JP4833748B2 - 有機発光素子 - Google Patents

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Description

本発明は、照明光源、バックライト、フラットパネルディスプレイ等に用いられる有機発光素子に関するものであり、詳しくは、複数の発光性有機物質がドープされた有機発光層を備えた有機発光素子に関するものである。
照明光源、バックライト、フラットパネルディスプレイなどとして用いられる発光体は、高効率照明器具の実現、照明器具形状の自由化、液晶表示機を備える電子機器の小型化、長時間駆動化、フラットパネルディスプレイの薄型化等のために、高効率であり、かつ薄く軽量であるものが近年強く要求されている。
有機発光素子(有機EL素子)は以前より、上記の要求を満たす可能性を有する発光体として注目を集めており、盛んに研究開発が行われてきた。特に近年、電流−光変換効率100%を原理的に有するリン光発光材料の登場に伴い、有機発光素子の効率は飛躍的に増大し、有機発光素子の実用化可能領域は大きく広がってきた。
これまで、緑、赤など、一部の単色発光素子に関しては、実デバイスとして電流−光変換効率100%に相当すると考えられる高効率発光素子が実際に実現されている。青色発光素子に関しては、青色発光のエネルギーが大きいために、それに適した発光材料、周辺材料があまり進化しておらず、他の発光色を有する有機発光素子に対して開発が遅れていたが、最近になって、青色発光素子に適した発光材料や周辺材料が開発され、青色発光素子の効率も次第に向上しつつある。しかし、青色発光素子と、黄色〜赤色発光素子などを組み合わせることによって実現できる白色発光素子に関しては、まだまだ高効率のものが得られていないのが現状である。
これまでにリン光発光材料を用いた白色発光素子の構造としては、例えば、補色関係にある発光色を呈する複数の発光層を積層したもの、発光層の内部に励起エネルギーブロック層などを挿入したものなどが開示されている。しかし前者は、発光輝度により発光色が次第にシフトするという問題があり、また後者は、構造が比較的複雑であると共に、エネルギーブロック層を素子内に有するために駆動電圧が上昇するという問題があった。一方例えば特許文献1のように、発光層のキャリア輸送性に着目した発光層の配列に関する報告がなされているが、この方法では、発光層の特性に応じて発光層の積層順を変化させる必要があり、またリン光素子への応用に関しては言及されていない。
このように、複数の異なるリン光発光を呈する発光層を組み合わせた多色発光白色素子に関しては、それに適した構造がほとんど知られていないのが現状である。
特開2004−6165号公報
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、リン光発光を呈する発光層を組み合わせた有機発光素子において、高効率・高品位な白色発光を呈することができる有機発光素子を提供することを目的とするものである。
本発明の請求項1に係る有機発光素子は、陽極と陰極の間に発光層を備えて形成される有機発光素子において、少なくとも2つの異なる波長で発光する3層以上の発光層を積層して備えると共に、長波長の発光を呈する発光層が短波長の発光を呈する発光層で挟まれ、両端に位置する発光層の発光波長がこれらの間に挟まれる発光層の発光波長よりも短波長である積層構成に形成されており、長波長発光の発光層を構成するホスト材料と短波長発光の発光層を構成するホスト材料が同一のものであると共に各発光層にはスピン多重項からの発光を示す化合物がドーパントとして添加されており、且つ両端に位置する発光層におけるスピン多重項からの発光を示す化合物は、青色発光を呈するとともに電子輸送性を高める化合物であり、各発光層が接触して形成されていることを特徴とするものである。
この発明によれば、少なくとも2つの異なる波長で発光する3層以上の発光層を積層し、長波長の発光を呈する発光層が短波長の発光を呈する発光層で挟まれた積層構成に形成
することによって、印加電圧や通電電流を変化させた際の、有機発光素子の発光色の変化を小さく抑えることができるものであり、また長波長発光の発光層を構成するホスト材料と短波長発光の発光層を構成するホスト材料を同一のものにすることによって、隣合う発光層のホスト間のエネルギー移動による発光効率の低下を回避し、またホスト間界面のエネルギー障壁によるキャリアバランスの崩れや電圧上昇を回避することが可能になるものである。さらに少なくとも一部の発光層に発光層の電子輸送性を高める化合物がドーパントとして添加されているために、発光層内のキャリアバランスを適正化して発光効率を高めることができると共に、駆動電圧を低減することができるものである。そして各発光層にはスピン多重項からの発光を示す化合物がドーパントとして添加してあり、リン光発光を呈する発光層を備えた有機発光素子において、高効率・高品位な発光を呈する有機発光素子を得ることができるものである。
また請求項2の発明は、請求項1において、3つ以上の異なる波長で発光する3層以上の発光層を積層して備えることを特徴とするものである。
この発明によれば、印加電圧や通電電流を変化させた際の、有機発光素子の発光色の変化を小さく抑えることができるものである。
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、短波長発光のピーク波長が430nm〜520nmの範囲にあり、長波長発光のピーク波長が520〜650nmの範囲にあり、各発光層から発光される光の混合色が白色であることを特徴とするものである。
この発明によれば、高効率・高品位な白色発光を呈する有機発光素子を得ることができるものである。
本発明によれば、リン光発光を呈する複数の発光層を備えた多色発光有機発光素子において、高効率・高品位な発光を呈する有機発光素子を得ることができるものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明に係る有機発光素子は、陽極(アノード)と陰極(カソード)の間に発光層を備えて形成されるものである。図1はこのような有機発光素子の構造の一例を示すものであり、陽極となる電極1と陰極となる電極2の間に複数の発光層3a,3b,3cを積層して形成される発光部3と、発光部3と電極1との間にホール輸送層4を、発光部3と電極2との間に電子輸送層5を形成する有機膜を備え、これらを透明基板6の表面に積層したものである。電極1は光透過性の電極として、電極2は光反射性の電極として形成してある。また、図1において、ホール輸送層4や電子輸送層5の電極1,2側には、ホール注入層や電子注入層などを設けるようにしてもよいが、これらの図示は省略してある。
本発明において発光部3は、3層以上の発光層3a,3b,3cを積層して形成されるものである。積層数の上限は特に限定されるものではないが、実用上、概ね4程度が上限である。そして3層以上の各発光層3a,3b,3cは、少なくとも2つの異なる波長で発光するもの、すなわち少なくとも2つの発光色のものを組み合わせて用いるものであり、長波長の発光を呈する発光層が短波長の発光を呈する発光層に挟まれる位置関係になるように、発光層3a,3b,3cを積層して発光部3を形成するようにしてある。
発光層の発光色の組み合わせは、特に限定されるものではないが、同一の短波長で発光する発光層の間にこれよりも長波長で発光する発光層を積層する場合、2つの異なる波長で発光する組み合わせのときには、青/赤/青、青/橙/青、青/黄/青、青/緑/青、緑/橙/緑などを各発光層の発光色の積層構成として例示することができ、3つの異なる波長で発光する組み合わせのときには、青/橙/緑/青、緑/黄/橙/緑などを各発光層の発光色の積層構成として例示することができる。
また3層以上の発光層が3つ以上の異なる波長で発光する発光層の組み合わせの場合、積層の両端に位置する発光層の発光波長を異なる波長にし、両端の発光層の各発光波長がこの間に挟まれる発光層の発光波長よりも短波長になるような積層構成にすることもできる。このような発光層の組み合わせとしては、黄/橙/緑、青/橙/緑、青/黄/緑などの発光色の組み合わせや、あるいは前述のような青/橙/青などのように両端の発光層の発光色が同じでも、両端の発光色の発光波長が異なるようにしたものなどを、例として挙げることができる。
上記のような発光波長の関係を有する3層以上の発光層の組み合わせで発光部を形成することによって、有機発光素子への印加電圧や通電電流を変化させた際の、有機発光素子の発光色の変化を小さく抑えることができるものである。例えば、青/橙/青のような発光色の組み合わせで発光層を形成することによって、各発光層の発光領域が移動した場合にも、各発光層で発光される各色の発光バランスが比較的良好に保たれ、各色が混合されて有機発光素子から出射される色の変化を小さくすることができるのがその理由の一つである。また、小さいエネルギーギャップを有する長波長の発光層が大きなエネルギーギャップを有する短波長の発光層の間に配置されていることで、短波長の発光層から長波長の発光層への適切なエネルギー移動による発光バランスが向上する効果や、発光領域の電界強度依存性の抑制による効果もその理由の一つである。
本発明の有機発光素子において、長波長発光の発光層を構成するホスト材料と短波長発光の発光層を構成するホスト材料は同一のもので形成してある。短波長発光の発光層を構成するホスト材料としては、短波長発光を呈する発光ドーパントのエネルギーギャップ以上のエネルギーギャップを有する材料を用いるものであり、特に好ましい材料は、ホスト材料のT1レベル(三重項準位)が発光ドーパントのT1レベル以上のものである。青色発光ドーパント、例えばFIrpicのT1レベル以上のT1レベルを有するホスト材料としては、例えば[化1]に示すような、分子骨格にねじりを加えることによって共役系を切断した構造、共役系の小さいトリアリールアミン骨格、非共役系骨格などを有し、かつキャリア輸送性部位としてカルバゾールなどを含有する材料を挙げることができる。そして長波長発光の発光層を構成するホスト材料を短波長発光の発光層を構成するホスト材料と同一のものとすることによって、素子構成を単純化することができると共に、隣合う発光層のホスト間のエネルギー移動による発光効率の低下を回避し、またホスト間界面のエネルギー障壁によるキャリアバランスの崩れや電圧上昇を回避することが可能になり、効率を高めることができるものである。
Figure 0004833748
また本発明の有機発光素子において、3層以上の各発光層にはスピン多重項からの発光を示す化合物がドーパントとして添加してある。スピン多重項からの発光を示す化合物としては、特に限定されないが、例えばイリジウム、オスミウム、白金、金、ルテニウム、ロジウムなどの金属種を分子内に有する金属錯体など、これまでに知られている化合物や、同等の機能を有する各種化合物を挙げることができる。このように発光層にスピン多重項からの発光を示す化合物をドーパントすることによって、各発光層はリン光発光を呈するものである。
さらに本発明の有機発光素子において、3層以上の各発光層のうち少なくとも一部の発光層に、発光層の電子輸送性を高める化合物がドープしてある。発光層の電子輸送性を高める化合物としては、特に限定されないが、例えば、発光層を構成するホスト材料よりも電子輸送性が高い化合物や、金属錯体の配位子が電子輸送性を有し、その金属錯体を発光層に適した濃度でドープすることによって電子輸送性を高めることが可能な化合物などを、必要に応じて適宜用いることができる。また、それ単独ではさほど高い電子輸送性を持たないものであっても、発光ホスト(あるいはドーパント)との相互作用により全体として高い電子輸送性を発現するものであってもよい。
スピン多重項からの発光を示す材料と電子輸送性を高める材料とは、別々のものとして添加してもよいし、スピン多重項からの発光を示す化合物が同時に発光層の電子輸送性を高められる化合物である場合には、この化合物を単独で用いても良い。例えば、前述の青色発光材料FIrpicもその一例である。別々に添加する場合には、電子輸送性を高める材料が発光に悪影響を与えないことが必要である。発光層の電子輸送性を高めることによって、発光部内のキャリアバランスを適正化して発光効率を高めることができると共に、駆動電圧を低減することができるものである。
発光層の電子輸送性を高める化合物をドープすることによって発光層の電子移動度が向上することは、発光層を構成するホスト材料とゲスト材料からなる膜の電子移動度を直接的にあるいは間接的に測定することによって確認できる。例えば、光照射によってキャリアを発生させ、一定の電界の下でのキャリア走行時間から移動度を見積もるいわゆるTOF法、パルス電界印加によってキャリアを注入し、一定の電界の下でのキャリア走行時間から移動度を見積もるいわゆるダークインジェクション法、その他、分光インピーダンス法や空間電荷制限電流から移動度を見積もる方法などや、n型層で評価対象の膜をサンドイッチしたデバイスへの電子電流から電子移動度を見積もる方法などを挙げることができる。電子移動度は、必ずしも絶対値として算出する必要はなく、ドーパントの添加によって電子移動度が増大したか否かを判断できる方法であればかまわない。
また、本発明の有機発光素子は、短波長発光の発光層において発光のピーク波長が430〜520nmの範囲に、且つ長波長発光の発光層において発光のピーク波長が520〜650nmの範囲になるように、各発光層の発光ピーク波長を設定するのが好ましい。このようなピーク波長を呈する発光層を組み合わせることによって、各発光層で発光した光が混合されて有機発光素子から出射される光を白色にすることができ、白色発光する有機発光素子を得ることができるものである。
本発明の有機発光素子(有機EL素子)は、発光層が上記のような構成のものであればよく、任意の構造に形成することができる。以下図1に示した、陽極/ホール輸送層/3層の発光層/電子注入層/陰極からなる構造の有機発光素子について、その材料の例を説明する。
上記のホール輸送層を構成する材料としては、ホールを輸送する能力を有し、陽極からのホール注入効果を有するとともに、有機発光層に対して優れたホール注入効果を有し、また電子のホール輸送層への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物を挙げることができる。このような化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPBまたはα−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、2−TNATA、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNBなどを代表例とするトリアリールアミン系化合物を挙げることができる。特に発光層のドーパントのエネルギーギャップ及び/又はT1準位、及び発光層ホストのエネルギーギャップ及び/又はT1準位より大きな、エネルギーギャップ及び/又はT1準位を有するワイドエネルギーギャップ材料であることが好ましく、このような化合物としては、例えば[化2]に示すような、テトラフェニルシラン骨格を持つトリアリールアミン誘導体、シクロヘキサン環等共役環を持たない部位をトリアリールアミン残基間に備えるトリアリールアミン誘導体、クオーターフェニレン骨格や、ヘキサフェニルベンゼン骨格など広いエネルギーギャップを有する骨格を持つトリアリールアミン誘導体などを挙げることができる。あるいは、カルバゾール基を含むアミン化合物、フルオレン誘導体を含むアミン化合物なども前述の特性に応じて適宜使用される。
Figure 0004833748
また、上記の電子輸送層を構成する材料としては、電子を輸送する能力を有し、陰極からの電子注入効果を有するとともに、有機発光層に対して優れた電子注入効果を有し、さらにホールの電子輸送層への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物を挙げることができる。このような化合物としては、例えば、バソフェナントロリン、バソクプロイン、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ピリジン、フランなど、複素環を有する化合物およびそれらの誘導体を挙げることができる。特に発光層のドーパントのエネルギーギャップ及び/又はT1準位、及び発光層ホストのエネルギーギャップ及び/又はT1準位より大きな、エネルギーギャップ及び/又はT1準位を有するワイドエネルギーギャップ材料であることが好ましい。このような化合物としては、例えば、1,3,5−Tris[3,5−bis(3−pyridinyl)phenyl]benzeneなどピリジン環を含有する誘導体、トリメシチルボラン骨格を含有するピリジン誘導体などを挙げることができるが、勿論これらに限定されるものではない。
また、ホール輸送層と陽極の間にはホール注入層を、電子輸送層と陰極との間には電子注入層を設けてもよい。これらのホール注入層や電子注入層は、上記のホール輸送層や電子輸送層を構成する物質やその他の材料で電極からのキャリア注入に優れる材料を単独で用いて構成してもよく、あるいは、有機材料と電荷移動錯体を形成する金属、半導体、有機材料、金属酸化物、金属炭化物、金属ホウ化物、金属窒化物、アクセプタガス等、ルイス酸やルイス塩基としてあるいはブレンステッド酸やブレンステッド塩基として機能する材料を混合または積層して構成してもよい。例えば、ホール注入層は、フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、スターバーストアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、チオフェン誘導体等の電子供与が可能な低分子化合物、高分子化合物など任意のものを、単独で、あるいは、例えば酸化モリブデン、酸化レニウム、酸化タングステン、酸化バナジウム、臭素、塩化鉄、塩化チタン、F4TCNQ、DDQなどと混合または積層して形成することができ。また電子輸送層は例えば、上記の電子輸送層を構成する材料やフタロシアニン類、ポルフィリン類その他の電子受容が可能な低分子化合物、高分子化合物など任意のものを単独で、あるいはアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、あるいは[化3]のような有機ドナー類を混合もしくは積層した状態で用いて形成することができる。また、金属化合物を成膜時もしくは成膜後に分解や還元することによって金属成分を遊離させることによって混合もしくは積層膜を形成するような構造でもかまわない。例えば、BCP(バソクプロイン)にCsを混合する場合、AlqにLiq([化4])を積層した後にAlを蒸着することによってその還元によるLi金属を界面に発生させる場合、BCPにCsCOを積層または混合する場合、などがその例である。
Figure 0004833748
Figure 0004833748
さらに、有機発光素子を構成するその他の部材である、積層された素子を保持する基板、陽極、陰極等には、従来から使用されているものをそのまま使用することができる。
基板は、発光層で発光した光が基板を通して出射される場合には、光透過性を有するものであり、無色透明の他に、多少着色されているものであっても、すりガラス状のものであってもよい。例えば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどの透明ガラス板や、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、エポキシ、フッ素系樹脂等の樹脂、有機無機バイブリッド材料などから任意の方法によって作製されたプラスチックフィルムやプラスチック板などを用いることができる。またさらに、基板内に基板の母剤と屈折率の異なる粒子、粉体、泡等を含有することによって、光拡散効果を有するものも使用可能である。表面形状を付与することによって光の取り出し効果を高くしたものも好ましい。また、基板を通さずに光を射出させる場合、基板は必ずしも光透過性を有するものでなくてもかまわないものであり、素子の発光特性、寿命特性等を損なわない限り、任意の基板を使用することができる。特に、通電時の素子の発熱による温度上昇を軽減するために、熱伝導性の高い基板を使うことが好ましい。
上記陽極は、素子中にホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、電気伝導性化合物、あるいはこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、仕事関数が4eV以上のものを用いるのがよい。このような陽極の材料としては、例えば、金などの金属、CuI、ITO(インジウム−スズ酸化物)、SnO、ZnO、IZO(インジウム−亜鉛酸化物)等、導電性高分子、カーボンナノチューブなどの導電性光透過性材料を挙げることができる。陽極は、例えば、これらの電極材料を、基板の表面に真空蒸着法やスパッタリング法、塗布等の方法により薄膜に形成することによって作製することができる。また、発光層における発光を陽極を透過させて外部に照射するためには、陽極の光透過率を70%以上にすることが好ましい。さらに、陽極のシート抵抗は数百Ω/□以下とすることが好ましく、特に好ましくは100Ω/□以下とするものである。ここで、陽極の膜厚は、陽極の光透過率、シート抵抗等の特性を上記のように制御するために、材料により異なるが、500nm以下、好ましくは10〜200nmの範囲に設定するのがよい。尚、前記好適条件は、ホール注入層の使用や、補助電極の使用によって適宜変化してもよい。
また上記陰極は、発光層中に電子を注入するための電極であり、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、仕事関数が5eV以下のものであることが好ましい。このような陰極の電極材料としては、アルカリ金属、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属等、およびこれらと他の金属との合金、例えばナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム、マグネシウム、マグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金、Al/LiF混合物を例として挙げることができる。またアルミニウム、Al/Al混合物なども使用可能である。また、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、あるいは金属酸化物を陰極の下地として用い、さらに上記の仕事関数が5eV以下である材料(あるいはこれらを含有する合金)を1層以上積層するようにしてもよい。例えば、アルカリ金属/Alの積層、アルカリ金属のハロゲン化物/アルカリ土類金属/Alの積層、Al/Alの積層などを例として挙げることができ。また、ITO、IZOなどに代表される透明電極を用い、陰極側から光を取り出す構成にしても良い。
陰極は、例えば、これらの電極材料を真空蒸着法やスパッタリング法等の方法により、薄膜に形成することによって作製することができる。発光層における発光を陽極側に照射するためには、陰極の光透過率を10%以下にすることが好ましい。また反対に、陰極を透明電極として形成して、陰極側から発光を取り出す場合には、陰極の光透過率を70%以上にすることが好ましい。この場合の陰極の膜厚は、陰極の光透過率等の特性を制御するために、材料により異なるが、通常500nm以下、好ましくは100〜200nmの範囲とするのがよい。これらについても陽極と同様、電子注入層や補助電極の使用によって、好適な条件が適宜変化してもよい。
さらに、陰極上にAl等の金属をスパッタで積層したり、フッ素系化合物、フッ素系高分子、その他の有機分子、高分子等を蒸着、スパッタ、CVD、プラズマ重合、塗布した後の紫外線硬化、熱硬化その他の方法で薄膜として形成し、保護膜としての機能をもたせるようにすることも可能である。
また、本発明の有機発光素子は、複数の発光部が中間層である等電位面を形成する層もしくは電荷発生層を介して積層された、いわゆるマルチフォトン型、マルチユニット型、積層型、タンデム型構造を有するものであってもよい。等電位面形成層もしくは電荷発生層の材料としては、例えばAg、Au、Al等の金属薄膜、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化レニウム、酸化タングステン等の金属酸化物、ITO、IZO、AZO、GZO、ATO、SnO等の透明導電膜、いわゆるn型半導体とp型半導体の積層体、金属薄膜もしくは透明導電膜とn型半導体及び/又はp型半導体との積層体、n型半導体とp型半導体の混合物、n型半導体及び/又はp型半導体と金属との混合物、などを挙げることができる。n型半導体やp型半導体としては、無機材料であっても、有機材料であってもよく、あるいは有機材料と金属との混合物や、有機材料と金属酸化物や、有機材料と有機系アクセプタ/ドナー材料や、無機系アクセプタ/ドナー材料等の組合わせによって得られるものであってもよく、特に制限されることなく必要に応じて選定して使用することができる。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。尚、材料の電子移動度は、波長337nmに於ける吸光度が約2になる膜厚(10μm以下)の単独膜もしくはドープ膜を備えた素子(厚み110nmのITOの上に単独膜もしくはドープ膜の試料材料の膜を形成し、さらにその上に厚み20nmのAlを形成したもの)を作製し、住友重機械アドバンストマシナリー株式会社製のタイムオブフライト法測定装置「TOF401型」を用いて測定を行った。測定時の電圧は、電界強度が3.6×10V/cmとなるように、ITO側に正、Al側に負の電圧を印加し、Al電極側からNレーザの入射を行なった。
(実施例1)
基板として、厚み1,100ÅのITOが成膜された0.7mm厚のガラス基板を用意した。陽極を形成するITOのシート抵抗は、約12Ω/□である。これを洗剤、イオン交換水、アセトンで各10分間超音波洗浄をした後、IPA(イソプロピルアルコール)で蒸気洗浄して乾燥した。
さらにUV/O処理した後、この基板を真空蒸着装置にセットし、1×10−4Pa以下の減圧雰囲気下で、ホール注入層として、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)と酸化モリブデンの共蒸着体(モル比1:1)を膜厚200Åで蒸着した。次にホール輸送層としてα−NPDを膜厚100Å、DTASi([化5])を膜厚100Åで蒸着した。
Figure 0004833748
次いで、第1の発光層として、4CzPBP([化6])にFIrpicを15質量%ドープした膜厚40Åの層を、第2の発光層として、同一ホストの4CzPBPにPQ2Ir(acac)([化7])を3質量%ドープした膜厚5Åの層を、第3の発光層として、さらに同一ホストの4CzPBPにFIrpicを15質量%ドープした膜厚55Åの層を、この順に蒸着して、3層の発光層からなる発光部を形成した。
Figure 0004833748
Figure 0004833748
次に電子輸送層として、TmPyPhB([化8])を600Åの膜厚で成膜し、さらに陰極として、LiFを膜厚5Å、アルミニウムを膜厚800Åで成膜することによって、有機発光素子を得た。尚、有機発光素子の形状は図2に示す通りである。
Figure 0004833748
ここで、第1と第3の発光層のドーパントであるFIrpicの発光ピーク波長は480nm前後であり、第2の発光層のドーパントであるPQ2Ir(acac)の発光ピーク波長は600nm前後であり、第1と第3の発光層は短波長発光、第2の発光層は長波長発光である。
また、第1〜第3の各発光層のホスト材料である4CzPBPの電子移動度は2×10−3cm/Vsであり、この4CzPBPにFIrpicを15質量%ドープした膜の電子移動度は4×10−3cm/Vsである。従って、4CzPBPにドーパントとしてFIrpicを添加することによって電子移動度が高められ、第1と第3の発光層は電子輸送性が高められていることが確認される。
(実施例2)
第1の発光層として、4CzPBPにFIrpicを15質量%ドープした膜厚40Åの層を、第2の発光層として、同一ホストの4CzPBPにBtp2Ir(acac)([化9])を3質量%ドープした膜厚5Åの層を、第3の発光層として、さらに同一ホストの4CzPBPにFIrpicを15質量%ドープした膜厚55Åの層を、この順に蒸着して、3層の発光層からなる発光部を形成した。これ以外は実施例1と同様にして、有機発光素子を得た。
Figure 0004833748
ここで、第1と第3の発光層のドーパントであるFIrpicの発光ピーク波長は480nm前後であり、第2の発光層のドーパントであるBtp2Ir(acac)の発光ピーク波長は620nm近傍であり、第1と第3の発光層は短波長発光、第2の発光層は長波長発光である。
(実施例3)
第1の発光層として、CDBP([化10])にFIrpicを15質量%ドープした膜厚40Åの層を、第2の発光層として、同一ホストのCDBPにPQ2Ir(acac)を3質量%ドープした膜厚5Åの層を、第3の発光層として、さらに同一ホストのCDBPにFIrpicを15質量%ドープした膜厚55Åの層を、この順に蒸着して、3層の発光層からなる発光部を形成した。これ以外は実施例1と同様にして、有機発光素子を得た。
Figure 0004833748
ここで、第1と第3の発光層のドーパントであるFIrpicの発光ピーク波長は480nm前後であり、第2の発光層のドーパントであるPQ2Ir(acac)の発光ピーク波長は600nm前後であり、第1と第3の発光層は短波長発光、第2の発光層は長波長発光である。
また、第1〜第3の各発光層のホスト材料であるCDBPの電子移動度は5×10−4cm/Vsであり、このCDBPにFIrpicを15質量%ドープした膜の電子移動度は7×10−4cm/Vsである。従って、CDBPにドーパントとしてFIrpicを添加することによって電子移動度が高められ、第1と第3の発光層は電子輸送性が高められていることが確認される。
(実施例4)
第1の発光層として、4CzPBPにFIrpicを15質量%ドープした膜厚40Åの層を、第2の発光層として、同一ホストの4CzPBPにPQ2Ir(acac)を3質量%ドープした膜厚5Åの層を、第3の発光層として、同一ホストの4CzPBPにFIr6([化11])を13質量%ドープした膜厚55Åの層を、この順に蒸着して、3層の発光層からなる発光部を形成した。これ以外は実施例1と同様にして、有機発光素子を得た。
Figure 0004833748
ここで、第1の発光層のドーパントであるFIrpicの発光ピーク波長は480nm前後、第2の発光層のドーパントであるPQ2Ir(acac)の発光ピーク波長は600nm前後、第3の発光層のドーパントであるFIr6の発光ピーク波長は450nmと495nm近傍であり、第1と第3の発光層は短波長発光、第2の発光層は長波長発光である。
(比較例1)
第1の発光層として、ホスト材料4CzPBPにFIrpicを15質量%ドープした膜厚40Åの層を、第2の発光層として、ホスト材料CBPにPQ2Ir(acac)を3質量%ドープした膜厚5Åの層を、第3の発光層として、ホスト材料4CzPBPにFIrpicを15質量%ドープした膜厚55Åの層を、この順に蒸着して、3層の発光層からなる発光部を形成した。これ以外は実施例1と同様にして、有機発光素子を得た。
(比較例2)
第1の発光層として、4CzPBPにPQ2Ir(acac)を3質量%ドープした膜厚10Åの層を、第2の発光層として4CzPBPにFIrpicを15質量%ドープした膜厚90Åの層を、この順に蒸着して、2層の発光層からなる発光部を形成した。これ以外は実施例1と同様にして、有機発光素子を得た。
(比較例3)
第1の発光層として、CBPにFIrpicを15質量%ドープした膜厚40Åの層を、第2の発光層として、CBPにBtp2Ir(acac)を3質量%ドープした膜厚5Åの層を、第3の発光層として、CBPにFIrpicを15質量%ドープした膜厚55Åの層を、この順に蒸着して、3層の発光層からなる発光部を形成した。これ以外は実施例1と同様にして、有機発光素子を得た。
ここで、第1と第3の発光層のドーパントであるFIrpicの発光ピーク波長は480nm前後であり、第2の発光層のドーパントであるBtp2Ir(acac)の発光ピーク波長は620nm近傍であり、第1と第3の発光層は短波長発光、第2の発光層は長波長発光である。
また、第1〜第3の各発光層のホスト材料であるCBPの電子移動度は7×10−4cm/Vsであり、CBPにFIrpicを15質量%ドープした膜の電子移動度は5×10−5cm/Vs、CBPにBtp2Ir(acac)を3質量%ドープした膜の電子移動度は1×10−6cm/Vsである。従って、CBPにドーパントとしてFIrpicやBtp2Ir(acac)を添加すると電子移動度は低下するものであり、第1〜第3の各発光層は電子輸送性が低下していることが確認される。
上記のように実施例1〜4及び比較例1〜3で得た有機発光素子の色度変化を、CIE色度座標上での座標シフト量で評価した。測定は、有機発光素子を電源(KEYTHLEY2400)に接続し、マルチチャンネルアナライザー(浜松ホトニクス株式会社製「PMA-11」)を用いて行なった。そして輝度50cd/m、1000cd/m、4000cd/mになるように通電したときの正面発光のCIE色座標を表1に示す。また、輝度100cd/m時の電流効率も併せて表1に示す。
Figure 0004833748
表1にみられるように、各実施例の有機発光素子は、輝度変化に伴う色度変化量が小さく、また高い電流効率を示すものであった、一方、3層の発光層の全てに同じホスト材料を用いなかった比較例1の有機発光素子、2層の発光層で形成した比較例2の有機発光素子、発光層に電子輸送性を高めるドーパントを添加しない比較例3の有機発光素子は、輝度変化に伴う色度変化量が大きく、また電流効率も実施例のものに比して劣るものであった。
本発明の実施の形態の一例における有機発光素子の層構成を示す概略図である。 同上の実施例における有機発光素子の形状を示す平面図である。
符号の説明
1 電極(陽極)
2 電極(陰極)
3 発光部
3a,3b,3c 発光層
4 ホール輸送層
5 電子輸送層

Claims (3)

  1. 陽極と陰極の間に発光層を備えて形成される有機発光素子において、少なくとも2つの異なる波長で発光する3層以上の発光層を積層して備えると共に、長波長の発光を呈する発光層が短波長の発光を呈する発光層で挟まれ、両端に位置する発光層の発光波長がこれらの間に挟まれる発光層の発光波長よりも短波長である積層構成に形成されており、長波長発光の発光層を構成するホスト材料と短波長発光の発光層を構成するホスト材料が同一のものであると共に各発光層にはスピン多重項からの発光を示す化合物がドーパントとして添加されており、且つ両端に位置する発光層におけるスピン多重項からの発光を示す化合物は、青色発光を呈するとともに電子輸送性を高める化合物であり、各発光層が接触して形成されていることを特徴とする有機発光素子。
  2. 3つ以上の異なる波長で発光する3層以上の発光層を積層して備えることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
  3. 短波長発光のピーク波長が430nm〜520nmの範囲にあり、長波長発光のピーク波長が520〜650nmの範囲にあり、各発光層から発光される光の混合色が白色であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機発光素子。
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