JP4677734B2 - 磁気記録媒体用磁性粉末 - Google Patents

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Description

本発明は磁気記録媒体用磁性粉末に係り,とくに重層塗布型磁気記録媒体の上層記録
層を構成するのに適する磁気記録用磁性粉末に関する。
家庭用AV機器用テープや,データバックアップ用ストレージテープと言った磁気記録媒体は,高密度記録化と高画質化を目的として電磁変換特性の向上が試みられている。従来から汎用の塗布型磁気記録媒体では,高密度記録化には,できるだけ粒子径の小さな磁性粉末を使用することが望ましく,このため,昨今では日進月歩のペースで粒子サイズの
低減が図られてきているのが実状である。
一般に,金属磁性粉末の作成手順としては各種文献等に例示されているとおり,第一鉄塩水溶液と炭酸もしくは水酸化アルカリ,あるいはそれらの併用により炭酸鉄もしくは水酸化鉄を水中で生成させ,そうした前駆体に対して空気等の酸化ガスを通気することによって,オキシ水酸化鉄を生成させ,得られた針状のオキシ水酸化鉄を原料として脱水・還
元操作を経て金属磁性微粒子いわゆるメタル粉を生成させるのが通常である。
ところが,粒子径が小さくなるに伴って金属磁性粉末の表面活性が非常に高くなり,ハンドリング雰囲気中に酸素の存在がある場合,急激に酸化が進んでしまい,磁気特性の著
しい低下がもたらされてしまうことが知られている。
このメタル粉の耐酸化安定性すなわち耐候性の向上に関しては磁気記録媒体自体の保存安定性にも直結する問題でもあるので,精力的に多角的な検討が行われてきた。例えば,TG/DTAを使用した発火温度に着目し,その値を規定することで耐酸化性の向上させたもの(特許文献1),酸化雰囲気の相違に変化に着目して高温酸化安定性を検討したもの(特許文献2),酸化反応前後のX線回折強度に着目して組成を検討したもの(特許文献3および4),酸化皮膜の組成を検討したもの(特許文献5) ,表面に耐酸化性を付与する物質で被覆処理を検討したもの(特許文献6) ,酸化皮膜の厚さを適正化したもの(
特許文献7) 等がある。
特開2003-59707号公報 特開2002-367142 号公報 特開2001-313207 号公報 特開2004-13975号公報 特開2001-237115 号公報 特開平5-144618号公報 特開2003-119503 号公報
メタル粉の微粒子化と耐酸化性の関連について,本願発明者らの検討によれば,ただTG/DTAの結果や発火温度を検討するだけでは,耐酸化安定性について議論することは難しいことが分かってきた。すなわち,発火温度が高くとも耐酸化性が必ずしも良好でない場合もある。また,酸化膜厚に関しては酸化時間を変えることなどで調整が可能であるが,膜厚を厚くすれば,磁性を有するコアの体積が小さくなってしまい,結果として磁気特性の低下が起きるという問題がある。酸化皮膜の組成を変更するためには異種金属の添加などが必要となるが,異種金属の添加については,磁性粉の耐酸化性には有効に働くが,媒体化した際に,媒体特性を劣化させることや,場合によっては作成時に発生する廃液の問題が伴い,既存の浄化設備では足らず,新規投資を必要とするなどの点で負担増とな
ることがある。
従って本発明の課題は,耐酸化性と磁気特性を両立しかつ経済的に見ても有利な磁気記録媒体用金属磁性粉末を得ること,またそれにより信頼性を向上させた磁気記録媒体を提
供することにある。
本発明によれば,そうした技術的課題は,Feを主体とする針状粒子からなる磁気記録媒体用磁性粉末において,該粉末をTG測定に供したときに低温側酸化開始点と高温側酸化開始点の少なくとも2段の酸化開始点を示す磁気記録媒体用磁性粉末によって解決できる。ここで,TG測定は,試料粉末10mgを大気雰囲気下において昇温速度10℃/分
で昇温してその重量変化を測定する。
この磁性粉末は低温側酸化開始点〔みかけの発火点(IT(i) )という〕と高温側酸化
開始点〔実質発火点(IT(ii))という〕との間で,
IT(ii)−IT(i) >10℃ ・・(1) 式
の関係を満たす。また,該TG測定において,測定開始から300℃に至るまでの重量増加量が10wt%以上を示す。さらに,この磁性粉末は,温度60℃,湿度90%RHの恒温恒湿下に一週間保持したときの飽和磁化量の低下量Δσs が15%未満である。ただし
,該恒温恒湿に保持する前の飽和磁化量をσs(i),一週間保持後の飽和磁化量をσs(ii)
としたとき,Δσs =100×〔σs(i)−σs(ii) 〕/σs(i)で表される。
この磁性粉末は,好ましくは該粒子中にCoをCo/Fe比で50at.%以下の範囲で含
有し,そのCoの含有形態が粒子のコア部より表層部の方が高い濃度を有する。
Feを主体とするメタル粉において,Coの添加量を適正にすると耐酸化性と磁気特性の両立を図ることができる。特に平均長軸長が0.1μm未満の該メタル粉において,CoをCo/Fe比で50at.%以下の範囲で添加し,且つそのCoの含有形態として,コア部より表層部の方が高い濃度を有するように含有していると,良好な磁気特性を維持しな
がら,顕著に耐酸化性を向上させることができることがわかった。
コア部より表層部の方が高いCo濃度を有するとは,Coが全体の含有割合と比較して粒子の表面近くに比較的多く存在することを意味しており,具体的には,粒子表層のCo含有量の測定値が,粒子内部におけるCoの組成値として算出される値よりも大きいこと(前者の表層Co量/後者の全体Co含有量の比が1より大きいこと)を意味している。表層におけるCo量はESCAによって測定することができ,また粒子の組成におけるCo量の値はICPもしくは蛍光X線等を用いて測定できる。このメタル粉は,その試料粉末10mgを大気雰囲気下において昇温速度10℃/分で昇温してその重量変化を測定するTG測定に供したときに,低温側酸化開始点と高温側酸化開始点の少なくとも2段の酸
化開始点を示す。すなわち,TG測定における重量増加曲線が二段階の傾きを有する。
このように,コバルトを表面近くに比較的多く存在させることにより,酸化の進行を抑制することが出来る。また,こうすることで,安定化時の温度レベルを抑制しても実質的に酸化レベルを上げることができ,表面に強固で厚い酸化皮膜を形成するときと同等もしくはそれ以上の耐酸化性が得られることがわかった。このため,発火温度を上昇させるべく磁気特性を犠牲にして耐酸化安定性を得ていた従来技術に比べると酸化膜の生成を抑制することが出来るので,磁気特性が維持された磁性粉を得ることが出来る。
以下に本発明で特定する事項について説明する。
本発明はFeを主体とする針状のメタル粉において,表層部分に他の金属成分を比較的多く含むことを特徴とする。とくにCoについて説明すると,耐酸化性と磁気特性の向上を図るためにCoをFeに対する原子百分率で,すなわちFe/Co比で50at.%以下,好ましくは2〜45at.%含有させる。Co含有量が2at.%未満ではこの目的が達成できず,50at.%を超えるとその効果が飽和するので,この範囲のCo量とするが,そのCoの粒子中の含有形態を,コア部より表層部の方が高濃度でCoが存在するようにした点に本
発明の一つの特徴がある。
このようにCoの含有形態を制御することによって,このメタル粉をTG測定に供すると,酸化開始点が少なくとも二段に表れるようになり,このことが微粒子であってもその
耐酸化性を非常に向上させ得ることがわかった。
本発明にしたがう磁性粉末の例として,オキシ水酸化鉄から針状の鉄合金磁性粉末を得
る例を説明する。この場合には,先駆物質としてオキシ水酸化鉄をまず製造する。
オキシ水酸化鉄の製法としては,炭酸塩水溶液に第一鉄塩を添加して炭酸鉄を生成させ(そのさい,苛性アルカリを併用することも出来る),この液に酸素含有ガスを通気して酸化反応を起こさせてオキシ水酸化鉄とする方法,第一鉄塩と苛性アルカリの反応によりオキシ水酸化鉄とする方法,炭酸鉄の懸濁液に酸化剤を添加してオキシ水酸化鉄とする方法などで作成できる。これらのうちでも,苛性アルカリを用いた場合には,針状比の高い針状のオキシ水酸化鉄が生成し,炭酸鉄を経由する場合には,両端がとがった円柱形状(紡錘状)の粒子が得られやすく,場合によっては,条件を適宜調整することにより,平針
状の粒子を得ることもできる。
粒子表面にコバルトを多く含んだ磁性鉄合金粒子を得るには,上記のオキシ水酸化物作成段階の中間乃至最終酸化段階での液中にコバルトを添加もしくは追添する方法が好適である。コバルトの添加速度や添加形態(錯体などを形成させる) を変えることによっても粒子表層でのコバルト濃度を高めることができる。別法として,生成したオキシ水酸化鉄に対してコバルトを後に被着する方法でも特に問題はない。そのさい,元の粒子の核にあ
たる部分にもコバルトを含有させておいてもよい。
粒子全体へのCo含有量の目安としては,Feに対する原子百分率(at.%)で,すなわちCo/Fe比で50at.%以下,好ましくは2〜45at.%,より好ましくは10〜40at.%とするのが適当である。この範囲でCoを含有する条件で,粒子表面の方がコア部より多量のCoが存在するように調整することにより,飽和磁化ならびに保磁力,さらには耐
酸化性をバランスよく向上させることができる。
Coに加えて,本発明に従う磁性粒子はAlを含有することができる。アルミニウムの添加により,磁性粉の耐摩耗性の改善や焼結防止効果が得られ,バインダーに対する分散性を改善することができる。このためのAl含有量としては,Al/(Fe+Co)比で50at.%以下,好ましくは1〜40at.%,より好ましくは2〜30at.%である。Al含有量が過剰になると,粒子の硬さは高くなるものの,粒子における非磁性成分の割合が増加するため,磁気特性とりわけ飽和磁化の低下が見られるので,過剰のAlの添加は好ましくない。アルミニウムの添加時期についてはオキシ水酸化鉄の形成初期の段階で行わないのがよい。アルミニウムを初期に大量添加した場合には針状性の維持が出来なくなる。このため,好ましくはオキシ水酸化鉄の成長段階から酸化終了段階にかけてAlを添加する
のがよい。
そのほか,製造上不可避に含まれる成分のほか,磁気特性もしくはバインダーへの分散性改善等を目的とした成分元素が含まれていてもよい。例えば,Si,Zn,Cu,Ti,Niなどが適量含まれていてもよい。しかしこれらの元素は,大量に添加した場合には
磁気特性などのバランスが崩れるので粒子の要求特性に応じた量の添加が必要である。
希土類元素(Yを含む)については,オキシ水酸化鉄の脱水・加熱還元時の焼結防止効果があるほか,粒度分布改善にも効果を示す。このために添加するのが好ましいが,添加する場合には,Yを含む希土類元素をRで表示すると,R/(Fe+Co)比で25at.%以下,好ましくは1〜20at.%,より好ましくは2〜15at.%とするのがよい。Rの過剰の添加は,Alの場合と同様に,飽和磁化の低下が著しくなるので好ましくない。適切な希土類元素としてはY,Gd,Yb,La,Sc(スカンジウム)を例示出来る。本発明者らの経験では原子量の大きな希土類であるほど低σs 領域では好適な磁気特性を示すことがわかった。Rの添加時期としてはオキシ水酸化鉄の成長段階で添加して固溶させても
よいし,成長完了後に添加して被着してもよい。
少なくともコバルトを含有したオキシ水酸化鉄を得たあとは,そのオキシ水酸化鉄スラリーをろ過,洗浄し,均一に熱がかかるような処理を施した後に,これを80〜300℃,好ましくは120〜250℃,より好ましくは150〜220℃の条件にて6時間以上不活性ガスもしくは空気中で乾燥させるのがよい。これによって,オキシ水酸化鉄の乾燥固形物が得られるが,次いで,これを250〜700℃の温度条件でコバルト含有オキシ水酸化鉄を窒素中で加熱脱水し,α−Fe23 等の酸化鉄へと変化させる。この加熱脱
水時には雰囲気中に水蒸気,酸素,炭酸ガスなどが含まれることを妨げない。
次いで,得られた鉄系酸化物を気相還元により還元する。還元性ガスとしては一酸化炭素,アセチレン,水素などが例示出来る。この還元は,一段目の還元と二段目の還元の温度を変化させる多段還元を用いて行うことも出来る。多段還元とは初期に還元を比較的低温を維持しながら行って,ついで昇温工程を経て高温維持しながら還元を行うものである
。この還元についても雰囲気中に水蒸気や炭酸ガスが存在することを妨げない。
還元後に得られる合金粉末は非常に活性が高いので,そのまま大気中でハンドリングすると発火する恐れがある。そこで,徐酸化工程により粒子表面に緻密な酸化物層を形成させ,こうした磁性粒子を大気中でのハンドリングに耐えるようにすることが望ましい。表面に緻密な膜を形成する為には,前記の還元処理のあと50〜200℃の任意の温度まで冷却し,弱酸化性ガス例えば不活性ガス中に適量の酸素や含有させたガスや空気等を導入して,安定な酸化物膜を形成することが望ましい。この際には炭酸ガス,水蒸気などが存
在してもかまわない。
このようにして得られた磁性粉末は,これをTG測定に供したときに,具体的には,試料10mgを分取し大気雰囲気下で10℃/minの昇温速度にて昇温して重量増加のプロファイルを測定するTG測定に供したときに,試料が完全に酸化されるまでにその曲線が特徴のある変曲点を有するようになり,この場合に,磁気特性と耐酸化性の両立した磁性粉末となり,この粉末を用いると保存安定性に優れた塗布型磁気記録媒体を得ることができ
る。
粒子中にCoを含有する場合について言えば,コバルトの含有形態が粒子表層部に濃化していることに起因して該曲線が二段階以上の変曲点を有する場合に,磁気特性と耐酸化性の両立を図ることができることがわかった。粒子表面部のコバルトの含有量はESCAを用いて測定することができ,また,粒子全体のコバルトの含有量はICPもしくは蛍光X線を用いて測定できる。すなわち(ESCAにて測定した表層Co量)/(ICPもしくは蛍光X線で測定した内部Co量)の比が1より大きな場合に,この比≦1のときよりも,耐酸化性を向上させることができる。この比が1のときは,粒子中にコバルトが均一に分布していることを意味し,この場合のTG曲線は一段階のみ変曲点を有するようになり,本発明に従う少なくとも2段階の変曲点のものよりも,耐酸化性は劣ることになる。また該比が1よりも小さい場合は,粒子表面に酸素が多く存在した状態,すなわち酸化膜が厚く存在している状態にあり,この場合には耐酸化性は向上するものの磁気特性として
は良好なものが得難くなる。
本発明の磁性粉末において,該比が1より大きいことは,該粉末製造の最終還元のあとの徐酸化工程において表面を酸化させて酸化膜を形成したあとでも,該比が1より大きいことを意味している。該酸化膜を有する状態では表層に酸素が存在しているので,仮にコバルトが粒子中に均一に分布していれば,表層でのコバルト量は相対的に減少するので,該比は1より小さくなる。本発明の磁性粉末にあっては,この表層の酸素を加味しても十
分に該比が1より大きくなっている。
本発明に従うFeを主体とする針状粒子からなる磁気記録媒体用磁性粉末では,前記のように該粒子中にCoをCo/Fe比で50at.%以下の範囲で含有すること,Fe中へのCoの含有形態が粒子のコア部より表層部の方が高い濃度を有すること,該粉末をTG測定に供したときに低温側酸化開始点と高温側酸化開始点の少なくとも2段の酸化開始点を示すこと,に特徴を有する。その際,低温側酸化開始点〔みかけ発火点(IT(i) )〕と
高温側酸化開始点〔実質発火点(IT(ii))〕との間で,
IT(ii)−IT(i) ≧10℃,好ましくは≧15℃,より好ましくは≧20℃の関係を満たす場合に,優れた磁気特性を維持しながら十分な耐酸化性を有することができる。両酸化開始点の差が10℃未満の場合には,耐酸化層の形成が不十分な状態にあり,磁気特性としては優れるものの耐酸化は不十分なものとなる。図1にTG測定における〔みかけ発
火点IT(i) 〕と〔実質発火点IT(ii)〕との代表例を図解的に示した。
TG測定時において,酸化開始より300℃までに見られる主に酸素由来の重量増加は,全体で10wt%以上,好ましくは15wt%以上であるのがよい。全体の重量増加が10wt%未満の場合にはもともとの酸素含有量が高いこと,すなわち粒子の表面に既に厚い酸化膜の層が形成されていることを表しており,この場合には磁性粒子コア部分の体積が相対的に低下しているので,十分な磁気特性は得られない。なお,本発明に従う磁性粉末の平均長軸長は10〜200nm,好ましくは15〜150nm,さらに好ましくは20〜100nmである。10nmより小さい平均長軸長であれば粒子形状として針状のものが得難くなって形状磁気異方性が発現し難くなり,他方,平均長軸長が200nmより大き
いと高密度記録には適さない粉体となるので好ましくない。
このような要件を備えた本発明の磁性粉末は,平均長軸長が0.1μm未満の微粒子であっても,温度60℃,湿度90%RHの恒温恒湿下に一週間保持したときの飽和磁化量の低下量Δσs が15%未満,好ましくは10%未満となり,耐候性に優れる。ただし,Δσs =100×〔σs(i)−σs(ii) 〕/σs(i)で表される。σs(i)は恒温恒湿に保持す
る前の飽和磁化量,σs(ii) は一週間保持後の飽和磁化量である。
以下に実施例を挙げるが,各実施例で採用した各特性値の評価法を先ず説明する。
〔粒子の長軸長及び短軸長〕
平均長軸長並びに短軸長は透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製100CXMark−II型)にて観察された視野を 174,000倍に拡大した写真を使用し,500 個の粒子について測定した平均で示した。測定は粒子の重なりなどの写真の写り方によって境界のはっきりしないもの,写真の端で粒子の端が不正確になっているものに関しては測定を避け,分
散のよい単独粒子のみを選択して計測している。
〔粒子表面の組成分析〕
粒子表面の組成分析にはESCAすなわちX線光電子分光法(XPS)を用いて解析を行った。測定条件としては,アルバック・ファイ株式会社製の5800を使用し,X線源はAl陽極線源150W,分析面積は800μmφ,中和銃を使用,取り出し角は45°に設定し,試料はホルダー上にセッティングした。スキャニング速度は5eV/min, エッチングはSiO2換算で2nm /cycle の割合で行った。そのときの測定範囲は下記のとおりで
ある。
Fe(2p): 740 〜700 (eV)
Co(3s): 810 〜770 (eV)
Al(2p): 88 〜68 (eV)
Y (3d): 172〜152 (eV)
O (1s): 545〜525 (eV)
〔全体の組成分析〕
粒子全体の組成分析については,Co,AlおよびYの定量は日本ジャーレルアッシュ株式会社製高周波誘導プラズマ発光分析装置(IRIS/AP) (ICP)を用いて,Feの定量は平沼産業株式会社製平沼自動滴定装置(COMTIME-980) を用いて行ない,酸素の定量はLECO Corporation製のNITROGEN/OXYGEN DETERMETER (TC-436型) を用いて行った。これらの定量結果はwt%として与えられるので,Feに対する原子百分率の比(at.%)の算出は一
旦全元素の割合をwt%からat.%に変換したうえで行なった。
〔粒子表面のCo/Fe存在比〕
粒子にイオンスパッタを施さず測定を行い,それらのピークの結果を用い,エリア分析の手法を使用して,再表層におけるCoおよびFeの存在量について定量分析を行う。その結果から得られた原子量換算の値で得た結果から,表層におけるCo/Feにより存在
量の比(ESCA Co/Feと記す)を得た。
〔粉体の磁気特性〕
粉体の磁気特性は,東栄工業株式会社製のVSM 装置(VSM-7P)を使用して外部磁場796kA/m(10kOe )で測定した。
〔粉体の耐酸化性評価〕
供試粉末を温度60℃・ 相対湿度90%の恒温恒湿条件下に一週間保存した前後の飽
和磁化を測定し,保存前後の飽和磁化との値からΔσs(%)を算出する。
〔粉体pH〕
粉体pHは JIS-K5101-1991 に準拠した方法にて測定する。具体的には試料5gを硬質三角フラスコに取り,純水100mLを加えて約5分間加熱して煮沸する。煮沸後, 栓を
して常温まで放冷した後, 栓を開いて減量分を, 煮沸により炭酸ガスを除去した純水で,
補填し,値を正確に調整する。そのあと三角フラスコに栓をして1分間振り混ぜてから5
分間静置する。その後,水性懸濁液のpHを JIS-Z8802に従って測定する。
〔比表面積〕
湯浅イオニクス株式会社製の4ソープUSを用いて,BET法により比表面積を算出す
る。
〔結晶子Dx〕
X線回折装置 (理学電気株式会社製のRAD−2C)で得られるFe(110) 面の回折ピークの半価幅からDxを求める。すなわち2θ式からから,D(110)=Kλ/β cosθ(式中Kはシェラー定数=0.9,λは照射X線波長,βH回折ピークの半価幅:ラジアン径
に補正して用いる,θは回折角を表す) に従って求める。
〔テープ評価〕
供試粉末100重量部に対し以下の材料を下記組成となるような割合で配合して遠心ボールミルで1時間分散させて磁性塗料を作製する。得られた磁性塗料をポリエチレンテレフタレートからなるベースフイルム上にアプリケーターを用いて塗布して磁気テープを作製し,その保磁力Hcxを測定し,また,そのヒステリシスループからSFDx値を算出する。磁気テープの磁気特性は前掲のVSM装置を使用し,外部磁場796kA/m(10kOe )で測定した。
強磁性鉄合金粉末 100重量部(表2に記載の各例で得られた粉末)
ポリウレタン樹脂 30重量部(東洋紡株式会社製のUR−8200)
塩化ビニル系樹脂 30重量部(日本ゼオン株式会社製のMR−110)
メチルエチルケトン 190重量部
シクロヘキサノン 80重量部
トルエン 110重量部
ステアリン酸 1重量部
アセチルアセトン 1重量部
アルミナ 3重量部
カーボンブラック 2重量部
〔実施例1〕
核粒子として用いるオキシ水酸化鉄ケーキを準備した。このオキシ水酸化鉄ケーキは,鉄とコバルトを含む水溶液に,炭酸ナトリウムを添加して炭酸鉄を生成させたうえ,酸素含有ガス(空気)の通気により酸化し且つ熟成を経て形成されたものである。ケーキ内の
オキシ水酸化鉄粒子粉末は次の特性を有している。
平均長軸長=0.087μm,
軸比=8.5,
BET法による比表面積=129.7m2/ g,
Co含有量=Co/Feの原子百分比で21.4at.%,
〔ESCA Co/Fe〕/〔ICP Co/Fe 〕=表層Co/コアCo=0.95
前記のオキシ水酸化鉄ケーキをミキサー(特殊機化工業株式会社製のホモミサー)を用いて,回転速度5000rpm×10分間で水中に解膠・分散させ,スラリー濃度20g/Lのスラリー1Lを得た。
得られたスラリーを気泡塔に入れ,スラリー中に窒素ガスを気泡状にして40L/分の流量で導入することにより溶存酸素を系外へ排出させた。ついで,窒素ガスを通気させな
がら,5%NH3水溶液に特級硫酸コバルトを溶解させたコバルトアンミン錯体溶液200mL
を,最終生成オキシ水酸化鉄の組成でCo/Fe=31.4at.%になる量で(すなわちCo/Fe で10at% 相当を上乗せ出来るように),該スラリーに添加した。その際,Coの被着効率については,あらかじめ実施した予備試験の結果により75%程度であると判明していたので,被着に使用する溶液の濃度はそのことを勘案してやや高めの濃度に調整した。すなわち,特級試薬硫酸コバルト七水和物3.55g を5%アンモニア水200ml に投入し、室温
の条件で10分間撹拌して混合した。
その後,特級無水炭酸ナトリウム 51.61g(これはCO2/(Fe+Co)の原子比で2に相当する)を添加した。その際に炭酸の溶解に発生する熱による影響を緩和するため,液温が20℃よりも高くならないように調整した。このあと,温度の上昇を抑制しながら混合を15分間実施し,オキシ水酸化鉄の表面にコバルトの炭酸塩で被覆を行ったあと,酢酸を用い
て35℃,pH7.5に調整し,3時間熟成を施した。
熟成後,Al/(Fe+Co)=8.9at.%になるようにアルミニウムイオン濃度を調整した硫酸アルミニウム水溶液(無水硫酸アルミニウム 3.76gを純水 100 mL に溶解) を徐々に追加した。その後,アンモニア水(23%)を添加してpHを9.5まで上昇させ
,温度が安定になるまで熟成を施した。
ついで酸化イットリウム1.70 gを100 mLの希硫酸に溶解した酸化イットリウム溶液(この濃度はY/(Fe+Co)=6.2 at.%に相当する) を一挙に添加してYをオキシ水酸化
鉄の表面に被着させた。
Yの被着操作の後,熟成を1時間行って二層構造を有するオキシ水酸化鉄粒子を得た。
得られた二層構造を有するオキシ水酸化鉄粒子は,
Co/Fe=30.6at.%,
Al/(Co+Fe)=8.7at.%,
Y/(Co+Fe)=6.0at.%,
の量比でCo,AlおよびYを含有したものであり,
長軸長=0.095μm,
軸比=8,
BET法による比表面積=118.3m2/ g,
Dx=127オングストローム
であった。
これらの特性値を,出発材の針状晶核晶オキシ水酸化鉄と,生成した二層構造の針状晶
オキシ水酸化鉄とに分けて表1に示した。
〔実施例2〜5〕
核粒子として用いたオキシ水酸化鉄を,表1の実施例2〜5の「針状晶核晶オキシ水酸化鉄特性」欄に示した組成のものに変えた以外は,実施例1を繰り返して二層構造を有するオキシ水酸化鉄粒子を得た。得られた二相構造のオキシ水酸化鉄粒子の特性を,実施例
1の場合と同様に,表1の「針状晶オキシ水酸化鉄」の欄に記載した。
〔実施例6〕
核粒子としてオキシ水酸化鉄ケーキ(ケーキ中に含まれる粒子の物性は表1の「針状晶核晶オキシ水酸化鉄特性」に示したとおりであるが,〔ESCA Co/Fe〕/〔ICP Co/Fe 〕=表層Co/コアCoの比は0.93)を準備し,これを特殊機化工業製ホモミクサーを用いて5000rpm 、10分間の条件にて水中に均一に解謬した(スラリー濃度:20g/L, スラリー
量1L)。
得られたスラリーを気泡塔に入れ,スラリー中に窒素ガスを気泡状にして40L/分の流量で導入することにより溶存酸素を系外へ排出させた。ついで,5%NH3水溶液に特級試薬硫酸コバルト七水和物15.28gを溶解したコバルトアンミン錯体溶液200mLを,
窒素ガスを通気させながら該スラリー中に添加し,室温で10分間撹拌して混合した。
その後,特級無水炭酸ナトリウム56.23 g(この炭酸塩の添加量はCO2/(Fe+Co)の原子量比で2に相当) を添加した。その際に炭酸の溶解時の発生熱による影響を緩和するため,液温が20℃よりも高くならないように調整した。このあと,温度の上昇を抑制しながら混合を15分間実施し,オキシ水酸化鉄の表面に鉄・コバルトの炭酸塩で被覆
を行ったあと,酢酸を用いて35℃,pH=7.5に調整し,3時間の熟成を施した。
熟成後,酸素含有ガス(空気)を通気して徐々に酸化を行い,酸化開始より30分経過後,Al/(Fe+Co)=8.5at.%になるようにアルミニウムイオン濃度を調整した硫酸アルミニウム水溶液(無水硫酸アルミニウム3.86g を純水100 mLに溶解)を徐々に追加(酸化割合85%までの区間で酸化が終了するように調整)したあとで,アンモニア水(濃度23%)を使用してpHを9.5に調整し,温度が安定するまで熟成させた。ついで酸化イットリウム1.86gを100mL の希硫酸に溶解した酸化イットリウム溶液(この濃度はY/(Fe+Co)=6.2at.% に相当する)を一挙に添加して、Yをオキシ水酸化鉄の表面に被着させた。Yの被着操作の後,熟成を1時間行って二層構造を有するオキシ水酸化鉄粒子を得た。得られた二層構造を有するオキシ水酸化鉄粒子は,表1に示したように,Co/Fe=30.3at.%,Al/(Fe+Co)=8.3at.%,Y/(Fe+Co)=6.0at.%の組成を有し,平均長軸長=0.098μm,軸比=7,BET値=114
.3m2/gであり,Dx=118オングストロームであった。
〔実施例7〕
実施例1で得られた二層構造を持つオキシ水酸化鉄粉末を大気雰囲気下、475℃で30分間加熱して酸化鉄粉末とした。得られた酸化鉄粉末をステンレスボード中に入れて石英管に挿入した上で電気炉に装入し,炉内に水素ガスを50L/minの流量で通気しながら加熱還元を行った。この還元の間は,還元開始から15分間は500 ℃に保持し,次い
で1℃/minの昇温速度で600℃まで昇温した後,その温度に30分維持した。その後,
得られた還元粉末を窒素ガス雰囲気中で70℃まで冷却したあと,70℃の温度に維持しながら,窒素:酸素の割合を9:1とした酸素含有ガスを55L/minの割合で90分間通
気し,還元粉末の表面に酸化膜を形成させた。
得られた針状晶鉄合金粉末は,表2に示したように,
Co/Fe=30.5at.%,
Al/(Fe+Co)=8.7at.%,
Y/(Fe+Co)=6.1at.%の組成を有し,
平均長軸長=0.092μm,軸比=6.8,保磁力Hc=202.9kA/m(2549Oe ),飽和磁化値σs=163Am2/kg(163emu/g ),BET値=42m2/g,Δσs=5.3%,Dx=168オングストローム,粉体pH=8.9, 〔ESCA Co/Fe〕/〔ICP Co/Fe〕=1.56であった。表3にこの針状晶鉄合金粉末を用いて作成
したテープの磁気特性を示した。
また,得られた針状晶鉄合金粉末をTG測定に供したところ,図2にそのTG曲線を示したように,見かけの発火温度=142℃,実質発火温度=189℃であり,よって、実
質発火点と見かけの発火点の差は47℃であって、重量増加量=15.4wt%であった。
〔実施例8〜12〕
実施例2〜6で得られた二層構造を持つオキシ水酸化鉄粉末を用いた以外は,実施例7を繰り返した。得られた各針状晶鉄合金粉末(実施例8〜12)の特性を表2に示した。
また,各針状晶鉄合金粉末を用いて作成したテープの磁気特性を表3に示した。
〔比較例1〕
鉄とコバルトの割合がCo/Fe=30.4at.%となるように,0.15 mol/Lの硫酸第1
鉄水溶液 2900mLと 0.1 mol/Lの硫酸コバルト水溶液1300 mLを混合し,毎分25L/minの割合で窒素を導入して液中の溶存酸素を除去したあと,炭酸ナトリウムを鉄とコバルトの総量に対して3当量となる量( すなわち、179.65g)添加することにより,主成分が炭酸鉄からなる懸濁液を作成し,このスラリーに空気を通気して酸化すると共に,この酸化処理中に硫酸アルミニウムを,Al/(Fe+Co)の比が8.6at.% となる量(すなわち、8.31g の無水硫酸アルミニウムを純水100ml に溶解)で徐々に添加した。その後,熟成を経た後、酸化イットリウム3.57g を100mL の希硫酸に溶解した溶液(この濃度はY/(Fe+Co)=5.6at%に相当する)を添加したあと,ろ過,水洗,乾燥を経て,表1に示す物性のオキシ水酸化鉄を得た。このオキシ水酸化鉄は,コバルトの添加操作が前記実施
例とは異なるので,前記実施例のような二重構造を有するものではない。
〔比較例2〜5〕
使用した試薬は同じであるが,その使用量を種々変化させた以外は比較例1と同じ操作
を繰り返して,表1に示した物性のオキシ水酸化鉄(比較例2〜5)を得た。
〔比較例6〕
比較例1で得られたオキシ水酸化鉄をステンレスボード中に入れて石英管に挿入した上で電気炉に装入し、大気中475℃に30分間加熱して酸化鉄粒子にした。炉内に水素ガスを50L/minの流量で通気しながら加熱還元を行った。この還元の間は,還元開始から15分間は500℃に保持し,次いで1℃/minの昇温速度で600℃まで昇温した後,その温度に30分維持した。その後, 得られた還元粉末を窒素ガス雰囲気中で70℃まで冷却したあと,70℃の温度に維持しながら,窒素:酸素の割合を9:1とした酸素含
有ガスを55L/minの割合で90分間通気し,還元粉末の表面に酸化膜を形成させた。
得られた針状晶鉄合金粉末は,表2に示したように,
Co/Fe=30.1at.%,
Al/(Fe+Co)=8.6at.%,
Y/(Fe+Co)=5.5at.%の組成を有し,
平均長軸長=0.097μm,軸比=6.3,保磁力Hc=209.0kA/m(2625Oe ),飽和磁化値σs=152Am2/kg(152emu/g ),BET値=47.3m2/g,Dx=173オングストローム,粉体pH=9.2,〔ESCA Co/Fe〕/〔ICP Co/Fe〕=1.02であり,Δσs=18.9%と高くなった。なお,表3にこの針状晶
鉄合金粉末を用いて作成したテープの磁気特性を示した。
また,得られた針状晶鉄合金粉末をTG測定に供したところ,図3にそのTG曲線を示したように,1段だけの酸化開始(発火温度=163℃)によって酸化し,その重量増加
量は23.5wt%となった。
〔比較例7〜10〕
比較例2〜5で得られたオキシ水酸化鉄を用いた以外は,比較例6を繰り返した。得られた各針状晶鉄合金粉末(比較例7〜10)の特性を表2に示した。また,各針状晶鉄合
金粉末を用いて作成したテープの磁気特性を表3に示した。
〔比較例11〕
比較例1で得られたオキシ水酸化鉄を使用したが,還元終了後,還元温度から窒素ガス雰囲気中で200℃まで冷却し,この温度で,酸素:窒素=1:9の酸素含有ガスを通気
して表面を酸化鉄に変化させた以外は,比較例6を繰り返した。
得られた針状晶鉄合金粉末は,表2に示したように,
Co/Fe=30.2at.%,
Al/(Fe+Co)=8.4at.%,
Y/(Fe+Co)=5.8at.%の組成を有し,
平均長軸長=0.095μm,軸比=6.4,保磁力Hc=202.1kA/m(2539Oe ),飽和磁化値σs=127Am2/kg(127emu/g ),Δσs=4.9%,BET値=46.7m2/ g,Dx=185オングストローム,粉体pH=9.2,〔ESCA Co/Fe〕/〔ICP Co/Fe〕=0.78であった。表3にこの針状晶鉄合金粉末を用い
て作成したテープの磁気特性を示した。
また,得られた針状晶鉄合金粉末をTG測定に供したところ,図4にそのTG曲線を示したように,1段だけの酸化開始(発火温度=192℃)によって酸化し,その重量増加量は4.2wt%となった。この試験結果から,本例の針状晶鉄合金粉末は,粒子表面の酸化層が厚くなっており,このために重量増加量が少なくなっていることがわかる。このため,Δσsは4.9%と低いが,飽和磁化値σsが低く,テープ特性においてもSFD値
が高くなっている。
〔比較例12〜15〕
比較例2〜5で得られたオキシ水酸化鉄を用いた以外は,比較例11を繰り返した。得られた各針状晶鉄合金粉末(比較例12〜15)の特性を表2に示した。また,各針状晶
鉄合金粉末を用いて作成したテープの磁気特性を表3に示した。
Figure 0004677734
Figure 0004677734
Figure 0004677734
これら表1〜3の結果から次のことがわかる。
・実施例7〜12で得られた針状晶鉄合金粉末は,比較例6〜10のものに比べると,酸
化開始温度が二段であることによって耐酸化性が向上していることがわかる。
・実施例7〜12で得られた針状晶鉄合金粉末は,比較例11〜15のものに比べると,粒子の表層におけるCo/Feが全体のCo/Feに比較して相対的に高いことにより,
耐酸化性と磁気特性が共に向上しているいることがわかる。
・比較例11〜15のように,TG測定時における重量増加幅が5.0wt%未満では,耐酸化性は向上するが,飽和磁化σs は低い値となって良好な磁気特性を得難いのに対し,
実施例7〜12のものは,重量増加量が高く,十分な飽和磁化量を有している。
TG測定で得られるプロファイル(TG曲線)で使用する用語を説明するための図である。 本発明に従う磁性粉末のTG曲線の例を示した図である。 比較例に従う磁性粉末のTG曲線の例を示した図である。 比較例に従う磁性粉末のTG曲線の例を示した図である。

Claims (5)

  1. 還元性雰囲気中で多段還元法により形成されるFeを主体とする針状粒子からなる磁気記録媒体用磁性粉末において、該粒子の表層部のCo含有率/コア部のCo含有率比が1.23〜1.89で且つ該粒子の平均長軸長が0.1μm未満であり、該粉末をTG測定に供したときに低温側酸化開始点と高温側酸化開始点の少なくとも2段の酸化開始点を示すこと、を特徴とする磁気記録媒体用磁性粉末。
    ここで、TG測定とは、試料粉末10mgを大気雰囲気下において昇温速度10℃/分で昇温し、その重量変化を測定することをいう。
  2. 低温側酸化開始点〔みかけの発火点(IT(i))という〕と高温側酸化開始点〔実質発火点(IT(ii))という〕との間で、
    IT(ii)−IT(i)>10℃・・(1)式
    の関係を満たす請求項1に記載の磁気記録媒体用磁性粉末。
  3. 該TG測定において、測定開始から300℃に至るまでの重量増加量が10wt%以上である請求項1または2に記載の磁気記録媒体用磁性粉末。
  4. 温度60℃、湿度90%RHの恒温恒湿下に一週間保持したときの飽和磁化量の低下量Δσsが15%未満である請求項1ないし3のいずれかに記載の磁気記録媒体用磁性粉末。ただし、該恒温恒湿に保持する前の飽和磁化量をσs(i)、一週間保持後の飽和磁化量をσs(ii)としたとき、Δσs=100×〔σs(i)−σs(ii)〕/σs(i)で表される。
  5. 磁性層を構成する磁性粉末として請求項1ないし4のいずれかに記載の磁性粉末を用いた磁気記録媒体。
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