JP4697417B2 - 難燃性樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents
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Description
本発明は、難燃性樹脂組成物及びその成形品に関し、詳しくは、環境汚染の原因となるハロゲン系難燃剤又は燐系難燃剤を含有することなく、衝撃強度、ウエルド強度、耐モールドデボジット性、外観に優れ、厳しい難燃性の要求される電気・電子・OA機器等の部品に好適な難燃性樹脂組成物及びその成形品に関する。
従来、ポリカーボネート樹脂(PCと略記することがある)は、優れた機械的特性及び熱的特性を有し、種々の分野で使用されているが、更にその性質を強化、改良するため、他の熱可塑性樹脂とのポリマーアロイが数多く開発されている。その1つであるポリカーボネート樹脂にABS樹脂等のスチレン/アクリロニトリル系グラフト共重合体を配合した組成物は、機械的特性、流動性及び熱的特性に優れた熱可塑性樹脂材料として自動車分野、電気・電子分野等で使用されている。また、難燃性が要求される分野では、かかる組成物に難燃剤が配合される。環境に対する負荷が少ないハロゲン不含の難燃性の材料としては、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂からなる樹脂組成物に燐系難燃剤を配合した材料が提案(例えば、特許文献1,2:特開平02−115262号公報、特開平02−032154号公報参照)されているが、荷重撓み温度の低下やモールドデボジットの問題があった。
また、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂等からなる組成物にポリスチレンのスルホン酸金属塩を配合した樹脂組成物が提案(特許文献3:特開平11−172063号公報)されているが、難燃性を発揮するに十分な量のポリスチレンのスルホン酸金属塩を配合すると、樹脂組成物の衝撃強度や荷重撓み温度が低下し、成形品の外観も不満足であった。更に、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、ケイ素、ホウ素、酸素からなり、実質的にケイ素−酸素結合及びホウ素−酸素結合から形成される骨格を有し、且つ、分子内に芳香環を有する重合体からなる難燃性樹脂組成物も提案(特許文献4:特開2002−167499号公報)されているが、難燃性や衝撃強度が不十分であった。更にまた、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、有機アルカリ金属塩及び/又は有機アルカリ土類金属塩、官能基含有シリコーン化合物からなる組成物も提案(特許文献5:特開2004−035587号公報)されているが、衝撃強度やウエルド強度が低くかった。
以上のように、ポリカーボネート樹脂、ABS等のスチレン系樹脂、難燃剤からなる樹脂組成物は、荷重撓み温度、衝撃強度、ウエルド強度が低く、モールドデボジットや外観不良が発生し、実用性の乏しい難燃性樹脂組成物しか得られていないのが現状であった。
本発明の課題は、環境汚染や性能劣化をもたらすハロゲン系や燐系の難燃剤を使用することなく、これらの難燃剤を使用した場合と同等の厳しい難燃レベルを満たすことができ、しかも、衝撃強度、ウエルド強度、耐モールドデボジット性や外観に優れた難燃性樹脂組成物及びその成形品を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂とABS等のスチレン系樹脂からなる樹脂組成物に、新規のポリフェニレンエーテル(以下、PPEと略記する)オリゴマー体のスルホン酸塩を少量配合した難燃性樹脂組成物は、樹脂組成物の燃焼時に多量の炭化物を形成させ、該炭化物が燃焼している樹脂の表面を被覆し、樹脂内部で発生する分解ガスの燃焼場への供給を遅延させることにより、厳しい難燃レベルを達成できることを見出した。また、新規のPPEオリゴマー体のスルホン酸塩は、樹脂組成物との相溶性が良好なため、樹脂組成物に配合しても機械的強度や外観等に優れていることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、(A)ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、(B)ゴムの存在下に少なくともスチレン系単量体と(メタ)アクリロニトリルとを重合してなるゴム変性スチレン/(メタ)アクリロニトリル系グラフト共重合体5〜40質量部、及び(C)下記構造式(1)で示されるPPEオリゴマー体のスルホン酸アルカリ金属塩又はスルホン酸アルカリ土類金属塩0.01〜3.0質量部を配合してなる難燃性樹脂組成物及びこの難燃性樹脂組成物を成形して得られた成形品である。
本発明の難燃性樹脂組成物及びその成形品は、環境汚染や性能劣化をもたらすハロゲン系や燐系の難燃剤を使用することなく、これらの難燃剤を使用した場合と同等の厳しい難燃レベルを満たすことができ、しかも、衝撃強度、ウエルド強度、耐モールドデボジット性や外観に優れているので各種用途、特に電気・電子・OA機器部品の用途や精密部品用途に最適である。
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明に使用される(A)成分のポリカーボネート樹脂としては、芳香族ジヒドロキシ化合物あるいは芳香族ジヒドロキシ化合物と少量のポリヒドロキシ化合物との混合物を、ホスゲンあるいは炭酸ジエステルと反応させることによって調製される分岐していてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネートのホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。ポリカーボネート樹脂を調製するための重合法としては、界面重縮合法(ホスゲネーション法)、溶融重合法(エステル交換法)等の方法を採用することができる。
本発明に使用される(A)成分のポリカーボネート樹脂としては、芳香族ジヒドロキシ化合物あるいは芳香族ジヒドロキシ化合物と少量のポリヒドロキシ化合物との混合物を、ホスゲンあるいは炭酸ジエステルと反応させることによって調製される分岐していてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネートのホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。ポリカーボネート樹脂を調製するための重合法としては、界面重縮合法(ホスゲネーション法)、溶融重合法(エステル交換法)等の方法を採用することができる。
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール及び4,4’−ジヒドロキシジフェニル等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、好ましくはビスフェノールAである。分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−3−ヘプテン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン及び1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのポリヒドロキシ化合物、あるいは3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチンビスフェノール、5,7−ジクロルイサチンビスフェノール又は5−ブロモイサチンビスフェノールなどを前記芳香族ジヒドロキシ化合物と一緒に用いればよく、これら化合物の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物及びポリヒドロキシ化合物の全量に対して0.01〜10モル%であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
ポリカーボネート樹脂の分子量は、ポリカーボネート樹脂製造時に、即ち、重合触媒の存在下、芳香族ジヒドロキシ化合物及び末端停止剤として1価芳香族ヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液と、ハロゲン化カルボニル化合物とを量比を一定にして有機溶媒中に供給し、重合させることにより調整できる。末端停止剤として使用される1価芳香族ヒドロキシ化合物は、m−又はp−メチルフェノール、m−又はp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール又は長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂としては、好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂又は2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が挙げられる。更に、樹脂はシロキサン構造を有するポリマーでもよく、例えば、難燃性を高める目的でシロキサン構造を有するオリゴマーを共重合することができる。ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、好ましくは15,000〜40,000であり、より好ましくは16,000〜30,000である。
本発明に使用される(B)成分は、ゴムの存在下、少なくともスチレン系単量体と(メタ)アクリロニトリルを重合してなるゴム変性スチレン/(メタ)アクリロニトリル系グラフト共重合体である。なお、本明細書では、かかる(B)成分を、「ゴム変性スチレン/(メタ)アクリロニトリル系共重合体」と称することがある。また、必要により「ゴム変性スチレン/(メタ)アクリロニトリル系共重合体」製造時には、スチレン系単量体、アクリロニトリル及び/又はメタアクリロニトリルからなる主成分に、他の共重合可能な単量体を併用して重合してもよい。
(B)成分の原料であるスチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が使用され、好ましくはスチレンが挙げられる。(メタ)アクリロニトリルとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。他の共重合可能な単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、マレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられ、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。なお、本明細書においては、「(メタ)アクリロニトリル」はアクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルを意味し、「(メタ)アクリル」はアクリル及び/又はメタクリルを意味する。
重合時に共存させるゴムとしては、好ましくはガラス転移温度が10℃以下のゴムである。ゴムの具体例としては、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン/プロピレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられ、好ましくは、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム等が挙げられる。
ジエン系ゴムとしては、例えば、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン/(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステル共重合体、ブタジエン/スチレン/(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステル共重合体等が挙げられ、(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。ブタジエン/(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステル共重合体又はブタジエン/スチレン/(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステル共重合体における(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステルの割合は、ゴム質量の30質量%以下であることが好ましい。
アクリル系ゴムとしては、例えば、アクリル酸アルキルエステルからの合成ゴムが挙げられる。エステルを形成するアルキル基の炭素数は好ましくは1〜8である。アクリル酸アルキルゴムの具体例としては、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチルヘキシル等が挙げられる。アクリル酸アルキルには、任意に、架橋性のエチレン性不飽和単量体が用いられていてもよく、架橋剤としては、例えば、アルキレンジオール、ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、シアヌル酸トリアリル、(メタ)アクリル酸アリル、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。アクリル系ゴムとしては、更に、コアとして架橋ジエン系ゴムを有するコア−シェル型重合体が挙げられる。
ここで、(B)成分中におけるスチレン系単量体の含有率は10〜90質量%、好ましくは25〜85質量%であり、(メタ)アクリロニトリルの含有率は5〜40質量%、好ましくは5〜25質量%であり、ゴムの含有率は5〜80質量%、好ましくは10〜50質量%である。また、(B)成分中における他の共重合可能な単量体の含有率は20質量%以下、好ましくは10質量%以下である。
ゴムの存在下、スチレン系単量体と(メタ)アクリロニトリル系単量体をグラフト重合させる方法としては、特に限定されるものではないが、通常、乳化重合法あるいは塊状重合法が採用される。本発明の(B)成分としては、何れの方法で製造したものをも使用することができる。
「ゴム変性スチレン/(メタ)アクリロニトリル系共重合体」は、通常、ゴムに、少なくともスチレンと(メタ)アクリロニトリルからなる単量体の共重合物がグラフトしたグラフト共重合体の他、単量体のみが相互に共重合した共重合体を含有する混合物である。ゴムの存在下スチレン系単量体と(メタ)アクリロニトリルとを重合したグラフト共重合体としては、例えば、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂等が挙げられる。
本発明組成物中の(B)成分の含有量は、(A)成分のポリカーボネート樹脂100質量部に対し5〜40質量部である。(B)成分が5質量部未満であると得られる樹脂組成物の流動性が低下し易く、40質量部を超えると耐熱性が低下し易い。(B)成分の配合量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して好ましくは6〜35質量部であり、更に好ましくは10〜30質量部である。
本発明に使用される(C)成分のPPEオリゴマー体のスルホン酸アルカリ金属塩又はスルホン酸アルカリ土類金属塩は、下記構造式(1)で示される。
ここで、R2〜R13におけるハロゲン原子としては塩素、臭素、フッ素等が例示され、炭素数6以下のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基等が例示されるが、好ましくは、構造式(2)の−(O−X−O)−において、R2、R3、R4、R8、R9は炭素数3以下のアルキル基、R5、R6、R7は水素原子又は炭素数3以下のアルキル基であり、構造式(3)の−(Y−O)−において、R10、R11は炭素数3以下のアルキル基、R12、R13は水素原子又は炭素数3以下のアルキル基である。
特に好ましくは、構造式(2)の−(O−X−O)−において、R2、R3、R4、R7、R8、R9をメチル基、R5、R6を水素原子とした、下記構造式(5)で示される構造、及び、構造式(3)の−(Y−O)−において、R10、R11をメチル基、R12を水素原子又はメチル基、R13を水素原子とした、下記構造式(6)もしくは構造式(7)、又は、構造式(6)と構造式(7)がランダムに配列した構造を有するポリフェニレンエーテルオリゴマー体のスルホン酸アルカリ金属塩又はスルホン酸アルカリ土類金属塩である。
また、−(Z)−の酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜6の2価の有機基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基等のアルキレン基等が挙げられ、これらのアルキレン基は−O−が介在又はR1側末端に結合していてもよい。
なお、R1の好ましくは50〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%は、上記構造式(4)で示される基であり、残りは水素原子又はグリシジル基である。Mは、アルカリ金属又はマグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属であるが、ナトリウム及び/又はカリウムであることが好ましい。a、bは、好ましくはa+bが0〜50、特に好ましくはa+bが0〜10であり、c、dは、好ましくは0〜10、特に好ましくは0である。
本発明のポリフェニレンエーテルオリゴマー体のスルホン酸塩の製造方法は、下記構造式(8)で示される両末端エポキシ基含有ポリフェニレンエーテルオリゴマー体を使用するが、この構造式(8)で表される両末端にエポキシ基を有する2官能ポリフェニレンエーテルオリゴマー体(以下、OPE−2Glyと記す)は、構造式(9)、又は、構造式(10)で表される2官能ポリフェニレンエーテルオリゴマー体(以下、2官能OPEと記す)を、エピクロロヒドリン等のハロゲン化グリシジルと塩基の存在下で脱ハロゲン化水素反応させることにより得られる。
本発明で用いられる2官能OPEとは、構造式(9)、又は、構造式(10)で表される構造のものであれば特に限定されない。構造式(9)で示される2官能OPEは、例えば、特開2003−12796号公報に記載の2価のフェノールと1価のフェノールとをアミンの存在下で共重合する方法などで得ることができる。
なお、−(Z)−として、例えば、−(CH2)mO−、−(CH2CHR14O)−を導入して、構造式(10)で示される2官能OPEを製造する方法について説明する。−(CH2)mO−の場合は、構造式(9)で表される2官能OPEと構造式(11)で表されるハロゲン化アルコールとを、アルコール、エーテル、ケトン等の適当な溶剤中、水酸化カリウム、炭酸カリウム、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属塩存在下で反応させることにより導入することができる。また、−(CH2CHR14O)−の場合は、例えば特公昭52−4547号公報に記載の方法により、構造式(9)で表される2官能OPEと構造式(12)で表されるアルキレンオキサイドとを、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤中、水酸化カリウム、ナトリウムエトキシド、トリエチルアミン等のアルカリ触媒存在下で反応させることにより導入することができる。
本発明の中間体であるOPE−2Glyを製造するには、上述の構造式(9)、又は、構造式(10)で表される2官能OPEを用いるが、反応液から分離した粉末又は反応液に溶解した形のどちらでも用いることができる。
グリシジル化に用いるハロゲン化グリシジルとしては特に限定されないが、入手し易さ等の理由でエピクロロヒドリン又はエピブロモヒドリンが好ましい。その使用量は、構造式(9)、又は、構造式(10)の2官能OPE1モルに対して1〜100モル、特に5〜60モルの範囲とすることが好ましい。
塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムなどが使用できる。その使用量は、構造式(9)、又は、構造式(10)の2官能OPE1モルに対して0.1〜10モル、特に1〜4モルの範囲とすることが好ましい。
脱ハロゲン化水素反応を行う反応温度としては、−10℃〜120℃の間で行うことが好ましい。反応終了後は、水で洗浄して副生した塩を除去した後、過剰のハロゲン化グリシジルを減圧留去することでOPE−2Glyを固体で得ることができる。
本発明にかかわるポリフェニレンエーテルオリゴマー体のスルホン酸アルカリ金属塩又はスルホン酸アルカリ土類金属塩は、上記方法によって得られたOPE−2Glyの両末端エポキシ基をスルホン酸アルカリ(土類)金属塩化することによって製造することができる。エポキシ基のスルホン酸アルカリ(土類)金属塩化試薬としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、二亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸カリウムから選択される化合物を用いることが好ましく、この場合、エポキシ基に対するスルホン酸アルカリ(土類)金属塩化試薬中の硫黄元素のモル比(S/エポキシ基)を1.0以上とすることが好ましく、更には1.0〜1.2の範囲とすることがより好ましい。
また、この製造は有機溶剤中で行うことが好ましく、そのような有機溶剤としては、中間体であるOPE−2Glyを溶解又は分散可能なものであれば制限はないが、OPE−2Glyの溶解性、スルホン酸アルカリ(土類)金属塩化反応の進行のし易さ、及び生成物であるポリフェニレンエーテルオリゴマー体のスルホン酸アルカリ(土類)金属塩の分散性からは有機極性溶剤を用いることが好ましく、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶剤などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
更に、この製造は上記したスルホン酸アルカリ(土類)金属塩化試薬を溶解し、反応性を高めるために水の存在下で行うことが好ましく、特に二亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸カリウムをスルホン酸アルカリ(土類)金属塩化試薬として使用する場合には、これらを亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムへと転化させるために水の使用は必須とされる。また、反応効率を高めるために、更に触媒量の亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム等を併用することは任意とされる。
従って、実際の製造処方例としては、中間体であるOPE−2Glyを有機極性溶剤に溶解させ、ここに所定量のスルホン酸アルカリ(土類)金属塩化試薬と上記触媒の水溶液を滴下して、所定時間の反応を行う方法が挙げられる。ここで、上記の滴下、反応時の温度としては室温〜還流条件下で行うことができるが、反応をより容易に進行させるためには50℃以上の加熱条件下で行うことが好ましく、更には還流条件下で反応させることがより好ましい。また、反応時間に関しても特に限定はされないが、1〜20時間、より好ましくは還流条件下で2〜8時間反応させることでエポキシ基をスルホン酸アルカリ(土類)金属塩化することができる。
反応が進行するに従って、生成物であるポリフェニレンエーテルオリゴマー体のスルホン酸アルカリ(土類)金属塩が不溶化して粒状物が析出し、反応液は懸濁状態となる。反応終了後は、反応液中の水、有機極性溶剤を留去することによって粗生成物を得ることができ、そのまま仕上げることも可能であるが、粗生成物から水洗によって残存するスルホン酸アルカリ(土類)金属塩化試薬を取り除いたり、有機溶剤洗浄によって未反応の中間体オリゴマーを溶解除去することで、より純度の高い生成物を得ることができる。本発明のように有機系樹脂の添加剤として供する場合には、残存する水、有機溶媒を減圧乾燥によって取り除き、粉砕を行って微粉末状として仕上げることが好ましい。
(C)PPEオリゴマー体のスルホン酸アルカリ金属塩又はスルホン酸アルカリ土類金属塩の配合量は、(A)ポリカーボネート樹脂100質量部に対し0.01〜3.0質量部、好ましくは0.05〜2.0質量部、更に好ましくは0.08〜1.5質量部である。(C)PPEオリゴマー体のスルホン酸アルカリ金属塩又はスルホン酸アルカリ土類金属塩の配合量が0.01質量部未満では十分な難燃性が得られず、3.0質量部を超えると熱分解を起こし易くなって、機械的強度や外観が低下する。
本発明の難燃性樹脂組成物に(D)成分のシリコーン系化合物からなる難燃化剤を配合すると、更に難燃性が向上する場合がある。これは、燃焼時にシリコーン系化合物が架橋して難燃層を形成するためと考えられ、従来公知の各種シリコーン系化合物を添加することができる。
そのようなシリコーン系化合物としては、特に制限されるものではないが、下記平均組成式(13)で表される、分子中にケイ素原子に結合するフェニル基を有するオルガノポリシロキサンを用いることが好ましい。
R15 nR16 p(OR17)q(OH)rSiO(4-n-p-q-r)/2 (13)
(式中、R15はフェニル基、R16は水素原子及び炭素数1〜6のフェニル基を除く1価炭化水素基から選択される基、R17は炭素数1〜4の1価炭化水素基を示し、n、p、q、rは、0.1≦n≦2.0、0.2≦p≦2.5、0≦q≦1.5、0≦r≦0.35、0.9≦n+p+q+r≦2.8の範囲である。)
R15 nR16 p(OR17)q(OH)rSiO(4-n-p-q-r)/2 (13)
(式中、R15はフェニル基、R16は水素原子及び炭素数1〜6のフェニル基を除く1価炭化水素基から選択される基、R17は炭素数1〜4の1価炭化水素基を示し、n、p、q、rは、0.1≦n≦2.0、0.2≦p≦2.5、0≦q≦1.5、0≦r≦0.35、0.9≦n+p+q+r≦2.8の範囲である。)
このオルガノポリシロキサンは、ポリカーボネート樹脂への分散性、難燃化効果から、分子中にケイ素原子に結合するフェニル基を有するものであり、この特性付与の観点から、ケイ素原子1モルに対するフェニル基(R15)の置換モル数に相当するnは0.1≦n≦2.0の範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.15≦n≦1.4の範囲である。
一方、R16は水素原子又は炭素数1〜6のフェニル基を除く1価炭化水素基であり、この置換基を適量含有させることで、嵩高いフェニル基を含有するオルガノポリシロキサン分子の立体障害を緩和して空間的な自由度を向上させ、フェニル基同士の重なりを容易にして難燃化効果を高める効果があり、またR16が水素原子の場合、反応性を有するSi−H基による難燃化効果も期待できる。従って、このR16としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基等の炭素数2〜6のアルケニル基が好ましい。特に水素原子、メチル基及びビニル基が、立体障害緩和の点からも工業的にも好ましい。上記したような効果を得るためには、R16の含有量を上記式(13)中のpの値で0.2≦p≦2.5の範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.5≦p≦2.1の範囲である。
また、オルガノポリシロキサンにアルコキシ基を含有させることで、燃焼時にアルコキシ基の酸化分解架橋によりオルガノポリシロキサンとポリカーボネート樹脂とが結合して燃焼部に難燃層が形成され、発火粒の滴下(ドリップ)が防止される。上記式(13)のアルコキシ基中のR17は、炭素数1〜4の1価炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基が例示され、特にメチル基が工業的にも好ましく用いられる。炭素数5以上のアルキル基は、アルコキシ基としての反応性が低く、アルコキシ基を導入した場合の難燃化効果が期待できない。また、このアルコキシ基は多すぎると結果的に低分子量のオルガノポリシロキサンとなり、燃焼時に架橋反応する前に熱で気化してしまうことによる損失率が高くなるため、その含有量を上記式(13)中のqの値で1.5以下とすることが好ましく、より好ましくは1.2以下である。なお、qの下限は、より好ましくは0.05以上、特に0.1以上である。
更に、オルガノポリシロキサンに含まれるシラノール基は、製造上わずかに残存することがあるが、反応性が低く、難燃性に寄与することはほとんどないが、保存安定性やポリカーボネート樹脂と溶融加工する際の安定性、成形性の点から、その含有量を上記式(13)中のrの値で0.35以下とすることが好ましく、より好ましくは0.3以下、特に好ましくは0である。
このようなフェニル基含有オルガノポリシロキサンとしては、上記条件を満たすものであればいかなる組成や構造を有するものも有効に使用することができるし、組成や構造の異なる2種以上のオルガノポリシロキサンを併用することも可能であるが、本発明においては、分子中にケイ素原子に結合するフェニル基とメチル基を有し、更に分岐構造を有するオルガノポリシロキサン、分子中にケイ素原子に結合するフェニル基、メチル基やビニル基等の1価炭化水素基、及び、炭素数1〜4のアルコキシ基を有するオルガノポリシロキサン、あるいは分子中にケイ素原子に結合するフェニル基、メチル基及びSi−H基を有し、Si−H含有量が0.1〜1.2mol/100gの範囲であるオルガノポリシロキサンが、特に好適に使用される。
なお、ここで言う分岐構造とは、オルガノポリシロキサンの構造中に3官能シロキサン単位及び/又は4官能シロキサン単位を含有するものであり、Si−H含有量とは、オルガノポリシロキサン100g当たりに含まれるSi−H基のmol数のことであるが、これはアルカリ分解法によりオルガノポリシロキサンの単位重量当たり発生した水素ガスの体積を測定することにより求めることができる。例えば、25℃においてオルガノポリシロキサン1g当たり122mlの水素ガスが発生した場合、下記計算式により、Si−H含有量は0.5mol/100gとなる。
122×273/(273+25)÷22400×100≒0.5
122×273/(273+25)÷22400×100≒0.5
また、フェニル基含有オルガノポリシロキサンの分子量は、特に限定されるものではないが、分子量が大きすぎても小さすぎてもポリカーボネート樹脂への分散性や難燃化効果が不十分となるため、上記式(13)において0.9≦n+p+q+r≦2.8の範囲とすることが好ましく、より好ましくは1.1≦n+p+q+r≦2.6の範囲である。更には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量を410〜50,000、特に600〜15,000の範囲とすることがより好ましい。
このような分子中にケイ素原子に結合するフェニル基を有するオルガノポリシロキサンは、従来公知の方法によって製造することができる。例えば、目的とするオルガノポリシロキサンの構造に従い、相当するオルガノクロロシラン類を、場合により炭素数1〜4のアルコール存在下に共加水分解し、副生する塩酸や低沸分を除去することによって目的物を得ることができる。また、分子中にフェニル基、メチル基、ビニル基等の有機残基や、Si−H結合を有するアルコキシシラン類、シリコーンオイルや環状シロキサンを出発原料とする場合には、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸等の酸触媒を使用し、場合によって加水分解のための水を添加して、重合反応を進行させた後、使用した酸触媒や低沸分を同様に除去することによって、目的とするオルガノポリシロキサンを得ることができる。
なお、本発明の難燃性樹脂組成物には、特開2003−253109号公報及び特開2003−253110号公報に記載されている、分子中にケイ素原子に結合する置換基としてメチル基とSi−H基を含有し、芳香族炭化水素基を含有せず、Si−H含有量が0.1〜1.6mol/100gの範囲であるオルガノポリシロキサンも難燃化剤として好適に使用することができる。
本発明において(D)成分のシリコーン系化合物からなる難燃化剤を配合する場合、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、0.01〜5.0質量部の範囲で添加することが好ましく、より好ましくは0.1〜3.0質量部の範囲である。添加量が0.01質量部未満では分散性向上効果が不十分であり、5.0質量部を超えても更なる難燃性の向上はなく、成形品の外観や強度等に悪影響を与える。
本発明の難燃性樹脂組成物には、必要に応じて、フィブリル形成能を有するポリフルオロエチレン樹脂、上記(C)、(D)成分以外の難燃剤(但し、ハロゲン系難燃剤及び燐系難燃剤は配合しないことが好ましい)、他の熱可塑性樹脂、エラストマー、紫外線吸収剤、フェノール系酸化防止剤、燐系熱安定剤、顔料、染料、滑剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、摺動性改良剤等の添加剤、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、金属繊維等の強化材あるいはチタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム等のウィスカー、マイカ、タルク、クレー等の無機充填材を添加配合することができる。これらの添加方法は、それらの特性を生かす従来公知の方法で適宜添加することができる。
(C)成分のPPEオリゴマー体のスルホン酸アルカリ金属塩又はスルホン酸アルカリ土類金属塩と(A)成分及び(B)成分、更には場合によって(D)成分を混合し、本発明の難燃性樹脂組成物を製造する方法は、各種混練機、例えば、一軸及び多軸混練機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラム等で、上記成分を混練した後、冷却固化する方法や、適当な溶媒、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素及びその誘導体に上記成分を添加し、溶解する成分同士あるいは溶解する成分と不溶解成分を懸濁状態で混ぜる溶液混合法等が用いられる。工業的コストからは溶融混練法が好ましいが、これに限定されるものではない。溶融混練においては、一軸や二軸の押出機を用いることが好ましい。
本発明の難燃性樹脂組成物から成形品を得る方法は、特に限定されるものでなく、熱可塑性樹脂組成物について一般に用いられている成形法、例えば、射出成形、中空成形、押出成形、シート成形、熱成形、回転成形、積層成形等の成形方法が適用できる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、実施例は本発明の単なる例示を意図するものに過ぎない。本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例によって限定されることはない。なお、実施例及び比較例においては次に記載の原材料を用いた。
[原材料]
(1)ポリカーボネート樹脂:ポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート,商品名:ユーピロン(登録商標)S−3000(粘度平均分子量21,500),三菱エンジニアリングプラスチックス社製(以下、「PC樹脂」と略記する)。
(2)ABS樹脂:CBT−698、テクノポリマー(株)製ABS樹脂。
(3)PPEオリゴマー体のスルホン酸ナトリウム塩:下記合成例による(以下、「OPE−Na」と略記する)。
(4)PPEオリゴマー体のスルホン酸カリウム塩:下記合成例による(以下、「OPE−K」と略記する)。
(5)燐酸エステル:トリキシレニルホスフェート、大八化学社製、分子量410、燐含有量7.6質量%。
(6)フェノール系酸化防止剤:ペンタエリスリトール テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート],商品名:IRGANOX1010,チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製(以下、「酸化防止剤」と略記する)。
(7)熱安定剤:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト,商品名:アデカスタブ2112,旭電化工業(株)製(以下、「熱安定剤」と略記する)。
(1)ポリカーボネート樹脂:ポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート,商品名:ユーピロン(登録商標)S−3000(粘度平均分子量21,500),三菱エンジニアリングプラスチックス社製(以下、「PC樹脂」と略記する)。
(2)ABS樹脂:CBT−698、テクノポリマー(株)製ABS樹脂。
(3)PPEオリゴマー体のスルホン酸ナトリウム塩:下記合成例による(以下、「OPE−Na」と略記する)。
(4)PPEオリゴマー体のスルホン酸カリウム塩:下記合成例による(以下、「OPE−K」と略記する)。
(5)燐酸エステル:トリキシレニルホスフェート、大八化学社製、分子量410、燐含有量7.6質量%。
(6)フェノール系酸化防止剤:ペンタエリスリトール テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート],商品名:IRGANOX1010,チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製(以下、「酸化防止剤」と略記する)。
(7)熱安定剤:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト,商品名:アデカスタブ2112,旭電化工業(株)製(以下、「熱安定剤」と略記する)。
また、合成例で得られた化合物の同定及び分析は以下に示した方法で実施した。
(I)2官能OPE、OPE−2Glyの構造は、1H−NMR、13C−NMR、及び、IR分析によって同定した。
(II)2官能OPE、OPE−2Glyの数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと記す)法により求めた。試料のGPC曲線と分子量校正曲線よりデータ処理を行った。分子量校正曲線は、標準ポリスチレンの分子量と溶出時間の関係を以下の式に近似して得た。
LogM=A0X3+A1X2+A2X+A3+A4/X2
(ここで、M:分子量、X:溶出時間−19(分)、A0〜A4:係数である。)
(III)2官能OPEの水酸基当量は、2,6−ジメチルフェノールを標準物質とし、乾燥ジクロロメタンに溶解させてIR分析(液セル法;セル長=1mm)を行い、3,600cm-1の吸収強度より求めた。
(IV)OPE−2Glyは、IR分析により、原料として用いた2官能OPEのフェノール性水酸基のピーク(3,600cm-1)が消滅していることから、フェノール性水酸基がグリシジル化されていることを確認した。
(V)実施例によって得られたポリフェニレンエーテルオリゴマー体のスルホン酸アルカリ金属塩は、硝酸で分解後、ICP−AESに供して絶対検量法によりS元素、及び、Na元素又はK元素の含有量を測定した。
(I)2官能OPE、OPE−2Glyの構造は、1H−NMR、13C−NMR、及び、IR分析によって同定した。
(II)2官能OPE、OPE−2Glyの数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと記す)法により求めた。試料のGPC曲線と分子量校正曲線よりデータ処理を行った。分子量校正曲線は、標準ポリスチレンの分子量と溶出時間の関係を以下の式に近似して得た。
LogM=A0X3+A1X2+A2X+A3+A4/X2
(ここで、M:分子量、X:溶出時間−19(分)、A0〜A4:係数である。)
(III)2官能OPEの水酸基当量は、2,6−ジメチルフェノールを標準物質とし、乾燥ジクロロメタンに溶解させてIR分析(液セル法;セル長=1mm)を行い、3,600cm-1の吸収強度より求めた。
(IV)OPE−2Glyは、IR分析により、原料として用いた2官能OPEのフェノール性水酸基のピーク(3,600cm-1)が消滅していることから、フェノール性水酸基がグリシジル化されていることを確認した。
(V)実施例によって得られたポリフェニレンエーテルオリゴマー体のスルホン酸アルカリ金属塩は、硝酸で分解後、ICP−AESに供して絶対検量法によりS元素、及び、Na元素又はK元素の含有量を測定した。
[合成例1] 2官能OPEの合成
撹拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板を取り付けた容量20Lの縦長反応器に塩化銅(I)13g、ジ−n−ブチルアミン795g、トルエン6,000gを仕込み、反応温度40℃にて撹拌を行い、あらかじめ6,000gのメタノールに溶解させた2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジオール418g、2,6−ジメチルフェノール915gの混合溶液(2価のフェノールと1価のフェノールのモル比率=1:5)を、2L/分で空気のバブリングを行う一方、150分かけて滴下しながら撹拌を行った。これに、エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム水溶液を加え、反応を停止した。その後、1Nの塩酸水溶液、次いでイオン交換水で洗浄を行った。得られた溶液をエバポレイターで濃縮し、2官能OPEの50質量%トルエン溶液2,560gを得た。得られた2官能OPEをGPC法で測定した結果、数平均分子量=980、重量平均分子量=1,510であった。また、水酸基当量=490g/molであった。
撹拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板を取り付けた容量20Lの縦長反応器に塩化銅(I)13g、ジ−n−ブチルアミン795g、トルエン6,000gを仕込み、反応温度40℃にて撹拌を行い、あらかじめ6,000gのメタノールに溶解させた2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジオール418g、2,6−ジメチルフェノール915gの混合溶液(2価のフェノールと1価のフェノールのモル比率=1:5)を、2L/分で空気のバブリングを行う一方、150分かけて滴下しながら撹拌を行った。これに、エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム水溶液を加え、反応を停止した。その後、1Nの塩酸水溶液、次いでイオン交換水で洗浄を行った。得られた溶液をエバポレイターで濃縮し、2官能OPEの50質量%トルエン溶液2,560gを得た。得られた2官能OPEをGPC法で測定した結果、数平均分子量=980、重量平均分子量=1,510であった。また、水酸基当量=490g/molであった。
[合成例2] OPE−2Glyの合成
撹拌装置、温度計、滴下ロートを取り付けた容量5Lの反応器を100℃まで加熱し、上記で得られた2官能OPEの50質量%トルエン溶液800gとエピクロロヒドリン2,100gを仕込んだ。その後、ナトリウムエトキシドの23質量%エタノール溶液201gを滴下ロートから1時間かけて滴下し、更に滴下終了後5時間の撹拌を行った。反応混合物をイオン交換水で洗浄後、有機層を分液した。得られた溶液からトルエン及び過剰のエピクロロヒドリンを留去し、更に減圧乾燥を行い、OPE−2Gly430gを得た。得られたOPE−2GlyをGPC法で測定した結果、数平均分子量=1,040、重量平均分子量=1,650であった。また、エポキシ当量=515g/molであった。
撹拌装置、温度計、滴下ロートを取り付けた容量5Lの反応器を100℃まで加熱し、上記で得られた2官能OPEの50質量%トルエン溶液800gとエピクロロヒドリン2,100gを仕込んだ。その後、ナトリウムエトキシドの23質量%エタノール溶液201gを滴下ロートから1時間かけて滴下し、更に滴下終了後5時間の撹拌を行った。反応混合物をイオン交換水で洗浄後、有機層を分液した。得られた溶液からトルエン及び過剰のエピクロロヒドリンを留去し、更に減圧乾燥を行い、OPE−2Gly430gを得た。得られたOPE−2GlyをGPC法で測定した結果、数平均分子量=1,040、重量平均分子量=1,650であった。また、エポキシ当量=515g/molであった。
[合成例3] OPE−Naの合成
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量1Lのフラスコに、上記で得られたOPE−2Gly206g、メチルイソブチルケトン481gを仕込み、室温下で1時間撹拌して溶解し均一溶液とした。フラスコ内を加熱して内温80〜90℃を保ちながら、亜硫酸水素ナトリウム43.7gと亜硫酸ナトリウム2.5gとイオン交換水115.5gからなる水溶液を1時間かけて滴下し、続けて還流条件下に5時間撹拌して反応させた。
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量1Lのフラスコに、上記で得られたOPE−2Gly206g、メチルイソブチルケトン481gを仕込み、室温下で1時間撹拌して溶解し均一溶液とした。フラスコ内を加熱して内温80〜90℃を保ちながら、亜硫酸水素ナトリウム43.7gと亜硫酸ナトリウム2.5gとイオン交換水115.5gからなる水溶液を1時間かけて滴下し、続けて還流条件下に5時間撹拌して反応させた。
これを130℃のオイルバス中で加熱して水とメチルイソブチルケトンとをほぼ留去した後、室温まで冷却してから再度メチルイソブチルケトン400gを添加し、室温下で1時間撹拌して均一分散液としてから濾過を行い、メチルイソブチルケトンに溶解する未反応のOPE−2Glyを除去した。更にケーキ状のメチルイソブチルケトン未溶解物をアセトンで洗浄した後、イオン交換水500g中に添加し、室温下で1時間撹拌して均一分散液としてから濾過を行い、残存する亜硫酸水素ナトリウムと亜硫酸ナトリウムを水溶液として除去した。得られたケーキ状物をアセトンで洗浄した後、10mmHgの減圧下、80℃で6時間減圧乾燥して残存するアセトンと水分を除去した後、乳鉢で粉砕して黄白色微粉末210gを得た。
このようにして得られたOPE−Naは、前記構造式(1)〜(4)において、R2、R3、R4、R7、R8、R9、R10、R11をメチル基、R5、R6、R12、R13を水素原子とし、Mがナトリウム、a+b=6、c=0、d=0である構造を有し、このものを硝酸分解/ICP−AES法によって分析した結果、S元素含有量=4.9質量%(理論値=5.2質量%)、Na元素含有量=3.6質量%(理論値=3.7質量%)であった。
[合成例4] OPE−Kの合成
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量1Lのフラスコに、上記で得られたOPE−2Gly204g、プロピレングリコールモノメチルエーテル476gを仕込み、80℃で1時間撹拌して溶解し均一溶液とした。フラスコ内を加熱して内温80〜90℃を保ちながら、二亜硫酸カリウム46.7gと亜硫酸カリウム3.2gとイオン交換水138gからなる水溶液を1時間かけて滴下し、続けて還流条件下に5時間撹拌して反応させた。
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量1Lのフラスコに、上記で得られたOPE−2Gly204g、プロピレングリコールモノメチルエーテル476gを仕込み、80℃で1時間撹拌して溶解し均一溶液とした。フラスコ内を加熱して内温80〜90℃を保ちながら、二亜硫酸カリウム46.7gと亜硫酸カリウム3.2gとイオン交換水138gからなる水溶液を1時間かけて滴下し、続けて還流条件下に5時間撹拌して反応させた。
これを140℃のオイルバス中で加熱して水とプロピレングリコールモノメチルエーテルとをほぼ留去した後、室温まで冷却してから再度プロピレングリコールモノメチルエーテル400gを添加し、60℃で1時間撹拌して均一分散液としてから濾過を行い、プロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解する未反応のOPE−2Glyを除去した。更にケーキ状のプロピレングリコールモノメチルエーテル未溶解物をアセトンで洗浄した後、イオン交換水600g中に添加し、室温下で1時間撹拌して均一分散液としてから濾過を行い、残存する二亜硫酸カリウムと亜硫酸カリウムを水溶液として除去した。得られたケーキ状物をアセトンで洗浄した後、10mmHgの減圧下、80℃で6時間減圧乾燥して残存するアセトンと水分を除去した後、乳鉢で粉砕して黄白色微粉末216gを得た。
このようにして得られたOPE−Kは、前記構造式(1)〜(4)において、R2、R3、R4、R7、R8、R9、R10、R11をメチル基、R5、R6、R12、R13を水素原子とし、Mがカリウム、a+b=6、c=0、d=0である構造を有し、このものを硝酸分解/ICP−AES法によって分析した結果、S元素含有量=4.7質量%(理論値=5.1質量%)、K元素含有量=5.8質量%(理論値=6.2質量%)であった。
[合成例5] オルガノポリシロキサンB−1の合成
特開2003−253109号公報の調製例1に記載の方法に準じて、撹拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた1Lフラスコに、ヘキサメチルジシロキサン91.9g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン408.1gを仕込み、更に撹絆しながら濃硫酸15.0gを添加した。添加終了後、更に内温20〜25℃で撹拌を5時間続けて熟成してから、水6.4gを添加して1時間撹拌し、静置して分離した水層を除去した。その後、更に5%硫酸ナトリウム水溶液で4回洗浄し、シロキサン層が中性になったことを確認した。このシロキサン層を減圧下、内温120℃まで加熱して低沸分を除去した後、濾過により不溶物を取り除いてオルガノポリシロキサンB−1を得た。このオルガノポリシロキサンB−1は、分子中にメチル基とSi−H基のみをケイ素原子に結合する置換基として含有し、下記の構造を有するものであり、Si−H基含有量が1.38mol/100g、重量平均分子量が950であった。
特開2003−253109号公報の調製例1に記載の方法に準じて、撹拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた1Lフラスコに、ヘキサメチルジシロキサン91.9g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン408.1gを仕込み、更に撹絆しながら濃硫酸15.0gを添加した。添加終了後、更に内温20〜25℃で撹拌を5時間続けて熟成してから、水6.4gを添加して1時間撹拌し、静置して分離した水層を除去した。その後、更に5%硫酸ナトリウム水溶液で4回洗浄し、シロキサン層が中性になったことを確認した。このシロキサン層を減圧下、内温120℃まで加熱して低沸分を除去した後、濾過により不溶物を取り除いてオルガノポリシロキサンB−1を得た。このオルガノポリシロキサンB−1は、分子中にメチル基とSi−H基のみをケイ素原子に結合する置換基として含有し、下記の構造を有するものであり、Si−H基含有量が1.38mol/100g、重量平均分子量が950であった。
[合成例6] オルガノポリシロキサンB−2の合成
特開2003−253109号公報の調製例4に記載の方法に準じて、撹拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた1Lフラスコに、水537.6gとトルエン120gを仕込み、内温5℃まで冷却した。滴下ロートにトリメチルクロロシラン12.6g、メチルジクロロシラン120.1g及びジフェニルジクロロシラン36.7gの混合物を仕込み、フラスコ内へ撹拌しながら2時間かけて滴下した。この間、内温を20℃以下に維持するよう冷却を続けた。滴下終了後、更に内温20℃で撹拌を4時間続けて熟成し、静置して分離した塩酸水層を除去した。これに10%炭酸ナトリウム水溶液80gを添加して5分間撹拌後、静置して分離した水層を除去した。その後、更にイオン交換水で3回洗浄し、トルエン層が中性になったことを確認した。このトルエン溶液を減圧下、内温120℃まで加熱してトルエンと低沸分を除去した後、濾過により不溶物を取り除いてオルガノポリシロキサンB−2を得た。このオルガノポリシロキサンB−2は、分子中にメチル基、Si−H基とフェニル基をケイ素原子に結合する置換基として含有し、下記の構造を有するものであり、Si−H基含有量が1.07mol/100g、重量平均分子量が3,600であった。
特開2003−253109号公報の調製例4に記載の方法に準じて、撹拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた1Lフラスコに、水537.6gとトルエン120gを仕込み、内温5℃まで冷却した。滴下ロートにトリメチルクロロシラン12.6g、メチルジクロロシラン120.1g及びジフェニルジクロロシラン36.7gの混合物を仕込み、フラスコ内へ撹拌しながら2時間かけて滴下した。この間、内温を20℃以下に維持するよう冷却を続けた。滴下終了後、更に内温20℃で撹拌を4時間続けて熟成し、静置して分離した塩酸水層を除去した。これに10%炭酸ナトリウム水溶液80gを添加して5分間撹拌後、静置して分離した水層を除去した。その後、更にイオン交換水で3回洗浄し、トルエン層が中性になったことを確認した。このトルエン溶液を減圧下、内温120℃まで加熱してトルエンと低沸分を除去した後、濾過により不溶物を取り除いてオルガノポリシロキサンB−2を得た。このオルガノポリシロキサンB−2は、分子中にメチル基、Si−H基とフェニル基をケイ素原子に結合する置換基として含有し、下記の構造を有するものであり、Si−H基含有量が1.07mol/100g、重量平均分子量が3,600であった。
[合成例7] オルガノポリシロキサンB−3の合成
特開2003−253110号公報の調製例1に記載の方法に準じて、撹拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた1Lフラスコに水288gとトルエン93gを仕込み、オイルバスで内温80℃にまで加熱した。滴下ロートにフェニルトリクロロシラン148g、ジフェニルジクロロシラン51g及びジメチルジクロロシラン13gを仕込み、フラスコ内へ撹拌しながら1時間で滴下し、滴下終了後、更に内温80℃で撹拌を1時間続けて熟成した。続けてトリメチルクロロシラン27gをフラスコ内へ撹拌しながら10分間で滴下し、滴下終了後、更に内温80℃で撹拌を30分間続けて熟成した。トルエン100gを添加し、室温まで冷却しながら静置して分離してきた水層を除去し、引き続き10%硫酸ナトリウム水溶液を混合して10分間撹拌後、30分間静置し、分離してきた水層を除去する水洗浄操作をトルエン層が中性になるまで繰り返して反応を停止した。エステルアダプターを取り付け、オルガノポリシロキサンを含むトルエン層を加熱還流してトルエン層から水を除去し、内温が110℃に達してから更に1時間続けた後、室温まで冷却した。得られたオルガノポリシロキサン溶液を濾過して不溶物を除去し、引き続き減圧蒸留によりトルエンと低分子シロキサンを除去して、固体のフェニル基含有オルガノポリシロキサンB−3を得た。このフェニル基含有オルガノポリシロキサンB−3は、分子中にフェニル基とメチル基をケイ素原子に結合する置換基として含有し、更に分岐構造を有するものであり、これを平均組成式R1 mR2 n(OR3)p(OH)qSiO(4-m-n-p-q)/2で表すと、下記式の通り、R2=メチル基、m=0.93、n=0.62、p=0、q=0.03、m+n+p+q=1.58であり、重量平均分子量が9,200、軟化点は96℃であった。
(Ph)0.93(Me)0.62(OH)0.03SiO2.42/2
特開2003−253110号公報の調製例1に記載の方法に準じて、撹拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた1Lフラスコに水288gとトルエン93gを仕込み、オイルバスで内温80℃にまで加熱した。滴下ロートにフェニルトリクロロシラン148g、ジフェニルジクロロシラン51g及びジメチルジクロロシラン13gを仕込み、フラスコ内へ撹拌しながら1時間で滴下し、滴下終了後、更に内温80℃で撹拌を1時間続けて熟成した。続けてトリメチルクロロシラン27gをフラスコ内へ撹拌しながら10分間で滴下し、滴下終了後、更に内温80℃で撹拌を30分間続けて熟成した。トルエン100gを添加し、室温まで冷却しながら静置して分離してきた水層を除去し、引き続き10%硫酸ナトリウム水溶液を混合して10分間撹拌後、30分間静置し、分離してきた水層を除去する水洗浄操作をトルエン層が中性になるまで繰り返して反応を停止した。エステルアダプターを取り付け、オルガノポリシロキサンを含むトルエン層を加熱還流してトルエン層から水を除去し、内温が110℃に達してから更に1時間続けた後、室温まで冷却した。得られたオルガノポリシロキサン溶液を濾過して不溶物を除去し、引き続き減圧蒸留によりトルエンと低分子シロキサンを除去して、固体のフェニル基含有オルガノポリシロキサンB−3を得た。このフェニル基含有オルガノポリシロキサンB−3は、分子中にフェニル基とメチル基をケイ素原子に結合する置換基として含有し、更に分岐構造を有するものであり、これを平均組成式R1 mR2 n(OR3)p(OH)qSiO(4-m-n-p-q)/2で表すと、下記式の通り、R2=メチル基、m=0.93、n=0.62、p=0、q=0.03、m+n+p+q=1.58であり、重量平均分子量が9,200、軟化点は96℃であった。
(Ph)0.93(Me)0.62(OH)0.03SiO2.42/2
なお、上記合成例5〜7で得られた各オルガノポリシロキサンにおけるSi−H基含有量は、前記した通りアルカリ分解法によりオルガノポリシロキサンの単位重量当たりに発生した水素ガスの体積を測定することによって求め、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定データよりポリスチレン標準試料で作製した検量線を用いて換算した数値を示した。
[実施例1〜7、比較例1〜4]
表1及び表2に示す配合処方で各成分を配合し、単軸押出機VS−40(田辺プラスチック社製)によりバレル温度260℃で混練、ペレット化した。得られたペレットを110℃、5時間乾燥した後、住友重機械工業社製、サイキャップM−2、型締め力75Tを用いて、シリンダー温度:260℃,金型温度:100℃の条件でサイクル60秒にて各種試験片の射出成形を行い、得られた試験片を用いて以下の方法により評価を行い、結果を表1及び表2に示した。表1と表2を比較することにより、本発明の難燃性樹脂組成物は、難燃性、アイゾット衝撃強度、ウエルド強度、成形品外観、耐モールドデボジット性に優れていることが明らかになった。
表1及び表2に示す配合処方で各成分を配合し、単軸押出機VS−40(田辺プラスチック社製)によりバレル温度260℃で混練、ペレット化した。得られたペレットを110℃、5時間乾燥した後、住友重機械工業社製、サイキャップM−2、型締め力75Tを用いて、シリンダー温度:260℃,金型温度:100℃の条件でサイクル60秒にて各種試験片の射出成形を行い、得られた試験片を用いて以下の方法により評価を行い、結果を表1及び表2に示した。表1と表2を比較することにより、本発明の難燃性樹脂組成物は、難燃性、アイゾット衝撃強度、ウエルド強度、成形品外観、耐モールドデボジット性に優れていることが明らかになった。
[試験片の評価法]
(1)燃焼性:UL94垂直燃焼性試験に従い、2.0mm厚みの燃焼性試験を行った。
(2)アイゾット衝撃強度:ASTM D256に従った。
(3)ウエルド強度:ウエルド部のある試験片とない試験片で引張り破断強さを測定し、ウエルド強度の比較を行った。
(4)成形品外観:ウエルド部のない引張り試験片のゲート近傍を目視観察し、フローマークのない試験片を○、フローマークの少し発生している試験片を△、フローマークの発生している試験片を×と評価した。
(5)モールドデボジット:実施例に記載された成形条件にて連続成形を500ショット行い、成形終了後金型の付着物の有無について評価を行った。
(1)燃焼性:UL94垂直燃焼性試験に従い、2.0mm厚みの燃焼性試験を行った。
(2)アイゾット衝撃強度:ASTM D256に従った。
(3)ウエルド強度:ウエルド部のある試験片とない試験片で引張り破断強さを測定し、ウエルド強度の比較を行った。
(4)成形品外観:ウエルド部のない引張り試験片のゲート近傍を目視観察し、フローマークのない試験片を○、フローマークの少し発生している試験片を△、フローマークの発生している試験片を×と評価した。
(5)モールドデボジット:実施例に記載された成形条件にて連続成形を500ショット行い、成形終了後金型の付着物の有無について評価を行った。
Claims (5)
- (A)ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、(B)ゴムの存在下に少なくともスチレン系単量体と(メタ)アクリロニトリルとを重合してなるゴム変性スチレン/(メタ)アクリロニトリル系グラフト共重合体5〜40質量部、及び(C)下記構造式(1)で示されるポリフェニレンエーテルオリゴマー体のスルホン酸アルカリ金属塩又はスルホン酸アルカリ土類金属塩0.01〜3.0質量部を配合してなることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
- (C)式(1)で示されるポリフェニレンエーテルオリゴマー体のスルホン酸アルカリ金属塩又はスルホン酸アルカリ土類金属塩の構造式(4)におけるMが、ナトリウム及び/又はカリウムであることを特徴とする請求項1又は2記載の難燃性樹脂組成物。
- 更に、(A)ポリカーボネート樹脂と、(B)ゴムの存在下に少なくともスチレン系単量体と(メタ)アクリロニトリルとを重合してなるゴム変性スチレン/(メタ)アクリロニトリル系グラフト共重合体との合計100質量部に対して、(D)シリコーン系化合物からなる難燃化剤を0.01〜5.0質量部配合してなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を成形して得られた成形品。
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