JP4788043B2 - インクジェット用インク組成物、インクジェット用インク、偽造防止画像形成体、および偽造防止画像形成体の製造方法、並びに画像形成体の偽造の判別方法 - Google Patents

インクジェット用インク組成物、インクジェット用インク、偽造防止画像形成体、および偽造防止画像形成体の製造方法、並びに画像形成体の偽造の判別方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パスポートや査証などの冊子または、カード上にインクジェットで印刷する画像形成体に係わるものであり、特に、正当な所有者の顔や指紋の画像といった画像情報とか、その本人の姓名、生年月日などの個人情報の印字内容を、特殊なインク及び受像体を組み合わせることにより、偽造困難にすることを目的とするものである。(セキュリティ対策を施した画像形成体は、偽造防止画像形成体も称するしたりもする。)
【0002】
【従来の技術】
パスポートや査証用ステッカー、あるいはカード類といった個人認証に係わる情報記録媒体においては、従来、色々なセキュリティ手法が提案されてきている。
例えば、パスポートにおいては、現在使用されているパスポートはいわゆるICAOの規定によれば、目視および光学文字識別方式の両方で読めなければならないとされている。
(ICAOは、InternationalCivilOrganizationの略)
ICAOの規定によれば、パスポートに使用する材質やセキュリティに関しては各国の自由裁量であり、セキュリティ機能として一般に使われているのは、有機溶剤等で反応する化学反応体、虹彩色のパールチップ、ファイバー(絹もしくは合成繊維、可視もしくは不可視、蛍光もしくは非蛍光)、ホログラムやマイクロ文字の印刷されたフィルムのセキュリティ糸、透かし模様等を盛り込んだ用紙や退色性インキ、蛍光インキ、感熱インキ、光学的に変化するインキ(いわゆるOVIなど)等の各種インキ、細線印刷、レインボー印刷、凹版印刷、ピクセル印刷等の様々な技法を組み込んでセキュリティと美観の同時向上を図っている。
【0003】
また、パスポートの目視確認情報としての顔写真は、従来写真を貼り合わせたものであったが、近年では写真情報をデジタル化し、これをパスポートに再現する傾向にある。
パスポートへの画像再現方法としては、昇華性(熱移行性)染料や、顔料を分散させた樹脂型溶融タイプやワックス溶融タイプを用いた転写リボンによる感熱転写記録法、あるいは電子写真法などが検討されている。
【0004】
査証用ステッカーにおいても、ステッカー自体を剥がそうとしても綺麗に剥がすことが困難な様に切り込みを一定パターン状に設けたものを使用するなどの工夫がされているものもある。
【0005】
さらに、この種の個人認識データの入った画像表示体としては、画像データに基づいて形成された画像パターンをポリ塩化ビニル等のカード基材上に備えたもの、あるいは上記画像パターンに加えてホログラムや回折格子あるいは多層干渉を用いた光学的薄膜(光学設計によりカラーシフト等の効果を得られる)を用いることによる画像に代表されるいわゆるOVD画像を具備するもの等が知られている。(OVDは、OpticalVariableDeviceの略)
【0006】
これらホログラムや回折格子のOVD技術は、高度な製造技術を要し、複製の難しいことから有効な偽造防止手段としてクレジットカード、IDカード、プリペイドカード等のカード類に利用されてきた。さらには、その装飾性の高さから、包装材、書籍、パンフレット、POP等への利用も少なくない。
これらOVDを物品に貼着するための手段として従来から転写箔を用いて転写形成するといった方法が採られている。この種の転写は、支持体上に剥離層、ホログラムや回折格子の画像パターンを形成されているレリーフ層と、公知の薄膜形成手段により形成される反射層、接着層を順次積層してなる構成のものが知られている。これら、転写箔に刻まれたOVDパターン(ホログラムおよび回折格子パターン)は、微少な凹凸パターンをニッケル性のプレス版に複製し、レリーフ層に過熱押圧するという周知の方法により大量複製が行われている。
【0007】
また、上記反射層は屈折率の異なる透明な物質を真空蒸着法等の公知の薄膜形成手段により形成することで(以下透明薄膜層と呼ぶ)、透明ホログラムや透明回折格子形成対となることは、公知の技術である。
この場合、レリーフ層と透明薄膜層との間の屈折率差が大きい程、反射率も大きくなることは、光学的見地からも明らかである。但し、ここで、
(レリーフ層の屈折率) < (透明薄膜層の屈折率)
の関係がある。
【0008】
上記OVD転写箔の形成方法に関し、簡単に説明する。
図2は透明OVD転写箔の構成例を示す断面図である。OVD転写箔は、光を透過しつつ反射する層、すなわち透明薄膜層33bを有しており、被転写体である基材上の印刷等デザインを損なうことなく、優れたアイキャッチ効果を有することができる。
以下、図2の断面図に基づき、その構成を説明する。
支持体21上に剥離層(剥離性保護層)22が形成され、剥離層22上にホログラムあるいは回折格子等のOVDパターンを設けたレリーフ形成層23a、透明薄膜層23bが形成されている。この透明薄膜層23b上には接着層24が形成されている。
【0009】
また、OVD層23のレリーフ形成面は、支持体21の反対側に存在し、物品表面に転写形成した場合、剥離層32は支持体31との界面にて剥離し、物品側に移行して保護層としても機能することになるため、「剥離性保護層」とも称される。さらに、支持体を除いた、物品側に移行する各層を総称して「転写層」と称することとする。
【0010】
各図面は、転写箔等の構成を模式的に表現するものであり、各層の厚さなどの寸法は、実際の製造物に則したものではない。
【0011】
これらホログラムまたは回折格子構造物は、一般的に光学的な撮影方法ないし電子線描画などにより微細な凹凸パターンからなるレリーフ型のマスター版を作製し、これから電気メッキ法により凹凸パターンを複製したニッケル製のプレス版を複製し、このプレス版をレリーフ形成層23上に加熱押圧するという周知の方法により大量複製が行われている。
【0012】
この様にして得られたホログラムまたは回折格子構造物は、偽造防止手段としてクレジットカード、キャッシュカード、会員証カード、社員証カード、プリペイドカード、運転免許証等の各種カード類、商品券、ギフト券、株券等の各種紙券類や申込用紙、領収書、複写伝票等の各種帳票類や、パスポート、通帳、年金手帳等の各種冊子類の他、本や手帳などの表紙やパネル等のディスプレイ用途等の一部または全体に貼着して使用されている。
尚、本発明で述べている全体とは、概念的な意味であり、柄、パターン等を問わず、スポット状、ストライプ状、格子上に貼着されたものや、定型、不定形の網点状のドットで貼着されたものも含まれる。
【0013】
このようなOVD転写箔は偽造防止効果としては、充分な機能を果たすが、パスポートの様に顔写真などの画像形成後に該画像上にOVD転写層を熱的に転写して形成しているため、偽造技術の発達した現在では何らかの手法により転写層をいったん取り去り、画像データ等の改竄を行った後に改めてOVD転写箔を載せるといったことが行われる可能性もでてきた。
【0014】
また、顔写真などの画像情報を形成するする手段としての昇華転写方式、熱溶融性の転写リボン方式あるいは電子写真方式などのプリンタは、昨今では一般に広く普及している状況を考慮すると、画像形成部を取り除いた後の領域に新たに画像を形成することは、必ずしも困難とは、言いきれなくなりつつある。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来の技術の問題点に鑑みてなされた発明であり、高セキュリティ性を必要とされる画像形成体(必ずしも限定されない。代表例としてはパスポート、査証、あるいは各種のカード類、等。)に対する、偽造や改竄あるいは変造に対する予防性能や、万一それらの不正がなされた場合であっても被疑不正品を観察等すると容易に発見できるような発見容易性能を備えるなどの画像形成体を形成するためのインク組成物、インク、及びそれを用いた画像形成体とその製造方法ならびにその真偽判定方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題解決のための手段】
請求項1に記載の発明は、基材と、前記基材の上に、無色か又は淡色の蛍光染料と、有色の顔料との、少なくとも双方を含有するインクの該蛍光染料に対して含浸性を有する基材からなる受像層と、前記受像層の上の前面又は一部に前記無色か又は淡色の蛍光染料と、有色の顔料との、少なくとも双方を含有するインクをインクジェットで印字してなる印刷層と、前記印刷層又は前記印刷層と前記受像層とからなる面の上にレリーフ形成層と透明薄膜層とからなるOVD層と、を有することを特徴とする偽造防止画像形成体です。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、パスポート冊子やパスポート用ステッカー及びカード類の基材に対し、特殊なインク組成物を用いたインクジェット方式で目視確認情報や機械確認情報を形成することにより、情報形成のための着色色材として顔料成分を使用することから耐久性の高い情報形成が達成できると同時に、この情報と同調した無色か又は淡色の蛍光染料が基材内部に浸透して形成された潜像情報を有し、その上からさらにOVD転写箔を設けることにより、情報改竄等の不正行為を極めて困難にするものである。
【0030】
すなわち、パスポート冊子ないしパスポート用ステッカーあるいはカード上に形成された情報を不正に変更しようとした場合、情報印画上に設けられたOVD転写箔層を除去する必要があるが、該OVD転写箔は極めて薄い層の積層物であり、形状や機能を維持したまま情報印画面から取り去ることは事実上困難である上に、本来のOVD転写層を破壊して新たにOVD層を偽造しようとした場合には、先に示したようにホログラムや回折格子形成物そのものを作製する技術は極めて高度であり、偽造することは容易ではない。
【0031】
また、万が一、未知の手法により、OVD転写層の形状や機能を維持したまま情報印画面から取り去ることができたとしても、印画情報を本発明による特殊インクによって印画することにより、偽造行為として顔料部分を剥ぎ取って新たな画像を形成した場合においても、基材深部に染み込んだ蛍光染料を取り去ることが困難であるため、画像形成部に紫外線を照射することにより、もともとの画像を改ざんしたかどうかを容易に判定することができる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明の実施例につて図面を用いて説明する。
図1は、本実施例に係わるパスポート冊子やステッカーならびにカード類の基本的な構成を示す断面図である。紙やポリ塩化ビニル等の材質からなる基材は少なくともその片面に従来から公知の凹版印刷、蛍光印刷、OVI印刷、パールチップなどのセキュリティ印刷等や絵柄印刷などを施してあっても良く、任意のセキュリティ技術を組み合わせて設けておくことが可能である。
【0033】
また、インクジェット方式による画像形成の際に、色材の発色性や定着性を増すために任意の層間の一部あるいは全面に受像層を設けておいても良い。このような受像層としては、未変性及び変性ポリボニルアルコール、ポリエステル、アクリル、ウレタン、酢酸ビニル系樹脂、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、デンプン、SBRやNBRなどのゴム系およびそれらのラテックス、セルロース系樹脂、ポリアミド、メラミン、アクリルアミド、ポリビニルピロリドン、これらをカチオン変性したもの、または親水基を付加したもの等を1種又は2種以を用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、シリカ、クレー、タルク、ケイソウ土、ゼオライト、炭酸カルシウム、アルミナ、チタンホワイト等を添加しても良い。厚みとしては50μm以下であることが望ましい。
【0034】
画像形成部はインクジェット方式によって、前記基材上に形成されている。ここで用いられるインクは水系、溶剤系、紫外線ないし電子線硬化がた、ホットメルト型などのインクの種類が考えられるが、これらいずれの手法を用いたものでも良く、目視可能な色材においては顔料を用い、通常目視不能な蛍光材料においては染料を用いる。これらのインクの選定にあたっては事前に基材側に設けられたセキュリティ技術との相性などによって決定される場合もあるが、ここでは、水系インクでの検討を行った。
【0035】
本実験では、基材として上質紙を用い、その表面に変性ポリビニルアルコールを厚みとして10μm相当の厚さで塗布乾燥したものを被画像形成物とした。またインクとしては、以下の組成のものをインクとして調合し、用いた。ここで、配合比を示すべく「部」と表記してあるのは、重量基準あるいは質量基準のいずれでも良い。(以下も同様。)
カーボンブラック顔料(No.2300) 10部
C.I.AcidRed87(Eosine) 3部
スチレン−アクリル酸共重合体(平均分子量7000) 3部
イオン交換水 67部
【0036】
ここで用いられる顔料としては、黒インク用のカーボンブラックの場合には、ファーネス法、チェネル法、サーマル法、ランプ法、アセチレン法で製造された方法が挙げられるが、新たな製造方法で得られたものでも使用可能であり、一次粒子が15〜40nmのものが望ましい。
【0037】
それらのカーボンブラック顔料(C.I.ピグメントブラック7)としては、No.2300、No.900、MCF−88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B、Raven700、Raven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、Regal400R、Regal330R、Regal660R、MogulL、Monarch700、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400、カラーブラックFW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2W、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4など、他に松煙、黒鉛(グラファイト)、鉄黒(アイアンブラック)などを好適に用いることができる。但し、これらに限定されるものではない。
【0038】
また、黒以外の着色顔料としては、従来公知の有機顔料及び無機顔料を全て使用することができる。
例えばアゾキレート、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料及びキレートアゾ顔料等のアゾ顔料や、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオイシジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型キレート及び酸性染料型キレート等の染料キレートや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などの有機顔料、酸化チタン、酸化鉄系等の無機顔料が挙げられる。また、カラーインデックスに記載されていない顔料であっても分散可能であれば、いずれのものも使用できる。
【0039】
さらに、インク中に含まれる蛍光染料としては、従来公知の蛍光染料を全て使用することができ、例えばピレンスルホン酸などのピレン誘導体、6,7−ジオキシクマリン配糖体やβ−メチルウンベリフェロン酢酸ソーダなどのクマリン誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ジフェニルイミダゾロンジスルホン酸などのイミダゾロン誘導体、1,3−ジアリルピラゾリンなどのピラゾリン誘導体、ジベンゾイルベンジジン−o,o‘−ジカルボン酸などのベンジジン誘導体、ジベンゾイルアミノスチルベンジスルホン酸などのジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体、などを用いることができ、またヒドロキシピレントリスルホン酸や、C.I.Acid Red87(Eosine)やC.I.Acid Red52(Acid Rhodamine)などの酸性染料型染料、Basic Yellow HGやC.I.Basic Red1(Rhodamine 6G)やC.I.Basic Violet10(Rhodamine B)などの塩基性染料型染料、などを用いることができる。但し、これらに限定されるものではない。
【0040】
また、前記顔料成分等を安定分散させるために、各種の分散剤を添加することができるが、これらは、各種界面活性剤や樹脂等をその適性に応じて選定することができる。
【0041】
このようにして得られた特殊インクを用いて、インクジェット方式により、前記被画像形成体(紙上に変性ポリビニルアルコールを塗布したもの)上に、画像を形成した。その後、さらにその上から、OVD転写箔を用いてOVD層の転写を行った。OVD転写箔の構成は、支持体上に剥離性保護層が形成され、剥離性保護層の上にOVD層が形成され、OVD層の上に接着層が形成されている。
【0042】
ここで、支持体131は熱転写における熱圧で軟化変形しない耐熱性と強度が要求される。その材料としては、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド等の合成樹脂、天然樹脂、紙、合成紙などから単独で選択されたもの、または上記より選択されて組み合わされた複合体などが使用できるが、これらに限定されるものではない。
また、その厚みは、操作性、加工性を考慮し、2〜100μmのものが使用可能であるが、転写適性や加工性等のハンドリング性を考慮すると、6〜50μm程度のものが好ましい。
【0043】
本実験では、厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、以下の配合比からなる剥離性保護層組成物を1.5μmとなるように塗布乾燥した。尚、剥離性保護層132は、OVD層133および接着層134をより効果的に被転写体側に転写するために設けられたものである。
さらに、最終製品となった場合に保護層として機能するものである。
アクリル樹脂 … 30部
ポリエステル樹脂 … 5部
ポリエチレンパウダー … 5部
トルエン … 40部
メチルエチルケトン … 40部
メチルイソブチルケトン … 20部
【0044】
剥離性保護層132としては、容易に基材から剥がれる材料であれば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線あるいは電子線硬化性樹脂のいずれであっても良いが、柔軟性、箔切れ性を考慮し、熱可塑樹脂が好ましい。
その例としては、熱可塑性ポリアクリル酸エステル樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、スリレンアクリレート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネイト系樹脂等の樹脂を単独あるいは複合して用いることができる。また、箔切れ性や耐摩性を考慮し、石油系ワックス、植物系ワックス等の各種ワックス、ステアリン酸等の高級脂肪酸およびその金属塩やエステル類、シリコンオリル等の滑剤や、テフロンパウダー、ポリエチレンパウダー、シリコーン系微粒子やアクリルニトリル系微粒子等の有機フィラーおよび、シリカ微粒子等の無機フィラーを添加することもできる。尚、剥離性保護層132は支持体131自体が剥離性を有している場合、あるいは支持体自体に離型処理を施してある場合は設ける必要はない。
しかし、その場合には転写後、最表面にあたる層(本実施例においてはOVD層133)に耐摩擦性を付与するか、あるいは転写後に保護層を設けることもできる。
剥離性保護層としての厚みは、0.1〜20μmの範囲で形成することができ、保護層を後から設ける場合には特に限定されるものではない。
【0045】
さて、本実施例では、OVD層133の一例としてレリーフ型透明ホログラムを使用した。以下にその製造方法について説明する。
剥離性保護層132上に設けたレリーフ形成層は剥離性保護層132とは反対側の面にホログラムのレリーフ形成面を有し、レリーフ形成面上に透明薄膜層が形成されている。尚、このレリーフ形成面は、レリーフ型ホログラムを構成する微細な凹凸パターンが形成されたニッケル製のプレス版をレリーフ形成層上に加熱押圧することにより形成可能である。また、レリーフ形成層はホログラムパターンを層表面(前述したレリーフ形成面)又は層内に有するものであれば良く、他に例えば二光束干渉もしくは電子ビーム(EB)による回折格子(グレーティング)により微細凹凸形状を有するようにしたグレーティングホログラムやリップマンホログラム等が適用可能である。
【0046】
また、透明薄膜層は、レリーフ形成層(屈折率n=1.3〜1.7)よりも屈折率の高い透明材料であって、例えば表1に示す無機材料が使用可能となっている。さらに透明薄膜層は複数の層を重ね合わせて形成してもよく、異なる屈折率の層の組み合わせ、項屈折率の層と低屈折率の層とを交互に積層した多層膜としても良い。
【0047】
【表1】
Figure 0004788043
【0048】
また、このような透明薄膜層を形成する方法としては、真空蒸着法のほかにスパッタリング法、イオンプレーティング法等の成膜手段が適用可能であり、膜厚としては10nm〜1000nmの範囲にあることが好ましい。
また、透明性薄膜層としては、TiO2等の高屈折率微粉末を樹脂などの中に分散し、レリーフ形成層との屈折率差を0.2以上としたものでも良い。この場合には、一般的なコーティング法で塗膜を形成できるため、上記膜厚に限定されるものでは無い。
【0049】
ここで、レリーフ形成層は、エンボス成形性が良好で、プレスムラが生じ難く、明るい再生像が得られ、剥離性保護層132および透明薄膜層との接着性が良好である樹脂が良く、ここでは以下の配合比からなる組成物を用い、乾燥後の厚みが1.0μmになるように形成した。
ポリウレタン樹脂 … 30部
メチルエチルケトン … 70部
トルエン … 30部
また、レリーフ形成面は、このような組成物に対し、前述したプレス版の版面温度を160℃として形成した。
【0050】
尚、レリーフ形成層としては、他にポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレートなどの熱硬化性樹脂あるいはこれらの混合物、さらにはラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性材料などが使用可能であり、また、上記以外のものでも、OVD画像を形成可能な安定性を有する材料であれば使用可能である。
ちなみに、本明細書中で「(メタ)」のごとき記述の意味は、例えば、「ウレタン(メタ)アクリレート」であれば、「ウレタンアクリレートか、又はウレタンメタクリレートのいずれか」を意味しており、同様の記述はこれに準じるものである。
【0051】
透明薄膜層は、レリーフ形成層の情報を透過するための透明材料であって、ここでは厚さ50nmのZnSを真空蒸着法により設けた。
【0052】
次に、上記透明薄膜層上に以下の配合比からなる接着層組成物を厚み4.0μmになるよに塗布乾燥した。(乾燥100℃、5分間)。
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 … 30部
ポリウレタン樹脂 … 30部
メチルエチルケトン … 50部
トルエン … 50部
【0053】
尚、接着層134としては例えば、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニルや塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩素化ポリプロピレン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリジビニルベンゼン、ポリビニルベンゼン、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、スチレンとメタクリル酸アルキル(但し、アルキル基の炭素数は2〜6)等のビニル系樹脂、各種ゴム系材料等が挙げられ、これらを単独あるいは2種以上の混合物として使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
また、熱転写時の箔切れ性を考慮し、各種ワックス、ステアリン酸等の高級脂肪酸およびその金属塩やエステル類、可塑剤、テフロンパウダー、ポリエチレンパウダー、シリコーン系微粒子やアクリルニトリル系微粒子等の有機フィラーおよび、シリカ微粒子等の無機フィラーを添加することもできる。
【0055】
このようにして得られたOVD転写箔13とインクジェット方式によって画像形成を終えたパスポート冊子あるいはパスポート用ステッカーとを対向して重ね合わせ、OVD転写箔13側から熱ロールを加圧・加熱(加熱温度;125℃)した後、OVD転写箔13の支持体131を剥離させて、偽造防止画像形成体を製造した。
ここで、OVD転写箔の転写方法としては、熱ロールの他に、サーマルヘッドやセラミックヒーター、ヒートプレートなどの熱源を有する治具を用いた転写法を使用することが可能であり、必ずしもこれらの手法に限定するものではない。
【0056】
【発明の効果】
顔写真画像等を形する為の色材としては顔料を用い、それに加えて蛍光染料をインク内に混入することにより、偽造行為として顔料部分を剥ぎ取って新たな画像を形成した場合においても、基材深部に染み込んだ蛍光染料を取り去ることが困難であるため、画像形成部に紫外線を照射することにより、もともとの画像を改ざんしたかどうかを容易に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の偽造防止画像形成体やその製造方法に係わる一例を、模式的な断面図を用いて示す説明図。
【図2】透明OVD転写箔の一例を模式的に説明する断面図。
【符号の説明】
11 … 被画像形成物
111 … 支持体
112 … 受像層
12 … インクジェット
121 … 顔料
122 … 蛍光染料
13 … OVD転写箔
131 … 支持体
132 … 剥離性保護層
133 … OVD層
134 … 接着層
14 … 熱ロール
21 … 支持体
22 … 剥離性保護層
23 … OVD層
23a … レリーフ形成層
23b … 透明薄膜層
24 … 接着層

Claims (1)

  1. 基材と、
    前記基材の上に、無色か又は淡色の蛍光染料と、有色の顔料との、少なくとも双方を含有するインクの該蛍光染料に対して含浸性を有する基材からなる受像層と、
    前記受像層の上の前面又は一部に前記無色か又は淡色の蛍光染料と、有色の顔料との、少なくとも双方を含有するインクをインクジェットで印字してなる印刷層と、
    前記印刷層又は前記印刷層と前記受像層とからなる面の上にレリーフ形成層と透明薄膜層とからなるOVD層と、
    を有することを特徴とする偽造防止画像形成体。
JP2001023278A 2001-01-31 2001-01-31 インクジェット用インク組成物、インクジェット用インク、偽造防止画像形成体、および偽造防止画像形成体の製造方法、並びに画像形成体の偽造の判別方法 Expired - Fee Related JP4788043B2 (ja)

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