JP4525964B2 - 肺高血圧症予防治療剤 - Google Patents
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Description
本発明は、肺高血圧症予防治療剤に関する。
[従来の技術]
肺高血圧症とは、種々の心肺疾患に続発し、肺静脈圧が異常に上昇する重篤な疾患である。その中で、臨床的に原因を確定することの出来ない肺高血圧症は、原発性肺高血圧症と呼ばれ、30歳を中心とした若年女性に好発し、生命予後が5年以内といわれ、生命を脅かす疾患である。肺高血圧症、特に原発性肺高血圧症の予防および治療剤としては、プロスタサイクリン誘導体があるが、重症例には使えないことがある、長期の投与が必要である、減量するとリバウンドを起こし急死する危険性もある、といった問題があり、満足な結果は得られていない。 一方、一般式(I)で示される化合物は、Rhoキナーゼ、ミオシン軽鎖リン酸化酵素、プロテインキナーゼCといったキナーゼ阻害活性を有し、血管平滑筋弛緩作用、血流増加作用、血圧低下作用、脳、心臓保護作用等を示し、血管拡張剤(特に、狭心症治療剤)、高血圧治療剤、脳、心臓保護剤、動脈硬化症治療剤等において有効な物質であることは、既に公知である(例えば特許文献1〜9、および非特許文献1〜4参照)。
しかし、高血圧症と肺高血圧症とは、発生機序も異なり、高血圧症に適用できる薬物が、同様に肺高血圧症にも有用であるとはいえない。また、動脈硬化症に適応できる薬物が、同様に肺高血圧症にも有用であるとはいえない。一般式(I)で示される化合物が、肺高血圧症の予防、治療に有用であること、および一般式(I)で示される化合物と、プロスタサイクリン誘導体およびエンドセリン拮抗剤から選ばれる1つ以上の治療薬を併用した肺高血圧予防治療剤が、肺高血圧症に有用である旨や、それを示唆する記載はいずれにも見出せない。
また、非特許文献5には、低酸素状態によって誘導される肺高血圧症があること、低酸素状態は一酸化窒素シンターゼ(ecNOS)を抑制し血管収縮を引き起こすことが記載され、一般式(I)で示される化合物が、ecNOS抑制と関連すること、よって、低酸素状態により誘導される肺高血圧症に有効であるかもしれないことが記載されている。しかしながら、非特許文献5では、低酸素状態によって誘導される肺高血圧症に対する一般式(I)の化合物の有効性を推定しているに過ぎず、実際に有効性が確認されているわけではない。また、低酸素による肺高血圧モデルにおいては有効である薬でも、それ以外の、例えば、肺血管に病変があるような肺高血圧モデルには有効でないこともあり(非特許文献6参照)、非特許文献5は、一般式(I)の化合物が、肺高血圧症、特に原発性肺高血圧症に有用であることを示唆するものではない。
<文献名>
特許文献1:特開昭61−152658号公報
特許文献2:特開昭61−227581号公報
特許文献3:特開平2−256617号公報
特許文献4:特開平4−264030号公報
特許文献5:特開平6−056668号公報
特許文献6:特開平6−080569号公報
特許文献7:特開平7−80854号公報
特許文献8:国際公開98/06433号パンフレット
特許文献9:国際公開00/03746号パンフレット
非特許文献1:Br.J.Pharmacol.,98,p1091(1989),
非特許文献2:J.Pharmacol.Exp.Ther.,259,p738(1991)
非特許文献3:Circulation,96,p4357(1997)
非特許文献4:Cardiovasc.Res.,43,p1029(1999)
非特許文献5:Supple.Circ.104,No17,1001(2001.10.23)
非特許文献6:日本臨床59,No6,p1076−1080、(2001)
非特許文献7:Chem.Pharam.Bull.,40,(3)p770−773(1992)
[発明の開示]
以上のような状況の中で、従来より、肺高血圧症、とりわけ原発性肺高血圧症を予防もしくは治療するための有用で副作用のない医薬の提供が望まれていた。
本発明者らは、一般式(I)で示される化合物、または、その酸付加塩もしくは水和物について、鋭意研究を重ねた結果、該化合物が上記血管平滑筋弛緩作用、血流増加作用、血圧低下作用、脳、心臓保護作用など、従来知られている作用からは全く予期できない肺高血圧症の予防、治療効果を見出した。さらに一般式(I)で示される化合物と、プロスタサイクリン誘導体およびエンドセリン拮抗剤から各々薬剤として許容できる少なくとも1つ以上の治療薬を併用することで、驚くべきことに、それぞれ単独での使用に比して、肺高血圧症の予防、治療効果が飛躍的に上昇することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記一般式(I)
(ただし、式中R1は水素原子または水酸基を表す)で示される化合物またはその酸付加塩もしくは水和物を有効成分とする、肺高血圧症予防治療剤である。
本発明の一般式(I)で示される化合物は、公知の方法、例えば、非特許文献7、特許文献1等に記載されている方法に従って合成することができる。また、その酸付加塩は、薬学上許容される非毒性の塩が好ましく、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸等の無機酸、および酢酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、メタンスルホン酸等の有機酸の塩を挙げることができる。また、水和物としては、例えば1/2水和物、1水和物、3水和物を挙げることができる。
薬剤として許容できる本発明の前記(a)で表される化合物と併用されるプロスタサイクリン誘導体としては、ベラプロストナトリウム、エポプロステノールナトリウムなどが、エンドセリン拮抗剤としてはボセンタンなどが挙げられる。
本発明の、肺高血圧症予防治療剤を、投与に適した形の製剤として調整するのに際しては、上述の一般式(I)で示される化合物またはその酸付加塩もしくは水和物を、公知の医薬上許容される担体と混合することが例としてあげられる。この担体としては、例えば、ゼラチン;乳糖、グルコース等の糖類;小麦、米、とうもろこし澱粉等の澱粉類;ステアリン酸等の脂肪酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸塩;タルク;植物油;ステアリンアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール;ガム;ポリアルキレングリコール等が挙げられる。
また、液状担体としては、一般に水、生理食塩液、デキストロースまたは類似の糖溶液、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグルコール類が挙げられる。カプセル剤となす場合には、ゼラチンを用いてカプセルを調整することが好ましい。
以上のような担体と一般式(I)で示される化合物またはその酸付加塩もしくは水和物よりなる本発明の肺高血圧症予防治療剤中に含まれる有効成分の下限は、0.01重量%以上が好ましく、上限は80重量%以下、さらに好ましくは60重量%以下の有効成分を含む例が挙げられる。
投与方法は、経口投与や非経口投与が挙げられる。経口投与に適した剤形としては、例えば錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、液剤、エリキシル剤等が挙げられ、非経口投与に適した剤形としては、液剤が挙げられる。非経口的に例えば筋肉内注射、静脈内注射、皮下注射で投与する場合、一般式(I)で示される化合物またはその酸付加塩もしくは水和物を等張にするために、食塩または、グルコース等の他の溶質を添加した無菌溶液として投与される。
注射により投与する場合の溶解液としては、例えば、滅菌水、塩酸リドカイン溶液(筋肉内注射用)、生理食塩液、ブドウ糖、静脈内注射用溶液、電解質溶液(静脈内注射用)等が例示される。このようにして溶解した場合の有効成分の下限は、好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、また上限は好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下の有効成分を含むように調整する。経口投与の液剤の場合、0.01−20重量%の有効成分を含む懸濁液またはシロップが好ましい例として挙げられる。この場合における担体としては、香料、シロップ、製剤的ミセル体等の水様賦形剤が挙げられる。
本発明の肺高血圧症予防治療剤の一般式(I)で示される化合物投与量は、被投与者の年齢、健康状態、体重、症状の程度、同時処置があるならばその種類、処置頻度、所望の効果の性質、あるいは投与経路や投与計画などによって異なるが、非経口投与で0.01−20mg/kg・日、好ましくは0.05−10mg/kg・日、より好ましくは0.1−10mg/kg・日が例として挙げられる。経口投与で0.02−100mg/kg・日、好ましくは0.05−20mg/kg・日、より好ましくは0.1−10mg/kg・日が例として挙げられる。
併用投与する場合には、1日用量として、一般式(I)で示される化合物またはその酸付加塩もしくは水和物とプロスタサイクリン誘導体の用量比が1:1から1000000:1、一般式(I)で示される化合物またはその酸付加塩もしくは水和物とエンドセリン拮抗剤の用量比が1000:1から1:5000となるよう投与しうる。一般式(I)で示される化合物またはその酸付加塩もしくは水和物とプロスタサイクリン誘導体およびエンドセリン拮抗剤とは、ひとつの混合物としてもよいが、混合せず、同時投与もしくは逐次投与により、併用してもよい。そして、このように混合せず併用する場合も本発明における肺高血圧症治療予防剤剤の概念として含む。
同時もしくは逐次投与する場合、同一の投与経路でもよいし、一方は経口、他方は非経口というように異なる投与経路でもよい。プロスタサイクリン誘導体およびエンドセリン拮抗剤の投与方法としては非経口投与、および経口投与が挙げられる。
[発明を実施するための最良の形態]
以下に実施例を挙げ、この発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
モノクロタリン誘発ラット原発性肺高血圧モデルを用いて、一般式(I)(式中R1は水素原子)の効果を検討した。モノクロタリン誘発ラット肺高血圧モデルは、病理学的にはモノクロタリン投与早期に、肺動脈内皮細胞の傷害と、血管周囲を中心とした炎症細胞の浸潤が見られ、その後中膜の肥厚を生じ、その病態が原発性肺高血圧症に類似していると考えられている。なお、アンギオテンシンコンバーティングエンザイム阻害剤のように、低酸素による肺高血圧モデルにおいては有効である薬でも、本モノクロタリン誘発ラット肺高血圧モデルでは効果が認められないといったことがあり(非特許文献6の「モノクロタリン(monocrotaline)誘発肺高血圧動物モデル」参照)、本モノクロタリン誘発ラット肺高血圧モデルは原発性肺高血圧に特徴的なモデルである。
7週齢の雄性SDラットにモノクロタリン(Sigma社より購入)60mg/kgを皮下投与した。3週間後に右心室収縮期圧を測定した。さらに肺動脈標本を作製し中膜の肥厚を測定した。
被験液(下記一般式(I)式中R1は水素原子)は、30mg/kg/dayの割合で、モノクロタリン投与日より3週間経口投与した。
モノクロタリン投与3週間後の右心室収縮期圧および、肺動脈の中膜肥厚の程度を測定した。右心室収縮期圧および、肺動脈の中膜肥厚の程度を表1に示した。
モノクロタリン投与により、3週間後右心室収縮期圧は、コントロール(正常)に比して上昇していたが、一般式(I)(式中R1は水素原子)は、右心室収縮期圧上昇を抑制した。さらに、モノクロタリン投与3週間後に、肺動脈の中膜肥厚が発生していたが、一般式(I)(式中R1は水素原子)は、肺動脈の中膜肥厚を抑制した。
<実施例2>
モノクロタリン誘発ラット原発性肺高血圧モデルを用いて、一般式(I)(式中R1は水素原子)と、プロスタサイクリン誘導体であるベラプロストナトリウムの併用効果を検討した。
7週齢の雄性SDラットにモノクロタリン(Sigma社より購入)60mg/kgを皮下投与した。3週間後に肺動脈標本を作製し中膜の肥厚を測定した。
被験液(下記一般式(I)式中R1は水素原子)は、3mg/kg/dayおよび6mg/kg/dayの割合で、ベラプロストナトリウムは、3μg/kg/dayおよび10μg/kg/dayの割合で、モノクロタリン投与日より3週間経口投与した。モノクロタリン投与3週間後に、肺動脈の中膜肥厚が発生しており、一般式(I)の化合物(式中R1は水素原子)3mg/kg/day,6mg/kg/day、あるいはベラプロストナトリウムの3μg/kg/day,10μg/kg/day単独では、肺動脈の中膜肥厚を抑制しなかった。
一方、一般式(I)の化合物(式中R1は水素原子)3mg/kg/dayとベラプロストナトリウム3μg/kg/dayとを併用して、同じ試験をしたところ、中膜肥厚が抑制され、各々、単独では中膜肥厚の抑制が認められない用量を、併用することにより、中膜肥厚抑制効果が認められた。
一般式(I)(式中R1は水素原子)とベラプロストナトリウムとの併用において、相乗効果が認められた。
<実施例3>
本発明の化合物の急性毒性試験を、ラット(Jcl:Wistar,5週齢)およびマウス(Slc:ddY,5週齢)を用いて実施した結果、低毒性であることが確認された。その結果を表2に示す。
<実施例4>
製剤例(無菌注射剤)
下記表3の成分を注射用蒸留水に溶解し、その後、注射用蒸留水を添加し、必要な最終重量とし、この溶液2mlをアンプルに密封し、加熱滅菌した。
<実施例5>
製剤例(錠剤)
下記表4の成分を含む錠剤を常法により調整した。
[産業上の利用可能性]
本発明によれば、肺高血圧症予防治療剤、特に原発性肺高気圧症に有効な予防治療剤が提供できるので、産業上有用である。
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ASSESSMENT | 3.4 ALCOHOL: METHANOL (methyl alcohol) |
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