JP4771217B2 - 含フッ素共重合体の積層ホース - Google Patents

含フッ素共重合体の積層ホース Download PDF

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Description

本発明は、含フッ素共重合体の積層ホースに関し、より詳しくは層間接着性及び燃料透過性に優れた含フッ素共重合体とポリアミドとの積層体からなる積層ホースに関する。
ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレ/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、エチレン/テトラフルロエチレン系共重合体等の含フッ素共重合体(以下「フッ素系樹脂」ということもある。)は、耐薬品性、耐熱性、耐候性、ガスバリア性に優れた特性を有し、半導体産業、航空機・自動車産業等の種々の分野で使用されている。
近年、環境保護の観点から北米やヨーロッパ、日本等の先進国において自動車からの気化・透過により漏洩する燃料の総量規制が、いっそう強化されつつある。これに伴い自動車に使用される部品の中で、特に燃料ホースからの燃料透過を大きく低減することが求められている。
フッ素系樹脂は、基本的に燃料透過性が低いために、上記規制に適合する燃料ホース用材料として適している。しかしながら、フッ素系樹脂は高価であり、また、機械的特性が必ずしも充分でないために、ポリアミド等と積層することにより低価格化と機械的特性の向上が図られている。
しかして、一般に、フッ素系樹脂は非粘着性を有し、他の材料との接着性に乏しいことから、燃料ホース(以下「燃料チューブ」ともいう。)等においてもフッ素系樹脂とポリアミドとの接着性を向上する種々の方法が検討されている。例えば接着性向上のための方法としては、従来、薬液処理、コロナ放電処理、プラズマ放電処理等によりフッ素系樹脂の表面を処理する方法が知られている。これらの表面処理方法により、フッ素系樹脂のチューブの表面に種々の接着性の官能基を導入した後、必要に応じて接着剤を塗布し、ついで、当該チューブの処理表面側にポリアミドを押出し成形して、フッ素系樹脂とポリアミドの積層チューブを得るものである。しかしながら、これらの表面処理方法は、工程が煩雑で、積層チューブの生産性が低い。また、コロナ放電やプラズマ放電では、形状の複雑なフッ素系樹脂の内面を処理することは困難である。例えば細長いフッ素系樹脂のチューブの内面に対しプラズマ放電等を適用することは難しい。
そこで、フッ素系樹脂チューブの表面処理を必要とせず、かつ共押出成形法等の簡便な方法により層間接着性に優れた積層チューブを成形できる、フッ素系樹脂が強く求められている。
従来、かかる観点から、フッ素系樹脂の接着性を向上される種々の試みがなされている。
例えば、特許文献1においては、無水マレイン酸に基づく繰り返し単位を含有する含フッ素共重合体が開示されている。当該含フッ素共重合体は、他材料との接着性に優れるが、無水マレイン酸と含フッ素モノマーとの共重合性が充分でないので、超臨界の二酸化炭素やヘキサフルオロプロピレン等を溶媒として用いる特殊な重合方法を用いなければならなかった。
また、特許文献2においては、テトラフルオロエチレン(以下「TFE」という。)に基づく繰り返し単位/含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位/無水イタコン酸に基づく繰り返し単位を含有する含フッ素共重合体が開示されている。しかしながら、例えばTFE、CF2=CFOCF2CF2CF3及び無水イタコン酸からなるモノマーの組み合わせからなる三元共重合体の場合は、後記比較例2に示したように、共重合性が必ずしも充分でないという問題があった。
特開平11−193312号公報(特許請求の範囲(請求項1〜34)、〔0019〕) 特開2004−277689号公報(特許請求の範囲(請求項1〜38))
本発明の目的は、上記のような背景のもとに開発が要請されている、燃料バリア性に著しく優れ、耐熱性、耐薬品性、耐候性、柔軟性に優れ、かつ、ポリアミドとの接着性に優れる含フッ素共重合体とポリアミドとの積層ホースを提供することである。
本発明者らはかかる観点から鋭意検討した結果、含フッ素共重合体において、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸等のジカルボン酸無水物基を有し、かつ、環内に重合性不飽和基を有する環状炭化水素モノマーの酸無水物を共重合させた含フッ素共重合体は、ポリアミドとの接着性に優れ、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成した。
本発明に従えば、基本的に、請求項1で規定される以下の含フッ素共重合体とポリアミドとの積層ホースが提供される。
〔1〕
含フッ素共重合体とポリアミドとの積層体からなる積層ホースにおいて、当該含フッ素共重合体が、(a)テトラフルオロエチレン及び/又はクロロトリフルオロエチレンに基づく繰り返し単位、(b)ジカルボン酸無水物基を有し、かつ、環内に重合性不飽和基を有する環状炭化水素モノマーに基づく繰り返し単位及び(c)その他の含フッ素モノマー(ただし、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンを除く。)に基づく繰り返し単位を含有し、(a)繰り返し単位、(b)繰り返し単位及び(c)繰り返し単位の合計モル量に対して、(a)が50〜99.89モル%、(b)が0.01〜5モル%、かつ、(c)が0.1〜49.99モル%であり、容量流速が0.1〜1000(mm3/秒)であることを特徴とする含フッ素共重合体とポリアミドとの積層ホース。
本発明の積層ホースは、耐熱性、耐薬品性、耐候性、燃料バリア性に優れ、かつ、層間接着性に優れ、さらに燃料に浸漬した場合の耐久性にも優れることから、特に自動車用燃料ホース等の用途に好適に使用することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の含フッ素共重合体とポリアミドとの積層体からなる積層ホースにおいては、当該含フッ素共重合体が、(a)テトラフルオロエチレン(TFE)及び/又はクロロトリフルオロエチレン(以下「CTFE」という。)に基づく繰り返し単位、(b)ジカルボン酸無水物基を有し、かつ、環内に重合性不飽和基を有する環状炭化水素モノマーに基づく繰り返し単位及び(c)その他の含フッ素モノマー(ただし、TFE及びCTFEを除く。)に基づく繰り返し単位を含有している。
(酸無水物基含有環状モノマー)
本発明における含フッ素共重合体において、最も特徴とする点は、従来の無水イタコン酸の代わりに、ジカルボン酸無水物基及び環内に重合性不飽和基を有する環状炭化水素モノマー(以下「ジカルボン酸無水物基含有環状モノマー」又は「酸無水物基含有環状モノマー」という。)を使用する点にある。
本発明において当該酸無水物基含有環状モノマーとは、1つ以上の5員環又は6員環からなる環状炭化水素であって、これにジカルボン酸無水物基と環内重合性不飽和基を有する重合性化合物をいう。
当該環状炭化水素としては1つ以上の有橋多環炭化水素を有する環状炭化水素が好ましい。すなわち、有橋多環炭化水素からなる環状炭化水素、有橋多環炭化水素の2以上が縮合した環状炭化水素、又は有橋多環炭化水素と他の環状炭化水素が縮合した環状炭化水素であることが好ましい。また、この酸無水物基含有環状モノマーは環内重合性不飽和基、すなわち炭化水素環を構成する炭素原子間に存在する重合性不飽和基を1つ以上有する。
当該酸無水物基含有環状モノマーはさらにジカルボン酸無水物基(−CO−O−CO−)を有するが、当該ジカルボン酸無水物基は、炭化水素環を構成する2つの炭素原子に結合していてもよく、環外の2つの炭素原子に結合していてもよい。好ましくは、ジカルボン酸無水物基は、上記環状炭化水素の環を構成する炭素原子であって、かつ、隣接する2つの炭素原子に結合するものである。
さらに、当該環状炭化水素の環を構成する炭素原子には、水素原子の代わりに、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基等の置換基が結合していてもよい。
本発明において使用するジカルボン酸無水物基含有環状モノマーは、好ましくは式(1)〜(8)で表されるものである。
Figure 0004771217
(上記式(2)において、Rは炭素数1〜6程度の低級アルキル基、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択されるハロゲン原子、前記低級アルキル基の水素をこれらのハロゲン原子で置換したハロゲン化アルキル基を表す。)
Figure 0004771217
(上記式(5)〜(8)において、Rは炭素数1〜6程度の低級アルキル基、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択されるハロゲン原子、前記低級アルキル基の水素をこれらのハロゲン原子で置換したハロゲン化アルキル基を表す。)
上記のうち、好ましくは式(1)で表される、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(以下「NAH」という。)、及び、式(2)及び式(5)〜(8)において、置換基Rがメチル基(−CH3)であるものであり、最も好ましくは、NAHである。
上記式(1)〜(8)はそれ自身公知化合物であり、例えばシクロペンタジエンと無水マレイン酸を無触媒で加熱する方法や特開平6−73043号公報に記載の方法により容易に製造することができる。また、市販のものを入手して使用することが可能である。
本発明における含フッ素共重合体の製造時において、前記酸無水物基含有環状モノマーを用いると、特許文献1に記載の無水マレイン酸を用いた場合に必要となる特殊な重合方法を用いることなく、また、特許文献2の無水イタコン酸を用いた場合のように、共重合性が低下することなく、繰り返し単位(b)を含有する含フッ素共重合体を容易に製造できる。
(その他の含フッ素モノマー)
本発明において、その他の含フッ素モノマー(c)はTFE及びCTFE以外のフッ素含有モノマーであって、例えば、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン(以下「VDF」という。)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(以下「HFP」という。)、CF2=CFORf1(ここで、Rf1は炭素数1〜10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキル基である。)、CF2=CFORf2SO21(Rf2は炭素数1〜10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキレン基、X1はハロゲン原子又は水酸基である。)、CF2=CFORf2CO22(ここで、Rf2は前記と同じ意味を表し、X2は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。)、CF2=CF(CF2pOCF=CF2(ここで、pは1又は2。)、CH2=CX3(CF2q4(ここで、X3及びX4は、互いに独立に水素原子又はフッ素原子、qは2〜10の整数を表す。)、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)等が挙げられる。これらは単独で、または二種以上を併用してもよい。
CF2=CFORf1の具体例を例示すれば、CF2=CFOCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF2CF3、CF2=CFO(CF28F等が挙げられ、好ましくは、CF2=CFOCF2CF2CF3である。
また、CH2=CX3(CF2q4の例としては、CH2=CH(CF22F、CH2=CH(CF23F、CH2=CH(CF24F、CH2=CF(CF23H、CH2=CF(CF24H等が挙げられ、好ましくは、CH2=CH(CF24F又はCH2=CH(CF22Fである。
好ましくは、その他の含フッ素モノマー(c)としては、VDF、HFP、CF2=CFORf1及びCH2=CX3(CF2q4であり、より好ましくは、HFP及びCF2=CFORf1から選択されるものである。
本発明における含フッ素共重合体において、(a)繰り返し単位、(b)繰り返し単位及び(c)繰り返し単位の合計モル量に対して、(a)が50〜99.89モル%であり、(b)が0.01〜5モル%であり、(c)が0.1〜49.99モル%である。好ましくは(a)が50〜99.47モル%、(b)が0.03〜3モル%、(c)が0.5〜49.97モル%である。そしてさらに好ましくは(a)が50〜98.95モル%、(b)が0.05〜2モル%、(c)が1〜49.95モル%である。
(a)繰り返し単位、(b)繰り返し単位、及び(c)繰り返し単位のモル%がこの範囲にあると、含フッ素共重合体は、耐熱性、耐薬品性に優れる。また、(b)のモル%がこの範囲にあると、当該含フッ素共重合体は、ポリアミドとの接着性に優れる。さらに(c)のモル%がこの範囲にあると、当該含フッ素共重合体は、成形性に優れ、耐ストレスクラック性等の機械物性に優れるものとなるため好ましい。
(非フッ素系モノマー)
本発明における共重合体においては、さらに重合時に非フッ素系モノマーを添加し共重合させてもよい。かかる非フッ素系モノマーとしては、エチレン、プロピレン、イソブテン等の炭素数2〜4のオレフィン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、クロトン酸メチル等のビニルエステル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル等が挙げられる。これらのなかではエチレン、プロピレン及び酢酸ビニルが好ましく、エチレンがより好ましい。これらは単独で、又は二種以上を併用してもよい。
非フッ素系モノマーに基づく繰り返し単位(d)を含有させる場合は、(d)の含有量が((a)+(b)+(c))/(d)のモル比が100/5〜100/100程度であることが好ましい。(d)がこれよりあまり少ない場合は、その含有させた効果が実質的に奏されず、これよりあまり多い場合は、含フッ素共重合体から成形される成形体であるチューブの耐熱性、耐薬品性が低下するため好ましくない。
(含フッ素共重合体の例)
繰り返し単位(a)、(b)、(c)を含有し、さらに所望により繰り返し単位(d)を含有する本発明における含フッ素共重合体の好ましい具体例としては、TFE/CF2=CFOCF2CF2CF3/NAH共重合体、TFE/HFP/NAH共重合体、TFE/CF2=CFOCF2CF2CF3/HFP/NAH共重合体、TFE/VdF/NAH共重合体、TFE/CH2=CH(CF24F/NAH/エチレン共重合体、TFE/CH2=CH(CF22F/NAH/エチレン共重合体、CTFE/CH2=CH(CF24F/NAH/エチレン共重合体、CTFE/CH2=CH(CF22F/NAH/エチレン共重合体、CTFE/CH2=CH(CF22F/NAH/エチレン共重合体等の三元共重合体及び四元共重合体が挙げられる。
より好ましくは、TFE/CF2=CFOCF2CF2CF3/NAH共重合体、TFE/HFP/NAH共重合体及びTFE/CF2=CFOCF2CF2CF3/HFP/NAH共重合体である。
(融点及びQ値等)
本発明における含フッ素共重合体の融点は、成形温度との関係で、150〜320℃が好ましく、200〜310℃がより好ましい。この範囲にあるとポリアミド等の熱可塑性樹脂との溶融共押出し成形性に優れるので好ましい。また融点は、繰り返し単位(a)、(b)及び(c)の含有割合及び必要に応じて(d)の含有割合を前記範囲内で適宜選定して調節することが好ましい。
本発明における含フッ素共重合体の高分子末端基として、エステル基、カーボネート基、水酸基、カルボキシル基、カルボニルフルオリド基、酸無水物残基等の接着性官能基を有すると、ポリアミド等熱可塑性樹脂との接着性に優れるので好ましい。当該接着性官能基を有する高分子末端基は、含フッ素共重合体の製造時に、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤等を適宜選定することにより導入することが好ましい。
本発明における含フッ素共重合体の容量流速(以下「Q値」という。)は、0.1〜1000(mm3/秒)である。Q値は、含フッ素共重合体の溶融流動性を表す指標であり、分子量の目安となる。Q値が大きいと分子量が低く、小さいと分子量が高いことを示す。本発明におけるQ値は、島津製作所製フローテスタを用いて、含フッ素共重合体の融点より50℃高い温度において、荷重7kg下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に押出すときの含フッ素共重合体の押出し速度である。Q値が小さすぎると押出し成形が困難となり、大きすぎると含フッ素共重合体の機械的強度が低下する。本発明の含フッ素共重合体のQ値は0.5〜500(mm3/秒)が好ましく、1.0〜200(mm3/秒)がより好ましい。
(重合方法)
本発明における含フッ素共重合体の製造方法においては、特定の酸無水物基含有環状モノマーを使用しているため、共重合性に優れているので、特に制限はなく、それ自身公知のラジカル重合開始剤を用いるラジカル重合法が用いられる。重合方法としては、塊状重合;フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等の有機溶媒を使用する溶液重合;水性媒体及び必要に応じて適当な有機溶剤を使用する懸濁重合;水性媒体及び乳化剤を使用する乳化重合が挙げられ、特に溶液重合が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、半減期が10時間である温度が、0〜100℃であることが好ましく、より好ましくは20〜90℃である。
当該重合開始剤の具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;イソブチリルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の非フッ素系ジアシルペルオキシド;ジイソプロピルペルオキシジカ−ボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート;tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、tert−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル;(Z(CF2rCOO)2(ここで、Zは水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、rは1〜10の整数である。)で表される化合物等の含フッ素ジアシルペルオキシド;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物等が好ましいものとして挙げられる。
本発明において、含フッ素共重合体のQ値を制御するために、連鎖移動剤を使用することも好ましい。連鎖移動剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール;1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボンが挙げられる。含フッ素共重合体の高分子末端に接着性官能基を導入するための連鎖移動剤としては、酢酸、無水酢酸、酢酸メチル、エチレングリコール、及びプロピレングリコール等が挙げられる。
本発明において重合条件は特に限定されず、重合温度は0〜100℃が好ましく、20〜90℃がより好ましい。重合圧力は0.1〜10MPaが好ましく、0.5〜3MPaがより好ましい。
重合中の酸無水物含有環状炭化水素モノマーの濃度は、全モノマーに対して0.01〜5モル%が好ましく、0.1〜3モル%がより好ましく、0.1〜1モル%が最も好ましい。当該酸無水物含有環状炭化水素モノマーの濃度が高すぎると、重合速度が低下する傾向となる。前記範囲にあると製造時の重合速度が低下せず、かつ、含フッ素共重合体は接着性に優れるものとなる。重合中に、当該酸無水物含有環状炭化水素モノマーが重合で消費されるに従って、消費された量を連続的又は断続的に重合槽内に供給し、当該酸無水物含有環状炭化水素モノマーの濃度をこの範囲に維持することが好ましい。
本発明における含フッ素共重合体は、それ自身が燃料バリア性に著しく優れる。燃料バリア性の指標である、フィルムの燃料透過係数(単位:g・mm/m2・24h)は、実施例に記載の方法により測定され、この値が小さいほど燃料バリア性に優れることを示す。含フッ素共重合体のフィルムの燃料透過係数は、0.01〜1.5(g・mm/m2・24h)が好ましく、0.05〜1(g・mm/m2・24h)がより好ましく、0.1〜0.5(g・mm/m2・24h)が最も好ましい。
(ポリアミドとの積層)
本発明において、含フッ素共重合体と積層して積層ホースを形成するために用いられるポリアミド(PA)は、それ自身公知のものが、好適に使用可能である。すなわち、本発明における含フッ素共重合体は、それ自身がポリアミド樹脂に対する接着性が高いものであるために、ポリアミドとしては、特に限定するものではない。例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミドMXD6(半芳香族系ポリアミド)等のポリアミド類が挙げられる。
使用可能な他の公知のポリアミドとしては、ポリアミド26、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド611、ポリアミド612、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド912、ポリアミド1012、ポリアミド1212、ポリアミドPACM12等が挙げられる。上記ポリアミド類は、単独で使用してもよいし、ブレンドして使用してもよい。また、これらを形成する原料モノマーを用いた共重合ポリアミドとすることもできる。
本発明の積層ホースが液体燃料の輸送に用いられた場合に、燃料に接触する最内層を構成する含フッ素共重合体に、液体燃料等の流体輸送時に発生する静電気の除去を可能とするため、導電性を付与することが好ましい。この導電性は、導電性付与フィラーを、積層ホースの最内層に添加することにより発現させることが望ましい。
導電性付与フィラーとしては、通常用いられているものがいずれも使用可能であり、ニッケル、銀等の金属粉末;鉄、ステンレス鋼等の金属繊維;導電性カーボンブラック;酸化亜鉛、ガラスビーズ、酸化チタン等の表面を金属スパッタリング、無電解メッキ等によりコーティングした金属無機化合物が挙げられる。中でも導電性カーボンブラックが最も好ましい。当該フィラーの配合量は、内層を構成する含フッ素共重合体100質量部に対して1〜30質量部、特に5〜20質量部程度である。導電性の尺度としての体積固有抵抗率は1×109Ωcm以下であることが好ましい。
(積層ホースの層構成等)
本発明の積層ホースは、本発明における含フッ素共重合体からなる内層(I)とポリアミドからなる外層(II)を積層した積層構造、すなわち、[(II)/(I)]なる基本積層構成を含む積層体からなる。
本発明の積層ホースは、上記基本積層構成を含む限り、すなわち、含フッ素共重合体からなる内層(I)とポリアミドからなる外層(II)が直接接触して積層している構成を含む限り、それに他のフッ素系樹脂やポリアミドから成る層を含んで多層ホースとしてもよい。多層ホースとした場合の全体の層数は、特に制限されず、少なくとも2層以上であることができるが、通常は2層〜6層、より好ましくは2層〜5層である。例えば、以下の層構成が挙げられる。すなわち、
(1)(II)/(I) ここで内層を形成する(I)は、本発明で規定する含フッ素共重合体であるが、これに導電性を付与した導電性含フッ素共重合体であってもよい。
(2)(II)/(I)/(I’) ここで最内層(I’)は、導電性を付与したフッ素系樹脂の層である。通常は、本発明で規定する以外のフッ素系樹脂の層であるが、当該(I’)が本発明で規定する含フッ素系樹脂であることを排除するものではない(以下、同じ。)。
(3)(II’)/(II)/(I)/(I’) ここで最外層を形成する(II’)は、外層(II)のポリアミド樹脂とは別のポリアミド樹脂である。
なお、本発明の積層ホースにおいては、さらに耐熱性の熱可塑性樹脂からなる層を積層することを排除するものではない。また、これらの層には、ガラス繊維やカーボン繊維等のフィラーが配合されていてもよい。
本発明の積層ホースの外径は、扱う燃料の流量を考慮して適宜設計され、またその肉厚は、当該燃料の透過性が十分に小さく、また、通常のホースの破壊圧力を維持できる厚さであり、かつ、ホースの組み付け作業の容易性及び使用時の耐振動性が良好な程度の柔軟性を維持できる厚さに設計される。これらは、特に限定されるものではないが、通常、外径は4〜30mm、内径は3〜25mm、肉厚は0.05〜5mm程度であることが好ましい。
また、本発明の積層ホースにおいては、各層のそれぞれの厚さは、特に限定されるものではなく、樹脂の物性、全体の層数、用途などに応じて随時変更しうるものであり、それぞれの層の厚みは、積層ホースの燃料バリア性、低温耐衝撃性、柔軟性等の特性を考慮して決定される。
具体的には、内層(I)と外層(II)の厚さは、積層ホース全体の厚みに対して、それぞれ、3〜90%であることが好ましく、また、内層(I)の厚みは、燃料バリア性を考慮して、積層ホース全体の厚みに対し、5〜80%であることがより好ましく、10〜50%であることがさらに好ましい。一例として、外径8mm、内径6mm、厚み1mm(内層0.25mm、外層0.75mm)の積層ホースが挙げられる。
(積層ホースの成形)
本発明の積層ホースの成形方法としては、通常外層をなすポリアミドと内層の含フッ素共重合体とを溶融状態で共押出し成形し、両者を熱融着(溶融接着)して一段で2層構造のホースを形成する共押出し成形によることが最も好ましい。また、3層以上の積層構造を含む場合も、これに準じて共押出し成形することができる。
通常、共押出し成形法は、フィルム、チューブ等の形状の2層以上の積層体を得る方法である。すなわち、スクリューを備えた2機以上の押出機内で混練・溶融され吐出口から出てくる各層を形成すべき樹脂の溶融物は、溶融状態で接触しつつ押出機の先端に設置されたダイを通って、押出され、積層体に成形される。
当該押出温度については、スクリュー温度は100〜350℃が好ましく、ダイ温度は200〜350℃が好ましい。また、スクリュー回転数は、特に限定されるものではないが、10〜200rpmが好ましく、溶融物の押出機内の滞留時間は1〜20分が好ましい。
なお、一般的には、外層、内層のそれぞれの樹脂を後記実施例に示すように、予めペレット化しておくことも好ましい。すなわち、含フッ素共重合体やポリアミドに、混合する樹脂、及び可塑剤等各種添加剤の所定量を、V型ブレンダー、タンブラー等の低速回転混合機やヘンシェルミキサー等の高速回転混合機を用いて混合した後、一軸押出機、二軸押出機、二軸混練機等で溶融混練し、ペレット化する。なお可塑剤等の常温で液体のものは、溶融混練機のシリンダーの途中から注入して、溶融混練することもできる。
ペレット化は、すべての樹脂成分が溶融する温度において機械的に混練し、ペレット化することが好ましい。特に均一混合するためには、同方向二軸押出機を用いることが好ましい。
また、共押出し成形を行う際に、各層の組成を形成する全構成要素をそれぞれ押出機のホッパーに供給して押出機の中で各層のコンパウンディング等を行い、引続き共押出し成形を行うことにより、コンパウンド化等と共押出し成形をほぼ同時に行うことも可能である。
本発明の積層ホースにおいては、共押出成形等によるのみで、特に従来のごとき厄介な含フッ素共重合体の表面処理を必要とせずに、きわめて層間接着性に優れていることが特徴である。すなわち。当該形成された含フッ素共重合体層とポリアミド樹脂層の接着力は、両層間の剥離強度として、好ましくは15N/cm以上、より好ましくは20N/cm以上のものである。
(積層ホースの燃料透過性)
本発明の積層ホースは、特に燃料バリア性に優れるので、燃料ホース用途に適する。燃料バリア性の指標である、実施例記載の方法で測定した、積層ホースの燃料透過係数(単位:mg/m2・day)は、値が小さいほど燃料バリア性に優れることを示す。積層ホースの燃料透過係数は、2〜150(mg/m2・day)が好ましく、3〜100(mg/m2・day)がより好ましく、5〜80(mg/m2・day)が最も好ましい。
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれに限定されるものではない。なお、%とあるものは、とくに断りなき限り、質量%である。
また、フィルム及びホースの接着強度(層間剥離強度)、燃料透過係数及びNAHの含有量は下記の方法によって測定した。
(i)〔フィルムの燃料透過係数(単位:g・mm/m2・24h)〕
JIS Z−0208に規定されているカップ法に準拠して含フッ素共重合体の燃料透過係数を測定した。燃料のCE10(イソオクタン:トルエン:エタノール=50:50:10体積比)の9.5〜10gを透過面積28.26cm2のカップに入れた。熱プレス成形して得た厚さ100μmの含フッ素共重合体のフィルムでカップ上部を覆い、60℃で10日間保持した後の質量減少量から燃料透過係数を求めた。燃料透過係数が低いほど燃料バリア性に優れることを示す。
(ii)〔NAHに基づく繰り返し単位の含有量(単位:モル%)〕
100μmの含フッ素共重合体のフィルムを用いて、赤外吸収スペクトルを測定した。赤外吸収スペクトルにおけるNAHの吸収ピークは1778cm-1に現れるのでそのピークの吸光度を測定した。NAHのモル吸光係数1340l・mol-1・cm-1を用いてNAHに基づく繰り返し単位の含有量を算出した。
(iii)〔CF2=CFO(CF23Fに基づく繰り返し単位の含有量(単位:モル%)〕 旭硝子研究報告、40(1)、75(1990)に記載の方法に準じて、溶融NMR分析して算出した。
(iv)〔層間剥離強度〕
積層ホースを20cm長に切断し、それをさらに縦に切断したものを試験片とする。外層と内層を端から1cm強制的に剥離し、使用機器としてテンシロン万能試験機を用いて、外層と内層をはさみ、50mm/minの引っ張り速度で、180°接着試験を行った。S−Sカーブの極大点から最高強度を読み取り、層間剥離強度(N/cm)とした。
(v)〔燃料浸漬試験〕
耐圧容器に積層ホースを20cm長に切断したものと、CM15(イソオクタン:トルエン:メタノール=50:50:15体積比の燃料)または、CE10を入れ、密閉して60℃にて所定の時間保持した。このものについて(iv)の層間剥離強度を測定する。
(vi)〔積層ホースの燃料透過係数(単位:mg/m2・day)〕
積層ホース(チューブ)を長さ1mに切断したものに、CE10又はCM15を封入して封入体の質量を測定し、これを60℃の恒温槽中に保持し、20日間経過後の質量変化(質量減少量)より、ホースの透過係数を算出した。
〔合成例1〕
(1)内容積が100Lの撹拌機付き重合槽を脱気し、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(旭硝子社製、AK225cb、以下「AK225cb」という。)の42.5kg、CF2=CFO(CF23Fの2.125kg、HFPの51kgを仕込んだ。ついで重合槽内を50℃に昇温し、TFEの4.25kgを仕込んで圧力を1.01MPa/Gまで昇圧した。重合開始剤溶液として(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドの0.3質量%AK225cb溶液の340cm3を仕込み、重合を開始させ、以後10分毎に当該重合開始剤溶液の340cm3を仕込んだ。
重合中、圧力が1.01MPa/Gを保持するようにTFEを連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEのモル数に対して0.1モル%に相当する量のNAH(但し式1で表される5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物を使用した。)の0.3質量%AK225cb溶液を連続的に仕込んだ。
重合開始5時間後、TFEの8.5kgを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。
得られたスラリ状の含フッ素共重合体を、水の75kgを仕込んだ200Lの造粒槽に投入し、次いで撹拌しながら105℃まで昇温し溶媒を留出除去しながら造粒した。得られた造粒物を150℃で5時間乾燥することにより、7.5kgの含フッ素共重合体(以下「含フッ素共重合体1」という。)の造粒物(以下「造粒物1」という。)が得られた。
(2) 溶融NMR分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、当該含フッ素共重合体1の共重合組成は、TFEに基づく繰り返し単位/CF2=CFO(CF23Fに基づく繰り返し単位/HFPに基づく繰り返し単位/NAHに基づく繰り返し単位=91.2/1.5/7.2/0.1(モル%)であった。融点は262℃、Q値は4.6(mm3/秒)であった。
又当該含フッ素共重合体1を熱プレス成形し厚さ100μmのフィルムとし、その燃料透過係数を測定したところ0.38(g・mm/m2・24h)であった。
〔合成例2〕
(1)合成例1で用いた重合槽を脱気し、AK225cbの23.1kg、メタノール2.3g、CF2=CFO(CF23Fの0.96kg、HFPの61.5kg、TFEの3.85kgを仕込み、重合槽内を50℃に昇温する。圧力は1.17MPa/Gとなる。重合開始剤溶液としてジ(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドの0.3質量%AK225cb溶液の340cm3を仕込み、重合を開始させ、以後10分毎に該重合開始剤溶液の340cm3を仕込む。また、重合中圧力を1.17MPa/Gを保持するようにTFEを連続的に仕込む。また、連続的に仕込むTFEの0.1モル%に相当する量のNAH(式1で表される5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物)の0.3質量%AK225cb溶液を連続的に仕込む。重合開始4時間30分後にTFEの8.5gを仕込んだ時点で、重合槽内を室温冷却するとともに、未反応モノマーをパージする。
得られたスラリ状の含フッ素共重合体(以下「含フッ素共重合体2」という。)を、水の75kgを仕込んだ200Lの造粒槽に投入し、次いで撹拌しながら105℃まで昇温し溶媒を留出除去しながら造粒する。得られた造粒物を150℃で5時間乾燥することにより、6.9kgの含フッ素共重合体2の造粒物(以下「造粒物2」という。)が得られる。
(2) 溶融NMR分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、含フッ素共重合体2の共重合組成は、TFEに基づく繰り返し単位/CF2=CFO(CF23Fに基づく繰り返し単位/HFPに基づく繰り返し単位/NAHに基づく繰り返し単位=89.0/0.7/10.2/0.1(モル%)である。融点は257℃、Q値は2.8(mm3/秒)である。又当該含フッ素共重合体2を熱プレス成形し厚さ100μmのフィルムとし、その燃料透過係数を測定すると0.30(g・mm/m2・24h)である。
〔実施例1〕
(1)合成例1で得られた造粒物1を押出機を用いて、300℃、滞留時間2分で溶融混練し、ペレット1を作成した。
外層を形成するシリンダにポリアミド12(宇部興産社製、3030JLX2)のペレットを供給し、内層を形成するシリンダにペレット1を供給し、それぞれシリンダの輸送ゾーンに移送させた。
ポリアミド12、ペレット1の輸送ゾーンにおける加熱温度を、それぞれ240℃、290℃とした。共ダイの温度を290℃として2層共押出しを行い、2層の積層チューブを得た。積層チューブの外径は8mm、内径は6mm、厚さは1mmであり、ポリアミド12の外層、含フッ素共重合体1の内層の厚みはそれぞれ0.8mm、0.2mmであった。
(2)得られたチューブの層間の剥離強度を測定した。含フッ素共重合体1の内層とポリアミド12の外層とは剥離せず、その剥離強度は、極めて大きく測定不可能であった。
また、CM15に24時間浸漬後の剥離強度は25N/cm、161時間浸漬後の剥離強度は22N/cm、CE10に24時間浸漬後の剥離強度は剥離せず測定不可能であり、161時間浸漬後の剥離強度は20N/cmであり、十分高いものであった。
また、当該ホースにCE10及びCM15を封入した場合の燃料透過係数は、CE10の場合28.5(mg/m2・day)、CM15の場合66.0(mg/m2・day)であった。
〔実施例2〕
(1)合成例2の造粒物2を押出機を用いて、300℃、滞留時間2分で溶融混練し、ペレット2を作成する。
外層を形成するシリンダにポリアミド12(宇部興産社製、3030JLX2)のペレットを供給し、内層を形成するシリンダにペレット2を供給し、それぞれシリンダの輸送ゾーンに移送させる。
ポリアミド12、ペレット1の輸送ゾーンにおける加熱温度をそれぞれ240℃、290℃とし、共ダイの温度を290℃として2層共押出しを行い、2層の積層チューブを得る。積層チューブの外径は8mm、内径は6mm、厚さは1mmであり、ポリアミド12の外層、含フッ素共重合体2の内層の厚みはそれぞれ0.8mm、0.2mmである。
(2)得られたチューブの層間の剥離強度を測定すると、含フッ素共重合体2の内層とポリアミド12の外層との剥離強度は極めて強く剥離せず測定不可能である。また、CM15に24時間浸漬後の剥離強度は28N/cm、161時間浸漬後の剥離強度は25N/cm、CE10に24時間浸漬後の剥離強度は極めて強く剥離せず剥離不可能、161時間浸漬後の剥離強度は24N/cmであり、十分高いものである。
〔比較例1〕
NAHの0.3質量%AK225cb溶液を仕込まない以外は、合成例1と同様に重合、造粒を行ない、含フッ素共重合体(以下「含フッ素共重合体3」という。)及び含フッ素共重合体の造粒物(以下「造粒物3」という。)の7.6kgを得る。
溶融NMR分析の結果から、含フッ素共重合体3の共重合組成は、TFEに基づく繰り返し単位/CF2=CFO(CF23Fに基づく繰り返し単位/HFPに基づく繰り返し単位=91.5/1.5/7.0(モル%)であった。融点は257℃、Q値は3.0(mm3/秒)であった。又当該含フッ素共重合体3を熱プレス成形し厚さ100μmのフィルムとし、その燃料透過係数を測定すると0.33(g・mm/m2・24h)である。
造粒物3を実施例1と同様に処理してペレット3を作成する。
外層を形成するシリンダにポリアミド12(宇部興産社製、3030JLX2)のペレットを供給し、内層を形成するシリンダにペレット3を供給し、それぞれシリンダの輸送ゾーンに移送させる。
ポリアミド12、ペレット3の輸送ゾーンにおける加熱温度をそれぞれ240℃、290℃とする。共ダイの温度を290℃として2層共押出しを行い、2層の積層チューブを得る。積層チューブの外径は8mm、内径は6mm、厚さは1mmであり、ポリアミド12の外層、含フッ素共重合体1の内層の厚みはそれぞれ0.8mm、0.2mmである。
得られたチューブの層間の剥離強度を測定すると、含フッ素共重合体3の内層とポリアミド12の外層との剥離強度は0.5N/cmであり、殆ど接着しない
〔比較例2〕
(1)内容積が94Lの撹拌機付重合槽を脱気し、AK225cbの902kg、メタノールの0.216kg、CF2=CFOCF2CF2CF3の31.6kg、IAH(無水イタコン酸)の0.43kgを仕込み、重合槽内を50℃に昇温し、TFEを圧力が0.38MPaになるまで仕込んだ。重合開始剤溶液としてジ(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドの0.25%AK225cb溶液を50cm3仕込み、重合を開始させる。重合中圧力が一定になるようにTFEを連続的に仕込んだ。適宜前記重合開始剤溶液を追加添加し、TFEの仕込み速度をほぼ一定に保った。重合開始剤溶液は合計で120cm3仕込んだ。また、連続的に仕込んだTFEの1モル%に相当する量のIAHを連続的に仕込んだ。重合開始6時間後にTFEの7.0kgを仕込んだ時点で、重合槽内を室温まで冷却するとともに、未反応TFEをパージした。
得られたスラリ状の含フッ素共重合体(以下「含フッ素共重合体4」という。)を、水の75kgを仕込んだ200Lの造粒槽に投入し、撹拌下105℃まで昇温して溶媒を留出除去しながら造粒した。得られる造粒物を150℃で5時間乾燥することにより、7.5kgの含フッ素共重合体4の造粒物(以下「造粒物4」という。)が得られた。
(2)溶融NMR分析、フッ素含有量分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、含フッ素共重合体4の組成は、TFEに基づく重合単位/CF2=CFOCF2CF2CF3に基づく重合単位/IAHに基づく重合単位=97.7/2.0/0.3であった。融点は292℃、軟化温度は280℃、Q値は15(mm3/秒)であった
当該含フッ素共重合体4の造粒物4を340℃でプレス成形して厚さ1mm、幅2.5cm、長さ10cmのシートを得たが、当該シートの表面を目視によりチェックしたところ、かなり不均一な部分が認められた。これは、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物の代わりに無水イタコン酸を用いた場合は、合成例1のように共重合性が十分ではないため、得られた三元共重合体は、このように無水イタコン酸のかなりの部分が共重合せずに残存し不均一になっているものと推定される。
〔比較例3〕
(1)内容積が94Lの撹拌機付き重合槽を脱気し、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの92.1kg、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(旭硝子社製、AK225cb、以下「AK225cb」という。)の16.3kg、(パーフルオロエチル)エチレンCH2=CH(CF22Fの73g、IAHの10.1gを仕込み、TFEの9.6kg、E(エチレン)の0.7kgを圧入し、重合槽内を66℃に昇温し、重合開始剤としてtert−ブチルペルオキシピバレートの1質量%AK225cb溶液の433cm3を仕込み、重合を開始させた。
重合中圧力が一定になるようにTFE/Eの60/40(モル比)のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEとEの合計モル数に対して2.0モル%に相当する量の(パーフルオロエチル)エチレンと0.5モル%に相当する量のIAHを連続的に仕込んだ。
重合開始5.5時間後、モノマー混合ガスの8.0kg、IAHの63gを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温し、パージして圧力を常圧とした。
得られたスラリ状の含フッ素共重合体(以下「含フッ素共重合体5」という。)を、水の75kgを仕込んだ200Lの造粒槽に投入し、次いで撹拌しながら105℃まで昇温し溶媒を留出除去しながら造粒した。得られた造粒物を150℃で5時間乾燥することにより、8.3kgの含フッ素共重合体5の造粒物(以下「造粒物5」という。)が得られた。
(2)当該含フッ素共重合体5の共重合組成は、溶融NMR、IR、フッ素含有量分析により、TFEに基づく繰り返し単位/Eに基づく繰り返し単位/(パーフルオロエチル)エチレンに基づく繰り返し単位/IAHに基づく繰り返し単位=58.5/39/2/0.5(モル%)であった。含フッ素共重合体5の融点は240℃、容量流速Qは15(mm3/秒)であった。
(3)得られた造粒物5を実施例1と同様にの処理してペレット5を作成した。
外層を形成するシリンダにポリアミド12(宇部興産社製、3030JLX2)のペレットを供給し、内層を形成するシリンダにペレット5を供給し、それぞれシリンダの輸送ゾーンに移送させた。
ポリアミド12、ペレット5の輸送ゾーンにおける加熱温度を、それぞれ240℃、290℃とした。共ダイの温度を290℃として2層共押出しを行い、2層の積層チューブを得た。積層チューブの外径は8mm、内径は6mm、厚さは1mmであり、ポリアミド12の外層、含フッ素共重合体5の内層の厚みはそれぞれ0.75mm、0.25mmであった。
(4)得られたチューブの層間の剥離強度を測定した。含フッ素共重合体5の内層とポリアミド12の外層とは剥離せず、その剥離強度は、極めて大きく測定不可能であった。また、CM15に24時間浸漬後の剥離強度は25N/cm、161時間浸漬後の剥離強度は22N/cm、CE10に24時間浸漬後の剥離強度は剥離せず測定不可能であり、161時間浸漬後の剥離強度は20N/cmであり、高いものであった。
一方、当該ホースにCE10及びCM15を封入した場合の燃料透過係数は、CE10の場合188.5(mg/m2・day)、CM15の場合268.0(mg/m2・day)であり、当該積層チューブの燃料透過性(燃料バリア性)は良好ではなかった。
本発明の積層ホースは、耐熱性、耐薬品性、耐候性、燃料バリア性に優れ、かつ、層間接着性に優れ、さらに実施例に示されているように燃料に浸漬した場合の耐久性にも優れることから、特に自動車用燃料ホース等の用途に好適に使用することができる。

Claims (12)

  1. 含フッ素共重合体とポリアミドとの積層体からなる積層ホースにおいて、当該含フッ素共重合体が、(a)テトラフルオロエチレン及び/又はクロロトリフルオロエチレンに基づく繰り返し単位、(b)ジカルボン酸無水物基を有し、かつ、環内に重合性不飽和基を有する環状炭化水素モノマーに基づく繰り返し単位及び(c)その他の含フッ素モノマー(ただし、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンを除く。)に基づく繰り返し単位を含有し、(a)繰り返し単位、(b)繰り返し単位及び(c)繰り返し単位の合計モル量に対して、(a)が50〜99.89モル%、(b)が0.01〜5モル%、かつ、(c)が0.1〜49.99モル%であり、容量流速が0.1〜1000(mm3/秒)であることを特徴とする含フッ素共重合体とポリアミドとの積層ホース。
  2. 前記環状炭化水素モノマーが、下記式(1)〜(8)からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の積層ホース。
    Figure 0004771217
    (上記式(2)において、Rは炭素数1〜6程度の低級アルキル基、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択されるハロゲン原子、前記低級アルキル基の水素をこれらのハロゲン原子で置換したハロゲン化アルキル基を表す。)
    Figure 0004771217
    (上記式(5)〜(8)において、Rは炭素数1〜6程度の低級アルキル基、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択されるハロゲン原子、前記低級アルキル基の水素をこれらのハロゲン原子で置換したハロゲン化アルキル基を表す。)
  3. 前記環状炭化水素モノマーが、式(1)、式(2)、式(5)〜(8)(ここで、式(2)、式(5)〜(8)における置換基RはCH3である。)からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の積層ホース。
  4. 前記環状炭化水素モノマーが、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物である請求項1〜3のいずれかに記載の積層ホース。
  5. 前記(c)その他の含フッ素モノマーが、ヘキサフルオロプロピレン及びCF2=CFORf1(ここで、Rf1は炭素数1〜10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキル基を示す。)からなる群から選ばれる1種以上である請求項1〜4のいずれかに記載の積層ホース。
  6. 前記(a)繰り返し単位、(b)繰り返し単位及び(c)繰り返し単位の合計モル量に対して、(a)が50〜99.47モル%、(b)が0.03〜3モル%、かつ、(c)が0.5〜49.97モル%である請求項1〜5のいずれかに記載の積層ホース。
  7. 前記(a)繰り返し単位、(b)繰り返し単位及び(c)繰り返し単位の合計モル量に対して、(a)が50〜98.95モル%、(b)が0.05〜2モル%、かつ、(c)が1〜49.95モル%である請求項1〜5のいずれかに記載の積層ホース。
  8. 含フッ素共重合体が、テトラフルオロエチレン/CF2=CFOCF2CF2CF3/5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物共重合体、又は、
    テトラフルオロエチレン/CF2=CFOCF2CF2CF3/ヘキサフルオロプロピレン/5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物共重合体である請求項1に記載の積層ホース。
  9. 前記ポリアミドが、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、又は半芳香族系ポリアミド(ポリアミドMXD)である請求項1〜8のいずれかに記載の積層ホース。
  10. 前記含フッ素共重合体の内層とポリアミドの外層とが共押出し成形法で製造されたものである請求項1〜9のいずれかに記載の積層ホース。
  11. 燃料透過係数が、2〜150(mg/m2・day)である請求項1〜10のいずれかに記載の積層ホース。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の積層ホースからなる燃料ホース。
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