JP4601541B2 - 可塑性油脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、可塑性油脂組成物、特に広い温度域で高いクリーミング性を有し、包水性が良好であるクリーミング用可塑性油脂組成物に関する。また、本発明は、該可塑性油脂組成物を使用した、油性感が減じられ、耐熱性及び口溶けに優れたバタークリームなどのクリーム類、及び、ショートネス性及び口溶けに優れたバターケーキやクッキー等の焼菓子類に関する。
従来、可塑性油脂、特に、バタークリーム等のクリーム用油脂、あるいはバターケーキやクッキー等の焼菓子練込用油脂として使用されるマーガリン又はショートニングの原料油脂としては、良好な物性や機能を有し且つ安価である魚硬化油が多用されていた。
しかし、近年になり小魚の漁獲量が減少し、魚油の生産量が不足してきたことにより、魚硬化油の使用を制限せざるを得ない状況に変わりつつある。そのため、魚硬化油から、ナタネ油、大豆油、パーム油等の植物油脂を代表とする各種の動植物油脂、あるいはこれらの硬化油、分別油への置換が進められている。
しかしながら、これらの油脂は、物性や機能、特に耐熱性、クリーミング性や包水性が明らかに魚硬化油に比べ劣っているため、バタークリーム用又は焼菓子練込用のマーガリン又はショートニングの原料油脂としては適しておらず、魚硬化油と同等の物性や機能を、魚硬化油を使用せずに得ることは大変困難であった。
そのため、これらの各種の動植物油脂、あるいはこれらの硬化油、分別油に対し、エステル交換を行なうことにより、魚硬化油と同等の物性や機能を与え、バタークリーム用又は焼菓子練込用油脂として使用されるマーガリン又はショートニングの原料油脂として適当な油脂を得る試みが各種行なわれている。
例えば、パーム系油脂、ラウリン系油脂及び液状油からなる油脂配合物をエステル交換した油脂(例えば特許文献1参照)や、総飽和脂肪酸含量、炭素数12以下の飽和脂肪酸含量及び炭素数20以上の飽和脂肪酸含量をそれぞれ特定範囲とした油脂組成物をランダムエステル交換した油脂であって特定の融点及び硬さを有する油脂組成物(例えば特許文献2参照)、パーム分別軟質油を非選択的エステル交換して得られた油脂を含んでなることを特徴とする可塑性油脂(例えば特許文献3参照)、あるいは、構成脂肪酸組成において炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が50〜70質量%であり炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が20〜35質量%である油脂配合物を、ランダムエステル交換した油脂を含有する可塑性油脂組成物(例えば特許文献4参照)が提案されている。
しかし、特許文献1に記載されているエステル交換油は、融点の低い脂肪酸であるラウリン系油脂や多価不飽和脂肪酸を含んだ配合油をエステル交換したものであるため、該エステル交換油の融点が低く、広い温度域で同一の物性や機能を有する可塑性油脂組成物が得られないという問題があった。また、特許文献2に記載されている油脂組成物は、特定の融点を有する魚硬化油代替油脂であり、広範囲で使用し得る魚硬化油代替油脂ではないという問題があった。また、特許文献3に記載されている油脂組成物は、クリーミング性や包水性を改良するものではなく、また、広い温度域で同一の物性や機能を有する可塑性油脂組成物が得られないという問題があった。さらに、特許文献4に記載されている可塑性油脂組成物は、夏季などの高い環境温度下、あるいは、冬季などの低い環境温度下ではクリーミング性が十分なものではなく、また、該可塑性油脂組成物を使用して得られたバタークリームなどのクリーム類は夏季の室温の高い環境下における耐熱性が不充分であり、また、該可塑性油脂組成物を使用して得られた焼菓子類は油染みがおきやすいものであった。
特開平8−242765号公報 特開2000−129286号公報 特開2002−338992号公報 特開2005−60614号公報
従って、本発明の目的は、広い温度域で一定の物性や機能を有し、特に広い温度域で高いクリーミング性を有し、さらに包水性が良好である可塑性油脂組成物、並びに、該可塑性油脂組成物を使用した、油性感が減じられ、耐熱性及び口溶けに優れたバタークリームなどのクリーム類、及び、ショートネス性及び口溶けに優れたバターケーキやクッキー等の焼菓子類を提供することにある。
本発明は、ヨウ素価52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を、油相中に50〜80質量%含有し、且つ、該油相中に該エステル交換油脂1質量部に対しパームステアリンを0.08〜0.3質量部の比率で含有することを特徴とする可塑性油脂組成物を提供することにより、上記目的を達成したものである。
また、本発明は、上記可塑性油脂組成物を使用したクリーム類及び焼菓子類を提供することにより、上記目的を達成したものである。
本発明の可塑性油脂組成物は、広い温度域で一定の物性や機能を有し、特に広い温度域での高いクリーミング性を有し、さらに包水性が良好であるため、従来の魚硬化油使用可塑性油脂を代替可能である。また、該可塑性油脂組成物を使用した本発明のクリーム類は、耐熱性に優れる上に、油性感が減じられ、口溶けが良好なものである。また、該可塑性油脂組成物を使用した本発明の焼菓子類は、ショートネス性及び口溶けに優れる。
まず、本発明の可塑性油脂組成物に用いられる上記油脂配合物について以下に述べる。
本発明の可塑性油脂組成物に用いられる上記油脂配合物に使用するパーム分別軟部油は、アセトン分別やヘキサン分別等の溶剤分別、ドライ分別等の無溶剤分別等の方法によって、パーム油を分別した際に得られる低融点部であり、ヨウ素価52〜75のものである。ヨウ素価が52未満のパーム分別軟部油やヨウ素価が75を超えるパーム分別軟部油を使用すると、広い温度域で一定の物性や機能を有する可塑性油脂が得られない。
本発明に用いられるパーム分別軟部油としては、パームスーパーオレインを使用することが好ましく、とりわけ、ヨウ素価が55以上のパームスーパーオレインを使用することが、広い温度域、特に低温域(10℃以下)でも良好な可塑性を得られる点、さらには、より広い温度域で高いクリーミング性を有する可塑性油脂組成物を得ることが可能な点で好ましく、ヨウ素価60以上のパームスーパーオレインを使用することがさらに好ましい。
また、本発明の可塑性油脂組成物では、より高い包水性(水性原料をより多く乳化することができる)が得られる点で、アセトンを使用して分別されたパーム分別軟部油を使用することが好ましい。
本発明の可塑性油脂組成物に用いられる上記油脂配合物は、上記パーム分別軟部油を70質量%以上、好ましくは90質量%以上含有する。パーム分別軟部油の含有量が70質量%未満であると、得られる可塑性油脂組成物が広い温度域で一定の物性や機能を有さず、特にクリーミング性と包水性が低下し、さらには、該可塑性油脂組成物を使用したクリーム類や焼菓子類が良好な口溶けを有さないものになってしまう。
上記油脂配合物に含まれる、上記パーム分別軟部油以外の油脂としては、食用に適する油脂であればよく、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油等の常温で液体の油脂が挙げられるが、その他に、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の常温で固体の油脂も用いることができ、更に、これらの食用油脂に水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用することもできる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
なお、上記油脂配合物に含まれる油脂を構成する脂肪酸組成において、多価不飽和脂肪酸の占める割合が20質量%未満、好ましくは10質量%未満であることが、広い温度域で良好なクリーミング性を得ることが出来る点で好ましい。
本発明の可塑性油脂組成物は、上記油脂配合物をエステル交換した、エステル交換油脂を、油相中に50〜80質量%、好ましくは60〜80質量%含有する。油相中の上記エステル交換油脂の含有量が50質量%未満であるか80質量%を超えると、広い温度域での良好なクリーミング性や良好な包水性を有する油脂組成物を得ることができない。
上記エステル交換の反応は、化学的触媒による方法でも、酵素による方法でもよく、また、ランダムエステル反応であっても、位置選択性のエステル交換反応であってもよいが、化学的触媒又は位置選択性のない酵素を用いた、ランダムエステル反応であることがより好ましい。
上記化学的触媒としては、例えば、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属系触媒が挙げられ、また、上記位置選択性のない酵素としては、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes) 属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus) 属、ムコール(Mucor) 属、ペニシリウム(Penicillium) 属等に由来するリパーゼが挙げられる。なお、該リパーゼは、イオン交換樹脂あるいはケイ藻土及びセラミック等の担体に固定化して、固定化リパーゼとして用いることもできるし、粉末の形態で用いることもできる。
次に、本発明の可塑性油脂組成物に用いられる上記パームステアリンについて以下に述べる。
本発明の可塑性油脂組成物に用いられる上記パームステアリンは、パーム油からパーム分別軟部油を分別採取する際の副生物として得られるものであり、ヨウ素価が好ましくは20〜50、さらに好ましくは20〜48のものである。本発明では、上記パームステアリンとして、上昇融点が44〜58℃、特に48〜56℃のものを使用することが好ましい。
また、上記パームステアリンは、パーム分別軟部油を分別採取する際の副生物に、更に分別及び/又はエステル交換処理を施したものであってもよい。特にエステル交換処理を施したものとすることで、さらに包水性の高い可塑性油脂組成物が得ることが可能となる。
本発明の可塑性油脂組成物は、油相中に上記エステル交換油脂1質量部に対し上記パームステアリンを0.08〜0.3質量部、好ましくは0.1〜0.3質量部の比率で含有する。パームステアリンを使用しないと本発明の効果は得られず、他のパーム系油脂、例えば、パーム極度硬化油脂、パーム部分硬化油脂、パーム分別軟部油の硬化油脂等を使用したのでは、一定の物性を示す温度域が狭くなる上、特にクリーミング性が不良となる。また、エステル交換油脂1質量部に対しパームステアリンが0.08質量部未満であるか、又は0.3質量部を超えると、一定の物性を示す温度域が狭くなる。
尚、本発明の可塑性油脂組成物の油相中における上記パームステアリンの含有量は、5〜22質量%であることが好ましい。パームステアリンの含有量が5質量%未満であると、夏季などの高い環境温度下でクリーミングした際に、コシがぬけ、クリーミング時間が長くなってしまうおそれがあり、22質量%を超えると、硬くなりすぎて、口溶けが悪く、また、冬季などの低い環境温度下でクリーミングした際に油脂のダマが残るなどの問題が起こることがある。
本発明の可塑性油脂組成物における油相含量は、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%である。油相含量が70質量%未満であると、乳化状態が不安定になることに加え、常温での可塑性に乏しい油脂組成物になってしまうおそれがある。
本発明の可塑性油脂組成物には、硬さの調整のために必要に応じ、上記エステル交換油脂及び上記パームステアリン以外のその他の油脂を使用することができる。その他の油脂の使用量は、本発明の油脂組成物の油相中、好ましくは0〜45質量%、より好ましくは10〜40質量%である。
本発明の可塑性油脂組成物に用いられる上記その他の油脂としては、特に限定されないが、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、豚脂、乳脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明の油脂組成物においては、油相のSFC(固体脂含量)を、10℃で好ましくは20〜60%、より好ましくは20〜50%、且つ、20℃で好ましくは10〜40%、より好ましくは10〜30%とする。SFCが10℃で20%未満であるか、又は20℃で10%未満であると、十分な硬さが得られず、広い温度範囲での良好な可塑性が得られ難い。一方、SFCが10℃で60%を超えるか、又は20℃で40%を超えると、油脂組成物が硬すぎて、広い温度範囲での良好な可塑性を得難い。
なお、上記のSFCは、次のようにして測定する。即ち、油相を60℃に30分保持して完全に融解した後、0℃に30分保持して固化させる。次いで、25℃に30分保持し、テンパリングを行ない、その後、0℃に30分保持する。これを各測定温度に順次30分保持した後、SFCを測定する。
また、本発明の可塑性油脂組成物は、トランス酸を実質的に含有しないことが好ましい。ここで、「トランス酸を実質的に含有しない」とは、可塑性油脂組成物の全構成脂肪酸中、トランス酸含量が好ましくは10質量%未満、さらに好ましくは5質量%以下、最も好ましくは1質量%以下であることをいう。
水素添加は、油脂の融点を上昇させる典型的な方法であるが、水素添加油脂は、完全水素添加油脂を除いて、通常構成脂肪酸中にトランス酸が10〜50質量%程度含まれている。一方、天然油脂中にはトランス酸が殆ど存在せず、反芻動物由来の油脂に10質量%未満含まれているにすぎない。近年、化学的な処理、特に水素添加に付されていない油脂組成物、即ち実質的にトランス酸を含まない油脂組成物であって、適切なコンシステンシーを有するものも要求されている。
本発明の可塑性油脂組成物に用いられる「上記エステル交換油脂に使用するパーム分別軟部油」及び「上記パームステアリン」は、ともにトランス酸を実質的に含有しないため、必要に応じ上記油脂配合物に使用する「その他の油脂」(パーム分別軟部油以外の油脂)及び必要に応じ油相中に使用する「その他の油脂」として、水素添加油脂を使用しないことにより、トランス酸を含まずとも適切なコンステンシーを有する可塑性油脂組成物とすることができる。
また、本発明の可塑性油脂組成物は、合成乳化剤を添加せずとも、良好なクリーミング性を有し、さらには、良好な包水性を有するものであるため、合成乳化剤を含有しないことが好ましい。
上記合成乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等が挙げられる。
本発明の可塑性油脂組成物には、合成乳化剤ではない乳化剤を用いることができ、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、乳脂肪球皮膜等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
その他、本発明の可塑性油脂組成物に含有させることができる成分としては、例えば、水、増粘安定剤、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、牛乳・練乳・脱脂粉乳・カゼイン・ホエーパウダー・バター・クリーム・ナチュラルチーズ・プロセスチーズ・発酵乳等の乳や乳製品、蔗糖・液糖・はちみつ・ブドウ糖・麦芽糖・オリゴ糖・水飴・ソルビトール・還元水飴・モラセス等の糖類や糖アルコール類、デキストリン類、ステビア・アスパルテーム等の甘味料、β―カロチン・カラメル・紅麹色素等の着色料、トコフェロール・茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白卵及び各種卵加工品、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
なお、上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。上記増粘安定剤の含有量は、特に制限はないが、本発明の可塑性油脂組成物中、好ましくは0〜10質量%、さらに好ましくは0〜5質量%である。
本発明の可塑性油脂組成物において、油脂以外の成分の使用量は、それらの成分の使用目的等に応じて適宜選択することができ、特に制限されるものではないが、好ましくは全油脂分100質量部に対して合計で50質量部以下とする。
次に、本発明の可塑性油脂組成物の好ましい製造方法について説明する。
本発明の可塑性油脂組成物は、ヨウ素価52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を50〜80質量%含有し、且つ該エステル交換油脂1質量部に対しパームステアリンを0.08〜0.3質量部の比率で含有する、油相を溶解した後、冷却し、結晶化させることにより製造することができる。
具体的には、まず、上記油相を溶解し、必要により水相を混合乳化する。そして次に殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法はタンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
次に、上記油相を冷却し、結晶化させる。好ましくは冷却可塑化する。冷却条件は、好ましくは−0.5℃/分以上、さらに好ましくは−5℃/分以上とする。この際、徐冷却より急速冷却の方が好ましい。冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えばボテーター、コンピネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターの組み合わせが挙げられる。
また、本発明の可塑性油脂組成物を製造する際のいずれかの製造工程で、窒素、空気等を含気させてもさせなくても構わない。
本発明の可塑性油脂組成物は、マーガリンタイプでもショートニングタイプでもどちらでもよく、また乳化物とする場合、その乳化形態は、油中水型、及び二重乳化型のいずれでも構わない。
本発明の可塑性油脂組成物の用途としては、練り込み用、折り込み用、フィリング用、サンド用、トッピング用、スプレッド用、スプレー用、コーティング用、フライ用、クリーム用等、製菓・製パン分野、調理分野、惣菜分野において広く使用することができる。
特に、本発明の可塑性油脂組成物は広い温度域で高いクリーミング性を有し、また、高い包水性を有するため、上記用途のなかでも、油脂のクリーミング性を利用し、気相を導入することによって油脂の比重を小さくする操作を製造工程に含む、例えば、ブリオッシュ等の高油脂含量パンを製造する際の前処理法に使用する製パン練込用、パン類や洋菓子類のデコレーション等に使用するシュガークリームやバタークリームに用いられるクリーム用、シュガーバッター法やフラワーバッター法によって得ることができるバターケーキやクッキー等の焼菓子練込用などの、いわゆるクリーミング用として好適に用いることができる。
本発明の可塑性油脂組成物は、上記用途の中でも、従来、水性成分や、比重の大きい原材料を多く使用するために重い食感になりやすかったクリーム用あるいは焼菓子練込用として、特に好適に用いることができる。
なお、上記用途における本発明の可塑性油脂組成物の使用量は、使用用途により異なるものであり、特に限定されるものではない。
次に、本発明のクリーム類及び本発明の焼菓子類について説明する。
本発明のクリーム類は、上述した本発明の可塑性油脂組成物をクリーミングし、ここに、糖類、卵類、乳、呈味素材等を配合して得られる、油相中に粉体が分散した形態のシュガークリームや、油中水型あるいは油中水中油型の乳化形態を持つバタークリーム等である。本発明のクリーム類においては、本発明の可塑性油脂組成物を使用することにより、クリーム類の比重を小さくすることができるので、本発明のクリーム類は軽い食感を有する。また、本発明のクリーム類は、油性感が減じられ、高温保存時(約30〜35℃)の耐熱保型性・離水耐性も良好であり、また、口溶けも優れたものである。
本発明のクリーム類において、本発明の可塑性油脂組成物の使用量は、クリーム類の用途や乳化形態等により異なるものであり、特に限定されるものではないが、おおよそクリーム類中に40〜95質量%である。
また、本発明の焼菓子類は、本発明の可塑性油脂組成物をクリーミングして比重を小さくする操作を経て得られた生地を焼成して得られる菓子であり、例えば、本発明の可塑性油脂組成物に糖類を加えてクリーミングし、ここに、卵類、乳等を配合して混合後、小麦粉を軽く混合して製造されるシュガーバッター法によって得られた菓子生地を焼成して得られる焼菓子類、又は本発明の可塑性油脂組成物に小麦粉を加えてクリーミングし、ここに、糖類、卵類、乳等を配合、混合して製造されるフラワーバッター法によって得られた菓子生地を焼成して得られる焼菓子類である。具体例としては、パウンドケーキ、フルーツケーキ、マドレーヌ、バウムクーヘン、カステラ等のバターケーキ類、アイスボックスクッキー、ワイヤーカットクッキー、サブレ、ラング等のクッキーが挙げられる。
本発明の焼菓子類においては、焼菓子練込用油脂として本発明の可塑性油脂組成物を使用することにより、菓子生地の比重を小さくすることができるので、本発明の焼菓子類はショートネス性及び口溶けに優れたものである。
本発明の焼菓子類において、本発明の可塑性油脂組成物の使用量は、焼菓子類の種類等により異なるものであり、特に限定されるものではないが、おおよそ菓子生地中に10〜40質量%である。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例により何等制限されるものではない。
〔製造例1〕パーム分別軟部油のエステル交換油脂Aの製造
ヨウ素価51のパーム油を、パーム油:アセトン=1:2の質量比率で50℃にて混合溶解し、混合物とした。この混合物を1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却した後、結晶部(ステアリン画分)を濾別して液状部を得た。該液状部から常法によりアセトンを除去し、続いて常法に従い脱色、脱臭し、ヨウ素価55のパーム分別軟部油を得た。このパーム分別軟部油100%からなる油脂配合物を、ナトリウムメチラートを触媒として、非選択的エステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行ない、エステル交換油脂Aを得た。なお、油脂配合物に含まれる油脂を構成する脂肪酸組成において、多価不飽和脂肪酸の占める割合は10質量%であった。
〔製造例2〕パーム分別軟部油のエステル交換油脂Bの製造
ヨウ素価51のパーム油を、パーム油:ヘキサン=1:2の質量比率で50℃にて混合溶解し、混合物とした。この混合物を1℃/分の冷却速度で5℃まで冷却した後、結晶部(ステアリン画分)を濾別して液状部を得た。該液状部から常法によりヘキサンを除去し、続いて常法に従い脱色、脱臭し、ヨウ素価55のパーム分別軟部油を得た。このパーム分別軟部油100%からなる油脂配合物を、ナトリウムメチラートを触媒として、非選択的エステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行ない、エステル交換油脂Bを得た。なお、油脂配合物に含まれる油脂を構成する脂肪酸組成において、多価不飽和脂肪酸の占める割合は10質量%であった。
〔製造例3〕パーム分別軟部油のエステル交換油脂Cの製造
ヨウ素価51のパーム油を、パーム油:アセトン=1:2の質量比率で50℃にて混合溶解し、混合物とした。この混合物を1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却した後、結晶部(ステアリン画分)を濾別して液状部を得た。該液状部から常法によりアセトンを除去し、続いて常法に従い脱色、脱臭し、ヨウ素価60のパームスーパーオレインを得た。このパームスーパーオレイン100%からなる油脂配合物を、ナトリウムメチラートを触媒として、非選択的エステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行ない、エステル交換油脂Cを得た。なお、油脂配合物に含まれる油脂を構成する脂肪酸組成において、多価不飽和脂肪酸の占める割合は13質量%であった。
〔製造例4〕パーム分別軟部油のエステル交換油脂Dの製造
ヨウ素価51のパーム油を、パーム油:アセトン=1:2の質量比率で50℃にて混合溶解し、混合物とした。この混合物を1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却した後、結晶部(ステアリン画分)を濾別して液状部を得た。該液状部から常法によりアセトンを除去し、続いて常法に従い脱色、脱臭し、ヨウ素価55のパーム分別軟部油を得た。このパーム分別軟部油と、ハイエルシン菜種極度硬化油脂を80:20で混合した油脂配合物を、ナトリウムメチラートを触媒として、非選択的エステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行ない、エステル交換油脂Dを得た。なお、油脂配合物に含まれる油脂を構成する脂肪酸組成において、多価不飽和脂肪酸の占める割合は8質量%であった。
〔製造例5〕パーム分別軟部油のエステル交換油脂Eの製造
ヨウ素価51のパーム油を、パーム油:アセトン=1:2の質量比率で50℃にて混合溶解し、混合物とした。この混合物を1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却した後、結晶部(ステアリン画分)を濾別して液状部を得た。該液状部から常法によりアセトンを除去し、続いて常法に従い脱色、脱臭し、ヨウ素価55のパーム分別軟部油を得た。このパーム分別軟部油と、ハイエルシン菜種極度硬化油脂を50:50で混合した油脂配合物を、ナトリウムメチラートを触媒として、非選択的エステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行ない、エステル交換油脂Eを得た。なお、油脂配合物に含まれる油脂を構成する脂肪酸組成において、多価不飽和脂肪酸の占める割合は5質量%であった。
〔製造例6〕パームステアリンの製造
ヨウ素価51のパーム油を、パーム油:アセトン=1:2の質量比率で50℃にて混合溶解し、混合物とした。この混合物を1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却した後、液状部(オレイン画分)を濾別して結晶部を得た。該結晶部から常法によりアセトンを除去し、続いて漂白(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行ない、ヨウ素価33のパームステアリンを得た。
〔製造例7〕パームステアリンのエステル交換油脂の製造
製造例6で得られたパームステアリン100%からなる油脂配合物を、ナトリウムメチラートを触媒として、非選択的エステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行ない、パームステアリンのエステル交換油脂を得た。
〔実施例1〕ショートニングタイプの可塑性油脂組成物1の製造
エステル交換油脂A52質量部、パームステアリン13質量部、大豆液状油35質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプの可塑性油脂組成物1を製造した。得られた可塑性油脂組成物は、ヨウ素価が52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を、油相中に52質量%含有し、且つ、油相中に該エステル交換油脂1質量部に対しパームステアリンを0.25質量部の比率で含有するものであった。また、油相のSFCは10℃で32%、20℃で19%であり、トランス酸含量は2質量%未満であり、トランス酸を実質的に含有していなかった。
〔実施例2〕ショートニングタイプの可塑性油脂組成物2の製造
エステル交換油脂B52質量部、パームステアリン13質量部、大豆液状油35質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプの可塑性油脂組成物2を製造した。得られた可塑性油脂組成物は、ヨウ素価が52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を、油相中に52質量%含有し、且つ、油相中に該エステル交換油脂1質量部に対しパームステアリンを0.25質量部の比率で含有するものであった。また、油相のSFCは10℃で32%、20℃で19%であり、トランス酸含量は2質量%未満であり、トランス酸を実質的に含有していなかった。
〔実施例3〕ショートニングタイプの可塑性油脂組成物3の製造
エステル交換油脂B52質量部、パームステアリンのエステル交換油脂13質量部、大豆液状油35質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプの可塑性油脂組成物3を製造した。得られた可塑性油脂組成物は、ヨウ素価が52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を、油相中に52質量%含有し、且つ、油相中に該エステル交換油脂1質量部に対しパームステアリンを0.25質量部の比率で含有するものであった。また、油相のSFCは10℃で35%、20℃で22%であり、トランス酸含量は2質量%未満であり、トランス酸を実質的に含有していなかった。
〔実施例4〕ショートニングタイプの可塑性油脂組成物4の製造
エステル交換油脂A52質量部、エステル交換油脂C12質量部、パームステアリン13質量部、大豆液状油23質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプの可塑性油脂組成物4を製造した。得られた可塑性油脂組成物は、ヨウ素価が52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を、油相中に64質量%含有し、且つ、油相中に該エステル交換油脂1質量部に対しパームステアリンを0.20質量部の比率で含有するものであった。また、油相のSFCは10℃で37%、20℃で21%であり、トランス酸含量は2質量%未満であり、トランス酸を実質的に含有していなかった。
〔実施例5〕ショートニングタイプの可塑性油脂組成物5の製造
エステル交換油脂D52質量部、エステル交換油脂C12質量部、パームステアリン13質量部、大豆液状油23質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプの可塑性油脂組成物5を製造した。得られた可塑性油脂組成物は、ヨウ素価が52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を、油相中に64質量%含有し、且つ、油相中に該エステル交換油脂1質量部に対しパームステアリンを0.20質量部の比率で含有するものであった。また、油相のSFCは10℃で38%、20℃で24%であり、トランス酸含量は2質量%未満であり、トランス酸を実質的に含有していなかった。
〔実施例6〕ショートニングタイプの可塑性油脂組成物6の製造
エステル交換油脂C64質量部、パームステアリン13質量部、大豆液状油23質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプの可塑性油脂組成物6を製造した。得られた可塑性油脂組成物は、ヨウ素価が52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を、油相中に64質量%含有し、且つ、油相中に該エステル交換油脂1質量部に対しパームステアリンを0.20質量部の比率で含有するものであった。また、油相のSFCは10℃で35%、20℃で18%であり、トランス酸含量は2質量%未満であり、トランス酸を実質的に含有していなかった。
〔実施例7〕ショートニングタイプの可塑性油脂組成物7の製造
エステル交換油脂C64質量部、パームステアリン6質量部、大豆液状油30質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプの可塑性油脂組成物7を製造した。得られた可塑性油脂組成物は、ヨウ素価が52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を、油相中に64質量%含有し、且つ、油相中に該エステル交換油脂1質量部に対しパームステアリンを0.09質量部の比率で含有するものであった。また、油相のSFCは10℃で30%、20℃で14%であり、トランス酸含量は2質量%未満であり、トランス酸を実質的に含有していなかった。
〔実施例8〕ショートニングタイプの可塑性油脂組成物8の製造
エステル交換油脂C75質量部、パームステアリン10質量部、大豆液状油15質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプの可塑性油脂組成物8を製造した。得られた可塑性油脂組成物は、ヨウ素価が52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を、油相中に75質量%含有し、且つ、油相中に該エステル交換油脂1質量部に対しパームステアリンを0.13質量部の比率で含有するものであった。また、油相のSFCは10℃で37%、20℃で18%であり、トランス酸含量は2質量%未満であり、トランス酸を実質的に含有していなかった。
〔比較例1〕ショートニングタイプの可塑性油脂組成物9の製造
エステル交換油脂A100質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプの可塑性油脂組成物9を製造した。得られた可塑性油脂組成物は、ヨウ素価が52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を、油相中に100質量%含有し、且つ、油相中にパームステアリンを含有しないものであった。また、油相のSFCは10℃で43%、20℃で23%であり、トランス酸含量は2質量%未満であり、トランス酸を実質的に含有していなかった。
〔比較例2〕ショートニングタイプの可塑性油脂組成物10の製造
エステル交換油脂C100質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプの可塑性油脂組成物10を製造した。得られた可塑性油脂組成物は、ヨウ素価が52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を、油相中に100質量%含有し、且つ、油相中にパームステアリンを含有しないものであった。また、油相のSFCは10℃で39%、20℃で17%であり、トランス酸含量は2質量%未満であり、トランス酸を実質的に含有していなかった。
〔比較例3〕ショートニングタイプの可塑性油脂組成物11の製造
エステル交換油脂C90質量部、パームステアリン5質量部、大豆液状油5質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプの可塑性油脂組成物11を製造した。得られた可塑性油脂組成物は、ヨウ素価が52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を、油相中に90質量%含有し、且つ、油相中に該エステル交換油脂1質量部に対しパームステアリンを0.06質量部の比率で含有するものであった。また、油相のSFCは10℃で39%、20℃で18%であり、トランス酸含量は2質量%未満であり、トランス酸を実質的に含有していなかった。
〔比較例4〕ショートニングタイプの可塑性油脂組成物12の製造
エステル交換油脂C45質量部、パームステアリン25質量部、大豆液状油30質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプの可塑性油脂組成物12を製造した。得られた可塑性油脂組成物は、ヨウ素価が52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を、油相中に45質量%含有し、且つ、油相中に該エステル交換油脂1質量部に対しパームステアリンを0.56質量部の比率で含有するものであった。また、油相のSFCは10℃で37%、20℃で22%であり、トランス酸含量は2質量%未満であり、トランス酸を実質的に含有していなかった。
〔比較例5〕ショートニングタイプの可塑性油脂組成物13の製造
エステル交換油脂E52質量部、パームステアリン13質量部、大豆液状油35質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプの可塑性油脂組成物13を製造した。得られた可塑性油脂組成物は、ヨウ素価が52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を、油相中に含有しないものであった。また、油相のSFCは10℃で45%、20℃で28%であり、トランス酸含量は2質量%未満であり、トランス酸を実質的に含有していなかった。
〔比較例6〕ショートニングタイプの可塑性油脂組成物14の製造
豚脂45質量部、パームステアリン25質量部、大豆液状油30質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプの可塑性油脂組成物14を製造した。得られた可塑性油脂組成物は、ヨウ素価が52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を、油相中に含有しないものであった。また、油相のSFCは10℃で34%、20℃で23%であり、トランス酸含量は2質量%未満であり、トランス酸を実質的に含有していなかった。
〔比較例7〕ショートニングタイプの可塑性油脂組成物15の製造
エステル交換油脂C64質量部、パームステアリン22質量部、大豆液状油14質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプの可塑性油脂組成物16を製造した。得られた可塑性油脂組成物は、ヨウ素価が52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を、油相中に64質量%含有し、且つ、油相中に該エステル交換油脂1質量部に対しパームステアリンを0.34質量部の比率で含有するものであった。また、油相のSFCは10℃で42%、20℃で23%であり、トランス酸含量は2質量%未満であり、トランス酸を実質的に含有していなかった。
上記実施例1〜8及び上記比較例1〜7それぞれで得られたショートニングタイプの可塑性油脂組成物1〜15について、以下の評価方法により15℃におけるクリーミング性試験、及び、25℃におけるクリーミング性試験と包水性試験を行ない、その評価結果を下記表1に記載した。
即ち、ショートニングタイプの可塑性油脂組成物1〜15各300gを15℃に調温し、15℃の環境下において、卓上ミキサーでビーターを使用し、高速でクリーミングし、クリーミング開始から3分後の比重を測定し、クリーミング性、及び、ダマの有無について下記評価基準に従って評価を行なった。
また、同様に、25℃に調温し、25℃の環境下において、卓上ミキサーでビーターを使用し、高速でクリーミングし、クリーミング開始から3分後の比重を測定し、クリーミング性、及び、ダマの有無について下記評価基準に従って評価を行なった。
さらに、25℃3分間クリーミングした油脂組成物については、更に、25℃の水を100gずつ投入混合し、水を抱き込めなくなった点をもって包水量とし、下記評価基準に従って評価を行なった。
(クリーミング性評価基準)
◎ 3分後の比重が0.40未満
○ 3分後の比重が0.40以上0.50未満
△ 3分後の比重が0.50以上0.60未満
× 3分後の比重が0.60以上
(ダマの有無)
◎ 全くダマは見られなかった
× ダマの発生が見られた
(包水性評価基準)
◎ 包水量が1500g以上
○ 包水量が1000g以上1500g未満
△ 包水量が500g以上1000g未満
× 包水量が400g以下
Figure 0004601541
〔実施例9〜16及び比較例8〜14〕
実施例1〜8及び比較例1〜7それぞれで得られたショートニングタイプの可塑性油脂組成物1〜15を比重0.35になるまでクリ−ミングしたもの100質量部に、転化糖液糖35質量部及びラム酒2.5質量部を混合し、低速で1分混合し、実施例9〜16及び比較例8〜14のバタークリームをそれぞれ得た。
得られたバタークリームについて、官能試験及び耐熱保型性試験を行ない、その評価結果を下記表2に記載した。なお、官能試験においては、25℃に1晩調温したサンプルを用い、口溶け及び油性感それぞれを、下記評価基準に従い4段階で評価した。また、耐熱保型性試験においては、バタークリームを一旦25℃に調温した後、絞り袋に入れ、菊型口金でシャーレに花型に絞り、蓋をし、これを5℃に60分調温後、20℃、25℃及び30℃の各恒温槽に一晩おき、離水状況及びダレの状況を観察し、下記評価基準に従い4段階で評価した。
(口溶け評価基準)
◎ 大変良好
○ 良好
△ やや劣る
× 不良
(油性感評価基準)
◎ さっぱりとしてみずみずしく、キレがある。
○ さっぱりとしているが、ややキレが劣る。
△ やや油っぽさを感じる。
× 油っぽく、キレが悪い。
(耐熱保型性評価基準)
◎ 離水がなく、保型性も全く問題なし。
○ やや離水が見られるが、保型性は全く問題なし。
△ 離水があり、保型性もやや悪い。
× 離水が激しく、保型性も悪い。
Figure 0004601541
〔実施例17〜24及び比較例15〜21〕
実施例1〜8及び比較例1〜7それぞれで得られたショートニングタイプの可塑性油脂組成物1〜15を用いて、次の配合及び製法により、実施例17〜24及び比較例15〜21のワイヤーカットクッキーをそれぞれ製造した。
(配合)
薄力粉100質量部、砂糖40質量部、全卵15質量部、食塩1質量部、重炭安1質量部、重曹1質量部、水10質量部、可塑性油脂組成物55質量部
(製法)
卓上ミキサー(ケンウッドミキサー)に可塑性油脂組成物及び砂糖を投入し、軽く混合した後、最高速で7分クリーミングした。次いで、あらかじめ全卵、水、食塩及び重炭安を混合した水相を少しずつ加えて攪拌・混合し、さらに薄力粉及び重曹を加えた後、低速で1分混合してワイヤーカットクッキー生地を得た。得られたワイヤーカットクッキー生地を、厚さ7ミリ、直径4センチの丸型にワイヤーカット成型し、オーブン(フジサワ社製)で180℃にて10分焼成した後、25℃で40分冷却し、包装した。
得られたワイヤーカットクッキーについて、官能試験を行ない、その評価結果を下記表3に記載した。なお、官能試験においては、20℃に3日間調温したサンプルを用い、食感(ショートネス性)及び食感(口溶け)それぞれを、下記評価基準に従い4段階で評価した。
(ショートネス性評価基準)
◎ サクサク感が極めて良好である。
○ サクサク感が良好である。
△ やや硬く、重い食感である。
× 硬く、重い食感である。
(口溶け評価基準)
◎ 大変良好
○ 良好
△ やや劣る
× 不良
Figure 0004601541
上記表1の結果から明らかなように、実施例1〜8の本発明の可塑性油脂組成物1〜8(ヨウ素価52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を、油相中に50〜80質量%含有し、且つ、該油相中に該エステル交換油脂1質量部に対しパームステアリンを0.08〜0.3質量部の比率で含有する可塑性油脂組成物)は、クリーミング性、ダマの有無、包水性の全てにおいて良好であった。特に、パームステアリンのエステル交換油脂を使用した実施例3の油脂組成物は、包水性が良好であり、また、アセトンを使用して得られたパーム分別軟部油を使用した実施例1の油脂組成物は、ヘキサンを使用して得られたパーム分別軟部油を使用した実施例2の油脂組成物に比べ、包水性が良好であった。
また、上記表2の結果から明らかなように、上記可塑性油脂組成物1〜8を使用したクリーム類(実施例9〜16)は、口溶け、油性感、耐熱保型性の全てにおいて良好であった。
また、上記表3の結果から明らかなように、上記可塑性油脂組成物1〜8を使用した焼菓子類(実施例17〜24)は、ショートネス性、口溶けの全てにおいて良好であった。
これらの実施例に対して、比較例1〜3の油脂組成物(ヨウ素価52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含有する油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を、油相中に80質量%を超えて含有する油脂組成物)は、クリーミング性、包水性ともやや劣るものであり、該油脂組成物を使用して得られたクリーム類(比較例8〜10)は、口溶けや油性感はほぼ良好であるものの、耐熱保型性がやや劣るものであり、焼菓子類(比較例15〜17)に使用した際のショートネス性及び口溶けも不良であった。
また、比較例4の油脂組成物(ヨウ素価52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含有する油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を、油相中に50質量%未満しか含有しない油脂組成物)は、クリーミング性も包水性も悪く、該油脂組成物を使用して得られたクリーム類(比較例11)は、口溶けや油性感がやや劣るものであり、焼菓子類(比較例18)に使用した際のショートネス性及び口溶けも不良であった。
また、比較例5の油脂組成物(ヨウ素価52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含有する油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂に代えて、ヨウ素価が52〜75のパーム分別軟部油を70質量%未満しか含有しない油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を使用した油脂組成物)は、クリーミング性も包水性も悪く、また、該油脂組成物を使用して得られたクリーム類(比較例12)は、口溶けや油性感も劣るものであり、焼菓子類(比較例19)に使用した際のショートネス性及び口溶けも不良であった。
また、比較例6の油脂組成物(ヨウ素価52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含有する油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を含有しない油脂組成物)は、クリーミング性、包水性がやや劣るものであることに加え、該油脂組成物を使用して得られたクリーム類(比較例13)の口溶けや油性感がやや劣り、さらには、焼菓子類(比較例20)に使用した際のショートネス性及び口溶けの点で、やや劣るものであった。
また、比較例7の油脂組成物(ヨウ素価52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含有する油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を50〜80質量%含有するものの、パームステアリンを該エステル交換油脂1質量部に対し0.3質量部を超えて含有する油脂組成物)は、クリーミング性や包水性が不良であり、該油脂組成物を使用して得られたクリーム類(比較例14)の口溶けや耐熱保型性は良好であるが、油性感はやや不良であり、さらには、焼菓子類(比較例21)に使用した際の口溶けもやや悪く、ショートネス性は極めて劣るものであった。

Claims (8)

  1. ヨウ素価52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を、油相中に50〜80質量%含有し、且つ、該油相中に該エステル交換油脂1質量部に対しパームステアリンを0.08〜0.3質量部の比率で含有することを特徴とする可塑性油脂組成物。
  2. 上記油脂配合物に含まれる油脂を構成する脂肪酸組成において、多価不飽和脂肪酸の占める割合が20質量%未満であることを特徴とする請求項1記載の可塑性油脂組成物。
  3. 上記パーム分別軟部油が、パームスーパーオレインであることを特徴とする請求項1又は2記載の可塑性油脂組成物。
  4. 上記パーム分別軟部油が、アセトンを使用して分別されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の可塑性油脂組成物。
  5. 合成乳化剤を含有しないことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の可塑性油脂組成物。
  6. クリーミング用であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の可塑性油脂組成物。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の可塑性油脂組成物を使用したクリーム類。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の可塑性油脂組成物を使用した焼菓子類。
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