JP4897193B2 - 導電性含フッ素共重合体組成物からなる積層ホース - Google Patents

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本発明は、導電性、耐薬品性及び燃料バリア性に優れ、ポリアミド樹脂との接着性に優れる導電性含フッ素共重合体組成物と、ポリアミド樹脂からなる積層ホースに関する。
ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体等の含フッ素共重合体は、耐薬品性、耐熱性、耐候性、ガスバリア性等に優れた特性を有し、半導体産業や自動車産業等の種々の分野で使用されている。
例えば、タンク、ホース、チューブなどの部品、特に高温環境等の過酷な条件にさらされる自動車のエンジンルーム内で使用される燃料用ホースへの含フッ素系重合体の適用が検討されている。燃料用ホースとは、メタノールやエタノール等のアルコールや芳香族化合物を含むガソリン系燃料を移送するための配管用ホースである。
なかでも、含フッ素共重合体を含む多層積層ホース(以下単に「積層ホース」という。)からなる燃料用ホースが、種々の要求特性を満足するものとして検討されている。積層ホースの中で、燃料に直接接触する内層材料には、燃料を透過しにくい燃料バリア性、及び燃料に含有されるエタノールやメタノール等の浸食性液体に対する耐薬品性を有する樹脂の使用が必須である。この点、含フッ素共重合体は、耐薬品性、耐熱性、燃料バリア性に優れるので内層材料として適している。また、内層材料には、燃料が通過時に発生する静電気が蓄積しないように、耐電防止性も必要である。
一方、燃料用ホースの外層材料としては、機械特性や耐久性に優れるポリアミド6、ポリアミド11及びポリアミド12等のポリアミド樹脂が、優れた特性を有するので含フッ素共重合体と積層して積層ホースを形成するのに好ましい。
近年、自動車からの燃料排出による大気汚染防止のため、燃料ホースからのガソリン透過量を制限する厳しい法規が制定され、これに対応するため燃料ホースの構成材料の燃料バリア性をさらに向上させることが要請されている。燃料ホースの構成材料として、フッ素系重合体の中でも燃料バリア性及び機械特性に優れるエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が使用される。今後、法規制が一層厳しくなるに伴い、燃料バリア性をさらに向上させたフッ素系重合体の開発が強く、要請されている。
従来、含フッ素共重合からなる内層とポリアミド樹脂からなる外層との積層構造を含む積層ホースを製造しようとすると、次のような問題があった。すなわち、含フッ素共重合体は本来接着性に乏しく、当該含フッ素共重合体のホース等を直接外層のポリアミド樹脂からなる基材により被覆しても、充分な接着強度は得られない。接着力が不充分であると、使用中に層間が剥離し、ホースの閉塞や燃料透過量の増加等の大きな問題が発生する可能性がある。
そこで、積層ホースにおいて層間の接着性を向上する技術が検討されている。例えば、まず含フッ共重合体を押出し成形によりチューブとした後、薬液処理、コロナ放電処理、プラズマ放電処理等の方法により当該含フッ素共重合体チューブの外側表面を処理して、種々の接着性の官能基を当該表面に導入し、化学的に活性化する。ついで、必要に応じて接着剤を塗布した後、当該含フッ素共重合体のチューブの外側にポリアミド樹脂を押出し成形し積層するのである(例えば、特許文献1を参照。)。
このような方法によれば、層間の接着力に優れる燃料ホースが製造される。しかしながら、当該方法は、まず一旦含フッ素共重合体のホースを形成し、この表面を活性化処理し、さらにその外表面にポリアミドチューブを溶融押出成形するという、三段階の工程を実施しなければならず、工程が煩雑で積層ホースの生産性が低いという問題がある。
そこで、燃料透過性や耐クラック性に優れるとともに、含フッ素共重合体のコロナ放電処理等の表面処理を必要とせず、かつ、当該含フッ素重合体と、ポリアミド樹脂との積層ホースを共押出し成形して得る等の簡便な方法で一段で成形できる方法、特に、かかる特性を備えた含フッ素共重合体の創出が望まれている。
米国特許第5,554,425号(クレーム1〜9)
本発明は、上記のような背景のもとに、強く実現が要請されている、燃料バリア性、耐薬品性に優れ、導電性に優れるとともに、さらに、ポリアミド樹脂との接着性に優れ、ポリアミド樹脂との共押出性に優れた含フッ素共重合体の提供を基本的な課題とする。
本発明者ら、かかる観点から鋭意検討した結果、無水イタコン酸等の重合性不飽和結合を有するポリカルボン酸無水物に基づく重合単位を含む特定組成の含フッ素共重合体と導電性フィラーからなる組成物によれば、かかる課題を達成することができ、かくして当該含フッ素共重合体組成物とポリアミド樹脂との積層ホースを創出しうることをみいだし、本発明を完成した。
本発明に従えば、以下の積層ホースが提供される。
〔1〕
導電性含フッ素共重合体組成物(AB)の層と、ポリアミド樹脂(PA)の層とが直接積層された積層体を含む積層ホースにおいて、前記導電性含フッ素共重合体組成物(AB)が、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位(a)、エチレンに基づく重合単位(b)及び重合性不飽和結合を有するポリカルボン酸無水物に基づく重合単位(c)を含有し、(a)/(b)のモル比が20/80〜80/20であり、(c)/((a)+(b))のモル比が1/1000〜5/100である含フッ素共重合体(A)及び導電性フィラー(B)を含有し、(A)/(B)が質量比で70/30〜99/1である導電性含フッ素共重合体組成物(AB)であることを特徴とする積層ホース。
〔2〕
前記導電性フィラー(B)は、BET比表面積が50〜1000m2/gであり、かつDBP吸油量が100ml/100g〜1000ml/100gである炭素系導電性フィラーである〔1〕項に記載の積層ホース。
〔3〕
前記含フッ素共重合体(A)が、重合単位(a)、重合単位(b)及び重合単位(c)に加えて、さらに、CH2=CX(CF2nY(ここで、X、Yはそれぞれ独立に水素原子又はフッ素原子であり、nは2〜5の整数である。)で表されるモノマーに基づく重合単位(d)を含有し、(d)/((a)+(b))がモル比で1/1000〜15/100である〔1〕項又は〔2〕項に記載の積層ホース。
〔4〕
前記導電性含フッ素共重合体組成物(AB)がポリフェニレンスルフィド樹脂(C)又はポリブチレン芳香族ポリエステル(D)をさらに含有する〔1〕項〜〔3〕項のいずれかに記載の積層ホース。
〔5〕
〔1〕項〜〔4〕項のいずれかに記載の導電性含フッ素共重合体組成物(AB)の層を最内層に有する積層ホース。
〔6〕
前記積層体が共押出し成形で得られたものである〔1〕項〜〔5〕項のいずれかに記載の積層ホース。
以下、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明する。
(含フッ素共重合体)
本発明の積層ホース(本発明において、ホース、チューブ及びパイプは基本的に同じ意義を有する用語として使用する。)は、導電性含フッ素共重合体組成物(AB)の層と、ポリアミド樹脂(PA)の層とが直接積層された積層体を含む積層ホースであって、
前記導電性含フッ素共重合体組成物(AB)が、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位(a)、エチレンに基づく重合単位(b)及び重合性不飽和結合を有するポリカルボン酸無水物に基づく重合単位(c)を含有する含フッ素共重合体(A)及び導電性フィラー(B)を含有する導電性含フッ素共重合体組成物(AB)であることを特徴とする。
ここで、本発明における含フッ素共重合体(A)は、テトラフルオロエチレン(以下「TFE」という。)に基づく重合単位(a)、エチレン(以下「E」という。)に基づく重合単位(b)及び重合性不飽和結合を有するポリカルボン酸無水物(以下「CM」という。)に基づく重合単位(c)を含有する。
TFEに基づく重合単位(a)とEに基づく重合単位(b)のモル比は、20/80〜80/20であり、好ましくは50/50〜70/30である。(a)/(b)がこれよりあまり小さすぎると、含フッ素共重合体(A)の耐薬品性、耐熱性、耐候性、燃料バリア性、ガスバリア性等が低下し、一方これよりあまり大きすぎると、機械的強度、溶融成形性等が低下する。すなわち、当該モル比が、上記規定の範囲にあると、含フッ素共重合体(A)は、耐薬品性、耐熱性、耐候性、燃料バリア性、ガスバリア性、機械的強度、溶融成形性等に著しく優れるものとなる。
また、ポリカルボン酸無水物CMに基づく重合単位(c)の含有量は、(c)/((a)+(b))のモル比が1/1000〜5/100であり、好ましくは3/1000〜3/100である。(c)/((a)+(b))がこれよりあまり小さすぎると、含フッ素共重合体(A)はポリアミド樹脂との接着性が低くなり、またこれより大きすぎると、燃料バリア性が低下する。したがって、当該モル比が、この範囲にあると含フッ素共重合体(A)は接着性及び燃料バリア性に優れたものとなる。
このCMとしては、重合性不飽和結合を有するポリカルボン酸無水物、すなわち、多官能性カルボン酸の無水物であれば特に限定されない。
CMの具体例としては、無水マレイン酸(以下「MAn」という。)、無水イタコン酸(以下「IAH」という。)、無水シトラコン酸(以下「CAH」という。)、ブテニル無水コハク酸等が挙げられるが、なかでも、MAn、IAH及びCAHからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、より好ましくはIAH又はCAHである。
なお、上記ポリカルボン酸無水物は、それぞれ単独で使用してもよいし、混合物として使用してもよい。上記モル比は、混合物として使用する場合は、これらの合計量を表すものとする。
上記において、ポリカルボン酸無水物は、その一部が重合前に加水分解されていてもよい。例えば、IAHは、IAHの一部が加水分解した、IAHとイタコン酸の混合物であってもよいし、また、CAHは、CAHの一部が加水分解した、CAHとシトラコン酸の混合物であってもよい。さらにまた、含フッ素共重合体(A)中のCMに基づく重合単位の一部が重合後に加水分解されていてもよい。これら重合前又は重合後の加水分解により生じた重合単位は、本発明において重合単位(c)の一部とみなす。例えば、重合単位(c)の量は、CMに基づく重合単位とCMの一部が加水分解された重合性不飽和結合を有するポリカルボン酸に基づく重合単位の合計量を表す。
含フッ素共重合体(A)において、全重合単位に対する((a)+(b)+(c))は、65モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、75モル%以上が最も好ましい。なお、((a)+(b)+(c))は、重合単位(a)と重合単位(b)と重合単位(c)との合計を表す。
本発明における含フッ素共重合体(A)は、上記(a)、(b)及び(c)に加えて、さらにCH2=CX(CF2nY(ここで、X、Yはそれぞれ独立に水素原子又はフッ素原子であり、nは2〜5の整数である。)で表されるモノマー(以下「FAE」という。)に基づく重合単位(d)を含有することも好ましい。
モノマーFAEに基づく重合単位(d)の含有量については、(d)/((a)+(b))がモル比で1/1000〜15/100、より好ましくは1/200〜7/100であり、最も好ましくは1/100〜5/100である。当該モル比がこの範囲にあると、含フッ素共重合体(A)は、強度、燃料バリア性、及び耐クラック性に優れ、ストレス下でもクラックが発生しにくい。
モノマーFAEとしては、例えば、CH2=CH(CF22F、CH2=CH(CF23F、CH2=CH(CF24F、CH2=CH(CF25F、CH2=CF(CF22F、CH2=CF(CF23F、CH2=CF(CF24F、CH2=CF(CF25F、CH2=CF(CF22H、CH2=CF(CF23H、CH2=CF(CF24H、CH2=CF(CF25H、CH2=CH(CF22H、CH2=CH(CF24H等が挙げられる。
モノマーFAEとして、より好ましくは、上記式で、nが2〜4で、Xが水素原子で、Yがフッ素原子のものであり、例えば、CH2=CH(CF22F、CH2=CH(CF23F又はCH2=CH(CF24Fが挙げられ、最も好ましくは、上記式でnが2で、Xが水素原子で、Yがフッ素原子のもので、CH2=CH(CF22Fが例示される。
本発明における含フッ素共重合体(A)は、上記重合単位(a)、重合単位(b)、重合単位(c)及び重合単位(d)に加えて、それら以外のその他のモノマーに基づく重合単位(e)を含んでもよい。
このようなその他のモノマーとしては、プロピレン、ブテン等の炭化水素系オレフィン;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等の不飽和結合に水素原子を有するフルオロオレフィン(ただし、FAEを除く。);ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)等の不飽和結合に水素原子を有しないフルオロオレフィン(ただし、TFEを除く。);アルキルビニルエーテル、(フルオロアルキル)ビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、メチルビニロキシブチルカーボネート等のビニルエーテル;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル;(ポリフルオロアルキル)アクリレート、(ポリフルオロアルキル)メタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;ウンデシレン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸等が挙げられる。これらその他のモノマーは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
その他のモノマーに基づく重合単位(e)を含有する場合は、その含有量は、(e)/((a)+(b))がモル比で1/10000〜15/100であることが好ましく、1/1000〜10/100であることがより好ましい。
本発明において使用される導電性含フッ素共重合体組成物(AB)は、これを内層とし、外層を形成すべきポリアミド樹脂と共押出しして積層体を成形できるように、当該ポリアミド樹脂の成形温度に近い成形温度を有することが好ましい。そのため、重合単位(a)、重合単位(b)、重合単位(c)、必要に応じて含有される重合単位(d)及び重合単位(e)の含有割合を上記の範囲内で適宜調節し、当該含フッ素共重合体の融点を、当該ポリアミド樹脂の成形温度との関係で最適化することが好ましい。
また、含フッ素共重合体(A)が重合単位(e)を含有すると、当該ポリアミド樹脂との共押出し成形性及び積層体中の他の層との接着性を向上できるので好ましい。なお、接着性の向上のためには、重合単位(e)が、エステル基、カーボネート基、水酸基、エポキシ基等官能基を有することが好ましい。
また、本発明において、含フッ素共重合体の末端基として、エステル基、カーボネート基、水酸基、カルボキシル基、カルボニルフルオリド基、酸無水物等の、ポリアミド樹脂と反応性を有する官能基を有することも、当該ポリアミド層との接着性が向上するので好ましい。当該末端基は、含フッ素共重合体の製造時に使用される、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤等を適宜選定することにより導入することが望ましい。
本発明において使用される含フッ素共重合体の製造方法については特に制限はなく、一般に用いられているラジカル重合開始剤を用いる重合方法が採用される。重合方法の例としては、それ自身公知の、塊状重合;フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等の有機溶媒を使用する溶液重合;水性媒体及び必要に応じて適当な有機溶剤を使用する懸濁重合;水性媒体及び乳化剤を使用する乳化重合が挙げられるが、溶液重合が最も好ましい。重合は、一槽ないし多槽式の撹拌型重合装置、管型重合装置等を使用し、回分式又は連続式操作として実施することができる。
ここでラジカル重合開始剤としては、半減期10時間を得るための分解温度が0℃〜100℃であるものが好ましく、20〜90℃であるものがより好ましい。
好ましいラジカル重合開始剤の具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;イソブチリルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の非フッ素系ジアシルペルオキシド;ジイソプロピルペルオキシジカ−ボネート等のペルオキシジカーボネート;tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、tert−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル;
式(1)で表される化合物等の含フッ素ジアシルペルオキシド;
(Z(CF2pCOO)2 (1)
(ここで、Zは水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、pは1〜10の整数である。)
過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物等が挙げられる。
本発明において、ラジカル重合開始剤の使用量としては、仕込んだモノマーの100質量部に対して0.001〜10質量部が好ましく、0.01〜1質量部がより好ましい。
本発明においては、含フッ素共重合体(A)の分子量を制御するため、連鎖移動剤を使用することが好ましい。連鎖移動剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール;1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(旭硝子社製、商品名、以下「AK225cb」と称することがある。)、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボンが挙げられる。
なお、この場合、エステル基、カーボネート基、水酸基、カルボキシル基、カルボニルフルオリド基等の官能基を有する連鎖移動剤を用いると、すでに述べたように、ポリアミド樹脂との反応性を有する末端基が導入されるので好ましい。このような連鎖移動剤としては、例えば酢酸、無水酢酸、酢酸メチル、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
本発明において使用される含フッ素共重合体の重合条件は特に限定されず、重合温度は0〜100℃が好ましく、20〜90℃がより好ましい。また、重合圧力は0.1〜10MPaが好ましく、0.5〜3MPaがより好ましい。さらに重合時間は1〜30時間が好ましい。
重合中の反応系におけるIAHやCAH等のポリカルボン酸無水物CMの濃度があまり高すぎると、重合速度が低下する傾向となる。したがって、CMの濃度(混合使用する場合はこれらの合計濃度。)は、TFEとEの合計のモル比の0.001〜5%が好ましく、0.01〜3%がより好ましく、0.01〜1%が最も好ましい。CMの濃度がこの範囲にあると、製造時の重合速度が実質的に低下せず、かつ、含フッ素共重合体の接着性が良好となる。なお、重合中、濃度をこの範囲に維持するために、CMが重合で消費されるに従って、消費された量を、連続的又は断続的に重合槽内に供給することが望ましい。
本発明における含フッ素共重合体(A)は、燃料バリア性に優れるという特徴を有する。燃料バリア性の評価の尺度として、後記実施例に示されているように、JIS Z0208に規定されているカップ法に準拠し測定される燃料透過係数を使用することが望ましい。燃料透過係数が低いほど、燃料バリア性に優れることを示す。
本発明における含フッ素共重合体(A)はこの燃料透過係数が低いことが特徴であり、その数値としては、3.5gmm/m2/24h以下が好ましく、3.0gmm/m2/24h以下がより好ましく、2.7gmm/m2/24h以下が最も好ましい。
本発明の導電性含フッ素共重合体組成物(AB)は、上記含フッ素共重合体(A)及び導電性フィラー(B)を含有してなるもので、(A)/(B)が質量比で70/30〜99/1であり、さらに好ましくは85/15〜99/1のものである。当該共重合体組成物の質量比がこの範囲にあると、当該組成物の導電性が充分で、かつ、当該組成物からのホース等の成型品は、引張り伸度や耐衝撃性にも優れるため好ましい。
(導電性フィラー)
本発明における導電性フィラー(B)としては、炭素系導電性フィラーが好ましい。
当該導電性フィラー(B)としては、基本的には通常用いられているものが使用可能であるが、特に好ましくは、BET比表面積が50〜1000m2/gであり、かつDBP吸油量が100ml/100g〜1000ml/100gである炭素系導電性フィラーである。より好ましくは、BET比表面積が60〜600m2/gであり、かつDBP吸油量が150〜1000ml/100gである炭素系導電性フィラーである。
BET比表面積が50m2/g未満であると、当該組成物の導電性が低く、一方、1000m2/gより大きいと、導電性フィラーが凝集し組成物から形成されるホース等の成形品の表面平滑性が失われる傾向となり好ましくない。
また、DBP吸油量が100ml/100g未満であると、導電性が低く、1000ml/100gより大きいと、ホース等成形品の表面平滑性が失われる。したがって、BET比表面積とDBP吸油量の値をこの範囲のものとすることにより、当該組成物の導電性が高く、そのホース等の成形品は表面平滑性に優れるので好ましい。
炭素系導電性フィラーとして、具体的に使用可能なものとしては、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、アセチレンブラックやケッチェンブラック等のカーボンブラック等が挙げられる。なお、カーボンナノチューブは、中空炭素マイクロファイバーとも称されるものである。
カーボンナノチューブ及びカーボンナノホーンとしては、その直径が3.5〜70nmであり、かつ、アスペクト比が5〜200であることが好ましく、直径が5〜60nmであり、かつアスペクト比が5〜200であることがより好ましく、直径が10〜55nmであり、かつアスペクト比が10〜100であることが最も好ましい。当該数値がこの範囲にあると、これを配合した組成物からのホース等の成形品が表面平滑性に優れるので好ましい。
また、カーボンブラックとしては、平均粒子径3.5〜70nmのものが好ましく、5〜50nmのものがより好ましく、10〜40nmのものが最も好ましい。平均粒子径がこの範囲にあると、その成形品が表面平滑性に優れるため好ましい。
これら炭素系導電性フィラーの体積固有抵抗は、1×10-4〜1×102Ω/cmが好ましく、1×10-4〜10Ω/cmがより好ましく、1×10-4〜1Ω/cmが最も好ましい。
(ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリブチレン芳香族ポリエステル)
炭素系導電性フィラー等の導電性フィラー(B)は、単体として含フッ素共重合体(A)に直接配合混合してもよいが、あらかじめ少量の含フッ素共重合体(A)や、さらに必要に応じて配合する、以下に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂(C)やポリブチレン芳香族ポリエステル(D)等に分散させたマスターバッチとして配合してもよい。
本発明の導電性含フッ素共重合体組成物(AB)は、基本的には、上記した含フッ素共重合体(A)と、導電性フィラー(B)からなるものであるが、さらに必要に応じ、ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下「PPS」という。)(C)及び/又はポリブチレン芳香族ポリエステル(以下「PBPE」という。)(D)を含有することも好ましい。これらPPS(C)及び/又はPBPE(D)成分を含有させることにより、より燃料バリア性を向上させることができる。
PPS(C)としては、後述の方法で測定されるPPS(C)の溶融粘度が、100〜5000Pa・sであるものが好ましく、200〜3000Pa・sのものがより好ましく、300〜2000Pa・sのものが最も好ましい。溶融粘度がこの範囲内にあると、これを配合した組成物のホース等の成形品が表面平滑性及び燃料バリア性に優れるものとなり好ましい。なお、PPSとしては、脱イオン処理されたPPSが好ましく、また、加熱等により架橋や高分子量化したPPSも好ましい。
一方、PBPE(D)としては、ポリブチレンナフタレート(以下「PBN」という。)やポリブチレンテレフタレート等のブチレン鎖を有する芳香族ポリエステルが挙げられるが、特に、柔軟性と燃料バリア性とに優れるPBNが好ましい。
PBNは、分子中にエーテル系セグメント又はエステル系セグメントを含有してもよく、可塑剤等の添加剤を含有してもよい。可塑剤を含有すると、融点が低下するので好ましい。添加する可塑剤としては、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル;トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル;トルエンスルホンアミド等のスルホンアミド等が挙げられる。
PBPE(D)の溶融粘度としては、100〜5000Pa・sが好ましく、200〜3000Pa・sがより好ましく、300〜2000Pa・sが最も好ましい。溶融粘度がこの範囲内にあると、これを配合した組成物のホース等の成形品が表面平滑性及び燃料バリア性にも優れるものとなり好ましい。
導電性含フッ素共重合組成物(AB)に配合する場合の、PPS(C)及び/又はPBPE(D)の含有量は、(A)/(C)及び/又は(D)が、質量比で50/50〜99/1であることが好ましく、70/30〜99/1であることがより好ましく、80/20〜99/1であることが最も好ましい。PPS(C)及び/又はPBPE(D)の比がこの範囲にあると、組成物からの成形品は柔軟性及び燃料バリア性に優れるため好ましい。
(導電性含フッ素共重合体組成物の調製)
本発明において、含フッ素共重合体(A)と導電性フィラー(B)とを混合し導電性含フッ素共重合組成物を調整する方法、及び必要に応じて、さらにPPS(C)及び/又はPBPE(D)をさらに混合した組成物とする方法としては、溶融混錬が好ましい。
溶融混錬を行う装置としては、二軸押出し機、単軸押出し機、加圧ニーダー、コニーダー、ブラベンダー等が挙げられ、特に限定するものではないが、なかでも、二軸押出し機は、剪断速度、滞留時間及び温度の制御が容易であるので好ましい。
溶融混錬の条件としては、剪断速度が100〜1500sec-1、滞留時間が30秒〜10分、温度が200〜350℃が好ましく、より好ましくは、剪断速度が300〜1000sec-1、滞留時間が1分〜5分、温度が220〜310℃である。
剪断速度が100sec-1未満であると、得られるホース等の成形品の表面平滑性が充分でなく、1500sec-1より大きいと、導電性含フッ素共重合体組成物の溶融粘度が大きくなりすぎ、成形品の引張り伸度や耐ストレスクラック性が充分でない。
また滞留時間が30秒未満であると、ホース等の成形品の表面平滑性が充分でなく、10分より長いと、当該成形品の引張り伸度、耐ストレスクラック性が充分でなくなる。
さらに温度が200℃未満であると、成形品の表面平滑性が充分でなく、350℃より高いと、この成形品の引張り伸度、耐ストレスクラック性が充分でない。
以上のごとく、剪断速度、滞留時間、温度等の混錬条件がこの範囲にあると、得られるホース等の成形品が表面平滑性、引張り伸度及び耐ストレスクラック性に優れたものとなるので、望ましい。
以上のごとくして調製される本発明における導電性含フッ素共重合体組成物(AB)の表面抵抗値は、1×100〜1×109Ω/□が好ましく、1×100〜1×107Ω/□がより好ましく、1×100〜1×106Ω/□が最も好ましい。
(ポリアミド樹脂)
本発明において、導電性含フッ素共重合体組成物(AB)と積層して積層ホースを形成するために用いられるポリアミド樹脂(PA)は、それ自身公知のものが、好適に使用可能である。すなわち、本発明における導電性含フッ素共重合体組成物は、それ自身がポリアミド樹脂に対する接着性が高いものであるため、ポリアミド樹脂としては、特に限定するものではないのである。例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミドMXD6(半芳香族系ポリアミド)等のポリアミド類等が挙げられる。
使用可能な他の公知のポリアミド樹脂としては、ポリアミド26、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド611、ポリアミド612、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド912、ポリアミド1012、ポリアミド1212、ポリアミドPACM12等が挙げられる。上記ポリアミド樹脂は、単独で使用してもよいし、ブレンドして使用してもよい。また、これらを形成する原料モノマーを用いた共重合ポリアミド樹脂とすることもできる。
(積層ホースの層構成)
本発明の積層ホースは、本発明における導電性含フッ素共重合組成物(AB)からなる内層(I)とポリアミド樹脂からなる外層(II)を積層した積層構造、すなわち、〔(II)/(I)〕なる基本積層構成を含む積層体である。そして、本発明の積層ホースは、燃料に接触する内層(通常最内層)を導電性含フッ素共重合体組成物(AB)により構成しているので、液体燃料の輸送に用いられる場合に、当該燃料輸送時に発生する静電気の除去を可能とする。
本発明の積層ホースは、上記基本積層構成を含む限り、すなわち、導電性含フッ素共重合体組成物からなる内層(I)とポリアミド樹脂からなる外層(II)が直接接触して積層している構成を含む限り、それに他のフッ素系樹脂やポリアミド樹脂を含んで多層ホースとしてもよい。多層ホースとした場合の全体の層数は、特に制限されず、少なくとも2層以上であることができるが、通常は2層〜6層、より好ましくは2層〜5層である。
本発明の積層ホースにおいて、導電性含フッ素共重合体組成物からなる層(I)とポリアミド樹脂の層(II)の接着力は、両層間の剥離強度として、30N/cm以上が好ましく、40N/cm以上がより好ましい。
本発明の積層ホースの外径は、扱う燃料の流量を考慮して適宜設計され、またその肉厚は、当該燃料の透過性が十分に小さく、また、通常のホースの破壊圧力を維持できる厚さであり、かつ、ホースの組み付け作業の容易性及び使用時の耐振動性が良好な程度の柔軟性を維持できる厚さに設計される。これらは、特に限定されるものではないが、通常、外径は4〜30mm、内径は3〜25mm、肉厚は0.05〜5mm程度であることが好ましい。
また、本発明の積層ホースにおいては、各層のそれぞれの厚さは、特に限定されるものではなく、樹脂の物性、全体の層数、用途などに応じて随時変更しうるものであり、それぞれの層の厚みは、積層ホースの燃料バリア性、低温耐衝撃性、柔軟性等の特性を考慮して決定される。
具体的には、内層(I)と外層(II)の厚さは、積層ホース全体の厚みに対して、それぞれ、3〜90%であることが好ましく、また、内層(I)の厚みは、燃料バリア性を考慮して、積層ホース全体の厚みに対し、5〜80%であることがより好ましく、10〜50%であることがさらに好ましい。
一例として、外径8mm、内径6mm、厚み1mm(内層0.25mm、外層0.75mm)の積層ホースが挙げられる。
(共押出し成形)
本発明の積層ホースの成形方法としては、外層をなすポリアミド樹脂と内層の導電性含フッ素共重合体組成物とを溶融状態で共押出し成形し、両者を熱融着(溶融接着)して一段で2層構造のホースを形成する共押出し成形によることが最も好ましい。また、3層以上の積層構造を含む場合も、これに準じて共押出し成形することができる。
通常、共押出し成形法は、フィルム、チューブ等の形状の2層以上の積層体を得る方法である。すなわち、スクリューを備えた2機以上の押出機内で混練・溶融され吐出口から出てくる各層を形成すべき樹脂の溶融物は、溶融状態で接触しつつ押出機の先端に設置されたダイを通って、押出され、積層体に成形される。
当該押出温度については、スクリュー温度は100〜350℃が好ましく、ダイ温度は200〜350℃が好ましい。また、スクリュー回転数は、特に限定されるものではないが、10〜200rpmが好ましく、溶融物の押出機内の滞留時間は1〜20分が好ましい。
また、一般的には、外層、内層のそれぞれの樹脂を、後記実施例に示すように、予めペレット化しておくことが好ましい。すなわち、導電性含フッ素共重合体組成物やポリアミド樹脂に、混合する樹脂、及び可塑剤等各種添加剤の所定量を、V型ブレンダー、タンブラー等の低速回転混合機やヘンシェルミキサー等の高速回転混合機を用いて混合した後、一軸押出機、二軸押出機、二軸混練機等で溶融混練し、ペレット化する。なお可塑剤等の常温で液体のものは、溶融混練機のシリンダーの途中から注入して、溶融混練することもできる。
ペレット化は、すべての樹脂成分が溶融する温度において機械的に混練し、ペレット化することが好ましい。特に均一混合するためには、同方向二軸押出機を用いることが好ましい。
また、共押出し成形を行う際に、各層の組成を形成する全構成要素をそれぞれ押出機のホッパーに供給して押出機の中で各層のコンパウンディングを行い、引続き共押出し成形を行うことにより、コンパウンディングと共押出し成形をほぼ同時に行うことも可能である。
(実施例)
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれに限定されるものではない。
なお、導電性、燃料透過係数、IAH又はCAHの含有量、溶融粘度及び層間剥離強度は、下記の方法によって測定した。
〔導電性〕
SAE J2260の導電性試験に準じて多層ホースの内面の導電性を測定した。温度25℃、湿度50%の室内にてホース両端に銅ピンを挿入し、抵抗計にて抵抗値を測定後、以下の計算式によって表面抵抗値を求め、導電性の尺度とした。この表面抵抗値が低いほど、当該多層ホースは導電性に優れることを示す。
表面抵抗値=Rπd/(L−2a)
(式中、Rは抵抗値、dはホース内径、Lはホース長さ、aは銅ピン挿入深さを表す。)
〔燃料透過係数〕
JIS Z0208に規定されているカップ法に準拠して導電性含フッ素共重合体組成物(AB)の燃料透過係数を測定した。すなわち、燃料(E10)(イソオクタン/トルエン/エタノール=50/50/10体積比)の9.5〜10gを透過面積28.26cm2のカップに入れ、プレス形成で得た厚さ100μmの含フッ素共重合体組成物(AB)のフィルムでカップ上部を覆い、60℃の恒温槽中に10日間保存した後の質量減少量を測定し、燃料透過係数を算出した。当該含フッ素共重合体組成物のフィルムは、その燃料透過係数が低いほど、燃料バリア性に優れることを示す。
〔IAH又はCAHの含有量〕
含フッ素共重合体(A)をプレス成形して200μmのフィルムを得た。赤外吸収スペクトルにおいて、含フッ素共重合体(A)中のIAH又はCAHに基づく重合単位におけるC=O伸縮振動の吸収ピークはいずれも1870cm-1に現れる。その吸収ピークの吸光度を測定し、M=aLの関係式を用いてIAH又はCAHに基づく重合単位の含有量M(モル%)を決定した。ここで、Lは1870cm-1における吸光度で、aは係数である。aとしては、IAHをモデル化合物として決定したa=0.87を用いた。
〔溶融粘度〕
東洋精機社製キャピラリーレオメーター(バレル内径9.55mmφ、オリフィス孔径1.00mmφ、オリフィス長10.00mm)を用い、310±1℃に加熱したバレル中に含フッ素共重合体試料35gを投入し5分間保持した後、剪断速度608sec-1の溶融粘度を測定した。
〔層間剥離強度〕
積層ホースを20cm長に切断し、それをさらに縦に切断したものを試験片とする。外層と内層を端から1cm強制的に剥離し、使用機器としてテンシロン万能試験機を用いて、外層と内層をはさみ、50mm/minの引っ張り速度で、180°接着試験を行った。S−Sカーブの極大点から最高強度を読み取り、層間剥離強度(N/cm)とした。
〔合成例1〕
(含フッ素共重合体の調製)
(1)内容積が94リットルの撹拌機付き重合槽を脱気し、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの67.2kg、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(旭硝子社製、AK225c)の4.5kg、IAHの33.3g、CH2=CH(CF24Fの527.3g、を仕込み、TFEの9.4kg、Eの0.6kgを圧入した。
(2)重合槽内を66℃に昇温し、重合開始剤としてtert−ブチルペルオキシピバレートの1%AK225cb溶液の433mLを仕込み、重合を開始させた。重合中圧力が一定になるようにTFE/Eの51/49モル比のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEとEの合計モル数に対して0.3モル%に相当する量のIAHを連続的に仕込んだ。重合開始5.5時間後、モノマー混合ガスの8.0kgを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。
(3)得られたスラリ状の含フッ素共重合体1を、水の75kgを仕込んだ200Lの造粒槽に投入し、次いで撹拌しながら105℃まで昇温し溶媒を留出除去しながら造粒した。得られた造粒物を150℃で5時間乾燥することにより、8.3kgの含フッ素共重合体1の造粒物1が得られた。
(4)溶融NMR分析、フッ素含有量分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、含フッ素共重合体1の組成は、TFEに基づく重合単位/Eに基づく重合単位/IAHに基づく重合単位/CH2=CH(CF24Fに基づく重合単位のモル比で57.98/38.65/0.17/3.19であった。融点は221℃、溶融粘度は638Pa・sであった。
(2層積層ホースの調製)
造粒物1と、直径10nm、DBP吸油量450ml/100g、BET比表面積250m2/gのカーボンナノチューブ(以下、CNTという。)とを質量比で95/5の割合で混合し、同方向回転型二軸押出機を用いて、剪断速度500sec-1、混練部のシリンダー温度300℃、滞留時間5分で溶融混練し、押し出して、導電性含フッ素共重合体組成物1のペレット1を作成した。当該導電性含フッ素共重合体組成物1の燃料透過係数は3.1gmm/m2/24hであった。
2層共押出チューブ成形機を用い、外層を形成するシリンダにポリアミド12(宇部興産社製、3030JLX2)を供給し、また、内層を形成するシリンダに導電性含フッ素共重合体組成物のペレット1を供給し、それぞれシリンダの輸送ゾーンに移送させた。ポリアミド12及び導電性含フッ素共重合体組成物1の輸送ゾーンにおける加熱温度をそれぞれ240℃及び260℃とした。多層押出しダイの温度を260℃として2層多層押出しをおこない、2層積層ホースを得た。
積層ホースの外径は8mm、内径は6mm、厚さは1mmであり、ポリアミド12の外層及び導電性含フッ素共重合体組成物1の内層の厚みはそれぞれ0.85mm、0.15mmであった。
得られたホースの表面抵抗値は4×105Ω/□であった。またこの積層ホースの剥離強度の測定を試みたが、ポリアミド12の外層と導電性含フッ素共重合体組成物1の内層は強固に接着しており剥離できず、さらに剥離しようとしたところ、内層が破断した。
〔合成例2〕
(含フッ素共重合体の調製)
合成例1の重合槽を脱気し、重合前に1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの79.9kg、AK225cbの11.2kg、CH2=CH(CF24Fに換えてCH2=CHCF2CF3の562g、IAHに換えてCAHの97.0gを仕込む以外は、合成例1と同様にして、含フッ素共重合体2の造粒物2の8.2kgを得た。重合時間は7.4時間であった。
溶融NMR分析、フッ素含有量分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、当該含フッ素共重合体2の組成は、TFEに基づく重合単位/Eに基づく重合単位/CAHに基づく重合単位/CH2=CHCF2CF3に基づく重合単位のモル比で57.91/38.61/0.29/3.19であった。融点は230℃、溶融粘度は590Pa・sであった。
(2層積層ホースの調製)
造粒物2を用いて実施例1と同様にして導電性含フッ素共重合体組成物2のペレット2を得た。導電性含フッ素共重合体組成物2の燃料透過係数は3.2gmm/m2/24hであった。
ペレット1に代えてペレット2を用いる以外は、実施例1と同様にして2層積層ホースを得た。当該積層ホースの外径は8mm、内径は6mm、厚さは1mmであり、ポリアミド12の外層及び導電性含フッ素共重合体組成物2の内層はそれぞれ0.85mm、0.15mmであった。
積層ホースの表面抵抗値は4×106Ω/□であった。また、この積層ホースの剥離強度の測定を試みたが、ポリアミド12の外層と導電性含フッ素共重合体組成物2の内層は強固に接着しており剥離できず、さらに剥離しようとしたところ、内層が破断した。
(2層積層ホースの調製)
実施例1の含フッ素共重合体1の造粒物1と、CNT及びPPS(大日本インキ社製、LC−6、溶融粘度400Pa・s)とを質量比で90/5/5で混合し、同方向回転型二軸押出機を用いて、300℃、滞留時間5分で溶融混練し、押し出して、導電性含フッ素共重合体組成物3のペレット3を作成した。この導電性含フッ素共重合体組成物3の燃料透過係数は2.6gmm/m2/24hであった。
外層を形成するシリンダに実施例1のポリアミド12を供給し、内層を形成するシリンダにペレット3を供給し、それぞれシリンダの輸送ゾーンに移送させた。ポリアミド12及びペレット3の輸送ゾーンにおける加熱温度をそれぞれ240℃及び300℃とした。共ダイの温度を260℃として2層多層押出しをおこない、2層積層ホースを得た。
積層ホースの外径は8mm、内径は6mm、厚さは1mmであり、ポリアミド12の外層及び導電性含フッ素共重合体組成物3の内層はそれぞれ0.85mm、0.15mmであった。
積層ホースの表面抵抗値は1×106Ω/□であった。剥離強度の測定を試みたが、ポリアミド12の外層と導電性含フッ素共重合体組成物3の内層は強固に接着し剥離できず、さらに剥離しようとしたところ、内層が破断した。
(2層積層ホースの調製)
実施例1の含フッ素共重合体1の造粒物1と、CNTとPBN(ポリプラスチックス社製ジュラネックス500FP)とを質量比で90/5/5で混合し、同方向回転型二軸押出機を用いて、剪断速度500sec-1、混練部のシリンダー温度300℃、滞留時間5分で溶融混練し、押出して、導電性含フッ素共重合体組成物4のペレット4を作成した。この導電性含フッ素共重合体組成物4の燃料透過係数は2.5gmm/m2/24hであった。
ペレット3に代えてペレット4を用いる以外は、実施例3と同様にして2層積層ホースを得た。当該積層ホースの外径は8mm、内径は6mm、厚さは1mmであり、ポリアミド12の外層及び導電性含フッ素共重合体組成物4の内層は、それぞれ0.85mm及び0.15mmであった。
積層ホースの表面抵抗値は1×106Ω/□であった。また、剥離強度の測定を試みたが、ポリアミド12の外層と導電性含フッ素共重合体組成物4の内層は強固に接着しており剥離できず、さらに剥離しようとしたところ、内層が破断した。
(2層積層ホースの調製)
実施例1の含フッ素共重合体1の造粒物1と、平均粒径35nm、DBP吸油量160ml/100g、BET比表面積69m2/gのカーボンブラック(電気化学社製、デンカブラック)とPBN(ポリプラスチックス社製ジュラネックス500FP)とを質量比で74/13/13で混合し、同方向回転型二軸押出機を用いて、剪断速度500sec-1、混練部のシリンダ温度300℃、滞留時間5分で溶融混練し、押出して、導電性含フッ素共重合体組成物5のペレット5を作成した。導電性含フッ素共重合体組成物5の燃料透過係数は2.0gmm/m2/24hであった。
ペレット1に代えてペレット5を用いる以外は、実施例1と同様にして2層積層ホースを得た。積層ホースの外径は8mm、内径は6mm、厚さは1mmであり、ポリアミド12の外層及び導電性含フッ素共重合体組成物5の内層は、それぞれ0.85mm及び0.15mmであった。
積層ホースの表面抵抗値は1×106Ω/□であった。また、剥離強度の測定をした結果、内層と外層との剥離強度は、45.0N/cmであった。
〔比較例1〕
(2層積層ホースの調製)
重合前に及び重合中に、IAHを仕込まない他は合成例1及び実施例1と同様にして含フッ素共重合体3及び造粒物3の8.0kgを得た。重合時間は1.8時間であった。
溶融NMR分析及びフッ素含有量分析の結果から、含フッ素共重合体3の組成は、TFEに基づく重合単位/Eに基づく重合単位/CH2=CH(CF24Fに基づく重合単位のモル比で58.1/38.7/3.19であった。融点は219℃であった。
造粒物1に代えて造粒物3を用いる以外は、実施例1と同様にして導電性含フッ素共重合体組成物6のペレット6を得た。導電性含フッ素共重合体組成物6の燃料透過係数は5.1gmm/m2/24hであった。
ペレット3に代えてペレット6を用いる以外は、実施例3と同様にして2層積層ホースを得た。積層ホースの外径は8mm、内径は6mm、厚さは1mmであり、ポリアミド12の外層及び導電性含フッ素共重合体組成物6の内層はそれぞれ0.85mm、0.15mmであり、表面抵抗値は1×1012Ω/□であった。しかしながら、内層と外層とは接着しなかった。
〔比較例2〕
(2層積層ホースの調製)
比較例1の造粒物3と平均粒径85nm、DBP吸油量62ml/100g、BET比表面積28m2/gのカーボンブラック(三菱化学社製、ダイアブラックR)とPPS(呉羽化学社製、MZ200)とを質量比で70/17/13で混合し、同方向回転型二軸押出機を用いて、剪断速度500sec-1、混練部のシリンダ温度300℃、滞留時間5分で溶融混練し、押出して、導電性含フッ素共重合体組成物7のペレット7を作成した。導電性含フッ素共重合体組成物7の燃料透過係数は、4.5gmm/m2/24hであった。
ペレット3に代えてペレット7を用いる以外は実施例3と同様にして2層積層ホースを得た。積層ホースの外径は8mm、内径は6mm、厚さは1mmであり、ポリアミド12の外層、導電性含フッ素共重合体組成物7の内層はそれぞれ0.85mm、0.15mmであり、表面抵抗値は1×1012Ω/□であった。しかしながら、内層と外層とは接着しなかった。
導電性含フッ素共重合体組成物及びポリアミド樹脂からなる本発明の積層ホースは、当該含フッ素共重合体組成物に由来して、燃料バリヤ性が低く、導電性に優れ、さらには耐クラック性に優れ、並びに耐薬品性、耐熱性、耐食性、耐油性、耐候性等に優れることから、自動車用燃料用チューブ又はホース、燃料フィラーネック、冷却液ホース、ブレーキホース、エアコンホース、燃料搬送用チューブ又はホース、石油掘削パイプ、ペイントスプレーチューブ、産業用ホース、食品用ホース等のチューブ、ホース類として好適に使用することができる。
また、本発明の積層ホースは、共押出し成形によって形成することができ、含フッ素共重合体組成物層とポリアミド樹脂層の層間の剥離強度が高い積層ホースである。

Claims (6)

  1. 導電性含フッ素共重合体組成物(AB)の層と、ポリアミド樹脂(PA)の層とが直接積層された積層体を含む積層ホースにおいて、前記導電性含フッ素共重合体組成物(AB)が、含フッ素共重合体(A)及び導電性フィラー(B)を含有し、当該含フッ素共重合体(A)は、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位(a)、エチレンに基づく重合単位(b)及び無水イタコン酸又は無水シトラコン酸に基づく重合単位(c)を含有する含フッ素共重合体(A)であって、(a)/(b)のモル比が20/80〜80/20であり、(c)/((a)+(b))のモル比が1/1000〜5/100であり、かつ、前記含フッ素共重合体(A)は、重合槽にテトラフルオロエチレン、エチレン、及び、無水イタコン酸又は無水シトラコン酸、を仕込み、つぎにラジカル重合開始剤を仕込んでラジカル共重合を開始し、槽内圧力を一定に保持するように、テトラフルオロエチレン及びエチレンの混合ガスを連続的に仕込み、かつ、テトラフルオロエチレンとエチレンの合計モル量の0.01〜1%に相当する無水イタコン酸又は無水シトラコン酸を連続的に供給しながら、ラジカル共重合して得た、ポリアミド樹脂(PA)との接着性に優れるものであり、かつ、(A)/(B)が質量比で70/30〜99/1である導電性含フッ素共重合体組成物(AB)であることを特徴とする積層ホース。
  2. 前記導電性フィラー(B)は、BET比表面積が50〜1000m2/gであり、かつDBP吸油量が100ml/100g〜1000ml/100gである炭素系導電性フィラーである請求項1に記載の積層ホース。
  3. 前記含フッ素共重合体(A)が、重合単位(a)、重合単位(b)及び重合単位(c)に加えて、さらに、CH2=CX(CF2)nY(ここで、X、Yはそれぞれ独立に水素原子又はフッ素原子であり、nは2〜5の整数である。)で表されるモノマーに基づく重合単位(d)を含有し、(d)/((a)+(b))がモル比で1/1000〜15/100である請求項1又は2に記載の積層ホース。
  4. 前記導電性含フッ素共重合体組成物(AB)がポリフェニレンスルフィド樹脂(C)又はポリブチレン芳香族ポリエステル(D)をさらに含有する請求項1〜3のいずれかに記載の積層ホース。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の導電性含フッ素共重合体組成物(AB)の層を最内層に有する積層ホース。
  6. 前記積層体が共押出し成形で得られたものである請求項1〜5のいずれかに記載の積層ホース。
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