JP4563270B2 - 加熱調理器 - Google Patents

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Description

この発明は、蒸気を用いて食品の加熱調理を行う加熱調理器に関する。
従来、蒸気を用いて食品などの被加熱物の加熱調理を行う加熱調理器として、調理ケース内に蒸気を噴射する蒸気調理装置がある(例えば、実用登録第2515033号公報(特許文献1)参照)。この蒸気調理装置は、調理ケースの内部に蒸気噴射ノズル部を有する蒸気供給管を配し、蒸気発生手段からの蒸気を、蒸気供給管を介して、上記蒸気噴射ノズル部から食品トレイ内の食品に向けて噴射するようにしている。
しかしながら、上記従来の蒸気調理装置は、調理ケースの内部に蒸気噴射ノズル部を有する蒸気供給管が露出しているため、特に家庭用の調理器具としては清掃性や使用性が悪いという問題がある。さらに、蒸気は、1本の管の下部に一列に穴を配置した蒸気噴射ノズル部から食品トレイ内に向けて噴き出すだけであるから、例えば茶碗1杯の御飯を温める場合ように少量の食品を加熱する場合には、食品に対して集中して蒸気を噴射できず蒸気温度が低下し、加熱効率が悪いと言う問題がある。
さらに、上記蒸気の噴射は、上記蒸気噴射ノズル部から定圧での圧送による噴射であるため、上記調理ケース内に噴射された蒸気の温度は低下する。そのために、上記調理ケース内の温度が上がらないと食品の温度も上がらず、食品の加熱に時間が掛かると言う問題もある。
実用登録第2515033号公報
そこで、この発明の課題は、食品を非過熱蒸気で加熱する際に効率よく短時間に加熱することができる加熱調理器を提供することにある。
上記課題を解決するため、この発明の加熱調理器は、
蒸気を発生する蒸気発生装置と、
上記蒸気発生装置から供給される蒸気によって被加熱物を加熱するための加熱室と、
上記蒸気発生装置によって発生された蒸気を吸引口から吸引すると共に、吹き込み口から吹き込まれる気体によって吹出口から吹き出す蒸気吸引エジェクタと、
一端が上記蒸気吸引エジェクタの吹出口に接続される一方、他端が上記加熱室の天板に設けられた吹出穴内に位置して、上記蒸気吸引エジェクタの吹出口からの蒸気を上記加熱室の天板における上記吹出穴内から上記加熱室内に噴射する蒸気噴射管と、
上記蒸気吸引エジェクタの吹き込み口に気体を吹き込むファンと、
上記蒸気発生装置で発生した蒸気を上記蒸気噴射管によって上記加熱室内に断続的に塊状として噴射するように、上記ファンに対して回転と停止とを交互に繰り返す断続運転を行うファン制御部と
を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、加熱室内の被加熱物が、蒸気吸引エジェクタの吹出口に一端が接続された蒸気噴射管により上記加熱室の天板における吹出穴内から噴射される蒸気によって加熱され。その際に、蒸気吸引エジェクタの吹き込み口に気体を吹き込むファンを、ファン制御部によって、蒸気発生装置で発生した蒸気を上記蒸気噴射管により上記加熱室内に断続的に塊状として噴射するように、断続運転している。したがって、上記ファンが停止している期間に、蒸気発生装置から上記蒸気吸引エジェクタを経由して上記蒸気噴射管の噴射口に至る蒸気経路内に充満した蒸気を、上記ファンが回転した際に上記蒸気噴射管から上記加熱室内の被加熱物に噴射することができる。
こうして、上記ファンを断続運転することによって、上記蒸気経路内に充満した蒸気を塊状として上記被加熱物に繰り返し直接噴射することができ、熱い蒸気で直接被加熱物を加熱することができる。したがって、上記加熱室内の温度が設定温度まで上昇するのを待たずに上記被加熱物を所定の温度に加熱することができる。
また、1実施の形態の加熱調理器では、
上記ファン制御部の制御によって上記断続運転を行う際における上記ファンの停止時間は、上記蒸気発生装置から上記蒸気吸引エジェクタを経由して蒸気噴射管の噴射口に至る経路内に上記蒸気発生装置からの蒸気が充満できる時間である。
この実施の形態によれば、上記ファンを断続運転する際に、上記経路内に蒸気が充満できる時間だけ上記ファンを停止するので、次に上記ファンが回転した場合に、大きな塊状の蒸気を上記被加熱物に噴射することができる。したがって、上記被加熱物の加熱効率を高めることができる。
また、1実施の形態の加熱調理器では、
上記ファン制御部の制御によって上記断続運転を行う際における上記ファンの回転時間は、上記経路内の気体量に相当する風量を送風できる時間である。
この実施の形態によれば、上記ファンを断続運転する際に、上記経路内の気体量に相当する風量を送風できる時間だけ上記ファンを回転するので、次に上記ファンが停止するまでに上記経路内の総ての蒸気を排出することができる。したがって、上記経路に対する蒸気の供給および排出を効率よく行うことができ、上記被加熱物の加熱効率を高めることができる。
また、1実施の形態の加熱調理器では、
上記ファン制御部は、上記ファンを連続して回転する連続運転と上記断続運転とを切り換え可能になっており、
上記ファン制御部は、先に上記ファンに対して上記断続運転を行い、上記加熱室内の温度が所定の設定温度に至ると上記連続運転に切り換えるようになっている。
この実施の形態によれば、上記加熱室内の温度が所定の設定温度に至った場合に上記ファンの運転を上記連続運転に切り換えることによって、上記被加熱物を安定した動作で加熱することができる。
以上より明らかなように、この発明の加熱調理器は、加熱室内の被加熱物を、蒸気吸引エジェクタの吹出口に一端が接続された蒸気噴射管により上記加熱室の天板における吹出穴内から噴射される蒸気によって加熱する際に、蒸気吸引エジェクタの吹き込み口に気体を吹き込むファンをファン制御部によって、蒸気発生装置で発生した蒸気を上記蒸気噴射管により上記加熱室内に断続的に塊状として噴射するように、断続運転するので、上記ファンの停止時に上記蒸気発生装置から上記蒸気吸引エジェクタを経由して上記蒸気噴射管の噴射口に至る経路内に充満した蒸気、塊状として上記被加熱物に繰り返し直接噴射される。したがって、熱い蒸気で直接被加熱物を加熱することができ、上記加熱室内の温度が設定温度まで上昇するのを待たずに上記被加熱物を所定の温度に加熱することができる。
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
図1は、本実施の形態の加熱調理器における外観斜視図である。本加熱調理器1は、直方体形状のキャビネット10の正面の上部に操作パネル11を設け、キャビネット10の正面における操作パネル11の下側には、下端側の辺を中心に回動する扉12を設けて概略構成されている。そして、扉12の上部にはハンドル13が設けられ、扉12には耐熱ガラス製の窓14が嵌め込まれている。
図2は、上記加熱調理器1の扉12を開いた状態の外観斜視図である。キャビネット10内に、直方体形状の加熱室20が設けられている。加熱室20は、扉12に面する正面側に開口部20aを有し、加熱室20の側面,底面および天面がステンレス鋼板で形成されている。また、扉12は、加熱室20に面する側がステンレス鋼板で形成されている。加熱室20の周囲および扉12の内側に断熱材(図示せず)が載置されており、加熱室20内と外部とが断熱されている。
また、上記加熱室20の底面には、ステンレス製の受皿21が設置され、受皿21上には、被加熱物を載置するためのステンレス鋼線製のラック24(図3参照)が設置される。さらに、加熱室20の両側面下部には、略水平に延在する略長方形の側面蒸気吹出口22(図2では一方のみが見えている)が設けられている。
図3は、上記加熱調理器1の基本構成を示す概略構成図である。図3に示すように、本加熱調理器1は、加熱室20と、蒸気用の水を貯める水タンク30と、水タンク30から供給された水を蒸発させて蒸気を発生させる蒸気発生装置40と、蒸気発生装置40からの蒸気を加熱する蒸気昇温装置50と、蒸気発生装置40や蒸気昇温装置50等の動作を制御する制御装置80とを備えている。
上記加熱室20内に設置された受皿21上には格子状のラック24が載置され、そのラック24の略中央に被加熱物90が置かれる。
また、上記水タンク30の下側に設けられた接続部30aは、第1給水パイプ31の一端に設けられた漏斗形状の受入口31aに接続可能になっている。そして、第1給水パイプ31から分岐して上方に延びる第2給水パイプ32の端部にはポンプ35の吸込側が接続され、そのポンプ35の吐出側には第3給水パイプ33の一端が接続されている。さらに、第1給水パイプ31から分岐して上方に延びる水位センサ用パイプ38の上端には、水タンク用水位センサ36が配設されている。さらに、第1給水パイプ31から分岐して上方に延びる大気開放用パイプ37の上端には、後述する排気ダクト65に接続されている。
そして、上記第3給水パイプ33は、垂直に配置された部分から略水平に屈曲するL字形状をしており、第3給水パイプ33の他端には補助タンク39が接続されている。さらに、補助タンク39の下端には第4給水パイプ34の一端が接続され、その第4給水パイプ34の他端には蒸気発生装置40の下端が接続されている。また、蒸気発生装置40における第4給水パイプ34の接続点よりも下側には、排水バルブ70の一端が接続されている。そして、排水バルブ70の他端には排水パイプ71の一端が接続され、排水パイプ71の他端には排水タンク72が接続されている。尚、補助タンク39の上部は、大気開放用パイプ37と排気ダクト65を介して大気に連通されている。
上記水タンク30が第1給水パイプ31の受入口31aに接続されると、水タンク30内の水は、水タンク30と同水位になるまで大気開放用パイプ37内に上昇する。その際に、水タンク用水位センサ36につながる水位センサ用パイプ38は先端が密閉されているため水位は上がらないが、水タンク30の水位に応じて水位センサ用パイプ38の密閉された空間の圧力は大気圧から上昇する。この圧力変化を、水タンク用水位センサ36内の圧力検出素子(図示せず)で検出することによって、水タンク30内の水位が検出されるようになっている。ポンプ35が静止中である際の水位測定では、大気開放用パイプ37は不要であるが、ポンプ35の吸引圧力が直接上記圧力検出素子に働いて水タンク30の水位検出の精度が低下するのを防止するために、開放端を有する大気開放用パイプ37を設けている。
また、上記蒸気発生装置40は、下側に第4給水パイプ34の他端が接続されたポット41と、ポット41内の底面近傍に配置された蒸気発生ヒータ42と、ポット41内の蒸気発生ヒータ42の上側近傍に配置された水位センサ43と、ポット41の上側に取り付けられた蒸気吸引エジェクタ44とを有している。また、加熱室20の側面上部に設けられた吸込口25の外側には、ファンケーシング26を配置している。そして、ファンケーシング26に設置された送風ファン28によって、加熱室20内の蒸気は、吸込口25から吸い込まれて、第1パイプ61および第2パイプ62を介して蒸気発生装置40の蒸気吸引エジェクタ44の入口側に送り込まれる。第1パイプ61は、略水平に配置されており、一端がファンケーシング26に接続されている。また、第2パイプ62は、略垂直に配置されており、一端が第1パイプ61の他端に接続される一方、他端が蒸気吸引エジェクタ44のインナーノズル45の入口側に接続されている。
上記蒸気吸引エジェクタ44は、インナーノズル45の外側を包み込むアウターノズル46を備えており、インナーノズル45の吐出側がポット41の内部空間と連通するようになっている。そして、蒸気吸引エジェクタ44のアウターノズル46の吐出側には第3パイプ63の一端が接続され、その第3パイプ63の他端には蒸気昇温装置50が接続されている。
上記ファンケーシング26,第1パイプ61,第2パイプ62,蒸気吸引エジェクタ44,第3パイプ63および蒸気昇温装置50で外部循環路60を形成している。また、加熱室20の側面の下側に設けられた放出口27には放出通路64の一端が接続され、放出通路64の他端には排気ダクト65の一端が接続されている。さらに、排気ダクト65の他端には排気口66が設けられている。蒸気放出通路64の排気ダクト65側には、ラジエータ69が外嵌して取り付けられいる。そして、外部循環路60を形成する第1パイプ61,第2パイプ62との接続部には、排気通路67を介して排気ダクト65が接続されている。さらに、排気通路67における第1,第2パイプ61,62の接続側には、排気通路67を開閉するダンパ68が配置されている。
また、上記蒸気昇温装置50は、加熱室20の天井側であって且つ略中央に、開口を下側にして配置された皿型ケース51と、この皿型ケース51内に配置された蒸気加熱ヒータ52を有している。皿型ケース51の底面は、加熱室20の天井面に設けられた金属製の天井パネル54で形成されている。天井パネル54には、複数の天井蒸気吹出口55が形成されている。ここで、天井パネル54は、上下両面が塗装等によって暗色に仕上げられている。尚、使用を重ねることにより暗色に変色する金属素材や暗色のセラミック成型品によって、天井パネル54を形成してもよい。
さらに、上記蒸気昇温装置50は、加熱室20の上部に、左右両側に向かって延在する上記過熱蒸気供給路としての蒸気供給通路23(図3においては一方のみが見えている)の一端が夫々接続されている。そして、蒸気供給通路23は加熱室20の両側面に沿って下方向かって延在しており、その他端には、上記加熱室20の両側面下側に設けられた側面蒸気吹出口22に接続されている。
次に、本加熱調理器1の制御系について説明する。
制御装置80は、マイクロコンピュータおよび入出力回路等から構成され、図4に示すように、送風ファン28と、蒸気加熱ヒータ52と、ダンパ68と、排水バルブ70と、蒸気発生ヒータ42と、操作パネル11と、水タンク用水位センサ36と、水位センサ43と、加熱室20(図3に示す)内の温度を検出する温度センサ81と、加熱室20内の湿度を検出する湿度センサ82と、ポンプ35とが、接続されている。そして、水タンク用水位センサ36,水位センサ43,温度センサ81および湿度センサ82からの検出信号に基づいて、送風ファン28,蒸気加熱ヒータ52,ダンパ68,排水バルブ70,蒸気発生ヒータ42,操作パネル11およびポンプ35を所定のプログラムに従って制御する。
以下、上記構成を有する加熱調理器1の基本動作について、図3および図4に従って説明する。操作パネル11の電源スイッチ(図示せず)が押圧されると電源がオンし、操作パネル11の操作によって加熱調理の運転が開始される。そうすると、先ず、制御装置80は、排水バルブ70を閉鎖し、ダンパ68によって排気通路67を閉じた状態でポンプ35の運転を開始する。そして、ポンプ35によって、水タンク30から蒸気発生装置40のポット41内に第1〜第4給水パイプ31〜34を介して給水される。その後、ポット41内の水位が所定水位に達したことを水位センサ43が検出すると、ポンプ35を停止して給水を止める。
次に、上記蒸気発生ヒータ42に通電し、ポット41内に溜まった所定量の水を蒸気発生ヒータ42によって加熱する。
そして、上記蒸気発生ヒータ42の通電と同時に、または、ポット41内の水の温度が所定温度に達すると、送風ファン28をオンすると共に、蒸気昇温装置50の蒸気加熱ヒータ52に通電する。そうすると、送風ファン28は、加熱室20内の気体(蒸気を含む)を吸込口25から吸い込み、外部循環路60に気体(蒸気を含む)を送り出す。その際に、送風ファン28に遠心ファンを用いているので、プロペラファンを用いる場合に比べて高圧を発生させることができる。さらに、送風ファン28に用いる遠心ファンを直流モータで高速回転させることによって、循環気流の流速を極めて速くすることができる。
次に、上記蒸気発生装置40のポット41内の水が沸騰すると飽和蒸気が発生し、発生した飽和蒸気は、蒸気吸引エジェクタ44の箇所で外部循環路60を通る循環気流に合流する。そして、蒸気吸引エジェクタ44から出た蒸気は、第3パイプ63を介して高速で蒸気昇温装置50に流入する。
そして、上記蒸気昇温装置50に流入した蒸気は、蒸気加熱ヒータ52によって加熱されて、略300℃(調理内容により異なる)の過熱蒸気となる。この過熱蒸気の一部は、下側の天井パネル54に設けられた複数の天井蒸気吹出口55から加熱室20内の下方に向かって噴出される。また、過熱蒸気の他の一部は、蒸気昇温装置50の左右両側に設けられた蒸気供給通路23を介して、加熱室20の両側面の側面蒸気吹出口22から噴出される。
こうして、上記加熱室20の天井側から噴出した過熱蒸気が中央の被加熱物90側に向かって勢いよく供給されると共に、加熱室20の左右の側面側から噴出した過熱蒸気は、受皿21に衝突した後、被加熱物90の下方から被加熱物90を包むように上昇しながら供給される。その結果、加熱室20内において、中央部では吹き下ろし、その外側では上昇するという形の対流が生じる。そして、対流する蒸気は、順次吸込口25に吸い込まれて、外部循環路60を通って再び加熱室20内に戻るという循環を繰り返す。
このようにして、上記加熱室20内で過熱蒸気の対流を形成することにより、加熱室20内の温度・湿度分布を均一に維持しつつ、蒸気昇温装置50からの過熱蒸気を天井蒸気吹出口55と側面吹出口22とから噴出して、ラック24上に載置された被加熱物90に効率よく衝突させることが可能になり、過熱蒸気の衝突によって被加熱物90が加熱される。その場合、被加熱物90の表面に接触した過熱蒸気は、被加熱物90の表面で結露する際に潜熱を放出することによっても被加熱物90を加熱する。これにより、過熱蒸気の大量の熱を確実に且つ速やかに被加熱物90全面に均等に与えることができる。したがって、斑がなくて仕上がりのよい加熱調理を実現することができるのである。
また、上記加熱調理運転時において、時間が経過すると、加熱室20内の蒸気量が増加し、量的に余剰となった分の蒸気は、放出口27から放出通路64および排気ダクト65を介して排気口66から外部に放出される。その際に、放出通路64に設けたラジエータ69によって放出通路64を通過する蒸気を冷却して結露させることにより、外部に蒸気がそのまま放出されるのを防止している。尚、ラジエータ69によって放出通路64内で結露した水は、放出通路64内を流れ落ちて受皿21に導かれ、調理によって発生した水と共に調理終了後に処理される。
調理終了後、上記制御装置80によって操作パネル11に調理終了のメッセージが表示され、さらに操作パネル11に設けられたブザー(図示せず)によって合図の音を鳴らす。これらのメッセージやブザーによって調理終了を知った使用者が扉12を開けると、制御装置80は、センサ(図示せず)によって扉12が開いたことを検知して、排気通路67のダンパ68を瞬時に開く。そうすると、外部循環路60の第1パイプ61が排気通路67を介して排気ダクト65に連通し、加熱室20内の蒸気は、送風ファン28によって、吸込口25,第1パイプ61,排気通路67および排気ダクト65を介して排気口66から排出される。このダンパ動作は、調理中に使用者が扉12を開いても同様に機能する。したがって、使用者は、蒸気にさらされることなく、安全に被加熱物90を加熱室20内から取り出すことができるのである。
ところで、上述したように、本加熱調理器1の加熱原理は、100℃以上の過熱蒸気を被加熱物90の表面に供給し、過熱蒸気の凝縮潜熱によって被加熱物90に大量の熱エネルギーを供給することである。つまり、被加熱物90の表面温度が100℃以下であり、噴き付ける蒸気が100℃以上の過熱蒸気である場合に、被加熱物90の表面に付着した過熱蒸気が凝縮して凝縮潜熱を被加熱物90に与えると共に、凝縮で発生した100℃の水(湯)が被加熱物90の中に浸透して内部温度を上昇させるのである。
しかしながら、茶碗1杯の御飯を暖める場合には、上述した本加熱調理器1の加熱原理をそのまま適用することができないのである。すなわち、御飯1粒1粒は小さい形をしている。したがって、御飯に過熱蒸気を与えてやると、結果として1粒1粒に大量の熱を与えることになり、御飯粒の表面が直に100℃を超えてしまうことになる。ところが、御飯粒の表面が100℃を超えてしまうと、過熱蒸気が御飯粒の表面で凝縮・蒸発を繰り返すことになり、結果として凝縮することができなくなる。したがって、御飯粒の表面は100℃を超えるため乾燥して堅くなってしまうのに対して、御飯粒内に100℃の凝縮水(湯)を浸透させることができず(つまり、中まで熱が伝わり難く)、適性温度と言われる60℃〜70℃になるまで7分位掛ることになる。
以上のことから、御飯を温める場合には、蒸気を加熱せずに、温度が80℃〜90℃の蒸気を噴き出した方が暖め時間が早くなるのである。そこで、本実施の形態においては、蒸気昇温装置50および蒸気吸引エジェクタ44に以下のような工夫を凝らして、御飯を温める場合のような少量の食品であっても塊状の表面積が大きい食品であっても効率よく加熱することができるようにしている。
以下、この実施の形態の特徴である上記蒸気昇温装置50および蒸気吸引エジェクタ44について、図5および図6に従って、さらに詳細に説明する。図5(a)は蒸気昇温装置50を下側から見た平面図であり、図5(b)は蒸気昇温装置50を蒸気供給口側から見た側面図である。蒸気昇温装置50は、図5(a)および図5(b)に示すように、平面形状が略五角形の凹部51aを有する皿形ケース51内に、大電力(1000W)の大管径のシーズヒータである蒸気加熱ヒータ52を配置している。また、図5(a)および図5(b)では示していないが、皿形ケース51の凹部51aの開口は、加熱室20の天井面に設けられた金属製の天井パネル54で覆われている。
上記皿形ケース51の側壁91には、蒸気供給管94A,94B,94Cが接続されている。尚、この蒸気供給管94A,94B,94Cが接続された側壁91側が本加熱調理器1の背面側であり、図3に示すように、蒸気供給管94A,94B,94Cは、本加熱調理器1における加熱室20の背面側に設けられた蒸気吸引エジェクタ44に、3本の第3パイプ63を介して接続されている。また、95A,95B,95Cは蒸気供給管94A,94B,94Cの蒸気供給口であり、101A〜104Aおよび101B〜104Bは図3に示す蒸気供給通路23が接続される蒸気吹出口である。
図6は、上記皿形ケース51の中心線Lに沿った縦断面図である。皿形ケース51の凹部51a内において、中心線L上に配置されている蒸気供給管94Bには、中心線Lに沿って水平に配置された蒸気噴射管111の一端が接続されている。そして、蒸気噴射管111の他端は、凹部51aの略中央部で加熱室20側に向かって屈曲されて、天井パネル54の一部を構成する皿形ケース51の蓋部材54aにおける内面の極近傍に位置している。また、蓋部材54aには、蒸気噴射管111の他端の開口111aを取り囲むように穴112が設けられている。
上記構成を有する蒸気昇温装置50および蒸気吸引エジェクタ44は、以下のように動作する。
(a)蒸し暖めモード
この「蒸し暖めモード」は、非過熱蒸気を用いて、少量の食品を蒸す,茹でる,暖めるモードである。したがって、上述した茶碗1杯の御飯を暖める場合は、この「蒸し暖めモード」によって行われる。尚、以下に述べる蒸気昇温装置50および蒸気吸引エジェクタ44の動作は、特に説明はしないが、例えば、利用者が「蒸し暖めモード」を選択することによって、制御装置80の制御の下に実行される。
この場合には、上記蒸気加熱ヒータ52への通電はオフされ、送風ファン28は駆動され、蒸気供給口95A,95Cに連通するインナーノズル45の吹き込み口はダンパによって閉鎖され、蒸気供給口95Bに連通するインナーノズル45の吹き込み口は開放される。そうした後、利用者によって、例えば、上記御飯が盛られた茶碗が、ラック24上における蒸気噴射管111の開口111aの直下に載置される。そして、上述したような手順によって、加熱調理が行われるのである。その場合は、蒸気加熱ヒータ52には通電されないため、蒸気供給管94Bから供給される蒸気は加熱されない。
そうすると、上記蒸気発生装置40のポット41内に発生した蒸気は、蒸気吸引エジェクタ44におけるインナーノズル45およびアウターノズル46の機能によって、図6に示すように、中央の第3パイプ63および蒸気供給管94Bを介して高速に蒸気噴射管111に供給される。こうして、蒸気噴射管111に供給された80℃〜90℃の蒸気(非過熱蒸気)が開口111aから直下に向かって勢いよく噴き出され、被加熱物90である1杯の御飯に噴き付けられるのである。
その場合、上述したように、単に送風ファン28の定速回転による定圧圧送での噴射であると、加熱室20内に噴射された蒸気の温度は低下するため、加熱室20内の温度が上昇しないと被加熱物(1杯の御飯)90の温度も上がらず、被加熱物(1杯の御飯)90の加熱に時間が掛かってしまう。
そこで、本実施の形態においては、上記制御装置80の制御によって、送風ファン28の回転を断続的に行うのである。そうすることにより、送風ファン28の回転を停止している間に、ポット41から蒸気吸引エジェクタ44のアウターノズル46および第3パイプ63を介して蒸気噴射管111の開口111aに至る経路内にポット41からの非過熱蒸気が充満する。したがって、その後、送風ファン28を回転させることによって、上記充満していた非過熱蒸気が塊状となって蒸気噴射管111の開口111aから被加熱物90に直接噴き付けられることになる。このように、被加熱物90としての茶碗1杯の御飯に対して塊状の非過熱蒸気を勢いよく繰り返して直接噴き付けることによって、熱い蒸気で直接御飯を加熱することができる。したがって、加熱室20内の温度が設定温度まで上昇するのを待たずに、被加熱物90を所定温度に暖めることができるのである。
尚、その場合における上記送風ファン28の回転を停止する時間は、上述したポット41から蒸気噴射管111の開口111aに至る経路内に非過熱蒸気が充満できる時間である。こうすることによって、送風ファン28が回転した場合に、より大きな塊状の蒸気を被加熱物90に噴射することができる。また、送風ファン28を回転させる時間は、上述したポット41から蒸気噴射管111の開口111aまでの気体量に相当する風量を送風できる時間である。こうすることによって、次に送風ファン28が停止するまでに上記経路内の総ての蒸気を排出することができる。したがって、上記経路に対する蒸気の供給および排出を効率よく行うことができ、被加熱物90の加熱効率を高めることができるのである。
また、上述のように、上記送風ファン28の回転を断続的に行って被加熱物90を暖めている際に、加熱室20内の温度が「蒸し暖めモード」時の設定温度に至った場合には、送風ファン28の断続運転を解除し、予め設定された回転数での連続運転(通常運転)に移行して安定した加熱動作を行うようにしている。
図7は、「蒸し暖めモード」時に実行される送風ファン28の運転制御のフローチャートである。この運転制御によれば、加熱室20内の温度が設定温度まで上昇するのを待たずに茶碗1杯の御飯を暖めることができ、3分位で、茶碗1杯の御飯を適性温度と言われる60℃〜70℃に暖めることができるのである。
尚、上記説明は、茶碗1杯の御飯の暖める場合を例に説明したが、「1杯」に限定されるものではないことは言うまでもない。また、「茹で」や「蒸す」等の調理も行えることは上述した通りである。
(b)ウオーターオーブンモード
この「ウオーターオーブンモード」は、過熱蒸気を用いて、食品を加熱するモードである。この調理モードは、例えば、利用者がメニュー「ウオーターオーブンモード」を選択することによって、制御装置80の制御の下に実行される。
この場合には、上記蒸気加熱ヒータ52への通電はオンされ、送風ファン28は駆動され、蒸気供給口95Bに連通するインナーノズル45の吹き込み口はダンパによって閉鎖され、蒸気供給口95A,95Cに連通するインナーノズル45の吹き込み口は開放される。そうした後、利用者によって、例えば、肉塊のような被加熱物90がラック24上に載置される。そして、上述したような手順によって、加熱調理が行われるのである。その場合、蒸気加熱ヒータ52は通電されているため、蒸気供給管94A,94Cから供給される蒸気を加熱して過熱蒸気を発生することができる。
そして、上記蒸気発生装置40のポット41内に発生した蒸気は、蒸気吸引エジェクタ44におけるインナーノズル45およびアウターノズル46の機能によって、高速に第3パイプ63を通って皿形ケース51内に流れ込む。こうして、蒸気供給口95A,95Cから皿形ケース51内に供給された蒸気は、蒸気加熱ヒータ52によって加熱されて過熱蒸気となり、蓋部材54aの天井蒸気吹出口55から加熱室20内に噴き出される。こうして、加熱室20内の過熱蒸気は加熱調理に応じた温度(例えば略300℃)となるのである。尚、皿形ケース51内の過熱蒸気の一部は、蒸気吹出口101A〜104Aおよび101B〜104Bから、蒸気供給通路23(図3に示す)を介して加熱室20内に噴き出されることは、上述した通りである。
以上のごとく、本実施の形態においては、上記「蒸し暖めモード」時において、制御装置80の制御によって、送風ファン28の回転を断続的に行うようにしている。したがって、ポット41から蒸気吸引エジェクタ44のアウターノズル46および第3パイプ63を介して蒸気噴射管111の開口111aに至る経路内に充満した非過熱蒸気を、塊状として被加熱物90に勢いよく繰り返して噴き付けることができ、加熱室20内の温度が設定温度まで上昇するのを待たずに被加熱物90を短時間に暖めることができるのである。
尚、上記実施の形態においては、上記蒸気昇温装置50を備えて、300℃程度の過熱蒸気を用いて食品を加熱する「ウオーターオーブンモード」を可能にしている。しかしながら、この発明は、蒸気昇温装置50が無く、非過熱蒸気のみによって食品を加熱する構成にも適用できることは言うまでもない。
この発明の加熱調理器における外観斜視図である。 図1に示す加熱調理器の扉を開いた状態の外観斜視図である。 図1に示す加熱調理器の概略構成図である。 図1に示す加熱調理器の制御ブロック図である。 図3における蒸気昇温装置の下側から見た平面図および蒸気供給口側から見た側面図である。 図5における皿形ケースの中心線に沿った縦断面図である。 送風ファンの運転制御のフローチャートである。
1…加熱調理器、
20…加熱室、
23…蒸気供給通路、
40…蒸気発生装置、
44…蒸気吸引エジェクタ、
50…蒸気昇温装置、
51…皿形ケース、
51a…凹部、
52…蒸気加熱ヒータ、
60…外部循環路、
80…制御装置、
111…蒸気噴射管、
111a…開口、
112…穴。

Claims (4)

  1. 蒸気を発生する蒸気発生装置と、
    上記蒸気発生装置から供給される蒸気によって被加熱物を加熱するための加熱室と、
    上記蒸気発生装置によって発生された蒸気を吸引口から吸引すると共に、吹き込み口から吹き込まれる気体によって吹出口から吹き出す蒸気吸引エジェクタと、
    一端が上記蒸気吸引エジェクタの吹出口に接続される一方、他端が上記加熱室の天板に設けられた吹出穴内に位置して、上記蒸気吸引エジェクタの吹出口からの蒸気を上記加熱室の天板における上記吹出穴内から上記加熱室内に噴射する蒸気噴射管と、
    上記蒸気吸引エジェクタの吹き込み口に気体を吹き込むファンと、
    上記蒸気発生装置で発生した蒸気を上記蒸気噴射管によって上記加熱室内に断続的に塊状として噴射するように、上記ファンに対して回転と停止とを交互に繰り返す断続運転を行うファン制御部と
    を備えたことを特徴とする加熱調理器。
  2. 請求項1に記載の加熱調理器において、
    上記ファン制御部の制御によって上記断続運転を行う際における上記ファンの停止時間は、上記蒸気発生装置から上記蒸気吸引エジェクタを経由して蒸気噴射管の噴射口に至る経路内に上記蒸気発生装置からの蒸気が充満できる時間であることを特徴とする加熱調理器。
  3. 請求項2に記載の加熱調理器において、
    上記ファン制御部の制御によって上記断続運転を行う際における上記ファンの回転時間は、上記経路内の気体量に相当する風量を送風できる時間であることを特徴とする加熱調理器。
  4. 請求項1に記載の加熱調理器において、
    上記ファン制御部は、上記ファンを連続して回転する連続運転と上記断続運転とを切り換え可能になっており、
    上記ファン制御部は、先に上記ファンに対して上記断続運転を行い、上記加熱室内の温度が所定の設定温度に至ると上記連続運転に切り換えるようになっている
    ことを特徴とする加熱調理器。
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