以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。
なお、本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、以下の記載において、一般式(I)で表される化合物、及び、一般式(II)で表される化合物は、それぞれ「一般式(I)の化合物」及び「一般式(II)の化合物」と省略して記載することがある。
本発明者らの検討の結果、色材として、特定の構造を有する2種類の化合物を組み合わせて含有するインクという構成によって、好ましい色調を有する耐オゾン性に優れた画像が得られることがわかった。また、これらの化合物を特定の質量比率で用いることで、記録物は、特に顕著に耐オゾン性に優れたものとなることがわかった。さらには、特定の構造を有する2種類の化合物を組み合わせた場合における重要な知見を得た。具体的には、特定の構造を有する2種類の化合物を組み合わせた場合に起こる、これらの化合物の互いの凝集性に関与する化合物の構造又は凝集や会合の特性を適切にコントロールする要素を見出した。
本発明においては、第1の色材として下記一般式(I)の化合物、及び、第2の色材として下記一般式(II)の化合物を組み合わせて用いることを特徴とする。以下、これらの色材について詳述する。
〔第1の色材:一般式(I)で表される化合物〕
本発明のインクは、下記一般式(I)の化合物を第1の色材(染料)として含有することを要する。
(一般式(I)中、A、B、C、及びDはそれぞれ独立に、芳香性を有する6員環であり、Mはそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムであり、Eはアルキレン基である。また、Xは、スルホ置換アニリノ基、カルボキシル置換アニリノ基、又はホスホノ置換アニリノ基であり、該置換アニリノ基はさらに、スルホン酸基、カルボキシル基、ホスホノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アセチルアミノ基、ウレイド基、アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン、アルキルスルホニル基、及びアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基を1乃至4個有してもよい。また、Yは水酸基又はアミノ基であり、l(エル)、m、及びnは、0≦l(エル)≦2、0≦m≦3、0.1≦n≦3であり、かつl(エル)+m+n=1乃至4である。)
なお、一般式(I)の色材は、後述する一般式(II)の色材と混合したときに、混合した色材がより凝集しやすい状態、又は、混合した色材がより会合しやすい状態、になるものが好ましい。例えば、一般式(I)の色材及び一般式(II)の色材の互いの表面エネルギーがより近い場合に、上記のような状態になりやすいと考えられる。
一般式(I)におけるA、B、C、及びDはそれぞれ独立に芳香性を有する6員環である。芳香性を有する6員環としては、ベンゼン環や含窒素複素芳香環が挙げられる。含窒素複素芳香環は、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、及びピリダジン環が挙げられ、中でもピリジン環が特に好ましい。本発明に好適に用いることができる一般式(I)の具体的な化合物としては、下記のものが挙げられる。A、B、C及びDが、全てベンゼン環又は全て含窒素複素芳香環である化合物や、A、B、C及びDのうち1乃至3個が含窒素複素芳香環であり、残りがベンゼン環である化合物が挙げられる。本発明者らの検討によれば、一般式(I)の化合物は、その構造中の含窒素複素芳香環の数が増えると記録物の耐オゾン性が向上するが、逆に耐ブロンズ性(ブロンズ現象の発生の抑制)は低下するという傾向がある。このため、耐オゾン性及び耐ブロンズ性のバランスを考慮して、含窒素複素芳香環の数を調整することが好ましい。
一般式(I)におけるEはアルキレン基であり、アルキレン基における炭素数は2乃至12、さらには2乃至6であることが好ましい。具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、シクロプロピレンジイル基、1,2−又は1,3−シクロペンチレンジイル基、1,2−、1,3−、又は1,4−などのシクロヘキシレン基などが挙げられる。中でも、エチレン基、プロピレン基、及びブチレン基が好ましい。
一般式(I)におけるXは、スルホ置換アニリノ基、カルボキシル置換アニリノ基、又はホスホノ置換アニリノ基である。前記置換アニリノ基は、さらに、下記に挙げる置換基群から選ばれる少なくとも1つの置換基を、1乃至4個、好ましくは1乃至2個有してもよい。置換基群:スルホン酸基、カルボキシル基、ホスホノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、水酸基、アルコキシ基。アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アセチルアミノ基、ウレイド基、アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン、アルキルスルホニル基、及びアルキルチオ基。一般式(I)におけるXのより具体的なものとしては、下記のものが挙げられる。2,5−ジスルホアニリノ基、2−スルホアニリノ基、3−スルホアニリノ基、4−スルホアニリノ基。2−カルボキシアニリノ基、4−エトキシ−2−スルホアニリノ基、2−メチル−5−スルホアニリノ基、2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホアニリノ基、2−クロロ−5−スルホアニリノ基。3−カルボキシ−4−ヒドロキシアニリノ基、3−カルボキシ−4−ヒドロキシ−5−スルホアニリノ基、2−ヒドロキシ−5−ニトロ−3−スルホアニリノ基。4−アセチルアミノ−2−スルホアニリノ基、4−アニリノ−3−スルホアニリノ基、3,5−ジカルボキシアニリノ基、2−カルボキシ−4−スルファモイルアニリノ基、2,5−ジクロロ−4−スルホアニリノ基、及び、3−ホスホノアニリノ基など。
一般式(I)におけるYは、水酸基又はアミノ基である。
また、一般式(I)の化合物におけるXの説明の際に挙げたスルホン酸基、カルボキシル基、又はホスホノ基などは塩の形態であってもよい。また、塩を形成する対イオンとしては、例えば、アルカリ金属、アンモニウム、及び有機アンモニウムなどのイオンが挙げられる。アルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、及びカリウムが挙げられる。有機アンモニウムとしては、例えば、下記のものが挙げられる。メチルアミン、エチルアミンなどの炭素数1乃至3のアルキルアミン類。モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどの、モノ、ジ又はトリ(炭素数1乃至4のアルカノール)アミンのオニウム塩が挙げられる。また、対イオンは、カルシウム及びマグネシウムなどのアルカリ土類金属であってもよい。
一般式(I)の化合物は下記のように合成することができる。
先ず、下記一般式(III)の化合物(銅ポルフィラジン化合物)を合成する。
(一般式(III)中、A、B、C、及びDはそれぞれ独立に芳香性を有する6員環である。)
上記一般式(III)の化合物は、例えば、触媒及び銅化合物の存在下で、芳香性を有する含窒素複素芳香環ジカルボン酸誘導体と、フタル酸誘導体とを反応させることにより得られる。含窒素複素芳香環ジカルボン酸誘導体とフタル酸誘導体の反応のモル比を変えることにより、A、B、C、及びDの含窒素複素芳香環の数とベンゼン環の数を調整することができる。
この際に用いる芳香性を有する含窒素複素芳香環ジカルボン酸誘導体としては、例えば、以下のものが挙げられる。キノリン酸、3,4−ピリジンジカルボン酸、及び2,3−ピラジンジカルボン酸などのジカルボン酸化合物、又はこれらの酸無水物。ピリジン−2,3−ジカルボキシアミドなどのジカルボキシアミド化合物。ピラジン−2,3−ジカルボン酸モノアミドなどのジカルボン酸モノアミド化合物。キノリン酸イミドなどの酸イミド化合物。ピリジン−2,3−ジカルボニトリル、及びピラジン−2,3−ジカルボニトリルなどのジカルボニトリル化合物。また、フタル酸誘導体は、例えば、フタル酸、無水フタル酸、フタルアミド、フタラミック酸、フタルイミド、フタロニトリル、1,3−ジイミノイソインドリン、及び2−シアノベンズアミドなどが挙げられる。
銅化合物の一般的な合成方法には、ニトリル法及びワイラー法があり、それぞれ反応条件などが異なる。ニトリル法は、2,3−ピリジンジカルボニトリル、2,3−ピラジンジカルボニトリル、フタロニトリルなどのジカルボニトリル化合物を原料に銅化合物を合成する方法である。ワイラー法は、下記のような化合物を原料に銅化合物を合成する方法である。ワイラー法の原料に用いることができる化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。フタル酸、キノリン酸、3,4−ピリジンジカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸などのジカルボン酸化合物又はこれらの酸無水物。フタルアミド、2,3−ピリジンジカルボキシアミドなどのジカルボキシアミド化合物。フタラミック酸、2,3−ピラジンジカルボン酸モノアミドなどのジカルボン酸モノアミド化合物。フタルイミド、キノリン酸イミドなどの酸イミド化合物。なお、ワイラー法で銅化合物を合成する際には、尿素が必要であり、尿素の使用量は、含窒素複素芳香環ジカルボン酸誘導体とフタル酸誘導体の合計1モルに対して、5モル倍乃至100モル倍であることが好ましい。
通常、銅化合物の合成反応は有機溶媒の存在下で行われる。ニトリル法では沸点100℃以上、好ましくは130℃以上の有機溶媒が用いられる。ニトリル法で用いることができる有機溶媒は、例えば、以下のものが挙げられる。n−アミルアルコール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、N,N−ジメチルアミノエタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール類。エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類。トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、ニトロベンゼン、キノリンスルホラン、尿素など。また、ワイラー法では沸点150℃以上、好ましくは180℃以上の非プロトン性の有機溶媒が用いられる。ワイラー法で用いることができる有機溶媒は、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、ニトロベンゼン、キノリン、スルホラン、尿素などが挙げられる。有機溶媒の使用量は、含窒素複素芳香環ジカルボン酸誘導体とフタル酸誘導体の合計の質量に対して、1質量倍乃至100質量倍とすることが好ましい。
また、ニトリル法で用いることができる触媒としては、例えば、以下のものが挙げられる。キノリン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、トリブチルアミン、アンモニア、N,N−ジメチルアミノエタノールなどのアミン類、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコラート類。また、ワイラー法で用いることができる触媒としては、モリブデン酸アンモニウムやホウ酸などが挙げられる。これらの触媒の使用量は、上記した含窒素複素芳香環ジカルボン酸誘導体とフタル酸誘導体の合計1モルに対して、0.001モル倍乃至1モル倍であることが好ましい。
上記した合成の際に使用する銅化合物としては、金属銅、銅のハロゲン化物、カルボン酸銅、硫酸銅、硝酸銅、銅アセチルアセトナート、銅の錯体などが挙げられる。具体的には、塩化銅、臭化銅、酢酸銅、銅アセチルアセトナートなどが使用できる。銅化合物の使用量は、前記した含窒素複素芳香環ジカルボン酸誘導体とフタル酸誘導体の合計1モルに対して、0.15モル倍乃至0.35モル倍であることが好ましい。
ニトリル法における反応温度は通常、100℃乃至200℃、さらには130℃乃至170℃であることが好ましい。また、ワイラー法における反応温度は通常、150℃乃至300℃、さらには170℃乃至220℃であることが好ましい。なお、反応時間は反応条件により異なるが、通常1時間乃至40時間であることが好ましい。反応終了後、濾過、洗浄、乾燥することにより、前記一般式(III)に示した銅ポルフィラジン化合物を得ることができる。
前記一般式(III)におけるA、B、C、及びDのうち2つがピリジン環で、残り2つがベンゼン環である化合物(銅ジベンゾビス(2,3−ピリド)ポルフィラジン)を例に挙げて、一般式(I)の化合物の合成方法をさらに詳細に説明する。
先ず、キノリン酸(0.5モル)、無水フタル酸(0.5モル)、塩化銅(II)(0.25モル)、リンモリブデン酸アンモニウム(0.004モル)、尿素(6モル)を、有機溶媒であるスルホラン中において200℃で5時間反応させる。このようにして、一般式(III)におけるA、B、C、及びDのうち2つがピリジン環で、残り2つがベンゼン環である、銅ジベンゾビス(2,3−ピリド)ポルフィラジンを得る。なお、キノリン酸、無水フタル酸、金属化合物、有機溶媒、及び触媒などは、その種類や使用量により反応性が異なるため、これらに限られるものではない。
上記の合成フローで得られる主生成物は、銅ジベンゾビス(2,3−ピリド)ポルフィラジンであり、これらにはピリジン環の位置とピリジン環窒素原子の位置の異なる5種類の異性体(下記の構造式1A、1B、1C、1D、及び1E)である。さらに、これらと同時に副生成物として、銅トリベンゾ(2,3−ピリド)ポルフィラジン、及び銅ベンゾトリス(2,3−ピリド)ポルフィラジンが生成する。前記銅トリベンゾ(2,3−ピリド)ポルフィラジンは、一般式(III)におけるA、B、C、及びDのうち1つがピリジン環で、残り3つがベンゼン環である化合物(下記の構造式2)である。また、前記銅ベンゾトリス(2,3−ピリド)ポルフィラジンは、一般式(III)におけるA、B、C、及びDのうち3つがピリジン環で、残り1つがベンゼン環である化合物である。これらの化合物にも、さらにピリジン環の位置異性体(下記の構造式3A、3B、3C、及び3D)が存在する。加えて、少量ではあるが、銅テトラキス(2,3−ピリド)ポルフィラジン、及び銅フタロシアニン(銅テトラベンゾポルフィラジン)も生成する。つまり、上記の合成フローで得られるのは、これらの化合物の混合物である。
通常、これらの混合物から目的の化合物のみを単離することは非常に困難である。このため、これらの混合物を、「平均値として、2つがピリジン環で、残り2つがベンゼン環である、銅ジベンゾビス(2,3−ピリド)ポルフィラジン」として用いる場合がほとんどである。
次に、下記一般式(IV)の化合物(銅クロロスルホニルポルフィラジン化合物)を合成する。
(一般式(IV)中、A、B、C、及びDはそれぞれ独立に、芳香性を有する6員環であり、xは1乃至4である。)
一般式(IV)の化合物は、先のようにして得られる一般式(III)の化合物をクロロスルホン酸中でクロロスルホン化することにより得られる。又は、この一般式(III)の化合物を硫酸又は発煙硫酸中でスルホン化した後、クロロ化剤でスルホン酸基をクロロスルホン酸基に誘導することにより得られる。このようにして得られるクロロスルホン酸基又はスルホン酸基は、前記一般式(III)におけるA、B、C、及びDがベンゼン環である場合にはそのベンゼン環上に導入され、A、B、C、及びDが複素芳香環基である場合には導入されない。つまり、前記一般式(III)におけるA、B、C、及びDのうち、クロロスルホン酸基又はスルホン酸基はベンゼン環にのみ導入される。
前記一般式(III)の化合物をクロロスルホン化する際の反応は、一般にクロロスルホン酸を溶媒として用いる。クロロスルホン酸の使用量は、一般式(III)の化合物の3質量倍乃至20質量倍、さらには5質量倍乃至10質量倍であることが好ましい。反応温度は一般に、100℃乃至150℃、さらには120℃乃至150℃であることが好ましい。反応時間は反応温度などの条件により異なるが一般に、1時間乃至10時間であることが好ましい。得られる一般式(IV)の化合物の置換基はクロロスルホン酸とスルホン酸基の混合物であるが、反応系中にクロロ化剤を添加することで、クロロスルホン酸の比率を向上することができる。クロロ化剤は、クロロスルホン酸、塩化チオニル、塩化スルフリル、三塩化リン、五塩化リン、及びオキシ塩化リンなどが挙げられる。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。
また、前記した一般式(IV)の化合物は、上記の他、以下の方法によっても得ることができる。先ず、スルホン酸基を有するスルホフタル酸、又はスルホン酸基を有するスルホフタル酸とキノリン酸とを、縮合閉環することにより、下記一般式(V)の化合物(スルホン酸基を有する銅ポルフィラジン化合物)を合成する。そして、このようにして得られた一般式(V)の化合物におけるスルホン酸基をクロロスルホン基に誘導することにより、一般式(IV)の化合物を得ることもできる。
(一般式(V)中、A、B、C、及びDはそれぞれ独立に芳香性を有する6員環であり、pは1乃至4である。)
また、上記一般式(V)の化合物におけるスルホン酸基は、一般式(V)の化合物とクロロ化剤とを反応させることで、クロロスルホン酸基に変換することができる。クロロ化する際の反応に用いる溶媒は、例えば、硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸、ベンゼン、トルエン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。また、クロロ化剤は、例えば、クロロスルホン酸、塩化チオニル、塩化スルフリル、三塩化リン、五塩化リン、及びオキシ塩化リンなどが挙げられる。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。
最後に、上記のようにして得られる一般式(IV)の化合物、下記一般式(VI)の化合物(有機アミン)、及びアンモニアを反応させて、目的とする前記した一般式(I)の化合物を合成する。
(一般式(VI)中、Eはアルキレン基であり、Xは、スルホ置換アニリノ基、カルボキシル置換アニリノ基、又はホスホノ置換アニリノ基であり、これらの置換アニリノ基はさらに、下記の置換基群から選ばれる少なくとも1つの置換基を1乃至4個有してもよい。また、Yは、水酸基又はアミノ基である。置換基群:スルホン酸基、カルボキシル基、ホスホノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、水酸基、アルコキシ基。アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アセチルアミノ基、ウレイド基、アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン、アルキルスルホニル基、及びアルキルチオ基からなる。)
具体的には、本発明で用いる前記一般式(I)の化合物は、上記の各化合物を用い、下記のような手順で合成することができる。すなわち、水中で、前記で得た一般式(IV)の化合物、前記した一般式(VI)の化合物、及びアンモニア(アミノ化剤)を、一般にpH8乃至10及び温度5℃乃至70℃の条件で、1時間乃至20時間反応させることで得られる。この際に使用するアンモニアとしては、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムなどのアンモニウム塩、尿素、アンモニア水、アンモニアガスなどが挙げられる。そして、これらを用いることで、反応系中に導入することができる。なお、一般式(IV)の化合物、一般式(VI)の化合物、及びアミノ化剤の反応は、一般に水中で行われる。また、一般式(IV)の化合物の使用量は、一般式(IV)の化合物1モルに対して、理論値の1モル倍以上であることが好ましいが、一般式(IV)の化合物の反応性や反応条件により異なる。
上記で使用する前記一般式(VI)の化合物は、下記のようにして合成することができる。先ず、前記一般式(VI)中のXに対応する置換アニリン類0.95モル乃至1.1モル、及び2,4,6−トリクロロ−S−トリアジン(シアヌルクロライド)1モルを、水中で、pH3乃至7、温度5℃乃至40℃の条件で2時間乃至12時間反応させる。これにより、1次縮合物が得られる。式中のYがアミノ基である構造の前記一般式(VI)の化合物を得る場合は、次に、上記で得た一次縮合物及びアンモニア0.95モル乃至2.0モルを、pH4乃至10及び5℃乃至80℃の条件で、0.5時間乃至12時間反応させる。また、式中のYが水酸基である構造の前記一般式(VI)の化合物を得る場合は、次に、上記で得た一次縮合物に水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物を添加して、pH4乃至10及び温度5℃乃至80℃の条件で0.5時間乃至8時間反応させる。このような手順により、前記一般式(VI)の化合物を得ることができる。なお、縮合の際のpH調整には、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などを用いることができる。なお、縮合の順序は、各化合物の反応性に応じて適宜に決定することができる。
上記したように、本発明で使用する前記一般式(I)の化合物は、前記一般式(IV)の化合物と前記一般式(VI)の化合物とから、アンモニアの存在下で合成される。このため、理論上、一般式(IV)の化合物のクロロスルホニル基の一部が、反応系内に存在する水により加水分解され、スルホン酸へと変換された化合物が副生成物として生成し、一般式(I)の化合物に混入することが考えられる。しかし、質量分析では、無置換スルファモイル基とスルホン酸基とを識別することは困難である。このため、本発明においては、一般式(VI)の化合物(有機アミン)と反応したもの以外の一般式(IV)の化合物におけるクロロスルホニル基は、全て無置換スルファモイル基(−SO2−NH2)に変換されたものとして記載する。
前記一般式(I)の化合物を上記の方法で合成した場合、2価の連結基(L)を介して銅ポルフィラジン環(Pz)が2量体(Pz−L−Pz)や3量体(Pz−L−Pz−L−Pz)を形成した不純物が、副生成物として反応生成物中に混在することがある。この場合の2価の連結基(L)としては、−SO2−、−SO2−NH−SO2−などが挙げられる。また、3量体の場合には、これらの2つのLが組み合わされてなる副生成物が生成することもある。
前記一般式(I)の化合物は、酸析又は塩析を行った後、濾過などにより、上記したような反応系から取り出すことができる。塩析は、酸性〜アルカリ性で行うことができ、さらにはpH1乃至11の範囲で行うことが好ましい。また、塩析は、40℃乃至80℃、さらには50℃乃至70℃に加熱した後、食塩などを加えて行うことが好ましい。
上記のような方法で合成される一般式(I)の化合物は、遊離酸型、又はその塩型で得られる。一般式(I)の化合物を遊離酸型にするためには、例えば、酸析を行えばよい。また、一般式(I)の化合物を塩型にするためには、塩析を行えばよく、塩析によって所望の塩が得られない場合は、例えば、遊離酸型にした後、所望の有機又は無機の塩基を添加する通常の塩交換法を利用すればよい。
一般式(I)の化合物の好ましい具体例は、下記表1に示す例示化合物I−1〜I−25が挙げられる。なお、表1には、前記一般式(I)におけるA、B、C、D、E、X、及びYの部分をそれぞれ示した。勿論、本発明は、前記一般式(I)の構造及びその定義に包含されるものであれば、下記の例示化合物に限られるものではない。一般式(I)におけるA、B、C、及びDがピリジン環である場合、先に述べたように窒素原子の位置異性体が存在するため、化合物を合成する際にはこれらの位置異性体の混合物が含まれる。これらの異性体を単離することは困難であり、また、これらの異性体を分析して特定することも困難である。したがって、一般式(I)の化合物は通常、混合物として用いる。しかし、異性体を含む状態であっても、本発明の効果は何ら変わらずに得られるため、ここでは異性体を区別することなく記載する。また、本発明においては、一般式(I)におけるA、B、C、及びDのうち、ピリジン環の数が好ましくは1個乃至3個、より好ましくは1個乃至2個である場合、本発明の効果をより効果的に得ることができるため、特に好ましい。具体的には、下記の例示化合物の中でも、例示化合物I−1〜I−3、I−10〜I−12、I−21〜I−23、I−25を用いることが特に好ましい。
〔第2の色材:一般式(II)で表される化合物〕
本発明のインクは、下記一般式(II)の化合物を第2の色材(染料)として含有することが必要である。
(一般式(II)中、X
1、X
2、X
3、及びX
4はそれぞれ独立に、−SO−Z、−SO
2−Z、−SO
2NR
1R
2、スルホン酸基、−CONR
1R
2、又はCO
2R
1である。ここで、Zはそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の複素環基であり、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の複素環基である。また、一般式(II)中の、Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、Y
5、Y
6、Y
7、及びY
8はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、アミド基、ウレイド基、スルホンアミド基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、置換若しくは無置換のスルファモイル基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、又はスルホン酸基であり、a1、a2、a3、及びa4はそれぞれ、X
1、X
2、X
3、及びX
4の置換基の数を示し、それぞれ独立に1又は2の整数である。)
なお、一般式(II)の色材は、前述の一般式(I)の色材と混合したときに、混合した色材がより凝集しやすい状態、又は、混合した色材がより会合しやすい状態、になるものが好ましい。例えば、一般式(I)の色材及び一般式(II)の色材の互いの表面エネルギーがより近い場合に、上記のような状態になりやすいと考えられる。
一般式(II)におけるX1、X2、X3、及びX4はそれぞれ独立に、−SO−Z、−SO2−Z、−SO2NR1R2、スルホン酸基、−CONR1R2、又はCO2R1である。中でも、−SO−Z、−SO2−Z、−SO2NR1R2、及びCONR1R2が好ましく、さらには−SO2−Z及びSO2NR1R2が好ましく、特には−SO2−Zが好ましい。X1、X2、X3、及びX4の置換基の数を表すa1、a2、a3、及びa4のいずれかが2である場合、X1、X2、X3、及びX4のうち複数存在するものは同一であっても又は異なっていてもよく、それぞれ独立に上記で挙げたいずれかの置換基である。また、X1、X2、X3、及びX4は、それぞれ全て同一の置換基であっても又は異なる置換基であってもよい。異なる置換基である場合、例えば、X1、X2、X3、及びX4が全て−SO2−Zであり、かつそれぞれのZは異なるものである場合のように、置換基の種類は同じであるが部分的に異なる置換基を含んでもよい。又は、例えば、−SO2−Zと−SO2NR1R2とを含む場合のように、互いに異なる置換基を含んでもよい。
Zはそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の複素環基である。中でも、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の複素環基が好ましく、さらには置換アルキル基、置換アリール基、又は置換複素環基が好ましい。
R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、又は置換若しくは無置換の下記に挙げる基からなる群から選ばれる基である。すなわち、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の複素環基からなる群から選ばれる。中でも、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の複素環基が好ましく、さらには水素原子、置換アルキル基、置換アリール基、又は置換複素環基が好ましい。ただし、R1及びR2が共に水素原子であることは好ましくない。
以下に、一般式(II)における、R1、R2、及びZについてさらに詳しく説明する。なお、下記で説明する各基の炭素数は置換基の炭素原子を含まない数である。
上記のアルキル基としては、炭素数1乃至30の置換又は無置換のアルキル基が挙げられる。中でも、色材の溶解性やインクの安定性の観点から、分岐のアルキル基が好ましく、さらには不斉炭素を有するアルキル基(ラセミ体として用いる)が特に好ましい。アルキル基はさらに置換基を有してもよく、置換基の具体例は、後述のZ、R1、R2、Y1〜Y8がさらに置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。中でも、水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、又はスルホンアミド基が、色材の会合性を高め、堅牢性を向上することができるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有してもよい。
上記のシクロアルキル基としては、炭素数5乃至30の置換又は無置換のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、色材の溶解性やインクの安定性の観点から、不斉炭素を有するシクロアルキル基(ラセミ体として用いる)が特に好ましい。シクロアルキル基はさらに置換基を有してもよく、置換基の具体例は、後述のZ、R1、R2、Y1〜Y8がさらに置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。中でも、水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、又はスルホンアミド基が、色材の会合性を高め、堅牢性を向上することができるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有してもよい。
上記のアルケニル基としては、炭素数2乃至30の置換又は無置換のアルケニル基が挙げられる。中でも、色材の溶解性やインクの安定性の観点から、分岐のアルケニル基が好ましく、さらには不斉炭素を有するアルケニル基(ラセミ体として用いる)が特に好ましい。アルケニル基はさらに置換基を有してもよく、置換基の具体例は、後述のZ、R1、R2、Y1〜Y8がさらに置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。中でも、水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、又はスルホンアミド基が、色材の会合性を高め、堅牢性を向上することができるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有してもよい。
上記のアラルキル基としては、炭素数7乃至30の置換又は無置換のアラルキル基が挙げられる。中でも、色材の溶解性やインクの安定性の観点から、分岐のアラルキル基が好ましく、さらには不斉炭素を有するアラルキル基(ラセミ体として用いる)が特に好ましい。アラルキル基はさらに置換基を有してもよく、置換基の具体例は、後述のZ、R1、R2、Y1〜Y8がさらに置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。中でも、水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、又はスルホンアミド基が、色材の会合性を高め、堅牢性を向上することができるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有してもよい。
上記アリール基としては、炭素数6乃至30の置換又は無置換のアリール基が挙げられる。アリール基はさらに置換基を有してもよく、置換基の具体例は、後述のZ、R1、R2、Y1〜Y8がさらに置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。中でも、色材の酸化電位が貴であると堅牢性を向上することができるので、電子吸引性基が特に好ましい。電子吸引性基は、ハメットの置換基定数σp値が正のものが挙げられる。中でも、ハロゲン原子、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、イミド基、アシル基、スルホン酸基、又は4級アンモニウム基が好ましい。さらには、シアノ基、カルボキシル基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、イミド基、アシル基、スルホン酸基、又は4級アンモニウム基が特に好ましい。
上記の複素環基としては、5員環又は6員環であり、置換又は無置換の、芳香族又は非芳香族の複素環が挙げられ、これらはさらに縮環していてもよい。以下に、R1、R2、及びZが複素環基である場合の具体例を、置換位置を省略して複素環として挙げる。なお、置換位置は以下の記載に限られるものではなく、例えば、ピリジンであれば、2位、3位、4位で置換できる。ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール。フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン。ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾール、イソオキサゾール、ベンズイソオキサゾール。ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、及びチアゾリンなどが挙げられる。中でも、芳香族複素環基が好ましい。さらには、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、及びチアジアゾールが特に好ましい。
これらの複素環基はさらに置換基を有してもよく、置換基の具体例は、後述のZ、R1、R2、Y1〜Y8がさらに置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。中でも、色材の酸化電位が貴であると堅牢性を向上することができるので、電子吸引性基が特に好ましい。電子吸引性基は、ハメットの置換基定数σp値が正のものが挙げられる。中でも、ハロゲン原子、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、イミド基、アシル基、スルホン酸基、又は4級アンモニウム基が好ましい。さらには、シアノ基、カルボキシル基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、イミド基、アシル基、スルホン酸基、又は4級アンモニウム基が特に好ましい。
一般式(II)におけるY1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、及びY8はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は下記に挙げる基からなる群から選ばれる基である。すなわち、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルコキシ基。アミド基、ウレイド基、スルホンアミド基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、置換若しくは無置換のスルファモイル基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、又はスルホン酸基である。中でも、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、又はスルホン酸基が好ましく、さらには水素原子が特に好ましい。
以下に、一般式(II)における、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、及びY8について、さらに具体的に説明する。なお、下記で説明する各基の炭素数は置換基の炭素原子を含まない数である。
ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子などが挙げられ、中でも、塩素原子又は臭素原子が好ましく、特には塩素原子が好ましい。
アルキル基としては、炭素数が1乃至30の置換又は無置換のアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル、エチル、ブチル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、ヒドロキシエチル、シアノエチル、及び4−スルホブチルなどが挙げられる。
アリール基としては、炭素数6乃至30の置換又は無置換のアリール基が挙げられる。具体的には、フェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、及びo−ヘキサデカノイルアミノフェニルなどが挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数が1乃至30の置換又は無置換のアルコキシ基が挙げられる。具体的には、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、n−オクチルオキシ、メトキシエトキシ、ヒドロキシエトキシ、及び3−カルボキシプロポキシなどが挙げられる。
カルバモイル基としては、炭素数1乃至30の置換又は無置換のカルバモイル基が挙げられる。具体的には、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、及びN−(メチルスルホニル)カルバモイルなどが挙げられる。
スルファモイル基としては、炭素数1乃至30の置換又は無置換のスルファモイル基が挙げられる。具体的には、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、及びN−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイルなどが挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、炭素数2乃至30の置換又は無置換のアルコキシカルボニル基が挙げられる。具体的には、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、及びn−オクタデシルオキシカルボニルなどが挙げられる。
Z、R1、R2、Y1〜Y8が、さらに置換基を有することが可能な基であるときは、以下に挙げる置換基をさらに有してもよい。この場合の置換基としては、下記のようなものが挙げられる。炭素数1乃至12の直鎖又は分岐鎖アルキル基、炭素数7乃至18の直鎖又は分岐鎖アラルキル基、炭素数2乃至12の直鎖又は分岐鎖アルケニル基、炭素数2乃至12の直鎖又は分岐鎖アルキニル基。炭素数3乃至12の直鎖又は分岐鎖シクロアルキル基、炭素数3乃至12の直鎖又は分岐鎖シクロアルケニル基が挙げられる。これらの置換基は、色材の溶解性やインクの安定性の観点から、分岐を有するものが好ましく、さらには不斉炭素を有するものが特に好ましい。
置換基の具体例としては、下記のものが挙げられる。メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、sec−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、2−メチルスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル、及びシクロペンチルなどの置換又は無置換のアルキル基。塩素原子、及び臭素原子などのハロゲン原子。フェニル、4−t−ブチルフェニル、及び2,4−ジ−t−アミルフェニルなどのアリール基。イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、及び2−ベンゾチアゾリルなどの複素環基。シアノ基。ヒドロキシル基。ニトロ基。カルボキシ基。アミノ基。メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、及び2−メタンスルホニルエトキシなどのアルキルオキシ基。フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、3−t−ブチルオキシカルバモイルフェノキシ、及び3−メトキシカルバモイルなどのアリールオキシ基。アセトアミド、ベンズアミド、及び4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミドなどのアシルアミノ基。メチルアミノ、ブチルアミノ、ジエチルアミノ、及びメチルブチルアミノなどのアルキルアミノ基。フェニルアミノ、及び2−クロロアニリノなどのアニリノ基。フェニルウレイド、メチルウレイド、及びN,N−ジブチルウレイドなどのウレイド基。N,N−ジプロピルスルファモイルアミノなどのスルファモイルアミノ基。メチルチオ、オクチルチオ、及び2−フェノキシエチルチオなどのアルキルチオ基。フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、及び2−カルボキシフェニルチオなどのアリールチオ基。メトキシカルボニルアミノなどのアルキルオキシカルボニルアミノ基。メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、及びp−トルエンスルホンアミドなどのスルホンアミド基。N−エチルカルバモイル、及びN,N−ジブチルカルバモイルなどのカルバモイル基。N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、及びN−フェニルスルファモイルなどのスルファモイル基。メタンスルホニル、オクタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、及びトルエンスルホニルなどのスルホニル基。メトキシカルボニル、及びブチルオキシカルボニルなどのアルキルオキシカルボニル基。1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、及び2−テトラヒドロピラニルオキシなどの複素環オキシ基。フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、及び2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾなどのアゾ基。アセトキシなどのアシルオキシ基。N−メチルカルバモイルオキシ、及びN−フェニルカルバモイルオキシなどのカルバモイルオキシ基。トリメチルシリルオキシ、及びジブチルメチルシリルオキシなどのシリルオキシ基。フェノキシカルボニルアミノなどのアリールオキシカルボニルアミノ基。N−スクシンイミド、及びN−フタルイミドなどのイミド基。2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジ−フェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ、及び2−ピリジルチオなどの複素環チオ基。3−フェノキシプロピルスルフィニルなどのスルフィニル基。フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、及びフェニルホスホニルなどのホスホニル基。フェノキシカルボニルなどのアリールオキシカルボニル基。アセチル、3−フェニルプロパノイル、及びベンゾイルなどのアシル基。カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、及び4級アンモニウム基などのイオン性親水性基が挙げられる。なお、一般式(II)におけるイオン性親水性基は、1分子中に少なくとも2個であることが好ましく、さらにはスルホン酸基及び/又はカルボキシル基を少なくとも2個であることが特に好ましい。
前記一般式(II)中の、a1、a2、a3、及びa4は、それぞれX1〜X8の置換基の数である。a1、a2、a3、及びa4はそれぞれ独立に、1又は2の整数である。なお、a1、a2、a3、及びa4の少なくとも1つが2であるとき、X1、X2、X3、及びX4のうち少なくとも一種は複数個存在することになる。このとき、複数個存在する置換基は、それらは同一であっても、又は異なってもよい。本発明においては、a1、a2、a3、及びa4が1であることが特に好ましい。
一般式(II)で表される化合物は、2価の連結基(L)を介してフタロシアニン環(Pc)が、2量体(Pc−Cu−L−Cu−Pc)、や3量体(Pc−Cu−L−Cu−L−Cu−Pc)などを形成してもよい。Lは2価の連結基であり、オキシ基(−O−)、チオ基(−S−)、カルボニル基(−CO−)、スルホニル基(−SO2−)、イミノ基(−NH−)、メチレン基(−CH2−)、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい。
本発明においては、一般式(II)中における置換基のうち、少なくとも1つが上記に具体的に挙げた置換基であることが好ましく、さらには、より多くの置換基が上記に具体的に挙げた置換基であることが好ましい。特には、一般式(II)中における全ての置換基が上記で挙げた置換基であることが好ましい。さらに、一般式(II)で表される化合物が水溶性を有することが好ましく、この場合、一般式(II)における置換基が、イオン性親水性基を含むことが好ましい。イオン性親水性基としては、スルホン酸基、カルボキシル基、ホスホノ基、及び4級アンモニウム基などが挙げられ、中でも、カルボキシル基、ホスホノ基、又はスルホン酸基が好ましく、さらにはカルボキシル基又はスルホン酸基が特に好ましい。カルボキシル基、ホスホノ基、及びスルホン酸基は塩の形態であってもよく、塩を形成する対イオンとしては、例えば、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び有機カチオンが挙げられる。アルカリ金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンが挙げられる。また、有機カチオンとしては、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジニウムイオン、及びテトラメチルホスホニウムなどが挙げられる。中でも、アルカリ金属塩が好ましく、特にリチウム塩は、色材の溶解性やインクの安定性の観点から特に好ましい。
また、本発明においては、一般式(II)の化合物は、先に説明した一般式(I)の化合物と組み合わせて用いる。このため、一般式(II)の化合物は、一般式(I)の化合物と混合された状態において、一般式(I)の化合物と水素結合を形成することができる部位、例えば、水酸基を有することが特に好ましい。
さらに、一般式(II)の化合物には、スルフィニル基、スルホニル基、及びスルファモイル基などの電子吸引性基を、フタロシアニン骨格の4つのベンゼン環にそれぞれ少なくとも1つ導入してなることが好ましい。さらには、一般式(II)におけるフタロシアニン骨格に置換した全ての前記電子吸引性基のハメットの置換基定数σp値の合計が、1.60以上であるような構造を有することが特に好ましい。
ここで、ハメット則及びハメットの置換基定数σp値(以下、「ハメットのσp値」と呼ぶ)について説明する。ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応や平衡に及ぼす、置換基の影響を定量的に論ずるために、1935年にL.P.Hammettにより提唱された経験則であり、今日では広く妥当性が認められている。ハメット則により求められる置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に記載がある。例えば、J.A.Dean編、Lange s Handbook of Chemistry 第12版、1979年、McGraw-Hillや、化学の領域、増刊、122号、96〜103頁、1979年、南光堂に詳細な記載がある。
なお、本発明においては、各置換基をハメットのσp値により規定している。しかし、本発明では、上記したような文献に具体的にσp値が記載された置換基のみに限られるものではない。本発明は、上記したような文献にσp値が記載されていない置換基であっても、ハメット則に基づいてσp値を算出した場合に、その範囲内に含まれるであろう置換基をも含むことはいうまでもない。以下に、本発明の一般式(II)の化合物における、ハメットのσp値が正の値である電子吸引性基として用いることができる置換基の具体例を、ハメットのσp値と共に示す。
ハメットのσp値が0.60以上の電子吸引性基としては、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基)、及びアリールスルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル基)などが挙げられる。
ハメットのσp値が0.45以上の電子吸引性基としては、上記に加えて、下記の基を挙げることができる。アシル基(例えば、アセチル基)、アルコキシカルボニル基(例えば、ドデシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、m−クロロフェノキシカルボニル基)。アルキルスルフィニル基(例えば、n−プロピルスルフィニル基)、アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル基)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基)。及び、ハロゲン化アルキル基(例えば、トリフロロメチル基)などが挙げられる。
ハメットのσp値が0.30以上の電子吸引性基としては、上記に加えて、下記の基を挙げることができる。アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジブチルカルバモイル基)。ハロゲン化アルコキシ基(例えば、トリフロロメチルオキシ基)、ハロゲン化アリールオキシ基(例えば、ペンタフロロフェニルオキシ基)。スルホニルオキシ基(例えば、メチルスルホニルオキシ基)、ハロゲン化アルキルチオ基(例えば、ジフロロメチルチオ基)。及び、複素環(例えば、2−ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−フェニル−2−ベンズイミダゾリル基)などが挙げられる。また、σp値が0.15以上の2つ以上の電子吸引性基で置換されたアリール基が挙げられる。
ハメットのσp値が0.20以上の電子吸引性基は、上記に加えて、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素)などが挙げられる。
ここで、フタロシアニン化合物におけるα位及びβ位について、下記の構造式を用いて説明する。α位とは、1位及び/又は4位、5位及び/又は8位、9位及び/又は12位、13位及び/又は16位のことであり、α位置換型フタロシアニン化合物とはこれらの位置の少なくとも1つに特定の置換基を有するフタロシアニン化合物である。また、β位とは、2位及び/又は3位、6位及び/又は7位、10位及び/又は11位、14位及び/又は15位のことであり、β位置換型フタロシアニン化合物とはこれらの位置の少なくとも1つに特定の置換基を有するフタロシアニン化合物のことである。つまり、一般式(II)の化合物は、X1、X2、X3、及びX4はβ位に、また、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、及びY8はα位に、それぞれ置換してなるフタロシアニン化合物である。
上記で述べたように、スルファモイル基などの電子求引性基を数多くフタロシアニン骨格に導入すると、酸化電位がより貴となり、このようなインクにより形成した画像の耐オゾン性を向上することができる。しかし、上記で説明したような方法で合成を行った場合、電子求引性基の数が少ない、つまり、酸化電位がより卑であるフタロシアニン化合物が混入することは避けられない。したがって、インクにより形成した画像の耐オゾン性を向上させるためには、酸化電位がより卑であるフタロシアニン化合物の生成を抑えるような方法で合成を行うことが特に好ましい。
一般式(II)の化合物は、例えば、下記の2通りの合成フローのようにして合成することができる。フタロニトリル誘導体及び/又はジイミノイソインドリン誘導体と銅誘導体とを反応させることにより、一般式(II)の化合物(β位置換型)を合成することができる。また、4−スルホフタロニトリル誘導体と銅誘導体とを反応させることで得られるテトラスルホフタロシアニン化合物から誘導することにより、一般式(II)の化合物(β位置換型)を合成することができる。
上記合成フロー中、Xmは、一般式(II)におけるX1、X2、X3、又はX4に相当する。また、Ynは一般式(II)におけるY1、Y3、Y5、又はY7に、また、Yn'は一般式(II)におけるY2、Y4、Y6、又はY8に相当する。4−スルホフタロニトリル誘導体におけるMはカチオンであり、具体的には、Li、Na、Kなどのアルカリ金属イオン、又はトリエチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオンなどの有機カチオンなどが挙げられる。銅誘導体(Cu(Y)d)におけるYは1価又は2価の配位子であり、具体的には、ハロゲン原子、酢酸陰イオン、アセチルアセトネート、及び酸素などが挙げられ、dは1乃至4の整数である。
先に説明した合成フローによれば、銅フタロシアニン骨格に、所望の置換基を所望の数だけ導入することができる。特に、本発明のように、銅フタロシアニン骨格に、酸化電位を貴とするために電子求引性基を数多く導入したい場合には、先に説明した合成フローは極めて有効である。
前記一般式(II)の化合物の好ましい具体例としては、下記の例示化合物II−1〜II−102が挙げられる。勿論、本発明は、一般式(II)の構造及びその定義に包含されるものであれば、下記の例示化合物に限られるものではない。本発明においては、下記の例示化合物の中でも、水酸基を有する例示化合物を用いることが好ましく、さらには、例示化合物II−66を用いることが特に好ましい。
下記に例示化合物II−13〜II−57を表にして示したが、表2中のXmの組、及び(Yn、Yn')の組は、一般式(II)に含まれる下記に示した一般式中における各置換基を表す。これらの組は、下記の一般式中において、それぞれ独立に順不同である。
下記に、前記した一般式(II)に含まれる下記式で表される例示化合物II−58〜II−102を表にして示した。表2中の、Xprはそれぞれ独立にP1又はP2であり、銅フタロシアニン骨格に置換するP1の数はm及びP2の数はnであり、Yqは水素原子である。なお、P1及びP2の各置換基は銅フタロシアニン骨格のβ位に置換するものであり、β位における置換位置は順不同である。
〔色材の検証方法〕
本発明で用いる一般式(II)の色材が液体(インク)中に含有されているか否かの検証には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた下記(1)〜(3)の検証方法が適用できる。
(1)ピークの保持時間
(2)(1)のピークの吸光度検出器による最大吸収波長
(3)(1)のピークについての質量分析法によるマススペクトルのM/Z(posi、nega)
高速液体クロマトグラフィーの分析条件は以下に示す通りである。純水で約1,000倍に希釈した液体を測定用サンプルとし、該サンプルについて、下記の条件で高速液体クロマトグラフィーでの分析を行った。そして、ピークの保持時間(retention time)、及び、可視吸光度検出器によるピークの極大吸収波長を測定した。
・カラム:SunFire C18 2.1mm×150mm
・カラム温度:40℃
・流速:0.2mL/min
・PDA:200nm〜700nm
・移動相及びグラジエント条件:下記表3
また、質量分析装置によるマススペクトルの分析条件は以下に示す通りである。HPLCで得られたピークについて、下記の条件でマススペクトルを測定し、最も強く検出されたM/Zをposi、negaそれぞれに対して測定した。
・イオン化法
・ESI
キャピラリ電圧:3.5kV
脱溶媒ガス:300℃
イオン源温度:120℃
・検出器
posi 40V 200〜1500amu/0.9sec
nega 40V 200〜1500amu/0.9sec
第2の色材の具体例である例示化合物II−66に対しての保持時間、極大吸収波長、M/Z(posi)、M/Z(nega)の値を表3に示した。未知のインクについて、上記と同様の分析を行った結果、それぞれの値が表4に示す値に該当する場合、本発明において用いる化合物に該当する色材が含有されていると判断できる。
〔色材の含有量〕
インク中の第1の色材(一般式(I)の化合物)の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。また、インク中の第2の色材(一般式(II)の化合物)の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
インク中の第1の色材(一般式(I)の化合物)と第2の色材(一般式(II)の化合物)との含有量の合計(質量%)が、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましい。さらには、前記含有量の合計(質量%)が、0.5質量%以上10.0質量%以下であることが特に好ましい。含有量の合計が0.1質量%未満であると、耐オゾン性及び発色性が十分に得られない場合があり、含有量の合計が20.0質量%を超えると、耐固着性などのインクジェット特性が得られない場合がある。
インク全質量を基準とした、第1の色材(一般式(I)の化合物)の含有量(質量%)は、第2の色材(一般式(II)の化合物)の含有量(質量%)に対して、質量比率で、(第1の色材/第2の色材)=1.25倍以上5.0倍以下であることが好ましい。さらには前記質量比率が、1.5倍以上3.0倍以下であることが特に好ましい。本発明者らの検討の結果、第1の色材及び第2の色材と混合する場合、これらの質量比率と耐オゾン性に相関があり、耐オゾン性を向上する効果が特に顕著に得られるのは含有量の質量比率が上記範囲にある場合であることがわかった。つまり、この質量比率を満足する場合に、一般式(I)の化合物又は一般式(II)の化合物がそれぞれ有する耐オゾン性から予測される性能をはるかに上回る、特に優れた耐オゾン性を得ることができる。また、含有量の質量比率を上記範囲とすることで、シアンインクとして好ましい色調を得ることができる。前記質量比率が5.0を超えると、色材の混合が凝集性に与える影響が小さく、耐オゾン性がこれらの色材を1種で用いる場合の性能と近くなる場合がある。また、インクの色調もレッドの方向に偏るためシアンインクとして好ましい色調が得られない場合がある。一方で、前記質量比率が1.25未満であると、色材の混合が凝集性に与える影響が小さく、耐オゾン性がこれらの色材を1種で用いる場合の性能と近くなる場合がある。また、インクの色調もグリーンの方向に偏るためシアンインクとして好ましい色調が得られない場合がある。つまり、本発明においては、第1の色材及び第2の色材を特定の質量比率で混合することで、予測されるレベルをはるかに超えた画像の耐オゾン性と、シアンインクとして好ましい色調とを特に顕著に両立することができる。
なお、本発明における、シアンインクとして好ましい色調とは、以下のことを意味する。シアンインクを用いて記録デューティを100%として形成した画像について、CIE(国際照明委員会)により規定されたL*a*b*表示系におけるa*及びb*を測定する。そして、得られたa*及びb*の値から、下記式(1)に基づいて算出される色相角(H°)が、237°以上244°以下であるインクを、本発明においてはシアンインクとして好ましい色調を有するインクであるとしている。なお、前記a*及びb*の値は、例えば、分光光度計(商品名:Spectrolino;Gretag Macbeth製)を用いて測定することができる。勿論、本発明はこれに限られるものではない。
式(1)
a*≧0、b*≧0(第一象限)では、H°=tan-1(b*/a*)
a*≦0、b*≧0(第二象限)では、H°=180+tan-1(b*/a*)
a*≦0、b*≦0(第三象限)では、H°=180+tan-1(b*/a*)
a*≧0、b*≦0(第四象限)では、H°=360+tan-1(b*/a*)
〔耐オゾン性が向上するメカニズム〕
上記で述べたように、第1の色材及び第2の色材を組み合わせて用いることで、相乗効果が発揮され、予測されるレベルをはるかに超えて画像の耐オゾン性が向上するメカニズムを、本発明者らは以下のように推測している。
本発明者らの検討の結果、色材の凝集性と耐オゾン性との間には相関があることがわかった。すなわち、インク中に各色材が単独で存在するときの凝集性よりも、特定の色材が混合された状態、つまり、色材が会合体で存在するときの凝集性が高い場合に、耐オゾン性が向上することがわかった。このことから、特定の色材を混合することで形成される色材の会合体における凝集性をコントロールすることができ、これにより、インク中に各色材が単独で存在するときよりも、さらに凝集した状態になる。このことにより、予測されるレベルを超えた特に優れた耐オゾン性が得られたものと考えられる。なお、インク中に存在する色材の凝集性をコントロールすることは、記録媒体上に付与された色材の会合体の凝集性をコントロールすることと同じ効果があると考えられる。
このように、凝集性がコントロールされ、凝集しやすい状態にあるインクが記録媒体に付与されると、色材の会合体が記録媒体上において凝集することでより大きな凝集体が形成される。そして、空気中のオゾンガスなどの酸化性ガスが、記録媒体上の色材を劣化させる反応を引き起こした場合に、凝集体の表層近傍の分子は劣化を起こす。しかし、凝集体の内部の分子は酸化性ガスによる劣化を受けにいため、全体として劣化せずに残る色材の割合が増える。本発明においては、このようなメカニズムにより耐オゾン性を特に顕著に向上することができる。
一方、1種のみの色材を含有するインクにおいては、色材が有する固有の性能により凝集性が決まるため、色材の特性のみに依存して凝集性を任意にコントロールすることは困難となる場合が多い。また、色材そのものの凝集性が高い1種の色材を選択することも考えられるが、このときも、好ましいシアンの色調と凝集性とを両立することは多くの場合困難である。また、2種以上の色材を混合する場合においても、従来の色材では、その凝集の状態は各色材が有する固有の凝集性に依存する場合が多いため、単に色材を組み合わせて用いても、凝集性をコントロールすることは困難であった。
しかし、本発明者らの検討の結果、2種以上の色材を組み合わせて用いる場合に、ある特定の置換基を有する色材を用いることで、前記2種以上の色材が特異的に凝集を起こすことがわかった。一方の色材は、前述した一般式(I)の化合物における置換スルファモイル基を有することが好ましく、さらに前記置換スルファモイル基がアルキレン基を有することが特に好ましい。一般式(I)の化合物の置換スルファモイル基におけるアルキレン基は、色材の水性媒体への溶解性を下げる効果を有するため、色材がより凝集しやすい状態になり、耐オゾン性が向上すると考えられる。もう一方の色材は、前記置換スルファモイル基と水素結合を形成することができる基を有することが好ましく、特には水酸基を有する場合に、耐オゾン性が特に顕著に向上することがわかった。
つまり、本発明においては、凝集を特異的に起こすような特定の構造を有する色材、特には前記の各置換基を有する色材を選択し、これらの色材を組み合わせて用いることにより、以下の効果が得られる。すなわち、各色材が有する耐オゾン性から予測される、これらの組み合わせた場合における性能をはるかに上回る耐オゾン性を得ることができる。これは、それぞれの色材が有する凝集性よりも、色材を組み合わせて用いる場合の凝集性が高くなるため、記録媒体上においてより大きな凝集体が形成されやすくなり、色材の劣化速度を抑制することができるためであると考えられる。本発明においては、(第1の色材/第2の色材)=1.25倍以上5.0倍以下である場合に、さらには1.5倍以上3.0倍以下である場合に、特に優れた画像の耐オゾン性を実現できるため、特に好ましい。
〔色材の凝集性〕
色材の凝集性の測定には、小角X線散乱法を適用することができる。小角X線散乱法は、「最新コロイド化学」(講談社サイエンティフィック 北原文雄、古澤邦夫)や「表面状態とコロイド状態」(東京化学同人 中垣正幸)などに記載があるように、コロイド溶液中の粒子間距離の算出に汎用に用いられている手法である。
小角X線散乱装置の概要を小角X線散乱法の測定原理図である図1を用いて説明する。X線源より発生したX線は第1〜第3スリットを通る間に数mm以下の程度まで焦点サイズを絞られ、試料溶液に照射される。試料溶液に照射されたX線は、試料溶液中の粒子によって散乱された後、イメージングプレート上で検出される。散乱されたX線は、その光路差の違いによって干渉が起こるため、得られたθ値から粒子間の距離d値をBraggの式(下記式(A))によって求めることができる。なお、ここで求められるd値は、一定間隔で配列している粒子の中心から中心の距離と考えることができる。
(式(A)中、λはX線の波長、dは粒子間の距離、θは散乱角である。)
一般に、溶液中の粒子が規則正しく配列していない場合、散乱角プロファイルにはピークが発生しない。本発明で用いる一般式(I)のA、B、C、及びDに対応する芳香環が全てベンゾ環である化合物の水溶液の場合、2θ=0°〜5°の範囲に最大値を持つ強いピークが検出される。したがって、フタロシアニン系色材分子の凝集により形成される粒子(分子集合体)が、ある一定の規則で配列していることがわかる。図2に、トリフェニルメタン系色材である下記化合物(A)、及び一般式(I)のA、B、C、及びDに対応する芳香環が全てベンゾ環である化合物、のそれぞれ10質量%水溶液における散乱角プロファイルを示す。図2より、同じシアンの色相を有する色材であっても、フタロシアニン系色材は特異的に散乱角ピークを有することがわかる。つまり、フタロシアニン系色材の場合、水溶液中ではフタロシアニン分子がいくつか凝集し分子集合体を形成しており、分子集合体間の距離は、散乱角プロファイルで示されるような一定の分布を有することになる。
図3は、フタロシアニン系色材の分子集合体の分散距離の概念図である。図3に示すように、あるフタロシアニン系色材の分子集合体の半径をr1、分子集合体間の距離をd1とする。d1は常に一定である、と仮定すると、フタロシアニン系色材が形成する分子集合体の半径がr1→r2と大きくなるにしたがって、小角X線散乱法で測定されたd値もd2→d3へと大きくなると考えられる。そのため、前記方法で測定されるd値は、フタロシアニン系色材の分子集合体の大きさを表す指数と考えられ、d値が大きいほど、色材分子が形成する分子集合体の大きさが大きくなっていると考えられる。このようにして、色材の凝集性、すなわち、凝集体の大きさをd値により表すことができる。
本発明者らの検討の結果、一般式(I)の化合物及び一般式(II)の化合物をある一定の比率で混合した場合のd値は、一般式(I)の化合物のみ、又は一般式(II)の化合物のみ、のそれぞれのd値よりも大きくなることがわかった。さらには、このように、混合した状態でのd値が、それぞれの化合物のd値よりも大きくなるような関係にある色材の組み合わせにおいて相乗効果が発揮され、耐オゾン性が特に顕著に向上することがわかった。しかし、混合した状態でのd値の大小と耐オゾン性の性能との間には、相関関係は存在しなかった。
すなわち、本発明の別の態様にかかるインクは、少なくとも色材A及び色材Bを含有するインクであって、小角X線散乱法により得られたインク中の分子集合体の分散距離d値が、以下の条件を満たすことが好ましい。このとき、一般式(I)の化合物のみ、又は一般式(II)の化合物のみ、のそれぞれの耐オゾン性よりも、一般式(I)の化合物及び一般式(II)の化合物を組み合わせた場合に相乗効果が発揮され、耐オゾン性が顕著に向上する。なお、ここでは、一般式(I)の化合物を「色材A」、また、一般式(II)の化合物を「色材B」とする。
dA+B>dA、かつ、dA+B>dB
(上記式中、dA(nm)は色材Aのd値であり、dB(nm)は色材Bのd値であり、dA+B(nm)は色材A及び色材Bを混合したときのd値である。)
(水性媒体)
本発明のインクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることができる。水は、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤は、水溶性であれば特に制限はなく、アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、グリコールエーテル、含窒素極性溶媒、含硫黄極性溶媒などを用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、5.0質量%以上90.0質量%以下、さらには10.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤の含有量が上記した範囲より少ないと、インクをインクジェット記録装置に用いる場合に吐出安定性などの信頼性が得られない場合がある。また、水溶性有機溶剤の含有量が上記した範囲より多いと、インクの粘度が上昇して、インクの供給不良が起きる場合がある。
水溶性有機溶剤は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどの炭素数1乃至4のアルキルアルコール類。ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類。アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン又はケトアルコール類。テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類。エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、チオジグリコールなどのグリコール類。1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオールなどのアルキレン基が2乃至6個の炭素原子を持つアルキレングリコール類。ビス(2−ヒドロキシエチル)スルホン。ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの低級アルキルエーテルアセテート類。エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル類。N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなど。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。これらの水溶性有機溶剤は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
(その他の添加剤)
本発明のインクは、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。さらに、本発明のインクは必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及び水溶性ポリマーなど、種々の添加剤を含有してもよい。
<その他のインク>
また、フルカラーの画像などを形成するために、本発明のインクを、本発明のインクとは別の色調を有するインクと組み合わせて用いることができる。本発明のインクは、例えば、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、レッドインク、グリーンインク及びブルーインクなどから選択される少なくともいずれか1種のインクと共に用いられることが好ましい。また、これらのインクと実質的に同一の色調を有する、所謂、淡インクをさらに組み合わせて用いることもできる。これらのインク又は淡インクの色材は、公知の染料であっても、新規に合成された色材であっても用いることができる。
<記録媒体>
本発明のインクを用いて画像を形成する際に用いる記録媒体は、インクを付与して記録を行う記録媒体であればいずれのものでも用いることができる。本発明においては、染料や顔料などの色材をインク受容層の多孔質構造を形成する微粒子に吸着させる、インクジェット用の記録媒体を用いることが好ましい。特には、支持体上のインク受容層に形成された空隙によりインクを吸収する、所謂、隙間吸収タイプのインク受容層を有する記録媒体を用いることが好ましい。隙間吸収タイプのインク受容層は、微粒子を主体として構成されるものであり、さらに必要に応じて、バインダーやその他の添加剤を含有してもよい。
微粒子は、具体的には、以下のものを用いることができる。シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、アルミナ又はアルミナ水和物などの酸化アルミニウム、珪藻土、酸化チタン、ハイドロタルサイト、又は酸化亜鉛などの無機顔料。尿素ホルマリン樹脂、エチレン樹脂、スチレン樹脂などの有機顔料。これらの微粒子は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
バインダーは、水溶性高分子やラテックスなどが挙げられ、具体的には、以下のものを用いることができる。ポリビニルアルコール、澱粉、ゼラチン、又はこれらの変性体。アラビアゴム。カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体。SBRラテックス、NBRラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、官能基変性重合体ラテックス、又はエチレン酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス。ポリビニルピロリドン。無水マレイン酸若しくはその共重合体、又はアクリル酸エステル共重合体など。これらのバインダーは、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
その他に、必要に応じて添加剤を用いることができる。例えば、分散剤、増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、流動性変性剤、界面活性剤、消泡剤、離型剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、染料定着剤などを用いることができる。
特に、本発明のインクを用いて画像を形成する際には、平均粒子径が1μm以下である微粒子を主体として、インク受容層を形成した記録媒体を用いることが好ましい。前記微粒子の具体例は、シリカ微粒子や酸化アルミニウム微粒子などが挙げられる。シリカ微粒子として好ましいものは、コロイダルシリカに代表されるシリカ微粒子である。コロイダルシリカは市販品を用いることもできるが、特には、例えば、特許第2803134号公報、同2881847号公報に記載のコロイダルシリカを用いることが好ましい。また、酸化アルミニウム微粒子として好ましいものは、アルミナ水和物微粒子(アルミナ系顔料)を挙げることができる。
前記アルミナ系顔料の中でも、下記式で表される擬ベーマイトなどのアルミナ水和物を特に好適なものとして挙げることができる。
AlO3-n(OH)2n・mH2O
(式中、nは1乃至3の整数であり、mは0乃至10、好ましくは0乃至5である。ただし、mとnは同時には0とならない。)
mH2Oは、多くの場合、mH2O結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相をも表すものである。このため、mは整数又は整数でない値を取ることができる。また、この種のアルミナ水和物を加熱すると、mは0に達することがあり得る。
アルミナ水和物は、下記のような公知の方法で製造することができる。例えば、米国特許第4,242,271号明細書、米国特許第4,202,870号明細書に記載のアルミニウムアルコキシドの加水分解やアルミン酸ナトリウムの加水分解で製造することができる。また、特公昭57−44605号公報に記載のアルミン酸ナトリウムなどの水溶液に、硫酸ナトリウムや塩化アルミニウムなどの水溶液を加えて中和を行う方法で製造することができる。
記録媒体は上記したインク受容層を支持するための支持体を有することが好ましい。支持体は、インク受容層が、上記多孔質の微粒子で形成することが可能であって、かつインクジェット記録装置などの搬送機構によって搬送可能な剛度を与えるものであれば、特に制限はなく、いずれのものも用いることができる。例えば、天然セルロース繊維を主体としたパルプ原料で構成される紙支持体を用いることができる。また、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタラート)、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリイミドなどの材料で構成されるプラスチック支持体を用いることができる。さらに、基紙の少なくとも一方の面に白色顔料などを添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(例:RCペーパー)を用いることができる。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクは、インクをインクジェット方式で吐出して記録媒体に記録を行う本発明のインクジェット記録方法に用いる。インクジェット記録方法は、インクに力学的エネルギーを作用することによりインクを吐出する記録方法や、インクに熱エネルギーを作用することによりインクを吐出する記録方法などがある。特に、本発明においては、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法を好ましく用いることができる。
<インクカートリッジ>
本発明のインクを用いて記録を行うのに好適なインクカートリッジとしては、かかるインクを収容するインク収容部を備えた本発明のインクカートリッジが挙げられる。
<記録ユニット>
本発明のインクを用いて記録を行うのに好適な記録ユニットとしては、かかるインクを収容するインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えた本発明の記録ユニットが挙げられる。特に、前記記録ヘッドが、記録信号に対応した熱エネルギーをインクに作用することによりインクを吐出する記録ユニットを好ましく用いることができる。特に、本発明においては、金属及び/又は金属酸化物を含有する発熱部接液面を有する記録ヘッドを用いることが好ましい。前記発熱部接液面を構成する金属及び/又は金属酸化物は、具体的には、例えば、Ta、Zr、Ti、Ni、若しくはAlなどの金属、又はこれらの金属の酸化物などが挙げられる。
<インクジェット記録装置>
本発明のインクを用いて記録を行うのに好適なインクジェット記録装置としては、かかるインクを収容するインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えた本発明のインクジェット記録装置が挙げられる。特に、前記インクを収容するインク収容部を有する記録ヘッドの内部のインクに、記録信号に対応した熱エネルギーを作用することによりインクを吐出するインクジェット記録装置が挙げられる。
以下に、インクジェット記録装置の機構部の概略構成を説明する。インクジェット記録装置は、各機構の役割から、給紙部、搬送部、キャリッジ部、排紙部、クリーニング部、及びこれらを保護し、意匠性を持たせる外装部などで構成される。
図4は、インクジェット記録装置の斜視図である。また、図5及び図6は、インクジェット記録装置の内部機構を説明する図であり、図5は右上部からの斜視図、図6はインクジェット記録装置の側断面図をそれぞれ示す。
給紙を行う際には、給紙トレイM2060を含む給紙部において、記録媒体の所定枚数のみが給紙ローラM2080と分離ローラM2041から構成されるニップ部に送られる。記録媒体はニップ部で分離され、最上位の記録媒体のみが搬送される。搬送部に搬送された記録媒体は、ピンチローラホルダM3000及びペーパーガイドフラッパーM3030に案内されて、搬送ローラM3060とピンチローラM3070とのローラ対に搬送される。搬送ローラM3060とピンチローラM3070とのローラ対は、LFモータE0002の駆動により回転し、この回転により記録媒体がプラテンM3040上を搬送される。
記録媒体に画像を形成する際には、キャリッジ部は、記録ヘッドH1001(図7;詳細な構成は後述する)を目的の画像を形成する位置に配置して、電気基板E0014からの信号にしたがって記録媒体にインクを吐出する。記録ヘッドH1001により記録を行いながらキャリッジM4000が列方向に走査する主走査と、搬送ローラM3060により記録媒体を行方向に搬送する副走査とを交互に繰り返すことにより、記録媒体に画像を形成する。画像が形成された記録媒体は、排紙部において、第1の排紙ローラM3110と拍車M3120とのニップに挟まれた状態で搬送されて、排紙トレイM3160に排出される。
なお、クリーニング部は、画像を形成する前後の記録ヘッドH1001をクリーニングする。キャップM5010で記録ヘッドH1001の吐出口をキャッピングした状態で、ポンプM5000を作動すると、記録ヘッドH1001の吐出口から不要なインクなどが吸引されるようになっている。また、キャップM5010を開いた状態で、キャップM5010の内部に残っているインクなどを吸引することにより、残インクによる固着やその他の弊害が起こらないようになっている。
(記録ヘッドの構成)
ヘッドカートリッジH1000の構成について説明する。図7は、ヘッドカートリッジH1000の構成を示した図であり、また、ヘッドカートリッジH1000に、インクカートリッジH1900を装着する様子を示した図である。ヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と、インクカートリッジH1900を搭載する手段、及びインクカートリッジH1900から記録ヘッドにインクを供給する手段を有しており、キャリッジM4000に対して着脱可能に搭載される。
インクジェット記録装置は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、淡マゼンタ、淡シアン、及びグリーンの各インクで画像を形成する。したがって、インクカートリッジH1900も7色分が独立に用意されている。なお、上記において、少なくともひとつのインクに、本発明のインクを用いる。そして、図7に示すように、それぞれのインクカートリッジH1900が、ヘッドカートリッジH1000に対して着脱可能となっている。なお、インクカートリッジH1900の着脱は、キャリッジM4000にヘッドカートリッジH1000を搭載した状態でも行うことができる。
図8は、ヘッドカートリッジH1000の分解斜視図である。ヘッドカートリッジH1000は、記録素子基板、プレート、電気配線基板H1300、カートリッジホルダーH1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700、シールゴムH1800などで構成される。記録素子基板は第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101で構成され、プレートは第1のプレートH1200及び第2のプレートH1400で構成される。
第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101はSi基板であり、その片面にインクを吐出するための複数の記録素子(ノズル)がフォトリソグラフィ技術により形成されている。各記録素子に電力を供給するAlなどの電気配線は成膜技術により形成されており、個々の記録素子に対応した複数のインク流路はフォトリソグラフィ技術により形成されている。さらに、複数のインク流路にインクを供給するためのインク供給口が裏面に開口するように形成されている。
図9は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101の構成を説明する正面拡大図である。H2000〜H2600は、それぞれ異なるインク色に対応する記録素子の列(以下ノズル列ともいう)である。第1の記録素子基板H1100には、イエローインクのノズル列H2000、マゼンタインクのノズル列H2100、及びシアンインクのノズル列H2200の3色分のノズル列が形成されている。第2の記録素子基板H1101には、淡シアンインクのノズル列H2300、ブラックインクのノズル列H2400、グリーンインクのノズル列H2500、及び淡マゼンタインクのノズル列H2600の4色分のノズル列が形成されている。
各ノズル列は、記録媒体の搬送方向(副走査方向)に1,200dpi(dot/inch;参考値)の間隔で並ぶ768個のノズルによって構成されている。そして、各ノズルからは、それぞれ約2ピコリットルのインクが吐出される。このため、各吐出口における開口面積は、およそ100μm2に設定されている。
以下、図7及び図8を参照して説明する。第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101は第1のプレートH1200に接着固定されている。ここには、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101にインクを供給するためのインク供給口H1201が形成されている。さらに、第1のプレートH1200には、開口部を有する第2のプレートH1400が接着固定されている。この第2のプレートH1400は、電気配線基板H1300と第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101とが電気的に接続されるように、電気配線基板H1300を保持する。
電気配線基板H1300は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101に形成されている各ノズルからインクを吐出するための電気信号を印加する。この電気配線基板H1300は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101に対応する電気配線と、この電気配線端部に位置し、インクジェット記録装置からの電気信号を受け取るための外部信号入力端子H1301とを有する。外部信号入力端子H1301は、カートリッジホルダーH1500の背面側に位置決め固定されている。
インクカートリッジH1900を保持するカートリッジホルダーH1500には、流路形成部材H1600が、例えば、超音波溶着により固定され、インクカートリッジH1900から第1のプレートH1200に通じるインク流路H1501を形成する。インクカートリッジH1900と係合するインク流路H1501のインクカートリッジ側端部には、フィルターH1700が設けられており、外部からの塵埃の侵入を防止し得るようになっている。また、インクカートリッジH1900との係合部にはシールゴムH1800が装着され、係合部からのインクの蒸発を防止し得るようになっている。
さらに、上記したように、カートリッジホルダー部と記録ヘッド部H1001とを接着などで結合することで、ヘッドカートリッジH1000が構成される。なお、カートリッジホルダー部は、カートリッジホルダーH1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700、及びシールゴムH1800から構成される。また、記録ヘッド部H1001は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101、第1のプレートH1200、電気配線基板H1300及び第2のプレートH1400から構成される。
なお、ここでは記録ヘッドの一形態として、電気信号に応じた膜沸騰をインクに生じさせるための熱エネルギーを生成する電気熱変換体(記録素子)を用いて記録を行うサーマルインクジェット方式の記録ヘッドについて述べた。この代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4,723,129号明細書、同第4,740,796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は、所謂、オンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用することができる。
サーマルインクジェット方式は、オンデマンド型に適用することが特に有効である。オンデマンド型の場合には、インクを保持する液流路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を超える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号を印加する。このことによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、インクに膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応したインク内の気泡を形成できる。この気泡の成長及び収縮により吐出口を介してインクを吐出することで、少なくともひとつの滴を形成する。駆動信号をパルス形状とすると、即時、適切に気泡の成長及び収縮が行われるので、特に応答性に優れたインクの吐出が達成でき、より好ましい。
また、本発明のインクは、前記のサーマルインクジェット方式に限らず、下記に述べるような、力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置においても好ましく用いることができる。かかる形態のインクジェット記録装置は、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備えてなる。そして、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクをノズルから吐出する。
インクジェット記録装置は、上記したように、記録ヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、それらが分離不能に一体になったものを用いてもよい。さらに、インクカートリッジは、記録ヘッドに対して分離可能又は分離不能に一体化されてキャリッジに搭載されるもの、また、インクジェット記録装置の固定部位に設けられて、チューブなどのインク供給部材を介して記録ヘッドにインクを供給するものでもよい。また、記録ヘッドに対して、好ましい負圧を作用させるための構成をインクカートリッジに設ける場合には、以下の構成とすることができる。すなわち、インクカートリッジのインク収容部に吸収体を配置した形態、又は可撓性のインク収容袋とこれに対してその内容積を拡張する方向の付勢力を作用するばね部とを有した形態などとすることができる。また、インクジェット記録装置は、上記したようなシリアル型の記録方式を採るもののほか、記録媒体の全幅に対応した範囲にわたって記録素子を整列させてなるラインプリンタの形態をとるものであってもよい。
以下、実施例、参考例及び比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、特に指定のない限り、実施例、参考例、比較例のインク成分は「質量部」を意味する。
<色材の調製>
以下に記載する色材の合成で得られた一般式(I)の化合物は全て混合物であり、特に断りのない限り、以下の異性体などの混合物のことを「化合物」として記載する。すなわち、化合物とは、化合物の位置異性体、含窒素複素芳香環の窒素原子の位置異性体、一般式(I)のA、B、C、及びDのベンゾ環/含窒素複素芳香環の比率の異性体、並びにベンゾ環の置換又は無置換のスルファモイル基のα/β位置異性体などを含む。上記で述べたように、これらの異性体の混合物から特定の化合物を単離して、構造を決定することは極めて困難であるため、便宜上、考えられる異性体の中の一例を代表例として挙げ、その構造式を記載した。一般式(I)の化合物を合成する際に得られた化合物について、質量分析、ICP発光分光法、及び吸光度測定による分析を行って、各化合物の合成を確認した。
(質量分析)
各化合物について、DI−MS(ダイレクトマス)測定を行った。DI−MSの分析条件は以下に示す通りである。
・EI法
・質量分析装置:SSQ−7000
・イオン源温度:230℃
・真空度:約8mT
(ICP発光分光法)
銅を含有する各化合物について、ICP発光分光法により銅の含有量を分析した。具体的には、下記のようにして分析を行った。分析試料約0.1gを精秤して、これを純水で溶解した後、100mlのメスフラスコに定容した。この液体から1mlをホールピペットを用いて50mlのメスフラスコに計り取り、内部標準物質としてY(イットリウム)を一定量加え、純水を用いて50mlに定容した後、ICP発光分光法により銅の含有量を定量した。なお、この際に用いた装置はICP発光分光装置SPS3100(SIIナノテクノロジー製)である。
(吸光度測定)
各化合物について、吸光度測定を行った。吸光度の測定条件を以下に示す。
・分光光度計:自記分光光度計(商品名:U−3300;日立製作所製)
・測定セル:1cm 石英セル
・サンプリング間隔:0.1nm
・スキャン速度:30nm/min
・測定回数:5回測定平均
氷水2,000部に、ロータットOH−104K(ライオン製)7.2部、及び塩化シアヌル239.9部を添加して、30分間撹拌した。これに、アニリン−2,5−ジスルホン酸モノナトリウム塩(純度91.2%)411.6部を添加して、25%水酸化ナトリウム水溶液を添加しながら、反応液のpHを2.7〜3.0に保ち、10〜15℃で1時間、次いで27〜30℃で2時間反応を行った。次に、反応液を10℃以下に冷却した後、25%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、反応液のpHを7.0〜7.5に調整した。これに、28%アンモニア水118.4部を添加して、10〜15℃、pH9.5〜10.0にして3時間保った。その後、濃塩酸を添加し、反応液のpHを6.0〜7.0に調整した。次に、氷2,000部を添加し、0℃まで冷却して、5℃以下を保ちながらエチレンジアミン780部を滴下した。その後、反応液の温度を10〜15℃として1時間保った。続いて、これに濃塩酸を滴下して、反応液のpHを0.9〜1.0に調整した。この間、温度が上昇しないように氷を添加することで、反応液の温度を10〜15℃に保った。さらに、これに氷を添加して、反応液の温度を10℃以下にした。この際の液量は13,000部であった。この反応液に塩化ナトリウム2,600部(液量に対して20%)を加え、1時間撹拌して結晶を析出させた。析出した結晶を濾過分取し、20%塩化ナトリウム水溶3,000部で洗浄し、ウェットケーキを743.0部得た(純度:59.3%、HPLC純度:93.3%)。
(2)銅トリベンゾ(2,3−ピリド)ポルフィラジン[下記の化合物(2):前記一般式(III)におけるA、B、C、及びDのうち1つがピリジン環で残り3つがベンゼン環である混合物]の合成
四つロフラスコに、スルホラン250部、フタルイミド22.1部、キノリン酸8.4部、尿素72.0部、塩化銅(II)・2水和物(純度97.0%)8.8部、モリブデン酸アンモニウム1.0部を加え、反応液を200℃に昇温して5時間保った。反応終了後、反応液を75℃まで冷却し、メタノール200部を添加して、結晶を濾過した。得られた結晶を、メタノール250部、続いて温水500部で洗浄し、ウェットケーキ61.9部を得た。得られたウェットケーキを5%塩酸500部に添加し、この液体を60℃に昇温して1時間保った。得られた結晶を濾過して、水300部で洗浄した。次いで、得られたウェットケーキを10%アンモニア水500部に添加し、液体の温度を25〜30℃として1時間保った。得られた結晶を濾過した後、水300部で洗浄し、ウェットケーキ64.9部を得た。得られたウェットケーキを80℃で乾燥し、青色結晶20.9部を得た。この青色結晶について分析した結果、下記の測定値が得られた。この結果、得られた青色結晶は、上記構造の化合物であることが確認された。
極大吸収波長(λ
max):670.5nm(ピリジン中)
元素分析結果:C
31H
15N
9Cu
(3)銅トリベンゾ(2,3−ピリド)ポルフィラジントリスルホニルクロリド[下記の化合物(3):混合物中の主たる成分の最外核芳香環の1つがピリジン環で残り3つがベンゼン環である混合物]の合成
クロロスルホン酸46.2部に、液体の温度を60℃以下に保って、上記で得られた銅トリベンゾ(2,3−ピリド)ポルフィラジン5.8部を撹拌下で徐々に仕込み、その後140℃で4時間反応を行った。次に、反応液を70℃まで冷却し、塩化チオニル17.9部を30分間かけて滴下し、70℃で3時間反応を行った。反応液を30℃以下に冷却し、氷水500部中にゆっくりと注ぎ、析出した結晶を濾過し、冷水200部で洗浄して、銅トリベンゾ(2,3−ピリド)ポルフィラジントリスルホニルクロリドのウェットケーキ71.1部を得た。
(4)下記の化合物(4)[例示化合物I−1を含む混合物:混合物中の主たる成分の最外核芳香環の1つがピリジン環で残り3つがベンゼン環であり、bが2.4、cが0.6である混合物]の合成
氷水200部に、上記で得られた銅トリベンゾ(2,3−ピリド)ポルフィラジントリスルホニルクロリドのウェットケーキ71.1部を添加して、撹拌して懸濁させた。次に、アンモニア水3.0部、温水100部中に、上記で得られた化合物(1)(純度:59.3%)20.5部を溶解したものを添加し、28%アンモニア水を添加することで反応液のpHを9.0〜9.3に保ち、17〜20℃で6時間反応を行った。その後、反応液を60℃に昇温した。この時の液量は500部であった。これに、塩化ナトリウム100部(液量に対して20%)を添加し、35%塩酸水溶液を添加して液体のpHを1.0に調整し、結晶を析出させた。析出した結晶を濾過分取し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ47.7部を得た。得られたウェットケーキを再度水に溶解して、液体のpHを9.0に調整した後、全量を300部に調整して、60℃に昇温した。この時の液量は320部であった。これに、塩化ナトリウム48部(液量に対して15%)を添加し、35%塩酸水溶液を添加して液体のpHを1.0に調整し、結晶を析出させた。析出した結晶を濾別し、15%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ47.8部を得た。得られたウェットケーキ47.8部をメタノール250部中に添加し、60℃で1時間撹拌して懸濁させた後、濾過、メタノール100部で洗浄、乾燥し、青色結晶(化合物A)を10.7部得た。この青色結晶について分析した結果、下記の測定値が得られた。
極大吸収波長(λmax):611nm(水溶液中)
(化合物Bの合成)
(1)銅ジベンゾビス(2,3−ピリド)ポルフィラジン[下記の化合物(5):前記一般式(III)におけるA、B、C、及びDのうち2つがピリジン環で残り2つがベンゼン環である混合物]の合成
四つロフラスコに、スルホラン250部、フタルイミド14.7部、キノリン酸16.7部、尿素72.0部、塩化銅(II)・2水和物(純度97.0%)8.8部、モリブデン酸アンモニウム1.0部を加え、反応液を200℃に昇温して5時間保った。反応終了後、反応液を85℃まで冷却し、メタノール200部を添加して、結晶を濾過した。得られた結晶を、メタノール200部、続いて温水500部で洗浄した後、乾燥して、粗銅ジベンゾビス(2,3−ピリド)ポルフィラジン(混合物)24.1部を青色結晶として得た。得られた粗銅ジベンゾビス(2,3−ピリド)ポルフィラジン(混合物)24.1部を5%塩酸500部中に添加して、液体を60℃に昇温して1時間保った。その後、結晶を濾過して、水100部で洗浄して、ウェットケーキを得た。次いで、得られたウェットケーキを10%アンモニア水500部中に添加して、液体の温度を25〜30℃として1時間保った。得られた結晶を濾過した後、水200部で洗浄し、ウェットケーキ44.4部を得た。得られたウェットケーキを80℃で乾燥し、銅ジベンゾビス(2,3−ピリド)ポルフィラジン(混合物)17.7部を青色結晶として得た。この青色結晶について分析した結果、下記の測定値が得られた。この結果、得られた青色結晶は、上記構造の化合物であることが確認された。
極大吸収波長(λ
max):662.5nm(ピリジン中)
元素分析結果:C
30H
14N
10Cu
(2)銅ジベンゾビス(2,3−ピリド)ポルフィラジンジスルホニルクロリド[下記の化合物(6):混合物中の主たる成分の最外殻芳香環の2つがピリジン環で残り2つがベンゼン環である混合物]の合成
クロロスルホン酸46.2部に、液体の温度を60℃以下に保って、上記で得られた銅ジベンゾビス(2,3−ピリド)ポルフィラジン5.8部を撹拌下で徐々に仕込み、その後140℃で4時間反応を行った。次に、反応液を70℃まで冷却し、塩化チオニル17.9部を30分間かけて滴下し、70℃で3時間反応を行った。反応液を30℃以下に冷却し、氷水500部中にゆっくりと注ぎ、析出した結晶を濾過し、冷水200部で洗浄して、銅ジベンゾビス(2,3−ピリド)ポルフィラジンジスルホニルクロリドのウェットケーキ46.0部を得た。
(3)下記の化合物(7)[例示化合物I−2及びI−3を含む混合物:混合物中の主たる成分の最外殻芳香環の2つがピリジン環で残り2つがベンゼン環であり、bが1.6、cが0.4である混合物]の合成
氷水250部に、上記で得られた銅ジベンゾビス(2,3−ピリド)ポルフィラジンジスルホニルクロリドのウェットケーキ46.0部を添加して、撹拌して懸濁させた。次に、アンモニア水4.0部、温水100部中に、上記化合物Aの合成で得られた化合物(1)(純度:59.3%)20.5部を溶解したものを添加した。これに、28%アンモニア水を添加することで反応液のpHを9.0〜9.3に保ち、17〜20℃で4時間反応を行った。その後、反応液を60℃に昇温した。この時の液量は480部であった。これに、塩化ナトリウム48部(液量に対して10%)を添加し、35%塩酸水溶液を添加して液体のpHを1.0に調整し、結晶を析出させた。析出した結晶を濾過分取し、15%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ86.1部を得た。得られたウェットケーキを再度水に溶解して、液体のpHを9.0に調整した後、全量を400部に調整して、60℃に昇温した。この時の液量は410部であった。これに、塩化ナトリウム41部(液量に対して10%)を添加し、35%塩酸水溶液を添加して液体のpHを1.0に調整し、結晶を析出させた。析出した結晶を濾別し、10%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ65.7部を得た。得られたウェットケーキ65.7部をメタノール330部中に添加し、60℃で1時間撹拌して懸濁させた後、濾過、メタノール100部で洗浄、乾燥し、青色結晶(化合物B)を9.3部得た。この青色結晶について分析した結果、下記の測定値が得られた。
極大吸収波長(λmax):602nm(水溶液中)
(化合物Cの合成)
(1)銅ベンゾトリス(2,3−ピリド)ポルフィラジン[下記の化合物(8):前記一般式(III)におけるA、B、C、及びDのうち3つがピリジン環で残り1つがベンゼン環である混合物]の合成
四つロフラスコに、スルホラン250部、フタルイミド7.4部、キノリン酸25.1部、尿素72.0部、塩化銅(II)・2水和物(純度97.0%)8.8部、モリブデン酸アンモニウム1.0部を加え、反応液を200℃に昇温して5時間保った。反応終了後、反応液を70℃まで冷却し、メタノール200部を添加して、結晶を濾過した。得られた結晶を、メタノール200部、続いて温水500部で洗浄した後、乾燥して、粗銅ベンゾトリス(2,3−ピリド)ポルフィラジン(混合物)20.5部を青色結晶として得た。得られた粗銅ベンゾトリス(2,3−ピリド)ポルフィラジン(混合物)14.5部を5%塩酸500部中に添加して、液体を60℃に昇温して1時間保った。その後、結晶を濾過して、水100部で洗浄した。次いで、得られたウェットケーキを10%アンモニア水500部に添加して、液体の温度を25〜30℃として1時間保った。得られた結晶を濾過した後、水100部で洗浄し、ウェットケーキ23.5部を得た。得られたウェットケーキを80℃で乾燥し、銅ベンゾトリス(2,3−ピリド)ポルフィラジン(混合物)9.7部を青色結晶として得た。この青色結晶について分析した結果、下記の測定値が得られた。この結果、得られた青色結晶は、上記構造の化合物であることが確認された。
λ
max:655nm(ピリジン中)
元素分析:C
29H
13N
11Cu
(2)銅ベンゾトリス(2,3−ピリド)ポルフィラジンスルホニルクロリド(下記の化合物(9):混合物中の主たる成分の最外殻芳香環の3つがピリジン環で残り1つがベンゼン環である混合物)の合成
クロロスルホン酸46.2部中に、液体の温度を60℃以下に保って、上記で得られた粗銅ベンゾトリス(2,3−ピリド)ポルフィラジン5.8部を撹拌下で徐々に仕込み、その後140℃で4時間反応を行った。次に、反応液を70℃まで冷却し、塩化チオニル17.9部を30分間かけて滴下し、70℃で3時間反応を行った。反応液を30℃以下に冷却し、氷水500部中にゆっくりと注ぎ、析出した結晶を濾過し、冷水200部で洗浄して、銅ベンゾトリス(2,3−ピリド)ポルフィラジンスルホニルクロリドのウェットケーキ33.0部を得た。
(3)下記の化合物(10)[混合物中の主たる成分の最外殻芳香環の3つがピリジン環で残り1つがベンゼン環であり、bが0.9、Cが0.1である混合物]の合成
氷水250部に、上記で得られた銅ベンゾトリス(2,3−ピリド)ポルフィラジンスルホニルクロリドのウェットケーキ33.0部を添加して、撹拌して懸濁させた。次に、アンモニア水4.0部、温水90部中に、上記化合物Aの合成で得られた化合物(1)(純度:59.3%)20.5部を溶解したものを添加した。これに、28%アンモニア水を添加することで反応液のpHを9.0〜9.3に保ち、17〜20℃で3時間反応を行った。その後、反応液を60℃に昇温した。この時の液量は450部であった。これに、塩化ナトリウム67.5部(液量に対して15%)を添加し、35%塩酸水溶液を添加して液体のpHを1.0に調整し、結晶を析出させた。析出した結晶を濾過分取し、15%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ42.6部を得た。得られたウェットケーキを再度水に溶解して、液体のpHを9.0に調整した後、全量を300部に調整して、60℃に昇温した。この時の液量は310部であった。これに、塩化ナトリウム31部(液量に対して10%)を添加し、35%塩酸水溶液を添加して液体のpHを1.0に調整し、結晶を析出させた。析出した結晶を濾別し、10%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ42.8部を得た。得られたウェットケーキ42.8部をメタノール220部中に添加し、60℃で1時間撹拌して懸濁させた後、濾過、メタノール100部で洗浄、乾燥し、青色結晶(化合物C)を5.0部得た。この青色結晶について分析した結果、下記の測定値が得られた。
極大吸収波長(λmax):584nm(水溶液中)
(化合物Dの合成)
(1)銅トリベンゾ(2,3−ピリド)ポルフィラジントリスルホン酸ナトリウム[下記の化合物(11):混合物中の主たる成分の最外殻芳香環の1つがピリジン環で残り3つがベンゼン環である混合物のナトリウム塩]の合成
四つロフラスコに、スルホラン250部、4−スルホフタル酸(50%水溶液、パイロット・ケミカル製、3−スルホフタル酸20%を含有)73.8部、28%アンモニア水27.3部を加え、水を留去しながら、反応液を160℃に昇温した。反応終了後、反応液を100℃まで冷却し、キノリン酸8.4部、尿素72.0部、塩化銅(II)・2水和物(純度97.0%)8.8部、モリブデン酸アンモニウム1.0部を加え、反応液を200℃に昇温して5時間保った。反応終了後、反応液を90℃まで冷却し、メタノール200部を添加して、結晶を濾過した。得られた結晶を、メタノール750部で洗浄し、ウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを、28.6%の食塩水900部及び濃塩酸100部を混合した液体中に添加し、液体を60℃に昇温して1時間保った。得られた結晶を濾過した後、28.6%の食塩水225部及び濃塩酸25部を混合した液体で洗浄した。次いで、得られたウェットケーキをメタノール500部中に添加し、次いで28%アンモニア水50部を添加し、液体を60℃に昇温して1時間保ち、結晶を濾過、メタノール200部で洗浄し、ウェットケーキ78.1部を得た。得られたウェットケーキをメタノール500部中に添加し、次いで25%水酸化ナトリウム水溶液30部を添加し、液体を60℃に昇温して1時間保ち、結晶を濾過、メタノール200部で洗浄し、ウェットケーキ72.6部を得た。得られたウェットケーキを80℃で乾燥し、銅トリベンゾ(2,3−ピリド)ポルフィラジントリスルホン酸ナトリウム32.4部を青色結晶として得た。この青色結晶について分析した結果、下記の測定値が得られた。
極大吸収波長(λmax):625nm(水溶液中)
(2)銅トリベンゾ(2,3−ピリド)ポルフィラジントリスルホニルクロリド[下記の化合物(12):混合物中の主たる成分の最外殻芳香環の1つがピリジン環で残り3つがベンゼン環である混合物]の合成
クロロスルホン酸70.6部に、液体の温度を60℃以下に保って、上記で得られた銅トリベンゾ(2,3−ピリド)ポルフィラジントリスルホン酸ナトリウム8.8部を撹拌下で徐々に仕込み、その後120℃で4時間反応を行った。次に、反応液を70℃まで冷却し、塩化チオニル17.9部を30分間かけて滴下し、70℃で3時間反応を行った。反応液を30℃以下に冷却し、氷水500部中にゆっくりと注ぎ、析出した結晶を濾過し、冷水100部で洗浄して、銅トリベンゾ(2,3−ピリド)ポルフィラジントリスルホニルクロリド(混合物)のウェットケーキ61.2部を得た。
(3)下記の化合物(13)[例示化合物I−1を含む混合物:混合物中の主たる成分の最外殻芳香環の1つがピリジン環で残り3つがベンゼン環であり、bが2、cが1である混合物]の合成
氷水250部に、上記で得られた銅トリベンゾ(2,3−ピリド)ポルフィラジントリスルホニルクロリドのウェットケーキ61.2部を添加して、撹拌して懸濁させた。次に、アンモニア水3.0部、温水90部中に、上記化合物Aの合成で得られた化合物(1)(純度:59.3%)20.5部を溶解したものを添加した。これに、28%アンモニア水を添加することで反応液のpHを9.0〜9.3に保ち、17〜20℃で4時間反応を行った。その後、反応液を60℃に昇温した。この時の液量は500部であった。これに、塩化ナトリウム100部(液量に対して20%)を添加し、35%塩酸水溶液を添加して液体のpHを1.0に調整し、結晶を析出させた。析出した結晶を濾過分取し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ37.0部を得た。得られたウェットケーキを再度水に溶解して、液体のpHを9.0に調整した後、全量を400部に調整して、60℃に昇温した。この時の液量は400部であった。これに、塩化ナトリウム80部(液量に対して20%)を添加し、35%塩酸水溶液を添加して液体のpHを1.0に調整し、結晶を析出させた。析出した結晶を濾別し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ39.2部を得た。得られたウェットケーキ39.2部をメタノール200部中に添加し、60℃で1時間撹拌して懸濁させた後、濾過、メタノール200部で洗浄、乾燥し、青色結晶(化合物D)を9.8部得た。この青色結晶について分析した結果、下記の測定値が得られた。
極大吸収波長(λmax):614nm(水溶液中)
(化合物Eの合成)
(1)銅ジベンゾビス(2,3−ピリド)ポルフィラジンジスルホン酸ナトリウム[下記の化合物(14):混合物中の主たる成分の最外殻芳香環の2つがピリジン環で残り2つがベンゼン環である混合物のナトリウム塩]の合成
四つロフラスコに、スルホラン250部、4−スルホフタル酸(50%水溶液、パイロット・ケミカル製、3−スルホフタル酸20%を含有)49.2部、28%アンモニア水18.2部を加え、水を留去しながら、160℃に昇温した。その後、反応液を110℃まで冷却し、キノリン酸16.7部、尿素72.0部、塩化銅(II)・2水和物(純度97.0%)8.8部、モリブデン酸アンモニウム1.0部を加え、200℃に昇温して5時間保った。反応終了後、反応液を70℃まで冷却し、メタノール100部を添加して、結晶を濾過した。得られた結晶を、メタノール150部で洗浄した後、乾燥し、青色結晶36.9部を得た。得られた青色結晶を20%食塩水1000部及び濃塩酸10部を混合した液体中に添加し、液体を60℃に昇温して1時間保った。その後、25%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液体のpHを7〜8に調整し、析出した結晶を濾過分取して、ウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを水1000部に添加して、液体を60℃で1時間保ち、メタノール600部を添加し、結晶を析出させた。得られた結晶を濾過した後、メタノール100部で洗浄し、ウェットケーキ110.7部を得た。得られたウェットケーキを80℃で乾燥し、銅ジベンゾビス(2,3−ピリド)ポルフィラジンジスルホン酸ナトリウム28.9部を青色結晶として得た。この青色結晶について分析した結果、下記の測定値が得られた。
極大吸収波長(λmax):607.5nm(水溶液中)
(2)銅ジベンゾビス(2,3−ピリド)ポルフィラジンジスルホニルクロリド[下記の化合物(15):混合物中の主たる成分の最外殻芳香環の2つがピリジン環で残り2つがベンゼン環である混合物]の合成
クロロスルホン酸62.6部に、液体の温度を60℃以下に保って、上記で得られた銅ジベンゾビス(2,3−ピリド)ポルフィラジンジスルホン酸ナトリウム7.8部を撹拌下で徐々に仕込み、その後120℃で4時間反応を行った。次に、反応液を70℃まで冷却し、塩化チオニル17.9部を30分間かけて滴下し、70℃で3時間反応を行った。反応液を30℃以下に冷却し、氷水500部中にゆっくりと注ぎ、析出した結晶を濾過し、冷水200部で洗浄して、銅ジベンゾビス(2,3−ピリド)ポルフィラジンジスルホニルクロリド(混合物)のウェットケーキ44.3部を得た。
(3)下記の化合物(16)[例示化合物I−2及びI−3を含む混合物:混合物中の主たる成分の最外殻芳香環の2つがピリジン環で残り2つがベンゼン環であり、bが1.7、cが0.3である混合物]の合成
氷水250部中に、上記で得られた銅ジベンゾビス(2,3−ピリド)ポルフィラジンジスルホニルクロリドのウェットケーキ44.3部を添加して、撹拌して懸濁させた。次に、アンモニア水5.0部、温水100部中に、上記化合物Aの合成で得られた化合物(1)(純度:59.3%)25.3部を溶解したものを添加した。これに、28%アンモニア水を添加することで反応液のpHを9.0〜9.3に保ち、17〜20℃で3時間反応を行った。その後、反応液を60℃に昇温した。この時の液量は520部であった。これに、塩化ナトリウム104部(液量に対して20%)を添加し、35%塩酸水溶液を添加して液体のpHを1.0に調整し、結晶を析出させた。析出した結晶を濾過分取し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ27.6部を得た。得られたウェットケーキを再度水に溶解して、液体のpHを9.0に調整した後、全量を300部に調整、60℃に昇温した。この時の液量は310部であった。これに、塩化ナトリウム62部(液量に対して20%)を添加し、35%塩酸水溶液を添加して液体のpHを1.0に調整し、結晶を析出させた。析出した結晶を濾別し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ32.0部を得た。得られたウェットケーキ32.0部をメタノール160部中に添加し、60℃で1時間撹拌して懸濁させた後、濾過、メタノール100部で洗浄、乾燥し、青色結晶(化合物E)を7.6部得た。この青色結晶について分析した結果、下記の測定値が得られた。
極大吸収波長(λmax):609nm(水溶液中)
(化合物Fの合成)
(1)銅ジベンゾビス(2,3−ピラジノ)ポルフィラジンジスルホン酸ナトリウム[下記の化合物(17):混合物中の主たる成分の最外殻芳香環の2つがピラジン環で残り2つがベンゼン環である混合物のナトリウム塩]の合成
四つロフラスコに、スルホラン250部、4−スルホフタル酸(50%水溶液、パイロット・ケミカル製、3−スルホフタル酸20%を含有)49.2部、28%アンモニア水18.2部を加え、水を留去しながら、160℃に昇温した。その後、100℃まで冷却し、ピラジンジカルポン酸16.8部、尿素72.0部、塩化銅(II)・2水和物(純度97.0%)8.8部、モリブデン酸アンモニウム1.0部を加え、反応液を200℃に昇温して5時間保った。反応終了後、反応液を70℃まで冷却し、メタノール200部を添加して、結晶を濾過した。得られた結晶を、メタノール400部で洗浄し、ウェットケーキ55.0部を得た。得られたウェットケーキを、28.6%の食塩水900部及び濃塩酸100部を混合した液体中に添加し、液体を60℃に昇温して1時間保った。得られた結晶を濾過した後、28.6%の食塩水225部及び濃塩酸25部を混合した液体で洗浄した。次いで、得られたウェットケーキをメタノール500部中に添加し、次いで28%アンモニア水50部を添加し、液体を60℃に昇温して1時間保ち、結晶を濾過、メタノール200部で洗浄し、ウェットケーキ34.8部を得た。得られたウェットケーキをメタノール500部中に添加し、次いで25%水酸化ナトリウム水溶液30部を添加し、液体を60℃に昇温して1時間保ち、結晶を濾過、メタノール200部で洗浄し、ウェットケーキ31.5部を得た。得られたウェットケーキを80℃で乾燥し、銅ジベンゾビス(2,3−ピラジノ)ポルフィラジンジスルホン酸ナトリウム(混合物)22.2部を青色結晶として得た。この青色結晶について分析した結果、下記の測定値が得られた。
極大吸収波長(λmax):610.5nm(水溶液中)
(2)銅ジベンゾビス(2,3−ピラジノ)ポルフィラジンジスルホニルクロリド[下記の化合物(18):混合物中の主たる成分の最外殻芳香環の2つがピラジン環で残り2つがベンゼン環である混合物]の合成
クロロスルホン酸62.7部に、液体の温度を60℃以下に保って、上記で得られた銅ジベンゾビス(2,3−ピラジノ)ポルフィラジンジスルホン酸ナトリウム7.8部を撹拌下で徐々に仕込み、その後120℃で4時間反応を行った。次に、反応液を70℃まで冷却し、塩化チオニル17.9部を30分間かけて滴下し、70℃で3時間反応を行った。反応液を30℃以下に冷却し、氷水500部中にゆっくりと注ぎ、析出した結晶を濾過し、冷水200部で洗浄して、銅ジベンゾビス(2,3−ピラジノ)ポルフィラジンジスルホニルクロリド(混合物)のウェットケーキ44.1部を得た。
(3)下記の化合物(19)[例示化合物I−11及びI−12を含む混合物:混合物中の主たる成分の最外殻芳香環の2つがピラジン環で残り2つがベンゼン環であり、bが1.2、Cが0.8である混合物]の合成
氷水200部中に、上記で得られた銅ジベンゾビス(2,3−ピラジノ)ポルフィラジンジスルホニルクロリドのウェットケーキ44.1部を添加して、撹拌して懸濁させた。次に、アンモニア水3.0部、温水100部中に、上記化合物Aの合成で得られた化合物(1)(純度:59.3%)20.5部を溶解したものを添加した。これに、28%アンモニア水を添加することで反応液のpHを9.0〜9.3に保ち、17〜20℃で2時間反応を行った。その後、反応液を60℃に昇温した。この時の液量は450部であった。これに、塩化ナトリウム90部(液量に対して20%)を添加し、35%塩酸水溶液を添加して液体のpHを1.0に調整し、結晶を析出させた。析出した結晶を濾過分取し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ31.7部を得た。得られたウェットケーキを再度水に溶解して、液体のpHを9.0に調整した後、全量を300部に調整して、60℃に昇温した。この時の液量は320部であった。これに、塩化ナトリウム64部(液量に対して20%)を添加し、35%塩酸水溶液を添加して液体のpHを1.0に調整し、結晶を析出させた。析出した結晶を濾別し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ38.1部を得た。得られたウェットケーキ38.1部をメタノール210部中に添加し、60℃で1時間撹拌して懸濁した後、濾過、メタノール200部で洗浄、乾燥し、青色結晶(化合物F)を8.8部得た。この青色結晶について分析した結果、下記の測定値が得られた。
極大吸収波長(λmax):614.5nm(水溶液中)
(化合物Gの合成)
(1)銅トリベンゾ(2,3−ピリド)ポルフィラジン及び銅ジベンゾビス(2,3−ピリド)ポルフィラジンの混合物(前記一般式(III)におけるA、B、C、及びDのうちピリジン環とベンゼン環の比率が平均して、1.5:2.5である混合物)の合成
四つロフラスコに、スルホラン250部、フタルイミド18.4部、キノリン酸12.5部、尿素72.0部、塩化銅(II)・2水和物(純度97.0%)8.8部、モリブデン酸アンモニウム1.0部を加え、反応液を200℃に昇温して5時間保った。反応終了後、反応液を65℃まで冷却し、メタノール200部を添加して、結晶を濾過した。得られた結晶を、メタノール150部、続いて温水200部で洗浄、乾燥し、ウェットケーキ72.2部を得た。得られたウェットケーキを5%塩酸500部に添加し、60℃に昇温して1時間保った。得られた結晶を濾過して、水200部で洗浄した。次いで、得られたウェットケーキを10%アンモニア水500部中に添加し、液体の温度を60℃として1時間保った。得られた結晶を濾過した後、水300部、メタノール100部で洗浄し、ウェットケーキ33.6部を得た。得られたウェットケーキを80℃で乾燥し、銅トリベンゾ(2,3−ピリド)ポルフィラジンと銅ジベンゾビス(2,3−ピリド)ポルフィラジンの混合物19.8部を青色結晶として得た。この青色結晶について分析した結果、下記の測定値が得られた。
極大吸収波長(λmax):663.5nm(ピリジン中)
(2)銅トリベンゾ(2,3−ピリド)ポルフィラジントリスルホニルクロリド及び銅ジベンゾビス(2,3−ピリド)ポルフィラジンジスルホニルクロリドの混合物[上記の化合物(3)及び化合物(5)を含む混合物:前記一般式(IV)におけるA、B、C、及びDのうちピリジン環とベンゼン環の比率が平均して、1.5:2.5であり、xが2.5である混合物]の合成
クロロスルホン酸46.2部中に、液体の温度を60℃以下に保って、上記で得られた銅トリベンゾ(2,3−ピリド)ポルフィラジンと銅ジベンゾビス(2,3−ピリド)ポルフィラジンの混合物5.8部を撹拌下で徐々に仕込んだ。その状態で140℃で4時間反応を行った。次に、反応液を70℃まで冷却し、塩化チオニル17.9部を30分間かけて滴下し、70℃で3時間反応を行った。次に、反応液を30℃以下に冷却し、氷水500部中にゆっくりと注ぎ、析出した結晶を濾過し、冷水200部で洗浄した。このようにして、銅トリベンゾ(2,3−ピリド)ポルフィラジントリスルホニルクロリド及び銅ジベンゾビス(2,3−ピリド)ポルフィラジンジスルホニルクロリドの混合物のウェットケーキ59.3部を得た。
(3)上記の化合物(4)及び化合物(16)の混合物[例示化合物I−2、I−3、及びI−4の混合物:前記一般式(I)におけるA、B、C、及びDのうちピリジン環とベンゼン環の比率が平均して、1.5:2.5であり、Eがエチレン、Xが2,5−ジスルホアニリノ基、Yがアミノ基、lが0、mが1.7、nが0.8である混合物]の合成
氷水350部中に、上記で得られた銅ベンゾ(2,3−ピリド)ポルフィラジンスルホニルクロリドのウェットケーキ59.3部を添加して、撹拌して懸濁させた。次に、アンモニア水3.0部、温水100部中に、上記化合物Aの合成で得られた化合物(1)(純度:59.3%)20.5部を溶解したものを添加した。これに、28%アンモニア水を添加することで反応液のpHを9.0〜9.3に保ち、17〜20℃で4時間反応を行った。その後、反応液を60℃に昇温した。この時の液量は560部であった。これに、塩化ナトリウム112部(液量に対して20%)を添加し、35%塩酸水溶液を添加して液体のpHを1.0に調整し、結晶を析出させた。析出した結晶を液過分取し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ73.6部を得た。得られたウェットケーキを再度水に溶解して、液体のpHを9.0に調整した後、全量を360部に調整して、60℃に昇温した。この時の液量は380部であった。これに、塩化ナトリウム76部(液量に対して20%)を添加し、35%塩酸水溶液を添加して液体のpHを1.0に調整し、結晶を析出させた。析出した結晶を濾別し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ48.4部を得た。得られたウェットケーキ48.4部をメタノール250部中に添加し、60℃で1時間撹拌して懸濁させた後、濾過、メタノール200部で洗浄、乾燥し、青色結晶(化合物G)を10.7部得た。この青色結晶について分析した結果、下記の測定値が得られた。
極大吸収波長(λmax):606nm(水溶液中)
(化合物H)
化合物Hとしては、表1−2中に記載した例示化合物I−25を用いた。
(比較化合物Iの合成)
一般式(I)の化合物の比較化合物である比較化合物Iは、特開2006−328129号公報に記載されている実施例1の化合物の合成方法にしたがって合成した下記の比較化合物Iを用いた。
(化合物Jの合成)
化合物Jとしては、特許第3851569号公報などを参考に合成した表2−4中に記載した例示化合物II−66を用いた。
(比較化合物K)
一般式(II)の化合物の比較化合物である、比較化合物Kとしては、C.I.ダイレクトブルー199を用いた。
<インクの調製>
表5〜表8に示した組成の各成分を混合して、十分撹拌した。その後、ポアサイズ0.20μmのフィルターにて加圧濾過を行い、実施例1〜7、9〜20、参考例8及び比較例1〜16のインクを調製した。
<記録媒体の調製>
低密度ポリエチレン70部、高密度ポリエチレン20部、及び酸化チタン10部を含む樹脂組成物を、坪量155g/m2の基紙の両面に25g/m2となるように塗布することで、樹脂で被覆した支持体を作製した。そして、前記支持体上に、アルミナ水和物及びポリビニルアルコールを主成分としたインク受容層を形成した。このようにして、隙間タイプのインク受容層を備えてなり、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.49−1にしたがって測定した3分後の表面pHが5.0である記録媒体を作製した。
<評価>
上記で得られた各インクをそれぞれ、熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置(商品名:PIXUS iP8600;キヤノン製)に搭載した。記録条件を、温度23℃、相対湿度55%、記録密度2400dpi×1200dpi、吐出量2.5plとした。そして、上記で得られた記録媒体に記録デューティを0%から100%まで10%刻みで変化させた画像を形成した。
(耐オゾン性)
上記で得られた記録物における記録デューティが50%の画像の部分について、画像濃度を測定した(「耐オゾン性試験前の画像濃度D1」とする)。さらに、この記録物を、オゾン試験装置(商品名:OMS−H;スガ試験機製)を用いて、オゾンガス濃度10ppm、相対湿度60%、槽内温度23℃で4時間曝露した。その後、記録物における記録デューティが50%の画像の部分について、画像濃度を測定した(「耐オゾン性試験後の画像濃度D2」とする)。なお、画像濃度は、分光光度計(商品名:Spectrolino;Gretag Macbeth製)を用いて、光源:D50、視野:2°の条件で測定した。得られた耐オゾン性試験前の画像濃度及び耐オゾン性試験後の画像濃度から、下記式(B)に基づいて残存濃度率を算出して、耐オゾン性の評価を行った。耐オゾン性の基準は以下の通りである。評価結果を表9に示した。下記の評価基準において、AA〜Bが耐オゾン性として問題のないレベルであり、AA及びAは特に優れているレベルであり、一方、C及びDは耐オゾン性が不十分なレベルである。
AA:残存濃度率が95%以上
A:残存濃度率が92%以上95%未満
B:残存濃度率が90%以上92%未満
C:残存濃度率が85%以上90%未満
D:残存濃度率が85%未満
(d値)
上記で得られた各インクについて、小角X線散乱法により散乱角プロファイルを測定した。散乱角プロファイルの測定条件は以下に示す通りである。
・装置:Nano Viewer(理学製)
・X線源:Cu−Kα
・出力:45kV−60mA
・実効焦点:0.3mmφ+Confocal Max−Flux Mirror
・1st slit:0.5mm、2nd Slit:0.4mm、3rd Slit:0.8mm
・照射時間:240min
・ビームストッパー:3.0mmφ
・測定法:透過法
・検出器:Blue Imaging Plate
得られた散乱角プロファイルから、X線回折データ処理ソフトJADE(Material Data Inc.製)を用いて、散乱角ピークトップの2θ値から、下記式(A)に基づいてd値(nm)を算出した。結果を表9に示す。なお、d値は色材又は色材の混合物の凝集性を表すものである。
化合物A及び化合物Jを(第1の色材/第2の色材)=1.26として組み合わせた場合(実施例16)のdA+B値は6.94nmであった。この値は、化合物Aのみの場合のdA値6.76nm、及び化合物Jのみの場合のdB値6.69nm、のそれぞれのd値よりも大きい。つまり、それぞれの色材が有する凝集性よりも、色材を組み合わせて用いる場合の凝集性が高くなることを示している。また、化合物J及び化合物Hを(第1の色材/第2の色材)=2.33として組み合わせた場合(参考例8)のdA+B値は6.79nmである。この場合にも、それぞれの色材のd値(dA値及びdB値)よりも、色材を組み合わせて用いる場合のd値が大きくなっていることが確認できる。しかし、化合物A及び比較化合物Kを(第1の色材/第2の色材)=1.50として組み合わせた場合(比較例12)のdA+B値は6.26nmであった。この値は、化合物Aのみの場合のdA値6.76nm、及び比較化合物Kのみの場合のdB値5.32nm、のそれぞれのd値の中間の値である。これは、化合物A及び比較化合物Kが、特異的に凝集性を向上するような組み合わせではないためである。
また、単独の色材として凝集性が高い、すなわちd値が大きい色材を選択すれば同等の効果を得られると考えられていた。しかし、本発明者らの検討の結果、単にd値が大きい色材を選択するだけでは、インクの色調がシアンインクとして好ましい色調から大幅にずれる場合が多く、シアンの色相を有するインクとして用いるためには問題があるといえる。
以上のことから、化合物A及び化合物Jを組み合わせた場合、化合物Aの置換スルファモイル基と化合物Jの置換基とが相互作用を起こすことにより、化合物Aのみ又は化合物Jのみの場合よりも大きな凝集体が形成されていると言える。そして、凝集体が大きくなり、色材の劣化速度が抑制されるため、耐オゾン性が向上することがわかる。また、化合物J及び化合物Hを組み合わせた場合も同様に、化合物Jのみ又は化合物Hのみの場合よりも大きな凝集体が形成されるため、耐オゾン性が向上する。しかし、比較化合物Iのようにスルホンウレア基を有する化合物を組み合わせた場合では、耐オゾン性が向上せず、本発明の効果が得られないことがわかった。
このように、凝集性を高めることができる化合物の組み合わせを選択し、記録媒体上においてより大きな凝集体が形成されることで、空気中の酸化性ガス、特にオゾンからの攻撃を受けて劣化する色材の割合を減少することができる。その結果、本発明においては特に優れた耐オゾン性を得ることができる。また、同時に好ましい色調も得ることができる。