JP4999108B2 - 金の浸出方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金を含有する硫化鉱物あるいはケイ酸鉱から金を回収するための浸出方法に関するものであり、特に金の浸出を大気圧下において沸騰温度以下の水溶液中で行うものである。
硫化銅鉱や硫化銅鉱に付随するケイ酸鉱はしばしば金を含有している。かかる鉱石から金を回収するには大きく分けて二通りの方法がある。その一つは金を含有する硫化銅鉱や金を含むケイ酸鉱(以下「原料」という)を1000℃以上の高い温度で処理する方法であり、硫化鉄やスラグ形成の不足量を補うためのケイ酸鉱とともに原料を1000℃以上の高温で溶融処理し、マットと呼ばれるCu2Sと酸化鉄やケイ酸を主体とし不純物を含むスラグをつくる。マットを高温で還元して粗銅と呼ばれる低純度の金属銅とし、これを電気分解して99.99%以上の純度をもつ金属銅に精製する。原料中に含まれる金は、この金属銅の製造過程で銅と挙動を供にし、電気分解の過程でその他の貴金属とともに銅電解殿物と呼ばれる沈殿として回収される。
この銅電解殿物は、鉛とともに高温で溶融し鉛中に貴金属を濃縮し酸化によって鉛を除去した後、原銀板と呼ばれる金等の貴金属を含む銀板をつくる。この原銀板を電気分解して銀を精製する過程で、銀電解殿物として貴金属を含む沈殿が生じる。この沈殿から硝酸等によって金以外の貴金属を溶出させたのち高温で溶融して原金板とよばれる純度の低い金を製造し、これを電気分解して純度の高い金を回収する。
この方法では、1000℃を超える高温を必要とすることと、本来、金属銅の製造が目的であり、金は副産物として生産されるため金を回収するまでの処理工程が非常に長いという欠点がある。
もう一つの金回収方法は、シアン、チオ尿素、チオ硫酸のような金化合物を生成しやすいような錯化剤を溶解した溶液と原料を接触させ、これらの化合物と金を反応させることで溶液中に溶出させ、活性炭表面に金を吸着させることにより金を回収する。
この方法では、高温は必要ではなく、回収の工程も短くできるが、銅や鉄といった金属元素が共存する場合には、これらの元素が金化合物を生成するための薬剤を消耗する。したがって、これらの金属元素を適切な量まで除去しておく必要があり、この場合には、金以外の元素の除去と金回収とを別の工程で処理することとなる(非特許文献1)。
また、金がハロゲン族元素と錯体を形成して水溶液中に溶解しやすいことを利用してハロゲン族元素を添加した水溶液で金浸出を行う例もある。この場合には、金を金イオンとする必要があり、そのためには酸化剤を必要とする。この酸化剤としては、通常、硝酸、過酸化水素、塩素といった標準酸化還元電位で+900mVを超えるような酸化剤が使用される。このような酸化剤を使用した条件では、含有されるほとんどの金属元素は酸化反応を起こすため、金回収に必要な量より過大な酸化剤量を消費することになる(非特許文献2)。
いわゆるINTEC法として、常圧元素硫黄生成型浸出を行い青化法が不要な浸出法が提案されている(特許文献1:特許第2857930号)。この方法での金浸出に用いる浸出液は、銅回収のための塩化浴銅電解採取を終えた液であり、この液の酸化還元電位は700mvを示し、液中のハロゲン化合物(ハレックス:一般にBrCl2 -)の高い酸化還元電位を利用し金を浸出する。
塩化浴銅電解採取での反応を以下に示す。
カソード側:2Cu+ + 2e- → 2Cu
アノード側:Br- + 2Cl- → BrCl2 - + 2e-
このハレックスを金浸出に用いる場合、ハレックスを銅の電着回収と同じ装置内で製造するため複雑な操作を必要とすることから、管理方法が複雑であり大規模な処理ができない等の問題がある。
また、特許文献4:AU App 2003287781は、塩化浴中での金の浸出方法を提案しているが、金浸出率を高くするために、酸素ガスや塩素ガスのような特別な酸化剤を必要としている。
特許文献2:特開2005−298850号公報は、銅の湿式製錬で産出される浸出残渣から金を回収する方法において、第二鉄イオンとチオ尿素を含有する溶液により浸出残渣を処理し、金を浸出する方法を提案している。かかる浸出残渣のみならず、原料から金を溶液中に浸出する場合、銅や鉄が金を溶出するための薬品を消費する。通常、金を溶液中に溶出させるためのシアン、チオ尿素、チオ硫酸といった薬品は高価であり、その薬品を消費する共存する銅や鉄は金と比較して多量に存在するため、金回収にかかる費用を多大にする。
本出願人は、特許文献3:特願2007−86983号(平成19年3月29日出願、平成18年9月28日付け特願2006−264423の優先権主張)において、次の金浸出方法を提案した。
即ち「金を含有する硫化銅鉱や金を含むケイ酸鉱を含有する硫化銅鉱を硫化銅鉱中の銅品位が7.9%以下になるまで銅を浸出し、銅品位が7.9%以下になった金を含有する硫化銅鉱や金を含むケイ酸鉱を含有する硫化銅鉱を塩素イオンと第二鉄イオンを溶解した溶液に混合する、あるいは塩素イオンと鉄イオンを含む溶液に空気を吹込み空気中の酸素で鉄イオンを酸化して三価にできる状態で混合し、そのpHを1.9以下に調整しながら撹拌し、第二鉄イオンの酸化力によって少なくとも金を溶液中に溶解することを特徴とする金の浸出方法。」である。
特許文献3の方法においては、従来の金浸出法を次のように評価している。
(1)従来法は高価な薬剤を多く消耗する。
(2)硫化物として存在する銅や鉄が溶出する結果残留する硫黄が原料表面を覆うことで不働態化して反応を阻害する場合もある。このため、金を溶出する薬品の消費量を減少させるため、含有する銅や鉄を前もって溶液中に溶出させ含有量を低下させた後、金の溶出操作にかかる。あるいは、焙焼等の操作により硫黄を原料から排除するような操作を前もって行うことでこれらの問題を回避しようとしてきた。
このような操作を行う場合、その操作自身が処理を複雑にして金の回収費用が増加する原因となるだけでなく、このような操作の多くは酸濃度の高い溶液中で実施したり、操作の結果の生成物は水溶液中に混合すると高い酸性度を示すことが多い。一方、金溶出操作はpH域からアルカリ性で行われるため、金溶出操作に移行する前に中和する必要が生じ中和で使用する薬品が回収費用を増加する原因となる。
(3)さらに、使用するシアン、チオ尿素、チオ硫酸といった薬品は高価であるが分解しやすいとか毒性を持つといった性質があり、取り扱い時や取り扱い後の処理を厳密に行う必要がある。このような点も処理費用増加の原因となる。また、反応時間が長く製品化に時間がかかり、金の滞留量が多くなるといった問題もある。
(4) シアンを使用した場合より反応速度が速いということから、塩素、臭素といったハロゲン化物とそのガスを使用する金浸出方法も考えられている。この場合には、ハロゲンガスを酸化剤として使用することで溶液中に高い酸化状態(塩化物溶液中で、塩素ガスの場合水素標準電位で1242mV、臭素ガスの場合1070mV)を実現して金の溶出を促進できる。これらの方法にも欠点があり、ハロゲン類も高価であるとともに、これらのガス類は腐食性が強く取り扱いが困難である。さらに、反応してイオンとなる場合の電位が高いため、過剰に添加した場合には原料表面が不働態化を起こし反応が進行しなくなることがある。ヨウ素を使用する場合もあるが、原料中の脈石成分として含まれる鉄と反応して必要以上に消耗される。また、これらの薬品は酸化電位が非常に高いため酸素は有効な酸化剤とはならず、浸出反応の結果これらの薬品が還元されても空気中の酸素程度では酸化できず、簡易的な方法で再使用するということはできない。
特許文献2の方法はこれらの問題点を克服することができる。
特開2005−298850号公報 特許第2857930号公報 特願2007−086983 AU App 2003287781 「Recovering Metals from Sulfidic Materials」 "REVIEW OF GOLD EXTRACTION FROM ORES", S. R. La BROOY, H. G. LINGE and G. S. Walker, Minerals Engineering, Vol.7, No. 10, pp1213-1241 "銅殿物湿式処理技術の確立", 虎岩明憲, 安部吉史, 資源と素材, Vol.116, (2000), No. 6, pp484-492
本発明は、特許文献3の方法を改良することにより、硫化銅鉱から金をさらに効率良く浸出する方法を提供することを課題とする。
本発明は、上記の問題を解決するものであって、以下の発明を提供する。
(1) 金を含有する硫化銅鉱又は金を含むケイ酸鉱を含有する硫化銅鉱(以下「原料」という)に、銅品位が7.9%以下になるまで銅の浸出を施し、銅品位が7.9%以下に低下した原料を、シアン、チオ尿素及びチオ硫酸を錯化剤として使用することなく、錯化剤としての塩素イオンのみ、またはこれに臭素イオンを加え、これと、第二鉄イオンを溶解した金浸出溶液において鉄イオン濃度が0.01g/l以上、銅イオン濃度が5〜20g/l、塩素イオン濃度が118g/l〜186g/l、臭素イオン濃度が1 〜80g/l、塩素イオンと臭素イオンの濃度の合計が120g/L〜202g/Lである第1の溶液に混合するか、あるいは前記第1の溶液に空気を吹込み鉄イオンを酸化して三価にした第2の溶液と混合し、前記第1の溶液又は前記第2の溶液(以下「金浸出溶液」という)をpHを1.9以下に調整しながら攪拌し、硝酸、過酸化水素、塩素ガス、臭素ガス、ハレックスなどを酸化剤として使用することなく、金浸出溶液に含まれる第二鉄イオンの酸化力によって、原料中の少なくとも金を該金浸出溶液中に溶解する金の浸出方法において、金の浸出中に、金浸出溶液の全てあるいは一部から金を選択的に除去することにより金濃度を低下することを特徴とする金の浸出方法。
(2) 塩素イオンと鉄イオンを含む浸出液により原料を浸出して得られた第3の溶液(前記金浸出溶液と併せて以下「金浸出溶液」と総称する)に空気を吹込み空気中の酸素で鉄イオンを酸化して三価にし、引き続いて、前記pH調整及び撹拌、並びに金の浸出を行うことを特徴とする(1)記載の金の浸出方法。
(3) 金浸出溶液に臭素イオンを共存させることを特徴とする(1)又は(2)記載の金の浸出方法。
(4) 攪拌中に金浸出溶液に空気を吹込み、二価の鉄イオンを三価に酸化することを特徴とする(1)から(3)までの何れか1項に記載の金の浸出方法。
(5) 浸出温度が60℃から85℃である(1)から(4)までの何れか1項に記載の金の浸出方法。
(6) 金浸出溶液に活性炭あるいは活性炭と硝酸鉛を投入することを特徴とする(1)から(5)までの何れか1項に記載の金の浸出方法。
(7) 原料全体の80%以上が粒径40μm以下になるように原料を粉砕摩鉱することを特徴とする(1)から(6)までの何れか1項に記載の金の浸出方法。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明が処理する原料は、金を含有する硫化銅鉱や金を含むケイ酸鉱を含有する硫化銅鉱である。かかる原料を任意の方法で浸出し銅品位を7.9%以下にする。このような硫化銅鉱中の銅を浸出するには、硫酸溶液中に酸素を吹き込んで酸化浸出を行うとか、塩化物溶液で塩化銅あるいは塩化鉄を添加し塩素ガスあるいは酸素を使用して酸化浸出を行う等種々の方法が提案されているので、これらの方法を適宜実施することができる。硫化銅鉱中の銅を浸出するにはこれらのどの方法でも採用できるが、硫酸浴では浸出速度が遅いため、塩化浴で行うことが望ましい。また、硫酸浴浸出の場合は浸出残渣につき本方法の処理を施し、塩化浴浸出の場合は浸出残渣を含む浸出液全体につき本方法を施す。
本発明においては、銅品位が7.9%以下に低下した浸出物を塩素イオンと三価の鉄イオンを共存させた溶液により金の浸出を行う。浸出液は、塩素イオンと第二鉄イオンを溶解した第1の溶液、又は塩素イオンと鉄イオンを含む溶液に空気を吹込み鉄イオンを酸化して三価にした第2の溶液である。必要に応じてこの溶液に銅イオンや臭素イオン又は両イオンを共存させた溶液に混合することで金を溶液中に溶出することができるものである。
銅精鉱中に存在する金を浸出するには適切な酸化剤と、浸出した金が再び還元されて金属金として沈殿しないための安定化剤が必要である。本発明では塩素イオンを利用して塩化金を生成することで安定的に金を溶出するが、臭素イオンを併用する場合、臭化金を生成することで金浸出をさらに容易することができる。
塩化物を溶液中に溶解した塩化浴とよばれる溶液中では、反応の酸化電位は
水系の場合と比べて変化する。
例えば、Au3+/Au(Au3++3e→Auの酸化還元系を示す。以下同じ)の標準酸化電位は水系では1500mVであるが、塩化浴ではAuCl4 /Auは1000mVに低下することが知られている。このことは、水系より低い酸化力の酸化剤で金を溶出できることを示している。さらに、臭化金の場合、AuBr4 /Auで表される標準酸化電位は870mVとさらに低下することが知られている。このため、金の塩化錯体あるいは臭化錯体を形成することで低酸化力の酸化剤で金を浸出できる。
しかしながら、塩化錯体を形成する標準酸化電位でも1000mVを示すため、金の塩化物錯体あるいは臭化物錯体を利用した浸出でも、通常は、過酸化水素、塩素ガスあるいは臭素ガスのような、標準酸化電位で1000mVを超えるような酸化力をもつ酸化剤やこれに近い酸化電位(960mV)を示す硝酸を使用していた。また、特許文献1においてはハレックスの使用により700mV程度の酸化還元電位で金を浸出している。
本発明者らは、塩素イオンを含む水溶液を使用すれば酸化剤としては三価の鉄イオンで十分であり、従来と比較して非常に低い酸化電位で金浸出が可能なこと、臭素イオンを添加すればさらに低い酸化電位での金浸出が可能となり、結果的には金浸出の反応速度が速くなることを特許文献3において開示した。
この反応に使用するための臭素イオン濃度は、臭化金を生成するとともに溶出した金が錯体を形成するために必要であり溶出する金濃度にも依存するが、共存する塩化ナトリウム濃度の影響も受けるため溶解度の上限が存在する。溶解度を考慮すると1から80g/lとなるが、薬品の経済的な使用量を考えると10から26g/l程度が望ましい。
塩素イオンは、塩化金を生成するとともに金の塩化錯体を形成し金を溶出させるために添加する。また、銅を添加して鉄の酸化反応を促進するためには、反応により生成する第一銅を安定に存在させる必要があり、この目的でも添加する。その濃度としては、第一銅の安定性を考え、3.3mol/l(118g/l)〜5.2mol/l(186g/l)である。5.2mol/lを超える場合、反応によって金属イオン濃度が高くなると塩化ナトリウムの結晶として析出するため、溶液中の濃度は上がらなくなる。
鉄イオン濃度は0.01g/l以上であれば金浸出は可能であるが、反応性をよくするためには高いほうがよい。しかしながら、0.26g/l以上になっても特段に反応性がかわることはないが、この濃度で金の浸出速度に対する鉄濃度の効果は最大となるため、0.26g/l付近の濃度が好ましい。
また、原料が鉄を含有する場合には、原料から浸出された鉄は酸化剤として作用するため、必ずしも前もって添加しておく必要はない。
銅イオンは金浸出に直接関与しないが、銅イオンが存在することで鉄イオンの酸化速度が速くなる。その濃度は5〜20g/lである。
硫化銅鉱中の銅品位を7.9%以下まで低下させた浸出残渣を、三価の鉄イオンと塩素イオンを含む溶液に混合することにより、浸出残渣中の金を浸出する反応の要点は、三価の鉄と二価の鉄の活量比([a(Fe3+)]/[a(Fe2+)])で決まる溶液の酸化還元電位を金の塩化錯体あるいは臭化錯体の生成電位より高く保つことである。
反応の進行によって三価の鉄と二価の鉄の活量比([a(Fe3+)]/[a(Fe2+)])が低下する場合には、酸素を溶液中に吹込み、溶液中に存在するプロトン(H+)との反応で反応式1によって三価の鉄濃度を高くし溶液の酸化還元電位を維持できる。酸素は空気中に含まれる酸素で十分である。
Fe2++H++(1/4)O2→Fe3++(1/2)H2O 反応式1
塩酸等の酸を添加することでプロトンは供給できる。酸化反応が進めばプロトンは消費され溶液のpHが上昇するため、塩酸等の酸を添加して溶液のpHを一定にすることで反応式1の反応は可能となる。
そのpHは1.9以下であればよいが、鉄の酸化速度は高いpHの方が促進されるため、pH 0.5〜1.9の範囲が望ましい。
さらに、鉄や銅といった元素が原料中に存在する場合には、塩化第二鉄あるいは塩化第二銅でこれらの元素を水溶液中に溶出することができ、これらの元素の溶出がほぼ終了した時点から金の浸出を始めることができる。
塩素イオンや臭素イオンは金と錯体を形成することで金の酸化電位を低下させるために存在しており、ガス化や沈殿生成のような反応はないため溶液中に残留し、なくなることはない。また、塩素ガスや臭素ガスを使用しないため、これらの成分の大気中への逸散もない。
銅や鉄といった金属元素に配位した場合でも、銅の場合は還元で、鉄の場合は加水分解で臭素イオンを遊離できるため損失にはならない。
臭素イオンは臭化ナトリウムのような形態で添加し、その濃度は高いほど望ましいが、同時に添加する塩素イオン濃度の影響と温度の影響をうけ溶解度が変化するため、実用的には臭素イオン濃度で1〜80g/l、好ましくは10〜26g/lでよい。
酸化剤として使用する鉄や銅といった金属元素、特に銅は酸化反応後塩化第一銅となりこれを安定化するために塩化ナトリウムのような形態で塩素イオンをあらかじめ添加しておく。その濃度は、塩化鉄や塩化銅に含まれる塩素イオン濃度を含めた全塩素イオン濃度で3.3〜5.2mol/lになるよう調整する。塩化ナトリウムの溶解度は塩化銅濃度と鉄濃度の影響をうけるため、高濃度にしておくと反応の結果銅や鉄が溶出すると塩化ナトリウムの結晶が生成することになる。
金を溶出するための酸化剤として溶液中に鉄イオンを添加するが、その濃度は鉄濃度として0.01〜0.26g/l程度で十分である。これ以上の濃度であっても反応に対する効果は変わらないが、これ以上の濃度で存在しても反応を阻害するものではない。また、原料が鉄を含みこの鉄が溶出するような場合には前もって添加しておく必要はない。
銅イオンは、それ自体が酸化剤として働くと同時に、二価の鉄イオンを酸化するために触媒的にも働く。本来、二価の鉄の酸化速度は非常に遅いが、銅イオンが共存することで酸化速度は促進される。また、銅イオンが塩化銅として存在することで、原料中に存在する鉄や銅の硫化物を浸出し効率的な金浸出が可能となる。塩化第二銅によって硫化銅が浸出されると、反応式2〜4に示すように、塩化第二銅は塩化第一銅となる。
CuS+CuCl2→2CuCl+2S 反応式2
Cu2S+2CuCl2→4CuCl+S 反応式3
CuFeS2+3CuCl2→4CuCl+FeCl2+S 反応式4
この第一銅を溶液中で安定に存在させることでこの浸出反応は進行する。この塩化第一銅を安定化させるためにも前記のような塩素イオン濃度が必要である。
このように調整した液に原料を加え温度が60℃以上になるよう加熱した後、空気を吹込みながら撹拌する。
さらに、反応中は塩酸を添加して、pHが1.9以下、できれば0.5〜1.9の間に入るように調整する。このようなpHにすることで鉄の酸化速度を速くできる。溶液中の鉄はpHに応じて水酸化物として沈殿するが沈殿によってプロトン(式中はHClで表現)を遊離し(反応式5、6)このプロトンは第一銅あるいは第一鉄の酸化に有効に利用できる。
FeCl3+3H2O→Fe(OH)3+3HCl 反応式5
FeCl3+2H2O→FeOOH+3HCl 反応式6
金を浸出するための酸化剤として三価の鉄イオンを使用し、鉄イオンの酸化を促進するために銅イオンを利用するが、これらのイオンはそれぞれが酸化反応を起こすことによって鉄は二価の鉄イオンに銅は一価の銅イオンに還元される。しかしながら、反応式1や反応式7によって鉄は三価に銅は二価に酸化でき浸出反応を継続することができる。
Cu++H++(1/4)O2→Cu2++(1/2)H2O 反応式7
さらに、ここで消費される酸素は空気中の酸素で十分であることは周知である。
特許文献1では、浸出の際に取扱いが困難で有害なハロゲン化合物(ハレックス、典型的にはBrCl2 )を取扱い、高い酸化還元電位700mv (vsAg/AgCl)の元で、金の浸出率を高めているが(参考例3)、本発明では空気の吹込みのみで、酸化還元電位550mv(vsAg/AgCl)で金の高い浸出率を得ることができる。
また、特許文献4 AU App 2003287781では、空気+酸素のみでは金浸出率は59%であり、強い酸化剤で有害な塩素を使用することで金浸出率を95%に高めているが、本発明では、空気の吹き込みのみで95%の金浸出率を得ることができる。
さらに、特許文献3の出願後、本発明者らは実験を行い、上述のように金を浸出した溶液の全部あるいは一部から金を回収し、溶液中の金濃度を低く維持すれば反応速度が速くなるとともに金の浸出率も高くなることを発見した。
即ち、通常の方法では金の浸出が完了した後当該浸出液から金を回収するが、本発明方法は、金の浸出中に当該浸出液内において金を選択的に回収する方法であり、この結果、目的とする金を回収しかつ同時に浸出液中の金濃度が低下する。この回収方法としては、(1)浸出後スラリーを固液分離し、浸出残渣に新たな浸出液を添加し浸出を継続する方法、(2)浸出液に活性炭あるいはイオン交換樹脂を添加し、金を活性炭あるいはイオン交換樹脂に吸着させる方法、(3)(2)の方法において硝酸鉛を添加する方法、(4)浸出液の一部を抜き出し固液分離し、液中の金を電解採取、溶媒抽出、活性炭吸着、あるいはイオン交換樹脂により回収し、金を回収した液を元の浸出液に繰り返す方法など各種方法を採用することができる。
また、回収処理を施す対象としては、1段処理を行っている場合は浸出槽全部の液が対象となり、金を選択的に除去するが、液量自体は変わらない。一方、向流方式もしくは併流方式の多段処理を行っている場合は、複数の槽の幾つかにつき浸出液から金を選択的に除去すればよいが、全部の槽につき除去を行うことが好ましい。
さらに回収時期については浸出操作中連続的に絶えず金の選択的除去を行うことが好ましい。但し、上記(4)の方法では間欠的に行ってもよい。
(2)の方法の場合は、活性炭と浸出残渣をスクリーン等により分離し、分離後の活性炭等から金を回収することができる。なお、例えば、青化精錬法での活性炭による金の吸着自体は公知であるが、本発明では、塩化浴での金浸出に活性炭等を添加し、金の選択的除去を行うことにより金の浸出率を高くするところに特徴がある。
本発明が基礎とする特許文献3の発明の効果は次の(1)〜(9)のとおりであり、本発明はこれらの効果に加えてさらに短時間で高い金の浸出率を達成するものである。即ち、本発明は特許文献3が開示した各種浸出液、濃度について、金の浸出率を高くすることができる。また、本発明が採用する浸出液(第1〜第3溶液)中の金の濃度低下手段は金の回収方法そのものであるから、金の回収ができるという特長も有する。
(1)金を含有する硫化銅鉱を、塩素イオンと鉄イオンを含む水溶液で処理し、通常使用されるような過酸化水素や硝酸といった酸化剤やシアン、チオ尿素、チオ硫酸といった錯化試薬を使用することなく、金或いは銅を効率良く浸出することが出来る。
(2)金浸出に有効な塩素イオンと鉄イオンを使用して銅や鉄を含む硫化銅鉱中の銅、鉄も浸出することができるため、同一の溶液を使用して、銅、鉄と金の浸出が可能となり工程を単一化できるため工程の短縮が図れる。このことにより設備費が節約できる。
(3)銅イオンや臭素イオン、あるいは両方のイオンを共存させることで金浸出反応を促進できるため、反応時間の短縮により反応槽が小さくなり設備費を節約できる。
(4)原料中に含まれ溶液中に浸出された鉄や銅も金浸出に利用できるため薬品代の節約となる。
(5)使用する塩素や臭素といった薬品のなかで高価なものは臭素イオンを提供する臭化物であるが、金濃度と比較して溶液中に多量に存在する銅や鉄のような金属元素に配位しても、各金属イオンを溶液中から回収する段階では臭素イオンとして溶液中に残すことが可能でほとんど消耗しない。
例えば、鉄は水酸化物として沈殿分離でき、銅は電解採取あるいは卑な金属と置換することで金属として回収できる。このような回収過程で臭素イオンは遊離され溶液中に残留する。
(6)この金浸出反応は三価の鉄による酸化で行なわれ、金は塩化金あるいは臭化金として溶出される。銅は鉄の酸化を促進する。これらの鉄イオンや銅イオンは、反応によりそれぞれ二価の鉄イオンや一価の銅イオンに還元されるが、還元された二価の鉄イオンや一価の銅イオンは溶液中のプロトンと空気中の酸素により酸化でき再度酸化剤として利用できる。溶液のpHを1.9以下に維持することで、二価の鉄イオンや一価の銅イオンを酸化するためのプロトンを供給できる。
(7)この金浸出反応は、塩化銅や塩化鉄の酸化領域で反応を行うため、溶液の酸化電位は+480mV(銀/塩化銀標準電極基準)以上でよく、塩素ガスや臭素ガスのような+778mV(銀/塩化銀標準電極基準、水素電極基準で+1000mV)を超えるような高い酸化電位を示す薬品を必要としない。
(8)このような方法によって、薬品代の消耗がほとんどなく、酸化剤として腐食性や毒性をもつガスを使用することなく、金とともに銅や鉄あるいは硫黄を含有した原料を特段の前処理を施すことなく単一の工程で金を溶出することができる。
(9)また、塩素イオンや臭素イオンが溶解している溶液中で酸化により金属元素の溶出を行うと反応の結果元素状硫黄が残留するが、硫酸溶液と異なり原料の表面を覆うことがなく、反応が進んでも原料は多孔質のままであるため溶出液が原料内部に浸透でき、反応が表面の不働態化によって停止しないことは知られている。
以下、本発明を参考例及び実施例により、さらに詳しく説明する。
参考例1
塩化第二銅を銅濃度として25g/l、塩化第二鉄を鉄濃度として2g/l、塩素イオン濃度を塩化銅、塩化鉄の塩素イオンを含めた全塩素イオン濃度として180g/l、臭化ナトリウムを臭素イオンとして22g/lの濃度の液を作成し浸出液として使用した。原料として、Cu 31.7%、Fe 17.5%、S 22.1%、Au 66g/tという組成をもつ銅精鉱1,260gを使用し、前記の浸出液9Lに添加した。
この銅精鉱は銅源として、カルコパイライト(CuFeS2)を15%、カルコサイト(Cu2S)35%含み、そのほかにケイ酸鉱18%、パイライト(FeS2)32%からなるものである。金はパイライトに全体の15%が存在し、残り85%はその他の鉱物全体に存在している。
浸出液を85℃に昇温後撹拌しながら原料の精鉱を投入した後、空気を吹込みながら、さらに撹拌を継続しながらサンプルを採取し、溶液中の金濃度と浸出されないで残留している浸出残渣中の銅品位を分析した。その結果を表1に示す。
表1からあきらかなように、残渣中の銅品位が低下するにつれ金浸出が始まり溶液中の金濃度が高くなる。また、残渣中の銅品位が7.9%になったときには金浸出は始まっており、1.2%以降では顕著であることはこの例を図示した図1であきらかである。このとき、2.8%以下の銅品位での測定値の近似線は、[Au濃度 mg/l]=0.1900-0.3993×log[残渣中Cu品位 %]となり、金濃度0mg/lの横軸との交点は3.0%となる。このことから、残渣中銅品位3.0%以下での金浸出は顕著になるが、実質的には表1に示すように残渣中の銅品位は7.9%以下で金浸出は可能である。
さらに、この反応はせいぜい533mV程度で行われており、従来のように1000mVを超えるような高い酸化電位を示す酸化剤は使用する必要はない。
参考例2
塩化第二銅を銅濃度として31g/l、塩素イオン濃度を塩化銅、塩化鉄の塩素イオンを含めた全塩素イオン濃度として186g/l、臭化ナトリウムを臭素イオンとして26g/lの濃度の液を作成し浸出液として使用した。原料として、Cu 15%、Fe 19%、S 17%、Au 82g/tという組成をもつ銅精鉱712gを使用し、前記の浸出液10Lに添加した。
浸出液を85℃に昇温後撹拌しながら原料の精鉱を投入し、空気を吹込みながら浸出を実施した。pHは0.5〜2の範囲に入るよう塩酸を添加して調整した。この実施例の結果を表2に示す。
この例で示すように、浸出開始時の銅品位が7.9%を越える場合でも、鉄が溶液中に存在する場合(途中0.7時間の液中鉄濃度の分析値が示す値)には、空気を吹き込むことで残渣中の銅品位が7.9%以下になった時点で金浸出が行われる。
実施例1
硫化銅鉱(Cu 22.1%, Fe 23.4%, S 29.1%, Au 73g/t)524gを、臭素イオンを添加していない浸出液4Lに混合し、85℃まで加温して空気を吹込みながら浸出を行った。浸出液の組成は、塩化第二銅を銅濃度として5.1g/l、塩化第二鉄を鉄濃度として5.1g/l、食塩を添加して塩素濃度126g/lとした。20時間の反応毎に濾過を実施し、濾別した浸出残渣を同組成の新たな浸出液に混合して浸出を継続した。この測定結果を表3に示す。
この例でみられるように、臭素イオンがなくても銅品位が低下することで金を浸出することはできる。ただし、溶出した金は若干不安定らしく残渣中の金品位は変動する。
参考例3
銅品位を前もって低下させた硫化銅鉱(Cu 0.23%、Fe 34%、S 42%、Au 20g/t)438gを、塩化第二鉄と食塩、臭化ナトリウムで鉄濃度5.7g/l、塩素濃度183g/l、臭素濃度24g/lに調整した液と混合して金浸出を実施した。浸出液の交換はなく継続して浸出反応を実施したが、途中、3時間を経過した時点で塩化第二銅を銅濃度で5g/l相当添加した。反応中は溶液中に空気を吹き込んでいる。
この例では、金属イオンとして鉄イオンだけを添加した場合3時間の反応時間では残渣品位にして3g/t分の金を浸出するにすぎないが、銅イオンを添加すると1時間でほぼ同程度の金を浸出できることを示している。液中金濃度についても、鉄イオンだけで3時間の反応をおこなって0.76mg/lまで上昇したが、銅イオンを添加すれば1時間で同程度の濃度上昇となり、残渣品位の変化からみた状況を裏付けている。
したがって、銅イオンの添加は金浸出速度を速くするものといえる。
実施例2
実施例1で使用したものと同じ硫化銅鉱524gと、同様の組成の液に臭素を添加したもの4Lを浸出液として金の浸出試験を実施した。浸出液の組成は、塩化第二銅を銅濃度として4.8g/l、塩化第二鉄を鉄濃度として4.9g/l、食塩を添加して塩素濃度118g/lとし、浸出開始後銅品位が低下する20時間までは臭素を添加せずに浸出を行ない銅品位の影響がなくなったところで臭素イオンを添加した。臭素濃度は臭化ナトリウムを添加して22〜25g/lとした。また、実施例1と同様に、20時間毎に濾過を実施し浸出残渣は継続して使用し、浸出液は新液を使用した。この結果を表5に示す。
臭素を添加していない実施例3の場合、金品位は80時間の浸出で36g/tまで低下した。一方、塩素イオンが存在する溶液に臭素イオンを添加した実施例5の場合には、80時間後に21g/tまで低下し、臭素イオン添加後だけでも60時間の間に45g/t分低下している。この比較を図2に示す。
これは金の浸出速度としては0.75g/t/hrとなり、臭素イオンがない場合の0.46g/t/hrに比較して1.6倍近い浸出速度となっている。さらに、残渣中の金品位は順次低下しており、臭素イオンが存在するほうが金錯体の安定度が高いと考えられる。
参考例4
硫化銅鉱を浸出し、金浸出に影響しない程度に銅品位を低下させた浸出残渣(Cu 12%, Fe 26%, S 31%, Au 50g/t)を使用し、塩化第二銅、食塩、臭化ナトリウムを溶解した液(Cu 28.8g/l、Cl 166g/l、Br 20.6g/l)を使用し、鉄濃度だけを変化させて鉄濃度の影響を検討した。鉄濃度の調整は、水酸化ナトリウム水溶液あるいは塩酸を添加してpHを変化させることで行った。浸出時は空気を吹込みながら、温度85℃に維持して15時間の撹拌を行った。その結果を表6に示す。
この結果から、浸出液中の鉄濃度を横軸にとり残渣中の金品位を縦軸としてプロットしたものが図3である。ただし、横軸は対数で表示してある。
この図からは、鉄濃度が0.01g/l以上であれば金は浸出でき、鉄濃度がある値になるまでは鉄濃度の上昇に従い同一時間での残渣中の金品位が低下する。このことは、鉄濃度の上昇に伴い浸出速度は増加するが、ある鉄濃度以上になると反応速度には影響しないことを示している。この鉄濃度は図中に記入した二本の直線の交点で表され、0.26g/lとなる。
したがって、この金浸出方法では鉄濃度は0.01g/l以上であれば浸出は行われ鉄濃度は高いほど浸出時間を短縮でき効果的であるが、0.26g/l以上になると効果は変わらない。ただし、鉄濃度が0.26g/l以上でも浸出を阻害するものではない。
反応中は空気を吹き込むことにより、溶液中の鉄は三価のイオンで存在しておりその溶解度はpHに依存する。参考例4の結果から鉄濃度に対するpHの影響をプロットしたものが図4である。この図から明らかなようにpHが高くなるにつれ鉄濃度は低下する。したがって、金浸出に必要な鉄濃度を確保するには表6の結果よりpHは1.9以下でなくてはならない。
実施例3(本発明実施例及び比較例)
塩化第二銅を銅濃度として25g/L、塩化第二鉄を鉄濃度として5g/L、塩素イオン濃度を塩化第二銅、塩化第二鉄の塩素イオンを含めた全塩素イオン濃度として180g/L、臭化ナトリウムを臭素イオン濃度として22g/Lの液を作成し、浸出液として使用した。原料は、硫化銅鉱の銅品位を前もって低下させた銅浸出残渣を使用した。銅浸出残渣は2種類用い、銅、鉄、硫黄品位はそれぞれ、Cu 0.1%,Fe 30%, S 32%とCu 0.6%,Fe 21%,S 46%であった。
この銅浸出残渣630gを前記浸出液2.5Lに添加した。
浸出液を85℃に昇温後、攪拌しながら原料の残渣630gをそれぞれ投入した後、空気を流量0.2L/minで吹込みながら浸出を実施した。
一つは、24時間後に濾過し残渣を回収し、残渣中の金品位を分析した。もう一つは、3時間毎に濾過し、残渣を回収し、その際、残渣サンプルを採取し、残渣中の金品位を分析した。3時間反応後に回収した残渣を新しい浸出液中に投入し、再度浸出させた。この方法で浸出を8回、繰返し実施した。
表7に試験結果を示す。
表7の例より、液交換をしない本発明比較例は金浸出率が低く、本発明により液交換をすると金浸出率が高くなり、金浸出時の液中の金濃度は、金浸出率に大きな影響を与えることがわかる。
このことから、金浸出では、液中の金濃度を低く維持することにより、金浸出率の向上が可能となる。
実施例4
塩化第二銅を銅濃度として25g/L、塩化第二鉄を鉄濃度として5g/L、塩素イオン濃度を塩化第二銅、塩化第二鉄の塩素イオンを含めた全塩素イオン濃度として180g/L、臭化ナトリウムを臭素イオン濃度として22g/Lの液を作成し、浸出液として使用した。原料は、硫化銅鉱の銅品位を前もって低下させた銅浸出残渣を使用した。銅浸出残渣は2種類用い、銅、鉄、硫黄品位はそれぞれ、Cu 0.6%,Fe 20%, S 46%とCu 0.5%,Fe 21%,S 45%であった。
この銅浸出残渣630gを前記浸出液2.5Lに添加した。
浸出液を60、85℃に昇温後、攪拌しながら原料の残渣630gをそれぞれ投入した後、空気を流量0.2L/minで吹込みながら浸出を実施した。3時間毎に濾過し、残渣を回収し、その際、残渣サンプルを採取し、残渣中の金品位を分析した。3時間反応後に回収した残渣を新しい浸出液中に投入し、再度浸出させた。この方法で浸出を15回、繰返し実施した。
表8に試験結果を示す。
表8より、85℃の浸出では、浸出時間45時間で金浸出率92.4%に達することがわかる。
また、60℃での浸出では、85℃浸出よりも浸出率、浸出速度は良くないものの浸出時間45時間で、金浸出率88.9%に達した。
このことにより、金浸出の際の温度は、金浸出率に大きな影響を与えることがわかる。
実施例5
塩化第二銅を銅濃度として25g/L、塩化第二鉄を鉄濃度として5g/L、塩素イオン濃度を塩化第二銅、塩化第二鉄の塩素イオンを含めた全塩素イオン濃度として180g/L、臭化ナトリウムを臭素イオン濃度として22g/Lの液を作成し、浸出液として使用した。原料は、硫化銅鉱の銅品位を前もって低下させた銅浸出残渣(Cu 1.3%,Fe 21%,S 45%)を使用した。この銅浸出残渣640gを前記浸出液2.5Lに添加した。
浸出液を85℃に昇温後、攪拌しながら原料の銅浸出残渣残渣およびヤシ殻活性炭を投入した後、空気を流量0.2L/minで吹込みながら浸出を実施した。所定時間毎にサンプルを採取し、残渣中の金品位を分析した。ヤシ殻活性炭は1mm以上のものを用い、サンプル採取時には活性炭と残渣を篩によって分けた後の残渣を分析した。また、ここで投入した活性炭は金吸着能力の限界以上に投入している。
表9に試験結果を示す。
表9より、活性炭を添加した本実施例の浸出率は浸出時間48時間で92.7%に達することがわかる。この結果は液を入れ替えた、実施例4の結果(85℃)とほぼ等しくなっている。
また、図5より液中の金を低く維持したまま、浸出を行うことで金浸出を促進できることがわかる。浸出試験で液を入れ替えずに浸出した場合、液中金濃度が高く、浸出割合が低い。液中金濃度を低く維持するように液を入替える、また活性炭を添加して液中金濃度を低く保つ方が、金浸出率が高くなることがわかる。また、浸出率が高くなることは浸出時間の短縮を可能にすることができ、結果として、金の浸出を効率よく行うことができる。
実施例6
塩化第二銅を銅濃度として25g/L、塩化第二鉄を鉄濃度として5g/L、塩素イオン濃度を塩化第二銅、塩化第二鉄の塩素イオンを含めた全塩素イオン濃度として180g/L、臭化ナトリウムを臭素イオン濃度として22g/Lの液を作成し、浸出液として使用した。原料は、硫化銅鉱の銅品位を前もって低下させた銅浸出残渣(Cu 0.4%,Fe 25%,S 37%)を使用した。この銅浸出残渣690gを前記浸出液2.5Lに投入した。
浸出液を85℃に昇温後、攪拌しながら原料の残渣およびヤシ殻活性炭、硝酸鉛を投入した後、空気を流量0.2L/minで吹込みながら浸出を実施した。
所定時間毎にサンプルを採取し、浸出残渣中の金品位を分析した。ヤシ殻活性炭は1mm以上のものを用い、サンプル採取時には活性炭と残渣を篩によって分けた後の残渣を分析した。ここで投入した活性炭は金吸着能力の限界以上に投入している。また、硝酸鉛は青化製錬法で金浸出を促進することが知られており、青化製錬法をもとに0.21gを添加した。
表10に実施例6の結果を、図6に硝酸鉛を添加した際の残渣中金品位の推移を示す。
表10より、浸出時間24時間で、金浸出率93.2%、48時間で95.1%に達することがわかる。
また、図6より、硝酸鉛を添加したほうが、残渣中金品位が急激に低くなっていることがわかる。このことにより、硝酸鉛の添加が金浸出の促進効果を有していること明らかである。
実施例7
塩化第二銅を銅濃度として25g/L、塩化第二鉄を鉄濃度として5g/L、塩素イオン濃度を塩化第二銅、塩化第二鉄の塩素イオンを含めた全塩素イオン濃度として180g/L、臭化ナトリウムを臭素イオン濃度として22g/Lの液を作成し、浸出液として使用した。原料は、硫化銅鉱の銅品位を前もって低下させた銅浸出残渣を使用した。また、金の浸出は上記浸出組成の液2.5L、パルプ濃度を200g/Lになるように原料を投入後、攪拌、空気0.2L/minを常時吹込み、金浸出を実施した。
銅浸出前にポットミルで摩鉱した原料(粒度:P80値40μm)と原料出侭(粒度P80値185μm)の原料を使用した。
浸出液を85℃に昇温後、攪拌しながら上記原料の残渣およびヤシ殻活性炭を投入した後、さらに攪拌しながらサンプルを採取し、浸出残渣中の金品位を分析した。ヤシ殻活性炭は1mm以上のものを用い、分析時には活性炭と残渣を篩によって分けた後の、残渣を分析した。
表11に結果を、図7に残渣中金品位の推移を示す。
表11より、原料粒度がP80値40μmの場合は、浸出時間45時間で金浸出率92.4%に達するが、原料粒度がP80値185μmの場合は、45時間で82.1%にしか達しない。
また、図7より、粗粒原料が金の浸出がある品位で停滞するのに対し、細粒原料の場合は、金の浸出がさらに進むことがわかる。このことから、原料粒度が金浸出率に大きな影響を与えることがわかる。
本発明による金の浸出法は、高価な薬剤や危険な薬剤を使用せず、又、ハレックスのような特殊な高電位化処理液も使用しない。本発明においては、金の浸出と同時併行して活性炭吸着などの方法により浸出液中の金濃度を低下し、進行中の金浸出反応に影響を与え、浸出時間を短縮することができるので、実操業に極めて適している。
金浸出に対する銅品位の影響を示すグラフである。 金浸出に対する臭素イオンの影響を示すグラフである。 金浸出に対する鉄濃度の影響を示すグラフである。 鉄濃度に対するpHの影響を示すグラフである。 金浸出での活性炭添加の影響を示すグラフである。 金浸出での硝酸鉛添加の影響を示すグラフである。 金浸出での原料粒度の影響を示すグラフである。

Claims (7)

  1. 金を含有する硫化銅鉱又は金を含むケイ酸鉱を含有する硫化銅鉱(以下「原料」という)に、銅品位が7.9%以下になるまで銅の浸出を施し、銅品位が7.9%以下に低下した原料を、シアン、チオ尿素及びチオ硫酸を錯化剤として使用することなく、錯化剤としての塩素イオンのみ、またはこれに臭素イオンを加え、これと、第二鉄イオンを溶解した金浸出溶液において鉄イオン濃度が0.01g/l以上、銅イオン濃度が5〜20g/l、塩素イオン濃度が118g/l〜186g/l、臭素イオン濃度が1 〜80g/l、塩素イオンと臭素イオンの濃度の合計が120g/L〜202g/Lである第1の溶液に混合するか、あるいは前記第1の溶液に空気を吹込み鉄イオンを酸化して三価にした第2の溶液と混合し、前記第1の溶液又は前記第2の溶液(以下「金浸出溶液」という)をpHを1.9以下に調整しながら攪拌し、硝酸、過酸化水素、塩素ガス、臭素ガス、ハレックスなどを酸化剤として使用することなく、金浸出溶液に含まれる第二鉄イオンの酸化力によって原料中の少なくとも金を該金浸出溶液中に溶解する金の浸出方法において、金の浸出中に、金浸出溶液の全てあるいは一部から金を選択的に除去することにより金濃度を低下することを特徴とする金の浸出方法。
  2. 塩素イオンと鉄イオンを含む浸出液により原料を浸出して得られた第3の溶液(前記金浸出溶液と併せて以下「金浸出溶液」と総称する)に空気を吹込み空気中の酸素で鉄イオンを酸化して三価にし、引き続いて、前記pH調整及び撹拌、並びに金の浸出を行うことを特徴とする請求項1記載の金の浸出方法。
  3. 金浸出溶液に臭素イオンを共存させることを特徴とする請求項1又は2記載の金の浸出方法。
  4. 攪拌中に金浸出溶液に空気を吹込み、二価の鉄イオンを三価に酸化することを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の金の浸出方法。
  5. 浸出温度が60℃から85℃である請求項1から4までの何れか1項に記載の金の浸出方法。
  6. 金浸出溶液に活性炭あるいは活性炭と硝酸鉛を投入することを特徴とする請求項1から5までの何れか1項に記載の金の浸出方法。
  7. 原料全体の80%以上が粒径40μm以下になるように原料を粉砕摩鉱することを特徴とする請求項1から6までの何れか1項に記載の金の浸出方法。
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