JP4818535B2 - 偏心揺動型内接噛合遊星歯車構造を採用した変速機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、産業機器、輸送機器等に使用される偏心揺動型内接噛合遊星歯車構造を採用した変速機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、偏心体を有する偏心体軸と、該偏心体に回転自在に取付けられた外歯部材と、該外歯部材に内接噛合する内歯部材と、前記外歯部材の軸方向の少なくとも一方の側に配置され、該外歯部材の自転成分のみを伝達する手段を介して該外歯部材に連結されたキャリヤ部材と、を含んでなる偏心揺動型内接噛合遊星歯車構造を採用した変速機が知られている。
【0003】
このような変速機の従来例を図4に示す。図4に示す変速機100の偏心体軸102には位相差120°の3つの偏心体104A、104B及び104Cが一体化して形成されている。それぞれの偏心体104A、104B及び104Cには軸受105A、105B及び105Cを介して外歯部材106A、106B及び106Cが取付けられている。
【0004】
外歯部材を3枚として複列にしているのは、主に伝達容量の増大、強度の維持、回転バランスの保持を図るためである。
【0005】
外歯部材106A、106B及び106Cの外周にはトロコイド歯形や円弧歯形等の外歯が設けられている。この外歯には内歯部材108が内接噛合している。
【0006】
この内歯部材108は、ピン状部材で該第1のケース部材110Aに回転し易く保持されている。
【0007】
第1のケース部材110Aの図中左側には第2のケース部材110B、第3のケース部材110Cがこの順で連結されている。更に第1のケース部材110Aの図中右側は第4のケース部材110Dにより閉塞されている。
【0008】
外歯部材106A、106B及び106Cにはそれぞれ円周方向適宜な間隔で複数の内ローラ孔111A、111B及び111Cが形成され、複数の内ローラ112及び内ピン114が挿入されている。
【0009】
これら内ピン114は、キャリヤ部材116に連結されている。このキャリヤ部材116は、外歯部材106A、106B及び106Cの軸方向の一方の側(第4のケース部材110Dと反対側)に配置され、クロスローラであるキャリヤ部材ベアリング118をの内輪を兼ねており、キャリヤ部材ベアリング118の外輪を兼ねる第2のケース部材110B及び第3のケース部材110Cに回転自在に支持されている。キャリヤ部材116と第3のケース部材110Cとの間の隙間にはシール部材119が設けられている。
【0010】
偏心体軸102は、外歯部材106A、106B及び106Cの軸方向両側に配置された2つの偏心体軸ベアリング120及び122を介して第4のケース部材110D及びキャリヤ部材116により回転自在に支持されている。
【0011】
偏心体軸102が1回転すると、偏心体104A、104B及び104Cも1回転する。これら偏心体104A、104B及び104Cの1回転により、外歯部材106A、106B及び106Cも偏心体軸102の周りで揺動回転を行おうとするが、内歯部材108によりその自転が拘束されるため、外歯部材106A、106B及び106Cは、内歯部材108に内接しながら僅かに自転しつつ公転することになる。
【0012】
いま、例えば外歯部材106A、106B及び106Cの歯数をN、内歯部材108の歯数をN+1とした場合、その歯数差は1である。そのため、偏心体軸102の1回転毎に外歯部材106A、106B及び106Cはケース部材110と一体化された内歯部材108に対して1歯分だけずれることとなる。即ち、偏心体軸102の1回転が外歯部材106A、106B及び106Cの−1/Nの回転に減速されたこととなる。
【0013】
これら外歯部材106A、106B及び106Cの回転は、内ローラ孔111A、111B及び111Cと内ローラ112との隙間によってその公転成分が吸収され、自転成分のみが内ピン114を介してキャリヤ部材116に伝達される。
【0014】
この結果、偏心体軸102とキャリヤ部材116との間で減速比1/Nの減速又は増速比Nの変速が実現される。
【0015】
なお、キャリヤ部材を固定して、偏心体軸及び内歯部材の間で増減速する変速機とすることもでき、更に、偏心体軸を固定して、キャリヤ部材及び内歯部材間で増減速する変速機とすることもできる。
【0016】
なお、外歯部材106A、106B及び106Cの揺動回転により、偏心体104A、104B及び104Cを介して偏心体軸102にはラジアル方向の反力が作用するが、2つの偏心体軸ベアリング120及び122により両持ち状態で安定支持されているため問題とならない。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら偏心体軸ベアリング120と122とは、第4のケース部材110D、第1のケース部材110A、第2のケース部材110B、第3のケース部材110C、キャリヤ部材ベアリング118及びキャリヤ部材116を介して位置決めされるため、一方の偏心体軸ベアリングに対する他方の偏心体軸ベアリングの取付誤差の管理が難しいという問題があった。
【0018】
即ち、2つの偏心体軸ベアリングの間に多くの部材が介在するため、これら介在する部材の製造誤差が累積し、結果として2つの偏心体軸ベアリングの相対的な取付誤差が大きくなり易かった。
【0019】
2つの偏心体軸ベアリングの相対的な取付誤差が大きいと、偏心体軸の回転の中心がずれてしまい、結果としてこの芯ずれが回転性能に悪影響を与えることとなる。
【0020】
このような取付誤差を小さくするためには、2つの偏心体軸ベアリングの間に介在する部材を高精度で加工する必要があった。このため、変速機全体の製造コストが高くなるという問題があった。
【0021】
これに対して、2つの偏心体軸ベアリングの取付スパンを大きくすれば相対的な取付誤差を小さくすることができるという発想がある。しかしながら、2つの偏心体軸ベアリングの取付スパンを大きくすると変速機が軸方向に大型化するという新たな問題を発生させることとなる。
【0022】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであって、取付誤差を小さくし、偏心体軸の回転の中心のずれを小さく抑えることができる低コストでコンパクトな偏心揺動型内接噛合遊星歯車構造を採用した変速機を提供することをその課題とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明は、偏心体を有する偏心体軸と、該偏心体に回転自在に取付けられた外歯部材と、該外歯部材に内接噛合する内歯部材と、前記外歯部材の軸方向の一方の側であってモータが連結される側と反対側に配置され、該外歯部材の自転成分のみを伝達する手段を介して該外歯部材に連結されたキャリヤ部材と、を含んでなる偏心揺動型内接噛合遊星歯車構造を採用した変速機において、前記偏心体軸に、前記外歯部材の前記軸方向の前記一方の側であって前記モータが連結される側と反対側に延在するベアリング装着部を形成すると共に、前記キャリヤ部材と該ベアリング装着部との間に2つの偏心体軸ベアリングを前記軸方向に並べて設置し、前記偏心体軸を該2つの偏心体軸ベアリングのみによって片持ち状態で支持するようにしたことにより、上記課題を達成するものである。
【0024】
このようにすることで、2つの偏心体軸ベアリングが一のキャリヤ部材のみに取付けられることとなり、2つの偏心体軸ベアリングの相対的な取付誤差を大幅に低減することが可能となる。
【0025】
例えば、キャリヤ部材を加工する際に、該キャリヤ部材を工作機械にチャックし、このチャックを解除することなく連続して2つの偏心体軸ベアリングの装着部を加工するようにすれば、これら装着部の軸芯を高精度で一致させることができ、低コストで、2つの偏心体軸ベアリングの取付誤差を大幅に低減することができる。
【0026】
本発明に係る発想は、2つの偏心体軸ベアリングのスパンを大きくすることによって相対的な取付誤差を小さくするという前述した発想とは一見矛盾する。しかし、多くの部品を挟んだ上でスパンを大きくとるより、単一の部品間で精度良く配置された方が、(例えスパン自体は短くても)軸心のずれや振れはむしろ小さく、特に偏心体軸が径の大きな中空構造の場合にその効果が著しいことが発明者の試験によって確認されている。本発明は、この知見に基づいて為されたものである。
【0027】
なお、前記キャリヤ部材を支持するキャリヤ部材ベアリングを、前記2つの偏心体軸ベアリングのそれぞれの軸方向離反側の端部を通り前記軸方向に垂直な一対の平面に挟まれた空間に設置してもよい。
【0028】
なお、ここで「一対の平面に挟まれた空間にキャリア部材ベアリングを設置する」とは、キャリヤ部材ベアリング全体を一対の平面に挟まれた空間内に設置することのみならず、キャリヤ部材ベアリングの一部を、一対の平面に挟まれた空間に設置することをも含むものである。
【0029】
このようにすることで、キャリヤ部材を軸方向にコンパクトとして、変速機全体を軸方向にコンパクト化することができる。
【0030】
又、前述したように、前記偏心体軸が中空構造であり、且つ、該偏心体軸の内径が前記内歯部材の内歯のピッチ円直径の0.2倍以上に設定されているような場合であっても、本発明によれば軸心のずれを最小限に抑えることができる。
【0031】
偏心体軸を径の大きな中空構造としたいという要請は、種々の用途において強く存在する。本発明の構成では、偏心体軸ベアリングは外歯部材の軸方向の一方の側にのみ設けられているので、外歯部材からの反力が作用する偏心体軸を片持状態で支持することとなるが、偏心体軸の外径が大きくなることに伴って必然的に大きくなってくる大型の偏心体軸ベアリングによって偏心体軸を支持することになるため、例え中空孔の内径が大きく、又、片持ち状態であっても、偏心体軸の十分な支持剛性を確保することができる。
【0032】
特に、偏心体軸の内径が内歯部材の内歯のピッチ円直径の0.3倍以上となるような大きい内径を有するタイプの場合、従来の構造で良好に軸ずれを抑制するのは至難であったが、本発明によれば、(大型の偏心体軸ベアリングにより)精度の良い組付けが実現できる。
【0033】
偏心体軸の十分な支持剛性を確保することで、偏心体軸の回転の振れを更に小さく抑えることができる。即ち、このような中空構造の偏心体軸を有する変速機に対して本発明を適用すれば、特に本発明の大きな効果を期待することができる。
【0034】
又、前記内歯部材が設けられたケース部材を備えて該ケース部材を筒状とし、且つ、前記外歯部材の軸方向の一方の側にのみ前記キャリヤ部材を配置すると共に、他方の側に、前記ケース部材と前記偏心体軸との間の隙間を閉塞するリング板状体のシール部材を備えてもよい。
【0035】
ケース部材を加工が容易な筒状とすることにより、ケース部材の加工コストを低減することができる。更に、本発明は、外歯部材の軸方向の一方の側にのみ偏心体軸ベアリングを設置するようにしているため、他方の側に偏心体軸を支持するための剛性の高いケース部材を設ける必要がない。このため、剛性が低い簡単な構造のリング板状体のシール部材によりケース部材と偏心体軸との間の隙間の閉塞とシールを兼用することができ、これにより変速機を一層簡単な構造とし、変速機のコスト低減を図ることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の例を詳細に説明する。
【0037】
図1は、本発明の実施の形態の第1例に係る偏心揺動型内接噛合遊星歯車構造を採用した変速機の全体構造を示す側断面図である。
【0038】
以下の説明において、図4に示す前記従来公知例の構成と同一又は類似の部分については、図4と同一符号を付することとし説明を省略する。
【0039】
偏心体軸12には、外歯部材106A、106B及び106Cの軸方向の一方の側に延在するベアリング装着部14が形成されると共に、該一方の側にキャリヤ部材16が配置されている。
【0040】
該キャリヤ部材16とベアリング装着部14との間には2つの偏心体軸ベアリング18A及び18Bが軸方向に並んで設置され、これら2つの偏心体軸ベアリング18A及び18Bのみにより、キャリヤ部材16が偏心体軸12を支持している。
【0041】
偏心体軸12は中空構造とされ、該偏心体軸12の内径は内歯部材108のピッチ円直径の(0.2倍以上の)約0.36倍とされている。
【0042】
又、偏心体軸12は、ベアリング装着部14と反対側の軸方向にも突出し、該突出端部12Aにおいてモータ等の外部機械と連結可能とされている。
【0043】
偏心体軸ベアリング18A、18Bはこの順で外歯部材106Aから離反するように軸方向に並んで配置されている。これら偏心体軸ベアリング18A及び18Bはボールベアリングで、偏心体軸ベアリング18Bの外輪と内輪の間には、シール部材20が設けられている。
【0044】
キャリヤ部材16を支持するキャリヤ部材ベアリング118はクロスローラで、2つの偏心体軸ベアリング18A及び18Bのそれぞれの軸方向離反側の端部を通り軸方向に垂直な一対の平面に挟まれた空間におけるキャリヤ部材16と第2のケース部材110B及び第3のケース部材110Cとの間に設置されている。
【0045】
第1のケース部材110Aにおける軸方向の第2のケース部材110Bと反対側は、第4のケース部材22により閉塞されている。この第4のケース部材22は、図4における第4のケース部材110Dに対して、内周部が小径のリング板状とされている。この第4のケース部材22と偏心体軸12との間にはシール部材24が設けられている。
【0046】
次に変速機10の作用について説明する。
【0047】
偏心体軸ベアリング18A及び18Bは偏心体軸12と一のキャリヤ部材16との間に装着されているので、これら2つの偏心体軸ベアリングの相対的な取付誤差を容易に小さく抑えることができる。
【0048】
例えば、キャリヤ部材16を加工する際に、該キャリヤ部材16を工作機械にチャックし、一方の偏心体軸ベアリングの装着部を加工した後、チャックを解除することなく連続して他方の偏心体軸ベアリングの装着部を加工するようにすれば、2つの偏心体軸ベアリングの装着部の軸心を高精度で一致させることができる。
【0049】
これにより該キャリヤ部材16に装着される2つの偏心体軸ベアリングの相対的な取付誤差が小さく抑えられ、偏心体軸12の回転の振れを抑えることができる。又、キャリヤ部材16の加工も容易であり、該キャリヤ部材16を低コストで加工することができる。
【0050】
偏心体軸12が1回転すると、偏心体104A、104B及び104Cも1回転し、外歯部材106A、106B及び106Cは内歯部材108により自転を拘束されつつ、該内歯部材108と内接噛合しながら揺動回転する。
【0051】
これら外歯部材106A、106B及び106Cの揺動回転の自転成分のみが内ローラ孔111A、111B及び111Cから内ローラ112及び内ピン114を介してキャリヤ部材16に伝達される。
【0052】
これにより偏心体軸12の回転が1/Nに減速されてキャリヤ部材16に伝達される。
【0053】
偏心体軸12には、外歯部材106A、106B及び106Cからの反力が偏心体104A、104B及び104Cを介して作用する。偏心体軸12は2つの偏心体軸ベアリング18A及び18Bを介してキャリヤ部材16に片持ち状態で支持されているが、該偏心体軸12は内歯部材108のピッチ円直径の約0.36倍の内径を有する中空構造とされているため、該偏心体軸12は外径が大きい。このため、偏心体軸12は曲げ剛性が高く、更に、2つの偏心体軸ベアリング18A及び18Bの定格荷重も大きいため、片持ち状態であっても偏心体軸の支持剛性が十分に確保されている。
【0054】
又、偏心体軸12は中空構造とされているので、大きな外径を有しているにも拘らず軽量である。更に、変速機10に連結されるモータ等の外部機械のための配線又は配管等を偏心体軸12の中空孔内に挿通させるようにすれば、変速機10と外部機械との組合せもコンパクトにすることができる。
【0055】
又、キャリヤ部材ベアリング118が、2つの偏心体軸ベアリング18A及び18Bのそれぞれの軸方向離反側の端部を通り軸線方向に垂直な一対の平面に挟まれた空間に設置されているので、第2のケース部材110B、第3のケース部材110C、キャリヤ部材ベアリング118、キャリヤ部材16、偏心体軸ベアリング18A、18B及び偏心体軸12の組付剛性が高く、且つ、これらの組合せは軸方向にコンパクトである。
【0056】
更に、第4のケース部材22もその内周部が軸方向にコンパクトとされている。
【0057】
即ち、変速機10は軸方向にコンパクトで、偏心体軸12の回転の振れを小さく抑えることができる低コストな変速機である。
【0058】
次に本発明の実施の形態の第2例について説明する。
【0059】
図2は、本実施の形態の第2例に係る変速機30の全体構造を示す側断面図である。
【0060】
偏心体軸32の外周には180°の位相差で2つの偏心体34A及び34Bが一体に形成されている。これら偏心体34A及び34Bにはベアリング36A及び36Bを介して2つの外歯部材38A及び38Bが回転自在に取付けられている。これら外歯部材38A及び38Bには内歯部材40が内接噛合している。
【0061】
又、外歯部材38A及び38Bには円周方向適宜な間隔で複数の内ローラ孔44A及び44Bが形成され、内ローラ46及び内ピン48が挿入されている。
【0062】
この内ピン48は外歯部材38A及び38Bの軸方向の両側に突出し、それぞれの側において第1のキャリヤ部材50、第2のキャリヤ部材52に固着又は嵌入されている。
【0063】
偏心体軸32の一端は第2のキャリヤ部材52よりも軸方向に突出し、モータ等の外部機械と連結可能とされている。又、偏心体軸32の他端は外歯部材38A及び38Bの軸方向の一方の側に延在され、ベアリング装着部54を形成している。
【0064】
該ベアリング装着部54と第1のキャリヤ部材50との間には2つの偏心体軸ベアリング56A及び56Bが軸方向に並べて設置されている。これら2つの偏心体軸ベアリング56A及び56Bのみにより、第1のキャリヤ部材50が偏心体軸32を支持している。
【0065】
第1のキャリヤ部材50の径方向外側には筒状の第2のケース部材58が配置されている。この第2のケース部材58はボルト60により第1のケース部材42と一体に締結されている。
【0066】
この第2のケース部材58と第1のキャリヤ部材50との間にはテーパーローラベアリングである2つのキャリヤ部材ベアリング62A及び62Bが軸方向に並んで設置されている。これらキャリヤ部材ベアリング62A及び62Bは、2つの偏心体軸ベアリング56A及び56Bのそれぞれの軸方向離反側の端部を通り軸線方向に垂直な一対の平面に挟まれた空間に配置されている。
【0067】
又、第1のキャリヤ部材50の端部には端部プレート64が取付けられ、この端部プレート64により偏心体軸ベアリング56B及びキャリヤ部材ベアリング62Bの軸方向の移動が規制されている。
【0068】
この端部プレート64と第2のケース部材58との間にはシール部材66が設けられている。
【0069】
又、第2のキャリヤ部材52と第1のケース部材42の間にはシール部材68が設けられ、第2のキャリヤ部材52と偏心体軸32との間にはシール部材70が設けられている。
【0070】
次に変速機30の作用について説明する。
【0071】
変速機30は、前記実施形態の第1例に係る変速機10と同様に、2つのキャリヤ部材ベアリング56a及び56bが一のキャリヤ部材50に装着されており、偏心体軸32の回転の振れを小さく抑えることができる、低コストで、(特に軸方向に)コンパクトな変速機である。
【0072】
又、変速機30は第1及び第2の2つのキャリヤ部材50及び52を備えているので、軸方向のいずれの側においてもキャリヤ部材と外部機械とを連結可能である。更に、第1のキャリヤ部材50が一対のテーパーローラベアリングである2つのキャリヤ部材ベアリング62A及び62Bにより支持されているので、キャリヤ部材に連結される外部機械によりキャリヤ部材に大きなラジアル荷重又はスラスト荷重が作用する場合であっても、キャリヤ部材を安定支持することができる。
【0073】
次に、本発明の実施の形態の第3例について説明する。
【0074】
図3は、本実施の形態の第3例に係る変速機70の全体構造を示す側断面図である。
【0075】
この変速機70は、前記実施の形態の第1例に係る変速機10に対し、前記第4のケース部材22に代えて、シール部材72が備えられたことを特徴としている。その他の点については、前記変速機10と同様であるので、図1と同一符号を付することとして説明を省略する。
【0076】
第1のケース部材74のキャリヤ部材16から離反する側の端部にはリング状の突起部74Aが形成されている。シール部材72はリング板状体で、該突起部74Aと偏心体軸12の外周部との間に設けられ、第1のケース部材74と偏心体軸12との間の隙間を閉塞、且つ、シールしている。
【0077】
このシール部材72は、一般的なオイルシールを径方向外側に延在させた構造とされている。
【0078】
このように、第1のケース部材74と偏心体軸12との間に端面カバー等の他の部材を介在させることなく、該第1のケース部材74と偏心体軸12との間の隙間を1のシール部材72で閉塞しているので、変速機70は部品点数が少なく、簡単な構造で低コストである。
【0079】
端面カバー及びシール部材によりケース部材と偏心体軸との間を閉塞する場合に対し、シール部材72の剛性は一般的に低くなるが、偏心体軸12の回転の振れが小さく抑えられているので、シール部材72は第1のケース部材74と偏心体軸12との間の気密を充分に保持することができる。
【0080】
なお、前記実施の形態の第1例から第3例において、偏心体軸は、内歯部材の内歯のピッチ円直径の0.2倍以上の中空孔を有する中空構造とされているが、充分な定格荷重の偏心体軸ベアリングを装着し、且つ、軽量化を図るためには、内歯部材のピッチ円直径の0.3倍以上の中空孔を有する中空構造の偏心体軸とするとよい。
【0081】
一方、偏心体軸に作用する外歯部材からの反力及び外部機械による反力によるラジアル荷重が小さい場合には、内歯部材のピッチ円直径の0.2倍よりも小さな中空孔を有する偏心体軸としてもよい。
【0082】
更に、中実構造の偏心体軸としてもよい。
【0083】
又、前記実施の形態の第1例から第3例において、キャリア部材ベアリング全体が、2つの偏心体軸ベアリングのそれぞれの軸方向離反側の端部を通り軸線方向に垂直な一対の平面に挟まれた空間内に設置されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、キャリヤ部材ベアリングの一部を一対の平面に挟まれた空間内に設置してもよい。
【0084】
更に、変速機の軸方向の大きさが特に問題とされない場合には、一対の平面に挟まれた空間の外側にキャリヤ部材ベアリングを設置してもよい。
【0085】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、容易、且つ、低コストで偏心体軸の振れを小さく抑えて、偏心体軸の高精度な回転を実現することができるという優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の第1例に係る変速機の全体構造を示す側断面図
【図2】本発明の実施の形態の第2例に係る変速機の全体構造を示す側断面図
【図3】本発明の実施の形態の第3例に係る変速機の全体構造を示す側断面図
【図4】従来の変速機の全体構造を示す側断面図
【符号の説明】
10、30、70、100…変速機
12、32、102…偏心体軸
14、54…ベアリング装着部
16、50、52、116…キャリヤ部材
18A、18B、56A、56B、120、122
…偏心体軸ベアリング
22、110A、110B、110C、110D…ケース部材
34A、34B,104A、104B、104C…偏心体
38A、38B、106A、106B、106C…外歯部材
62A、62B、118…キャリヤ部材ベアリング
72…シール部材
Claims (4)
- 偏心体を有する偏心体軸と、該偏心体に回転自在に取付けられた外歯部材と、該外歯部材に内接噛合する内歯部材と、前記外歯部材の軸方向の一方の側であってモータが連結される側と反対側に配置され、該外歯部材の自転成分のみを伝達する手段を介して該外歯部材に連結されたキャリヤ部材と、を含んでなる偏心揺動型内接噛合遊星歯車構造を採用した変速機において、
前記偏心体軸に、前記外歯部材の前記軸方向の前記一方の側であって前記モータが連結される側と反対側に延在するベアリング装着部を形成すると共に、前記キャリヤ部材と該ベアリング装着部との間に2つの偏心体軸ベアリングを前記軸方向に並べて設置し、前記偏心体軸を該2つの偏心体軸ベアリングのみによって片持ち状態で支持するようにした
ことを特徴とする偏心揺動型内接噛合遊星歯車構造を採用した変速機。 - 請求項1において、
前記キャリヤ部材を支持するキャリヤ部材ベアリングを、
前記2つの偏心体軸ベアリングのそれぞれの軸方向離反側の端部を通り前記軸方向に垂直な一対の平面に挟まれた空間に設置した
ことを特徴とする偏心揺動型内接噛合遊星歯車構造を採用した変速機。 - 請求項1又は2において、
前記偏心体軸を中空構造とし、且つ、該偏心体軸の内径を前記内歯部材の内歯のピッチ円直径の0.2倍以上とした
ことを特徴とする偏心揺動型内接噛合遊星歯車構造を採用した変速機。 - 請求項1、2又は3のいずれかにおいて、
前記内歯部材が設けられたケース部材を備えて該ケース部材を筒状とし、且つ、前記外歯部材の前記軸方向の前記一方の側にのみ前記キャリヤ部材を配置すると共に、他方の側に、前記ケース部材と前記偏心体軸との間の隙間を閉塞するリング板状のシール部材を備えた
ことを特徴とする偏心揺動型内接噛合遊星歯車構造を採用した変速機。
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