ってフィットする形状とすることができる。腹側延出部には背側延出部のように細長状弾性伸縮部材を配置する必要は特に無いが、配置する場合は、腹側本体部の中間部Mに配置される細長状弾性伸縮部材19Tと同様の太さ、伸張率、間隔、及び上下方向配置とすればよい。この場合、腹側延出部の面積は、背側延出部の面積の10〜80%であるのが好ましく、20〜50%であるとより好ましい。腹側延出部が過度に大きいと、かえってフィット性を損なうため好ましくない。
本発明は、予めパンツ型に形成されてなるパンツ型紙おむつに適用できるものである。
実施形態の内面を示す展開状態での平面図である。 図1の2−2断面図である。 図1の3−3断面図である。 製品状態の正面図である。 製品状態の背面図である。 溶着による弾性伸縮部材の固定方法を示す概略図である。 溶着による弾性伸縮部材の固定方法を示す概略図である。 実施形態の装着状態を示す写真である。 比較例の装着状態を示す写真である。 接合部傾斜試験の試験要領を示す概略図である。
10…吸収性本体、12…外装シート、12F…腹側外装シート、12B…背側外装シート、13…背側本体部、14…背側延出部、15…第1の細長状弾性伸縮部材、16…第2の細長状弾性伸縮部材。

Claims (7)

  1. 装着者の胴回りのうち腹側を覆う腹側外装シートと背側を覆う背側外装シートとからなり、腹側外装シートの幅方向両側縁の接合部と背側外装シートの幅方向両側縁の接合部とが接合されて形成された筒状の胴回り部と、
    前端部が前記腹側外装シートの幅方向中央部内面に連結されるとともに、後端部が前記背側外装シートの幅方向中央部内面に連結され、且つ背側から股間部を通り腹側までを覆う吸収性本体とを備え、
    前記腹側外装シートと背側外装シートとが股間側で連続しておらず、離間されているパンツ型紙おむつにおいて、
    前記背側外装シートは、前記接合部と同じ上下方向範囲を占める背側本体部と、この背側本体部の下側に延出する背側延出部とを有しており、
    この背側延出部は、前記吸収性本体と重なる幅方向中央部と、その両側に延出した臀部カバー部とを有しており、
    前記腹側外装シートは、前記接合部と同じ上下方向範囲を占める腹側本体部のみからなるか、又は前記接合部と同じ上下方向範囲を占める腹側本体部と、この腹側本体部の下側に延出する腹側延出部とを有しており、
    前記背側本体部における上下方向の上端部、下端部及びこれらの間の中間部のうち、上端部に、所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定された背側ウエスト部弾性伸縮部材が上下方向に間隔を空けて複数設けられるとともに、中間部及び下端部における少なくとも前記吸収性本体と重ならない部分に、所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定された第1の細長状弾性伸縮部材が上下方向に間隔を空けて複数設けられるとともに、少なくとも前記臀部カバー部に、所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定された第2の細長状弾性伸縮部材が上下方向に間隔を空けて複数設けられており、
    前記腹側外装シートにおいて、前記腹側本体部における上下方向の上端部、下端部及びこれらの間の中間部のうち、上端部に、所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定された腹側ウエスト部細長状弾性伸縮部材が上下方向に間隔を空けて複数設けられるとともに、中間部における少なくとも前記吸収性本体と重ならない部分に、所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定された第3の細長状弾性伸縮部材が上下方向に間隔を空けて複数設けられ、且つ下端部における少なくとも前記吸収性本体と重ならない部分に、所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定された第4の細長状弾性伸縮部材が上下方向に間隔を空けて複数設けられており、
    前記第2の細長状弾性伸縮部材の伸張率が第1の細長状弾性伸縮部材の伸張率よりも高かつ前記第4の細長状弾性伸縮部材の伸張率が第1の細長状弾性伸縮部材の伸張率よりも高い、
    ことを特徴とするパンツ型紙おむつ。
  2. 前記第1〜第4の細長状弾性伸縮部材の伸張率の大小関係が、
    第4の細長状弾性伸縮部材≧第2の細長状弾性伸縮部材>第1の細長状弾性伸縮部材≧第3の細長状弾性伸縮部材、
    となっていることを特徴とする請求項記載のパンツ型紙おむつ。
  3. 接合部傾斜試験における接合部傾斜角度が20度以下となるように、前記背側ウエスト部細長状弾性伸縮部材、前記腹側ウエスト部細長状弾性伸縮部材、前記第1の細長状弾性伸縮部材、前記第2の細長状弾性伸縮部材、前記第3の細長状弾性伸縮部材、及び前記第4の細長状弾性伸縮部材の各々における本数、太さ、伸張率、間隔、素材の種類、及び上下方向配置が定められている、請求項又は記載のパンツ型紙おむつ。
  4. 前記外装シートの各部に働く幅方向の収縮力の大小関係が、
    前記腹側本体部の下端部≧前記背側延出部>前記背側本体部の中間部及び下端部≧前記腹側本体部の中間部、
    となっていることを特徴とする請求項記載のパンツ型紙おむつ。
  5. 前記背側延出部の少なくとも上端部は、前記背側本体部と同幅で前記背側本体部の下側に延出されている、請求項1〜のいずれか1項に記載のパンツ型紙おむつ。
  6. 前記臀部カバー部の幅方向外側の縁が、股間側に近づくにつれて前記吸収性本体側に近づくような直線状または曲線状をなしている、請求項1〜のいずれか1項に記載の紙おむつ。
  7. 前記臀部カバー部の幅方向の長さが80〜160mmであり、前記臀部カバー部の上下方向の長さが30〜80mmである、請求項記載のパンツ型紙おむつ。
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