JP4720037B2 - 強密着性を有するガスバリア性透明積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品や非食品及び医薬品等の包装分野に用いられる包装用の積層体に関するもので、特にボイル殺菌やレトルト殺菌等が必要とされる内容物の包装に適した強密着性を有するガスバリア性透明積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品や非食品及び医薬品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の変質を抑制しそれらの機能や性質を保持するために、包装材料を透過する酸素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体による影響を防止する必要があり、これらを遮断するガスバリア性等を備えることが求められている。そのため従来から、温度・湿度などの影響が少ないアルミ等の金属箔をガスバリア層として用いた包装材料が一般的に用いられている。
【0003】
ところが、アルミ等の金属箔をガスバリア層として用いた包装材料は、温度・湿度の影響を受けずに高度なガスバリア性を維持するが、包装材料を透視して内容物を確認することができない、使用後の廃棄の際は不燃物として処理しなければならない、検査の際金属探知器が使用できないなどの欠点を有し問題があった。
【0004】
そこで、これらの包装材料の欠点を克服すべく、例えば米国特許第3442686号明細書、特公昭63−28017号公報等に記載されているような、高分子フィルム上に真空蒸着法やスパッタリング法等の薄膜形成手段により酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の無機酸化物の蒸着膜を形成したフィルムが開発されている。これらの蒸着フィルムは、透明性及び酸素、水蒸気等のガス遮断性を有していることが知られ、金属箔等をガスバリア層として用いた包装材料では得ることのできない透明性、ガスバリア性の両者を有する包装材料として好適とされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した包装材料に適する蒸着フィルムであっても、包装容器または包装体として、蒸着フィルム単体で用いられることはほとんどない。すなわち、この蒸着フィルムの蒸着薄膜形成後の後加工として蒸着フィルム表面への文字・絵柄等の印刷加工、またはフィルム等との貼り合わせ、あるいは容器等の包装体への形状加工などさまざまな工程を経て包装体を完成させている。特にボイル殺菌やレトルト殺菌等を必要とする包装材料は、種々の工程を経て殺菌されるために、包装材料の設計には十分注意しなければならない。
【0006】
そこで、本発明者等は上述した蒸着フィルム等を用いてシーラントフィルムと貼り合わせて製袋後、内容物を充填してボイル殺菌やレトルト殺菌を試みたところ、貼り合わせ部の一部に蒸着層の剥離が発生して外観不良になったり、その部分のガスバリア性が低下し、内容物が変質する等の問題が生じた。
【0007】
すなわち、この様な包装形態に適する包装材料としては、内容物を直接透視することが可能なだけの透明性、内容物に対して影響を与える気体等を遮断する高いガスバリア性及びボイル殺菌やレトルト殺菌後もガスバリア性の劣化がなくまた剥離等が発生しない等の各種殺菌処理耐性等を有することが求められているが、上述様な蒸着フィルムはこれらの要求を全ては満たすことができないし、また現在のところこれらを満足する包装材料は見いだされていない。
【0008】
本発明は以上のような事情に鑑みなされたもので、内容物を直接透視することが可能で、且つ金属箔並みの高度なガスバリア性及び殺菌処理耐性をもつ実用性の高い包装用の積層体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するためのもので、請求項1に記載の発明は、プラスチック材料からなる基材の少なくとも片面に、ポリ尿素、ポリアゾメチンの単体或いはそれらの混合物から選ばれる有機化合物からなる蒸着薄膜層と、無機酸化物からなる蒸着薄膜層と、オーバーコーティング層とが少なくとも順次積層されており、
該オーバーコーティング層が、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物又は、(b)塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなる層であることを特徴とする強密着性を有するガスバリア性透明積層体である。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の強密着性を有するガスバリア性透明積層体において、有機化合物からなる蒸着薄膜層が蒸着重合法により積層されたものであることを特徴とする。
【0011】
さらにまた、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の強密着性を有するガスバリア性透明積層体において、無機酸化物からなる蒸着薄膜層が、酸化アルミニウム、酸化珪素或いはそれらの混合物からなることを特徴とする。
【0012】
さらにまた、請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項3に記載の強密着性を有するガスバリア性透明積層体において、有機化合物からなる蒸着薄膜層及び無機酸化物からなる蒸着薄膜層が同じ巻取り蒸着機内にてインラインで積層されたものであることを特徴とする。
【0014】
さらにまた、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の強密着性を有するガスバリア性透明積層体において、金属アルコキシドが、テトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウム、或いはそれらの混合物からなる群から選ばれる一つであることを特徴とする。
【0015】
さらにまた、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の強密着性を有するガスバリア性透明積層体において、水溶性高分子が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の強密着性を有するガスバリア性透明積層体の一実施形態を示す断面構成説明図である。
【0017】
図1において、基材(1)はプラスチック材料からなるフィルム基材であり、その基材(1)上に、有機化合物からなる蒸着薄膜層(2)、無機酸化物からなる蒸着薄膜層(3)、オーバーコーティング層(4)が順次積層されている。オーバーコーティング層(4)は、要求品質によっては設けない場合もある。
【0018】
上述した基材(1)は、蒸着薄膜層の透明性を生かすために可能であれば透明なフィルム基材であることが好ましい。基材(1)の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。これらのフィルムは、延伸、未延伸のどちらでも良く、また機械的強度や寸法安定性を有するものが良い。この中で、二軸方向に任意に延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく用いられる。またこの基材の蒸着層が設けられる面と反対側の表面に、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などで薄膜を設けても良い。また、基材(1)上に設ける薄膜層との密着性を良くするために、基材(1)の薄膜層を積層する面にコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、薬品処理、溶剤処理などの前処理を施してもおいても良い。
【0019】
基材(1)の厚さは特に制限を受けるものではないが、後述する有機化合物からなる蒸着薄層(2)、無機酸化物からなる蒸着薄膜層(3)、さらにオーバーコーティング層(4)を形成する場合の加工性を考慮すると、実用的には3〜200μmの範囲が好ましく、特に6〜30μmとすることが好ましい。また、包装材料としての適性を考慮して、その構成は前記各フィルムの単体でも、異なる性質のフィルムを積層した積層フィルムであってもよい。
【0020】
また、量産性を考慮すれば、連続的に前記各層を形成できるように長尺の連続フィルムとすることが望ましい。
【0021】
一方、有機化合物からなる蒸着薄層(2)は、プラスチック材料からなる基材(1)上に設けられ、基材(1)と無機酸化物からなる蒸着薄膜層(3)との間の密着性を高め、ボイル殺菌やレトルト殺菌後の蒸着層の剥離発生を防止するために設けられる層である。
【0022】
本発明者らは鋭意検討の結果、本発明において上記目的が達成可能な有機化合物からなる蒸着薄膜層(2)としては、寸法安定性及び基材との密着性等の特性を有する必要があり、それらを満足させるための有機化合物として用いることができるのは、ポリ尿素及びポリアミド、ポリイミド、ポリアゾメチンの単体或いはそれらの混合物であることを見出した。
これらの中では、ポリ尿素とポリアミドがより好ましい。これらの有機化合物は、結晶性の高い高分子なので通常のコーティング方法においては積層することは不可能であり、これらを積層するには、真空蒸着法の中の一種である蒸着重合法を用いる必要がある。
【0023】
蒸着重合法とは、真空中おいてお互いに反応性の高い2種以上のモノマー(重合させるためには、ジイソシアネート化合物とジアミン化合物が必要である)を加熱蒸発させ、基材上に衝突させるとモノマーの表面移動により基材上で重合反応が起こり、そこに蒸着薄膜層が得られるようにした方法で、官能基の組み合わせ及び用いるモノマーの構造を変化させることにより、多種多様の高分子膜の作製が可能となる。この蒸着重合法を用いることにより、これまで成膜が不可であった結晶性の高い高分子膜、例えば本発明の有機化合物からなる蒸着薄膜層(2)を構成するポリ尿素、ポリアミド、ポリイミド、ポリアジメチンやこれらの混合物等の樹脂による成膜が可能になる。これらの高分子膜は、寸法安定性に優れると共に密着性に優れるので、基材(1)と無機酸化物からなる蒸着薄膜層(3)との間に設けることにより蒸着薄膜層(3)の剥離を押さえることができる。蒸着重合の際に用いられる重合原料のジイソシアネート化合物及びジアミン化合物は、要求品質、積層する蒸着薄膜(3)を構成する無機酸化物の種類によって適宜選択することが可能である。
【0024】
有機化合物からなる蒸着薄膜層(2)の厚さは、用いられる有機化合物の種類・構成により最適条件が異なるが、一般的には5〜100nmの範囲内であることが望ましく、その値は適宜選択される。ただし膜厚が50nmより薄いと均一な膜が得られにくく密着性が低下する場合がある。また膜厚が100nmを越える場合は厚すぎるために生産性やコスト的に難がある。より好ましいのは、蒸着薄層の厚さが10〜75nmの範囲内にあることである。
【0025】
蒸着重合の装置としては、真空釜中にニクロム線やハロゲンランプなどを加熱源とする蒸発源がモノマーごとにあり(2種であれば2個)、そのモノマーを所定の温度に加熱した後、膜厚モニターによって所望の組成になるようにコントロールしながら基材上に成膜させる簡単なもので構わない。
【0026】
次いで無機酸化物からなる蒸着薄膜層(3)を説明する。無機酸化物からなる蒸着薄膜層(3)は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化錫、酸化マグネシウム、或いはそれらの混合物などの無機酸化物の蒸着薄膜からなり、透明性を有しかつ酸素、水蒸気等のガスバリア性を有する層であればよい。各種殺菌処理耐性を配慮するとこれらの中では、特に酸化アルミニウム及び酸化珪素を用いることがより好ましい。ただし本発明の蒸着薄膜層(3)は、上述した無機酸化物に限定されず、上記条件に適合する材料であれば種々のものを用いることができる。
【0027】
無機酸化物からなる蒸着薄膜層(3)の厚さは、用いられる無機化合物の種類・構成により最適条件が異なるが、一般的には5〜300nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。ただし膜厚が5nm未満であると均一な膜が得られないことや膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア層としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また膜厚が300nmを越える場合は薄膜にフレキシビリティを保持させることができず、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じる恐れがある。好ましくは、10〜150nmの範囲内である。
【0028】
無機酸化物からなる蒸着薄膜層(3)を有機化合物からなる蒸着薄膜層(2)上に形成する方法としては種々在り、通常の真空蒸着法により形成することができる。また、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを用いることも可能である。但し生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。また、真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることが好ましい。また蒸着薄膜層と基材の密着性及び蒸着薄膜層の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いて蒸着することも可能である。また、蒸着膜の透明性を上げるために蒸着の際、酸素ガスなど吹き込む反応蒸着を行っても一向に構わない。
【0029】
更に、基材(1)上の有機化合物からなる蒸着薄膜(2)と無機酸化物からなる蒸着薄膜(3)の積層方法としては、蒸着薄膜(2)を蒸着重合法にて成膜後、別機にて蒸着薄膜(3)を真空蒸着法により積層する方法、2キャン方式の巻き取り蒸着装置を用いて1キャン目で蒸着薄膜(2)を2キャン目で蒸着薄膜(3)をインラインにて積層する方法、1キャンの巻き取り蒸着装置を用いて巻き出し側にて蒸着薄膜(2)を巻き取り側にて蒸着薄膜(3)をインラインにて積層する方法等、種々の方法も用いることが可能であり、生産性や経済性を考慮すると両方の膜をインラインにて積層することがより好ましい。
【0030】
一方、オーバーコーティング層(4)は、要求品質により更なる高度なガスバリア性を付与するために、無機酸化物からなる蒸着薄膜層(3)上に必要に応じて設けられるものである。
【0031】
この、オーバーコーティング層(4)は、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシド及び加水分解物又は、(b)塩化錫、の少なくとも一方を含む水溶液或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を用いて形成される。具体的には、水溶性高分子と塩化錫を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させた溶液、或いはこれに金属アルコキシドを直接、或いは予め加水分解させるなど処理を行ったものを混合した溶液を使用する。
この溶液を無機酸化物からなる蒸着薄膜層(3)上にコーティング後、加熱乾燥しオーバーコーティング層(4)とする。
【0032】
以下にコーティング剤に含まれる各成分について更に詳細に説明する。
コーティング剤に用いられる水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。特にポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)をコーティング剤を構成する水溶性高分子として用いた場合、ガスバリア性が最も優れる。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものである。PVAとして例えば、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVA等を含み、特に限定されない。
【0033】
またコーティング剤を構成する塩化錫としては、塩化第一錫(SnCl2)、塩化第二錫(SnCl4)、或いはそれらの混合物であってもよい。またこれらの塩化錫は、無水物でも水和物でもあってもよい。
【0034】
更に金属アルコキシドは、一般式、M(OR)n(M:Si、Ti、Al、Zr等の金属、R:CH3、C2H6等のアルキル基)で表せる化合物である。具体的にはテトラエトキシシラン〔Si(OC2H6)4〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2’−C3H7)3〕などがあげられ、中でもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0035】
コーティング剤のガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、或いは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を必要に応じて加えることができる。
【0036】
例えばコーティング剤に加えられるイソシアネート化合物としては、その分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものが好ましい。例えばトリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネートなどのモノマー類と、これらの重合体、誘導体が挙げられる。
【0037】
コーティング剤の塗布方法には、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法などの従来公知の手段を用いることができる。被膜の厚さは、コーティング剤の種類や加工機や加工条件によって異なる。乾燥後の厚さが、0.01μm以下の場合は、均一な被膜が得られなく十分なガスバリア性を得られない場合があるので好ましくない。また厚さが50μmを超える場合は被膜にクラックが生じ易くなるため問題がある。好ましくは0.01〜50μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.1〜10μmの範囲にあることである。
【0038】
本発明においては、更に無機酸化物からなる蒸着薄膜層やオーバーコーティング層上に他の層を積層することも可能である。例えば印刷層、介在フィルム、ヒートシール層等である。
【0039】
印刷層は、本発明の強密着性を有するガスバリア性透明積層体を包装袋などとして実用的に用いるために形成されるものである。例えば、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系等の従来から用いられているインキバインダー樹脂に各種顔料、体質顔料及び可塑剤、乾燥剤、安定剤等の添加剤などが添加されてなるインキにより構成される層である。この印刷により、文字、絵柄等を形成する。形成方法としては、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアーコート等の周知の塗布方式を用いることができる。印刷層の乾燥膜厚(固形分)は0.1〜2.0μm程度で良い。
【0040】
また介在フィルムは、無機酸化物からなる蒸着薄膜層またはオーバーコーティング層とヒートシール層の間に介在させ、袋状包装材料時の破袋強度や突き刺し強度を高めるために設けるもので、一般的に機械強度及び熱安定性の面から二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム等を用いる。厚さは、材質や要求品質に応じて決められるが、一般的には10〜30μmの範囲である。これらは、例えば2液硬化型ウレタン系樹脂等の接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法等の公知の方法により積層できる。
【0041】
更にヒートシール層は袋状包装体などを形成する際に接着層として作用するように設けるものである。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂が用いられる。厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmの範囲である。形成方法としては、上記樹脂からなるフィルム状のものを2液硬化型ウレタン樹脂などの接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法等を用いることが一般的であるが、それ以外の公知の方法により積層することも可能である。
【0042】
【実施例】
以下、本発明の強密着性を有するガスバリア性透明積層体を具体的な実施例を挙げて更に説明する。
【0043】
〈オーバーコーティング剤の調整〉
下記▲1▼液と▲2▼液を配合比(wt%)で6/4に混合したものを、ガスバリア性オーバーコーティング剤として用いた。
▲1▼ 液:テトラエトキシシラン10.4gに塩酸(0.1N)89.6gを加え、30分間撹拌し加水分解させた固形分3wt%(SiO2 換算)の加水分解溶液 ▲2▼液:ポリビニルアルコールの3wt%水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール重量比で90:10)
【0044】
〈参考例1〉
基材(1)として厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用い、この片面に、蒸着重合装置により厚さ15nmのポリ尿素からなる蒸着薄膜層(2)を形成した。次いで別機にて電子線加熱方式による真空蒸着装置により、金属アルミニウムを蒸発させそこに酸素ガスを導入し、厚さ15nmの酸化アルミニウムを蒸着して蒸着薄膜層(3)を形成し、参考例1に係る強密着性を有するガスバリア性透明積層体を得た。
【0045】
〈実施例1〉
無機酸化物からなる蒸着薄膜層(3)上に、上述した組成のオーバーコーティング剤をグラビアコート法により塗布し、厚さ0.5μmのオーバーコーティング層(4)を更に積層した以外は参考例1と同様の条件にて実施例1に係る強密着性を有するガスバリア性透明積層体を得た。
【0046】
〈実施例2〉
有機化合物からなる蒸着薄膜層(2)と無機酸化物からなる蒸着薄膜層(3)を、同じ蒸着機内にてインラインで積層した以外は実施例1と同様の条件にて実施例2に係る強密着性を有するガスバリア性透明積層体を得た。
【0047】
〈比較例1〉
有機化合物からなる蒸着薄膜層(2)を設けなかった以外は実施例1と同様の条件にて比較例1に係る透明積層体を得た。
【0048】
〈ドライラミネート〉
実施例1〜2並びに参考例1に係る強密着性を有するガスバリア性透明積層体及び比較例1の透明積層体の最上層の蒸着薄膜層或いはオーバーコーティング層側に介在フィルムとして、厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルムを2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により積層し、更にヒートシール層として、厚さ70μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により積層し包装材料を作製した。
【0049】
〈テスト〉
上記のようにして得られた各包装材料を用いて4辺をシール部とするパウチを作製し、内容物として水150gを充填した。その後、121℃−30分間のレトルト殺菌を行った。評価として、レトルト殺菌前後の酸素透過率(単位:cm 3 /m 2 /day、測定条件:30℃−70%RH)及びラミネート強度(300mm/minの剥離速度で測定、
単位:N/15mm)を評価した。その結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
比較例の透明積層体より作成した包装材料は、上述した包装材料として用いられる条件とした、内容物を直接透視することが可能なだけの透明性、内容物に対して影響を与える気体等を遮断する金属箔並の高度なガスバリア性及び各種殺菌耐性等を全て満たすものではないが、実施例1〜2並びに参考例1に係る強密着性を有するガスバリア性透明積層体より作成した包装材料はそれらを全て満たしていると言える。
【0052】
【発明の効果】
以上に述べたように本発明によれば、透明性に優れ、且つその下に位置する内容物の確認が可能で、しかもボイル殺菌やレトルト殺菌後に剥離を生じたり金属箔並の高度なガスバリア性が劣化することのない、汎用性の高い包装材料であり、包装分野において巾広く使用することが可能である。
【0053】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の強密着性を有するガスバリア性透明積層体の断面構成説明図である。
【符号の説明】
1 基材
2 有機化合物からなる蒸着薄膜層
3 無機酸化物からなる蒸着薄膜層
4 オーバーコーティング層
Claims (6)
- プラスチック材料からなる基材の少なくとも片面に、ポリ尿素、ポリアゾメチンの単体或いはそれらの混合物から選ばれる有機化合物からなる蒸着薄膜層と、無機酸化物からなる蒸着薄膜層と、オーバーコーティング層とが少なくとも順次積層されており、
該オーバーコーティング層が、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物又は、(b)塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなる層であることを特徴とする強密着性を有するガスバリア性透明積層体。 - 有機化合物からなる蒸着薄膜層が蒸着重合法により積層されたものであることを特徴とする請求項1に記載の強密着性を有するガスバリア性透明積層体。
- 無機酸化物からなる蒸着薄膜層が、酸化アルミニウム、酸化珪素或いはそれらの混合物からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の強密着性を有するガスバリア性透明積層体。
- 有機化合物からなる蒸着薄膜層及び無機酸化物からなる蒸着薄膜層が同じ巻取り蒸着機内にてインラインで積層されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の強密着性を有するガスバリア性透明積層体。
- 金属アルコキシドが、テトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウム、或いはそれらの混合物からなる群から選ばれる一つであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の強密着性を有するガスバリア性透明積層体。
- 水溶性高分子が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の強密着性を有するガスバリア性透明積層体。
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