以下に本発明の各実施形態を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
「第1実施形態」
図1は本発明の第1実施形態の薄膜トランジスタT1を備えた薄膜トランジスタ(アレイ)基板H1の要部平面図、図2は同薄膜トランジスタアレイ基板H1を備えた液晶表示装置Eの要部断面図、図3は同装置の一部断面図である。この実施形態の薄膜トランジスタ(アレイ)基板H1においては、ガラス等からなる透明の基板1上に、複数のゲート配線G・・・と複数のソース配線S・・・とが平面視マトリクス状に配設されている。そして、ゲート配線G・・・とソース配線S・・・とで囲まれた領域が1つの画素とされ、これらの画素領域毎に透明導電材料のITZO(インジウム錫亜鉛酸化物)またはIZO(インジウム亜鉛酸化物)からなる画素電極2が基板1の上方に位置した状態で設けられ、各画素領域の隅部にスイッチング素子としての薄膜トランジスタT1が設けられている。なお、基板1としては少なくとも表面が絶縁性を有するとともに必要な部分が透明な基板であれば良い。例えば、基板1を液晶表示装置Eに適用する場合は、表示に寄与する画素領域に対応する部分を少なくとも透明領域としてその他の部分にブラックマトリクス等の遮光膜を内蔵化した基板を用いても良いのは勿論である。
この例の薄膜トランジスタアレイ基板H1において、基板1上の各画素領域の隅部の薄膜トランジスタ形成部分に、ポリシリコンあるいはアモルファスシリコン(a-Si)等からなるアイランド状の半導体能動膜3が形成され、基板1上にこれらの半導体能動膜3と基板上面を覆って下部ゲート絶縁膜5が積層され、下部ゲート絶縁膜5上にゲート配線Gが平面視図1に示すように相互に平行に複数形成されるとともに、各ゲート配線Gにおいて各画素領域の半導体能動膜3の中央部上に延出するように短冊状のゲート電極6が形成されている。前記半導体能動膜3はその中央部にチャネル部3aが形成され、その両端側にイオンがドープされた状態とされている。
更に、下部ゲート絶縁膜5上にこの下部ゲート絶縁膜5と前記各ゲート配線Gと各ゲート電極6とを覆って上部ゲート絶縁膜7が積層されている。また、前記上部ゲート絶縁膜7と下部ゲート絶縁膜5には、半導体能動膜3の一側端部に接続するコンタクトホール8と、半導体能動膜3の他側端部に接続するコンタクトホール9がそれぞれ形成され、半導体能動膜3の一側端部上の部分には上部ゲート絶縁膜7の上に延出するとともに、コンタクトホール8を通過して半導体能動膜3の一側端部に接続するドレイン電極10が形成され、半導体能動膜3の他側端部上の部分には上部ゲート絶縁膜7の上に延出するとともに、コンタクトホール9を通過して半導体能動膜3の他側端部に接続するソース電極11が形成されている。従って、半導体能動膜3と下部ゲート絶縁膜5と上部ゲート絶縁膜7とゲート電極6とドレイン電極10とソース電極11により薄膜トランジスタT1が構成されている。
次に、ソース配線Sとゲート配線Gとで囲まれた領域であって、上部ゲート絶縁膜7の上には、ソース配線Sとゲート配線Gとで囲まれた領域の大部分を占めるとともに、ソース電極11の形成部分と半導体能動膜3の形成部分とゲート電極6の形成部分のそれぞれの領域を除いた部分において上部ゲート絶縁膜7に密着し、ドレイン電極10の端部側に直接密着するように画素電極2が形成されている。
また、複数形成されたソース配線Sの各端部側(図1では上側端部のみを記載した)には、ソース配線Sの端部SE1に一部を直接積層され、他の部分を上部ゲート絶縁膜7に積層されたITZO(インジウム錫亜鉛酸化物)またはIZO(インジウム亜鉛酸化物)からなるゲート端子12が形成されている。更に、複数形成されたゲート配線Gの各端部側(図1では左側端部のみを記載した)には、ゲート配線Gの端部GE1に一部を直接積層され、他の部分を上部ゲート絶縁膜7に積層されたITZO(インジウム錫亜鉛酸化物)またはIZO(インジウム亜鉛酸化物)からなるゲート端子13が形成されている。
この実施形態の構造においては、ITZOまたはIZOからなる画素電極2が上部ゲート絶縁膜7の上に直に接触して形成されており、更にドレイン電極10に直に接触形成されているので、図29〜図31に示した従来構造とは異なり、パッシベーション膜111が省略された構造とされている。このような構造を採用することにより、パッシベーション膜111を形成するための工程を簡略化できるとともに、パッシベーション膜111に従来形成していたコンタクトホール112、108、113の形成工程も省略できるので工程の簡略化を推進できる。
ここで図1〜図3に示す構造を採用すると、画素電極2のパターニングの工程で画素電極2をエッチングによりパターニングする際に、画素電極2のエッチング液にドレイン電極10とソース電極11も浸漬されることになるが、ITZOまたはIZOからなる画素電極2をエッチングするためのエッチング液として、後述する如くシュウ酸や塩酸など、ドレイン電極10およびソース電極11の構成金属材料を損傷させないものを選択できるので、画素電極2のエッチング処理時にドレイン電極10とソース電極11を損傷させることがない。
次に、図1〜図3に示す構造にあっては、薄膜トランジスタアレイ基板と対向する透明基板15との間に液晶16が封入されて液晶表示装置が構成され、対向基板15側に設けられた共通電極17と前記画素電極2が電界を液晶に印加するか否かによって液晶の配向制御ができるように構成されている。ここで前述のソース端子12・・・とゲート端子13・・・は、液晶16を封止している図示略の封止材の外部側に設けられており、これらの部分には駆動用LSIの端子が接続されるようになっている。即ち、テープキャリアパッケージと称される駆動用LSIの端子などが接続されるので、ITZOまたはIZOのソース端子12・・・とゲート端子13・・・を設けておき、これらの端子との良好な接続性を確保することが好ましい。
以下に、図4ないし図8を基に、図1〜図3に示す構造と同等の構造の薄膜トランジスタ(アレイ)基板を製造する方法について説明する。ガラス等の透明基板1上にポリシリコンまたはアモルファスシリコンからなる半導体膜とSiO2からなる下地絶縁膜を積層し、これらをフォトリソ工程でパターニングして図4に示すアイランド状の半導体膜20とゲート下部絶縁膜21を形成する。次に、ゲート絶縁膜とゲート電極形成用の電極膜を積層し、これらをフォトリソ工程でパターニングして図5に示すようにゲート絶縁膜22とゲート電極23を形成する。
次にイオンドーピング処理を行い、半導体膜20の両側部分にイオンドーピングを施し、更にこれらを中間絶縁膜25で覆い、この中間絶縁膜25に半導体膜20の両端側に通じるコンタクトホール26、27を形成し、中間絶縁膜25の上に前述のコンタクトホール26、27を介して半導体膜20の一側に接続するソース電極28をに示すように形成し、更に半導体膜20の他側に接続するドレイン電極29を形成する。
次にこれらの上にIZO(インジウム亜鉛酸化物)層またはITZO(インジウム錫亜鉛酸化物)層を全体に積層してからフォトリソ工程によりパターニングして図8に示すように画素電極30を形成すると同時に、ソース配線Sの端部側にソース端子31をゲート配線Gの端部側にゲート端子をそれぞれ形成する。ここで、用いるIZO層として、インジウム酸化物(InOx)を90%と亜鉛酸化物(ZnOx)を10%の混合物の層を例示することができる。また、IZO層をエッチングするためのエッチング液としては、シュウ酸:(COOH)2あるいは塩酸:HClなどの酸を用いることができる。シュウ酸として、例えば、0.6mol/lの濃度のものを用いることができ、塩酸としては3.5%のものを用いることができるが、ここで例示した濃度は一例であり、他の濃度のシュウ酸あるいは塩酸としても良いのは勿論である。
また、用いるITZO層として、インジウム(In)酸化物(In2O3)と、錫(Sn)酸化物(SnO2)と、亜鉛(Zn)酸化物(ZnO)を主成分とする複合酸化物からなる層を例示することができる。なお、これらの主成分の酸化物の外に数at%程度の不純物を含んでいても差し支えない。
このITZO層においては、他の配線あるいは導電体と接続して用いられるので、これらとの接続部分において、少なくとも錫が亜鉛よりも多く配合され、結晶性を示すことが必要である。例えば、ITZO層の表面部分において配線や他の導体との接続を行う場合は、表面部分の組成において少なくとも錫が亜鉛よりも多く配合され、結晶性を示すことが必要である。
次に、ITZO層において、亜鉛とインジウムと錫の合計量に対する亜鉛の原子数率が1at%ないし9at%であり、亜鉛に対する錫の原子数比が1以上であり、かつ、亜鉛とインジウムと錫の合計量に対する錫の原子数率が20at%以下、より好ましくは1at%以上、20at%以下の範囲である。そして更に、前記亜鉛とインジウムと錫の合計量に対する亜鉛の原子数率が2at%ないし7at%であり、前記亜鉛とインジウムと錫の合計量に対する錫の原子数率が5at%ないし10at%であることがより好ましい。さらに、インジウムの組成範囲は、亜鉛とインジウムと錫の合計量に対するインジウムの原子数率が98at%以下、75at%以上である。
ITZO層中のインジウム酸化物は主成分であり、複合酸化物中において酸素と結合していない過剰インジウムが電子キャリアを発生し、酸素欠損型の導電機構を構成する。添加成分としての錫酸化物は複合酸化物中において4価の錫を活性化して電子キャリアを発生するために重要である。また、複合酸化物がアモルファス状態であると亜鉛酸化物の2価の亜鉛は活性化しないので、電子キャリアを消費するアクセプタとならない。これら添加物のバランスを考慮して前記の組成範囲を選択する。
また、前述の組成のITZO層を実際の配線用として用いる場合、他の配線や端子との接続部分は少なくとも結晶性であることが好ましい。前記組成範囲のITZO層は通常の成膜のままではアモルファス膜であるが、これを結晶化温度以上に加熱するアニール処理(180℃〜300℃の温度に加熱する熱処理)を行えば容易に結晶化する。なお、熱処理温度は周囲の回路や基板の耐熱温度に応じて使い分けることができるが、後述する液晶パネル用として利用した場合に、周辺回路や基板の耐熱性から、好ましくは、250℃以下、200℃程度がより好ましいと考えられる。
前述の組成のITZO層は、成膜のままでのアモルファス状態では導体(ソース配線端部やゲート配線端部あるいはTCP:テープキャリアパッケージ)との接触抵抗は高く(41Ω程度)、微細配線接続用として良好な抵抗であるとは言えないが、これを先の温度で熱処理して少なくとも表面部分(表面から深さ50Å程度)を結晶化することで少なくとも接続部分を低抵抗化(2.3Ω程度)することができる。この結晶化する際の熱処理雰囲気は、大気中、N2雰囲気中、H220%、N280%雰囲気中、O220%、N280%雰囲気中、真空雰囲気中のいずれでも良い。なお、前記結晶化した酸化物透明導電膜は大気中の水分(あるいは酸素)との結合を防止できるので、経時的に接続抵抗が上昇することもない。 また、前述の組成のアモルファス状態のITZO層は、希塩酸、有機酸等の弱酸でのエッチングが容易にできるので、アモルファス状態の酸化物透明導電膜のままの状態でエッチング処理し、パターニングを行い配線を形成し、パターニング後に配線接続部分などの必要部分を熱処理して配線接続部分を低抵抗化することで微細回路接続部分であっても低抵抗接続ができる。
次に、前述の組成のITZO層を形成するには、スパッタ成膜等の成膜法で絶縁性の基板等の上面に成膜し、熱処理することで得ることができるが、その場合に用いるターゲットとして以下の組成のターゲットが好ましい。好適に使用できるターゲットの組成は、インジウム酸化物と錫酸化物と亜鉛酸化物を含む複合酸化物からなり、亜鉛とインジウムと錫の合計量に対する亜鉛の原子数率が1at%ないし12at%であり、亜鉛に対する錫の原子数比が1以上であり、かつ、亜鉛とインジウムと錫の合計量に対する錫の原子数率が22at%以下のものである。また、前述のターゲットとして、前記亜鉛とインジウムと錫の合計量に対する亜鉛の原子数率が2at%ないし10at%であり、前記亜鉛とインジウムと錫の合計量に対する錫の原子数比が5at%ないし12at%であることがより好ましい。
前述の組成の酸化物透明導電膜を得るために用いるターゲットにおいて、スパッタした際に亜鉛と錫は飛散し易く、膜中に取り込まれ難いので、ターゲットとして亜鉛と錫を目的の組成の膜よりも多く含む組成で良い。
ところで、前述のIZO層またはITZO層を前記のエッチング液でエッチングする際に、ソース配線Sとソース電極28とゲート電極29がエッチング液に浸漬されることとなるが、シュウ酸をエッチング液として用いる場合は、Al、Cu、Mo、Cr、Ti、Ta、Wなどの金属から、あるいはこれらの合金からソース配線Sとソース電極28とゲート電極29を形成することができるとともに、希塩酸をエッチング液として用いる場合、Cu、Mo、Cr、Ti、Ta、Wなどの金属からソース配線Sとソース電極28とゲート電極29を形成することができる。ただし、希塩酸をエッチング液として用いた場合に配線用あるいは電極用としてAlを用いるとAlが塩酸で損傷されるので好ましくない。また、この外に有機酸などの弱酸を用いてエッチングすることもできる。
なお、ITZO層を使用する場合、アモルファス状態のITZO層を形成後、エッチングして他の層の導体部分との接続部分を形成する必要がある。ここで先の組成のITZO層であるならば、エッチング液として強酸ではなく、希塩酸や有機酸などの弱酸でエッチングできるので、サイドエッチ量を少なくすることができ、その分微細構造をエッチングで得ることができる。そして、ITZO層に微細エッチングを行って、規定サイズの画素電極等を形成した後、これらの層を結晶化温度以上に加熱してアモルファス状態のITZO層を結晶化するならば、結晶化した部分の抵抗を低くできるので、ドレイン電極との接続、端子部との接続を低抵抗で行うことができる。以上のようにITZO層をアモルファス状態でエッチングしてから熱処理して結晶化し低抵抗接続するならば、微細配線部分であっても、接続抵抗を低くしたままで接続した部分を備えた構造を得ることができる。
以上の工程により図8に断面構造を示す薄膜トランジスタT2を得ることができる。このように得られた薄膜トランジスタT2は先に図1〜図3を基に説明した薄膜トランジスタT1とほぼ同等の構造であり、画素電極30が直接ドレイン電極29に接続されるとともに、ソース端子31がソース配線にゲート端子がゲート端子にそれぞれ直接接続されているので、ソース電極28とドレイン電極29の上に従来必要であった絶縁膜としてのパッシベーション膜を省略することができ、このパッシベーション膜に従来形成していたコンタクトホールも不要になるので、先に説明したようにパッシベーション膜の省略ができ、パッシベーション膜に形成するコンタクトホールも略することができるので、工程の簡略化に寄与する。より具体的には、パッシベーション膜そのものを形成する工程と、コンタクトホール形成用の露光工程とドライエッチング工程とストライプ工程と洗浄工程を省略することができる。
「第2実施形態」
図9は本発明の第2実施形態の薄膜トランジスタT3を備えた薄膜トランジスタ(アレイ)基板H3の要部平面図、図12Bは薄膜トランジスタ部分の要部断面図である。なお、図12Bでは液晶表示装置を構成するための対向基板側の構成と液晶については記載を省略したが、図12Bに示す薄膜トランジスタアレイ基板H3を用いて液晶表示装置を構成する場合は、第2図に示した場合と同様に図12Bに示す薄膜トランジスタアレイ基板H3に対して対向基板と液晶を組み合わせて構成することができる。
この実施形態の薄膜トランジスタ(アレイ)基板H3においては、ガラス等からなる透明の基板1上に、複数のゲート配線G・・・と複数のソース配線S・・・とが平面視マトリクス状に配設されている。そして、ゲート配線G・・・とソース配線S・・・とで囲まれた領域が1つの画素とされ、これらの画素領域毎に透明導電材料のITZO(インジウム錫亜鉛酸化物)またはIZO(インジウム亜鉛酸化物)からなる画素電極32が基板1の上方に位置した状態で設けられ、各画素領域の隅部にスイッチング素子としての薄膜トランジスタT3が設けられている。
この例の薄膜トランジスタアレイ基板H3において、透明基板上の各画素領域の隅部の薄膜トランジスタ形成部分に、ゲート配線Gから引き出された短冊状のゲート電極33が形成され、これらゲート配線G・・・とゲート電極33を覆うようにゲート絶縁膜34が形成され、ゲート電極33上のゲート絶縁膜34上にポリシリコンまたはアモルファスシリコン(a-Si)等からなるアイランド状の半導体能動膜35がゲート電極33の上方を横切るように設けられている。そして、リン等のn型不純物を含むアモルファスシリコン(a-Si:n+)からなるオーミックコンタクト層36を介して半導体能動膜35の一側端部上にソース電極37が積層され、半導体能動膜35の他端部上に同様のオーミックコンタクト層36を介してドレイン電極38が積層され、ソース電極37とドレイン電極38とがゲート電極33の上方で対峙される一方、ソース電極37がソース配線Sに一体的に連続されるとともに、ドレイン電極38が後述の画素電極32に直接積層されて薄膜トランジスタT3が構成されている。
次に、ソース配線Sとゲート配線Gとで囲まれた領域であって、ゲート絶縁膜34の上には、ソース配線Sとゲート配線Gとで囲まれた領域の大部分を占めるとともに、ソース電極37の形成部分と半導体能動膜35の形成部分とゲート電極38の形成部分のそれぞれの領域を除いた部分においてゲート絶縁膜34に密着し、ドレイン電極38の端部側に直接密着積層するように画素電極32が形成されている。
また、複数形成されたソース配線Sの各端部側(では上側端部のみを記載した)には、ソース配線Sの端部SE2に一部を直接積層されたIZOまたはITZOからなるソース端子42が形成されている。更に、複数形成されたゲート配線Gの各端部側(図1では左側端部のみを記載した)には、ゲート配線Gの端部GE2に一部を直接積層され、他の部分を基板1に積層されたIZOまたはITZOからなるゲート端子43が形成されている。
なお、図12Bに示す構造では液晶と対向基板を省略して記載したが、図12Aに示す薄膜トランジスタアレイ基板H3と対向基板と間に液晶が封入されて液晶表示装置が構成されるのは、先の第1実施形態の場合と同等である。
この実施形態の構造においては、IZOまたはITZOからなる画素電極32がゲート絶縁膜34の上に直に接触して形成されており、更にドレイン電極38に直に積層されているので、図29〜図31に示した従来構造とは異なり、パッシベーション膜111が省略された構造とされている。このような構造を採用することにより、パッシベーション膜111を形成するための工程を簡略化できるとともに、パッシベーション膜111に従来形成していたコンタクトホール112、108、113の形成工程も省略できるので工程の簡略化を推進できる。
ここで、図9と図12Bに示す構造を採用すると、画素電極32のパターニングの工程で画素電極32をエッチングによりパターニングする際に、画素電極32のエッチング液にドレイン電極38とソース電極37も浸漬されることになるが、IZOまたはITZOからなる画素電極32をエッチングするためのエッチング液として、先に説明の如くシュウ酸や塩酸など、ドレイン電極38およびソース電極37の構成金属材料を損傷させないものを選択できるので、ドレイン電極38とソース電極37を損傷させることがない。また、同様に画素電極32のパターニングの工程で画素電極32をエッチングによりパターニングする際に、画素電極32のエッチング液にソース配線Sの端部SE2とゲート配線Gの端部GE2も浸漬されることになるが、IZOまたはITZOからなる画素電極32をエッチングするためのエッチング液として、先に説明の如くシュウ酸や塩酸など、ソース配線Sの端部SE2とゲート配線Gの端部GE2の構成金属材料を損傷させない弱酸を選択できるので、ソース配線Sの端部SE2とゲート配線Gの端部GE2を損傷させることなくソース端子42とゲート端子43を形成することができる。
以下に、図10ないし図12Aを基に、図9と図12Bとに示す構造の薄膜トランジスタ(アレイ)基板を4枚のマスクを用いて製造する方法について説明する。ガラス等の透明基板1上に前述の金属材料からなる金属膜を形成し、この金属膜を1枚目のマスクを用いるフォトリソ工程によりパターニングして図10に示すようにゲート配線Gとゲート電極33とゲート配線の端部GE2を形成する。次にこれらの上にゲート絶縁膜34とポリシリコンまたはアモルファスシリコン等からなる半導体膜35とオーミックコンタクト膜36と金属膜45を図11に示すように積層し、これらを2枚目のマスクを用いるフォトリソ工程でパターニングしてゲート配線端部とソース配線端部を覆っているすべての膜を除去し、これらの端部を露出させる。
次に3枚目のマスクを用いるフォトリソ工程において金属膜45とオーミックコンタクト膜36をパターニングして図12Aに示すようにゲート電極33上で対峙するようにソース電極37とドレイン電極38を形成する。
次にこれらの上にIZO層またはITZO層を全体に積層してから4枚目のマスクを用いるフォトリソ工程によりパターニングして図12Bに示すように画素電極32を形成すると同時に、ソース配線Sの端部側にソース端子42をゲート配線Gの端部側にゲート端子43をそれぞれ形成する。ここで、用いるIZO層として、インジウム酸化物(InOx)を90%、亜鉛酸化物(ZnOx)を10%含有する混合物の層を例示することができる。また、IZO層をエッチングするためのエッチング液としては、シュウ酸:(COOH)2あるいは塩酸:HClなどの酸を用いることができる。シュウ酸として、例えば、0.6mol/lの濃度のものを用いることができ、塩酸としては3.5%のものを用いることができる。また、ITZO層として、インジウム錫酸化物(InOx)を85%、錫酸化物(SnOx)を10%、亜鉛酸化物(ZnOx)を5%含有する混合物の層を例示することができる。更にこのITZO層をエッチングするためのエッチング液は前述のIZO層の場合と同等のものを利用できる。
前述のIZO層またはITZO層を前記エッチング液でエッチングする際に、ソース配線Sとソース電極37とゲート電極38がエッチング液に浸漬されることとなるが、シュウ酸をエッチング液として用いる場合は、Al、Cu、Mo、Cr、Ti、Ta、Wなどの金属からあるいはこれらの合金からソース配線Sとソース電極37とゲート電極38を形成することができるとともに、塩酸をエッチング液として用いる場合は、Cu、Mo、Cr、Ti、Ta、Wなどの金属からあるいはこれらの合金からソース配線Sとソース電極37とゲート電極38を形成することができる。ただし、塩酸をエッチング液として用いた場合に配線用あるいは電極用としてAlを用いるとAlが損傷するので好ましくない。なお、ITZO層を用いる場合、ITZO層を成膜法で形成した段階では非晶質であり抵抗が高いので、エッチング処理終了後、適切な工程において180℃以上に加熱する熱処理を施してITZO層の接続部分(表面部分)を低抵抗化しておくことが必要となる。
以上の工程により図12Bに断面構造を示す薄膜トランジスタT3を備えた薄膜トランジスタアレイ基板H3を得ることができる。このように得られた薄膜トランジスタT3は、画素電極32が直接ドレイン電極38に接続されるとともに、ソース端子42がソース配線Sにゲート端子43がゲート配線Gにそれぞれ直接接続されているので、ソース電極37とドレイン電極38の上に従来必要であった絶縁膜としてのパッシベーション膜を省略することができ、このパッシベーション膜に従来形成していたコンタクトホールも不要になるので、先に説明したように工程の簡略化に寄与する。より具体的には、パッシベーション膜そのものを形成する工程と、コンタクトホール形成用の露光工程とドライエッチング工程とストライプ工程と洗浄工程を省略することができる。
「第3実施形態」
図13は本発明の第3実施形態の薄膜トランジスタT5を備えた薄膜トランジスタ(アレイ)基板H5の要部平面図、図19は薄膜トランジスタ部分の要部断面図である。この実施形態の薄膜トランジスタ(アレイ)基板H5においては、ガラス等からなる透明の基板1上に、複数のゲート配線G・・・と複数のソース配線S・・・とが平面視マトリクス状に配設されている。そして、ゲート配線G・・・とソース配線S・・・とで囲まれた領域が1つの画素とされ、これらの画素領域毎に透明導電材料のIZOまたはITZOからなる画素電極52が基板1の上方に位置した状態で設けられ、各画素領域の隅部にスイッチング素子としての薄膜トランジスタT5が設けられている。
この例の薄膜トランジスタアレイ基板H5において、透明基板上の各画素領域の隅部の薄膜トランジスタ形成部分に、ゲート配線Gから引き出された短冊状のゲート電極53が形成され、これらゲート配線G・・・とゲート電極53を覆うようにゲート絶縁膜54が形成され、ゲート電極53上のゲート絶縁膜54上にポリシリコンまたはアモルファスシリコン(a-Si)等からなるアイランド状の半導体能動膜55がゲート電極53の上方に位置するように設けられている。そして、リン等のn型不純物を含むアモルファスシリコン(a-Si:n+)からなるオーミックコンタクト膜56を介して半導体能動膜55の一側端部上にソース電極57が形成され、半導体能動膜55の他端部上に同様のオーミックコンタクト膜56を介してドレイン電極58が形成され、ソース電極57とドレイン電極58とがゲート電極53の上方で対峙される一方、ソース電極57がソース配線Sに接続されるとともに、ドレイン電極58が後述の画素電極52に直接接続されて薄膜トランジスタT5が構成されている。
次に、ソース配線Sとゲート配線Gとで囲まれた領域であって、ゲート絶縁膜54の上には、ソース配線Sとゲート配線Gとで囲まれた領域の大部分を占めるとともに、ソース電極57の形成部分と半導体能動膜55の形成部分とゲート電極58の形成部分のそれぞれの領域を除いた部分においてゲート絶縁膜54に密着し、ドレイン電極58の端部側に直接密着するように画素電極52が形成されている。また、複数形成されたソース配線Sの各端部側(図13では上側端部のみを記載した)には、ソース配線Sの端部SE3に一部を直接積層されたIZOまたはITZOからなるソース端子62が形成されている。更に、複数形成されたゲート配線Gの各端部側(図1では左側端部のみを記載した)には、ゲート配線Gの端部GE3に一部を直接積層され、他の部分を基板1に積層されたIZOまたはITZOからなるゲート端子63が形成されている。
なお、図19に示す構造では液晶と対向基板を省略して記載したが、図19に示す薄膜トランジスタアレイ基板H5と対向基板と間に液晶が封入されて液晶表示装置が構成されるのは、先の第1実施形態の場合と同等である。
この実施形態の構造においては、IZOまたはITZOからなる画素電極52がゲート絶縁膜54の上に直に接触して形成されており、更にドレイン電極58に直に積層されているので、図29に示した従来構造とは異なり、パッシベーション膜111が省略された構造とされている。このような構造を採用することにより、パッシベーション膜111を形成するための工程を簡略化できるとともに、パッシベーション膜111に従来形成していたコンタクトホール112、108、113の形成工程も省略できるので工程の簡略化を推進できる。
ここで、図13に示す構造を採用すると、画素電極52のパターニングの工程で画素電極52をエッチングによりパターニングする際に、画素電極52のエッチング液にドレイン電極58とソース電極57も浸漬されることになるが、IZOまたはITZOからなる画素電極52をエッチングするためのエッチング液として、先に説明の如くシュウ酸や塩酸など、ドレイン電極58およびソース電極57の構成金属材料を損傷させないものを選択できるので、ドレイン電極58とソース電極57を損傷させることがない。
また、同様に画素電極52のパターニングの工程で画素電極52をエッチングによりパターニングする際に、画素電極52のエッチング液にソース配線Sの端部SE3とゲート配線Gの端部GE3も浸漬されることになるが、IZOまたはITZOからなる画素電極52をエッチングするためのエッチング液として、先に説明の如くシュウ酸や塩酸など、ソース配線Sの端部SE3とゲート配線Gの端部GE3の構成金属材料を損傷させないものを選択できるので、ソース配線Sの端部SE3とゲート配線Gの端部GE3を損傷させることなくソース端子とゲート端子を形成することができる。
以下に、図14ないし図18を基に、図13と図19に示す構造の薄膜トランジスタ(アレイ)基板を5枚のマスクを用いて製造する方法について説明する。ガラス等の透明基板1上に前述の金属材料からなる金属膜を形成し、この金属膜を1枚目のマスクを用いるフォトリソ工程によりパターニングして図14に示すようにゲート配線Gとゲート電極53とゲート配線の端部GE3を形成する。
次にこれらの上にゲート絶縁膜54とポリシリコンまたはアモルファスシリコン等からなる半導体能動膜551とオーミックコンタクト膜561を図15に示すように積層し、これらを2枚目のマスクを用いるフォトリソ工程でパターニングしてゲート電極53上のゲート絶縁膜54上の半導体能動膜551とオーミックコンタクト膜561のみを図16に示すように残して他の部分は除去する。次にこれらの上に図17に示すように金属膜59を積層するとともに、3枚目のマスクを用いるフォトリソ工程において金属膜59をパターニングして図18に示すように半導体能動膜55の一側端部にオーミックコンタクト膜561を介して半導体能動膜55の一側端部に先端部を重ねるソース電極57を形成し、同時に半導体能動膜55の他側端部にオーミックコンタクト膜56を介して半導体能動膜55の他側端部に先端部を重ねるドレイン電極58を形成する。
次に、4枚目のマスクを用いるフォトリソ工程により、ゲート配線Gの端部GE3とソース配線Sの端部SE3の周囲のゲート絶縁膜54を図18に示すように除去する。次にこれらの上にIZO層またはITZO層を全体に積層してから5枚目のマスクを用いるフォトリソ工程によりパターニングして図19に示すように画素電極52を形成すると同時に、図20に示すようにソース配線Sの端部SE3側にソース端子62を図19に示すようにゲート配線Gの端部GE3側にゲート端子63をそれぞれ形成する。ここで、用いるIZO層として、インジウム酸化物(InOx)を90%と亜鉛酸化物(ZnOx)を10%の混合物の層を例示することができる。また、IZO層をエッチングするためのエッチング液としては、シュウ酸:(COOH)2あるいは塩酸:HClなどの酸を用いることができる。シュウ酸として、例えば、0.6mol/lの濃度のものを用いることができ、塩酸としては3.5%のものを用いることができる。また、ITZO層として、インジウム錫酸化物(InOx)を85%、錫酸化物(SnOx)を10%、亜鉛酸化物(ZnOx)を5%含有する混合物の層を例示することができる。更にこのITZO層をエッチングするためのエッチング液は前述のIZO層の場合と同等のものを利用できる。
前述のIZO層またはITZO層を前記のエッチング液でエッチングする際、ソース配線Sとソース電極57とゲート電極58がエッチング液に浸漬されることとなるが、シュウ酸をエッチング液として用いる場合は、Al、Cu、Mo、Cr、Ti、Ta、Wなどの金属からあるいはこれらの合金からソース配線Sとソース電極57とゲート電極58を形成することができるとともに、塩酸をエッチング液として用いる場合は、Cu、Mo、Cr、Ti、Ta、Wなどの金属からあるいはこれらの合金からソース配線Sとソース電極57とゲート電極58を形成することができる。ただし、塩酸をエッチング液として用いた場合に配線用あるいは電極用としてAlを用いるとAlが損傷するので好ましくない。なお、ITZO層を用いる場合、ITZO層を成膜法で形成した段階では非晶質であり抵抗が高いので、エッチング処理終了後、適切な工程において200℃以上に加熱する熱処理を施してITZO層の接続部分(表面部分)を低抵抗化しておくことが必要となる。
以上の工程により図19に断面構造を示す薄膜トランジスタT5を得ることができる。このように得られた薄膜トランジスタT5は、画素電極52が直接ドレイン電極58に接続されるとともに、ソース端子62がソース配線Sにゲート端子63がゲート配線Gにそれぞれ直接接続されているので、ソース電極57とドレイン電極58の上に従来必要であった絶縁膜としてのパッシベーション膜を省略することができ、このパッシベーション膜に従来形成していたコンタクトホールも不要になるので、先に説明したように工程の簡略化に寄与する。より具体的には、パッシベーション膜そのものを形成する工程と、コンタクトホール形成用の露光工程とドライエッチング工程とストライプ工程と洗浄工程を省略することができる。
複数枚のガラス基板上に、室温成膜、O2分圧6.3×10-3Pa(5×10-5Torr)の条件でインジウム錫酸化物膜(ITO膜、In:Sn=92at%:8at%、厚さ1200Å)とインジウム錫亜鉛酸化物皮膜「ITZO膜:In2O3-SnO2-ZnO膜」(In:Sn:Zn=88at%:9at%:3at%、厚さ1200Å)と、インジウム亜鉛酸化物皮膜(IZO膜:In:Zn=82at%:18at%、厚さ1200Å)のいずれかを個々にスパッタ装置で形成し、各皮膜のX線回折ピークを求めた。ここで用いたターゲットは、ITO膜の場合はIn:Sn=90at%:10at%の組成のターゲット、ITZO膜の場合は、In:Sn:Zn=85at%:10at%:5at%の組成のターゲット、IZO膜の場合はIn:Zn=83at%:17at%の組成のターゲットとした。また、インジウム亜鉛皮膜とインジウム錫亜鉛皮膜については、20%H2/N2の雰囲気のアニール炉において250℃に2時間加熱する熱処理を施した後のX線回折ピークも求めた。図21にITO膜の結果を示し、図22にITZO膜の結果を示し、図23にIZO膜の結果を示す。
図21と図22と図23に示す結果から、室温成膜した場合、ITO膜は結晶性を示し、ITZO膜とIZO膜はいずれもブロードな曲線を示すアモルファス膜であることが判明した。また、ITZO膜は熱処理を施すと結晶化するが、IZO膜は熱処理を施しても結晶化しないことが判明した。以上のことから、本発明に係る組成のITZO膜は、成膜状態ではアモルファス状態であるがこれを熱処理することで結晶化できることが明らかになった。また、ITZO膜は成膜のままのアモルファス状態において600×10-6Ω・cmの抵抗を示したが、熱処理後は250×10-6Ω・cmの抵抗となり、アモルファス状態から結晶化することで抵抗値が減少することを確認できた。
図24は本発明に係るインジウム錫亜鉛酸化物膜の熱処理後の状態がアモルファス相状態となるか、多結晶状態となるかを示すグラフである。図24のグラフの縦軸においてZn/(In+Sn+Zn)[at%]は、亜鉛とインジウムと錫の合計量に対する亜鉛の原子数率を示すもので、横軸のSn/(In+Sn+Zn)[at%]は亜鉛とインジウムと錫の合計量に対する錫の原子数率を示す。
図24に描いたa線は亜鉛とインジウムと錫の合計量に対するZn:1at%の組成を示し、b線は亜鉛とインジウムと錫の合計量に対するZn:9at%の組成を示し、c線は亜鉛に対する錫の原子数比が1の場合の組成を示す。図24において、a線の下の組成範囲では、酸化物透明導電膜が成膜時に多結晶相となってしまい、弱酸では容易にエッチングできない組成範囲である。図24において、b線の上の組成範囲では成膜のままのアモルファス状態の膜を熱処理(アニール)してもアモルファスのままの状態を維持する組成範囲であり、接続抵抗を低抵抗化できない組成範囲である。また、図24においてc線は亜鉛と錫の組成比が同一であることを示すので、電子キャリアを亜鉛が消費する割合が多くなり、c線よりも上の組成範囲では電子キャリアを消費する亜鉛の量が多くなり過ぎて低抵抗接続できない組成範囲である。また、組成範囲がc線の下の領域であってもc線に近づくと抵抗が大きくなる傾向にあることを意味する。
また、図24の縦軸の亜鉛量が10at%であって、横軸の錫量が5at%の膜と縦軸の亜鉛量が10at%であって、横軸の錫量が9at%の膜はいずれも300℃に加熱する熱処理を施しても結晶化しなかった試料である。これらに対し、縦軸の亜鉛量が5at%であって、横軸の錫量が8at%の膜と縦軸の亜鉛量が5at%であって、横軸の錫量が9at%の膜はいずれも230℃で熱処理することで結晶化できた。更に、縦軸の亜鉛量が3at%であって、横軸の錫量が6at%の膜と縦軸の亜鉛量が3at%であって、横軸の錫量が9at%の膜はいずれも200℃で熱処理することで結晶化できた。
以上のことから、亜鉛量を少なくすることで結晶化温度を低くできることが判明した。また、本発明に係る酸化物透明導電膜を電子機器に応用する場合、基板あるいはその上に積層する種々の膜の耐熱温度の制限から、熱処理温度はできる限り低い方が好ましい。よって、熱処理温度を低くすると同時に低接続抵抗化するためには、インジウムに対して添加する亜鉛量、錫量ともに少ない方が好ましいと考えることができる。
更に、これらの種々の条件を十分に満足させるために、亜鉛に対する錫の原子数比が1を超える条件を満たした上で、亜鉛含有量に関し、1at%以上、9at%以下の範囲内でも、2at%以上、7at%以下の範囲がより好ましく、錫含有量に関し、20at%以下の範囲でも5at%以上、10at%以下の範囲がより好ましい。
次に、図25は先の成膜したまま(as.depo状態)のITZO膜において、亜鉛添加量(Zn添加量)を5at%に固定した場合に錫含有量の大小に応じた60秒でのエッチング量の変化を測定した結果を示す。エッチング液は3.5%濃度の塩酸溶液(弱酸溶液)を用いた。図25に示す結果から、Snの添加量が多いほどエッチング量は低下することが明らかである。よって本発明に係る酸化物透明導電膜を用いて微細配線化するためには、錫添加量を調節することでエッチングレート(E/R)を適宜選択できることで対応可能であることが判明した。ただし、Sn添加量20at%において得られるエッチング量は小さいので、これ以上Sn添加量を増加してもエッチング時間が長くなり、加工時間が増えるので、添加量の上限を20at%とすることが好ましい。
図26は先の成膜したままのITZO膜において、亜鉛添加量(Zn添加量)を3at%、錫添加量(Sn)を9at%に設定した場合に得られた酸化物透明導電膜の透過率の波長依存性を示す。図26に示す結果から、本発明に係る酸化物透明導電膜は、可視光域(大略450nm〜750nm)において90%を超える優れた透過率を示していることが明らかである。この値は従来から用いられているインジウム錫酸化物膜の透明導電膜と同等か、波長に応じてはそれ以上に優れたものである。従って、本発明に係る酸化物透明導電膜を液晶パネル用の画素電極や透明配線として用いても明るい表示を得ることができることが明らかである。
図27は先の組成のITZO膜において、成膜のままの膜の抵抗値とアニール後の膜の抵抗値に対する成膜雰囲気中の酸素分圧(O2分圧)依存性を測定した結果と、アモルファス状態のITO膜のエッチングレート(E/R)に及ぼす酸素分圧依存性を示す。ITO膜においても酸素分圧の微調整によってエッチングレート(E/R)の低いアモルファス状態のa-ITO膜を得ることができるが、酸素分圧の調整を厳密に行わないと、部分的にエッチングレート(E/R)の異なるa-ITO膜が生成されてしまう傾向がある。これは、a-ITO膜をエッチングして配線を形成する場合に、成膜時の酸素分圧のばらつきによりエッチングむらを生じやすいa-ITO膜となり易く、a-ITO膜では膜質により微細配線を精密に得ることが難しいことを意味する。
図28はTCP接続を行った後、信頼性試験を行った結果を示す。また、各測定値は以下の表1に示す。表1のTCP抵抗とは、TCPによる接続(幅40×10-6cmの金属端子電極との接続)を行い、任意の2本間の抵抗値を測定したものであり、TCP接続による金属端子との接続部分50本の平均値を示している。信頼性試験とは高温高湿(80℃、90%RH、240時間)後の抵抗値を測定したものである。
「表1」
H2アニール 膜構造 初期TCP抵抗 信頼性試験後
ITO膜 無し 多結晶 〇 1.1Ω 〇1.9Ω
a−ITO膜 有り 多結晶 〇 1.4Ω 〇2.0Ω
ITZO膜 有り 多結晶 〇 3.7Ω 〇2.3Ω
IZO膜 無し 非晶質 × 7.4Ω ×41.3Ω
ITZO膜 無し 非晶質 (× 7.4Ω) (×41.3Ω)
これらの結果から、IZO膜でもa-ITO膜でも接触抵抗が経時的に大気中において上昇してゆくことが判明した。また、アニール処理によりa-ITOは結晶化し、接触抵抗が低いまま安定することが判明した。なお、表1には記載されていないが、アニールしたIZO膜はX線回折ではアモルファスであることが判明し、接触抵抗は改善されるものの、ITO膜と同程度まで改善はされなかった。 なお、信頼性試験として、高温ドライ80℃、10%RH、240Hの環境でも同等の試験を行ったが図28に示す結果と全く同じ結果を得ることができた。 これらの試験結果から、アモルファス状態のITZO膜をアニールすることで低抵抗化することができ、しかも環境試験後においても低抵抗を保持できることが判明した。
以上説明したように本発明は、薄膜トランジスタ基板において、ソース配線にインジウム錫亜鉛酸化物またはインジウム亜鉛酸化物からなるソース端子を直接接続させることにより、ソース配線上に従来必要としていたパッシベーション膜等の絶縁膜を不要にすることができ、その絶縁膜に従来必要であったコンタクトホールも不要にすることができる。よって、絶縁膜の成膜工程を省略できるとともに、コンタクトホールの形成のために必要としていた工程も不要になり、工程の簡略化をなし得る。また、薄膜トランジスタ基板において、ゲート配線にインジウム錫亜鉛酸化物またはインジウム亜鉛酸化物からなるゲート端子を直接接続させることにより、あるいは、ドレイン電極にインジウム錫亜鉛酸化物またはインジウム亜鉛酸化物からなる画素電極を直接接続させることにより、従来必要としていたパッシベーション膜等の絶縁膜を不要にすることができ、その絶縁膜に従来必要であったコンタクトホールも不要にすることができる。よって、絶縁膜の成膜工程を省略できるとともに、コンタクトホールの形成のために必要としていた工程も不要になり、工程の簡略化をなし得る。
前述の各構造において、ソース配線、ゲート配線またはドレイン電極が、アルミニウム、銅、モリブデン、クロム、チタン、タンタルおよびタングステンのいずれか1つまたはこれらの合金からなることが好ましい。これらの材料を選択することにより、インジウム亜鉛酸化物をエッチングする際のエッチング液でソース配線、ゲート配線、またはドレイン電極を損傷されないようにすることが可能となる。
また、先に記載の構造のソース配線とゲート配線とドレイン電極を有し、先に記載のソース端子とゲート端子と画素電極を有する薄膜トランジスタアレイ基板であるならば、従来必要としていたパッシベーション膜等の絶縁膜を不要にすることができ、その絶縁膜に従来必要であったコンタクトホールも不要にすることができる。よって、絶縁膜の成膜工程を省略できるとともに、コンタクトホールの形成のために必要としていた工程も不要になり、工程の簡略化をなし得る。より具体的には、パッシベーション膜そのものを形成する工程と、コンタクトホール形成用の露光工程とドライエッチング工程とストライプ工程と洗浄工程を省略することができる。
そして、この構造の薄膜トランジスタアレイ基板を備えた液晶表示装置にあっては、従来必要としていたパッシベーション膜等の絶縁膜を不要にすることができ、その絶縁膜に従来必要であったコンタクトホールも不要にすることができる。よって、絶縁膜の成膜工程を省略できるとともに、コンタクトホールの形成のために必要としていた工程も不要になり、工程の簡略化をなし得る。
E・・・液晶表示装置、H1、H3、H5・・・薄膜トランジスタアレイ基板、S・・・ソース配線、G・・・ゲート配線、1・・・基板、2…画素電極、12、42、62・・・ソース端子、13、43、63・・・ゲート端子、15・・・対向基板、T1、T2、T3、T5・・・薄膜トランジスタ、10、29、38、58・・・ドレイン電極、11、28、37、57・・・ソース電極。